説明

逆流防止装置

【課題】 ダイヤフラムのスムースな開閉作動のために設けたクリアランスに起因してスペーサを兼ねるバネ受け部材が位置ずれしたとしても、位置ずれ後のバネ受け部材を確実に支持して、ダイヤフラムの圧縮代制限機能や閉弁維持機能を確実に発揮させ得る逆流防止装置を提供する。
【解決手段】 弁座76を構成する筒部75aの外周面にリブ75b,75b,…を突出形成し、各リブ75bのリブ端面76cを弁座76と面一に連続する平坦面とし、内周側部位76aや外周側部位76bと共に弁座76を構成する要素とする。ハウジング8の内径D2とバネ受け部材11の外径D1との差に対応するクリアランスの存在に起因してバネ受け部材11が偏心移動したとしても、内周縁111a寄りの範囲がリブ端面76c等に確実に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムを用いた弁体の一側に一次側圧力を、他側に二次側圧力をそれぞれ作用させ、一次側と二次側との圧力差に基づき開閉させることにより、二次側から一次側への逆流を防止するために用いられる逆流防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の逆流防止装置として、弁体にダイヤフラムを用い、正常時にはこの弁体の一側に作用させた一次側の圧力が大となって弁体を閉弁状態に維持させる一方、弁体の他側に作用する二次側の圧力よりも一次側が小となる異常時には弁体が開弁して二次側からの湯水を排出させることにより二次側から一次側への逆流を防止するようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。このものでは、弁座にダイヤフラムが押し付けられてダイヤフラムが弁座に食い込むことによりダイヤフラム素材の弾性限界を超えて局所的に亀裂や偏摩耗が生じることを防止するために、閉弁時にダイヤフラムと弁座との間にスペーサが挟み付けられるようにすることにより、ダイヤフラムと弁座との密着による閉弁機能を確保しつつも、ダイヤフラムの圧縮代を所定範囲に制限することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−298109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1の逆流防止装置においては、上記のダイヤフラムの圧縮代を所定範囲に制限するためのスペーサが位置ずれ(偏心)してしまうと、本来のダイヤフラムと弁座との間に介装されている状態を維持し得なくなるおそれがあり、上記のダイヤフラムの圧縮代の制限や、耐久性の確保という機能が損なわれる事態を生じるおそれがある。
【0005】
例えば図7に示すように、ダイヤフラム101が同図の右側から閉弁側圧力として一次側圧力P1を受け、同図の左側から開弁側圧力として二次側圧力P2及びバネ102の付勢力を受けるように配置され、閉弁側である一次側圧力P1が高ければダイヤフラム101は弁座103に対し押し付けられて二次側通路104と排水通路105とを遮断するように構成された逆流防止装置では、次のような不都合発生が考えられる。
【0006】
このような逆流防止装置では、バネ受けを兼ねるスペーサ106の外周面と、ハウジング107の内周面との間には開閉移動のためのクリアランス(隙間)αが設けられている一方、スペーサ106はその内周側が弁座103の外周側に対し当接代βの範囲だけ開閉方向に重なって、閉弁時にはその当接代βの範囲で弁座103に当接するように配置されている。このため、ダイヤフラム101が一次側圧力及び二次側圧力の変動を受けて同図の左右方向に開閉移動する際に、スペーサ106が上記のクリアランスαの存在に起因して偏心方向(同図の上下方向)に位置ずれを生じる可能性がある。このようにスペーサ106が位置ずれしてしまうと、スペーサ106が弁座103に対し偏心状態となって、閉弁時における上記の当接代βがその分減ってしまったり、弁座103との密着が損なわれてしまったりするおそれが生じることにつながると考えられる。そして、密着性の悪化に伴い、閉弁維持機能が損なわれてしまったり、圧縮代の制限によるダイヤフラム101の耐久性確保という機能の発揮も損なわれてしまったりするおそれも考えられる。
【0007】
このような不都合に対処するために、クリアランスαを考慮して当接代βを増大させること、つまり弁座103を構成する筒部108の外径を増大させて当接代βを増大させることも考えられるが、筒部108の外径を増大させると、筒部108の外周面とハウジング107の内周面との間で区画される通路開口断面積が低減してしまい二次側からの排水や二次側への吸気のための開口量が確保し得なくなる。この通路開口断面積の確保のためにハウジング107の内周面を拡径して拡げるようにすると、ハウジング107自体が大型化してしまい、装置全体のコンパクト性が損なわれることになる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ダイヤフラムのスムースな開閉作動を確保するためにクリアランスを設けたことに起因してスペーサがたとえ位置ずれしたとしても、その位置ずれ後のスペーサを確実に支持し得るようにし、これにより、スペーサ本来の機能を確実に発揮させ得るようにした逆流防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、閉弁方向に作用される一次側圧力と、開弁方向に作用される二次側圧力との差圧に基づいて、ハウジングに内蔵されたダイヤフラムが弁座に対し当接・離反することにより、排水通路と二次側通路との間を遮断状態又は連通状態に切換するように構成され、上記ダイヤフラムが弁座に当接して閉弁する際に、そのダイヤフラムと弁座との間に挟み込まれることにより上記弁座に押し付けられるダイヤフラムの圧縮代を所定範囲に制限するドーナッツ円環状のスペーサを備えた逆流防止装置を対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記弁座に、その外周側位置から部分的にこの弁座と面一に連続するよう突出する少なくとも1つの突出端面を形成し、上記弁座の外径を上記スペーサの内径よりも大に設定する一方、上記突出端面の突出寸法を上記スペーサの弁座に対する偏心方向の位置ずれ可能寸法に対応して設定することとした(請求項1)。
【0010】
この発明の場合、突出端面が弁座と面一に連続しているため、弁座がその突出端面を加えて構成されることになる。このため、スペーサがダイヤフラムと共に偏心方向に位置ずれしたとしても、突出端面が弁座の外周側に突出した状態で存在しているため、この突出端面によりスペーサが確実に支持される上に、閉弁時には突出端面を含んで弁座に対しスペーサが密着し得ることになる。又、さらに最悪の場合、上記の位置ずれによってスペーサの内径部位が弁座の外径部位よりも外周側に外れそうになったとしても、上記の通り突出端面によってスペーサが確実に支持され、万一の脱落という事態の発生を確実に回避し得ることになる。これにより、ダイヤフラムのスムースな開閉作動を確保するためにクリアランスを設けたことに起因してスペーサがたとえ位置ずれしたとしても、その位置ずれ後のスペーサを確実に支持することが可能となり、これにより、スペーサ本来の機能を確実に発揮させ得ることになる。
【0011】
ここで、上記突出端面を、上記スペーサが重力作用により位置ずれし易い方向に突出するように形成することができる(請求項2)。このようにすることにより、弁座及びスペーサの筒軸が例えば水平方向等の横向きに延びるように配置され、スペーサがその自重により筒軸に直交する方向の位置ずれし易いような場合には、例えば1つという最小の数の突出端面の形成により本発明の作用が得られるようになる。
【0012】
あるいは、上記突出端面を、上記弁座から放射方向にかつ均等配置で突出するよう3つ以上形成することができる(請求項3)。このようにすることにより、弁座及びスペーサの筒軸が例えば鉛直方向等の上向きに延びるように配置され、スペーサが略水平に放射方向に位置ずれし易いような場合であっても、突出端面が放射方向にかつ均等配置に突出するよう3つ以上形成されているため、放射方向のいずれに位置ずれしても確実に本発明の作用が得られるようになる。
【0013】
そして、本発明において、上記弁座を筒部の開口端面によって構成し、上記突出端面をその筒部の外周面に突出形成されたリブの端面によって構成するようにすることができる(請求項4)。このようにすることにより、弁座と、この弁座から突出する突出端面とを容易に形成することが可能になり、本発明の作用も確実に得られるようになる。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明の逆流防止装置によれば、突出端面を弁座と面一に連続させているため、弁座として突出端面を加えて構成することができるようになる。このため、スペーサがダイヤフラムと共に偏心方向に位置ずれしたとしても、突出端面が弁座の外周側に突出した状態で存在し、この突出端面によりスペーサを確実に支持することができる上に、閉弁時には突出端面を含んで弁座に対しスペーサを密着させることができるようになる。さらに最悪の場合、上記の位置ずれによってスペーサの内径部位が弁座の外径部位よりも外周側に外れそうになったとしても、上記の通り突出端面によってスペーサを確実に支持することができ、万一の脱落という事態の発生を確実に回避することができるようになる。これにより、ダイヤフラムのスムースな開閉作動を確保するためにクリアランスを設けたことに起因してスペーサがたとえ位置ずれしたとしても、その位置ずれ後のスペーサを確実に支持することができ、これにより、スペーサ本来の機能を確実に発揮させることができるようになる。
【0015】
特に、請求項2によれば、弁座及びスペーサの筒軸を例えば水平方向等の横向きに延びるように配置した場合に、スペーサがその自重により位置ずれしても、例えば1つという最小の数の突出端面の形成により本発明の効果を得ることができるようになる。
【0016】
請求項3によれば、弁座及びスペーサの筒軸を例えば鉛直方向等の上向きに延びるように配置した場合であっても、突出端面を放射方向にかつ均等配置に突出するよう3つ以上形成しているため、スペーサが放射方向のいずれに位置ずれしても確実に本発明の効果を得ることができるようになる。
【0017】
請求項4によれば、弁座を筒部の開口端面によって、突出端面を筒部の外周面に突出形成したリブの端面によって、それぞれ容易に形成することができ、本発明の効果を確実に得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態を適用した熱源機の模式図である。
【図2】実施形態に係る逆流防止装置の断面図である。
【図3】図3(a)は図2の部分拡大図として圧着状態での閉弁状態を示し、図3(b)は図3(a)の一部を部分拡大状態により示す部分断面図である。
【図4】図4は開弁状態を示す図3(a)対応図である。
【図5】図5(a)は図3(a)のA−A線における一部省略断面図であり、図5(b)は図4のB−B矢視状態でバネ受け部材と弁座との関係を示す拡大断面説明図である。
【図6】バネ受け部材、バネ、弁座の分解斜視図である。
【図7】本発明の課題を示すための逆流防止装置の例を示す図3(a)対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る逆流防止装置を適用した例として、給湯機能・湯張り機能・追い焚き機能を備えた複合型の熱源機を示す。なお、本発明の逆流防止装置を適用する対象としては、図1に例示したものに限らず、一次側の流路と二次側の流路とを備えた流体供給であって、通常時(正常時)には一次側圧力の方が高くて閉弁状態を維持する一方、一次側圧力が低下するような異常時にはその圧力変動により自動的に開弁して二次側から一次側の流路への逆流を防止する必要のある流体機器であれば好適に適用することができる。
【0021】
図1に示す熱源機1は、給湯回路2と、浴槽61内の湯水の追い焚きを行う追い焚き循環回路3と、浴槽61に湯張りするために給湯回路2の湯を追い焚き循環回路3に注湯して浴槽61に落とし込む注湯回路4と、上記給湯回路2及び追い焚き循環回路3の湯水を熱交換加熱するために燃焼バーナ51を内蔵した缶体5とを備えたものである。
【0022】
上記給湯回路2は、水道管に接続された入水路21から給湯用熱交換器22に導入された水を燃焼バーナ51の燃焼熱により熱交換加熱し、加熱後の湯を出湯路23に出湯して下流端の給湯栓62まで給湯させるようになっている。上記入水路21と出湯路23との間には上記熱交換器22をバイパスするバイパス路24が設けられて、バイパス制御弁24aの開度調整により上記出湯路23からの出湯に対する水の混合比が変更調整されて上記の給湯栓62等に対する温度調整が可能となっている。
【0023】
上記入水路21には、入水流量センサ25と、入水温度センサ26とが配設されている一方、上記出湯路23には、上記熱交換器22の出口近傍位置で缶体5から出湯された直後の出湯温度を検出する缶体温度センサ27と、給湯流量制御弁28と、上記給湯栓62もしくは後述の注湯路41に供給される湯水の温度を検出する給湯温度センサ29とが配設されている。
【0024】
上記追い焚き循環回路3は循環路31と、循環ポンプ32と、追い焚き用熱交換器33とを備えている。循環路31は循環ポンプ32の作動により浴槽61内の湯水を上記熱交換器33に戻す戻り路31aと、上記熱交換器33において共通の燃焼バーナ51の燃焼熱により追い焚き加熱された湯水を浴槽61に供給する往き路31bとから構成されている。戻り路31aには、循環湯水の循環方向上流側から順に、循環ポンプ32と、循環流の通過によりON指令を出力する水流スイッチ34と、戻り側の循環湯水の温度を検出することにより浴槽61内の湯水の温度(風呂温度)を検出する風呂温度センサ35とが配設されている。
【0025】
また、上記給湯回路2の出湯路23と上記循環路31との間には、出湯路23からの湯水を上記循環路31に流入させることにより浴槽61に注湯して湯張りするための注湯路41が設けられている。この注湯路41はその上流端が給湯温度センサ29の下流側位置の出湯路23から分岐し、下流端が循環路31の例えば戻り路31aに連通されている。上記注湯路41には、注湯流量を検出する注湯流量センサ42と、開閉制御により湯張り実行又は停止の切換を行う注湯電磁弁43と、給湯回路2側への逆流入を阻止するための二段配置の逆止弁44,44とが配設されている。
【0026】
上記注湯電磁弁43が開かれて注湯が開始されると、出湯路23からの湯が注湯路41を通して戻り路31aに供給され、供給された湯は戻り路31a等を通して浴槽61まで注湯されて、浴槽61の湯張りが行われることになる。上記の入水路21〜出湯路23に至る給湯回路2の流路が一次側流路(又は単に「一次側」)を構成し、上流側である出湯路23から分岐した後の注湯電磁弁43を境にして下流側の注湯路41及び戻り路31a(又は往き路31bを加えた循環路31)を経て最下流側である浴槽61までの流路が二次側流路(又は単に「二次側」)を構成する。
【0027】
そして、上記の注湯回路4に逆流防止装置7が組み付けられている。この逆流防止装置7は、その二次側接続口71(例えば図2参照)が上記の逆止弁44,44の中間位置の注湯路41に連通するように接続され、一次側接続口72(例えば図2参照)が給湯回路2の入水路21に連通してその給水圧を導入し得るように導圧路72aを介して接続され、排水接続口73(例えば図2参照)が排水路73aを介して熱源機ケース1aまで延ばされている。
【0028】
以下、実施形態に係る逆流防止装置7について図2以降の図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明では、図面の上下方向を上下方向として、あるいは、図面の左右方向を左右方向として説明するが、逆流防止装置7の実際の用い方は図面に示した状態に限らず、一次側接続口72や二次側接続口71が横向きになるように横倒しに倒した状態や、上下逆転した状態等の様々な配置にしてもよいことはいうまでもない。
【0029】
この実施形態の逆流防止装置7は、ハウジング8と、ダイヤフラム91及びダイヤフラムプレート92からなる弁体9と、弁体9を開側に付勢するバネ(例えばコイルスプリング)10と、このバネ10の一端を支持してその付勢力を弁体9に伝達するバネ受け部材11とを備えたものである。このバネ受け部材11の後述のドーナッツ円環部111(例えば図3参照)がスペーサを兼ねている。
【0030】
上記ハウジング8は、本実施形態では2つの分割ハウジング部81,82を互いに結合させて形成したものであるが、分割数等については適宜選択し得る。ハウジング8には、二次側接続口71から延びる二次側通路74と、排水接続口73から上記二次側通路74に直交する方向に延びて二次側通路74内に突出した状態で開口する排水通路75と、この排水通路75の突出端を形成することになる筒部75aの開口端面により構成された弁座76と、この弁座76に臨むように拡がりかつ一次側接続口72と一次側の内圧を導入可能に連通された一次側圧力作動室77とが形成されている。そして、一次側圧力作動室77と弁座76との間を仕切るように弁体9が設置され、弁座76に弁体9が当接して圧着することで弁座76の開口が閉状態(図2に示す状態)にされて二次側通路74と排水通路75との間が遮断される一方、弁体9が弁座76から図面右側に離反することで弁座76の開口が開状態にされて二次側通路74と排水通路75とが連通されることになる。
【0031】
上記一次側圧力作動室77を区画形成するハウジング8の周壁部分には、ダイヤフラム91の外周止着縁911(図3(a),図3(b)参照)が気密状態に内嵌・保持される周溝78と、ダイヤフラム91の折返し部912の折返し形状を維持するようにその折返し部912の内側である凹み内に対し図3(a)又は図3(b)の左から右へ差し入れられて反転を防止するための反転防止壁としての周壁79とが形成されている。又、上記一次側圧力作動室77を区画するハウジング8の内面には、開弁状態(図4参照)の弁体9のダイヤフラムプレート92のフランジ部923と当接してそれ以上の離反側(開弁方向;図面の右側)への移動を規制する当止部771が形成されている。
【0032】
上記弁体9は、ダイヤフラム91(図3(a)参照)と、このダイヤフラム91の右側(一次側接続口72からの一次側圧力が作用する側)に重ね合わされたダイヤフラムプレート92とで構成されている。ダイヤフラム91は、外周縁位置に形成された上記の外周止着縁911と、その内周側位置で折り返すように屈曲された比較的薄肉の折返し部912と、中央寄り位置に比較的厚肉で平板状に形成された弁部913とからなるものである。ダイヤフラムプレート92は、平板状に形成されて上記弁部913に密着する底壁921と、底壁921の周囲から立ち上がる周壁922と、周壁922の上端から外周側に張り出したフランジ部923と、上記底壁921の中央位置から垂下する係合凸部924とを備えてなるものである。
【0033】
上記弁部913は弁座76よりも十分に大径に設定され、その左面(弁座76と相対向する側の面)から弁座76の内周側部位に当接するように無端環状のリップ部914が突出して形成されている。リップ部914は先端側が尖って弁座76に対し線接触で当接し得るよう例えば逆三角形等の横断面形状に設定されている。そして、弁部921の中央位置の貫通孔に対し上記係合凸部924が圧入気味に押し込まれることにより、ダイヤフラムプレート92とダイヤフラム91とが脱落しないように一体に組み付けられている。
【0034】
筒部75aの外周面には、図5又は図6に示すように複数(図例では4つ)のリブ75b,75b,…が互いに間隔を開けて筒軸X方向に延びるように形成され、このリブ75b,75b,…を含めた筒部75aの開口端面によって上記の弁座76が構成されている。すなわち、弁座76は、図5に示すように、筒部75aの開口端面の内の内周側部位76a及び外周側部位76bと、上記各リブ75bのリブ端面76c,76c,…とが互いに面一の平坦面に形成されたものである。上記の内周側部位76aと外周側部位76bとは、バネ受け部材11が筒部75aに対し筒軸Xと同軸に組み付けられ、閉弁状態にされた際にバネ受け部材11の後述のドーナッツ円環部111の内周縁111aが位置することになる弁座76上の仮想線N(図5参照)を境界として内外周の各側に分けられる部位である。そして、上記バネ受け部材11は、所定板厚を有するスペーサとしてのドーナッツ円環部111と、このドーナッツ円環部111の外周縁から直角に折曲された返し縁部112とからなるものである。
【0035】
上記のバネ受け部材11の外径である返し縁部112の外径D1(図6参照)はバネ受け部材11が収容されるハウジング8の内周面83の内径D2よりも所定のクリアランスCに対応する分だけ小でかつ弁部913とほぼ同径に設定される一方、返し縁部112の内径はバネ10の外径よりも大に設定され、返し縁部112の内側位置においてバネ10の一端を保持するようにされている。又、バネ受け部材11の内径であるドーナッツ円環部111の内径D3は上記リップ部914(図3(a)参照)の外径よりも僅かに大でかつ筒部75aの外径D4よりも小に設定されている。さらに、上記各リブ75bの上記外径D4位置からの突出寸法Tは上記クリアランスCに対応する寸法(例えば上記クリアランスCと同等寸法)に設定されている。
【0036】
以上の如きバネ受け部材11のドーナッツ円環部111は、その上面においてはダイヤフラム91の弁部913のリップ部914よりも外周側範囲の下面に対しバネ10からの圧縮復元力を受けて当接した状態に維持される一方、下面においては、特に閉弁状態である圧着状態において、その内周縁111a寄りの内周側範囲が弁座76の外周側部位76b及び各リブ端面76cに対し一次側圧力P1を受けて当接・密着するようにされている。
【0037】
以上の逆流防止装置7においては、熱源機1(図1参照)に対する給水側設備等が正常であれば、一次側接続口72を通して一次側圧力作動室77内に一次側圧力P1として給湯回路2の入水路21の最上流から給水圧が導入され、弁体9に対してはその給水圧(例えば200kPa)が常時作用することになる。一方、浴槽61が不使用で注湯回路4(図1参照)を用いた湯張りが行われていない状態(注湯電磁弁43が閉状態)では二次側通路74内の二次側圧力はほぼ大気圧になって一次側圧力よりも小となり、又、注湯電磁弁43が開かれて出湯路23から給湯回路2の湯が注湯回路4を通して注湯されて湯張りが行われている状態でも最上流側の給水圧が種々の流路抵抗を受けた後になるため注湯に基づき二次側通路74に作用する二次側圧力P2は一次側圧力P1よりも小となる。さらに、浴槽61に所定水位まで湯張りされた状態でも、その湯張り水位に基づき二次側通路74に作用する二次側圧力P2は給水圧に基づく一次側圧力P1よりも小となる。このため、弁体9は、弁体9を挟んで一次側圧力作動室77からの一次側圧力P1(図2参照))と、二次側通路74からの二次側圧力P2との差圧に基づき、弁座76に押し付けられて、閉弁状態となって二次側通路74と排水通路75との間が遮断された状態になる。この閉弁状態としては、上記の差圧の如何によって、弁体9を構成するダイヤフラム91のリップ部914の先端部が弁座76に対し線接触状態で当接した当接状態から、さらに強く弁座76側に押し付けられてリップ部914が若干圧縮変形して弁座76と面接触状態に至った圧着状態(図3(a)又は図3(b)に示す状態)までを含むものである。
【0038】
このような圧着状態に陥ったとしても、リップ部914のそれ以上の圧縮変形がバネ受け部材11のドーナッツ円環部111によって制限されることになる。これにより、ダイヤフラム91(特にリップ部914)の過度の圧縮変形を防止・抑制することができ、リップ部914やこれを有するダイヤフラム91の耐久性を最も良好に維持させることができるようになる。すなわち、圧着状態においては、図3(b)に詳細を示すように、バネ受け部材11のドーナッツ円環部111がダイヤフラム91の弁部913と、弁座76の外周側部位76bとの間に挟まれた状態となる。このため、ドーナッツ円環部111が弁部913と弁座76との間隔を所定寸法に維持するためのスペーサの役割を果たすことになり、これにより、弁体9のそれ以上の移動(弁座76に押し付けられる側への移動)が規制されることになる。この移動規制により、リップ部914の圧縮変形が一定量を限度としてそれ以上の変形発生を規制・阻止することができ、特にリップ部914自体あるいはリップ部914を有するダイヤフラム91が弾性限界を超えてしまう等の事態発生を確実に阻止して耐久性が低下する事態の発生を回避することができる。つまり、弁座76の内周側部位76aがリップ部914との密着により閉弁状態を維持する本来の弁座として機能し、外周側部位76bがドーナッツ円環部111を当止させてリップ部914の圧縮変形(圧縮代)を一定量に規制するストッパとなる当止部として機能することになる。又、ドーナッツ円環部111は、リップ部914の外周側から弁部913の外周側位置までの範囲のダイヤフラム91の下面を覆って密着し、その範囲のダイヤフラム91を平面状態に維持するように支持しているため、一次側圧力P1を受けても弁部913を確実に平板状態に維持することができ、安定した閉弁状態の維持を図ることができる。
【0039】
以上のような圧縮代を制限するためのドーナッツ円環部111の板厚設定は次のようにすればよい。例えば図3(a)に示すように、リップ部914の非変形時の突出寸法Hに対し許容圧縮変形量(許容圧縮代)をSとすれば、ドーナッツ円環部111の肉厚EとしてE=H−Sを設定するようにすればよい。これにより、リップ部914の圧縮代を確実に許容圧縮代Sに制限することができる。なお、肉厚Eをより大きくすれば、リップ部914の圧縮変形量Sはより小さくなって弁座76に対する密着範囲もより小さくなり、肉厚Eをより小さくすれば、リップ部914の圧縮変形量Sはより大きくなって弁座76に対する密着範囲もより大きくなる。従って、ダイヤフラム91の素材の有する弾性及び閉弁機能等を考慮して許容圧縮変形量Sを設定し、この許容圧縮変形量Sに基づいてバネ受け部材11のドーナッツ円環部111の肉厚Eを設定するようにすればよい。
【0040】
一方、注湯回路4を通して注湯されて湯張りが行われている状態等において、例えば停電等の原因により給水源から給湯回路2(入水路21)への給水圧力が低下したり、負圧傾向になったりする事態が生じた場合には、一次側圧力作動室77に導入される一次側圧力P1も同様に低下したり負圧傾向となる。この場合には、一次側圧力P1が二次側通路74を通して導入されている二次側圧力P2と略同等まで低下すると、弁体9は開弁して注湯路41に連通された二次側通路74と排水通路75とが互いに連通した状態になる(図4参照)。このため、例えば逆止弁44が異物噛み込み等の異常を生じて注湯路41を通して逆流が生じたとしても、その逆流は二次側通路44、開弁状態の弁座76の開口及び排水通路75を通して排水され、一次側である給湯回路2の側への逆流を確実に防止することができることになる。
【0041】
以上のように一次側圧力P1や二次側圧力P2の圧力変動に基づき開閉移動する弁体9に付随してバネ受け部材11も開閉方向(図3(a)の左右方向)に移動することになる。この際、弁体9及びバネ受け部材11の開閉移動をスムースに行わせるためのクリアランスC(ハウジング8の内周面83の内径D2とバネ受け部材11の外径D1との差)の存在に起因して、バネ受け部材11が最大でクリアランスC分だけ偏心方向(筒軸Xに直交する方向,上記開閉方向に直交する方向)に位置ずれを生じるおそれがある。ところが、本実施形態の場合、弁座76が内周側部位76a及び外周側部位76bに加えて各リブ端面76cによって構成されているため、たとえ上記の位置ずれが生じたとしても、その位置ずれ後のバネ受け部材11を上記の各リブ端面76cによって確実に支持することができる。例えば図6(b)に例示するように、筒軸Xに対し同軸位置にあるバネ受け部材(実線で示すバネ受け部材)11が一点鎖線で示す位置まで偏心方向へ位置ずれしたとしても、各リブ端面76cが外周側部位76bよりも外周側に拡がっているため、この各リブ端面76cによりバネ受け部材11を確実に支持して閉弁時には弁座76に密着させることができる。又、さらに最悪の場合、位置ずれによって内周縁111aが外周側部位76bよりも外周側に外れそうになったとしても、上記の通り各リブ端面76cによってバネ受け部材11を確実に支持することができ、万一の脱落という事態の発生を確実に回避することができる。
【0042】
以上要するに、弁体9及びバネ受け部材11の開閉移動をスムースに行わせるためにハウジング8の内周面83との間にクリアランスCを設定することに起因して、弁体9と共に又は弁体9とは別にバネ受け部材11が筒軸Xに対し偏心方向に位置ずれし易くなり、バネ受け部材11が弁座76に対する本来の閉弁位置から位置ずれしたとしても、リブ端面76cによってバネ受け部材11のドーナッツ円環部111を支持することができる。これにより、閉弁状態において、バネ受け部材11を上記の本来の閉弁位置の場合と同様に弁座76の平坦面に密着した状態に維持させることができ、確実な閉弁機能を発揮し得る状態に維持することができる。
【0043】
さらに、上記のリブ端面76cによって位置ずれ後のバネ受け部材11を確実に支持することができるため、弁座76を構成する筒部75aの肉厚(リブ75bを除く)として、リップ部914が密着し得る最低限の幅の内周側部位76aと、バネ受け部材11の内周縁111a寄りの範囲が密着し得る最低限の幅の外周側部位76bとを備えるように、つまり最低限に寸法設定することができ、これにより、開弁時に二次側通路74から逆流湯水を排水通路75に流したり吸気して二次側をブレークさせたりするための排水・吸気用の通路開口断面積を十分に確保しつつ、ハウジング8の大型化を回避することができる。
【0044】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、スペーサをバネ受け部材11の一部であるドーナッツ円環部111により構成しているが、これに限らず、バネ受け部材とは別個にスペーサを設けるようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では4つのリブ75b,75b,…を形成したものを例示しているが、これに限らず、バネ受け部材11が最も位置ずれし易い方向(図例のものでは重力作用を受けて位置ずれすることになる下方)に突出する1つのリブ75c(図6(a)に一点鎖線で示すリブを参照)のみを形成し、この1つのリブ75cにより1つのリブ端面(突出端面)のみを形成するようにしてもよい。
【0046】
さらに、上記実施形態では弁座76を構成する各リブ端面(突出端面)76cとして、リブ75bを形成し、このリブ75bの弁座76側の端面(リブ端面)により形成するようにしているが、これに限らず、リブ75bの形成の代わりに、弁座76の外周部から凸部を形成し、この凸部の弁座76側の端面により突出端面を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
7 逆流防止装置
8 ハウジング
9 弁体
72 一次側通路
74 二次側通路
75 排水通路
75a 筒部
75b,75c リブ
76 弁座
76c リブ端面(突出端面)
91 ダイヤフラム
111 ドーナッツ円環部(スペーサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉弁方向に作用される一次側圧力と、開弁方向に作用される二次側圧力との差圧に基づいて、ハウジングに内蔵されたダイヤフラムが弁座に対し当接・離反することにより、排水通路と二次側通路との間を遮断状態又は連通状態に切換するように構成され、上記ダイヤフラムが弁座に当接して閉弁する際に、そのダイヤフラムと弁座との間に挟み込まれることにより上記弁座に押し付けられるダイヤフラムの圧縮代を所定範囲に制限するドーナッツ円環状のスペーサを備えた逆流防止装置において、
上記弁座にはその外周側位置から部分的にこの弁座と面一に連続するよう突出する少なくとも1つの突出端面が形成され、
上記弁座の外径は上記スペーサの内径よりも大に設定される一方、上記突出端面の突出寸法は上記スペーサの弁座に対する偏心方向の位置ずれ可能寸法に対応して設定されている
ことを特徴とする逆流防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の逆流防止装置であって、
上記突出端面は、上記スペーサが重力作用により位置ずれし易い方向に突出するように形成されている、逆流防止装置。
【請求項3】
請求項1に記載の逆流防止装置であって、
上記突出端面は、上記弁座から放射方向にかつ均等配置で突出するよう3つ以上形成されている、逆流防止装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に記載の逆流防止装置であって、
上記弁座は筒部の開口端面によって構成され、上記突出端面はその筒部の外周面に突出形成されたリブの端面によって構成されている、逆流防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169563(P2011−169563A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36336(P2010−36336)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】