説明

透水性を有する複数の袋体を連結する連結ベルト

【課題】粘性土が充填された状態の袋体の高さを確保でき、多段に積み重ねられた複数の袋体の積み重ね状態を従来技術に比してより維持することができ、かつ施工性に優れた脱水袋体用の連結ベルトを提供する。
【解決手段】直列に配置され袋体の長手方向に直交する方向の当該袋体の周囲に巻かれる複数のベルト11と、隣り合うベルト11同士を接合する2つの接合部12とを備える連結ベルト1である。この2つの接合部12は、袋体に粘性土が充填された状態において、隣り合う当該袋体の間に上下方向に所定の間隔Aを開けて配設されるように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋詰脱水処理工法で用いられ、多段に積み重ねられる透水性を有する複数の袋体を連結する連結ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
袋詰脱水処理工法とは、浚渫土などの高含水比の粘性土を、透水性を有する袋体に充填して圧密により脱水し、盛土として利用する工法のことをいう。そしてこの袋詰脱水処理工法において大型の袋体が用いられる場合、粘性土充填後に袋体を移動させることが困難なため、盛土形成場所にあらかじめ空の袋体を並べておいて、その袋体に高含水比の粘性土を充填し、所定の盛土高さになるように積み上げる方法がある。
【0003】
この種の技術としては、例えば特許文献1に記載されたような技術がある。特許文献1に記載された袋詰脱水処理工法では、例えば袋体につけたマジックテープ(登録商標)により下方や側方の袋体と相互に接合された複数の袋体に、高含水比の粘性土を充填して、多段に積み重ねられた状態の袋体を形成する。また、袋体同士を接合する接続手段としては、マジックテープ(登録商標)の他に、隣り合う袋体の外周面にベルトの両端を縫い付けたり、袋体の周囲を紐、ロープ、またはワイヤで巻いたりする手段が挙げられている。そして特許文献1において、これら接続手段を用いることにより、袋体を容易に接続一本化することができ、また粘性土が充填された上段の袋体がその重量によって下段の袋体の間に落ち込んだりすることは防止される、と称されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3148815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、このような袋詰脱水処理工法においては、袋体内に充填された粘性土の脱水処理効率向上、および袋体の盛土としての利用性向上の観点から、粘性土が充填された状態の袋体の高さを高く確保することが望ましい。しかしながら、特許文献1に記載された袋詰脱水処理工法において用いられるマジックテープ(登録商標)などの接続手段には、袋体の高さを確保するという観点からの工夫はなされていない。また、圧密が不十分な袋体内部の粘性土は流動性が高いため、上段の袋体に粘性土を充填していくと、その上段の袋体の重量によって袋体内の高含水比の粘性土が流動しようとし、上段の袋体は下段の袋体の間に落ち込もうとうする。
【0006】
また、通常の1本のベルトで複数の袋体をまとめて一巻きしたり八の字に巻いたりすると、以下のような不具合が生じる。まず、上段の袋体に粘性土を充填していくと、その下段の袋体が回転して当該下段の袋体の間に上段の袋体が落ち込む。また、袋体同士を互いに隣接させて配置する必要があるので、障害物(木や溝)が存在する場合には1本のベルトで連結することができず、障害物(木や溝)の前後で分けて連結しなければならない。さらに、通常の1本のベルトの場合、施工時に空の袋体を正確な位置で互いに重ね合わせなければならず、施工に手間がかかる(粘性土の充填により袋体が膨らむと、その横幅が縮むため、あらかじめ重ね合わせ量を正確に調整しておく必要がある)。なお、袋体同士を八の字に巻いたとしても、少しずつベルトを内側に寄せて袋体同士が重ね合わさるように設置しなければならない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、粘性土が充填された状態の袋体の高さを確保でき、多段に積み重ねられた複数の袋体の積み重ね状態を従来技術に比してより維持することができ、かつ施工性に優れた脱水袋体用の連結ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、直列に接合した複数のベルトでそれぞれ袋体を巻き、かつ、このベルト同士を接合する2つの接合部を、粘性土が充填された袋体の間に上下方向に所定の間隔を開けて配設することにより、前記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき本発明が完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するために本発明は、高含水比の粘性土が充填されかつ多段に積み重ねられる透水性を有する複数の袋体を連結する連結ベルトであって、直列に配置され、前記袋体の長手方向に直交する方向の当該袋体の周囲に巻かれる複数のベルトと、隣り合う前記ベルト同士を接合する2つの接合部と、を備え、前記2つの接合部は、前記袋体に前記粘性土が充填された状態において、隣り合う当該袋体の間に、上下方向に所定の間隔を開けて配設されるように設けられる連結ベルトを提供する。
【0010】
この構成によると、複数のベルトからなる当該連結ベルトにより連結された袋体に粘性土を充填すると、袋体の間に上下方向に所定の間隔を開けて配設される連結ベルトの上記2つの接合部により、袋体はその断面形状が長方形状に拘束される。すなわち、連結ベルトの2つの接合部の間隔を適宜調整することで袋体の高さを確保することができる。また、この2つの接合部により、袋体同士はその高さ方向に面接触するので袋体は回転せず、上段の袋体が下段の袋体の間に落ち込もうとする動きを従来よりも抑制することができる。すなわち、多段に積み重ねられた複数の袋体の積み重ね状態を従来技術に比してより維持することができる。さらに、施工場所に木や溝などの障害物があったとしても、これら障害物を飛ばして袋体を連結することができる。また、隣り合う空の袋体同士の重ね合わせ量の調整は特に不要である。すなわち、施工性に優れる。
【0011】
また本発明において、前記ベルトの端部同士を連結して輪状にしたときの当該ベルトの周長は、前記袋体の前記周囲の長さと同じ又は当該長さよりも若干短いことが好ましい。
【0012】
この構成によると、連結ベルトによる袋体の拘束効果を高めることができ、袋体の転がりをより防止できる。
【0013】
さらに本発明において、前記2つの接合部の前記間隔は、前記袋体の直径の30%〜50%であることが好ましい。
【0014】
この構成によると、連結ベルトの2つの接合部の間隔を袋体の直径の30%以上とすることで、上段の袋体が下段の袋体の間に落ち込もうとする動きをより防止できる。また、当該間隔を袋体の直径の50%以下とすることで、袋体を巻くベルトの破損を防止できる。
【0015】
さらに本発明において、前記2つの接合部は縫製部であり、前記ベルト同士の縫製の向きは、当該ベルトの幅方向と同じであることが好ましい。
【0016】
ベルト同士の接合部には、はく離方向(ベルト面に垂直な方向)に力が作用する。この構成によると、ベルト同士をその幅方向に縫製することによって、2つの接合部の強度を高めることができる。
【0017】
さらに本発明において、前記ベルトの端部同士は、当該端部に接合された面ファスナーにより連結され、前記ベルトが前記袋体の前記周囲に巻かれた状態において、前記面ファスナーは、オス側を外向きに、メス側を内向きに配置されることが好ましい。
【0018】
この構成によると、ベルトの端部同士の連結に面ファスナーを用いることで施工性が向上する。また、面ファスナーのオス側を外向きに配置し、そのオス側に対してメス側を貼り合わせることで、面ファスナーが袋体にひっつくことを防止できる。
【0019】
さらに本発明において、前記ベルトと前記面ファスナーとは縫製により接合され、当該縫製の向きは当該ベルトの長さ方向と同じであることが好ましい。
【0020】
ベルトと面ファスナーとの接合部には、せん断方向(ベルト面に平行な方向)に力が作用する。この構成によると、ベルトと面ファスナーとをベルトの長さ方向に縫製することによって、当該接合部の強度を高めることができる。
【0021】
さらに本発明において、前記ベルトの伸度は、前記袋体の基布の伸度よりも小さいことが好ましい。
【0022】
この構成によると、袋体への粘性土充填時には、袋体のベルトの位置する部分がくびれた状態で拘束されるので、袋体の拘束効果が向上する。また、ベルトの接合ミスで、ベルトの周長が袋体の周長よりも若干大きめ(長め)になったとしても、袋体を拘束できる。
【0023】
また本発明は、その第2の態様によれば、前記した複数の連結ベルトを所定間隔で設置するベルト設置工程と、設置された前記連結ベルトの上に複数の袋体を配置し、当該連結ベルトで当該袋体を連結する袋体連結工程と、連結された前記袋体の中に粘性土を充填する粘性土充填工程と、を備える袋詰脱水処理工法である。
【0024】
この構成によると、粘性土が充填された状態の袋体の高さを確保できるので袋体の脱水効率が飛躍的に向上する。また、従来よりも施工効率が大幅に向上する。
【0025】
また本発明において、前記粘性土充填工程において、連結された複数の前記袋体の中に一つ飛ばしで粘性土を充填することが好ましい。
【0026】
この構成によると、設置された複数の袋体に対して端から順に粘性土を充填する方法に比して、袋体の移動(転がり)をより抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る連結ベルト1により連結された袋体50に粘性土が充填され、その袋体50が積み上げられて盛土100を形成した状態を示す概略の斜視図である。前記したように、袋詰脱水処理工法とは、浚渫土などの高含水比の粘性土を、透水性を有する袋体50に充填して圧密により脱水し、盛土として利用する工法のことをいう。なお、盛土は、正確には粘性土が充填され袋体50が積み重ねられて脱水処理された後に、土などがかぶせられしめ固められて形成される。ここでは便宜上、粘性土が充填されるとともに積み重ねられ脱水処理された状態の複数の袋体50全体を盛土100と呼ぶこととする。
【0029】
図1に示すように、盛土100は、高含水比の粘性土が充填されるとともに3段に積み重ねられた(積み上げられた)計9つの袋体50で形成されている。盛土100を形成するには、まず、4本(複数)の連結ベルト1を施工場所に所定間隔で並行に設置する(ベルト設置工程)。次に、設置された連結ベルト1に対して直交するように当該連結ベルト1の上に4つ(複数)の袋体50を並行に配置し、連結ベルト1で空の状態の袋体50を相互に連結する(袋体連結工程)。その後、連結された空の袋体50の中に高含水比の粘性土を充填する(粘性土充填工程)。ここで、袋体50の中への粘性土の充填は、例えば、バックホウなどの建設機械を利用する。なお、袋体50の中への粘性土の充填はこの方法に限定されるものではない。1段目(最下段)の施工が終了すれば、粘性土が充填された4つの袋体50の上に、4本(複数)の連結ベルト1を所定間隔で設置し、1段目の施工と同様に、連結ベルト1を用いて3つの袋体50を連結し、その後、袋体50の中に粘性土を充填する。このようにして、3段に積み上げられた計9つの袋体50からなる盛土100が形成される。3段に積み上げられた袋体50は、その自重厚密などにより内部の粘性土が脱水処理される。
【0030】
なお、上記粘性土充填工程において、連結された複数の袋体50の中に一つ飛ばしで粘性土を充填することが好ましい(特に、1段目(最下段)の施工の際に好ましい)。ここで、例えば、並行に配置された複数の袋体のうち、端に位置する1つ目の袋体の中に粘性土を充填した後、その隣接する袋体に粘性土を充填すると(端から順に粘性土を充填すると)、袋体が膨らむ途中で、先に充填を終えた袋体を押してしまい、この充填を終えた袋体が移動してしまう場合がある。しかしながら、端に位置する1つ目の袋体の中に粘性土を充填した後、一つ飛ばしで離れた位置にある袋体50に粘性土を充填し、その後これら2つの袋体50の間に位置する袋体50に粘性土を充填すれば、2つの袋体50の間に位置する袋体50が膨らむ途中で隣接する両側の袋体50を押しても、その押す力が分散され、袋体が移動する(転がる)ことは抑えられる。
【0031】
なお、並べて載置した5つ以上の多数の袋体に対して、一つ飛ばしで粘性土を充填する場合には、全て一つ飛ばしで粘性土を充填した後(例えば、端から数えて奇数番目の袋体に対してのみ順に粘性土を充填した後)、その間の袋体(例えば、端から数えて偶数番目の袋体)に粘性土を充填してもよいし、端から1、3番目の袋体に粘性土を充填した後その間の袋体(端から2番目)に粘性土を充填し、その後、5番目の袋体に粘性土を充填するなどの方法をとってもよい。
【0032】
(袋体)
袋体50は、透水性を有する筒状の布帛からなり、例えばポリエステル繊維で織成されたものである。この筒状の布帛(基布)は、経糸と、経糸に対してスパイラル状に連続して織り込まれた緯糸とからなる継ぎ目のない筒状の布帛であり高い破断応力を有し、ポンプなどの充填手段により内部に粘性土が加圧充填されても容易に破断しない。本実施形態では、厚さ0.33mm、目付228g/m、折り幅1.5m(直径でいうと、約0.96m)、長さ15mの筒状の袋体50を用いた。袋体50の引張強度は、縦方向(長手方向)542N/cm、横方向(幅方向)554N/cm、伸び(伸度)は、縦方向(長手方向)12%、横方向(幅方向)11%、引裂強度は、縦方向1110N、横方向1020Nである。なお、袋体50の長さは、2m〜15mの範囲で適宜決定されることが多いが、15m以上の長さの袋体50であってもよい。また袋体50には、粘性土を充填するための充填口(不図示)が少なくとも1箇所設けられている。
【0033】
(連結ベルト)
図2は、図1に示す連結ベルト1の構造説明図である。また図3は、図2に示す連結ベルト1の一部詳細図である。図3(a)は図2のY−Y矢視図であり、図3(b)は図2のZ−Z矢視図である。図2に示すように、連結ベルト1は、直列に配置され袋体50の長手方向に直交する方向の当該袋体50の周囲に巻かれる複数のベルト11と、隣り合うベルト11同士を接合する2つの接合部12と、を備えている。本実施形態では、連結ベルト1は、4本のベルト11と、この4本のベルト11を直列に接合するための3組の2つの接合部12とを備えている。また連結ベルト1は、図1に示したように、袋体50の長手方向において所定の間隔(ピッチ)で袋体50に取り付けられている。また、1段目の4つの袋体50も、2段目の3つの袋体50も、3段目の2つの袋体50も、全ての袋体50がベルト11で巻かれて、それぞれ連結ベルト1で連結されている。
【0034】
ベルト11は、例えばポリエステル繊維で織成されたものである。またベルト11は、厚さ1.7mm、幅46.5mm、引張強度30000N、伸び(伸度)10%(11.1kN作用時)の寸法・材料特性を有している。ここで、ベルト11の伸度は、袋体50の基布の横方向(幅方向)の伸度よりも小さくされている。これにより、袋体50への粘性土充填時には、袋体50のベルト11の位置する部分がくびれた状態で拘束されるので、袋体50の拘束効果が向上する。また、ベルト11の接合ミスで、ベルト11の周長Dが袋体50の周長よりも若干大きめ(長め)になったとしても、袋体50を十分に拘束することができる。なお、本実施形態のベルト11はこのように帯状の形態であるが、本発明の連結ベルトを構成するベルトは必ずしも帯状の形態に限定されるものではない。例えば、ロープ、ひものような形態のものも本発明の連結ベルトを構成するベルトに含まれる。
【0035】
ここに、ベルト11の伸度を、袋体50の基布の伸度よりも小さくする技術について記載する。ベルト11の伸度を袋体50の基布の伸度よりも小さくするためには、(1)袋体50に使用している繊維よりも伸度が小さい繊維(例えばアラミド繊維)を使用する。(2)袋体50に使用している繊維量よりもベルト11の繊維量を全体的に多くして強度の高いベルト11にする。(3)ベルト11の長さ方向の繊維量よりもベルト11の幅方向の糸量を減らすことで、長さ方向の繊維の屈曲を減らして初期伸びを小さくする。などの方法がある。本実施形態では、上記(2)・(3)の方法を採用している。具体的には、ベルト11の経糸(長さ方向)として、ポリエステル繊維製の1670dtex・本数300本の糸を用い、緯糸(幅方向)として、ポリエステル繊維製の700dtex・密度19本/25mmの糸を用いた。なお、袋体50は、その経糸(長さ方向)として、ポリエステル繊維製の1100dtex・密度26本/インチの糸を用い、緯糸(幅方向)として、ポリエステル繊維製の1100dtex・密度24本/インチの糸を用いて平織りにより織製されたものである。
【0036】
またベルト11の両端部には、面ファスナー13が縫製により取り付けられている。ベルト11の一方の端部には面ファスナー13のオス側13aが取り付けられ、他方の端部には面ファスナー13のメス側13bが取り付けられている。面ファスナー13のオス側13aとは、貼り合わせられる一対の面ファスナー13のうち鉤状の突起が一面についた側(またはフック状に起毛された側)の面ファスナーのことをいう。また面ファスナー13のメス側13bとは、貼り合わせられる一対の面ファスナー13のうちパイル状の側(またはループ状に密集して起毛された側)の面ファスナーのことをいう。
【0037】
そして図2に示したように、ベルト11が袋体50の周囲に巻かれた状態において、面ファスナー13のオス側13aが外向きに、メス側13bが内向きに配置されるように、ベルト11の両端部に面ファスナー13が取り付けられている。面ファスナー13のオス側13aを外向きに配置し、そのオス側13aに対して面ファスナー13のメス側13bを貼り合わせることで、面ファスナー13が袋体50にひっつくことを防止できる。また、ベルト11の端部同士の連結に面ファスナー13を用いることで、袋体50の固定(拘束)を迅速に行うことができる。なお、必ずしも面ファスナー13を用いる必要はなく、例えばベルト11の端部同士をたんに結び合わせることによって連結させてもよい(袋体50を固定してもよい)。
【0038】
また、本実施形態の面ファスナー13は、ナイロン製、幅50mm、せん断強度271N、はく離強度8Nのものを用いた。なおポリエステル製のものもある。また隣り合う面ファスナー13は、色違いにされることが好ましい。貼り合わせる一対の面ファスナー13同士を間違えないようにするためである。
【0039】
また図3(b)に示したように、ベルト11と面ファスナー13a(13)とは縫製により接合され、当該縫製の向きはベルト11の長さ方向Lと同じにされている。ここで、ベルト11と面ファスナー13との接合部には、せん断方向(ベルト面に平行な方向)に力が作用する。本実施形態のようにベルト11と面ファスナー13a(13)との接合縫製の向きをベルト11の長さ方向Lに合わせることによって、当該接合部の強度を高めることができる。
【0040】
また、ベルト11の端部同士を面ファスナー13にて連結して輪状にしたときのベルト11の周長Dは、袋体50の周長と同じ3mとされている。なお、ベルト11の周長Dは袋体50の周長よりも若干短くしてもよい。これによると、ベルト11による袋体50の拘束効果を高めることができ、袋体50の転がりを防止できる。また、面ファスナー13のはずれを防止することもできる。具体的には、ベルト11の周長Dは、袋体50の周長の95%〜100%の長さであることが好ましい。周長Dを袋体50の周長の95%以下にすると、ベルト11やその接合部12に作用する荷重が大きくなり、100%より大きくすると袋体50の拘束効果が低減する。
【0041】
次に、図2に示したように、隣り合うベルト11同士を接合する2つの接合部12は、袋体50に粘性土が充填された状態において、隣り合う当該袋体50の間に上下方向に所定の間隔Aを開けて配設されるように設けられる。本実施形態では、ベルト11のB部の長さが約1mとされ、間隔Aが0.4mとされている。そして、連結ベルト1を複数の袋体50に取り付ける(セットする)際に、ベルト11のB部が下側に位置するように、かつ2つの接合部12が隣接する袋体50の間に位置するように調整される。
【0042】
ここで、2つの接合部12の間隔Aは、袋体50の直径の30%〜50%であることが好ましい。本実施形態では、間隔Aを袋体50の直径の42%としている。2つの接合部12の間隔Aを袋体50の直径の30%以上とすることで、積み上げられた上段の袋体50が下段の袋体50の間に落ち込もうとする動きをより防止できる。また、間隔Aを袋体50の直径の50%以下とすることで、袋体50を巻くベルト11の破損を防止できる(面ファスナー13がはずれることを防止できる)。
【0043】
また図3(a)に示したように、2つの接合部12は縫製により接合されており、当該縫製の向きは、ベルト11の幅方向Wと同じにされている。ここで、ベルト11同士の接合部12には、はく離方向(ベルト面に垂直な方向)に力が作用する。本実施形態のようにベルト11同士をその幅方向Wに縫製することによって、2つの接合部12の強度を高めることができる。なおこの縫製には、ポリエステル製、3000dtex、強力231N、伸び26.9%の縫製糸を用い、ピッチ6mmで縫製されている。
【0044】
次に、本実施形態の連結ベルト1がセットされた(取り付けられた)袋体50に、粘性土が充填された状態について説明する。図4は、図1に示す最下段の袋体のX−X断面図である。図4に示したように、4本のベルト11からなる連結ベルト1により連結された袋体50に粘性土を充填すると、袋体50の間に上下方向に所定の間隔を開けて配設される連結ベルト1の上記2つの接合部12により、袋体50はその断面形状が長方形状に拘束される。そのため、この2つの接合部12により袋体50の高さが確保される。また、この2つの接合部12により、袋体50同士は、その長さ方向だけでなく、高さ方向(上下方向)にも面で接触する。これにより、ベルト11に滑り止めなどの細工をしなくても、ベルト11と袋体50とが滑って袋体50が回転せず、上段の袋体50が下段の袋体の間に落ち込まない。したがって、例えば2段目の袋体50が最下段の袋体50の間に落ち込もうとする動きを従来よりも抑制することができる(図1参照)。すなわち、多段に積み重ねられた複数の袋体50の積み重ね状態を従来技術に比してより維持することができる。
【0045】
また、連結ベルト1によると、施工場所に木や溝などの障害物があったとしても、これら障害物を飛ばして袋体を連結することができる。また、離れた位置の袋体同士を当該連結ベルト1で連結することもできる。さらに、袋体50に粘性土が充填されると、袋体50は、2つの接合部12で接合されたベルト11で拘束されて、隣の袋体50とその高さ方向に面接触するので、従来必要であった、隣り合う空の袋体同士の重ね合わせ量の調整も不要となり、施工性に優れる。また、連結ベルト1同士をタテヨコ自由に連結することもできる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【0047】
例えば、上記実施形態では、隣り合うベルト11同士を2箇所のみで接合している例を示したが、隣り合うベルト11同士を3箇所以上で接合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る連結ベルトにより連結された袋体に粘性土が充填され、その袋体が積み上げられて盛土を形成した状態を示す概略の斜視図である。
【図2】図1に示す連結ベルトの構造説明図である。
【図3】図2に示す連結ベルトの一部詳細図である。
【図4】図1に示す最下段の袋体のX−X断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1:連結ベルト
11:ベルト
12:接合部
13:面ファスナー
50:袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高含水比の粘性土が充填されかつ多段に積み重ねられる透水性を有する複数の袋体を連結する連結ベルトであって、
直列に配置され、前記袋体の長手方向に直交する方向の当該袋体の周囲に巻かれる複数のベルトと、
隣り合う前記ベルト同士を接合する2つの接合部と、を備え、
前記2つの接合部は、前記袋体に前記粘性土が充填された状態において、隣り合う当該袋体の間に、上下方向に所定の間隔を開けて配設されるように設けられることを特徴とする、連結ベルト。
【請求項2】
前記ベルトの端部同士を連結して輪状にしたときの当該ベルトの周長は、前記袋体の前記周囲の長さと同じ又は当該長さよりも若干短いことを特徴とする、請求項1に記載の連結ベルト。
【請求項3】
前記2つの接合部の前記間隔は、前記袋体の直径の30%〜50%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の連結ベルト。
【請求項4】
前記2つの接合部は縫製部であり、前記ベルト同士の縫製の向きは、当該ベルトの幅方向と同じであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の連結ベルト。
【請求項5】
前記ベルトの端部同士は、当該端部に接合された面ファスナーにより連結され、
前記ベルトが前記袋体の前記周囲に巻かれた状態において、前記面ファスナーは、オス側を外向きに、メス側を内向きに配置されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の連結ベルト。
【請求項6】
前記ベルトと前記面ファスナーとは縫製により接合され、当該縫製の向きは当該ベルトの長さ方向と同じであることを特徴とする、請求項5に記載の連結ベルト。
【請求項7】
前記ベルトの伸度は、前記袋体の基布の伸度よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の連結ベルト。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の複数の連結ベルトを所定間隔で設置するベルト設置工程と、
設置された前記連結ベルトの上に複数の袋体を配置し、当該連結ベルトで当該袋体を連結する袋体連結工程と、
連結された前記袋体の中に粘性土を充填する粘性土充填工程と、
を備えることを特徴とする、袋詰脱水処理工法。
【請求項9】
前記粘性土充填工程において、連結された複数の前記袋体の中に一つ飛ばしで粘性土を充填することを特徴とする、請求項8に記載の袋詰脱水処理工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−121307(P2010−121307A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294009(P2008−294009)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年6月12日 社団法人地盤工学会発行の「第43回地盤工学研究発表会 平成20年度発表講演集(2分冊の1)」に発表
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】