説明

送信アンテナ

【課題】
ダンピング抵抗がなくても高速通信が可能な、効率のよい送信アンテナを提供する。
【解決手段】
コアにコイルが巻線された送信アンテナにおいて、磁性体2と導体1とを重ね合わせたコアに、コイル3を巻線したことを特徴とする。
また、導体を2つの磁性体2a、2bで挟んだコアに、コイル3を巻線したことを特徴とする。さらに、また、磁性体2と導体1と基板4を重ね合わせたコアに、コイル3を巻線したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載や住宅玄関ドアに用いられるキーレスエントリに用いられる送信アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等のキーレスエントリとして、ユーザーがリモートユニットのボタンを操作することにより、暗号化された車両情報のデジタルデータを電波で送受信して、車載側ユニットがドアをロックあるいはアンロックする装置が一般的である。
このような装置はLF帯(低周波30〜300KHz)の近距離通信システムであり、車載側ユニットの送信用アンテナは、ドアノブの把手等に装着されている。変調方式は振幅変位変調(ASK変調)がよく用いられる。
【0003】
従来の送信アンテナは、ボビンとコイルとフェライト等のコアとからなり、ボビンの外周にコイルを巻回し、前記ボビンの貫通孔にコアが挿入されている。
【0004】
図6は従来のアンテナ装置の回路図の例であり、図7は図6の回路の動作波形の例である。
図6において、送信部50は、NAND回路からなる論理回路54と、p型のパワーMOSFETからなるトランジスタQと、n型のパワーMOSFETからなるトランジスタQを備える。トランジスタQのソースを電源電圧VDDに接続し、トランジスタQのソースをグランドGNDに接続し、トランジスタQとQのドレインを互いに接続する。端子52と端子53が論理回路54に入力され、論理回路54の出力信号55がトランジスタQとQのゲートに入力される。
アンテナ部51は抵抗R、コイルL、コンデンサCからなり、トランジスタQとトランジスタQのドレインの共通接続点とグランドGND間に、ダンピング抵抗RとコイルLとコンデンサCが直列に接続されている。
論理回路54の入力端子52に送信データ、入力端子53に搬送波が入力され、出力端子55に変調信号が、トランジスタQとQのゲートに入力される。
図7において、波形aは端子52の送信データであり、波形bは端子53の搬送波であり、波形cは端子AB間の電圧VABである。
【特許文献1】特開2008−148279号公報
【特許文献2】特許2005−175964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、図6においてダンピング抵抗Rのない場合の動作波形の例である。波形aは送信データ、波形bは搬送波、波形cは端子AB間の電圧VABである。
図に示すように、ダンピング抵抗Rがない場合は、電圧VABの立上りeと立下りeの波形が大きく訛る。このようなシステムにおいて、高速通信をするためには端子AB間の電圧VABのオン・オフを高速に切り替えなければならない。そのため、立上り時間と立下り時間は急峻でなければならない。
【0006】
一般的に、立上り時間と立下り時間は、アンテナのQ値にほぼ比例するので、従来の送信アンテナでは、ダンピング抵抗Rを用いてアンテナのQ値を抑えることで、アンテナの帯域を広くし、ブロード性をあげると共に、立上り時間eと立下り時間eを急峻にしていた。
【0007】
しかし、ダンピング抵抗を用いることは、エネルギーを消費することから電力効率を低下させてしまうという問題があった。
また、ダンピングに用いるダンピング抵抗は、大きな電流が流れるため、許容電力の大きな抵抗を必要とし、そのため形状が大きくなる。または、小型の抵抗を複数個並列にして使用すると、実装面積が必要となる。
本発明は、ダンピング抵抗がなくても高速通信が可能な、効率のよい送信アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の送信アンテナは、コアにコイルが巻線された送信アンテナにおいて、磁性体と導体とを重ね合わせたコアにコイルを巻線したことを特徴とする。
また、導体を2つの磁性体で挟んだコアにコイルを巻線したことを特徴とする。さらにまた、磁性体と導体と基板を重ね合わせたコアにコイルを巻線したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成の本発明によれば、磁性体と導体を重ね合わせたコアに巻線することにより、ダンピング抵抗を用いず、アンテナのQを抑制できることから、高速通信が可能な、効率のよい送信アンテナを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の係る送信アンテナの実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施例)
図1は、本発明に係る第1の実施例である送信アンテナ10の斜視図を示す。この送信アンテナ10は、断面が四角形の平板な磁性材料からなる磁性体2と磁性体2と同じ形状で薄い導体を重ね合わせたコアに、表面を絶縁被覆した絶縁電線を用いてコイル3を巻回したものである。ここで、導体1は金属箔や銅板を用い、コイルとの絶縁を考慮すると導体表面に絶縁コートまたはコア全周を絶縁テープで被覆する等を要する。また、磁性材料はフェライトおよびアモルファス系磁性材料あるいは磁性粉末を圧着したものを用いてもよい。
【0012】
(第2の実施例)
図2は、本発明に係る第2の実施例である送信アンテナ20の斜視図を示す。この送信アンテナ20は、第1の実施例で用いた磁性体をさらに薄くした磁性体2a、2bを用いて、導体1を挟んだコアに、絶縁電線を用いてコイル3を巻回したものである。第2の実施例では、導体1を磁性体2a、2bに隠れる形状にすることにより、巻線3と導体1の絶縁を確保しやすい。また、磁性体2a、2bも第1の実施例よりも薄くすることができ柔軟性を得やすい。
【0013】
(第3の実施例)
図3は、本発明に係る第3の実施例である送信アンテナ30の斜視図を示す。図4は図3の基板の正面図である。
この送信アンテナ30は、第1の実施例で用いたコアの磁性体2と、導体1を基板4に設けて重ね合わせたコアにコイル3を巻回したものである。
【0014】
図4に示すように、基板4は、一般的に形成する銅箔パターンを導体1として用いたもので、その形状は磁性体2と同じである。そして、基板4の長手方向と平行する対向側面に複数の凸部7を設け、その凸部間7−7に絶縁電線を用いてコイル3を巻回している。このコイル3は図の実施例で示すように、3分割したコイルとなり、分割しないコイルと比較し、分割部における磁束の漏れにより、自己インダクタンスの上昇が緩和されてQ値をより抑制できる。
【0015】
また、基板4には、長手方向に延在した部分(4a、4b)を備える。
一方の延在部4aは、両側面にコイル3の端末を引き出す切欠部8a、8bを備えるとともに、端末を電気的に接続するパターン9a、9bを基板の表面に備えている。また、他方の延在部4bは、一方の延在部4aと同様に切欠部8c、8dおよびパターン9d、9cを備え、さらに、基板の延在部4cには、アンテナを構成するための電子部品および配線パターンを備えている。
【0016】
上記の実施例によれば、基板に形成された一般的な銅箔パターンを導体とすることができ、コイルとの絶縁をレジスト等により容易に形成できる。また、接続パターンを備えることにより、外部実装基板への接続が容易となる。さらに、コイル3は複数の凸部7で分割された凸部間に巻回されるので、ボビンの必要がなく、分割されたコイルからの磁束の漏れが多くなり、自己インダクタンスの上昇が緩和されてQ値を抑制することができる。さらに、コイル3は凸部7により巻回位置が拘束できるので、巻回位置がずれ難く、特性のばらつきを小さくできる。なお、凸部の代わりに凹部を設け、複数の凹部にコイルを構成してもよい。
【0017】
(第4の実施例)
また、図5は、図2の第2の実施例と同様に、薄くした磁性体2a、2bを用いて、第3の実施例で用いた図4の基板4を挟んだコアに、絶縁電線を用いてコイル3を巻回したものである。この第4の実施例は、第2、第3の実施例で説明した内容と同じであり、詳細は省略する。
第1〜第4の実施例において、導体の厚みを変えることにより所定のダンピング抵抗を得ることができる。本実施例では導体の厚みを30μmを用いた。本発明者が検討した中では、銅箔厚5μm〜100μm、送信アンテナのQを35以下にしている。
【0018】
以上説明したように、本発明の送信アンテナは、磁性体と導体を重ね合わせたコアにコイルを巻線することにより、磁性体と導体の近接効果によりコイルにおける交流抵抗を大きくしてQ値を抑制することができ、ダンピング抵抗の必要のない送信アンテナが得られる。また、基板を用いることにより、コイルの分割巻きおよび基板パターンを導体として用いることがで、送信アンテナの作成および実装を容易にすることができる。
【0019】
なお、本発明に係る送信アンテナは前記実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
特に、磁性体および導体は薄い平板を複数積層したものを用いてもよい。さらに、積層したものを複数用いてもよい。また、前記銅箔パターンは、表裏どちらか一方の面および両面であってもよく、基板の内層であってもよい。さらに、表裏パターンをスルーホールで接続してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明の第3の実施例における基板の正面図である。
【図5】本発明の第4の実施例を示す斜視図である。
【図6】送信アンテナと駆動回路の回路図である。
【図7】従来の送信アンテナの波形の例を示す図である。
【図8】従来の送信アンテナにおいて、ダンピング抵抗がない場合の波形の例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 導体
2 磁性体
3 コイル
4 基板
4a,4b、4c 基板延在部
7 凸部
8a〜8d 切欠部
9a〜9d パターン
10,20,30,40 送信アンテナ
50 駆動部
51 アンテナ部
52,53 入力端子
54 論理回路
55 出力端子
Q1 p型パワーMOSFET
Q2 n型パワーMOSFET
R ダンピング抵抗
L コイル
C コンデンサ
DD 電源電圧
GND グランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアにコイルを巻線された送信アンテナにおいて、
前記コアは、磁性体と導体を重ね合わせたことを特徴とする送信アンテナ。
【請求項2】
コアにコイルを巻線された送信アンテナにおいて、
前記コアは、導体を2つの磁性体で挟んで重ね合わせたことを特徴とする送信アンテナ。
【請求項3】
コアにコイルを巻線された送信アンテナにおいて、
前記コアは、磁性体と導体と基板とを重ね合わせたことを特徴とする送信アンテナ。
【請求項4】
前記基板は、長手方向に対向する側面に凸部または凹部を複数設け、凸部間または凹部に前記コイルの巻線部を設けたことを特徴とする請求項2記載の送信アンテナ。
【請求項5】
前記導体は、基板に設けた導体パターンであるとこと特徴とする請求項3、4記載の送信アンテナ。
【請求項6】
前記磁性体と導体は、少なくとも1枚以上の薄い平板層を積層したものを用いたことを特徴とする請求項1乃至請求項5記載の送信アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−68275(P2010−68275A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233028(P2008−233028)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)