説明

送液構造体及びこれを用いたマイクロ分析チップ

【課題】幅や高さが小さい流路を含む送液構造体において、外部動力を必要とすることなく送液を行うことのできる送液構造体を提供する。
【解決手段】外部に開放された開放孔に接続された第1流路と、前記第1流路に連続する液溜め部と、前記液溜め部に連続する第2流路と、前記第2流路の終端に直接接する吸収体と、を少なくとも備え、前記第1流路における液体に発生する表面張力による圧力をP1とし、前記第2流路における液体に発生する表面張力による圧力をP2とし、前記液溜め部における液体に発生する表面張力による圧力をP3とするとき、P3<P1≦P2が成立することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質や、自然環境における物質等の微量化学分析に用いられるマイクロ分析チップの送液構造に関するものであり、より具体的には、毛細管力を駆動力とした送液構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
免疫分析法は、医療分野、生化学分野、アレルゲンなどの測定分野等において、重要な分析・計測方法として知られている。しかし、従来の免疫分析法には、操作が煩雑である上に、分析に一日以上の時間を要するといった問題があった。
【0003】
このような中、基板にマイクロオーダーの流路を形成し、このマイクロ流路に抗体等を固定化することにより、分析時間の短縮化や分析操作の簡略化を図るマイクロ分析チップが提案されている。
【0004】
マイクロ分析チップを用いて分析を行う場合、入口からマイクロ分析チップ内に溶液を導入し、該溶液をマイクロ分析チップ内で反応させ、出口からマイクロ分析チップ外に溶液を排出する必要がある。従来、マイクロ分析チップにおける溶液の移送には、ポンプなどの外部の動力源を用いていたが、ポンプはマイクロ分析チップに比べて大型であるため、装置全体の小型化が難しいという問題があった。比較的小型のマイクロポンプをマイクロ分析チップの内側や外側に配置する方法も提案されているが、複雑な微細加工技術を必要とするマイクロポンプ等が必要となるため、実用性に欠ける。
【0005】
ポンプを用いた溶液の移送方法よりも簡便な溶液の移送方法として、親水性処理した流路内の毛細管力を利用した技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。図18にこのような毛細管力を利用したマイクロ分析チップの一例を示す。このようなマイクロ分析チップでは、入口413に溶液を滴下すると、毛細管力によって溶液が流路416を移動し、ポンプ等の外力を必要とせずに溶液を排出できる。流路内に充填された溶液を排出する方法として、たとえば、特許文献2に示すように、排出口に溶液を吸収する吸収体を設置して排出する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−220606号公報
【特許文献2】特開2000−297761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現在では、マイクロ分析チップ内に、バルブ、ミキサー、反応部、検出部等の要素を盛り込むことが必要とされているため、全ての流路の幅を一定に設定できない場合が多い。このため、図19に示すように主流路416に比べ幅の狭い流路415が存在するような形態をとることが多い。このような形態のマイクロ分析チップの液の流れを図20、図21に示す。
【0008】
図20(a)に示すマイクロ分析チップの注入口413に液体300を注入する(図20(b))。液体は流路414、415、416を流れ、流路416の端部に設けられた吸収体に吸収され、チップ外に排出される(図20(c)、(d))。しかし、図20(e)、図21(b)に示すように、主流路416よりも幅の狭い流路415に気液界面が形成される状態になると、主流路416から幅の狭い流路415に向かう強い毛細管力(図中矢印)すなわち表面張力により発生する圧力Pが働く。Pは半径rの流路を想定した典型的な場合、次の式で表される。
【0009】
P=2σlgcosθ/rの式(ここで、σlgは気液界面の界面張力、θは接触角、rは流路の半径)
【0010】
表面張力により発生する圧力Pが働き、さらに吸収体による強い毛細管力が吸収体方向に働き、それぞれが反対方向に液体を引合うため、気体が入りやすい主流路416と吸収体411界面で液体が分断される。その結果、液体が逆流し、液体300と吸収体411との間に隙間が生じた状態で安定となる。このため、毛細管力の強い吸収体411を排出部に設けても、吸収体411が液体300を吸収することができなくなり、チップ内の液体を完全に排出することができない(図21(c)参照)。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、幅の狭い流路が存在する場合においても円滑に液体を排出することができる送液構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための第1の本発明は、外部に開放された開放孔に接続された第1流路と、前記第1流路に連続する液溜め部と、前記液溜め部に連続する第2流路と、前記第2流路の終端に直接接する吸収体と、を少なくとも備え、前記第1流路における液体に発生する表面張力による圧力をP1とし、前記第2流路における液体に発生する表面張力による圧力をP2とし、前記液溜め部における液体に発生する表面張力による圧力をP3とするとき、P3<P1≦P2が成立する、ことを特徴とする。
【0013】
この構成によると、第2流路における液体に発生する表面張力による圧力P2が第1流路における液体に発生する表面張力による圧力P1以上であるため、図4に示すように、第1流路に気液界面が生じ、逆流する方向に強い毛細管力501が働いて液が逆流した場合に、第2流路に気液界面が生じ、逆流方向への力と同等以上の順流方向への毛細管力502が作用する。このため、液体と吸収体との接触が維持され、送液構造体内部に液がとどまることなく、全ての液体を構造体外部に排出できる。
【0014】
第2流路における液体に発生する表面張力による圧力をP2が第1流路における液体に発生する表面張力による圧力をP1以上とするためには、前記第1流路の向かい合う壁面間の最小距離をD1とし、前記第2流路の向かい合う壁面間の最小距離をD2とし、前記液溜め部の向かい合う壁面間の最小距離をD3とするとき、D2≦D1<D3が成立する構成を採用することが簡便である。
【0015】
上記課題を解決するための第2の本発明は、外部に開放された開放孔に接続された第1流路と、前記第1流路に連続する液溜め部と、前記液溜め部に連続する第2流路と、前記第2流路の終端に直接接する吸収体と、を少なくとも備え、前記第1流路および前記第2流路は液体との接触面が親水性であって、前記第1流路の向かい合う壁面間の最小距離をD1とし、前記第2流路の向かい合う壁面間の最小距離をD2とし、前記液溜め部の向かい合う壁面間の最小距離をD3とするとき、D2≦D1<D3が成立することを特徴とする。
【0016】
この構成によると、第2流路の向かい合う壁面間の最小距離D2が第1流路の向かい合う壁面間の最小距離D1以下であるため、図4に示すように、第1流路に気液界面が生じ、逆流する方向に強い毛細管力501が働いて液が逆流した場合に、第2流路に気液界面が生じ、逆流方向と同等以上の順流方向への毛細管力502が作用する。このため、液体と吸収体との接触が維持され、送液構造体内部に液がとどまることなく、全ての液体を構造体外部に排出できる。
【0017】
上記構成において、前記第1流路を2以上有する構成とすることができる。
【0018】
抗原を含む液を注入する用途の開放孔、標識付き抗体を含む液を注入する用途の開放孔、基質を含む液を注入する用途の開放孔といったように、2つ以上の開放孔を設ける場合、それぞれの開放孔から液溜め部に送る流路にバルブ等を設ける必要があり、このバルブを設ける流路の向かい合う壁面間の最小距離を液溜め部よりも小さくする必要がある。上記構成を採用すると、このような送液構造体においても構造体内の液体を完全に排出することが可能となる。
【0019】
上記構成において、前記第1流路の上流側に設けられた第2の液溜め部と、前記第2の液溜め部の上流側に設けられた第3流路と、をさらに備え、前記第3流路における液体に発生する表面張力による圧力をP4とし、前記第2の液溜め部における液体に発生する表面張力による圧力をP5とするとき、P5<P4≦P2が成立し、前記第3流路、前記第2の液溜め部、前記第1流路、前記液溜め部、前記第2流路が直列に並んでいる構成とすることができる。
【0020】
上記構成において、前記第1流路の上流側に設けられた第2の液溜め部と、前記第2の液溜め部の上流側に設けられた第3流路と、をさらに備え、前記第3流路の向かい合う壁面間の最小距離をD4とし、前記第2の液溜め部の向かい合う壁面間の最小距離をD5とするとき、D2≦D4<D5が成立し、前記第3流路、前記第2の液溜め部、前記第1流路、前記液溜め部、前記第2流路が直列に並んでいる構成とすることができる。
【0021】
検出を液溜め部で行い、反応を液溜め部よりも上流側で行うという用途で用いる場合、液溜め部よりも上流側に第2の液溜め部を設け、この第2の液溜め部で反応を行わせることが好ましい。この場合、バルブ等を設けるために第2の液溜め部よりも上流側に第2の液溜め部に作用する毛細管力よりも大きな毛細管力の作用する第3流路を配置する必要がある。この第3流路においても毛細管力による液の逆流、送液の停止が生じるおそれがあるが、P4≦P2又はD2≦D4とすることにより、これを防止することができる。
【0022】
上記いずれかの送液構造体を有するマイクロ分析チップを用いると、液の流れが途絶えることなく連続して反応させることができるマイクロ分析チップを実現できる。
【発明の効果】
【0023】
上記で説明したように、本発明によると、構造体内の液体を完全に排出することのできる送液構造体を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態にかかる送液構造体110は、図1に示すように、液体をチップ内に導入する開放孔113を備えた第1流路115と、第1流路に連続する液溜め部116と、前記液溜め部に連続する第2流路117と、第2流路の終端に直接接する吸収体111と、を有している。なお、流路114は、本発明の必須の構成要素ではない。
【0026】
ここで、第2流路117は、流路の大きさが上流から下流に渡って同じとなるように設定されている。また、第1流路における液体に発生する表面張力による圧力をP1とし、第2流路における液体に発生する表面張力による圧力をP2とし、液溜め部における液体に発生する表面張力による圧力をP3とするとき、P3<P1≦P2が成立する。このため、第2流路117に作用する毛細管力は、第1流路115に作用する毛細管力と同等以上となる。
【0027】
このように、第1流路における液体に発生する表面張力による圧力をP1とし、第2流路における液体に発生する表面張力による圧力をP2とし、液溜め部における液体に発生する表面張力による圧力をP3とするとき、P3<P1≦P2が成立するように設定するためには、第1流路の向かい合う壁面間の最小距離をD1とし、前記第2流路の向かい合う壁面間の最小距離をD2とし、前記液溜め部の向かい合う壁面間の最小距離をD3とするとき、D2≦D1<D3が成立する構成を採用することが好ましい。本実施の形態では、D2<D1としている。
【0028】
図2に、本実施の形態にかかる送液構造体の断面図を示す。図2に示すように、流路114、液溜め部116、第1流路115、第2流路117が形成されている上部基板201と、流路114、液溜め部116、第1流路115、第2流路117の下方からシールし、吸収体111を載置する下部基板202と、からなる。上部基板201の厚みは0.1mm〜10mm程度であり、下部基板202の厚みは0.01mm〜10mm程度である。開放孔113は直径が10μm以上の貫通孔でよい。
【0029】
送液構造体の流路116を、光学的検出を行う検出部として利用する場合には、基板201および基板202に用いられる一方または両方の材料として、例えば、特許文献3に提案されるような、透明または半透明の材料を用いることが望ましい。なぜなら、流路116内を流れる被検液に励起光を照射し、励起光により発生した蛍光を検出して目的物質の量を測定する必要があるため、蛍光の検出を妨げる材料を用いることができないためである。このような透明または半透明な材料として、ガラス、石英、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、フィルム等が挙げられる。なかでも、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂は、透明性、成型性の観点から好ましい。なお、電気化学的検出を行う場合には、このような材料の制約はない。
【0030】
【特許文献3】特開2003−149252号公報
【0031】
他方、送液構造体流路内で電気的な制御や電気的な測定を行うためには、基板201または基板202の表面に電極を形成する必要がある。このため、基板201または基板202の一方または両方が電極形成可能な材料であることが好ましい。電極形成可能な材料としては、生産性、再現性の観点からガラス、石英、シリコン等が好ましい。なお、現在の技術では、凹凸のある部分に電極を形成することは難しいので、平坦な基板202に電極を形成することが好ましい。
【0032】
基板201または基板202の材料の液体が接する面は、液体が流れ易くするために、基板材料の液体と接する面を親水性とすることが好ましい。液体が接する面を親水性にするためには、酸素プラズマ処理やUV処理などが用いられる。また界面活性剤や親水性の官能基を持つ試薬を表面に塗布することによっても親水性を高めることができる。
【0033】
流路や液溜め部の形成には、例えば、基板201に直接加工を行う方法、機械加工による方法、レーザー加工による方法、薬品やガスによるエッチングによる方法、金型を用いた射出成型、プレス成型、鋳造による方法等がある。中でも、金型を用いる方法、エッチングを用いる方法は形状寸法の再現性が高く好ましい。
【0034】
図3、図4に、本実施の形態にかかる送液構造体の液の流れを示す。図3(a)〜(e)までは、従来と同様である。しかし、図3(e)、図4(b)に示すように、毛細管力によって液溜め部116から第1流路115に液が逆流したときに、第2流路117に気液界面が生じる。第2流路117の流路幅L2は、第1流路115の流路幅L1未満であるため、第2流路117に働く毛細管力502が、第1流路115に働く毛細管力501を打ち消す。このため、図3(f)、図4(c)に示すように、液体が完全に送液構造体外に排出されることとなる。
【0035】
図1に示される送液構造体の流路114、液溜め部116、第1流路115、第2流路117の幅と高さは特に限定はしないが、溶液の濡れと毛細管力よって溶液が浸透していくことが可能な寸法に設定される。高さに関して好ましくは、1μm〜5mm程度に設定される。幅に関して好ましくは1μm〜5mm程度に設定される。
【0036】
このような送液構造体は、例えば液溜め部に抗体等を固定化し、抗原を含む液を流して抗原抗体反応させ、さらに蛍光色素を付けた標識抗体を含む液を流して抗原抗体反応させ、液溜め部に励起光を照射してその蛍光の量により抗原の量を測定するというマイクロ分析チップとして利用できる。
【0037】
また、図9に示すように第1流路にバルブ140を設けてもよい。
【0038】
(実施の形態2)
本実施の形態にかかる送液構造体110は、図10に示すように、開放孔113と、第3の流路118と、第2の液溜め部114と、第1流路115と、第1流路に連続する液溜め部116と、前記液溜め部に連続する第2流路117と、第2流路の終端に直接接する吸収体111と、を有している。なお、流路119は、本発明の必須の構成要素ではない。
【0039】
ここで、第2流路117は、第1流路における液体に発生する表面張力による圧力をP1とし、前記第2流路における液体に発生する表面張力による圧力をP2とし、前記液溜め部における液体に発生する表面張力による圧力をP3とするとき、P3<P1≦P2が成立する。また、前記第2の液溜め部の上流側に設けられた第3流路と、をさらに備え、前記第3流路における液体に発生する表面張力による圧力をP4とし、前記第2の液溜め部における液体に発生する表面張力による圧力をP5とするとき、P5<P4≦P2が成立する。このため、第2流路117に作用する毛細管力は、第1流路115に作用する毛細管力と同等以上となり、且つ第2流路117に作用する毛細管力は、第3流路118に作用する毛細管力と同等以上となる。このため、上記実施の形態1と同様に、送液の停止が起こらず、スムースに液を流しきることができる。
【0040】
本実施の形態にかかる送液構造体は、第2の液溜め部114に抗体等を固定化し、液溜め部116に電極を設け、第2の液溜め部114で抗原抗体反応、酵素標識付き抗体と抗原−抗体複合体との反応、酵素基質反応を行わせ、酵素基質反応により生じた電極活性物質の量を液溜め部116に設けられた電極で検出するというマイクロ分析チップとして利用できる。
【0041】
(実施例)
次に、実施例により本発明の説明を行うが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
図5に、本実施例にかかる送液構造体を示す。
送液構造体110は、2つの開放孔113a、113bと、液溜め部116と、バルブ141、142がそれぞれ設けられた2つの第1流路と、開放孔と第1流路とを繋ぐ流路114a、114bと、第2流路117と、第2流路の下流側末端に設けられた吸収体111と、を有している。
【0043】
上記送液構造体は、上記実施の形態と同様に2つの基板から構成されており、上部基板内の流路114、液溜め部116、第1流路115、第2流路117の作製には、金型による樹脂成型方法を用いた。金型の作成には、シリコン基板にフォトリソ法によりレジストパターン形成後、ドライエッチングプロセス法によるエッチングを行った。作製された金型型枠を設置し、シリコンゴム(ポリジメチルシロキサン)(東レダウコーニング社製 ジルポット184)を厚みが2mmになるまで流し込み、100℃、15分の加熱を行い、硬化させた。硬化後、金型と硬化したシリコンゴムを分離させ、シリコンゴムを縦15mm、横10mm、厚み2mmに整形し、上部基板を作製した。流路114a、114bの幅103を300μm、液溜め部116の幅を600μm、第1流路115a、115bの幅100を50μm、第2流路117の幅を50μmに設定した。流路高さは全て50μmとした。下部基板は、厚み600μmの石英基板をダイシングソーで縦18mm、横16mmに切断して作製した。
【0044】
上部基板に2箇所の入口穴113をポンチ加工によって形成して、基板201を完成させた。下部基板にはあらかじめ、バルブ141、142、検出部151用の電極を作製した。バルブ141、142の作製には、フォトリソ法によりレジストをパターニング後、スパッタ法によってチタン層50nm、金層100nmを形成後、リフトオフ法によってパターニングされた電極を形成した。バルブは上記以外であっても、ダイアフラム型バルブなど液体の流入を停止、または開始できるものであれば良い。
【0045】
同様に検出部151の作製にはフォトリソ法によりレジストをパターニング後、スパッタ法によってチタン層50nm、金層100nmを形成後、リフトオフ法によってパターニングされた、図6に示すような電極152、154、155、156を形成した。検出部151の一部である電極153の作製には、フォトリソ法によりレジストをパターニング後、スパッタ法によって銀層を1μm形成し、リフトオフ法によってパターニングされた電極153を形成した。電極153作製後、Agの表面の塩化処理を行い、Ag/AgCl層の電極153を作製した。塩化処理には0.1M塩酸中で電極153に+100mV、50秒の電圧印加を行った。上部基板と下部基板に100W、酸素流量30sccm、60秒の条件で酸素プラズマ処理を行い基板表面の親水性を高めた後、上部基板と下部基板とを自己吸着作用によって貼り合わせ、第2流路の下流側末端にコットン製の吸収体111を載置し、実施例1にかかる送液構造体を作製した。
【0046】
(比較例1)
図11に示すように、第2流路を形成しなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例1にかかる送液構造体410を作製した。
【0047】
実施例1、比較例1にかかる送液構造体に液を流す試験を行った。実施例1にかかる送液構造体では、開放孔に蛍光色素(FITC)溶液を滴下すると、毛細管現象により送液構造体内に溶液300が満たされ、溶液300が吸収体111に達した時点から吸収体111が流路内の溶液を吸収し、流路内の溶液が無くなるまで吸収を行うことができた。他方、比較例1にかかる送液構造体では、溶液300が吸収体411に達した時点から吸収体411が流路内の溶液を吸収が始まったが、第1流路において気液界面生じた時点で開放孔側への溶液の戻りが生じて、吸収体411と溶液300との間に空隙が生じ、これ以上の送液が停止して、溶液300が流路内に残留した。
【0048】
よって、本発明によると、流路内に流路幅や流路高さの小さい流路が存在する場合においても、スムースに液体を流しきることができることがわかる。
【0049】
(実施の形態3)
次に、本発明によるマイクロ分析チップの具体的なチップ構成について説明する。
【0050】
(マイクロ分析チップの構成)
(全体)
図13はマイクロ分析チップの上面図である。本実施の形態にかかる送液構造体は、第1の液体用の開放孔2001と、第2の液体用の開放孔2002と、第3の液溜め部2003,2004と、ミキサー2007と、第3の流路2009と、第2の液溜め部2008と、第1の流路2011と、第1の液溜め部2010と、第2の流路2013と、第2流路の終端に直接接する吸収体111と、を有している。
【0051】
第1の液体用の開放孔2001から第1の液体が注入されると第3の液溜め部2003に第1の液体が注入される。第2の液体用の開放孔2002も同様に、第2の液体が注入されると第3の液溜め部2004に第2の液体が注入される。
【0052】
注入された液体のミキサー2007への流入を停止または開始することのできる第1のバルブ2005および第2のバルブ2006がそれぞれ第1の液体溜めおよび第2の液体溜めに接続され設けられている。ミキサー2007は第1の液体と第2の液体を充分に混合できる構成を有する。
【0053】
次に、第2の液溜め部2008が、第3の流路2009を介して接続されている。第2の液溜め部2008では溶液に含まれる被検出物質と反応する物質が配置されている構成であればよい。当実施形態ではミキサーと反応部は第3の流路2009を介して接続されているが、第3の流路2009を介すことなく直接接続されていても構わない。
【0054】
次に、第1の液溜め部2010が第1の流路2011を介して第2の液溜め部2008と接続されている。第1の液溜め部2010には検出部2012が設けられている。検出部は被検出物質を直接的、または間接的に検出することができる構成を有している。なお、被検出物質を直接検出できる構成である場合は、第1の液溜め部2010を有さない構成とすることができる。
【0055】
次に、吸収体2014が第2の流路2013を介して第1の液溜め部2010に接続されている。液体は吸収体により吸収されるが、第2の流路2013が前記第1および第3の流路の毛細管力と同等またはそれ以上の毛細管力を有し液体を吸収体へ引くことにより前記第1および第3の流路に液体が滞留することなく排出することができる。
【0056】
さらに、外部接続端子2015が設けられる。当該端子より電源のチップへの入力や、電気的制御信号の入力や、検出信号の出力などを行う。
【0057】
マイクロ分析チップ自体には電源を設けなくても良く、そのためコストパフォーマンスに優れたマイクロ分析チップを実現できる。
【0058】
(注入部)
第1の液体用の開放孔2001および第2の液体用の開放孔2002より、それぞれ第1の液体および第2の液体を注入することにより、第3の液溜め部2003、2004にそれぞれの液体が注入される。
【0059】
上記開放孔は、毛細管力が働かない程度の大きさであっても構わない。その場合であれば、開放孔が疎水性を有する場合であっても液体溜めに液体が充分注入することができる。
【0060】
また、上記開放孔は、毛細管力が働く程度の大きさであっても良い。その場合は開放孔に親水性を施すことによって、毛細管力により液体を液体溜めに注入することができる。
【0061】
第3の液溜め部2003、2004は毛細管力が働く程度の空間の大きさを有すると良い。この場合は高さ方向が充分小さく設計されていれば良い。
【0062】
また、開放孔は大気開放されていれば良い。
【0063】
なお、開放孔にあらかじめ液体を充填したカートリッジを接続する方法で液体を注入することもできる。その場合であっても、液体注入時にはカートリッジは液体を充分に排出できるよう、開放孔2001、2002の接続口またはそれ以外の部分で大気開放された構成を有すると良い。
【0064】
本実施例では2つの開放孔を有する場合を説明するが、開放孔は適宜3つ以上とすることもできる。その場合は第1の液体用の開放孔に検出対象を含む試料を、第2の液体用の開放孔に試薬を、第3の液体用の開放孔に標準試料を、第4の液体用の開放孔に洗浄液を注入する等とすることができる。
【0065】
開放孔に洗浄液を注入することができる構成とする場合は繰り返し使用が可能となるため、コストパフォーマンスがよくなり、環境負荷も低減することができる。
【0066】
さらに、繰り返し使用可能とするために、検出処理終了後に第1の液体用の開放孔等にさらに洗浄液を注入する構成とすると試料等の汚染を低減することができるため、繰り返しによる検出誤差が小さくなりなお良い。
【0067】
(バルブ)
バルブは液体の流入を停止し、または、開始することができるものであれば良く、MEMS技術をもちいて微細に形成されたダイヤフラム型バルブであっても良い。エレクトロウエッティングバルブを用いる場合は、作用電極および参照電極がそれぞれのバルブに必要となる。
【0068】
エレクトロウエッティングバルブとは、電圧を印加しない場合には液の流れを遮断し、電圧を印加した場合には液を流す構造のバルブである。エレクトロウエッティングバルブの原理を、図8を用いて説明する。流路114中をエレクトロウエッティングバルブ用参照電極171上に接しながら液体が流入し、さらに流入を続けるとエレクトロウエッティングバルブ用作用電極172に液体が達する。エレクトロウエッティングバルブ用作用電極172は疎水性膜で被覆されており、電圧を印加していない場合は、液体との接触角が60度から70度程度と大きくなる。さらに、流路幅および高さが50μmに設計されているため、液体が第1流路を流れる抵抗と上記液体の表面張力と相まって第1流路115を液体は通過することができない。
【0069】
一方、電圧を印加した場合は、エレクトロウエッティングバルブ用参照電極171により液体は負に帯電する。また、エレクトロウエッティングバルブ用作用電極172においては、絶縁膜を介した液体は作用電極172と仮想的なキャパシタを形成するようになり、作用電極172に液体が引き寄せられ接触角が小さくなる。このため、流路を流れる抵抗に関わらず、液体は第1流路115を通過することができるようになる。
【0070】
それぞれのバルブの流路は液体を適切に停止または流入を開始させるために、バルブごとに最適な流路空間を有している。
【0071】
(ミキサー)
ミキサーは第1の液体と第2の液体を充分混合できるように構成されていれば良い。第1のバルブおよび第2のバルブからの流入部付近にマイクロピラー構造を設けることにより混合するような構成でも良い。T字型ミキサー、Manzミキサー、3次元蛇行流路を用いたミキサーなど様々な態様があるが、充分混合できるように構成されていればどのような構成であってもよい。
【0072】
本実施例では2液を混合する場合を説明したが、適宜、3液以上の液体を混合するように構成してもよい。その場合は、混合のタイミングを適宜調整できるよう流路内の適切な位置に第3の液体用の開放孔から第3のバルブを介して第2のミキサーに接続するように配置すると良い。
【0073】
(第2の液溜め部)
第2の液溜め部2008は、反応を行う反応部として機能するものであり、サンプル溶液に含まれる被検出物質を特異的に認識し反応する分子が配置されている構成であればよく、被検出物質が抗原である場合は、抗体を反応部に固定化すると良い。被検出物質を検出するためには、酵素免疫反応のサンドイッチ法を用いており、抗原を酵素標識抗体(二次抗体)と反応させ、抗原と酵素標識抗体が結合した複合体にさせる。前述の複合体を反応部に予め固定化されている抗体(一次抗体)と反応させる。次に基質を導入し、二次抗体に標識されている酵素と反応させ、反応により生成された電気化学的に活性のある物質を検出部である電極上で電気化学的に検出を行う。結果的に反応部では、検出部にて検出できる物質が被検出物質の量に応じて生成することとなる。
【0074】
第1の液体として、スギ花粉由来のCryJ1抗原溶液とアルカリホスファターゼ(ALP)酵素が標識されたスギ花粉由来のanti-CryJ1抗体1μM溶液の混合溶液を用いた場合、抗原の濃度を検量するためには、反応部にスギ花粉由来のanti-CryJ1抗体を固定化した。第2の液体すなわち試薬としてpAPP(p-Aminophenyl phospphate)基質溶液1mMを用い、反応部で酵素と反応して生成されるpAP (p-Aminophenol)を検出部の電極で電気化学的に検出することができる。溶液1および溶液2の溶媒にはトリス緩衝溶液(THAM(tris hydroxymethyl aminomethane):10mM、NaCl:137mM、MgCl:1mM、PH9.0)を用いた。
【0075】
(第2の流路)
第2の流路2013は、液体に発生する表面張力による圧力が第1の流路の液体に発生する表面張力による圧力以上であれば、どのような部材、形状を用いても構わない。また、毛細管力を強くするため、適宜親水性の材料を用いて形成するとなお良い。例えば、PDMS基板であれば、酸素プラズマ処理をほどこすと親水性を高めることができ良い。ガラス基板であれば親水性を有するため良い。
【0076】
(吸収体)
吸収体とは、液体を吸収する材料であればよく、例えば、高分子吸収体、多孔性物質、親水性メッシュ、海綿体、綿、濾紙等を例示できる。
【0077】
吸収体で効率的に吸収することができるよう、吸収体と第2の流路の接続部またはそれ以外の部分で、大気開放されていると良い。
【0078】
吸収体は第2の流路に一部を突出していてもよい。その場合は、一部でも突出した部分までの第2の流路も含めて吸収体となり、第2の流路はその分減少する。
【0079】
(外部接続端子)
外部接続端子2015が設けられる。当該端子より電源のチップへの入力や、電気的制御信号の入力や、検出信号の出力などを行う。金電極をもちると、他のバルブや検出電極などと併用でき工程が簡易化されてよい。その他、白金、アルミニウムや、銅などの材料を含んだ導電性材料を用いて形成してもよい。
【0080】
上記構成をとることにより、マイクロ分析チップ自体には電源やICなどの制御回路を設けなくても良く、そのためコストパフォーマンスに優れたチップを提供することができる。
【0081】
(実施の形態4)
次に、上記実施例3の場合のチップの層構成について図14を用いて説明する。
【0082】
上記マイクロ分析チップは上層2101と下層2102からなる。
上層は透明性および加工性が高いものが良くPDMSを用いて形成すると良い。また、下層は電気的制御等のための電極形成が可能な材料としてシリコン基板を用いると良い。
【0083】
上層2101および下層2102に用いられる一方または両方の材料は、例えば、特許文献3に提案されるような、透明または半透明のものが望ましい。なぜなら、マイクロチップの流路内を検出部として、流路内を流れる被写体に励起光を照射し、被写体の蛍光を検出するするチップシステムなどへの応用をする場合では、反応部を通過した蛍光やUVの検出を行う必要があるからである。透明または半透明なものとして、ガラス、石英、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、フィルム等が好ましい。なかでも、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂は、透明性、成型性の観点から好ましい。
【0084】
また、例えばマイクロ分析チップ流路内で電気的な制御や電気的な測定を行うために、表面に電極を形成する必要がある。上層または下層の一方または両方が電極形成可能な材料であることが好ましい。電極形成可能な材料として、生産性、再現性の観点からガラス、石英、シリコン等の基板材料が好ましい。
【0085】
上層は上部に第1の液体用の開放孔2001および第2の液体用の開放孔2002が上向きに開口され、下部に第3の液溜め部2003、2004、第1のバルブ2005および第2のバルブ2006を設ける流路、ミキサー2007、第2の液溜め部2008、第3の流路2009、第1の液溜め部2010、第1の流路2011、第2の流路2013などが下向きに開口し設けられる。吸収体2014は下側に開口された空間を設けてそこに充填することで配置される。これらの下側に開口された部分は下層2102により底部を封じらされ、空間が形成される。
【0086】
下層には、第1のバルブ用電極2105および第2のバルブ用電極2106、検出用電極2112が設けられる、それぞれが、外部接続端子2015に接続される。第1のバルブ用電極2105および第2のバルブ用電極2106への接続はエレクトロウエッティングバルブを用いる場合は2端子および対極を設けた場合3端子とすることができる。
【0087】
また、検出用電極は上記するように3端子とすることができる。
【0088】
(実施の形態5)
次に、上記実施の形態4とは異なるチップの層構成について図15を用いて説明する。
【0089】
本実施の形態では上層2201、中層2202および下層2203からなる。
上記実施の形態4と異なる点は、第1の液体用の開放孔2201および第2の液体用の開放孔2202が上層に分けて構成されている点である。第1の液体用の開放孔2201および第2の液体用の開放孔2202はともに、2201層を貫通する開口として形成される。吸収体2214は下側に開口された空間を設けてそこに充填することで配置される。
【0090】
中層は第2の流路2213以外全て、開口した形状に形成することができる。必要であれば、下側に開口した上記構成と同様に形成することもできる。その場合、第3の液溜め部2203、2204は上層と接続できるよう上側にも開口しておく必要がある。
【0091】
第2の流路2213は、上層に接続するように上部が開口されて形成される。
【0092】
下層は上記実施の形態4と同様である。
【0093】
(実施の形態6)
次に、本発明によるマイクロ分析装置の具体的な装置構成について説明する。
【0094】
(ハンディー機器接続型)
図16にマイクロ分析装置の1実施形態を示す。マイクロ分析装置は、携帯可能なハンディ型マイクロ分析装置である。
【0095】
ハンディ機器2301の下部に上記実施形態で説明したマイクロ分析チップ2302の接続口であるチップ接続口2303が設けられている。マイクロ分析チップの外部接続端子と電気的に接続できる外部入出力端子(図示せず)が、ハンディ機器2301内のチップ接続口2303の奥に設けられており、チップ接続口2303にマイクロ分析チップ2302を挿入することにより、ハンディ機器2301内の外部入出力端子とマイクロ分析チップ2302の外部接続端子とが電気的に接続される。また、ハンディ機器には、被検出物質の量を表示することができる表示部2304、および、測定の開始、停止や、測定パラメータを特定するための様々なデータを入力することのできる入力部2305が設けられる。その他、ハンディ機器には、図示しないが、データを処理することのできるCPUや入力情報および出力情報を処理するI/O論理回路などの情報処理システムが構築されている。
【0096】
マイクロ分析チップをハンディ機器に接続し、各種データを入力し、測定開始ボタンを押すことにより、あらかじめマイクロ分析チップに準備されておりバルブで流入を停止されていた試薬や試料(サンプル)などのバルブ流入を順次開始し、結果として検出部において検出された被検出物質の量に応じた電気信号をマイクロ分析チップの外部接続端子から出力する。ハンディ機器においてマイクロ分析チップの外部接続端子と電気的に接続する外部入力端子より入力された電気信号を分析することにより、被検出物質の量または種類などを特定することができる。
【0097】
ハンディ機器2301は、例えば、携帯電話やPDAなどの携帯電子機器とすることができる。ここでは携帯電話を例に挙げて説明する。携帯電話で、マイクロ分析チップ用のデータ処理分析ソフトを起動させることでハンディ機器として動作させることができる。すなわち、専用ソフトにより仮想的に携帯電話をハンディ機器として利用する。マイクロ分析チップの外部接続端子は、携帯電話の外部入力端子に接続可能に構成すると良い。マイクロ分析チップを携帯電話に接続し、各種データを携帯電話のボタンより入力し、測定開始ボタンとして設定されたボタンを押すことにより、あらかじめマイクロ分析チップに準備されておりバルブで流入を停止されていた試薬や試料(サンプル)などのバルブ流入を順次開始し、結果として検出部において検出された被検出物質の量に応じた電気信号をマイクロ分析チップの外部接続端子から出力する。携帯電話においてマイクロ分析チップの外部接続端子と電気的に接続する外部入力端子より入力された電気信号を分析することにより、被検出物質の量又は種類などを特定することができる。そして測定結果を携帯電話の表示画面に表示する。
【0098】
ハンディ機器を携帯電話とすることにより、コストパフォーマンスに優れたマイクロ分析装置を提供することができる。またユーザーは測定が必要な時にどこでも測定が可能になる。携帯電話の保有率が上昇し、測定者(ユーザー)に充分携帯電話が普及するようになると多くのユーザーが便益を享受することができる。すなわち、携帯電話保有者のハンディ機器のコストは不要となる。ただし、代わりに携帯電話で動作させることのできる電気的な回路やデータ処理分析ソフトのコストが必要となるが、測定者側では、データ処理分析ソフトをネットワーク上でダウンロードすることが可能であり、携帯電話の高機能化により電気的回路をあらかじめ搭載することができる。ユーザーは低コストで携帯電話をハンディ機器として利用することが可能となる。以上より、携帯電話保有者は容易にハンディ機器2301を準備でき、ハンディ機器を準備できた後は、マイクロ分析チップ2302のコストのみで試料(サンプル)の分析が可能となる。
【0099】
(実施の形態7)
次に、本発明によるマイクロ分析装置の具体的な装置構成の別の実施形態について説明する。
【0100】
(独立型)
図17にマイクロ分析装置の1実施形態を示す。このマイクロ分析装置は独立して試料(サンプル)の採取、検出データの分析、および出力が可能な独立型マイクロ分析装置である。
マイクロ分析装置は独立して試料(サンプル)の採取から検出データの分析および出力まで可能な独立マイクロ分析装置を構成することができる。すなわち、マイクロ分析装置は図示するように、サンプル採取部2401、液体流路部2402、駆動分析処理部2403、入出力論理処理部2404および出入力部2405より構成される。それぞれの部部分が順次積層されるか、または組み合わされることによりマイクロ分析装置となる。
【0101】
サンプル採取部2401には、毛細管の貫通している針が設けられており、人体又は試料体に針を刺すまたは導入することにより血液や試料を採取することができる。針は、低侵襲のマイクロプローブであれば被検体に針を刺し血液等の体液を抽出する際に痛みが緩和されるため好ましい。また、針の代わりに非侵襲型の皮膚表面の汗、口腔内の唾液、涙や尿等を採取する吸収体であっても良い。
【0102】
次に液体流路部2402は、上記実施形態にて説明したマイクロ分析チップの流路構造が形成されている。特に実施の形態4で説明した2101層や実施の形態5で説明した2202層を用いて構成することができる。サンプル採取部の毛細管は液体流路部の第2の液溜め部2414と接続しており、針に設けられている毛細管の毛管現象によりサンプルが液溜め部に流入するように構成される。
【0103】
液体流路部はポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、塩化ビニル等を用いて作成することが可能である。当該液体流路には複数の検出部を有する流路構造を形成することも可能である。また、流路構造を複数形成することも可能である。
【0104】
駆動分析処理部2403は上記実施形態にて説明したマイクロ分析チップと同様に構成することができ、CPU、メモリ、およびバッテリー(図示せず)等が設けられており、液体流路部2042の検出部や、後で説明するI/O論理回路などと接続され、各種測定に対応したバルブコントロールや、測定データの処理や、出入力部の制御等が可能となっている。また、駆動分析処理部2403は、実施の形態4で説明した2102層や実施の形態5で説明した2203層を用いて構成することができる。ただし、当実施形態では、独立して使用できるため、CPU及びデータ記憶部が設けられており、各種測定に対応したバルブコントロールや、測定データの処理等が可能となっている。ここで、測定開始時にバルブで流入を停止されていた試薬や試料(サンプル)などのバルブ流入を順次開始し、結果として検出部において検出された被検出物質の量に応じた電気信号をCPUにて処理する。CPUにて電気信号を処理することにより、被検出物質の量または種類などを特定することができる。そして、次に説明するCPUと接続されたI/O論理回路にデータを出力し、出入力にて測定結果を表示することができる。
【0105】
入出力論理処理部2404は、CPUに接続されたI/O論理回路を有している。I/O論理回路に接続する電気接続線は、出入力層の各ボタン又は表示部等と接続されており、CPUと協働し、I/Oデータを適切に処理することができる。すなわち、表示層で入力された各種データおよび測定開始信号を受けると、液体流路層で検出された試料の非検出物質に応じて出力される電気信号を処理し、被検出物質の量や種類を特定し、出入力層の表示部に当該情報を表示する。
【0106】
出入力層2405には、各種データ入力用ボタン及び表示部が設けられている。
【0107】
表示部には、液晶表示モジュールまたは有機EL表示モジュール等を用いることができる。これらは、駆動ドライバー回路をI/O論理回路とCPUが協働し駆動することで表示動作を行うことが可能である。表示は数値を表示する形式や、グラフを用いて経時変化と共に表示することもできる。また、陽性・陰性等といった形式で表示することもできる。
【0108】
さらに出入力層には図示しないが、外部との入出力を処理する端子、または、無線送受信機を設けることができる。そうすることにより、パソコンやPDA端末などと接続でき、さらに、ネットワークせつぞくもできるため、双方向の情報のやり取りをすることも可能となる。このように、双方向の情報のやり取りを行なうことにより、測定者の測定結果により得られる健康に関する情報を病院や健康管理センターなどとネットワーク接続し、双方向の情報提供ができるようになるため、高度な医療に直結したアドバイスや診断・治療を測定者は享受でき、医療提供側では豊富な健康情報からの適格な診断・治療が可能となる。
【0109】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明によると、外部動力を必要とすることなく、吸収体と断面積の小さい流路を用いるという簡便な手法で、チップ内の液体を移送することができる。このような送液構造体は、抗原の分析に用いるマイクロ分析チップ等として応用が可能であり、産業上の意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、実施の形態にかかる送液構造体の平面図である。
【図2】図2は、実施の形態にかかる送液構造体の断面図である。
【図3】図3は、実施の形態にかかる送液構造体の液の流れを示す概念図である。
【図4】図4は、実施の形態にかかる送液構造体の第1流路及び第2流路における液の流れを示す概念図である。
【図5】図5は、実施例1にかかる送液構造体の平面図である。
【図6】図6は、電極の構造を示す概念図である。
【図7】図7は、実施例2にかかる送液構造体の平面図である。
【図8】図8は、エレクトロウエッティングバルブの動作を示す概念図である。
【図9】図9は、実施の形態1にかかる送液構造体の変形例を示す平面図である。
【図10】図10は、実施の形態2にかかる送液構造体を示す平面図である。
【図11】図11は、比較例1にかかる送液構造体の平面図である。
【図12】図12は、比較例2にかかる送液構造体の平面図である。
【図13】図13は、実施の形態3にかかるマイクロ分析チップを示す図である。
【図14】図14は、実施の形態4にかかるマイクロ分析チップを示す図である。
【図15】図15は、実施の形態5にかかるマイクロ分析チップを示す図である。
【図16】図16は、実施の形態6にかかるマイクロ分析装置を示す図である。
【図17】図17は、実施の形態7にかかるマイクロ分析装置を示す図である。
【図18】図18は、従来技術にかかる送液構造体の平面図である。
【図19】図19は、従来技術にかかる送液構造体の平面図である。
【図20】図20は、図19に示す送液構造体の液の流れを示す概念図である。
【図21】図21は、従来技術にかかる送液構造体の第1流路及び第2流路における液の流れを示す概念図である。
【符号の説明】
【0112】
110 送液構造体
111 吸収体
113 開放孔
114 流路(第2の液溜め部)
115 第1流路
116 液溜め部
117 第2流路
118 第3流路
119 流路
140 バルブ
151 検出部
201 上部基板
202 下部基板
501 毛細管力
502 毛細管力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に開放された開放孔に接続された第1流路と、
前記第1流路に連続する液溜め部と、
前記液溜め部に連続する第2流路と、
前記第2流路の終端に直接接する吸収体と、
を少なくとも備え、
前記第1流路における液体に発生する表面張力による圧力をP1とし、
前記第2流路における液体に発生する表面張力による圧力をP2とし、
前記液溜め部における液体に発生する表面張力による圧力をP3とするとき、
P3<P1≦P2が成立する、
ことを特徴とする送液構造体。
【請求項2】
外部に開放された開放孔に接続された第1流路と、
前記第1流路に連続する液溜め部と、
前記液溜め部に連続する第2流路と、
前記第2流路の終端に直接接する吸収体と、
を少なくとも備え、
前記第1流路および前記第2流路は液体との接触面が親水性であって、
前記第1流路の向かい合う壁面間の最小距離をD1とし、
前記第2流路の向かい合う壁面間の最小距離をD2とし、
前記液溜め部の向かい合う壁面間の最小距離をD3とするとき、
D2≦D1<D3が成立する、
ことを特徴とする送液構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の送液構造体において、
前記第1流路および前記第2流路は液体との接触面が親水性であって、
前記第1流路の向かい合う壁面間の最小距離をD1とし、
前記第2流路の向かい合う壁面間の最小距離をD2とし、
前記液溜め部の向かい合う壁面間の最小距離をD3とするとき、
D2≦D1<D3が成立する、
ことを特徴とする送液構造体。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の送液構造体において、
前記第1流路を2以上有する、
ことを特徴とする送液構造体。
【請求項5】
請求項1に記載の送液構造体において、
前記第1流路の上流側に設けられた第2の液溜め部と、
前記第2の液溜め部の上流側に設けられた第3流路と、をさらに備え、
前記第3流路における液体に発生する表面張力による圧力をP4とし、
前記第2の液溜め部における液体に発生する表面張力による圧力をP5とするとき、
P5<P4≦P2が成立し、
前記第3流路、前記第2の液溜め部、前記第1流路、前記液溜め部、前記第2流路が直列に並んでいる、
ことを特徴とする送液構造体。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の送液構造体において、
前記第1流路の上流側に設けられた第2の液溜め部と、
前記第2の液溜め部の上流側に設けられた第3流路と、をさらに備え、
前記第3流路の向かい合う壁面間の最小距離をD4とし、
前記第2の液溜め部の向かい合う壁面間の最小距離をD5とするとき、
D2≦D4<D5が成立し、
前記第3流路、前記第2の液溜め部、前記第1流路、前記液溜め部、前記第2流路が直列に並んでいる、
ことを特徴とする送液構造体。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の送液構造体を有することを特徴とするマイクロ分析チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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