説明

透明イソシアネートプレポリマーの製造方法

【課題】 技術的改良の結果プレポリマーがもはや濁らなくなった、NCO プレポリマーの製造方法を提供する。
【解決手段】 (1)1 つ以上のポリカーボネートポリオールと(2)化学量論的に過剰な 4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させることからなり、ポリカーボネートポリオール(1)のヒドロキシル価を少なくとも 1.5 ヒドロキシル価単位低下させるように、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応前に、ポリカーボネートポリオールを短行程蒸留又は薄膜蒸留によって処理することを特徴とする、透明で室温保存安定性を有する、NCO-末端プレポリマーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレポリマーが濁らない、ポリカーボネートポリオールベースのイソシアネートプレポリマーの改善された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術によれば、ヘキサンジオールエーテルベースのポリカーボネートポリオールは、モル過剰のポリイソシアネート、一般に 4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートと反応し、末端 NCO 基を有するイソシアネートプレポリマー(NCO プレポリマー)を生ずる。これらのイソシアネートプレポリマーは、ポリウレタン流動性エラストマーを製造するための重要な原料である。
【0003】
これらの NCO プレポリマー、特に 4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート及びヘキサンジオールエーテルカーボネートポリオールベースの NCO プレポリマーの欠点は、一般に、室温保存中、速やかに濁ってしまい、部分的に結晶の沈澱物さえ形成し得ることである。NCO プレポリマーを保管する保存温度の上昇は、NCO プレポリマーの粘度の著しい上昇を招き、最後にはプレポリマーを使用できなくしてしまう。一旦冷却して、その結果濁りや沈澱物が現れた NCO プレポリマーを再加熱した場合も、同様である。更なる反応の際、沈澱物は、最終流動性エラストマーの不均一性を招く。これらの不均一性は、次には、エラストマーの材料破壊の原因を与え得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、技術的改良の結果プレポリマーがもはや濁らなくなった、NCO プレポリマーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
室温での長期保存後でさえ、透明で濁りを示さない、NCO プレポリマーが調製され得ることが見出された。本発明の方法は、ポリイソシアネートと反応させる前に、0.1 mbar の圧力で 200 ℃未満の沸点を有する易揮発性成分を除去する、短行程蒸留又は薄膜蒸留を施されたポリカーボネートポリオールを必要とする。
【0006】
本発明は、透明で、室温での保存安定性を有する、NCO-末端プレポリマーの製造方法を提供する。本発明の方法は、ポリカーボネートポリオールと化学量論的に過剰な 4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応からなり、反応前にポリカーボネートポリオールに、短行程蒸留又は薄膜蒸留を施す。この短行程蒸留又は薄膜蒸留は、ポリカーボネートポリオールのヒドロキシル価を、少なくとも 1.5 ヒドロキシル価単位、好ましくは少なくとも 3 ヒドロキシル価単位低下させる。
【0007】
ここで使用する、用語「透明で保存安定な」とは、23 ℃で 3 週間保存した後でさえ、プレポリマーが濁りを示さず、プレポリマーの NCO 基含有量が著しく変化しないことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
蒸留によるポリカーボネートポリオールのヒドロキシル価の低下は、当業者に既知の装置で行う。適当な装置は、例えば、流下薄膜型蒸発器、薄膜型蒸発器及び短行程蒸発器を含む。蒸留を連続法で行うことが好ましい。好ましくは蒸留を、160〜250 ℃、好ましくは 180〜210 ℃の温度で、0.05〜10 mbar、好ましくは 0.1〜3 mbar の圧力で行う。留出物は、温度が 40〜100 ℃の範囲から選ばれるコールドフィンガー型コンデンサーにより液状で分離される。分離された留出物は、ポリカーボネートポリオールの調製のために再利用される。蒸留装置内でのポリカーボネートポリオールの平均滞留時間は、好ましくは 2〜600 秒である。
【0009】
ポリカーボネートポリオールは、便宜上、蒸発装置に連続投入される前に、例えば熱交換器で加熱される。好ましい態様では、製造の最終段階において、ポリカーボネートポリオールは通常約 200 ℃の温度であるので、蒸留によるポリカーボネートポリオールの処理は、ポリカーボネートポリオールの製造方法の直後に行う。従って、更なるエネルギー消費はない。蒸留装置から取り出した直後、ポリカーボネートポリオールを 120 ℃未満の温度に冷却する。留出物用の凝縮器は、一般に、留出物の組成に依存して 50〜75 ℃の温度に加熱される。更に、蒸留装置は、作業効率を向上するため、減圧で操作される。ここでは、100 mbar 未満、好ましくは 20 mbar 未満の圧力が一般的である。いわゆる共留剤をポリカーボネートポリオールに添加することによって、効率は更に向上され得る。いわゆる共留剤としての使用に適当な物質は、100〜300 ℃の範囲内の沸点を有する、少量の不活性溶媒を含む。例えば、スルホラン、トルエン又はキシレンのような当業者に既知の物質が、共留剤としての使用に適している。
【0010】
その効率に依存して、ポリカーボネートポリオールの蒸留は、そのヒドロキシル価を、約 1.5〜約 15 ヒドロキシル価単位、好ましくは約 3〜約 8 ヒドロキシル価単位低下させる。
【0011】
蒸留によって予め処理されたポリカーボネートポリオールを、その後、当業者に既知の方法で、化学量論的に過剰な 4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(Bayer AG から商業的に入手)と高温で(一般に 50〜100 ℃の温度範囲で)反応させ、1 個以上の末端 NCO 基を有するプレポリマーを得る。本発明の方法に利用されるポリカーボネートポリオールは、一般に、27〜113 mg KOH/g のヒドロキシル価(即ち OH 価)を有する。本発明の方法によって得られたプレポリマーは、一般に、5〜15 重量% NCO の NCO 含有量を有する。
【0012】
以下の実施例により、更に、本発明の方法を詳細に説明する。先の開示において説明されている本発明は、これらの実施例によって意図及び範囲のいずれも限定されない。以下の手順において、既知の様々な条件を使用し得ることが、当業者には容易に理解できるであろう。特に記載がない限り、全ての温度は摂氏温度であり、全ての割合は、重量%である。
【実施例1】
【0013】
ポリカーボネートポリオールの調製
53 mg KOH/g のヒドロキシル価を有する市販ヘキサンジオールエーテルベースポリカーボネートポリオール 9000 g を、1,6-ヘキサンジオール 101 g と混合し、200 ℃で 14 時間高温処理した。得られたポリカーボネートポリオールの OH 価は、63.7 mg KOH/g であり、粘度は 840 mPas(75 ℃)であった。
【実施例2】
【0014】
ポリカーボネートポリオールの調製
535 mg KOH/g のヒドロキシル価を有するヘキサンジオールエーテル 3900 g、ヘキサンジオール 725 g 及びジフェニルカーボネート 4635 g を、ジブチル錫オキシド 150 mg と共に、標準圧力下、180 ℃で 1 時間加熱した。フェノールの蒸留開始と共に、110 ℃まで冷却し、圧力を 15 mbar まで低下させた。10 時間かけて、温度を 200 ℃まで上昇させた。反応を完了するため、圧力を 1 時間かけて、0.5 mbar まで低下させた。得られたポリカーボネートポリオールの OH 価は 62.5 mg KOH/g であり、粘度は 910 mPas(75 ℃)であった。
【実施例3】
【0015】
本発明の実施例1からのポリカーボネートポリオールの処理
実施例1で調製されたポリカーボネートポリオール 8900 g を、160 ℃に予熱し、1 mbar 未満の圧力で 6 時間にわたって短行程蒸発器で処理した。予備蒸発器を 200 ℃で操作し、外套温度は同様に 200 ℃であり、留出物を 50 ℃の温度に保ったコールドフィンガー型コンデンサーで凝縮した。留出物を除去したポリカーボネートポリオールを、10 ℃の一定温度に維持した収集容器に集めた。
これにより、56.6 mg KOH/g の OH 価及び 890 mPas(75 ℃)の粘度を有するポリカーボネートポリオール 8676 g、並びに 495 mg KOH/g の OH 価を有する留出物 108 g を得た。
【実施例4】
【0016】
本発明の実施例2からのポリカーボネートポリオールの処理
実施例2で調製されたポリカーボネートポリオール 4820 g を、160 ℃に予熱し、1 mbar 未満の圧力で 3 時間にわたって短行程蒸発器で処理した。予備蒸発器を 200 ℃で操作し、外套温度は同様に 200 ℃であり、留出物を 50 ℃の温度であるコールドフィンガー型コンデンサーで凝縮した。留出物を除去したポリカーボネートポリオールを、10 ℃の一定温度に維持した収集容器に集めた。
これにより、55.2 mg KOH/g の OH 価及び 1000 mPas(75 ℃)の粘度を有するポリカーボネートポリオール 4696 g、並びに 465 mg KOH/g の OH 価を有する留出物 74 g を得た。
【実施例5】
【0017】
実施例3のポリカーボネートポリオールからの NCO-末端プレポリマーの調製
実施例3で調製されたポリカーボネートポリオール 2802 g を、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(Bayer AG から商業的に入手)1698 g に、50 ℃で窒素雰囲気中添加し、この混合物を 80 ℃で 2 時間撹拌した。この生成物の NCO 含有量は 9.96 重量% NCO、70 ℃での粘度は 1620 mPas であった。得られた生成物(即ち、NCO 末端プレポリマー)は、製造直後、完全に透明であった。得られたプレポリマーを室温で 21 日間保存した後もまた、濁りは観察されなかった。
【実施例6】
【0018】
実施例4のポリカーボネートポリオールからの NCO-末端プレポリマーの調製
実施例4で調製されたポリカーボネートポリオール 2810 g を、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(Bayer AG から商業的に入手)1690 g に、50 ℃で窒素雰囲気中添加し、この混合物を 80 ℃で 2 時間撹拌した。この生成物の NCO 含有量は 10.01 重量% NCO、70 ℃での粘度は 1625 mPas であった。得られた生成物(即ち、NCO 末端プレポリマー)は、製造直後、完全に透明であった。得られたプレポリマーを室温で 21 日間保存した後もまた、濁りは観察されなかった。
【実施例7】
【0019】
比較例
58 mg KOH/g の OH 価を有するヘキサンジオールベースのポリカーボネートポリオール(Bayer AG から商業的に入手)1366 kg を、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(Bayer AG から商業的に入手)834 kg に、50 ℃で窒素雰囲気中添加し、この混合物を 80 ℃で 2 時間撹拌した。この生成物の NCO 含有量は 9.97 重量% NCO、70 ℃での粘度は 1880 mPas であった。得られた生成物(即ち、NCO 末端プレポリマー)は、製造直後、僅かに濁っていた。このプレポリマーを室温で 2 日間保存した後、濁りの連続的な増加が観察され、4 ヶ月保存した後にも沈澱物は増え続けた。
【0020】
本発明は、説明の目的で先に詳細を示したが、このような詳記は、目的のためだけであり、請求項による限定を除いて、本発明の意図及び範囲から外れることなく、修正され得ることが、当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)1 つ以上のポリカーボネートポリオールと
(2)化学量論的に過剰な 4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート
とを反応させることからなり、ポリカーボネートポリオール(1)のヒドロキシル価を少なくとも 1.5 ヒドロキシル価単位低下させるように、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応前に、ポリカーボネートポリオールを短行程蒸留又は薄膜蒸留によって処理することを特徴とする、透明で室温保存安定性を有する、NCO-末端プレポリマーの製造方法。
【請求項2】
(I)少なくとも 1 つのポリイソアネート成分と(II)少なくとも 1 つのイソシアネート反応性成分との反応からなるポリウレタンの製造方法において、ポリイソシアネート成分(I)が、請求項1の方法によって製造される NCO-末端プレポリマーを含んでなる改良方法。

【公開番号】特開2006−22330(P2006−22330A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194956(P2005−194956)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】