説明

逆火防止装置およびそれを用いた酸水素ガス発生装置

【課題】電解水溶液を用いて水を電気分解して、酸素ガスと水素ガスを発生させ、それらを混合状態で取り出すようにした酸水素混合ガス発生装置において、逆火問題および、酸水素ガスに混入した水蒸気がガス導出経路内で凝縮・結露することによる安定動作および安全上の問題に対して、信頼性の高い酸水素ガス発生装置を提供する。
【解決手段】発生ガス導出経路に、水に比較して飽和蒸気圧が十分に低い水溶性物質を溶解させた水溶液8またはその原液を用いた液体バブリング方式の逆火防止装置を設け、さらに乾式逆火防止器を接続することにより、酸水素ガス中の水蒸気・水分を除去し、配管内結露などの問題を生じない、安全性および信頼性の高い酸水素ガス発生装置となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水を電気分解して酸素ガスと水素ガスを発生させ、それらを混合状態で取り出すようにした酸水素混合ガス発生装置およびそれに用いる逆火防止装置の構成と構造に関するものである。そのガスを燃焼させて、溶接や溶断、溶射加工などを行なうことができる。
【背景技術】
【0002】
水を電気分解して水素と酸素を発生させる方法としては、それぞれのガスを分離した状態で発生させる方法と、それぞれのガスを混合した形態で発生させる方法がある。本発明は、後者の水素と酸素を混合した形態で発生させる酸水素ガス発生装置に関する。
【0003】
水素と酸素との混合ガス発生装置としては、従来から、電解槽内部に複数の電極板を積層し、その間に絶縁部材を挿入介在させて、それぞれの電極板の間を隔離絶縁した構造のものが広く使用されている。ところが、時間の経過とともに、電解槽内の発熱により、電解液の温度上昇とともに、発生さすべき酸水素ガスのほかに水蒸気が多量に混入するようになり、酸水素ガスの純度が低下するだけでなく、その水蒸気がガス導出経路内で凝縮・結露して、計器類の動作不良やガス燃焼用のバーナーの動作不良や逆火の原因となり、安定動作および安全上の問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の水素と酸素との混合ガス発生装置におけるこのような問題を解消して、水素・酸素混合ガスを安定的で安全に発生・利用できる酸水素ガス発生装置を提供するものである。
【0005】
従来では、電解槽で発生させたガスをとりだすガス導出経路に水式逆火防止器を用い、電解槽本体に及ぶ逆火を防止するようにしている。酸水素混合ガスではアセチレンと酸素の組み合わせに比較して、ガスそのものに最初から酸素を含んでいるので燃焼反応がガス供給源に逆流する逆火現象を生じやすい欠点があるので、その対策を十分に施す必要がある。また、電解槽内の発熱により、電解液の温度上昇とともに、発生さすべき酸水素ガスのほかに水蒸気が多量に混入するようになり、酸水素ガスの純度が低下するだけでなく、その水蒸気がガス導出経路内で凝縮・結露して、計器類の動作不良やガス燃焼用のバーナーの動作不良や逆火の原因となり、安定動作および安全上の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、電解水溶液を電気分解して酸素ガスと水素ガスを発生させ、それらを混合状態で取り出すようにした酸水素混合ガス発生装置において、発生させたガスをとりだすガス導出経路に設ける逆火防止装置の構成に関し、水に比較して飽和蒸気圧が十分に低い水溶性物質を溶解させた水溶液またはその原液を用いた液体バブリング方式を採用することを特徴とし、これにより本来の逆火防止機能だけでなく、酸水素ガス中の水蒸気・水分を除去し、結露などの問題を生じない、安全性および信頼性の高い酸水素ガス発生装置を提供するものである。
【0007】
酸水素ガス発生装置は水を電気分解し、水素ガスと酸素ガスの混合ガスを発生させる装置である。水の電気分解は電解液(電解質水溶液・KOH、NaOH、等)に電気を流すことにより起きる電気化学反応である。陽極(+)では水酸イオンOH−が反応、電子を電極に放出して酸素分子O2と水分子が発生する。陰極(−)では水分子が電子を受け取って水酸イオンOH−と水素分子H2が発生する。この様に水が電気によって水素と酸素に分解され、気体(ガス)として取り出される。本装置での酸水素ガス発生装置は、酸素ガスと水素ガスを分離しないで混合ガス状態として燃料ガスとして取り出される。電解液の電解質は電気を流し易くし、水の電気分解を促進する役割をしている。全体としては水(H2O)だけが電気分解によりガスとなって消費され、電解質は分解されることなく残るので、水のみを補給すればよい。本発明では、発生させたガスをとりだすガス導出経路に逆火防止装置を設け、水に比較して飽和蒸気圧が十分に低い水溶性物質を溶解させた水溶液またはその原液を用いた液体バブリング方式を採用することにより、本来の逆火防止機能だけでなく、ガスに対する除湿機能を持たせ、これにより酸水素ガス中の水蒸気・水分を除去し、結露などの問題を生じない、安全性および信頼性の高い酸水素ガス発生装置を提供するものである。
【0008】
商用電源で水を電気分解し酸素と水素を連続的に発生させる装置であるので、わずらわしいガスボンベ等一切不要となり、電源投入ですぐに燃料などに利用できる。酸水素ガス発生装置は水を電気分解し、完全燃焼に必要な酸素自体を含む水素ガス2:酸素ガス1の混合ガスを発生させる装置であり、ガス貯蔵部を設けず、発生させたガスを直ちに利用するので、環境への影響なく、またガス貯蔵部を持たないので爆発の危険性なく、安心して使用することができるようになる。
【0009】
本発明として、酸水素ガス発生装置に用いられる逆火防止装置の構造の実施例を図1に示す。1はステンレス(SUS304)製の円筒容器であり、本実施例では、内径160mm、高さ400mm、管の厚さ5mmであり、上端にフランジが溶接で取り付けられている。2はステンレス円板蓋(SUS304、厚さ10mm)であり、ゴムパッキング3を介してボルトおよびナット4で容器1に密封されるように取り付けられている。5はガス導入管であり、ステンレス円板蓋2を介して容器内部にステンレス管5aに接続されており、下部はL型としてあり、その部分に数個の穴(φ1mm程度)があけられており、導入ガスが泡状となる(バブリング)ようにしている。6はガス導出部である。7は液面計であり、液面を確認するための透明チューブでできている。
【0010】
ここで、8は本発明に関わる水溶液であり、ここではエチレングリコール:水=2:1の割合のものを用いた(エチレングリコール100%を用いても良い)。エチレングリコール水溶液は自動車のエンジン冷却用の不凍液として入手可能である。不凍液は防錆剤などが添加されているが問題がない。エチレングリコールは沸点が約200℃であり、常温では蒸気圧が十分に低く、その水溶液は混合モル比率に応じて水の蒸気圧を著しく低下させる。これはラウール(Raoult)の法則として知られている。水の蒸気圧の低下はこの水溶液が除湿効果を持つことを意味する。また水の蒸気圧の低下は沸点の上昇を意味するが、これは熱力学の状態図で説明されるように、凍結温度(凝固点)の低下と直接関連している。このため不凍液を除湿剤としても利用することができるのである。不凍液の利用は寒冷環境での装置運用にも好都合である。エチレングリコールの代わりにプロピレングリコールを用いることもできる。同様に塩化カルシウムも除湿効果を有し、除湿目的に利用できるが、容器の腐食などの問題があり、若干利用しにくい。9は液滴除去フィルタであり、泡状のガスがはじける際に生じる微小液滴を除去するためのものである。メッシュ状およびスポンジ状のステンレスでできている。
【0011】
図2は、本発明の逆火防止装置に接続して使用することにより、さらに安全性および信頼性を高めるための乾式逆火防止器の断面構造を示すものである。21はフランジ付きのステンレス円筒容器であり、本実施例では内径100mm、高さ120mmのものを用いた。22はステンレス蓋である。23は密封用のゴムパッキングであり、周辺はボルトとナット24で密封固定されている。25はガス導入口であり、26はガス導出口である。27は格子状のステンレスに目の細かいメッシュを貼った仕切り板である。28は粒径0.1−0.2mmの微粒子を充填したもの(砂)である。29はステンレス繊維(リボン状)を充填し、砂状微粒子を押さえて移動しないようにするとともに、ガスが導出口に導かれやすくするようにしている。このようにして、ガス導出口からの逆火は29と28によって阻止される。ガスは微粒子間の狭い隙間を通ってくるため、燃焼反応は28で完全に消滅してしまう。また、充填微粒子は水分の除去にも効果がある。従来のアセチレンや酸素の場合では小型の逆火防止器が用いられているが、酸水素ガスでは性能が十分ではなく、信頼性に問題があったが、本発明の乾式逆火防止器の採用により信頼性が著しく高まる。
【0012】
図3は、酸水素ガス発生装置の全体を示す。図3Aは平面図、図3Bは正面図である。図3Aの31は電解槽であり、発生した酸水素ガスは、ガスホース配管により、本発明の逆火防止装置32(図1のもの)および乾式逆火防止器33(図2のもの)を経て、ガス出力34となる。35は消費した水を補給するための水タンクであり、圧力ポンプ36により電解槽31に水が補給される。水タンクと水道栓を切り替えで併用してもよい。電解槽31の液面モニターを用いることのより、自動給水もできるようにした。37は電解槽や直流電源の発熱に対する冷却ファンである。38は商用電源200V,3相、50Aへの接続端子である。 図3Bの39は直流電源であり、スイッチング電源方式のものを採用しており、容量50V,200Aのものを用いている。スイッチング電源方式のものは、小型、軽量で大容量という長所がある。この電源は定電圧定電流制御方式であり、一定ガス発生条件に対しては定電流動作モードを適用でき、使いやすい。40は制御盤であり、電源のON,OFFの操作および電解槽31内のガス圧力をモニターして、設定ガス圧力を維持するように直流電源39を制御する。圧力0−0.5MPaで制御できるようにした。また、電解槽には安全弁を設け、さらに電解槽の温度を監視し、安全動作を確保するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明は、電解槽で発生させたガスをとりだすガス導出経路に逆火防止装置を設け、その構成において、水に比較して飽和蒸気圧が十分に低い水溶性物質を溶解させた水溶液またはその原液を用いた液体バブリング方式を採用することにより、本来の逆火防止機能だけでなく、ガスに対する除湿機能を持たせ、発生させた酸水素ガス中の水蒸気・水分を除去し、配管内結露などの問題を生じない、安全性および信頼性の高い酸水素ガス発生装置を提供するものである。また本発明は寒冷環境での装置運用にも好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示す液式逆火防止装置の断面図である。
【図2】本発明に接続して好適の乾式逆火防止器の断面図である。
【図3】本発明酸水素ガス発生装置の一実施例の平面図および正面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 ステンレス容器
2 ステンレス円板蓋
3 ゴムパッキング
4 ボルトおよびナット
5 ガス導入部
5a ステンレス管
6 ガス導出部
7 液面計
8 水溶液
9 液滴除去フィルタ
21 ステンレス容器
22 ステンレス蓋
23 ゴムパッキング
24 ボルトおよびナット
25 ガス導入口
26 ガス導出口
27 メッシュ状仕切り板
28 充填微粒子(砂)
29 充填ステンレス繊維
31 電解槽
32 図1に示す逆火防止装置
33 図2に示す逆火防止器
34 ガス出力
35 水タンク
36 圧力ポンプ
37 冷却ファン
38 電源200V,3相への接続端子
39 直流電源
40 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水溶液を用いて水を電気分解して、酸素ガスと水素ガスを発生させ、それらを混合状態で取り出すようにした酸水素ガス発生装置において、発生させたガスをとりだすガス導出経路に設ける逆火防止装置の構成に関し、水に比較して飽和蒸気圧が十分に低い水溶性物質を溶解させた水溶液またはその原液を用いた液体バブリング方式であることを特徴とする逆火防止装置およびそれを用いた酸水素ガス発生装置。
【請求項2】
請求項1において、該水溶性物質がエチレングリコールまたはプロピレングリコールまたは塩化カルシウムであることを特徴とする逆火防止装置およびそれを用いた酸水素ガス発生装置。
【請求項3】
請求項1において、微粒子を充填した構造の乾式逆火防止器を接続したことを特徴とする逆火防止装置およびそれを用いた酸水素ガス発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−126809(P2010−126809A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328676(P2008−328676)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(507210432)株式会社ジーコス (3)
【Fターム(参考)】