説明

逆洗

モジュール(4)が供給液を含んでいる容器(3)内に設けられた一以上の膜(5)を備えており、該膜(5)は濾過運転にさらされる透過性の壁部を備えており、汚染物を含有している供給液が膜の前記壁部の一方の側に加えられ、濾過された液が膜の前記壁部の他の側から回収される膜の濾過モジュールを逆洗する方法であって、供給液を含んでいる前記容器(3)における液レベルが前記膜の上面レベルよりも下である第1のレベル(L2)へと低下するまで、前記容器から液体を除去するステップと、濾過運転を中断するステップと、供給液を含んでいる前記容器(3)内の液レベルが前記第1のレベルよりも高い所定の第2のレベル(L1)へと上昇するまで、液体による逆洗を実行するステップと、前記膜の表面に気泡を通気させて前記膜からの汚損物質を払い落とすステップと、供給液を含んでいる前記容器(3)の清掃及びドレン排出を実行して、液体を含有している払い落とされた前記汚損物質を除去するステップと、濾過運転を再開するステップと、を備えていることを特徴としている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜の濾過システム、より具体的には、かかるシステムの逆洗に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性の膜を備える濾過システムは、濾過効率(filtration efficiency)及び流動(flux)を維持するために定期的な逆洗を行うことが必要であり、膜の細孔が不純物によって目詰まりを生じると、膜間圧力(transmembrane pressure:TMP)が減少する。 そのようなシステムは通常、供給タンク内に設けられた束状(bundles)若しくはアレイ状(arrays)の形態を為す多数の膜を備えている。 そして供給液(feed)が膜の表面に加えられ、濾過された液(filtrate)が膜の内腔(lumens)から回収される。 典型的には、逆洗サイクルの際には、加圧ガス、加圧液体、あるいはこれら双方を供給タンクあるいは供給セル内に導入して不純物を膜の細孔から強制的に排出することが行われる。 そして、膜からの不純物や沈渣(deposits)を含む液体は、タンクから排出されて洗浄される。
【0003】
タンクからの廃液は、通常、環境的に安全な方法で処理または再生(reprocessed)される必要があるので、環境に与える影響及びコストの観点から、そのような廃液の量を低減することは、非常に大きな利点となる。
【0004】
とりわけ多数のアレイ状の膜が用いられる場合には、タンクの排水及び洗浄にも長時間を必要とし、この結果、濾過サイクルの停止時間を生じることとなる。 このような停止時間を減少させるためには、迅速にタンクからの排出及びタンクへの再充填を迅速に行えるように大きなポンプ装置が必要とされる。 タンクあるいはセルが列設され、供給液がタンクの再充填に使用されるところでは、再充填のプロセスの際に他のセルの液レベルの低下を生じてしまう。 このような液レベルの低下は、やはりフィルタ装置の作動効率の悪化を招くことになる。
【0005】
いくつかのシステムにおいては、逆洗すべき量を低減することによって、化学的な洗浄剤の量も低減することができる。 このことは、洗浄剤のコスト低減及び廃棄物処理の問題を減少させるという両面の利点を有する。
【0006】
多くの濾過システムでは、洗浄段階の際に多孔性の膜の表面から望ましくない沈渣を洗い流すのを支援するために、気泡を通気させる方法も採用されている。 そのような通気を効果的に行うために、膜は完全に液体中に浸漬されていなければならない。
【0007】
典型的にはそのようなシステムにおける洗浄工程は、膜が設置されている容器への供給液の流れを中止するステップと、タンク内の液レベルが膜の上面に到達するまで濾過工程を継続するステップと、所定時間、膜の外周面から不純物を洗い流すために、膜に気泡を通気するステップと、そして、膜の細孔を液体で逆洗するステップとを備えている。 次いでタンクは、前記通気及び逆洗工程の際に、払い落とされた(dislodged)不純物を含んでいる廃液を除去するために、ドレン排出されて洗浄される。
【0008】
通気工程を効果的に行うために、膜を浸漬させたままにしておく必要があることは理解されるであろう。 通気工程の終わりに液体による逆洗工程を追加することによって、タンク内の液レベルは膜よりも上まで上昇される。 これは膜を浸漬させたままにしておく要請に関しては「無駄な容積(wasted volume)」である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような及び他の従来技術の欠点を解消若しくは少なくとも改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一の態様によれば、本発明は、モジュールが供給液を含んでいる容器内に設けられた一以上の膜を備えており、該膜は濾過運転(filtration operation)にさらされる透過性の壁部を備えており、汚染物を含有している供給液が膜の前記壁部の一方の側に加えられ、濾過された液が膜の前記壁部の他の側から回収される膜の濾過モジュールを逆洗する方法を提供するものであって、
(a) 供給液を含んでいる前記容器における液レベルが前記膜の上面レベル(upper level)よりも下である第1のレベルへと低下するまで、前記容器から液体を除去するステップと、
(b) 濾過運転を中断するステップと、
(c) 供給液を含んでいる前記容器内の液レベルが前記第1のレベルよりも高い所定の第2のレベルへと上昇するまで、液体による逆洗を実行するステップと、
(d) 前記膜の表面に気泡を通気させて前記膜からの汚損物質を払い落とすステップと、
(e) 供給液を含んでいる前記容器の清掃及びドレン排出を実行して、液体を含有している払い落とされた前記汚損物質を除去するステップと、
(f) 濾過運転を再開するステップと、
を備えていることを特徴としている。
【0011】
前記第2のレベルを、前記液レベルが前記通気ステップの際に少なくとも前記膜の前記上面レベルにまで上昇するように選択するステップを備えていることが好ましい。 また、供給液を含んでいる前記容器内への供給液の流れを、前記除去ステップa)に先立って中断するステップを備えていることが好ましい。 好適には本発明は、液体の前記除去を、前記濾過工程によって完全に若しくは部分的に達成するステップを備えている。 加圧された濾過システムにおいては、濾過工程の際に加圧された気体を使用し、前記除去ステップa)の際に、前記液体を、透過性の膜の前記壁部を通じて前記供給液側から押し出すステップを備えていることが好ましい。 前記通気ステップを、液体を除去する前記ステップに先立って開始させると共に、清掃及びドレン排出する前記ステップe)まで継続させるステップを備えていても良い。
【0012】
この方法によれば、逆洗量を低減できるという利点がある。 また、濾過によって要求される液レベルまで低下させるのではなく、同じ結果を達成するために、供給液を含んでいる前記容器内の液体をドレン排出若しくはポンピング排出することが可能である。 これによれば、濾過ステップの際に膜の流動を増大させることがないという利点があり、濾過サイクルの停止時間の低減を速やかに達成することができる。 ドレン排出された供給液は、供給液を無駄にすることが無いように、若しくは、並行して運転されている他のタンクに移送するために濾過設備の入口部に戻すことができる。
【0013】
代替的な方法においては、前記濾過ステップは、濾過された液の流れを変化させること、すなわち、容器内での液レベルが低下するときに、前記膜を横切る膜間圧力(TMP)を略一定に維持するように流れを調節することによって行うことができる。
【0014】
TMPは、液体を除去するステップの際に監視され、いつの時点で液レベルが膜の上面よりも低下したか、若しくは、液レベルが前記上面レベルよりもどの程度低下したか、を決定するために使用されている。 膜がより多く露出していると、濾過領域がより少なくなりTMPが増加するので、このようなTMPの使用が可能である。 TMPは、より多くの濾過された液が内腔に沿って多く移動することにより内腔の圧力低下を生じるという事実によっても増加する(このとき流量は一定であり、濾過された液は膜内腔の上端から回収されているものとする。)。 従って、液体による逆洗ステップを開始する前に、TMPの変化を用いて供給タンク内の液レベルを監視することができる。 また、これは、濾過された液体の流れを調節してTMPを一定に維持することにより、残余の濾過領域上での流動の極端な変化を回避するために使用することができる。 代替的には、そのような方法によって、TMPをあらゆる所望の所定レベルに制御することができる。 例えば、TMPを許容できる最大値(例えば85kPa)に保つために、供給液を含んでいる容器内の液レベルを低下させることが望ましい場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好適な実施例は以下の図面を参照しつつ記述される通りであるが、あくまで例示にすぎないものである。
【0016】
図1aから図1eには本発明の実施例が示されている。 濾過モジュール4は、濾過されるべき供給液が収容されたハウジング容器3内に取り付けられている。 濾過モジュール8は、中空繊維状の膜5の一以上の束を備えており、それぞれ上部ヘッダ6と下部ヘッダ7との間で延在している。 下部ヘッダ7は、繊維状の束の内部及び入口ポート10と連通している多数の開口9を備えている。 供給液はバルブAV1で制御されてポート11を通じて供給されている。
【0017】
透過して濾過された液(permeate/filtrate)はチャンバ12及びライン13を通じて回収される。
【0018】
図1aは容器3内の液レベルが上部ヘッダ6を覆うL1であるような通常の濾過運転状況での濾過モジュールを示している。 逆洗段階が開始されようとしているときには、本実施例においては、供給液の流れはバルブAV1を閉じることによって停止されている。 濾過された液は継続的に繊維の内腔並びにチャンバ12及びライン13を通じて回収されている。 容器3内の液レベルは、図1bに示されるように、レベルL2まで下がる。
【0019】
一旦レベルL2に到達すると、ライン13を介して内腔及び壁部を通じて液体を逆流させることにより、液体による逆洗が開始される。 この結果、図1cに示されるように、容器内で液レベルが再度レベルL1まで上昇する。 次いで図1dに示されるように、気体をポート10及び開口9を通じて供給することによって、通気ステップが開始される。 別な実施例においては、液体による逆洗によって、通気の際に液体中に気泡が存在している結果、液レベルが更に上昇してレベルL1に到達されるように、液レベルをレベルL1より僅かに低くすることができる。 同様の結果は、液体による逆洗の際に通気を実行することによっても達成することができる。
【0020】
一旦通気ステップが完了すると、図1eに示されるように、容器内の液体中に蓄積している払い落とされた廃棄物を除去するために、容器は清掃されてドレン排出される。 このステップに次いで、バルブAV1を開放することによって供給液が再導入され、濾過が再開される。
【0021】
実施例の膜は上下方向に配列されているけれども、本発明がそのような方向性を限定するものではなく、膜をあらゆる所望の位置若しくは形状で配置できることが理解されるであろう。
【0022】
本発明が、加圧されたシステム、及び供給液を含んでいる容器が大気に開放されているような加圧されていないシステムの双方に適用できることは理解されるであろう。
【0023】
本発明の更なる実施例及び例証が、記述された本発明の精神若しくは技術的範囲を逸脱すること無く為し得ることも理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1a】本発明の実施例において、容器内の液レベルが上部ヘッダを覆うL1であるような通常の濾過運転状況での濾過モジュールを示す図である。
【図1b】本発明の実施例において、逆洗段階が開始されようとしているときに、容器内の液レベルが、レベルL2まで下がった状況での濾過モジュールを示す図である。
【図1c】本発明の実施例において、通気ステップが開始された状況での濾過モジュールを示す図である。
【図1d】本発明の実施例において、逆洗が開始され、容器内の液レベルが、再度レベルL1まで上昇した状況での濾過モジュールを示す図である。
【図1e】本発明の実施例において、容器が清掃されてドレン排出された状況での濾過モジュールを示す図である。
【符号の説明】
【0025】
3 ハウジング容器
4,8 濾過モジュール
5 膜
6 上部ヘッダ
7 下部ヘッダ
9 開口
10 入口ポート
11 ポート
12 チャンバ
13 ライン
AV1 バルブ
L1,L2 液レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュールが供給液を含んでいる容器内に設けられた一以上の膜を備えており、該膜は濾過運転にさらされる透過性の壁部を備えており、汚染物を含有している供給液が膜の前記壁部の一方の側に加えられ、濾過された液が膜の前記壁部の他の側から回収される膜の濾過モジュールを逆洗する方法であって、
(a) 供給液を含んでいる前記容器における液レベルが前記膜の上面レベルよりも下である第1のレベルへと低下するまで、前記容器から液体を除去するステップと、
(b) 濾過運転を中断するステップと、
(c) 供給液を含んでいる前記容器内の液レベルが前記第1のレベルよりも高い所定の第2のレベルへと上昇するまで、液体による逆洗を実行するステップと、
(d) 前記膜の表面に気泡を通気させて前記膜からの汚損物質を払い落とすステップと、
(e) 供給液を含んでいる前記容器の清掃及びドレン排出を実行して、液体を含有している払い落とされた前記汚損物質を除去するステップと、
(f) 濾過運転を再開するステップと、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2のレベルを、前記液レベルが前記通気ステップの際に少なくとも前記膜の前記上面レベルにまで上昇するように選択するステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
供給液を含んでいる前記容器内への供給液の流れを、前記除去ステップa)に先立って中断するステップを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記通気ステップを、液体を除去する前記ステップに先立って開始させると共に、清掃及びドレン排出する前記ステップe)まで継続させるステップを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
液体の前記除去を、前記濾過工程によって完全に若しくは部分的に達成するステップを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
膜の前記壁部の前記一方の側の前記液体に加圧された気体を加え、前記濾過工程の際に、前記液体を膜の前記壁部から押し出すステップを備えていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
液体の前記除去を、供給液を含んでいる前記容器内の液体をドレン排出することによって達成するステップを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
液体の前記除去を、供給液を含んでいる前記容器から液体をポンピングすることによって達成するステップを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
濾過が再開されたときに、除去された前記液体を、供給液を含んでいる前記容器に戻すステップを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
除去された前記液体を、更なる濾過システムの供給液を含んでいる前記容器に戻すステップを備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
膜からの濾過された液の流れを変化させ、供給液を含んでいる前記容器内での液レベルが低下するときに、前記膜を横切る膜間圧力を略一定に維持するステップを備えていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記膜間圧力を、所定値以下に維持するステップを備えていることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記膜を横切る前記膜間圧力を監視し、供給液を含んでいる前記容器内での液レベルを決定するステップを備えていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記監視ステップを、前記除去ステップa)の際に実行するステップを備えていることを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【公表番号】特表2007−503972(P2007−503972A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524173(P2006−524173)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001157
【国際公開番号】WO2005/021140
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(501121646)ユー・エス・フィルター・ウェイストウォーター・グループ・インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】U.S. Filter Wastewater Group, Inc.
【Fターム(参考)】