説明

透明樹脂フィルムとその製造方法

【課題】 可塑剤を含む溶液流延法により得られる透明樹脂フィルムのカールを全湿度領域で小さく保ち、且つ加熱処理したときのカールを弱める。
【解決手段】 透明性樹脂と可塑剤を、環状ジエーテル化合物が10重量%以上含有される溶媒で溶解し、得られたドープを流延、乾燥することを特徴とする透明樹脂フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶液流延製膜により得られる透明樹脂フィルムに関する。特に写真フィルムや偏光板保護フィルム用として優れた透明樹脂フィルムとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、光透過率が高く、可撓性にとみ、また複屈折の小さいセルロースアセテートフィルムは写真用支持体、液晶用偏光板の保護フィルムとして溶液流延製膜法により作られている。
【0003】一般にセルロースアセテートフィルムの場合、樹脂に対し5〜20重量%の可塑剤を含有しており、金属板支持体上で乾燥する過程で厚み方向に可塑剤の濃度勾配が起こり、得られたフィルムは金属板支持体面側と空気面側で吸湿膨張の差がでることによりカールが発生しやすい。また耐熱性が要求される偏光板に適用する場合を想定し、加熱処理を行うと極端なカールが発生し取り扱いづらいものになる。
【0004】そのため片方の面に透明樹脂を膨潤又は溶解できる溶媒を用いアンチカール加工を施すことが一般に行われ、また東独国特許237,386号のようにあらかじめ製膜時に可塑剤含有量の異なるドープを調製して2層に分けて流延するなどの工夫がなされてる。
【0005】しかしながら、これらの方法は製造プロセスが余計にかかり、設備的にも繁雑になり、生産性、コストの面で問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、可塑剤を含む溶液流延法により得られる透明樹脂フィルムのカールを全湿度領域で小さく保ち、且つ加熱処理したときのカールを弱めることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、使用する可塑剤の融点よりも高い沸点を示す透明樹脂及び可塑剤の共通良溶媒を、溶液の溶媒組成中10重量%以上含有させることで解決できることを見いだし、本発明に至った。
【0008】本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成される。
【0009】(1) 透明性樹脂と可塑剤を、環状ジエーテル化合物が10重量%以上含有される溶媒で溶解し、得られたドープを流延・乾燥することを特徴とする透明樹脂フィルムの製造方法。
【0010】(2) 環状ジエーテル化合物が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする(1)記載の透明樹脂フィルムの製造方法。
【0011】
【化3】


【0012】(式中、R1〜R6は水素原子又は炭素原子数の置換又は未置換のアルキル基を示す。又、R5とR6或いはR1〜R4の少なくとも2個の基が結合し環を形成しても良い。)
(3) 透明性樹脂に対して2〜20重量%の可塑剤を含有する透明樹脂フィルムを溶液流延法により製造するに当たり、流延される10〜50重量%の透明性樹脂溶液の溶媒が、可塑剤と透明性樹脂の共通良溶媒を70重量%以上含み、かつその中の10重量%以上は可塑剤の融点よりも高い沸点を示す溶媒で調製された透明性樹脂溶液を、金属鏡面支持体上に流延して製膜されることを特徴とする透明樹脂フィルム。
【0013】(4) 透明性樹脂と可塑剤の共通良溶媒の沸点が使用する可塑剤の融点よりも10℃以上高いことを特徴とする(3)記載の透明樹脂フィルム。
【0014】(5) 透明性樹脂と可塑剤の共通良溶媒が下記一般式(1)で表される環状ジエーテル化合物であることを特徴とする(3)又は(4)記載の透明樹脂フィルム。
【0015】
【化4】


【0016】(式中、R1〜R6は水素原子又は炭素原子数の置換又は未置換のアルキル基を示す。又、R5とR6或いはR1〜R4の少なくとも2個の基が結合し環を形成しても良い。)
(6) 透明性樹脂がセルローストリアセテートであり、使用される可塑剤の最も高い融点のものがトリフェニルホスフェートであり、且つ可塑剤の融点よりも高い沸点の良溶媒が1,3−ジオキソランであることを特徴とする(3)記載の透明樹脂フィルム。
【0017】(7) 透明性樹脂がセルローストリアセテートであり、使用される可塑剤の最も高い融点のものがエチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)であり、且つ可塑剤の融点よりも高い沸点の良溶媒が1,3−ジオキソランであることを特徴とする(3)記載の透明樹脂フィルム。
【0018】本発明に用いられる透明性樹脂とは、溶液を流延し乾燥して剥がしたときのフィルムの光透過率が80%以上であれば良く、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル、または混合有機酸エステル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリメチルメタアクリレート、ノルボルネン樹脂等が挙げられる。中でも光学特性、機械特性、透明性に優れたセルローストリアセテートが好適である。
【0019】本発明に使用できる可塑剤はトリフェニルホスフェート、トリクレジールホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、ジエチルフタレート、ジエトキシエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル類、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート等のグリコール酸エステル類、トリアセチン、トリプロピオニン等のグリセリン誘導体、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上混合して使用してもよく、透明性樹脂に対し2〜20重量%含有されるのが良い。また、これらの中でセルローストリアセテート用には、使用される可塑剤の最も高い融点のものがトリフェニルホスフェート又はエチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)であり、且つ可塑剤の融点よりも高い沸点の良溶媒が1,3−ジオキソランであることが最も好ましい。
【0020】本発明における透明性樹脂と可塑性の共通良溶媒としては環状ジエーテル化合物が好ましく、具体的には前記一般式(1)で表されるものが好ましく用いられる。
【0021】このアルキル基の置換基としては任意のもので良いが、好ましくは各々炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基あるいはヒドロキシル基が挙げられる。又、R5とR6が、R1〜R4の少なくとも2個が結合して形成される環としては、任意のものがあるが、好ましくは5〜6員の芳香環(例えばベンゼン環)又は、非芳香環(例えばシクロヘキサン環)が挙げられる。
【0022】これらの中、R1〜R6の何れかが水素原子であるものが好ましく、R1〜R6のすべてが水素原子であるものが特に好ましい。
【0023】また、本発明に係る溶媒の沸点は、工程条件等の観点から常圧で200℃以下であるものが好ましいが、その下限としては70℃以上であるものが好ましい。さらに好ましくは沸点150℃以下、70〜130℃のものが特に好ましい。
【0024】本発明に好ましく用いることの出来る具体的化合物例を下記に示す。
【0025】
【化5】


【0026】
【化6】


【0027】
【化7】


【0028】
【化8】


【0029】本発明に係るその他の透明性樹脂の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール等の低級アルコール類、シクロヘキサン、1,3−ジオキソラン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族炭化水素塩化物類などを用いることができる。
【0030】溶媒比率としては例えば、透明性樹脂と可塑剤の共通良溶媒が10〜100重量%、特には70重量%以上が好ましい。又透明性樹脂の濃度は10〜50重量%が好ましい。溶媒を添加しての加熱温度は、使用溶媒の沸点以上で、且つ該溶媒が沸騰しない範囲の温度が好ましく、例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。又、圧力は設定温度において、溶媒が沸騰しないように定められる。この場合、可塑剤と透明性樹脂の共通溶媒を70重量%以上含み、かつその中の10重量%以上は可塑剤の融点よりも高い沸点の溶媒が望ましい。
【0031】溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器等で冷却し、これを製膜に供する。
【0032】本発明に於ける透明性樹脂フィルムの製造方法は上述の発明の構成以外には制限はなく、当業界で一般に用いられている方法でよい。例えば米国特許2,492,978号、同2,739,070号、同2,739,069号、同2,492,977号、同2,336,310号、2,367,603号、同2,492,978号、同2,607,704号、英国特許64,071号、同73,5892号、特公昭45−9074号、同49−4554号、同49−5614号、同60−27562号、同61−39890号、同62−4208号等に記載の方法を参考にすることができる。
【0033】本発明の透明樹脂フィルムの厚さは10〜500μmで、特に30〜350μmであることが好ましい。
【0034】本発明の透明樹脂フィルムは紫外線吸収剤を含有してもよい。特に、本発明に係るフィルムの主要な用途である偏光板用保護フィルムとして用いる場合には、紫外線吸収剤としては液晶の劣化防止の点から波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点から波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。またこれら紫外線吸収剤は1種であってもよいし、異なる2種類以上のものを含んでいてもよい。
【0035】本発明に係るフィルムにおいて好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤である。偏光板用保護フィルム部材として用いる場合には偏光板の性能を更に効果的に発揮させるという観点においては、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いる態様が特に好ましく、下記一般式(2)で示されるものがさらに好ましい。
【0036】
【化9】


【0037】式中、R1、R2、R3、R4、R5は、水素原子、ハロゲン原子(塩素、臭素、沃素、フッ素)、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、アミノプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、クロロブチル、n−アミル、iso−アミル、へキシル、オクチル、ノニル、ステアリルアミドブチル、デシル、ドデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル等)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、メタアリル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、オクタデセニル等)、アリール基(例えば、フェニル、4−メチルフェニル、4−エトキシフェニル、2−ヘキソキシフェニル、3−ヘキソキシフェニル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、クロロブトキシ、デコキシ、ジアミノフェノキシ、エトキシ、ペンタデコシキ、オクタデコシキ等)、アシルオキシ基(例えば、カルボメトキシ、カルボブトシキ、カルボヘキソキシ、カルボペンタデコシキ等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、4−メチルフェノキシ、2−プロピルフェノキシ、3−アミルフェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、t−ブチルチオ、t−オクチルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、メチルフェニルチオ、エチルフェニルチオ、メトキシフェニルチオ、エトキシフェニルチオ、ナフチルチオ等)、モノ又はジアルキルアミノ基(例えば、N−エチルアミノ、N−t−オクチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジ−t−ブチルアミノ等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、メタンスルホニルアミノ等)、酸素又は窒素を含む5又は6員の複素環基(例えば、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジノ、ピペラジノ等)を示し、R4とR5は閉環して炭素原子からなる5又は6員環を形成してもよい。
【0038】一般式(2)において、R1〜R5で示される置換基は、炭素数5〜36が好ましく、アルキル基は炭素数1〜18であることが好ましい。
【0039】上記一般式(2)で表される化合物例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】(1−1) 2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール(1−2) 2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール(1−3) 2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(1−4) 2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(1−5) 2−(2′−ヒドロキシ−5′−イソオクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール(1−6) 2−(2′−ヒドロキシ−5′,−n−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール(1−7) 2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール(1−8) 2−(2′−ヒドロキシ−5′−ドデシルフェニル)−ベンゾトリアゾール(1−9) 2−(2′−ヒドロキシ−5′−ヘキサデシルフェニル)−ベンゾトリアゾール(1−10) 2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−アミル−5′−ベンゾフェニル)−ベンゾトリアゾールなお、本発明においては上記の化合物を含めて特開昭60−128434号公報第10頁〜第12頁に記載されている化合物例の(IV−1)〜(IV−39)を用いることができる。
【0041】本発明に用いられる上記のベンゾトリアゾール系化合物は、例えば特公昭44−29620号に記載の方法、又はそれに準じた方法により容易に合成することができる。
【0042】これらのベンゾトリアゾール系化合物の使用量は、化合物の種類、使用条件等により一様ではないが、透明性樹脂フィルム1m2当たり0.1〜5gが好ましく、特に0.2〜2gが好ましい。添加方法としては、予め有機溶剤(例えばメタノール、メチレンクロライド等)に溶解したものを本発明に係るセルローストリアセテート等のドープ組成中に添加してもよく、直接添加してもよい。
【0043】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。尚、本文中「部」とは「重量部」を表す。
【0044】以下のようにして本発明試料1、2、3及び比較試料1、2を作製した。
【0045】<本発明試料1の作製>まずドープAを調製し、下記方法に従って本発明試料1を作製した。
【0046】
(ドープ組成物A)
セルローストリアセテート(酢化度61.5%) 10部 トリフェニルフォスフェート 1部 1,3−ジオキソラン(化合物例No.1) 40部以上を密閉容器に投入し、65℃で撹拌しながら完全に溶解した。ドープ組成物Aを濾過し、ベルト流延装置を用い、ドープ温度50℃でステンレスバンド支持体上に均一に流延した。
【0047】ステンレスバンド支持体の前半部分を40℃、後半部分を75℃になるようにコントロールしながら溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。その後乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥させ、最終的には120℃で乾燥させて、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムの本発明試料1を作製した。
【0048】<本発明試料2の作製>本発明試料1の作製において用いるドープ組成物Aの調製で、1,3−ジオキソラン40部のうち20部をメチレンクロライドに代えた以外は本発明試料1の作製と同様にして本発明試料2を作製した。
【0049】<本発明試料3>本発明試料1の作製において用いるドープ組成物Aの調製で、可塑剤をエチルフタリルエチルグリコレート、溶媒をメチレンクロライドに代えた以外は本発明試料1の作製と同様にして本発明試料3を作製した。
【0050】<比較試料1の作製>本発明試料1の作製において用いるドープ組成物Aの調製で、溶媒をメチレンクロライドに代えた以外は本発明試料1の作製と同じにして比較試料1を作製した。
【0051】<比較試料2の作製>本発明試料1の作製において用いるドープ組成物Aの調製で、可塑剤を除く以外は本発明試料1の作製と同様にして比較試料2を作製した。
【0052】以上の様にして作製した本発明試料及び比較試料について光透過率、カール、スクラッチ特性を評価した。
【0053】結果を表1に示す。
【0054】<測定及び評価方法>[光透過率]分光光度計を用いて250〜600nmの分光吸収特性を測定し、波長500nmでの透過率を読み取る。
【0055】[カール]
a.湿度依存性幅1.5〜2mm、長さ5cmの大きさに細かく切り、その中央部をゴムに挟み込み、それぞれ23℃で相対湿度20%、55%及び80%の空調室内に放置する。
【0056】24時間放置後、フィルムのベルト面側を+側、空気面側を−側としてカールスケールで読み取る。
【0057】b.加熱処理後のカール長手方向15cm×幅手方向12cmサイズに断裁した試料を、90℃の環境下で120時間放置する。再び該試料を23℃相対湿度55%にて5時間放置後、カールスケールにて読み取る。
【0058】[スクラッチ]試料フィルムの表面上を直径1ミルの円錐状ダイヤモンド針を用いて、該針を移動させながら、0〜50g連続荷重する。このときに形成される該フィルム表面上のキズのつきかたを観察し、キズのつき始めた時の該針の移動距離から荷重を求める。
【0059】
【表1】


【0060】<評価結果>本発明試料1、2、3は比較試料1に比べ、特に加熱処理後のカールが極めて小さく取り扱い易い形状を呈してる。また比較試料2が脆くてキズ付き易いのに対し、本発明試料1、2、3は高い荷重までキズが付きにくいことがわかる。
【0061】
【発明の効果】本発明により、可塑剤を含む溶液流延法により得られる透明樹脂フィルムのカールを全湿度領域で小さく保ち、且つ加熱処理したときのカールを弱めることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明性樹脂と可塑剤を、環状ジエーテル化合物が10重量%以上含有される溶媒で溶解し、得られたドープを流延・乾燥することを特徴とする透明樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】 環状ジエーテル化合物が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の透明樹脂フィルムの製造方法。
【化1】


(式中、R1〜R6は水素原子又は炭素原子数の置換又は未置換のアルキル基を示す。又、R5とR6或いはR1〜R4の少なくとも2個の基が結合し環を形成しても良い。)
【請求項3】 透明性樹脂に対して2〜20重量%の可塑剤を含有する透明樹脂フィルムを溶液流延法により製造するに当たり、流延される10〜50重量%の透明性樹脂溶液の溶媒が、可塑剤と透明性樹脂の共通良溶媒を70重量%以上含み、かつその中の10重量%以上は可塑剤の融点よりも高い沸点を示す溶媒で調製された透明性樹脂溶液を、金属鏡面支持体上に流延して製膜されることを特徴とする透明樹脂フィルム。
【請求項4】 透明性樹脂と可塑剤の共通良溶媒の沸点が使用する可塑剤の融点よりも10℃以上高いことを特徴とする請求項3記載の透明樹脂フィルム。
【請求項5】 透明性樹脂と可塑剤の共通良溶媒が下記一般式(1)で表される環状ジエーテル化合物であることを特徴とする請求項3又は4記載の透明樹脂フィルム。
【化2】


(式中、R1〜R6は水素原子又は炭素原子数の置換又は未置換のアルキル基を示す。又、R5とR6或いはR1〜R4の少なくとも2個の基が結合し環を形成しても良い。)
【請求項6】 透明性樹脂がセルローストリアセテートであり、使用される可塑剤の最も高い融点のものがトリフェニルホスフェートであり、且つ可塑剤の融点よりも高い沸点の良溶媒が1,3−ジオキソランであることを特徴とする請求項3記載の透明樹脂フィルム。
【請求項7】 透明性樹脂がセルローストリアセテートであり、使用される可塑剤の最も高い融点のものがエチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)であり、且つ可塑剤の融点よりも高い沸点の良溶媒が1,3−ジオキソランであることを特徴とする請求項3記載の透明樹脂フィルム。

【公開番号】特開平10−182853
【公開日】平成10年(1998)7月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−347624
【出願日】平成8年(1996)12月26日
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)