説明

送風装置

【課題】羽根車を内包することで接触による不安感をなくし、流体素子技術を用いたノズル構成により広範囲で涼風感を得ることができて快適性を向上できる送風装置を提供することを目的とする。
【解決手段】送風装置11は、箱体12と、流体素子ノズル部13と、箱体12と流体素子ノズル部13を連通する筒状のダクト14で構成されるものであり、水平面である床面15に設置し、気流16を流体素子ノズル部13より発振方向17に発振させながら吹出すことで、羽根車を内包することで接触による不安感をなくし、広範囲で涼風感を得ることができて快適性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居室内の天井や壁、床面に設置され、直接風による体感温度の減少や室内の空気の循環に使用される扇風機や天井扇などの送風装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の送風装置は、羽根車とモータを台座となる基部に内包して、基部上部に備えられた円環形状の送風部から床面と水平方向に吹出すようにて空気の循環及び空気の流れを生じさせる家庭用送風装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その送風装置について図6および図7を参照しながら説明する。
【0004】
図6は、送風機組立体100をその正面から見た投影図を、図7は、送風機組立体100の断面投影図を示している。送風機組立体100は、中央開口部102を画定している環状ノズル101を有している。環状ノズル101を通る空気流を生じさせるモータ122がモータハウジング126と共に基部116の内部に配置されている。さらに、インペラ(羽根車)130が、モータ122から外方に延びる回転シャフトに連結され、ディフューザ132が、インペラ130の下流側に位置決めされているモータ122は、電気接続部及び電源に接続され、複数個の選択ボタン120により、ユーザは、送風機組立体100を操作することができる。
【0005】
上記構成において、上述した送風機組立体100は、以下のように動作する。
【0006】
ユーザが複数個の選択ボタン120の中から適当に選択してモータ122が駆動される。かくして、モータ122が起動され、空気が空気入口124を介して送風機組立体100内に吸い込まれる。空気は、外側ケーシング118を通り、インペラ130の入口134まで流れる。ディフューザ132の出口136及びインペラ130の排気部を出た空気流は、内部通路110を通って互いに逆の方向に進む2つの空気流に分けられる。
【0007】
空気流は、これが口112に入る際に絞られ、そして口112の出口144のところで更に絞られる。この絞りにより、システム中に圧力が生じる。
【0008】
このように作られた空気流は、絞りにより生じる圧力に打ち勝ち、空気流は、一次空気流として出口144を通って出る。一次空気流は、ガイド部分148の配置により、ユーザに向かって集中し又は集束して向けられる。二次空気流は、外部環境、特に出口144周りの領域及び環状ノズル101の外縁部周りからの空気の同伴によって生じる。この二次空気流は、中央開口部102を通り、ここで、一次空気流と混ざり合って送風機組立体100から前方に放出される全空気流が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−077969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来の送風装置では、円環形状に閉じたノズルのために、ここから吹出された気流も閉じた円環状に高速の風速分布を持つ。風速分布は、広がったものとすることで広範囲に涼風感を得ることが出来るが、従来の構成でノズルの吹出し方向を広げる場合には、環内の空気が円環形状吹出し口の背面から誘引されて前方へ送られる構成において誘引される空気の量には限りがあるので、環内部が負圧になり、負圧力に逆らうような広い風速分布とすることができないため、広範囲に涼風感を得ることができないという課題があった。
【0011】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、広範囲に涼風感を得ることができる送風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、この目的を達成するために、本発明は、箱体に空気を取り入れる吸込み口と、高圧空気を発生するための羽根車と羽根車を駆動するためのモータで構成された高圧空気発生手段とが設けられた高圧空気発生部と、高圧空気を気流として吹出す流体素子ノズル部と、前記高圧空気発生部と前記流体素子ノズル部を連通する筒状のダクトとを備え、前記流体素子ノズル部は気流の流れに対し垂直方向の断面が略長方形のそれぞれ気流の流入する流入口と、外部に向けて拡大する吹出し口と、前記流入口から前記吹出し口を連通する素子主流路と、前記素子主流路の長辺側の片面から分岐して、反対側の前記素子主流路の長辺側の面に連通する循環風路とを備えて、前記吹出し口から吹出す気流を前記素子主流路の短辺方向に振動させるものであり、前記循環風路が前記ダクトの外周面を覆うように配置したことを特徴とする送風装置としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、箱体に空気を取り入れる吸込み口と、高圧空気を発生するための羽根車と羽根車を駆動するためのモータで構成された高圧空気発生手段とが設けられた高圧空気発生部と、高圧空気を気流として吹出す流体素子ノズル部と、前記高圧空気発生部と前記流体素子ノズル部を連通する筒状のダクトとを備え、前記流体素子ノズル部は気流の流れに対し垂直方向の断面が略長方形のそれぞれ気流の流入する流入口と、外部に向けて拡大する吹出し口と、前記流入口から前記吹出し口を連通する素子主流路と、前記素子主流路の長辺側の片面から分岐して、反対側の前記素子主流路の長辺側の面に連通する循環風路とを備えて、前記吹出し口から吹出す気流を前記素子主流路の短辺方向に振動させるものであり、前記循環風路が前記ダクトの外周面を覆うように配置したことを特徴とする送風装置としたことにより、気流を流体素子ノズル部により素子主流路の短辺方向に振動させることができるため、少ないエネルギーで風速の大きい風を広範囲に送ることができ、広範囲に涼風感が得られ、快適性を向上することができる。さらに、循環風路がダクトを覆っているため、ダクト内の音がダクトの壁面から放出するのを低減することができ、送風装置を低騒音化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1の送風装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1の送風装置の断面を示す構成図
【図3】本発明の実施の形態1の送風装置のダクト及び流体素子ノズル部の断面を示す構成図
【図4】本発明の実施の形態2の送風装置の斜視図
【図5】本発明の実施の形態2の送風装置のダクト及び流体素子ノズル部の断面を示す構成図
【図6】従来技術の一例を示す正面図
【図7】従来技術の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の請求項1記載の送風装置は、箱体に空気を取り入れる吸込み口と、高圧空気を発生するための羽根車と羽根車を駆動するためのモータで構成された高圧空気発生手段とが設けられた高圧空気発生部と、高圧空気を気流として吹出す流体素子ノズル部と、前記高圧空気発生部と前記流体素子ノズル部を連通する筒状のダクトとを備え、前記流体素子ノズル部は気流の流れに対し垂直方向の断面が略長方形のそれぞれ気流の流入する流入口と、外部に向けて拡大する吹出し口と、前記流入口から前記吹出し口を連通する素子主流路と、前記素子主流路の長辺側の片面から分岐して、反対側の前記素子主流路の長辺側の面に連通する循環風路とを備えて、前記吹出し口から吹出す気流を前記素子主流路の短辺方向に振動させるものであり、前記循環風路が前記ダクトの外周面を覆うように配置したことを特徴とするものである。これにより、気流を流体素子ノズル部により素子主流路の短辺方向に振動させることができるため、少ないエネルギーで風速の大きい風を広範囲に送ることができ、広範囲で涼風感を得ることができる。さらに、循環風路がダクトを覆っているため、ダクト内の音がダクトの壁面から放出するのを低減することができ、送風装置を低騒音化することができる。ここで、高圧空気とは大気圧以上のことを示すものとする。
【0016】
また、高圧空気発生部が水平面に設置され、前記高圧空気発生部の上方に流体素子ノズル部を配置し、素子主流路内の気流を水平方向に流すことを特徴とするもので、水平面への設置面積が小さい状態で、少ないエネルギーで風速の大きい風を広範囲に送ることができるため、送風装置をコンパクトにすることができる。
【0017】
また、ダクトと流体素子ノズル部が各1対であり、前記ダクトと前記流体素子ノズル部が間に空間を設けて平行に配置されることを特徴とするもので、各1対のダクトと流体素子ノズル部が間に空間を設けて平行に配置されることで、流体素子ノズル部から吹出される気流により間の空間の空気が誘引されるため、風下での風量を増加することができる。
【0018】
また、外部に向けて拡大する吹出し口の外部に面した部分に、吹出す気流を2つに分離するように、素子主流路の長辺側と平行に分離壁を設けたことを特徴とするもので、分離壁を設けたことで、吹出し口で気流が振動する際に生じる渦を低減することができ、吹出し口から発生する騒音を低減することができる。
【0019】
また、吹出し口の壁面と分離壁が平行に配置されたことを特徴とするもので、吹出し口の壁面と分離壁が平行に配置されたことで、流路が拡大形状にならないため、騒音が増幅されるのを防ぐことができ、吹出し口から放出される騒音の増大を抑制することができる。
【0020】
また、流体素子ノズル部に振動停止手段を設けたことを特徴とするもので、気流の振動を停止できるようにすることで、気流を特定の方向に向けて送ることができる。例えば気流を中央に集中させることで、中央部分だけに気流振動時より風量を増加して送ることができる。
【0021】
また、振動停止手段が循環風路の開閉装置であることを特徴とするもので、気流の振動を停止できるようにすることで、気流を特定の方向に向けて送ることができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1に示すように、送風装置11は、箱体12と、流体素子ノズル部13と、箱体12と流体素子ノズル部13を連通する筒状のダクト14で構成されるものであり、水平面である床面15に設置し、気流16を流体素子ノズル部13より発振方向17に発振させながら吹出すものである。
【0024】
図2に送風装置11の平面Aでの断面の構成図を示すように、高圧空気発生部26は、箱体12内に、空気を取り入れる吸込み口18と、高圧空気を発生するための羽根車19と羽根車を駆動するためのモータ20で構成された高圧空気発生手段25とを設けている。
【0025】
流体素子ノズル部13は図3に平面Bでの流体素子ノズル部13とダクト14の断面の構成図を示すように、気流16の流れに対し垂直方向の断面が略長方形である、気流16の流入する流入口21と外部に向けて拡大する吹出し口22と、流入口21から吹出し口22を連通する素子主流路23と、素子主流路23の長辺側の片面から分岐して、反対側の素子主流路23の長辺側の面に連通する循環風路24とを備えて、吹出し口22から吹出す気流16を素子主流路23の短辺方向である発振方向17に振動させるものであり、循環風路24がダクト14の外周面を覆うように配置した構成となっている。
【0026】
ここで、高圧空気とは大気圧以上のことを示すものとする。
【0027】
吹出し口22の拡大角としては20度から45度程度が気流16の発振が安定して得られるため望ましく、循環風路24の長さとしては100mmから1000mm程度が気流16の発振が体感できる周波数となるため望ましい。また流体素子ノズル部13を構成する材質としてPPやABSなど既知の樹脂や金属などで構成することができる。
【0028】
このような構成によれば、気流を流体素子ノズル部13により素子主流路23の短辺方向に振動させることができるため、少ないエネルギーで風速の大きい風を広範囲に送ることができ、広範囲に涼風感を得ることができる。
【0029】
このとき、振動の周波数としては1Hzから100Hz程度が振動を体感できるとともに、自然なゆらぎを体感できる周波数であるため望ましい。この周波数は、循環風路24の長さと素子主流路23内の気流の速度等により、設定できる。
【0030】
また、循環風路24がダクト14を覆っているため、ダクト14内の音がダクト14の壁面から放出するのを低減することができ、送風装置11を低騒音化することができる。ここで、循環風路24は図3に示すように蛇腹状に構成し、多重構造としてもよい。
【0031】
また、流体素子ノズル部13が床面15に対し垂直方向に素子主流路23の長辺側が配置されることで、床面15への設置面積が小さい状態で、少ないエネルギーで風速の大きい風を広範囲に送ることができるため、送風装置11を背景技術の図6、7で説明した送風機組立体100よりコンパクトにすることができる。
【0032】
(実施の形態2)
図4に示すように、2口式送風装置31は、実施の形態1に示した箱体12と、流体素子ノズル部13と、箱体12と流体素子ノズル部13を連通する筒状のダクト14を備え、ダクト14と流体素子ノズル部13が各1対であり、ダクト14と流体素子ノズル部13が間に空間32を設けて平行に配置される構成となっている。
【0033】
このような構成によれば、各1対のダクト14と流体素子ノズル部13が間に空間32を設けて平行に配置されることで、流体素子ノズル部13から吹出される気流16により間の空間32の空気が誘引されるため、風下での風量を増加することができる。
【0034】
また、図5に2口式送風装置31のダクト14及び流体素子ノズル部13の平面Cでの断面の構成図を示すように、吹出し口22の外部に面した部分に、吹出す気流16を2つに分離するように、分離壁33が吹出し口22の壁面と平行に配置される構成となっている。
【0035】
このような構成によれば、分離壁33を設けたことで、吹出し口22で気流16が振動する際に生じる渦を低減することができ、吹出し口22から発生する騒音を低減することができる。また、吹出し口22の壁面と分離壁33が平行に配置されたことで、流路が拡大形状にならないため、騒音が増幅されるのを防ぐことができ、吹出し口22から放出される騒音の増大を抑制することができる。
【0036】
また、図5に示すように、流体素子ノズル部13の循環風路24には振動停止手段としての循環風路24の開閉装置34a、34b、34c、34dが設けられている。開閉装置34a、34b、34c、34dとしては軸中心にフタが回転して開閉を行うダンパーなど既知のものを用いることができる。
【0037】
このような構成によれば、開閉装置34a、34b、34c、34dにより循環風路24を閉じ気流16の振動を停止できるようにすることで、気流16を特定の方向に向けて送ることができる。
【0038】
すなわち、気流16を吹出したい方向側の開閉装置34a、34b、34c、34dを閉じることで、コアンダ効果により気流16を吹出したい方向側の吹出し口22の壁面に付着させることができるという現象が確認されており、このため気流16の方向は、循環風路24を開閉装置34a、34b、34c、34dの閉じる位置により制御することが可能である。
【0039】
例えば図5に示すように、開閉装置34bと開閉装置34cを閉じる構成とすることで気流16を中央に集中させることができ、気流16による誘引空気35も加わり、中央部分だけに気流振動時より風量を増加して送ることができる。
【0040】
なお、空間32としては、空間32を流れる誘引空気35の風速により最適値が異なるが、誘引空気35が流れる際の大きな抵抗にならないよう空間32は設けられていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明にかかる送風装置は、羽根車を内包することで接触による不安感をなくし、流体素子技術を用いたノズル構成により広範囲で涼風感を得ることができて快適性を向上できるため、居室内の天井や壁に設置され、直接風による体感温度の減少や室内の空気の循環に使用される各種送風機器等として有用である。
【符号の説明】
【0042】
11 送風装置
12 箱体
13 流体素子ノズル部
14 ダクト
15 床面
16 気流
17 発振方向
18 吸込み口
19 羽根車
20 モータ
21 流入口
22 吹出し口
23 素子主流路
24 循環風路
25 高圧空気発生手段
26 高圧空気発生部
31 2口式送風装置
32 空間
33 分離壁
34a、34b、34c、34d 開閉装置
35 誘引空気
100 送風機組立体
101 環状ノズル
102 中央開口部
110 内部通路
112 口
116 基部
118 外側ケーシング
120 選択ボタン
122 モータ
124 空気入口
126 モータハウジング
130 インペラ
132 ディフューザ
134 入口
136 出口
144 出口
148 ガイド部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱体に空気を取り入れる吸込み口と、高圧空気を発生するための羽根車と羽根車を駆動するためのモータで構成された高圧空気発生手段とが設けられた高圧空気発生部と、高圧空気を気流として吹出す流体素子ノズル部と、前記高圧空気発生部と前記流体素子ノズル部を連通する筒状のダクトとを備え、
前記流体素子ノズル部は、
気流の流れに対し垂直方向の断面が略長方形のそれぞれ気流の流入する流入口と、
外部に向けて拡大する吹出し口と、
前記流入口から前記吹出し口を連通する素子主流路と、
前記素子主流路の長辺側の片面から分岐して反対側の前記素子主流路の長辺側の面に連通する循環風路とを備えて、
前記吹出し口から吹出す気流を前記素子主流路の短辺方向に振動させるものであり、前記循環風路が前記ダクトの外周面を覆うように配置したことを特徴とする送風装置。
【請求項2】
高圧空気発生部が水平面に設置され、前記高圧空気発生部の上方に流体素子ノズル部を配置し、素子主流路内の気流を水平方向に流すことを特徴とする請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
ダクトと流体素子ノズル部が各1対であり、前記ダクトと前記流体素子ノズル部が間に空間を設けて平行に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の送風装置。
【請求項4】
外部に向けて拡大する吹出し口の外部に面した部分に、吹出す気流を2つに分離するように、素子主流路の長辺側と平行に分離壁を設けたことを特徴とする請求項3に記載の送風装置。
【請求項5】
吹出し口の壁面と分離壁が平行に配置されたことを特徴とする請求項4に記載の送風装置。
【請求項6】
流体素子ノズル部に振動停止手段を設けたことを特徴とする請求項3乃至5いずれかに記載の送風装置。
【請求項7】
振動停止手段が循環風路の開閉装置であることを特徴とする請求項6に記載の送風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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