説明

透明な宝石類の観察器具

【課題】宝石類に照射する光源として使用されていた半透明部材及び反射板部材等の明度や色調の影響を受けることなく、その場の環境からえられる光の波長を効率よく被観察体である宝石類に照射し、ラウンドブリリアントカット等の従来のカットを施された個々の宝石類が持つ特徴をより細部に亘り観察すること、更には近年増加している反射像の模様の見え方に重点を置いた新しいカットの特徴的で微細な反射像も的確にとらえることのできる観察器具の提供。
【解決手段】被観察体である宝石類に最も高質な光を効果的に照射する手段として透明部材を使用した筒体に偏角面を形成し、その偏角面で発生した光を宝石類に照射し得る光源とした。また、近年増加している様々なカット形状の宝石類の反射能力の観察に対応できるよう前記透明な筒体の下部に前記透明な筒体とは異なる色調の有色部材で形成した筒体を着脱可能に構成し、前記偏角面からの光と有色筒体の光の接点を可変できる構造とした。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤモンド等の内部反射光を発する透明は宝石類の観察器具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、宝石類の価値基準は、カラット、カラー、クラリティー、カットの4要素で評価されることが世界的常識となっている。その中のひとつであるカットについては唯一人間が手を加える要素であり、宝石類の美しさ、更には価値までも大きく左右するものであるため重要視されている。
【0003】
そのため個々の宝石類に施されたカット研磨の状態を視覚判別し、確かな評価を必要とするが、拡大鏡だけでそれを行うことは高度な技量を持つ熟練者には可能であっても一般消費者には不可能であり、特に基準が厳しく細かいグレーディングの行われるラウンドブリリアントカットにおいては高度な技量を持つ熟練者でさえ確かな評価を行うことは困難であった。
【0004】
ラウンドブリリアントカットを主とした輝きの度合いを重要視するカット研磨が施された宝石類の個々の状態を熟練業者や一般消費者を問わず、誰にでも容易に判別できる器具として特公平6−103268号及び特開平8−271434号がある。前者は上筒部が半透明材で下部筒体が不透明材からなり、被観察体である宝石類を照射する光源は、上部半透明筒体から第一光源をえる構造となっている。また後者は、上部に円盤状の反射板を有し、着色された透光性採光筒を備え、被観察体である宝石類に照射される第一光源は上部の反射板からえる構造となっている。前者後者双方とも第一光源とは異なる色の第二光源を下部筒体から得る構造になっており、それら二つの異なる光に宝石類が反応し、反射像となって現れるため、その反射像の模様の形状、規則性、対称性、明度等の観察により、カット精度の良否、輝きの度合い、価値の有無が容易に評価できるとされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特公平6−103268号及び上記特開平8−271434号に示されている器具など従来の技術では、被観察体の宝石類に照射される光は、半透明材の透過光又は反射板の反射光であるため、光源として使用されている部材の色や明度の影響を受けやすく、したがって宝石類にもその影響を与えてしまうことになるので、個々の宝石類が持つ反射能力を最大限に引き出した観察は不十分である。
【0006】
更に近年、カット研磨技術の向上にともない、より差別化をはかるため、宝石の形状やカット面数及びカット面角度等に様々な工夫を凝らし、器具で観察した際の反射像の模様の見え方を重要視する宝石類の新しいカットが増加してきたが、従来の技術では、ラウンドブリリアントカットの観察を主として考案されているため、第一光源と第二光源の入射角度が限定されているので、その微細な反射光や印象的な反射像を視覚確認することが困難となっている。
【0007】
本発明の観察器具は、半透明部材及び反射板部材等の明度や色調の影響を受けることなく、その場の環境からえられる光の波長を効率よく被観察体である宝石類に照射し、ラウンドブリリアントカット等の従来のカットを施された個々の宝石類が持つ特徴をより細部に亘り観察すること、更には近年増加している反射像の模様の見え方に重点を置いた新しいカットの特徴的で微細な反射像も的確にとらえることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
被観察体である宝石類に最も高質な光を効果的に照射する手段として透明部材を使用した筒体に偏角面を形成し、その偏角面で発生した光を宝石類に照射し得る光源とした。
【0009】
また、近年増加している様々なカット形状の宝石類の反射能力の観察に対応できるよう前記透明な筒体の下部に第二光源となり得る有色部材で形成した筒体を着脱可能に構成し、前記偏角面からの光と有色筒体の光の接点を可変できる構造とした。
【実施の形態】
【0010】
以下、本発明の実施をするための形態について添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明である宝石観察器具を透明な部材を使用して一体で形成した際の正面斜視図である。また、図4はその断面図である。透明筒体1の上部に観察孔13を有し、内部に周囲の光を集光する角度を有する偏角面2を配し、そこで生まれた光を第一光源として被観察体である宝石類に照射する。凸部を有する拡大鏡支持部3によって拡大鏡4を着脱可能にセットし、拡大観察時には拡大鏡をつけ、等倍観察時及び写真撮影時には拡大鏡4を外せるようにした。第二光源として筒体下部内に有色筒5を交換可能に付設し、筒体上部偏角面2で発生する第一光源とは異なる色調もしくは明度とした。また有色筒5は外側から透視できるため、筒体と有色筒5の間に広告紙6を挿入した。有色筒5及び広告紙6が容易に脱落しないよう筒体下部内径より小さい穴径にした押さえ板7を着脱可能に付設した。
【0011】
実施の形態においては以上のように構成したが、或いは、透明筒体1については第一光源となる筒体上部と第二光源となる筒体下部を図5及び図6のように分離成形することも可能である。
【0012】
第二光源は有色筒5によって着色することもできるが分離成形した場合、下部筒体に有色部材で形成しても同様の効果をえることができる。この場合、上部筒体と下部筒体を結合してもよいし、第二光源を可変するため異なる大きさの下部筒体と交換できるように着脱可能にすることも有効的である。
【0013】
更に上部筒体偏角面2は光を筒体内部へと誘導できる角度を有するものであれば形状を限定するものではなく、波状形でもよいし、例えば人気キャラクターなどを利用し、偏角面を形成しその効果をえてもよい。
【0014】
また、有色筒5においては1色に限定せず、紙などを使用して作れば複数色を横段に配することも縦割りに配することも容易に可能であり、そうした場合、第二光源が多彩になり、宝石類の光の入射と反射及び光の軌道を視覚観察することに効果的となる。また、有色筒5の外面に何らかの方法で印字もしくは印刷及び彩色などを施した場合、広告紙6と同様の効果をえるので、広告紙6は無くてもよい。同様に印字もしくは印刷及び彩色を必要としない場合においても広告紙6は無くてもよい。
【0015】
また広告紙6は顧客の要望により記念写真やメッセージ等様々に差し替えが可能である。
【0016】
また、有色筒5と押さえ板7とをアクリル材などを用い一体で成形してもよい。また、押さえ板7は筒体下部に小さな凸部を設ければ同様の効果をえられるので無くてもよく、有色筒5及び広告紙6に固定の必要性が無い場合においても無くてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上のごとく構成され、本発明によれば次ぎの効果を奏する。
筒体下部に置かれた被観察体である宝石類に照射する第一光源を、透明筒体に配した偏角面から得ることにより、極めて高質な光が得られるため、従来の半透明部材から得る方法や反射根から得る方法では観察することのできなかった微細なカット面の違いまで観察可能となる。
【0018】
更に近年差別化のため急速に増加している新形状の宝石類の複雑なカット面から現れる印象的な反射像等微細なものまで明確に観察できるようになる。
【0019】
更に、第二光源の入射角度を可変できるようにしたことで従来のカット形状の宝石類と新形状の宝石類の双方の観察が可能となる。
【0020】
また、第二光源となる有色筒5等を挿入または交換できるタイプについては、上部筒体と下部筒体を透明部材で一体成型することが可能となり、生産性を高めるとともに、生産コストを著しく抑えることができるため、極めて廉価商品として幅広い普及が可能となる。
【0021】
更に、透明部材を使用し一体で形成した場合の下部筒体は、外部から第二光源となる有色筒5が透視できるため、その有色筒5の裏面である外側の見える部分に広告文字等を印刷する、又は筒体と有色筒5の間に広告印刷物を挿入することができるのでオリジナリティー豊かな広告媒体としての活用も可能となる。
【0022】
また、そこに消費者の希望に応じて、記念写真やオリジナルメッセージ、イラストや絵などを挿入できることで、観察器具としての役割に加え、被観賞物としての役割を果たすことも可能である。
【0023】
以上のように本観察器具の発明は、宝石業界の更なる技術及び意識向上を成すと共に消費者に対しては、確かな選択眼となって主体性をもった宝石類の購買が可能にとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本宝石類観察器具の実施の形態における正面斜視図である。
【図2】本宝石類観察器具の実施の形態における平面図である。
【図3】本宝石類観察器具の実施の形態における底面図である。
【図4】本宝石類観察器具の実施の形態における内部構造を示す断面図である。
【図5】光源の接点を中心軸線上方より13度とした形態の一例の断面図である。
【図6】光源の接点を中心軸線上方より40度とした形態の一例の断面図である。
【図7】本宝石類観察器具実施の形態における使用状態を示す図である。
【符号の説明】
1 透明筒体
2 偏角面
3 拡大鏡支持部
4 拡大鏡
5 有色筒
6 広告紙
7 押さえ板
8 中心軸線
9 中心軸線上方より13度の位置
10 中心軸線上方より40度の位置
11 透明筒体偏角面からの光源と有色筒体からの光源の接点
12 宝石類
13 観察孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に観察孔を有した透明な筒体に、周囲に存在する光を集光する偏角面を形成し、そこで発生した光を筒体下部に置かれた被観察体である宝石類に照射し、宝石類が持つ反射能力を観察することを特徴とする宝石類観察器具。
【請求項2】
前記透明な筒体の内面に拡大鏡支持部を形成し、かつ、拡大鏡を着脱可能に構成した請求項1の宝石類観察器具。
【請求項3】
前記透明な筒体の下部に前記透明な筒体とは異なる色調の有色部材で形成した筒体を着脱可能に構成した請求項1及び2の宝石類観察器具。
【請求項4】
前記偏角面からの光と前記有色筒体からの光の接点を宝石類の中心軸線上方より略13度円周から略40度円周とした請求項1及び2及び3の宝石類観察器具。
【請求項5】
前記透明筒体下部内面に広告紙等を挿入した請求項1及び2及び3及び4の宝石類観察器具。
【請求項6】
前記透明筒体の下端に前記広告紙等の脱落防止板を着脱可能に構成した請求項3及び4及び5の宝石類観察器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−322908(P2006−322908A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174234(P2005−174234)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(597057689)
【Fターム(参考)】