説明

送信装置及びそれを用いた通信システム

【課題】送信信号について設定すべき特性値が変化した場合であっても、送信装置の回路構成を変更することなく、設定すべき特性値の変化に柔軟に対応することが出来る、送信装置及びそれを用いた通信システムを提供することを目的とする。
【解決手段】特性値情報取得部9は、送信信号SSについて新たに設定すべき、他の特性値を示す特性値情報FD2を取得し、特性値変更設定制御部9は、設定されている特性値を、上記取得された特性値情報FD2が示す他の特性値に変更設定するように、特性値設定部8を制御する。これにより、特性値が他の特性値に変更されるので、送信装置の回路構成を変更することなく、送信信号SSの特性値を容易に変更することが出来、例えば、法律の改正に伴う規制内容の変更や、送信装置の使用地域の変更により、設定すべき特性値が変化した場合であっても、その変化に柔軟に対応することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力データを送信信号として出力する送信装置に係り、特に、送信信号について設定すべき特性値が変化した場合であっても、送信装置の回路構成を変更することなく、設定すべき特性値の変化に柔軟に対応することの出来る、送信装置及びそれを用いた通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(Local Area Network)などの各種の通信方法が使用されており、この他、電力線をネットワーク伝送路として利用することの出来る、電力線搬送通信が提案されている(例えば特許文献1)。このような通信方法では、送信装置から出力される送信信号の物理特性(例えば、周波数帯域、電力レベル)を示す特性値が、各種の法律(例えば「電波法」)で規制されている。その規制内容は、「国」などの地域に応じて異なっており、送信装置は、予め、送信信号の特性値が使用地域に応じた規制内容に適合するように設定されている。
【特許文献1】特開2000−165304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、設定すべき特性値は、常に一定であるわけでなく、法律の改正に伴う規制内容の変更や送信装置の使用地域の変更により変化する場合があった。そのため、例えば設定すべき周波数帯域が変化した場合に、新たに帯域阻止フィルタを追加しなければならないなど、送信装置の回路構成を変更しなければならない場合があるため、規制内容に柔軟に対応することが出来ない不都合があった。
【0004】
特に電力線搬送通信では、例えばアマチュア無線や短波放送の既存通信システムが使用する周波数帯域を利用する可能性があるため、これら既存通信システムとの干渉を回避する必要があり、周波数帯域や許容電界強度といった規制内容について、多様な制限が加えられていた。そのため、このように多様な制限が規制内容に加えられた場合であっても、設定すべき特性値の変化に柔軟に対応することの出来る送信装置が望まれていた。
【0005】
解決しようとする問題点は、送信信号について設定すべき特性値が変化した場合に、送信装置の回路構成を変更する必要が生じるため、設定すべき特性値の変化に柔軟に対応することが出来ない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特性値情報取得部が、送信信号について新たに設定すべき、他の特性値を示す特性値情報を取得し、特性値変更設定制御部が、設定されている特性値を、上記取得された特性値情報が示す他の特性値に変更設定するように、特性値設定部を制御することを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の送信装置では、送信信号について新たに設定すべき特性値の特性値情報を取得することにより、設定されている送信信号の特性値が、新たに設定すべき特性値に変更設定されるので、設定すべき特性値が変化した場合であっても、送信装置の回路構成を変更することなく、送信信号の特性値を容易に変更することが出来る。これにより、例えば、法律の改正に伴い規制内容が変更された場合や、送信装置の使用地域が変更された場合であっても、設定すべき特性値の変化に柔軟に対応することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、入力データ(SD)を送信信号(SS)として出力する送信装置(1)において、
送信信号(SS)の物理特性(例えば周波数帯域)を示す特性値を(例えばΔf1に)設定する特性値設定部(8)と、
特性値設定部(8)により設定された特性値(Δf1)の送信信号(SS)を入力データ(SD)から生成し、生成した送信信号(SS)を出力する送信信号生成出力部(5)と、
他の特性値(例えばΔf2)を示す特性値情報(例えばFD2)を取得する特性値情報取得部(9)と、
特性値設定部(8)により設定された特性値(Δf1)を、特性値情報取得部(9)により取得された特性値情報(FD2)が示す他の特性値(Δf2)に変更設定するように、特性値設定部(8)を制御する特性値変更設定制御部(9)とを有することを特徴とする。
【0009】
この構成により、送信信号について新たに設定すべき特性値の特性値情報を取得することで、設定されている送信信号の特性値が、新たに設定すべき特性値に変更設定されるので、設定すべき特性値が変化した場合であっても、送信装置の回路構成を変更することなく、送信信号の特性値を容易に変更することが出来る。これにより、例えば、法律の改正に伴い規制内容が変更された場合や、送信装置の使用地域が変更された場合であっても、設定すべき特性値の変化に柔軟に対応することが出来る。
【0010】
上記課題を解決するためになされた第2の発明は、特性値設定部(8)は、送信信号(SS)の周波数帯域を(例えばΔf1に)設定し、
送信信号生成出力部(5)は、
特性値設定部(8)により設定された周波数帯域(Δf1)内のサブキャリア(例えばSC2、SC3)を選択するサブキャリア選択部(51)と、
入力データ(SD)から複数のビットデータ(BL)を生成するビットデータ生成部(51)と、
ビットデータ生成部(51)により生成されたビットデータ(BL)をそれぞれデジタル変調(例えばPAM:Pulse Amplitude Modulation)の信号点に写像する信号点写像部(51)とを有し、
サブキャリア選択部(51)により選択されたサブキャリア(SC2、SC3)のみに、信号点写像部(51)により写像された信号点のデータ(PD)をマッピングして送信信号(SS)を生成し、該生成した送信信号(SS)を出力し、
特性値情報取得部(9)は、他の周波数帯域(例えばΔf2)を示す特性値情報(FD2)を取得し、
特性値変更設定制御部(9)は、特性値設定部(8)により設定された周波数帯域(Δf1)を、特性値情報取得部(9)により取得された特性値情報(FD2)が示す他の周波数帯域(Δf2)に変更設定するように、特性値設定部(8)を制御することを特徴とする。
【0011】
この構成により、新たに設定すべき周波数帯域の特性値情報を取得することで、送信信号の周波数帯域が変更設定されるので、帯域阻止フィルタを追加することなく、設定すべき周波数帯域の変化に柔軟に対応することが出来る。これにより、送信装置を複数の地域で使用することが出来るように構成しても、各地域(例えば国)毎にフィルタ係数の異なる帯域阻止フィルタを準備する必要がないので、送信装置における回路規模の増大を防止することが出来る。また、送信装置を高速動作させる場合には、帯域阻止フィルタの追加に伴う消費電力の増大を防止することが出来る。
【0012】
上記課題を解決するためになされた第3の発明は、送信信号生成出力部(5)は、更に、
サブキャリア選択部(51)により選択されたサブキャリア(例えばSC2、SC3)のみにマッピングされた信号点のデータ(PD)をウェーブレット変換して、時間波形系列データ(TD)を生成するウェーブレット逆変換部(52)を有し、
ウェーブレット逆変換部(52)により生成された時間波形系列データ(TD)から送信信号(SS)を生成し、生成した送信信号(SS)を出力することを特徴とする。
【0013】
この構成により、ウェーブレット逆変換を用いたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)変調方式を利用して、送信信号の周波数帯域が変更設定されるので、フーリエ逆変換で複素演算を必要とする演算処理を、実部演算のみで行うことが出来、フーリエ逆変換を用いたOFDM変調方式に比べて演算処理量を削減することが出来る。これにより、送信装置における回路規模を低減することが出来る。
【0014】
上記課題を解決するためになされた第4の発明は、特性値設定部(8)は、送信信号(SS)の電力レベルを設定し、
送信信号生成出力部(5)は、
送信信号(SS)の電力レベルを特性値設定部(8)により設定された電力レベルに制御する電力レベル制御部(54)を有し、
入力データ(SD)から電力レベル制御部(54)により制御された電力レベルの送信信号(SS)を生成し、生成した送信信号(SS)を出力し、
特性値情報取得部(9)は、他の電力レベルを示す特性値情報を取得し、
特性値変更設定制御部(9)は、特性値設定部(8)により設定された電力レベルを、特性値情報取得部(9)により取得された特性値情報が示す他の電力レベルに変更設定するように、特性値設定部(8)を制御することを特徴とする。
【0015】
この構成により、新たに設定すべき電力レベルの特性値情報を取得することで、送信信号の電力レベルが変更設定されるので、設定すべき電力レベルが変化した場合があっても、その変化に柔軟に対応することが出来る。
【0016】
上記課題を解決するためになされた第5の発明は、送信信号生成出力部(5)は、生成された送信信号(SS)を電源ライン(例えば2)を介して出力することを特徴とする。
【0017】
この構成により、電源ラインを介して出力された送信信号について、その特性値を容易に変更することが出来るので、周波数帯域や許容電界強度といった規制内容について、多様な制限が規制内容に加えられた場合であっても、これらの規制内容に柔軟に対応することが出来る。これにより、例えばアマチュア無線や短波放送の既存通信システムが使用する周波数帯域を利用する場合であっても、これらの既存システムとの干渉を確実に回避することが出来る。
【0018】
上記課題を解決するためになされた第6の発明は、特性値情報(例えばFD)を地域(AR)に対応させた特性値情報テーブル(FDT)を格納する送信装置メモリ(10)を有し、
特性値情報取得部(9)は、送信装置の使用地域(例えばAR2)に対応する特性値情報(FD2)を、特性値情報テーブル(FDT)から取得することを特徴とする。
【0019】
この構成により、送信装置の使用地域に対応する特性値情報が特性値情報テーブルから取得されるので、各地域において設定すべき特性値を調べる必要がなくなり、送信装置の
利用者の手間を少なくすることが出来る。
【0020】
上記課題を解決するためになされた第7の発明は、送信装置(1)の使用地域(例えばAR2)を指定する旨の信号を受け付ける信号入力部(11)を有し、
特性値情報取得部(9)は、信号入力部(11)を介して指定された地域(AR2)に対応する特性値情報(FD2)を、特性値情報テーブル(FDT)から取得することを特徴とする。
【0021】
この構成により、送信装置の利用者は、信号入力部を操作することで、特性値情報テーブルから取得される特性値情報の地域を指定することが出来るので、特性値の変更設定に自由度を設けることが出来、利用者の要求に対して柔軟に対応することが出来る。
【0022】
上記課題を解決するためになされた第8の発明は、送信装置(1)の使用地域(例えばAR2)を示す地域情報(例えばIPA)を監視する地域情報監視部(9)を有し、
特性値情報取得部(9)は、地域情報監視部(9)により監視されている送信装置の地域情報(IPA)が(例えばIPA2)更新された場合に、その地域情報(IPA2)の地域(例えばAR2)に対応する特性値情報(FD2)を、特性値情報テーブル(FDT)から取得することを特徴とする。
【0023】
この構成により、送信信号の使用地域を示す地域情報(例えばIPアドレス)が更新された場合に、送信信号の特性値が変更設定されるので、送信装置の利用者に手間を掛けることなく、特性値を自動的に変更設定することが出来る。
【0024】
上記課題を解決するためになされた第9の発明は、ネットワーク(21)に接続自在な、請求項1ないし5いずれか1記載の送信装置(1)とサーバ(30)とを備えた通信システム(20)において、
サーバ(30)は、
特性値情報(例えばFD)を地域(AR)に対応させた特性値情報テーブル(FDT)を格納するサーバメモリ(32)と、
送信装置(1)の使用地域(例えばAR2)に対応する特性値情報(FD2)を特性値情報テーブル(FDT)から読み出し、読み出した特性値情報(FD2)を、送信装置(1)の特性値情報取得部(9)に送信する、特性値情報送信部(33)とを有することを特徴とする。
【0025】
この構成により、サーバが、特性値情報テーブルを格納すると共に、送信装置の使用地域に対応する特性値情報を送信装置に送信するので、サーバ側で地域毎の特性値情報を管理することが出来る。これにより、例えば各地域における最新の特性値情報を準備することで、法律の改正に伴い規制内容が変更された場合であっても、適切な特性値に変更設定を行うことが出来る。
【0026】
上記課題を解決するためになされた第10の発明は、送信装置(1)は、ゲートウェイ(22)を介してネットワーク(21)に接続自在であって、
サーバ(30)は、ゲートウェイ(22)に設定されている地域情報(例えばIPA)を監視するゲートウェイ地域情報監視部(34)を有し、
サーバ(30)の特性値情報送信部(33)は、ゲートウェイ地域情報監視部(34)により監視されているゲートウェイ(22)の地域情報(IPA)が(例えばIPA2に)更新された場合に、その地域情報(IPA2)の地域(AR2)に対応した特性値情報(FD2)を、送信装置(1)の使用地域に対応する特性値情報として特性値テーブル(FDT)から読み出し、読み出した特性値情報(FD2)を、送信装置(1)の特性値情報取得部(9)に送信することを特徴とする。
【0027】
この構成により、ゲートウェイに設定されている地域情報を用いて、送信信号の特性値が変更設定されるので、必ずしも、送信装置の使用地域を示す地域情報を、送信装置に対して監視する必要がなくなり、監視対象の自由度を広げることが出来る。
【0028】
なお、括弧内の番号などは、本発明の理解を助けるために、図面における対応する要素を便宜的に示すものである。従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではなく、本発明をこの符号の記載により解釈すべきではない。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図1ないし図9を沿って説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、通信装置の一例を示すブロック図である。本発明が適用される通信装置は、同図の破線で示すように、例えばPLC(Power Line Communication:電力線搬送通信)アダプタ1である。PLCアダプタ1は、電力線2と電気機器3とを中継している。電力線2は、商用電源(例えばAC100V)を伝送する平行ケーブルであり、電気機器3は、例えば家電機器である。電力線2には、電気機器3の他、複数の電気機器(不図示)が、それぞれPLCアダプタ(不図示)を介して接続されている。即ち、PLCアダプタが接続されたこれら電気機器は、電力線2を介して、電力線搬送通信による家庭内通信網を構成している。なお、電力線搬送通信に用いられる電力線2は、必ずしも商用電源の電力線である必要はなく、例えばAC100Vが変圧されたDC電源の電力線であってもよい。
【0031】
PLCアダプタ1は、送信部5、受信部6、電力線結合部7、制御部8、コントローラ9、設定情報部10、及び設定スイッチ11を有している。送信部5は、図1上方の破線枠内に示すように、信号点写像器51、ウェーブレット逆変換器52、D/A変換器53、送信用増幅器54、及び帯域通過フィルタ55を有している。受信部6は、図1下方の破線枠内に示すように、帯域通過フィルタ61、増幅度制御器62、A/D変換器63、ウェーブレット変換器64、及びシンボル判定器65を有している。なお、図1では、電力線結合部7から電気機器3への商用電源の伝送路は省略している。
【0032】
以上の構成において、PLCアダプタ1による通信動作を説明する。
【0033】
PLCアダプタ1の設定情報部10には予め、図2に示す周波数帯域テーブルFDTが格納されている。図2は、周波数帯域テーブルFDTの内容の一例を示す図を示している。周波数帯域テーブルFDTは、地域ARにそれぞれ対応する周波数帯域データFDを格納している。周波数帯域データFDは、周波数帯域Δf(例えば0.1〜0.2krad/s[=0.1π〜0.2πkHz])を示している。
【0034】
具体的には、周波数帯域データFD1、FD2、FD3、・・・は、それぞれ周波数帯域Δf1、Δf2、Δf3、・・・を示しており、周波数帯域Δf1、Δf2、Δf3、・・・は、それぞれ地域AR1、AR2、AR3、・・・に対応している。また地域ARは、例えば「国」を示しており、即ち、周波数帯域テーブルFDTは、各国の法規制により電力線搬送通信で使用可能な周波数帯域を示している。なお、地域ARは必ずしも「国」である必要はなく、使用可能な周波数帯域が異なる領域であれば、例えば米国の「州」でもよい。
【0035】
また設定情報部10には、PLCアダプタ1を使用する地域(以下単に「使用地域」と称す。)を示す使用地域データARDが格納されている。ここでは、PLCアダプタ1が例えば地域AR1で使用されており、デフォルトとして、地域AR1を示す使用地域デー
タARDが格納されているものとする。
【0036】
通信動作にあたり(例えばPLCアダプタ1の起動時に)、制御部8は、設定情報部10に格納されている使用地域データARDを読み出し、その使用地域データARDが示す地域AR1に対応した周波数帯域データFDを、設定情報部10から取得する。地域AR1に対応した周波数帯域データFDは、図2に示すようにFD1なので、制御部8は、図1に示すように、設定情報部10から周波数帯域データFD1を取得する。取得した周波数帯域データFD1は、同図に示すように周波数帯域Δf1を示すので、制御部8は、後述する複数のサブキャリアSCから、周波数帯域Δf1に対応するサブキャリアSCを選択するように、送信部5の信号点写像器51に対して指令する。即ち、周波数帯域ΔfがΔf1に設定される。
【0037】
次いで、PLCアダプタ1は、設定された周波数帯域Δf1に基づいて、通信動作を行う。以下、PLCアダプタ1の通信動作を、図1及び図3に沿って説明する。図3は、送信動作の一例を示す説明図で、(a)は送信データSDの流れを示す図、(b)はウェーブレット逆変換器52の一例を示すブロック図、(c)はサブキャリアSCの一例を示す図である。
【0038】
送信動作を行う場合、電気機器3が、図1に示すように、送信データSDをPLCアダプタ1に出力する。送信データSDは、図3(a)上方に示すように、例えば「0001111010110100」で示される。送信データSDは、PLCアダプタ1に入力されると、PLCアダプタ1のコントローラ9を介して、送信部5の信号点写像器51に入力される。
【0039】
信号点写像器51は、入力された送信データSDから、適当な長さのビット列BLを複数生成する。例えば、送信データSD「0001111010110100」を、図3(a)上方に示すように、「00」、「01」、「11」、「10」、「10」、「11」、「01」、「00」の2ビットずつに分割して、ビット列BLを生成する。そして、生成したビット列BLをそれぞれPAM(Pulse Amplitude Modulation)の信号点に写像して、信号点データPDを生成する。
【0040】
PAMでは、図3(a)右方に示すように「11」、「10」、「00」、「01」の各ビット列BLが、それぞれ「−3」、「−1」、「+1」、「+3」の信号点に対応するので、信号点写像器51は、生成されたビット列BL「00」、「01」、「11」、「10」、「10」、「11」、「01」、「00」を、「+1」、「+3」、「−3」、「−1」、「−1」、「−3」、「+3」、「+1」の信号点に写像して、信号点データPDに生成する。信号点データPDを生成すると、信号点写像器51は、生成された信号点データPDをウェーブレット逆変換器52に入力する。なお、デジタル変調は、特にPAMに限る必要はなく、例えばBPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)でもよい。
【0041】
ウェーブレット逆変換器52は、図3(b)に示すように、入力器52A及び逆変換処理器52Bからなる。入力器52Aは、サブキャリアSCの数と同数の入力器52A1、52A2、・・・で構成されている。なお、ウェーブレット変換過程において、サブキャリアSCの数は、2のべき乗の範囲で自由に設定することが出来るが、実施の形態1では、説明を簡単にするため、周波数帯域Δfを4分割するウェーブレットを使用して、図3(c)に示すように、サブキャリアSCの数を4本(SC1、SC2、SC3、SC4)として説明する。即ち、ウェーブレット逆変換器52の入力器52Aは、図3(b)に示
すように、サブキャリアSC1、SC2、SC3、SC4にそれぞれ対応する、4つの入力器52A1、52A2、52A3、52A4で構成されている。
【0042】
なお、フィルタ長はサブキャリアSCの数の整数倍であればよく、サブキャリアSCの数と同様に、この範囲で自由に設定することが出来るが、サブキャリアSCの数の2倍のフィルタ長を有し、2つの信号点データPDを用いて変換を行うものとする。
【0043】
生成された信号点データPDは、これら4つの入力器52A1、52A2、52A3、52A4に入力される。具体的に説明すると、例えば、図3(a)のテーブルT1に示すように、サブキャリアSC1、SC2、SC3、SC4にそれぞれ、信号点データPDの前段である(図3(a)左方の)「+1」、「+3」、「−3」、「−1」を割り当て、更に後段である(図3(a)右方の)「−1」、「−3」、「+3」、「+1」を割り当てたとする。従って、信号点写像器51は、図3(b)に示すように、信号点データPD「+1」、「−1」を入力部52A1に、信号点データPD「+3」、「−3」を入力部52A2に、信号点データPD「−3」、「+3」を入力部52A3に、信号点データPD「−1」、「+1」を入力部52A4に入力する。即ち、各信号点データPDがサブキャリアSC1、SC2、SC3、SC4にマッピングされることになる。
【0044】
入力器52Aは、入力された各信号点データPDを逆変換処理器52Bに出力し、逆変換処理器52Bは、サブキャリアSC1、SC2、SC3、SC4にマッピングされた各信号点データPDをウェーブレット逆変換して、1シンボル期間における時間軸上の送信波形の時間サンプル値を生成し、図3(a)下方に示す時間波形系列データTD「0.7034」、「0.6356」、「0.9474」、「2.5523」、・・・を出力する。D/A変換器53は、これら時間波形系列データTDをアナログ化し、一定のサンプリング時間でアナログ信号として出力する。
【0045】
送信用増幅器54は、出力された送信波形を送信信号レベルまで増幅し、帯域通過フィルタ55は、不要な周波数成分を除去して、図1に示すように送信信号SSとして出力する。電力線結合部7は、帯域通過フィルタ55によって波形整形された送信信号SSを、電力線2に出力する。
【0046】
一方、受信動作を行う場合、例えば他の電気機器(不図示)が、受信信号RSを電力線2を介して電気機器3に送信したとすると、電力線結合部7は、電力線2から受信信号RSを抽出し、図1に示すように受信部6に出力する。受信部6の帯域通過フィルタ61は、入出された送信信号RSから帯域外の雑音信号を除去する。増幅度制御器62は、変換ゲインが設定されており、その変換ゲインに基づいて、A/D変換器63のダイナミックレンジ内に収まるように、受信信号RSの信号レベルを調整する。A/D変換器63は、信号レベルが調整された受信信号RSの信号波形を、送信側のサンプリング・タイミングと同タイミングでサンプリングしてデジタル化する。
【0047】
ウェーブレット変換器64は、デジタル化された受信信号RSの波形データをウェーブレット変換し、サブキャリアSC1、SC2、SC3、SC4の信号点データPDを得る。シンボル判定器65は、これら信号点データPDを逆写像し、最も近いと思われるビット列BLに復元し、受信データRDを得る。そして、図1に示すように、その受信データRDを電気機器3に出力して、PLCアダプタ1による通信動作が行われていく。なお、PLCアダプタ1は、必ずしも受信動作を行う必要はなく、単に送信装置であってもよい。
【0048】
次いで、周波数帯域Δfの変更設定処理について、図1、図2、図4、及び図5に沿って説明する。図4は、サブキャリアSCを選択する制御の一例を示す説明図、図5は、周
波数帯域Δfを変更設定した場合における周波数スペクトルの一例を示す図である。
【0049】
ここで、PLCアダプタ1が、例えば地域AR1から地域AR2に移動されて、その使用地域がAR1からAR2に変更されると共に、図1で示した電力線搬送通信による家庭内通信網が、地域AR2において再び構成されたとする。またPLCアダプタ1には、既に述べたように設定スイッチ11が設けられており、PLCアダプタ1の利用者は、設定スイッチ11を操作することで、PLCアダプタ1の使用地域が指定出来るようになっている。
【0050】
即ち、PLCアダプタ1の利用者が、設定スイッチ11を介して、使用地域である地域AR2を指定する旨の信号をPLCアダプタ1に入力すると、コントローラ9は、設定情報部10に格納されている使用地域データARDを、地域AR1から、入力された信号が示す地域AR2に更新格納する。
【0051】
使用地域データARDが地域AR2に更新格納されると、制御部8は、設定情報部10に格納されている使用地域データARDを読み出し、その使用地域データARDが示す地域AR2に対応した周波数帯域データFDを、設定情報部10から取得する。地域AR2に対応した周波数帯域データFDは、図2に示すようにFD2なので、制御部8は、図1に示すように、設定情報部10から周波数帯域データFD2を取得する。取得した周波数帯域データFD2は、同図に示すように周波数帯域Δf2を示すので、制御部8は、4本のサブキャリアSC1、SC2、SC3、SC4から、周波数帯域Δf2に対応するサブキャリアSCを選択するように、送信部5の信号点写像器51に対して指令する。ここでは、周波数帯域Δf2に対応するサブキャリアがSC2、SC3とする。即ち、サブキャリアSC2、SC3が選択されることになる。
【0052】
具体的に、信号点データPD「+1」、「+3」、「−3」、「−1」、・・・が生成された場合について、図4に沿って説明する。信号点写像器51が、信号点データPDを「+1」、「+3」、「−3」、「−1」、・・・の順で出力すると、制御部8は、図4に示すように、信号点写像器51に対して、選択されなかったサブキャリアSC1、SC4に対応する入力器52A1、52A4に信号点データPDを入力しないように、ゼロを入力する。従って、信号点写像器51は、図4に示すように、信号点データPD「+1」、「−3」、・・・を入力部52A2に、信号点データPD「+3」、「−1」、・・・を入力部52A3に入力することになる。即ち、信号点データPDが、選択されたサブキャリアSC2、SC3のみにマッピングされる。
【0053】
なお、図4では、入力される信号点データPDのうち、入力部52A2に入力された信号点データPD「+1」、「−3」、入力部52A3に入力された信号点データPD「+3」、「−1」のみを示している。また、信号点データPDを、複数のサブキャリアSCに順番に割り当てることで、高速な通信を可能にすることが出来るが、同じ信号点データPDを同時に異なる複数のサブキャリアSCに割り当てて送信することも可能である。こうすることにより、より信頼性の高いデータ通信を可能にすることが出来る。
【0054】
逆変換処理器52Bは、サブキャリアSC2、SC3のみにマッピングされた各信号点データPDを、ウェーブレット逆変換して、送信部5は、上述と同様の処理を行った送信信号SSを電力線2に出力する。このように、サブキャリアSCとして、Δf2に対応するSC2、SC3が選択されたので、出力された送信信号SSの周波数帯域Δfは、Δf1からΔf2に変更設定されることになる。
【0055】
こうして、周波数帯域ΔfがΔf2に変更設定されると、送信信号SSの周波数スペクトルは、地域AR2で使用可能な周波数スペクトルの範囲内に制御される。具体的に説明
すると、例えば、地域AR2で使用可能な周波数スペクトルSPAR(破線)が、図5に示すように、例えば0.02〜0.35krad/sにおいて、規制領域LA1、LA2を有する場合、送信信号SSの周波数スペクトルSPSS(実線)では、上記周波数スペクトルSPARの範囲内に、出力パワーが制御されることになる。なお、説明を簡単にするために、サブキャリアSCの数を4本として説明したので、サブキャリアSC2、SC3と、図5に示す周波数スペクトルSPSSとは、一致していない。
【0056】
このように、PLCアダプタ1の使用地域が地域AR2から他の地域AR(例えばAR3)に変更されても、上述と同様に、周波数帯域Δfの変更設定処理が行われ、送信信号SSの周波数スペクトルSPSSは、それぞれの地域ARで使用可能な周波数スペクトルSPARの範囲内に制御されることになる。
【0057】
以上のように、実施の形態1における本発明では、周波数帯域データFDを取得することにより、設定されている送信信号SSの周波数帯域Δfが、新たに設定すべき周波数帯域Δfに変更設定されるので、設定すべき周波数帯域Δfが変化した場合であっても、帯域阻止フィルタを追加することなく、つまり通信装置の回路構成を変更することなく、送信信号SSの周波数帯域Δfを容易に変更することが出来る。これにより、例えば、法律の改正に伴い規制内容が変更された場合や、通信装置の使用地域が変更された場合であっても、設定すべき周波数帯域Δfの変化に柔軟に対応することが出来る。
【0058】
また、帯域阻止フィルタを追加することなく、設定すべき周波数帯域Δfの変化に柔軟に対応することが出来るので、通信装置を複数の地域ARで使用することが出来るように構成しても、各地域AR(例えば国)毎にフィルタ係数の異なる帯域阻止フィルタを準備する必要がなくなり、通信装置における回路規模の増大を防止することが出来る。また、通信装置を高速動作させる場合には、帯域阻止フィルタの追加に伴う消費電力の増大を防止することが出来る。
【0059】
また、電力線2を介して出力された送信信号SSについて、その周波数帯域Δfを容易に変更することが出来るので、周波数帯域や許容電界強度といった規制内容について、多様な制限が規制内容に加えられた場合であっても、これらの規制内容に柔軟に対応することが出来る。これにより、例えばアマチュア無線や短波放送の既存通信システムが使用する周波数帯域を利用する場合であっても、これら既存システムとの干渉を確実に回避することが出来る。
【0060】
また、ウェーブレット逆変換を用いたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)変調方式を利用して、送信信号SSの周波数帯域Δfが変更設定されるので、フーリエ逆変換で複素演算を必要とする演算処理を、実部演算のみで行うことが出来、フーリエ逆変換を用いたOFDM変調方式に比べて演算処理量を削減することが出来る。これにより、通信装置における回路規模を低減することが出来る。
【0061】
なお、時間領域及び周波数領域間の変換方式は、ウェーブレット変換方式に限る必要はなく、例えばフーリエ変換方式を用いることも可能である。また、変調方式として、OFDM変調方式を示したが、特にこれに限る必要はなく、例えばスペクトル拡散変調方式であってもよい。
【0062】
なお、上述した実施の形態1において、周波数帯域Δfを変更する場合について説明したが、送信信号SSについての物理特性を示す特性値を変更するものであれば、これに限られず、例えば送信信号SSの電力レベルを変更してもよい。この場合、図2に示す周波数帯域テーブルFDTに、周波数帯域Δfと共に、電力レベルを示すデータを格納してお
き、使用地域データARDが更新格納された際に、制御部8が、使用地域データARDに対応する電力レベルを示すデータを取得して、送信信号SSの電力レベルをその電力レベルに変更するように、送信部5の送信用増幅器54に対して指令する。指令を受けて送信用増幅器54は、出力された送信波形を変更された電力レベルに制御する。
【0063】
例えば、使用可能な周波数スペクトルが、図6に示すようにSPAR(破線)からSPAR’(一点鎖線)に変更されたとする。周波数スペクトルSPAR’は、SPARに新たな規制領域LA3が設けられると共に、SPARの全体における出力パワーを10dB低下させたものである。このように、使用可能な特性値として、周波数スペクトルだけでなく、出力パワーが変更された場合であっても、上述したように、周波数帯域Δfと共に、電力レベルが変更されるので、送信信号SSの周波数スペクトルSPSS(実線)は、図6に示すように周波数スペクトルSPAR’の範囲内に制御されることになる。
【0064】
なお、上述した実施の形態1において、図2に示す周波数帯域テーブルFDTに基づいて周波数帯域Δfを変更する場合について説明したが、必ずしも周波数帯域テーブルFDTを予め格納しておく必要はない。例えばPLCアダプタ1の利用者が、PLCアダプタ1に設けられた入力手段(例えばテンキー)から周波数帯域データFDを入力することも可能である。この場合、特に設定スイッチ11は必要ない。また、上記入力手段は必ずしもPLCアダプタ1に設けられていなくてもよく、例えば電気機器3に設けられた入力手段(例えばキーボード)から入力してもよい。
【0065】
なお、上述した実施の形態1において、通信装置の一例としてPLCアダプタを示したが、送信機能を有する装置であれば、いずれの構成態様であってもよい。例えば、送信機能を有する半導体素子であってもよく、あるいは送信機能を有する電気機器(パソコン、プリンタ、コピー機、電話、ファクシミリなど)であってもよい。このような電気機器には、送信機能を有する家電機器(テレビ、DVD[Digital Versatile
Disk]レコーダなどの、いわゆるネット家電)も含まれる。このように多様な構成態様を利用することで、使い勝手のいい商品を提供することが可能となる。
【0066】
(実施の形態2)
次いで通信システムについて説明する。図7は、通信システム20の一例を示すブロック図である。通信システム20は、図7に示すように、インターネット接続網などのネットワーク21に接続された、サーバ30及びホームゲートウェイ22と、ホームゲートウェイ22に接続された通信装置1とを有している。なお、通信装置1の構成は、図1に示すPLCアダプタ1と同一の構成であり、その説明は省略する。また、図1では、電力線2及び電気機器3を省略している。
【0067】
図8は、サーバ30の一例を示すブロック図である。サーバ30は、図8の破線枠内に示すように主制御部31を有しており、主制御部31は、バス線35を介して設定情報部32、周波数帯域データ送信部33、及びIPアドレス監視部34に接続されている。周波数帯域データ送信部33は、ネットワーク21に接続されている。実施の形態2では、実施の形態1と異なり、図2に示す周波数帯域テーブルFDTが、PLCアダプタ1の設定情報部10に格納されておらず、サーバ30の設定情報部32に格納されている。
【0068】
以上の構成において、通信システム20による周波数帯域Δfの変更設定処理について、図1、図2、図7及び図8に沿って説明する。
【0069】
通信装置1は、実施の形態1と同様に地域AR1で使用されており、通信装置1に接続された電気機器3(例えばパソコン)のIPアドレスIPAとして、「IPA1」が設定されているとする。IPアドレスIPAは、例えばIPv4(Internet Pro
tocol Version 4)で規定されたアドレスである。このようなIPアドレスIPAは、32ビットの数列からなるので、全ての数列の組み合わせが約43億個が存在し、特定の範囲のIPアドレスが、IANA(Internet Assigned Numbers Authority)などの機関により、国などの地域AR毎に(例えば、「194.0.0.0」〜「195.255.255.255」のIPアドレスが、北米に)割り当てられている。
【0070】
ここで、実施の形態1と同様に、通信装置1が、地域AR1から地域AR2に移動されて、図1で示した電力線搬送通信による家庭内通信網が、地域AR2において再び構成されたとする。この場合、電気機器3は、地域AR2に移動されたので、図示しないDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバが、地域AR2に割り当てられているIPアドレスIPAの中から、「IPA1」と異なる「IPA2」を電気機器3に変更設定したとする。
【0071】
サーバ30のIPアドレス監視部34は、電気機器3に設定されたIPアドレスIPAを監視しており、そのIPアドレスIPAが変更設定された場合に、ネットワーク21を介して、電気機器3のIPアドレスIPAを参照し、通信装置1の使用地域を読み出すように設定されている。また、サーバ30には、各地域AR1、AR2、AR3、・・・に対応するIPアドレスIPAの範囲を示すアドレステーブル(不図示)が格納されている。
【0072】
即ち、電気機器3のIPアドレスIPAは、上述したようにIPA2に変更設定されたので、IPアドレス監視部34は、サーバ30に格納されているアドレステーブルを参照し、IPアドレスIPA2を含むIPアドレスの範囲に対応した地域ARとして(つまり使用地域として)、AR2を読み出す。地域AR2を読み出すと、その地域AR2に対応する周波数帯域データFDを、設定情報部32に格納されている周波数帯域テーブルFDT(図2参照)から読み出す。地域AR2に対応する周波数帯域データFDはFD2であり、周波数帯域データ送信部33は、図7に示すように、読み出し周波数帯域データFD2を、ネットワーク21及びホームゲートウェイ22を経由して、通信装置1のコントローラ9に送信する。
【0073】
図1に示すコントローラ9は、送信された周波数帯域データFD2を通信装置1の設定情報部10に格納する。周波数帯域データFD2が格納されると、制御部8は、設定情報部10から周波数帯域データFD2を取得する。取得した周波数帯域データFD2は周波数帯域Δf2を示すので、制御部8は、実施の形態1と同様に、例えば4本のサブキャリアSC1、SC2、SC3、SC4から、周波数帯域Δf2に対応するサブキャリアSC2、SC3を選択するように、送信部5の信号点写像器51に対して指令し、これにより、送信信号SSの周波数帯域Δfは、実施の形態1と同様に、Δf1からΔf2に変更設定されることになる。なお、通信動作は実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
【0074】
以上のように、実施の形態2における本発明では、サーバ30が、通信装置1の使用地域を示すIPアドレスIPAが更新された場合に、送信信号SSの周波数帯域Δfが変更設定されるので、実施の形態1と異なり、通信装置1の利用者に手間を掛けることなく、周波数帯域Δfを自動的に変更設定することが出来る。
【0075】
また、サーバ30は、周波数帯域テーブルFDTを格納すると共に、通信装置1の使用地域に対応する周波数帯域データFDを通信装置1に送信するので、サーバ30側で地域AR毎の周波数帯域Δfを管理することが出来る。これにより、例えば各地域ARにおける最新の周波数帯域Δfを準備することで、法律の改正に伴い規制内容が変更された場合
であっても、適切な周波数帯域Δfに変更設定を行うことが出来る。
【0076】
なお、上述した実施の形態2において、通信装置1の使用地域を示す地域情報の一例として、IPアドレスIPAを示したが、必ずしもIPアドレスIPAに限る必要はない。また、IPアドレスは、特にIPv4で規定されたアドレスに限る必要はなく、例えばIPv6(Internet Protocol Version 6)で規定されたアドレスであってもよい。
【0077】
なお、上述した実施の形態2において、サーバ30が電気機器3のIPアドレスIPAを監視する場合について説明したが、これに限られず、例えば通信装置1が、電気機器3のIPアドレスIPAを監視するようにしてもよい。この場合、周波数帯域テーブルFDT及びアドレステーブルを通信装置1に格納しておけば、特にサーバ30は必要ない。更にサーバ30が、電気機器3のIPアドレスIPAを直接監視することなく、通信装置1の使用地域に対応したIPアドレスIPAが設定される、他の通信装置(例えばゲートウェイ)のIPアドレスIPAを監視して、電気機器3のIPアドレスIPAを監視することも可能である。
【0078】
図9は、ゲートウェイのIPアドレスを監視する場合における通信システム20の一例を示すブロック図である。通信システム20は、図7で示した通信システム20と異なり、ホームゲートウェイ22がゲートウェイ23を介して、ネットワーク21に接続されており、サーバ30のIPアドレス監視部34は、ゲートウェイ23に設定されているIPアドレスIPAを監視している。
【0079】
この際、通信装置1が、実施の形態2と同様に、地域AR1から地域AR2に移動されて、図1で示した電力線搬送通信による家庭内通信網が、地域AR2において再び構成された場合に、通信装置1をネットワーク21に中継するゲートウェイが、ゲートウェイ23になったとする。ゲートウェイ23は地域AR2に属するので、ゲートウェイのIPアドレスIPAは、電気機器3のIPアドレスIPAと同様に、IPA1からIPA2に変更設定されることになる。
【0080】
サーバ30のIPアドレス監視部34は、ネットワーク21を介して、ゲートウェイ23に設定されたIPアドレスIPA2を参照し、上述と同様に、通信装置1の使用地域として地域AR2を読み出す。従って、上述と同様、周波数帯域データFD2を取得し、サーバ30の周波数帯域データ送信部33が、取得した周波数帯域データFD2を、ネットワーク21、ゲートウェイ23及びホームゲートウェイ22を経由して、通信装置1のコントローラ9に送信する。これにより、送信信号SSの周波数帯域Δfは、上述と同様にΔf1からΔf2に変更設定されることになる。こうすることにより、通信装置1の使用地域を示す地域情報を、通信装置1に対して監視する必要がなくなり、監視対象の自由度を広げることが出来る。
【0081】
なお、上述した実施の形態2において、周波数帯域Δfを変更する場合について説明したが、送信信号SSについての物理特性を示す特性値を変更するものであれば、実施の形態1と同様にこれに限られない。また、通信装置の一例としてPLCアダプタを示したが、送信機能を有する装置であれば、実施の形態1と同様にいずれの構成態様であってもよい。
【0082】
なお、上述した実施の形態2において、通信システム20の一例として、図7及び図9の構成を示したが、特にこれに限る必要ない。また、ネットワークは、通信装置1が接続自在であれば、特にインターネット接続網に限る必要はなく、例えば、ISDN(Integrated Services Digital Network)などの統合デジ
タル通信網、国際公衆網、ケーブルモデム網、DSL(Digital Subscriber Line)モデム網、FTTH(Fiber to the Home)、または企業内で独自に構築したイントラネット網であってもよい。更に、インターネット接続網は、OSI(Open Systems Interconnection)におけるIP(Internet Protocol)層を提供出来るものであれば、開放型広域ネットワークでも、企業内で独自に構築したイントラネット網でもかまわない。また、物理層、データリンク層、及びネットワーク層に特別の限定も必要ない。
【0083】
また、通信システム20における、通信装置1及びネットワーク21間の接続手段は、少なくとも、電力線、銅線、ツイスト線、同軸ケーブル、無線、Ethernet(登録商標)、電話線などの、少なくとも1つ以上の手段によって接続するものであれば、いずれの接続手段であってもよく、インターフェースの物理層の種類及びその数を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、入力データを送信信号として出力する送信装置、送信方法、及び通信システムに適用することが出来、例えば、法律の改正に伴い規制内容が変更された場合や、送信装置の使用地域が変更された場合であっても、送信装置の回路構成を変更することなく、設定すべき特性値の変化に柔軟に対応することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】通信装置の一例を示すブロック図
【図2】周波数帯域テーブルの内容の一例を示す図
【図3】送信動作の一例を示す説明図で、(a)送信データの流れを示す図、(b)ウェーブレット逆変換器の一例を示すブロック図、(c)サブキャリアの一例を示す図
【図4】サブキャリアを選択する制御の一例を示す説明図
【図5】周波数帯域を変更設定した場合における周波数スペクトルの一例を示す図
【図6】周波数帯域及び出力パワーを変更設定した場合における周波数スペクトルの一例を示す図
【図7】通信システムの一例を示すブロック図
【図8】サーバの一例を示すブロック図
【図9】ゲートウェイを接続した場合における通信システムの一例を示すブロック図
【符号の説明】
【0086】
1 PLCアダプタ、通信装置(送信装置)
2 電力線
5 送信部(送信信号生成出力部)
8 制御部(特性値設定部)
9 コントローラ(特性値情報取得部、特性値変更設定制御部、地域情報監視部)
10 PLCアダプタの設定情報部(送信装置メモリ)
11 設定スイッチ(信号入力部)
20 通信システム
21 ネットワーク
22 ゲートウェイ
30 サーバ
32 サーバの設定情報部(サーバメモリ)
33 周波数帯域データ送信部(特性値情報送信部)
34 IPアドレス監視部(ゲートウェイ地域情報監視部)
51 信号点写像器(サブキャリア選択部、ビットデータ生成部、信号点写像部)
52 ウェーブレット逆変換器(ウェーブレット逆変換部)
54 送信用増幅器(電力レベル制御部)
AR 地域
BL ビット列(ビットデータ)
FD2 周波数帯域データ(特性値情報)
FDT 周波数帯域テーブル(特性値情報テーブル)
IPA IPアドレス(地域情報)
PD 信号点データ(信号点のデータ)
SC2、SC3 サブキャリア
SD 送信データ(入力データ)
SS 送信信号
TD 時間波形系列データ
Δf1 特性値、周波数帯域
Δf2 他の特性値、他の周波数帯域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データを送信信号として出力する送信装置において、
前記送信信号の物理特性を示す特性値を設定する特性値設定部と、
前記特性値設定部により設定された特性値の送信信号を前記入力データから生成し、該生成した送信信号を出力する送信信号生成出力部と、
他の特性値を示す特性値情報を取得する特性値情報取得部と、
前記特性値設定部により設定された特性値を、前記特性値情報取得部により取得された特性値情報が示す他の特性値に変更設定するように、前記特性値設定部を制御する特性値変更設定制御部とを有する、
ことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記特性値設定部は、前記送信信号の周波数帯域を設定し、
前記送信信号生成出力部は、
前記特性値設定部により設定された周波数帯域内のサブキャリアを選択するサブキャリア選択部と、
前記入力データから複数のビットデータを生成するビットデータ生成部と、
前記ビットデータ生成部により生成されたビットデータをそれぞれデジタル変調の信号点に写像する信号点写像部とを有し、
前記サブキャリア選択部により選択されたサブキャリアのみに、前記信号点写像部により写像された信号点のデータをマッピングして前記送信信号を生成し、該生成した送信信号を出力し、
前記特性値情報取得部は、他の周波数帯域を示す特性値情報を取得し、
前記特性値変更設定制御部は、前記特性値設定部により設定された周波数帯域を、前記特性値情報取得部により取得された特性値情報が示す他の周波数帯域に変更設定するように、前記特性値設定部を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項3】
前記送信信号生成出力部は、更に、
前記サブキャリア選択部により選択されたサブキャリアのみにマッピングされた信号点のデータをウェーブレット変換して、時間波形系列データを生成するウェーブレット逆変換部を有し、
前記ウェーブレット逆変換部により生成された時間波形系列データから前記送信信号を生成し、該生成した送信信号を出力する、
ことを特徴とする請求項2記載の送信装置。
【請求項4】
前記特性値設定部は、前記送信信号の電力レベルを設定し、
前記送信信号生成出力部は、
前記送信信号の電力レベルを前記特性値設定部により設定された電力レベルに制御する電力レベル制御部を有し、
前記入力データから前記電力レベル制御部により制御された電力レベルの送信信号を生成し、該生成した送信信号を出力し、
前記特性値情報取得部は、他の電力レベルを示す特性値情報を取得し、
前記特性値変更設定制御部は、前記特性値設定部により設定された電力レベルを、前記特性値情報取得部により取得された特性値情報が示す他の電力レベルに変更設定するように、前記特性値設定部を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項5】
前記送信信号生成出力部は、前記生成された送信信号を電源ラインを介して出力する、
ことを特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項6】
前記特性値情報を地域に対応させた特性値情報テーブルを格納する送信装置メモリを有し、
前記特性値情報取得部は、前記送信装置の使用地域に対応する特性値情報を、前記特性値情報テーブルから取得する、
ことを特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項7】
前記送信装置の使用地域を指定する旨の信号を受け付ける信号入力部を有し、
前記特性値情報取得部は、前記信号入力部を介して指定された地域に対応する特性値情報を、前記特性値情報テーブルから取得する、
ことを特徴とする請求項6記載の送信装置。
【請求項8】
前記送信装置の使用地域を示す地域情報を監視する地域情報監視部を有し、
前記特性値情報取得部は、前記地域情報監視部により監視されている前記送信装置の地域情報が更新された場合に、その地域情報の地域に対応する特性値情報を、前記特性値情報テーブルから取得する、
ことを特徴とする請求項6記載の送信装置。
【請求項9】
ネットワークに接続自在な、請求項1記載の送信装置とサーバとを備えた通信システムにおいて、
前記サーバは、
前記特性値情報を地域に対応させた特性値情報テーブルを格納するサーバメモリと、
前記送信装置の使用地域に対応する特性値情報を前記特性値テーブルから読み出し、該読み出した特性値情報を、前記送信装置の特性値情報取得部に送信する、特性値情報送信部とを有する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項10】
前記送信装置は、ゲートウェイを介して前記ネットワークに接続自在であって、
前記サーバは、前記ゲートウェイに設定されている地域情報を監視するゲートウェイ地域情報監視部を有し、
前記サーバの特性値情報送信部は、前記ゲートウェイ地域情報監視部により監視されているゲートウェイの地域情報が更新された場合に、その地域情報の地域に対応した特性値情報を、前記送信装置の使用地域に対応する特性値情報として前記特性値テーブルから読み出し、該読み出した特性値情報を、前記送信装置の特性値情報取得部に送信する、
ことを特徴とする請求項9記載の通信システム。
【請求項11】
入力データを送信信号として出力する送信方法において、
前記送信信号の物理特性を示す特性値を設定し、
前記設定された特性値の送信信号を前記入力データから生成し、該生成した送信信号を出力し、
他の特性値を示す特性値情報を取得し、
前記設定された特性値を、前記取得された特性値情報が示す他の特性値に変更設定する、
ことを特徴とする送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−41591(P2006−41591A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214059(P2004−214059)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】