説明

透明電極基板

【課題】 導電性に優れ、かつ、密着性、保存安定性、導通率を高いレベルで維持することができ、耐熱性、耐湿熱性も良好であり、パターニングを行って得られた電極は、解像度の高いパターンが形成でき、パターン形状も良好である、透明電極基板を提供すること。
【解決手段】 透明基体上に導電層が形成された透明電極基板であって、該導電層が、下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体とする(A)複素環含有芳香族ポリマー
M−N・・・(1)
(式中、Mは、置換若しくは無置換のチオフェン環基を表し、Nは、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Mによって表される環とNによって表される環は直接結合している。)、
を含有する導電性樹脂組成物により形成される、透明電極基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れた電極基板に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、人に優しいインターフェースとして近年急速に普及が進んでおり、携帯小型電子装置、銀行のATMや切符自動販売機、POSなど多くの装置で用いられている。タッチパネルには、光学式、超音波式、静電容量方式や抵抗膜方式など数多くの方式があり、中でも構造が単純で、製造コストの低い静電容量方式や抵抗膜方式のタッチパネルが多用されている。これらのタッチパネルには、透明電極となる導電層の形成が必要であり、一般的にはパターニングが必要とされている。
【0003】
透明電極基板としては、従来、ITO(酸化錫ドープ酸化インジウム)をスパッタしたフィルムが使用されており、ドライエッチングなどの手法によりパターンが形成されている。しかし、ITOスパッタフィルムは、屈曲性に乏しく、製造コストも高いことから、3,4−エチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の重合体などの導電性高分子を利用した、ウェットコーティングにより導電層を形成するための試みが盛んである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−115362号公報
【特許文献2】特開2010−161013号公報
【特許文献3】特開2004−14215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された導電性高分子は、有機溶剤や水には溶けにくいことから、パターニングが困難であるとの問題点があった。
【0006】
即ち、導電性高分子でのパターニングの手法については、ウェットエッチング(例えば、特許文献2参照)やリフトオフ法(例えば、特許文献3参照)などのパターニング方法が公知であるが、導電性高分子は有機溶剤や水には溶けにくいことから、高解像度なパターン形成の要求に対応することが困難であり、また液晶ディスプレイや電子ペーパーなどの透明電極の形成においても、同じような課題があるとの問題点があった。
【0007】
本発明は、高解像度のパターンが形成でき、パターン形状も良好である、透明電極基板を提供することを目的とする。さらには、これを用いた電子ペーパー、太陽電池、エレクトロミック素子、抵抗膜式スイッチ、静電容量スイッチ、また当該抵抗膜式スイッチ又は静電容量スイッチを用いたタッチスクリーン、キーボード、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイや有機ELディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、透明基体上に形成させる導電層に特定の複素環含有芳香族ポリマーを含有する導電性樹脂組成物を用いることにより、高い透明性を維持しつつ、導電性に優れ、かつ、密着性、保存安定性、導通率を高いレベルで維持することができ、耐熱性、耐湿熱性も良好であり、さらに、パターニングを行って得られた電極は、解像度の高いパターンが形成でき、パターン形状も良好である、透明電極基板が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
透明基体上に導電層が形成された透明電極基板であって、該導電層が、下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体とする(A)複素環含有芳香族ポリマー
M−N・・・(1)
(式中、Mは、置換若しくは無置換のチオフェン環基を表し、Nは、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Mによって表される環とNによって表される環は直接結合している。)、
を含有する導電性樹脂組成物により形成される、透明電極基板に関する。
【0010】
本発明の透明電極基板において、上記複素環含有芳香族化合物は、下記一般式(2′)で表される複素環含有芳香族化合物であることが好ましく、
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表す。また、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。)
下記構造式(2−1)〜(2−17)で表される複素環含有芳香族化合物のなかの少なくとも1つであることがより好ましい。
【0013】
【化2】


【0014】
本発明の透明電極基板において、上記透明基体は樹脂フィルムが好ましい。
【0015】
本発明の透明電極基板において、上記導電層はパターンを有していることが好ましい。
【0016】
本発明の透明電極基板において、上記パターンはウエットエッチングにより形成されたものであることが好ましい。
【0017】
本発明の透明電極基板において、上記パターンはリフトオフ法により形成されたものであることが好ましい。
【0018】
本発明の電子ペーパーは、上記透明電極基板を有する電子ペーパーに関する。
【0019】
本発明の抵抗膜式スイッチは、第一導電層を透明基体上に有する第一導電性部材、第二導電層を基体上に有する第二導電性部材、及び絶縁スペーサーを有する抵抗膜式スイッチであって、該第一導電性部材及び/又は第二導電性部材が上記透明電極基板であり、該絶縁性スペーサーが、第二導電層上の一部に設けられ、そして第一導電層と第二導電層とが対向するように配置された、抵抗膜式スイッチに関する。
【0020】
本発明の静電容量スイッチは、第一導電層を透明基体上に有する第一導電性部材と第二導電層を基体上に有する第二導電性部材とから構成される静電容量スイッチ、又は透明基体の両面に第一導電層と第二導電層を有する第三導電性部材から構成される静電容量スイッチであって、該第一導電性部材、該第二導電性部材、該第三導電性部材のいずれかが上記透明電極基板である静電容量スイッチに関する。
【0021】
本発明のタッチスクリーンは、上記抵抗膜式スイッチ又は静電容量スイッチを有するタッチスクリーンに関する。
【0022】
本発明のキーボードは、上記抵抗膜式スイッチ又は静電容量スイッチを有するキーボードに関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の透明電極基板は、透明基体上に形成させる導電層に、導電性高分子として、チオフェン環基とピロール環基とが直接結合したカップリング体を単量体とする特定の複素環含有芳香族ポリマーを含有する導電性樹脂組成物を用いることにより、高い透明性を維持しつつ、導電性に優れ、かつ、密着性、保存安定性、導通率を高いレベルで維持することができ、耐熱性、耐湿熱性も良好であり、さらに、パターニングを行って得られた電極は、解像度の高いパターンが形成でき、パターン形状も良好である。
また、本発明の透明電極基板は、これを用いた電子ペーパー、太陽電池、エレクトロミック素子、抵抗膜式スイッチ、静電容量スイッチ、また当該抵抗膜式スイッチ又は静電容量スイッチを用いたタッチスクリーン、キーボード、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイや有機ELディスプレイの製造に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明の透明電極基板について説明する。
本発明の透明電極基板は、透明基体上に導電層が形成された透明電極基板であって、該導電層が、上記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体とする(A)複素環含有芳香族ポリマーを含有する導電性樹脂組成物により形成される、透明電極基板である。
以下、本発明に用いる導電層を構成する各成分について、順に説明する。
まず、本発明に用いる導電層を形成する導電性樹脂組成物の必須成分である、(A)複素環含有芳香族ポリマーについて説明する。
【0025】
(A)複素環含有芳香族ポリマー
上記複素環含有芳香族ポリマーは、下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体とする。
M−N・・・(1)
(式中、Mは、置換若しくは無置換のチオフェン環基を表し、Nは、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Mによって表される環とNによって表される環は直接結合している。)
【0026】
ここで、チオフェン環基とは2−チエニル基のことをいい、炭素原子上に置換基を有してもよい。
また、ピロール環基とは2−ピロリル基のことをいい、炭素原子上又は窒素原子上に置換基を有してもよい。
【0027】
上記一般式(1)におけるMで表される置換チオフェン環基としては、例えば、以下のような構造が挙げられる。
【0028】
【化3】


【0029】
(各式中、nは1から10の整数を示す。)
【0030】
上記一般式(1)におけるNで表される置換ピロール環基としては、例えば、以下のような構造が挙げられる。
【0031】
【化4】


【0032】
(各式中、nは1から10の整数を示す。)
【0033】
【化5】


【0034】
(各式中、nは1から10の整数、Rは、置換基を有していてもよい芳香族基又は炭素数1から10のアルキル基を示す。)
【0035】
上記チオフェン環基の置換基としては、例えば、後述の有機基等が挙げられるが、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましい。
上記ピロール環基の置換基としては、例えば、後述の有機基等が挙げられるが、炭素原子上の置換基としては、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましく、窒素原子上の置換基としては、炭素数1から10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。
ここで、チオフェン環基やピロール環基の置換基であるアルキル基又はアルコキシ基には、ハロゲン元素やカルボン酸基、スルホン酸基などの官能基が結合していてもよい。
【0036】
上記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物(以下、複素環含有芳香族化合物(1)ともいう)において、チオフェン環とピロール環とは、環構造に含まれない原子を介して結合することはなく、両環に含まれる原子間の結合によって、直接結合している。
複素環含有芳香族化合物(1)としては、溶剤溶解性や耐熱性、耐候性の観点から、チオフェン環基又はピロール環基の3位又は4位に結合している置換基の数の合計が、2個以上である化合物が好ましい。また、3位又は4位に結合している置換基の数の合計が4個である場合(すなわち、すべての3位及び4位に置換基が結合している場合)、立体障害を避けるために、M又はNの少なくとも一方において、3位の置換基と4位の置換基が結合して環構造を形成していることが好ましい。
【0037】
上記複素環含有芳香族化合物(1)は、Mで示されるチオフェン環上の炭素原子のうち少なくとも1つは無置換であり、かつ、Nで示されるピロール環上の炭素原子のうち少なくとも1つは無置換である。このような複素環含有芳香族化合物(1)を単量体として酸化重合すると、無置換の炭素原子間でカップリング反応が進行することで、複素環含有芳香族ポリマーとして、繰り返し単位が−M−N−で示される直鎖状重合体が得られる。
M、Nによって表されるチオフェン環及びピロール環は、一方の2位の炭素原子間で互いに結合し、他方の2位の炭素原子が無置換であることが好ましい。
【0038】
上記複素環含有芳香族化合物としては、下記一般式(2)又は(3)のいずれかによって表される複素環含有芳香族化合物が好ましい。
これらの複素環含有芳香族化合物を単量体として酸化重合を行うと、酸化重合は、チオフェン環上の2位の無置換の炭素原子や、ピロール環上の2位の無置換の炭素原子において進行する。
【0039】
下記一般式(2)で表される複素環含有芳香族化合物は、一般式(1)におけるMが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるチオフェン環基であり、Nが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるピロール環基である。
【0040】
【化6】

【0041】
一般式(2)中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)か、あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。
ここで、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよく、また、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、例えば、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。
【0042】
一般式(2)で表される複素環含有芳香族化合物は、ケースiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物や、ケースiiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物が好ましく、ケースiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物がより好ましい。
【0043】
さらに好ましくは、ケースiにおいて、RとRが互いに結合してエチレンジオキシ基を表す下記一般式(2′)で表される複素環含有芳香族化合物である。
【0044】
【化7】

【0045】
特に好ましくは、高い導電性と安定性を両立する為には、バンドギャップが小さく、酸化電位が高い化合物であり、下記構造式(2−1)〜(2−17)で表される化合物である。
【0046】
【化8】


【0047】
下記一般式(3)で表される複素環含有芳香族化合物は、一般式(1)におけるMが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるチオフェン環基であり、Nが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるN−置換ピロール環基である。
【0048】
【化9】

【0049】
一般式(3)中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)か、あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。
ここで、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよく、また、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、例えば、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。また、一般式(3)中、Rnは有機基を表す。
【0050】
一般式(3)で表される複素環含有芳香族化合物は、ケースiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物や、ケースiiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物が好ましく、ケースiにおいて、RとRがそれぞれ独立して有機基を表し、これらが互いに結合して環構造を形成する化合物がより好ましい。
【0051】
さらに好ましくは、ケースiにおいて、RとRが互いに結合してエチレンジオキシ基を表す下記一般式(3′)で表される複素環含有芳香族化合物である。
【0052】
【化10】

【0053】
特に、一般式(3′)において、R及びRが水素原子を表し、Rnが置換基を有していてもよいフェニル基を表す下記式(3″)で示される化合物が好ましい。
【0054】
【化11】

【0055】
上記一般式(2)、(3)及び(3″)において、R〜R、Rn、Rxのそれぞれが表す有機基としては、例えば、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルケニル基(例えば、エチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基、シクロヘキセニル基等)、炭素数1から5のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等)、置換基を有していてもよいフェニル基(例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等)等が挙げられる。
さらに、これらの有機機には、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、水酸基などの官能基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素等が結合していてもよい。
また、R〜Rは、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、水酸基、ハロゲン元素等であってもよい。
なお、以上の有機基はそれぞれ独立して選択される。
【0056】
〜Rが表す有機基としては、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましく、Rnが表す有機基としては、炭素数1から10のアルキル基、又は、フェニル基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
【0057】
隣接するR〜R(RとR、RとR、RとR、RとR)の両方が有機基であり、これらが互いに結合して環構造を形成する場合、環構造としては、特に限定されないが、炭素数2から10の脂環式構造が好ましい。
脂環式構造には酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、窒素原子などを含んでいてもよく、なかでも、特に酸素原子を含んだアルキレンジオキシ基を有する環構造が好ましい。
さらに、脂環式構造が芳香族性を有していてもよく、この場合、複素環含有芳香族化合物(1)のM、Nは、縮環構造を有する(例えば、イソチアナフテン等)事を意味する。
【0058】
上記複素環含有芳香族化合物(1)の製造方法を説明する。
上記複素環含有芳香族化合物(1)は、超原子価ヨウ素反応剤の存在下、2種類の複素環芳香族化合物をカップリングさせることで製造することができる。このようなカップリング反応が超原子価ヨウ素反応剤の存在下では、1:1の比率で効率よく進行する。超原子価ヨウ素反応剤としては後述と同様のものを使用することができる。
【0059】
上記カップリング反応において、超原子価ヨウ素反応剤の使用量は特に限定されず、1種類の原料1モルに対して、好ましくは0.1〜4モル、更に好ましくは0.2〜3モルの割合で用い、更に好ましくは0.3〜2モルの割合で用いる。
【0060】
上記カップリング反応では、原料として、置換又は無置換のチオフェン化合物M−H、及び、置換又は無置換のピロール化合物N−Hを使用する。ここで、M及びNは上記と同様である。これら化合物は、所望の生成物を得るために適宜選択すればよい。
【0061】
上記カップリング反応は、通常、溶媒の存在下で実施する。
上記溶媒としては、原料、複素環含有芳香族化合物(1)、及び、超原子価ヨウ素反応剤を溶解または分散させる溶媒であればよく、このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、トルエン、キシレン(o−、m−、あるいはp−キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)などの有機溶媒、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)等があげられる。これは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0062】
カップリング反応の系中には、添加剤を適宜添加しても良い。超原子価ヨウ素反応剤と添加剤とを併用することで、複素環含有芳香族化合物の収率を向上させることができ、また、超原子価ヨウ素反応剤の量を減らすことができる。
上記添加剤としては、例えば、ブロモトリメチルシラン、クロロトリメチルシラン、トリメチルシリルトリフラート、三フッ化ホウ素、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸等が挙げられ、これらのなかではブロモトリメチルシランが好ましい。これらは単独で用いてもよく、複数で用いてもよい。
上記添加剤の使用量は、複素環含有芳香族化合物1モルに対して、好ましくは0.1〜4モル、より好ましくは0.2〜3モルの割合であり、更に好ましくは0.5〜2モルの割合である。
【0063】
また、カップリング反応の系中には、フッ素系アルコールを添加しても良い。超原子価ヨウ素反応剤とフッ素系アルコールとを併用することで、複素環含有芳香族化合物の収率を向上させることができ、また、超原子価ヨウ素反応剤の量を減らすことができる。
上記フッ素系アルコールとしては、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロエタノール等が挙げられ、これらのなかでは、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールが好ましい。
上記フッ素系アルコールの使用量は、特に特定されないが、用いる溶剤100重量部に対して1〜80重量部が好ましく、特に、10〜40重量部が好ましい。
【0064】
上記カップリング反応は、通常、各原料、超原子価ヨウ素反応剤、及び、溶剤や他の試薬等を混合して、−50℃〜100℃の温度範囲で、10分から48時間行うことによって、上記複素環含有芳香族化合物を製造することができる。
上記カップリング反応は、0〜50℃の温度範囲で30分〜8時間行うことが好ましく、10〜40℃の温度範囲で1〜4時間行うことがより好ましい。このとき、加える試薬の順序は問わない。
【0065】
次に、上記複素環含有芳香族化合物(1)を単量体として、複素環含有芳香族ポリマーを製造する方法について説明する。
上記複素環含有芳香族ポリマーの製造では、上記単量体(複素環含有芳香族化合物(1))を、各種酸化剤を用いた化学重合法により酸化重合する。
化学重合法は、簡便で大量生産が可能なため、従来の電解重合法と比べ工業的製法に適した方法である。
【0066】
上記化学重合方法に用いる酸化剤としては特に限定されないが、例えば、スルホン酸化合物をアニオンとし、高価数の遷移金属をカチオンとする酸化剤等が挙げられる。この酸化剤を構成する高価数の遷移金属イオンとしては、Cu2+、Fe3+、Al3+、Ce4+、W6+、Mo6+、Cr6+、Mn7+及びSn4+が挙げられる。これらのなかでは、Fe3+およびCu2+が好ましい。
遷移金属をカチオンとする酸化剤の具体例としては、例えば、FeCl、Fe(ClO、KCrO、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム、四フッ化ホウ酸銅等が挙げられる。
また、遷移金属をカチオンとする酸化剤以外の酸化剤としては、例えば、過硫酸アルカリ、過硫酸アンモニウム、H等が挙げられる。さらに、超原子価ヨウ素反応剤に代表される超原子価化合物が挙げられる。
【0067】
特に好ましい実施形態は、酸化剤が超原子価ヨウ素反応剤である。
超原子価ヨウ素反応剤とは、3価または5価の超原子価状態にあるヨウ素原子を含む反応剤のことをいう。超原子価ヨウ素反応剤は、より安定なオクテット状態(1価のヨウ素)に戻ろうとする性質を有しているため、鉛(IV)、タリウム(III)、水銀(II)などの重金属酸化剤と類似の反応性を有する。さらに、超原子価ヨウ素反応剤は、このような重金属酸化剤に比べて低毒性であり、安全性に優れ、工業的な製法に適している。
【0068】
上記超原子価ヨウ素反応剤としては特に限定されず、3価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えば、フェニルイオジンビス(トリフルオロアセタート)または(ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン(以下、PIFAという場合がある))、フェニルイオジンジアセテート(ヨードソベンゼンジアセテート(以下、PIDAという場合がある))、ヒドロキシ(トシロキシ)ヨードベンゼン、ヨードシルベンゼン等が挙げられる。これらの反応剤の構造式を以下に示す。
【0069】
【化12】

【0070】
5価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えば、デスマーチンペルヨージナン(Dess-Martin periodinane(DMP))、o−ヨードキシ安息香酸(o-iodoxybenzoic
acid(IBX))等が挙げられる。これらの反応剤の構造式を以下に示す。
【0071】
【化13】

【0072】
これらのなかでは、3価の超原子価ヨウ素反応剤が好ましく、PIFAが、安定で取り扱いやすく、十分に高い酸化能を有する点でより好ましい。
【0073】
また、超原子価ヨウ素反応剤の中でも、アダマンタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤、テトラフェニルメタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤を選択すると回収再利用できることから好ましい。より具体的には、1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−((4−(ヒドロキシ)トシロキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン等の3価のアダマンタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤、または、テトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタン等の3価のテトラフェニルメタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤は、安定で取り扱いやすく、十分に高い酸化能を有する上に、脂溶性が高く回収再利用可能なので、さらに好ましい。
5価の超原子価ヨウ素反応剤を用いる場合は、デスマーチンペルヨージナン(DMP)が好ましい。
【0074】
このような超原子価ヨウ素反応剤は、合成により得られたものを用いてもよく、あるいは市販品を用いてもよい。例えば、PIFAは、PIDAにトリフルオロ酢酸を加えて反応させ、その結果、PIFAを反応生成物として析出させることにより得られる(J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1985, 757を参照のこと)。PIDAは、ヨードベンゼンを酢酸中、ペルオキソほう酸ナトリウム(4水和物)(NaBO・4HO)を用い酸化することにより得られる(Tetrahedron, 1989, 45, 3299およびChem. Rev.,
1996, 96, 1123を参照のこと)。さらに、PIDAは、m−クロロ過安息香酸(mCPBA)を酸化剤としてヨードベンゼンから得られる(Angew. Chem. Int. Ed., 2004, 43, 3595を参照のこと)。1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−((4−(ヒドロキシ)トシロキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、テトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタンは、例えば特開2005−220122号公報に記載の方法で合成できる。
【0075】
上記酸化剤の使用量は特に限定されないが、上記単量体1モルあたり1〜5モルの範囲が好ましく、より好ましくは2〜4モルの範囲である。特に上記酸化剤として超原子価ヨウ素反応剤を使用する場合、上記単量体1モルに対して、好ましくは1〜4モル、更に好ましくは1.5〜4モルの割合で用い、より好ましくは2〜2.5モルの割合で用いる。
超原子価ヨウ素反応剤の量が少ない場合、酸化重合反応が進みにくくなることがある。一方、超原子価ヨウ素反応剤の量が多すぎる場合、過剰酸化が起こり溶媒に全く不溶な生成物が得られることがあり、所望のポリマーの収率が低下することがある。
【0076】
上記複素環含有芳香族ポリマーの製造方法では、超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用してもよい。超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用することで、超原子価ヨウ素反応剤の使用量を減らすことができる。金属を含まない酸化剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸等が挙げられる。
【0077】
上述したように上記超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用する場合、上記超原子価ヨウ素反応剤は酸化触媒として作用し、上記単量体1モルに対して、好ましくは0.001〜0.3モル、より好ましくは0.01〜0.1モルの割合で用いる。一方、金属を含まない酸化剤は、上記単量体1モルに対して、好ましくは1〜4モル当量、より好ましくは1.5〜2.5モル当量の割合で用いる。
【0078】
また、金属を含まない酸化剤と超原子価ヨウ素反応剤とを併用する場合、超原子価ヨウ素反応剤の量が少なすぎると、重合反応が十分に進行しないことがある。一方、超原子価ヨウ素反応剤の量が多すぎても、重合度は、ある一定の重合度より大きくならず、超原子価ヨウ素反応剤が無駄になることがある。
【0079】
なお、超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用する場合は、重合反応を始める際は、超原子価ヨウ素反応剤の前駆体を用いても良い。具体的には、例えば、1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタンの前駆体である1,3,5,7−テトラキス−(4−ヨードフェニル)アダマンタンを触媒量と、化学量論量のメタクロロ過安息香酸を加えることで、反応系中で超原子価ヨウ素反応剤を発生させればよい。
【0080】
上記複素環含有芳香族ポリマーの製造方法では、複素環含有芳香族ポリマーに、ドーパントをドープしてもよい。ドーパントをドープすることによって、得られる複素環含有芳香族ポリマーにより高い導電性が付与され得る。ドーパントは、重合反応前に原料として仕込んでもよく、重合反応中に添加してもよく、あるいは重合反応後に得られる複素環含有芳香族ポリマーに添加してもよい。
【0081】
ドーパントとしては特に限定されないが、例えば、Cl、Br、I、IClなどのハロゲン;PF、BF、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルなどのルイス酸;HF、HCl、HNO、HSOなどのプロトン酸;p−トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などの有機酸等が挙げられる。
【0082】
導電性の付与を目的として用いるドーパントは、上記単量体1モルに対して、好ましくは0.05〜6モルの割合で用い、より好ましくは0.2〜4モルの割合で用いる。
上記ドーパントの量が0.05モルよりも少ない場合、複素環含有芳香族ポリマーに、十分な導電性を付与し得ない場合がある。一方、ドーパントの量が6モルよりも多い場合、複素環含有芳香族ポリマーに添加したすべてのドーパントがドープされず、添加量に比例した効果を望めない。また、余剰のドーパントも無駄になる。
【0083】
なお、上記ルイス酸は、ドーパントとして作用するだけではなく、酸化重合反応を促進させる作用も有する。酸化重合反応を促進させる目的でルイス酸を用いる場合、特に、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルが好ましく用いられる。
【0084】
上記酸化重合反応は、通常、溶媒の存在下で実施する。
上記溶媒としては、上記単量体、酸化剤、及び、ドーパントを溶解または分散させる溶媒であればよく、このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、トルエン、キシレン(o−、m−、あるいはp−キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)等の有機溶媒、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0085】
上記酸化重合反応の温度は、−100℃〜100℃が好ましい。溶媒として有機溶媒を用いる場合および水を用いる場合のいずれの場合も、より好ましくは0℃〜40℃である。反応温度が−100℃よりも低い場合、反応速度が遅くなったり、溶媒によっては凍結したりし、複素環含有芳香族ポリマーの収率が低下するおそれがある。一方、反応温度が100℃よりも高い場合、副反応や過剰酸化が起こり、複素環含有芳香族ポリマーの収率が低下するおそれがある。
【0086】
上記酸化重合反応の反応時間は、特に制限されない。酸化重合反応を促進させるためにルイス酸を用いた場合は12時間程度が好ましく、ルイス酸を用いない場合は20時間程度が好ましい。
【0087】
このようにして得られた複素環含有芳香族ポリマーには、精製処理を施してもよい。
精製方法(精製工程)としては特に限定されないが、例えば、反応後、溶媒をグラスフィルターでろ過し、得られたポリマーを、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエンなどで洗浄する方法等が挙げられる。その他の精製方法としては、ソックスレー抽出などによる精製等が挙げられる。
【0088】
このような複素環含有芳香族ポリマーの製造方法では、洗浄後、得られた複素環含有芳香族ポリマーを、必要に応じて、通常の手段により乾燥する(乾燥工程)。
ここで、乾燥方法は、重合度、置換基、含まれるドーパントによって適宜決定可能であり、例えば、室温下(約25℃)での減圧(約0.5mmHg)乾燥、常圧下での加熱送風(約60℃)乾燥等が挙げられる。乾燥温度は、100℃以下が好ましく、200℃を超えると、複素環含有芳香族ポリマーが分解する危険性が高くなる。
【0089】
上記酸化重合において、アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤を用いた場合、下記のような方法で回収することが望ましい。例えば、反応を終えた溶液を減圧濃縮し、残渣(ポリマー、アダマンタン構造もしくはテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤、金属を含まない酸化剤、未反応の単量体)にメタノールを加えて混合し、グラスフィルターを用いてろ過することにより、金属を含まない酸化剤及び未反応の単量体はメタノール溶液として除去できる。残渣として残ったポリマー及びアダマンタン構造又はテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤は、ジエチルエーテルを加えて混合しグラスフィルター用いてろ過することにより、残渣のポリマーと、ジエチルエーテル溶液のアダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤とに分離することができる。そのジエチルエーテルを濃縮することで、アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤を回収することができる。アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤の回収方法は、上記の例に限定されないが、ポリマー、アダマンタン構造又はテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤、金属を含まない酸化剤および未反応の単量体の、溶媒種による溶解性の違いを利用し、適当な溶媒を選択することで、各々の成分を分離することができる。
【0090】
本発明に用いる導電性樹脂組成物は、(A)複素環含有芳香族ポリマーに加えて、必要に応じて、(B)バインダー樹脂、(C)架橋剤、(D)硬化剤、(E)添加剤、及び、(F)溶剤等を含有していてもよい。
以下、上記(B)〜(F)の各成分について説明する。
【0091】
(B)バインダー樹脂
上記バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、並びに、スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル及びアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される2種以上のモノマーから構成された共重合体等が挙げられる。
上記バインダー樹脂を配合する場合、その配合量は、上記複素環含有芳香族ポリマー(A)の固形分100重量部に対して、10〜5000重量部であることが好ましい。より好ましくは、30〜2000重量部である。配合量が5000重量部を超えると、透明性及び導電性が低下する場合がある。逆に、10重量部より少ない場合は、硬化性が低下し、十分な耐水性や耐溶剤性が導電層に付与されにくくなることがある。
【0092】
(C)架橋剤
上記架橋剤としては特に限定されないが、例えば、低分子アクリレート、低分子エポキシ樹脂、イソシアネート等が使用できる。具体的には、エチレンオキシド変性ビスフェノールジアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレートなどの2官能の低分子アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートなどの3官能の低分子アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの4官能以上の低分子アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3'−4'−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ヴィニルシクロヘキセンモノオキサイド−1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンなどの脂環式エポキシ、3、4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートなどのエポキシ基を有するアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルなどの多官能脂肪族エポキシ化合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアナート、1,3−フェニレンビスメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ジイソシアネートヘキサン、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性イソホロンジイソシアネートなどのイソシアネート等が挙げられる。
上記架橋剤を配合する場合、その配合量は、上記複素環含有芳香族ポリマー(A)の固形分100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましい。より好ましくは、10〜70重量部である。配合量が100重量部を超えると、導電層が脆くなる場合がある。逆に、1重量部より少ない場合は、導電層の強度が不足する場合がある。
【0093】
(D)硬化剤
バインダーにエポキシ樹脂を使用する場合は、硬化剤を添加することができる。上記硬化剤としては、酸無水物、フェノール化合物、アミン類などのエポキシ樹脂硬化剤が挙げられる。上記硬化剤を配合する場合、その配合量は、エポキシ樹脂の樹脂分100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましい。より好ましくは、4〜60重量部である。配合量が100重量部を超えると、導電層が脆くなる場合がある。逆に、1重量部より少ない場合は、導電層の強度が不足する場合がある。
【0094】
(E)添加剤
上記添加剤としては、例えば、導電性向上剤、塗布性を向上させるための界面活性剤、耐光性を改善させるための紫外線吸収剤、熱線を吸収させるための赤外線吸収剤、ポリマーの分解を抑制させるための酸化防止剤、導電層の膜強度を高めるための無機微粒子、重合開始剤、上記導電性樹脂組成物を用いて塗膜を形成する際に、基板との密着性を向上させたり、塗膜の耐久性を向上させるためのシランカップリング剤等が挙げられる。
【0095】
上記導電性向上剤としては、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、フマルアミド、ベンズアミド、などのアミド系化合物、フタルイミド、1,8−ナフチルイミドなどのイミド系化合物、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、レゾルシノール、クロロフェノール、ヒドロキシナフタレンなどのフェノール系化合物、テトラシアノエチレン、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン、2,3,6,7−テトラシアノ−1,4,5,8−テトラアザナフタレンなどのシアノ系化合物、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族多価アルコール類等が挙げられる。
上記導電性向上剤を配合する場合、その配合量は、上記複素環含有芳香族ポリマー(A)の固形分100重量部に対して、1〜5000重量部であることが好ましい。より好ましくは、10〜1000重量部である。
【0096】
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミドなどの非イオン性界面活性剤;フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキル4級アンモニウム、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤等が挙げられる。
上記界面活性剤を配合する場合、その配合量は、上記複素環含有芳香族ポリマー(A)の固形分100重量部に対して、0.1〜60重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.2〜20重量部である。
【0097】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{(2′−ヒドロキシ−3′,3′′,4′′,5′′,6′′−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル}ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系紫外線吸収剤、エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどのシアノアクリレート系紫外線吸収剤、2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリドなどのオギザニリド系紫外線吸収剤、TINUVIN(登録商標)770、TINUVIN(登録商標)622LD(いずれもチバスペシャルティーケミカルズ社製)、アデカスタブ(登録商標)LA−57(旭電化工業社製)等などのヒンダードアミン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。上記紫外線吸収剤を配合する場合、その配合量は、上記複素環含有芳香族ポリマー(A)の固形分100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.3〜10重量部である。
【0098】
上記赤外線吸収剤としては、例えば、シアニン系化合物、フタロシアニン化合物、フェニレンジアミニウムの塩素気塩などの有機系赤外線吸収剤、ITO(スズドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)のような透明導電性酸化物、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズのなど無機系近赤外線吸収剤等が挙げられる。
上記赤外線吸収剤を配合する場合、その配合量は、上記複素環含有芳香族ポリマー(A)の固形分100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.3〜10重量部である。
【0099】
上記酸化防止剤としては、例えば、IRGANOX(登録商標)1010(チバスペシャルテーケミカルズ社製)、ノクラックNS−30(商品名)(大内新興化学工業社製)、トミノックスTT(商品名)(吉豊ファインケミカル社製)等などのフェノール系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン、N-フェニル-1,1,3,3-テトラメチルブチルナフタレン-1-アミンなどのアミン系酸化防止剤、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファィト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等などのリン系酸化防止剤、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類などの硫黄系酸化防止剤、アスコルビン酸(ビタミンC)などのビタミン類等が挙げられる。
上記酸化防止剤を配合する場合、その配合量は、上記複素環含有芳香族ポリマー(A)の固形分100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.3〜10重量部である。
【0100】
上記無機微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化アンチモン、インジウム錫混合酸化物及びアンチモン錫混合酸化物などの金属酸化物、ジルコニア、シリカ等からなる微粒子が挙げられ、これらの中では、透明性、硬度の観点からその一次粒子径が100nm未満であるものが好ましく、50nm未満であるものがより好ましい。
上記無機微粒子を配合する場合、その配合量は、上記複素環含有芳香族ポリマー(A)の固形分100重量部に対して、0.5〜200重量部であることが好ましい。より好ましくは、1〜50重量部である。
【0101】
上記重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、1,3 α-アミノアルキルフェノンなどのベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテンなどのイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなどのアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシドなどの有機過酸化物;芳香族スルホニウム塩などの熱カチオン触媒;および2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのチオール化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記重合開始剤を配合する場合、その配合量は、上記バインダー樹脂(A)の固形分100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜10重量部である。
【0102】
さらに、それ自体では、光重合開始剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。そのような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミンなどの第三級アミン等が挙げられる。
【0103】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシトリアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニル-トリス(βメトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−3,4エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
上記シランカップリング剤を配合する場合、その配合量は、上記複素環含有芳香族ポリマー(A)の固形分100重量部に対して、0.2〜10重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜5重量部である。
【0104】
(F)溶剤
溶剤は無くても良いが、上記溶剤としては、例えば、水や、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、トルエン、キシレン(o−、m−、あるいはp−キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)等の有機溶媒、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
本発明に用いる導電性樹脂組成物は、有機溶媒を含有することが好ましい。その理由は、高硬度を有し、基材との密着性が高く、均一な導電層を形成するのに適しているからである。
【0105】
上記溶剤を配合する場合、その配合量は、上記複素環含有芳香族ポリマー(A)の固形分100重量部に対して、100〜5000重量部であることが好ましい。より好ましくは、500〜3000重量部である。
【0106】
このような構成からなる本発明に用いる導電性樹脂組成物により形成される導電層は、透明基体上に配置される。
【0107】
本発明に用いる透明基体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリル、トリアセチルセルロース、ポリイミドなどの有機高分子系フィルム、無機フィラー(ガラスクロス含む)と有機樹脂との複合体フィルム、ガラス基板等が挙げられる。
【0108】
本発明の透明電極基板は、上記導電性樹脂組成物を、上記透明基体上に塗布し、乾燥、露光により硬化して導電層を形成することにより製造することができる。
【0109】
さらに、本発明の透明電極基板へのパターニング方法について説明する。
パターニングの手法としては、ウェットエッチングやリフトオフ法が挙げられる。
【0110】
まず、ウェットエッチングによる導電層のパターニング方法の一例としてポジ型レジストを使用する場合を例に上げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、ネガ型のレジストを使用することもできる。
透明基体上に導電性樹脂組成物をコーティングし、この透明基体上にレジストを塗布し、所望のパターンを有するフォトマスクを介して露光する。次に露光した部分のレジストを現像液で除去し導電層を露出させる。現像した基板にエッチング液を用いてエッチングし、導電層を除去しパターニングする。その後、残存するレジスト部を剥離剤を使用して除去し、導電層がパターニングされた基板を得ることができる。
【0111】
上記ウェットエッチングによる導電層のパターニング方法に使用するレジストとしては、汎用のフォトレジストやドライフィルムレジストが使用できる。
当該フォトレジストは、紫外線を照射した部分が現像液に溶解するポジ型と紫外線を照射した部分が現像液に不溶化するネガ型があり、ポジ型は液体のレジストが多く、ディスプレイではLCD等の線幅(ライン)が数μm〜数十μmのオーダーのエッチングに用いられる。ポジ型の液体レジストはナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂を含むものが好ましい。ノボラック樹脂はクレゾールノボラック樹脂であることがより好ましい。
ネガ型は液体レジスト以外にドライフィルムレジストがあり、ディスプレイではPDP(プラズマディスプレイパネル)等の線幅が数十μmオーダーのエッチングに用いられている。
ポジ型とネガ型どちらのタイプのレジストも使用可能であり、目的とするパターンの精細度と使い勝手から選択すればよい。
【0112】
上記ウェットエッチングによる導電層のパターニング方法に使用する現像液としては、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液等の有機系現像液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液などの、無機系現像液等が挙げられる。
【0113】
上記ウェットエッチングによる導電層のパターニング方法に使用するエッチング液としては、硝酸セリウムアンモニウムを含有するエッチング液、硫酸セリウムアンモニウムを含有するエッチング液、及び次亜塩素酸塩水溶液であるエッチング液等が使用できる。
【0114】
上記ウェットエッチングによる導電層のパターニング方法に使用する剥離剤としては、レジストパターンの剥離能を有するものであり、(a)窒素原子を含有しない非プロトン性有機溶剤(非プロトン性有機溶剤(a))、並びに、(b)化学構造中に窒素原子を有し、かつ、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および第四級アンモニウム塩以外の有機溶剤(有機溶剤(b))よりなる群から選択された少なくとも1種の有機溶剤を含有することが必要であり、前記非プロトン性有機溶剤(a)および/または前記有機溶剤(b)を主成分とすることがより好ましく、前記非プロトン性有機溶剤(a)または前記有機溶剤(b)を主成分とすることがさらに好ましい。
【0115】
本発明において、非プロトン性有機溶剤とは、プロトンを供与する能力が著しく低い有機溶剤を意味する。これに対してプロトン性有機溶剤とは、自分自身で解離してプロトンを生じる溶剤をいい、水、メタノールやエタノールのようなアルコール、酢酸のようなカルボン酸、フェノール、液体アンモニアなどがその例である。
【0116】
(a)非プロトン性有機溶剤
本発明において、前記非プロトン性有機溶剤(a)は、ジメチルスルホン等のジアルキルスルホン類、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の炭酸アルキレン類、および、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のアルキロラクトン類よりなる群から選択された、化学構造中に酸素原子および/または硫黄原子を含み、かつ、窒素原子を含有しない非プロトン性有機溶剤であることが好ましい。これらの非プロトン性有機溶剤(a)は、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0117】
また、前記ジアルキルスルホキシド類および前記ジアルキルスルホン類は、2つのアルキル基が結合して環を形成してもよく、例えば、ジアルキルスルホン類は、スルホラン、テトラメチルスルホラン等のスルホラン類をも含む意である。
【0118】
なお、本発明において、化学構造中に酸素原子および/または硫黄原子を含み、かつ、窒素原子を含まない他の非プロトン性有機溶剤を併用することができる。
【0119】
(b)化学構造中に窒素原子を有し、かつ、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および有機第四アンモニウム塩以外の有機溶剤
ここで、第一級アミン化合物とは、アンモニア(NH3)の水素原子の1つを炭化水素残基で置換した化合物であり、第二級アミン化合物とは、アンモニア(NH3)の水素原子2つを炭化水素残基で置換した化合物である。また、第四アンモニウム塩は、アンモニウム塩(NH4X)の窒素原子についている4個の水素原子を全て炭化水素残基で置換したイオン性の化合物である。
本発明において有機溶剤(b)は、第三級アミン化合物またはアミド化合物であることが好ましい。なお、本発明において、アミド化合物は、−C=O−NRa−の部分構造を有するものであればよく、ウレア化合物を含む意である。ここで、Raは水素原子または一価の置換基を表す。
これらの中でも、有機溶剤(b)は、アミド化合物であることが好ましい。
【0120】
かかる有機溶剤(b)としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン類やN−アルケニルピロリドン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のジアルキルカルボアミド類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、トリエタノールアミン等が例示される。
【0121】
これらの有機溶剤(b)は、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0122】
なお、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および有機第四アンモニウム塩は、剥離剤全体としても含有しないことが好ましく、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および有機第四アンモニウム塩の含有量は剥離剤全体の5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下であり、さらに好ましくは含有しないことである。
【0123】
本発明において、非プロトン性有機溶剤(a)または有機溶剤(b)をそれぞれ単独で使用することもできるし、非プロトン性有機溶剤(a)および有機溶剤(b)を併用することもできる。
非プロトン性有機溶剤(a)と有機溶剤(b)との混合物は、導電性高分子からのレジスト膜の剥離性がよく、導電性高分子の表面抵抗を高めない、つまり導電性を悪化させず、かつ、基材と導電性高分子の密着性も悪化させない点で好ましい。
非プロトン性有機溶剤(a)と有機溶剤(b)との割合は、(a)/(b)=99/1〜10/90(重量比)が好ましく、(a)/(b)=70/30〜20/80(重量比)がより好ましい。
【0124】
本発明において、剥離剤には、前記非プロトン性有機溶剤(a)および有機溶剤(b)の他に、剥離特性を落とさない範囲で、その他の化合物を添加することができる。かかる化合物としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の引火点が21℃以上のグリコールエーテル類、水等が例示される。
非プロトン性有機溶剤(a)および/または有機溶剤(b)以外の成分は、合計で、剥離剤の総重量に対して0〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは0〜30重量%であり、さらに好ましくは0〜10重量%であり、特に好ましいのは0〜5重量%であり、最も好ましくは0〜3重量%である。
【0125】
次に、リフトオフ法による導電層のパターニング方法の一例を説明する。
リフトオフ法による、本発明の所望のパターンを有する当面電極基板の形成方法は、(1)基板上に目的とする透明電極パターンの逆パターンを、感放射線性樹脂組成物により形成する工程、(2)該逆パターンを有する基板の表面に、導電性樹脂組成物を塗布・乾燥し、該パターンと該基板表面との全体を覆う透明導電膜を形成する工程、および(3)該透明導電膜が形成された基板を剥離剤で処理することにより、該逆パターンを、該パターン上の透明導電膜と共に除去し、目的の透明電極のパターンを得る工程からなる。
【0126】
上記感放射線性樹脂組成物としては、ポジ型感放射線性樹脂組成物およびネガ型感放射線性樹脂組成物のいずれをも用いることができる。ポジ型感放射線性樹脂組成物としては、フェノールノボラック樹脂とナフトキノンジアジドとの混合物(例えば、フェノールノボラック樹脂約80%とナフトキノンジアジド約20%との混合物)が代表的である。ネガ型感放射線性樹脂組成物としては、環化ゴムと芳香族ビスアジドとの混合物、およびフェノール樹脂と芳香族アジドとの混合物などがある。
【0127】
上記基板上に逆パターンを形成するには、例えば、まず基板上に、溶媒または分散媒を含む上記感放射線性樹脂組成物を塗布した後、これを加熱・乾燥させて、感放射線性樹脂組成物層を形成する。塗布する方法としては、スピンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スリットコーティング、ブレードコーティング、スプレーコーティングなどの方法が挙げられる。
【0128】
このようにして形成される感放射線性樹脂組成物層の膜厚は、特に限定されないが、0.5〜50μmが好ましく、さらに好ましくは1〜10μmの範囲である。膜厚が薄すぎると導電層のパターンの解像度が低下し、逆に、膜厚が必要以上に厚すぎても解像度は向上しない。
【0129】
次に、得られた感放射線性樹脂組成物層を以下のようにパターニングすることにより、目的とする導電層パターンとは逆のパターンが形成される。感放射線性樹脂組成物としてポジ型感放射線性樹脂組成物を用いる場合は、まず基板上の感放射線性樹脂組成物層表面に、目的とする導電層パターンの逆パターン(形成される感放射線性樹脂組成物薄膜のパターンと同一のパターン)の遮光層を有するフォトマスクを載置し、これを通して放射線を照射する。照射された部分は、所定の溶剤に対して可溶性となる。次に、該溶剤により照射部分を溶解して除去し、目的とする導電層パターンの逆パターンが得られる。
【0130】
他方、ネガ型感放射線性樹脂組成物の場合は、まず、ポジ型の場合と同様に、基板上に感放射線性樹脂組成物層を有する積層体を準備する。この該樹脂組成物層表面に、目的とする導電層とは逆のパターンの遮光層を有するフォトマスクを載置し、これを通して放射線を照射する。照射前の感放射線性樹脂組成物薄膜のパターンは所定の溶剤に可溶であるが、照射された部分は、硬化して該溶剤に不溶となる。そのため、遮光部分を該溶剤により溶解して除去し、目的とする導電層パターンの逆パターンを形成することができる。
【0131】
次に、導電性樹脂組成物を、逆パターンの上を覆うように塗布する。スピンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スリットコーティング、ブレードコーティング、スプレーコーティングなどの方法で逆パターンを有する基板上に塗布され、加熱・乾燥させることにより、導電層が形成される。液状組成物が塗布されるため、導電層は、基板表面および逆パターンの薄膜表面全体(側面を含む)に付与される。
【0132】
導電層の膜厚は、特に限定されないが、0.01〜0.8μmが好ましく、さらに好ましくは0.04〜0.3μmの範囲である。膜厚が薄すぎると薄膜に十分な機能が付与できず、逆に、膜厚が厚すぎるとパターンの解像度が低下する。
【0133】
次に、上記基板上に形成された逆パターンを、該パターン上の導電層と共に除去する。これは、例えば、導電層が形成された基板を、感放射線性樹脂組成物あるいは可溶化された感放射線性樹脂組成物でなる薄膜を溶解し得る剥離剤に浸漬処理することにより達成される。
【0134】
上記剥離剤は、感放射線性樹脂組成物の種類により異なるが、例えば、ポジ型感放射性樹脂であるクレゾールノボラック樹脂とナフトキノンジアジドとの混合物の場合は、剥離剤としてアミンなどのアルカリを含有する水溶液が、ネガ型感放射性樹脂である環化ゴムと芳香族ビスアジドとの混合物の場合には、剥離剤としてアルキルベンゼンスルホン酸などが利用され、フェノール樹脂と芳香族アジドとの混合物の場合は、剥離剤としてアミンなどのアルカリを含有する水溶液などが利用される。剥離剤は、導電層の空孔部分を通って、あるいは、該導電層に含まれるバインダーを溶解して侵入し、該パターンと接触し、これを溶解する。このことにより目的の導電層のパターンを得ることができる。
【0135】
次に、本発明の透明電極基板を用いた電子ペーパーについて説明する。
本発明の電子ペーパーは、反射型電子ディスプレイであり、高精細且つ高コントラスト比を実現することが可能であり、基板上にディスプレイ媒体および該ディスプレイ媒体を駆動する薄膜トランジスタ(TFT)を有する。ディスプレイ媒体としては、従来知られているいかなるディスプレイ媒体でも用いることができる。電気泳動方式、電子粉粒体飛翔方式、荷電トナー方式、エレクトロクロミック方式等のいずれのディスプレイ媒体であっても好ましく用いられるが、電気泳動方式のディスプレイ媒体がより好ましく、なかでもマイクロカプセル型電気泳動方式のディスプレイ媒体が特に好ましい。電気泳動方式のディスプレイ媒体は、複数のカプセルを含むディスプレイ媒体であり、該複数のカプセルのそれぞれが懸濁流体内で移動可能な少なくとも1つの粒子を含む。ここでいう少なくとも1つの粒子は、電気泳動粒子または回転ボールであることが好ましい。また、電気泳動方式のディスプレイ媒体は、第1の面および該第1の面と対向する第2の面を有し、該第1および該第2の面の内の1つの面を介して観察イメージを表示する。また、基板上に設けられるTFTは、少なくともゲート電極、ゲート絶縁膜、活性層、ソース電極及びドレイン電極を有し、活性層とソース電極の間か活性層とドレイン電極の間の少なくとも一方に、電気的に接続する抵抗層をさらに有する。電子ペーパーは、電圧印加により光の濃淡を生じる。
【0136】
次に、本発明の透明電極基板を用いた抵抗膜式スイッチについて説明する。
本発明の抵抗膜式スイッチは、第一導電層を透明基体上に有する第一導電性部材、第二導電層を基体上に有する第二導電性部材、及び絶縁スペーサーを有する抵抗膜式スイッチであって、該第一導電性部材及び/又は第二導電性部材が上記透明電極基板であり、該絶縁性スペーサーが、第二導電層上の一部に設けられ、そして第一導電層と第二導電層とが対向するように配置された構造である。
【0137】
この抵抗膜式スイッチがタッチスクリーンである場合、透明基体の表面(第一導電層と接していない表面)がタッチ面となる。タッチ面が指またはペンの先端などで押圧されると、第一導電性部材が変形し、その押圧された部分の第一導電層が第二導電層に接触する。その結果、接触部分において電気が導通し、電気信号が出力可能となり、抵抗膜スイッチが作動あるいは駆動する。この電気信号を利用することにより、本抵抗膜スイッチは入力装置として機能する。
【0138】
本発明の抵抗膜式スイッチを構成する第一導電性部材は、透明基体上に導電性の薄膜(第一導電層)が形成されてなる。この第一導電性部材としては、上記透明電極基板が用いられる。この透明電極基板の導電層は、第一導電層である。透明基体の大きさは、例えば、抵抗膜式スイッチがタッチスクリーン等である場合には、そのタッチスクリーン面と同等あるいはほぼ同等の大きさであるのが好ましい。透明基体の厚みは、例えば、抵抗膜式スイッチがタッチスクリーン等である場合には、機械的強度が十分でかつ適度な可撓性を示す程度の厚みであれば充分である。第一導電性部材は、この透明基体上に、上記導電性樹脂組成物を塗布し、乾燥し、薄膜を形成することにより得られる。
【0139】
上記第一導電層は、透明基体上の全面に形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。後者の場合、抵抗膜式スイッチがタッチスクリーン等である場合において、電極や配線パターンなどを形成するスペースを確保することができる等の点で有利である。即ち、タッチスクリーン等においては、ITO導電層が全面に形成された基体を用いると、これをエッチングにより除去したり、絶縁フィルムなどにより被覆を行うという複雑で高コストな処理が必要となるのに対して、導電層が部分的に形成されている場合はこのような処理が必要ではないという点で有利である。
【0140】
第一導電性部材は、光学的には透明に優れ、可撓性であるのが好ましい。可撓性であることにより、該第一導電性部材は、押圧により変形可能であり、押圧された場合に第二導電性部材に部分的に接触可能とすることができる。導電性の程度、即ち抵抗率等については、特に制限はなく、目的に応じて必要とされる程度となるように適宜決定することができる。例えば、一般に用いられるタッチスクリーンにおける透明導電層の抵抗率と同様の範囲とすることができる。なお、前記第一導電性部材の大きさは、例えば、タッチスクリーンに利用される場合には、そのタッチスクリーン面と同等かほぼ同等の大きさであるのが好ましい。
【0141】
本発明の抵抗膜式スイッチを構成する第二導電性部材は、基体上に導電性の薄膜(第二導電層)が形成されてなる。この基体の材料、色、形状、構造、大きさ等については特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができる。基体の具体的な材料としては、例えば、硬度に優れ、表面への導電層の形成が容易であるなどの点で、ガラス、樹脂などが好適に挙げられる。基体に用いられ得る樹脂としては、硬質樹脂などが挙げられる。
【0142】
硬質樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、硬質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂などが挙げられる。
【0143】
基体は、光学的には不透明であってもよいが、目的に応じて透明または半透明の材料、特に透明の材料が好適に用いられる。基体の形状も特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液晶表示器などに配置される観点から板状の形状が好適である。基体は、例えば、単独の部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよく、この場合、積層構造などであるのが好ましい。例えば、2種の樹脂フィルムからなる積層体などが挙げられる。基体の大きさは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記第一導電性部材の大きさと略同等の大きさが採用される。
【0144】
上記第二導電層を形成し得る材料としては、特に制限はなく、当該分野で一般に用いられる導電性材料の中から適宜選択することができる。そのような導電性材料としては、例えば、ITOが挙げられ、その他にも上記本発明の導電性樹脂組成物などが利用可能である。上記ITOでなる導電層は、蒸着法、スパッタリング法などの公知の薄膜形成方法により形成することができる。本発明の導電性樹脂組成物を用いる場合は、基体上に、上記第一導電層と同様の塗布などの工程により導電層が形成される。
【0145】
第二導電性部材として、上記第一導電性部材と同様の構成のフィルムとすることも可能である。この場合、第一導電性部材および第二導電性部材の双方が可撓性を有する結果、該抵抗膜式スイッチを曲面状に設計および配置等することができ、設置場所、デザインの選択の自由度を向上させることができる。また、ガラス等の硬質材料を使用しない場合には小型軽量化が可能であり、携帯性に優れた抵抗膜式スイッチが得られる点で有利である。
【0146】
本発明に用いられる絶縁性スペーサーの形状、構造、材質、大きさ等については特に制限はなく、当該分野で一般に用いられるものの中から適宜選択することができる。絶縁性スペーサーの材料としては、例えば、アクリル系樹脂などが挙げられる。絶縁性スペーサーの形状としては、円柱状、半球状、直方体状などが挙げられる。この絶縁性スペーサーは、基体の上に形成された第二導電層の表面に形成される。具体的には、公知のフォトリソグラフィーなどの方法が採用され得る。
【0147】
本発明の抵抗膜式スイッチは、上記の構成要素のほか、必要に応じて適宜選択したその他の部材を有していてもよい。その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、電極、ランドパターン、配線パターン、ドットスペーサーなどが挙げられる。
【0148】
前記電極、前記ランドパターン、前記配線パターンなどを構成する材料、その形状、構造、大きさ等については、導電性の素材である限り特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。前記材料としては、例えば、ポリエステル系銀ペーストなどが挙げられる。前記電極、前記ランドパターン、前記配線パターンなどの形成方法としては、特に制限はなく、当該分野で一般に用いられる方法の中から適宜選択することができ、例えば、塗布方法、印刷方法などの方法が挙げられる。
【0149】
前記ドットスペーサーの材料、形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。ドットスペーサーに用いられる材料としては、例えば、アクリル系樹脂などが挙げられ、その形状としては、例えば、円柱状、半球状、直方体状などが挙げられる。前記ドットスペーサーの形成方法としては、特に制限はなく、当該分野で一般に用いられる方法の中から適宜選択することができ、例えば、フォトリソグラフィーなどが挙げられる。
【0150】
上記その他の部材のうち、電極は、第一導電性部材の第一導電層及び第二導電性部材の第二導電層に接触するように、電極以外の部材は第二導電層上に形成される。
【0151】
このようにして得られた本発明の抵抗膜式スイッチは、透明性、および導電層の導電性に優れ、所定の部分を押圧したときの導通性に優れ、可撓性にも優れる。さらに、高温高湿の条件下で長時間保存した場合であっても導電層の表面抵抗率の上昇が効果的に抑制される。更には、低コストで所望の形状に量産可能である。そのため、各種分野に好適に使用することができる。例えば、タッチスクリーン、メンブランスイッチなどに特に好適に使用することができる。
【0152】
次に、本発明の透明電極基板を用いた静電容量スイッチについて説明する。
本発明の静電容量スイッチは、内部に備える電極に例えば指などの被検知物体が近づくと電極の静電容量が変化する現象を利用してスイッチのONとOFFを切り替えるためのスイッチ部の働きをするものであり、家電製品、音響機器、自動車のインジケータなどの表示パネルやキーボタンなどに用いられるスイッチの一つである。この静電容量スイッチは、電極の静電容量の変化を検出するための検出回路に接続され、検出回路は各種装置の作動を制御するための制御手段に接続される。例えば、透明基体上に、上記導電性樹脂組成物を塗布し、乾燥し、薄膜が電極として形成された静電容量スイッチがあり、例えば、タッチスクリーン、メンブランスイッチなどに特に好適に使用することができる。
【0153】
次に、本発明の透明電極基板を用いた抵抗膜式スイッチ又は静電容量スイッチを有するキーボードについて説明する。
本発明のキーボードは、キーを導電層に押し付けることでスイッチのONとOFFを切り替える膜スイッチの1つであり、具体的には、パソコンのキーボード、携帯電話のスイッチ、炊飯器等家電製品に採用されているメンブレンスイッチなどが挙げられる。
【0154】
本発明の透明電極基板は、太陽電池、エレクトロミック素子、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイの電極等にも使用することができる。
【実施例】
【0155】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0156】
(製造例1)
200mLのビーカーに、120gのメチルエチルケトン(MEK)、8.0gのメタノール、13.91gのp−トルエンスルホン酸鉄(III)(40%ブタノール溶液)、1.3g(3.3mmol)の上記構造式(2−3)で表される複素環含有芳香族化合物(以下、複素環含有芳香族化合物(2−3)ともいう)を加えた。
その後、氷浴下(内温5〜7℃)で2時間撹拌し、HPLCにて複素環含有芳香族化合物(2−3)の消失を確認した。これにより、p−トルエンスルホン酸ドープの複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体MEK分散体110g(固形分1.5%)を得た。
【0157】
この複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体MEK分散体については、GPC溶離液に溶解せず、GPC測定では、複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体MEK分散体そのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、複素環含有芳香族化合物(2−3)が完全に消失していることと、以下に示す導電性樹脂組成物の試験結果により本複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体MEK分散体が導電性を示す結果が得られたことから、複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体MEK分散体が生成していることが明らかである。
【0158】
(比較製造例1)
2000mLの三口フラスコに、1.53g(10.9mmol)の3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、410gのイオン交換水、253gの12.8質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液、16.5g(0.41mmol)の1%硫酸鉄(III)水溶液を加えた。次いで、11.8g(6.6mmol)の10.9質量%ペルオキソ二硫酸水溶液を加えた。その後、室温下(約25℃)で24時間撹拌し、HPLCにてEDOTの消失を確認し、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)水分散体を650g(固形分1.3%)得た。
【0159】
このPEDOT水分散体については、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を使用しているため、GPC測定では、PEDOTそのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、EDOTが完全に消失していることと、以下に示す本発明の導電性樹脂組成物の試験結果により本水分散体が導電性を示す結果が得られたことから、PEDOTが生成していることが明らかである。
【0160】
下記、表1に製造例1及び比較製造例1の配合を示す。
【0161】
【表1】

【0162】
次に、下記の方法により、導電性樹脂組成物を製造した(実施例1及び比較例1)。なお、表2には、実施例及び比較例で製造した導電性樹脂組成物の配合を示した。
【0163】
(実施例1)
製造例1で得た複素環含有芳香族化合物(2−3)重合体MEK分散体1.4g、ポリエステルバインダー(東亜合成社製、アロニックスM6100)0.05g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、KAYARAD DPHA)0.02g、アルキルフェノン系光重合開始剤(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)0.002g、メチルエチルケトン4.0gを混合し、導電性樹脂組成物を製造した。
【0164】
(比較例1)
比較製造例1で得たポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)水分散体1.4g、ポリエステルバインダー(東亜合成社製、アロニックスM6100)0.05g、メラミン系架橋剤(住友化学社製、SumtexResinM−3)0.02g、エタノール1.0g、水1.0gを混合し、導電性樹脂組成物を製造した。
【0165】
【表2】

【0166】
実施例1及び比較例1で製造した導電性樹脂組成物について、下記評価を行った。
即ち、導電性樹脂組成物を、青板ガラス基板上にワイヤーバーにより塗布し、乾燥、高圧水銀灯の露光により硬化して厚さ0.8μmの導電層を形成した透明電極基板を作成した。そして、この導電層について、下記の方法により、表面抵抗率(SR)、全光線透過率(Tt)、ヘイズ値、密着性(碁盤目試験)、保存安定性 (SR上昇率、膜外観)、耐熱・耐湿熱性、導通率を測定した。結果を表3に示した。
【0167】
表面抵抗値(SR)
JIS K 6911に従い、三菱化学(株)製、ハイレスターUP(MCP−HT450)を用いて測定した。
【0168】
全光線透過率(Tt)/ヘイズ値
JIS K 7150に従い、スガ試験機(株)製ヘイズコンピュータHGM−2Bを用いて測定した。
【0169】
密着性(碁盤目試験)
JIS K 5400の碁盤目剥離試験に従って行った。
【0170】
保存安定性
一定時間経過前後の表面抵抗率(SR)の上昇率、及び、液外観を指標に保存安定性を評価した。
即ち、調製直後の導電性樹脂組成物を用いて、上記方法で導電層を形成し、そのとき測定した表面抵抗率(SR)を初期表面抵抗率とし、更に、導電性樹脂組成物を40℃1週間の条件で暗所に保管した後、同様の方法で塗膜を形成し、測定した表面抵抗率(SR)を試験後表面抵抗率とし、試験後表面抵抗率を初期表面抵抗率で除することにより表面抵抗率(SR)の上昇率を算出した。
【0171】
また、試験後表面抵抗率の測定に使用した導電性樹脂組成物を1時間静置後、その液状体を目視観察し、下記の基準で1〜3の3段階で評価した。
1:沈殿物は観察されない。
2:わずかに沈殿物が観察される。
3:大量の沈殿物が観察される。
【0172】
耐熱性試験
95℃に調整したオーブンに、上記方法で形成した導電層を入れ、100時間後の表面抵抗率の上昇率を観察した。
【0173】
耐湿熱性試験
60℃、相対湿度93%に調整した恒温恒湿機に、上記方法で形成した導電層を入れ、100時間後の表面抵抗率の上昇率を観察した。
【0174】
導通率試験
上記方法で形成した導電層を用い、タッチパネル評価装置(タッチパネル研究所社製)を用いて、100g荷重で100点タッチした時の導通回数を導通率とした。
【0175】
【表3】

【0176】
(実施例2〜3、比較例2)
実施例1及び比較例1で製造した導電性樹脂組成物について、下記評価を行った。
即ち、導電性樹脂組成物を、東レ社製ポリエチレンテレフタレートフィルム ルミラーT60(厚み188μm)にワイヤーバーにより塗布し、乾燥、高圧水銀灯の露光により硬化して厚さ 0.8μmの導電層を形成し、透明電極基板を作成した。そして、この導電層について、上記の方法により、表面抵抗率(SR)、全光線透過率(Tt)、ヘイズ値を測定し、下記の方法により、パターニング後の端子間抵抗(kΩ)を測定した。結果を表4に示した。
【0177】
パターニング後の端子間抵抗(kΩ)測定試験
上記透明電極基板の導電層表面に、太陽インキ社製銀ペーストECM−100を当該基板の両端付近に各々1つずつ並行して塗布し、厚み50umの金属端子を配置した。これら各々の金属端子の同方向の片末端のみに、ソニーケミカル社製導電性粘着テープCU7636Rを当該基板の外側方向に5cm張り出すように貼り付け、各々取り出し電極を作成した。この各々の取り出し電極の末端に、三和電気計器株式会社製サンワ・デジタルマルチメータPC5000のテストリードの先端を各々強く接着させ、端子間抵抗(kΩ)を測定した。
【0178】
下記の方法により、解像度を測定し、パターン形状を観察した。結果を表4に示した。
【0179】
解像度試験
青板ガラス上に、様々な線幅を有する格子状又はラインアンドスペース(LS)パターンをもつスクリーンを置き、その上からワイヤーバーにて導電性樹脂組成物の塗布を行った後、上記ウェットエッチング又はリフトオフ法にて製膜を行い、導電層を形成した。
描かれたパターンを顕微鏡観察し、欠陥無く描かれる最も数値の小さな線幅を解像度とした。
【0180】
パターン形状試験
上記、解像度試験で用いた透明電極基板(青板ガラス基板)の、パターンの直線性や見えやすさを目視で確認し、良好であれば○、不良であれば×とした。
【表4】

【0181】
以上の結果より、実施例2〜3の透明電極基板は、他の導電性高分子(ポリ(3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン))を含有する比較例2の透明電極基板に比べ、高い透明性を維持しつつ、導電性に優れ、かつ、密着性、保存安定性、導通率を高いレベルで維持することができ、耐熱性、耐湿熱性も良好であり、さらに、パターニングを行って得られた電極は、解像度の高いパターンが形成でき、パターン形状も良好であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明の透明電極基板は、電子ペーパー、太陽電池、エレクトロミック素子、抵抗膜式スイッチ、静電容量スイッチ、また当該抵抗膜式スイッチ又は静電容量スイッチを用いたタッチスクリーン、キーボード、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイや有機ELディスプレイの製造に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基体上に導電層が形成された透明電極基板であって、該導電層が、下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体とする(A)複素環含有芳香族ポリマー
M−N・・・(1)
(式中、Mは、置換若しくは無置換のチオフェン環基を表し、Nは、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Mによって表される環とNによって表される環は直接結合している。)、
を含有する導電性樹脂組成物により形成される、透明電極基板。
【請求項2】
前記複素環含有芳香族化合物は、下記一般式(2′)で表される複素環含有芳香族化合物である請求項1に記載の透明電極基板。
【化1】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表す。また、RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項3】
前記複素環含有芳香族化合物は、下記構造式(2−1)〜(2−17)で表される複素環含有芳香族化合物のなかの少なくとも1つである請求項1又は2に記載の透明電極基板。
【化2】


【請求項4】
前記透明基体が樹脂フィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の透明電極基板。
【請求項5】
前記導電層がパターンを有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明電極基板。
【請求項6】
前記パターンがウエットエッチング又はリフトオフ法により形成されたものであることを特徴とする請求項5に記載の透明電極基板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の透明電極基板を有することを特徴とする電子ペーパー。
【請求項8】
第一導電層を透明基体上に有する第一導電性部材、第二導電層を基体上に有する第二導電性部材、及び絶縁スペーサーを有する抵抗膜式スイッチであって、該第一導電性部材及び/又は第二導電性部材が請求項1〜6のいずれかに記載の透明電極基板であり、該絶縁性スペーサーが、第二導電層上の一部に設けられ、そして第一導電層と第二導電層とが対向するように配置された、抵抗膜式スイッチ。
【請求項9】
第一導電層を透明基体上に有する第一導電性部材と第二導電層を基体上に有する第二導電性部材とから構成される静電容量スイッチ、又は透明基体の両面に第一導電層と第二導電層を有する第三導電性部材から構成される静電容量スイッチであって、該第一導電性部材、該第二導電性部材、該第三導電性部材のいずれかが請求項1〜6のいずれかに記載の透明電極基板である静電容量スイッチ。
【請求項10】
請求項8又は9のいずれかに記載のスイッチを有することを特徴とするタッチスクリーン。
【請求項11】
請求項8又は9のいずれかに記載のスイッチを有することを特徴とするキーボード。

【公開番号】特開2012−64498(P2012−64498A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209262(P2010−209262)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】