説明

透湿性包装用材料、透湿性包装用袋、及び透湿性包装体

【課題】余分な水蒸気を外部に放出可能であり、かつ内容物が乾燥しすぎることを防止すること。
【解決手段】透湿性包装用材料1は透湿調整フィルム2Aと、透湿調整2Aに設けられたヒートシール剤層3とを有している。このうち透湿調整フィルム2Aは透湿性を有する基材フィルム2と、基材フィルム2にパターン状に設けられた透湿阻害剤層4とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿性包装用材料、透湿性包装用袋、及び透湿性包装体に係り、とりわけ水分を含有する固体の飲食品、医薬品、化粧品等の内容物を包装しても、内容物自身から蒸散される水蒸気によってフィルムの内部表面で結露することなく、余分な水蒸気を外部に放出可能であり、かつ、内容物が乾燥し過ぎない透湿性包装用材料、透湿性包装用袋、及び透湿性包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の物品を充填包装するために、プラスチック基材、紙基材、あるいは金属箔、その他等を使用し、これらを任意に積層してなる種々の包装用材料が用いられている。
【0003】
そして、これらの包装用材料は、通常、その最内層にシーラント層を有し、当該シーラント層を対向させて重ね合わせ、その周辺部をヒートシールすることにより、種々の形態の包装用袋が作製される。そして、当該包装用袋の開口部から、例えば、飲食品、医薬品、化粧品、洗剤、化学品、雑貨品、その他等の種々の内容物が充填包装される。
【0004】
とりわけ、微生物、植物等の培養用培地の包装分野において、通常、滅菌した寒天培地を無菌状態で分注したシャーレをプラスチック製袋に収納して密封した状態で市販されているものである。上記の市販されているプラスチック製袋は、通常、基材フィルムである二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用し、この基材フィルムとシーラント層である未延伸ポリプロピレンフィルムとを貼り合わせた積層フィルムから構成されている。例えば、従来の培養用培地の包装用袋としては、延伸ポリプロピレンとポリエチレンの積層フィルムを使用したプラスチック製袋が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、青果物の包装分野において、フィルムで作った包装用袋内に例えば青果物を個包装し、密封される。この場合、青果物自身から蒸散される水蒸気を外部に十分に放出することができないため、袋の内面で結露を生じてしまい、そのまま長時間保存しておくと、包装用袋のその部分から傷んでしまうという問題があった。
【0006】
また、ウインナーソーセージ、ハム等の畜肉加工品、さつま揚げ、ちくわ、蒲鉾等の水産練り製品等でも、通常のプラスチックフィルム製袋で包装すると、内容物から蒸散した水蒸気の結露や、離水によって袋内が水浸しになって酵母や細菌が繁殖し易い環境を作ってしまい、本来は保存食品であるにも拘らず、低温流通で数日の消費期限が設定されることがある。
【0007】
また、でんぷんや糖類を多く含む、食パン、菓子パン、調理パン等のパン類、半生のそば、うどん等の麺類、半生菓子等を長期保存しようとする場合、酸素バリア性を有するプラスチックフィルムからなる袋に、脱酸素剤を収納してカビの発生を防止している。しかしながら袋内に結露が生じて内容物表面の水分活性が部分的に上昇し、酵母が繁殖してしまうという問題がある。
【0008】
また、食パン、菓子パン等のパン類、半生焼き菓子等は、焼きあがり直後に包装すると袋内に多量の結露水が生じてしまい、食感の低下を招くため、一旦放冷して品温が室温程度に低下してから包装している。しかしながら放冷工程のためのスペースや装置への設備投資、放冷の所要時間等、多くの固定費や変動費が利益圧迫要因となっているのみならず、放冷工程自体が微生物汚染の原因となる等、内容物が発する水蒸気は大きな問題となっている。
【0009】
また、従来の通気性袋として、内面に熱接着性膜を有する包材の両端縁の接合部の内面にフィルターテープ(滅菌紙)を熱接着してなる構造のものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、透湿性基材フィルムの片側に、熱可塑性樹脂を直線状に多数平行に形成してなる構造の透湿性包装用袋(特許文献3参照)や、ヒートシール剤を塗布した透湿性包装用袋(特許文献4参照)について開示されている。
【0011】
ところで、特許文献1のプラスチック製袋では、例えば、寒天培地や青果物等、水分を含有する固体を収納し密封すると、内容物自身から蒸散される水蒸気や、寒天培地が固化する際に発生する水滴を外部に十分に放出することができない。このため袋の内面やシャーレの表面で結露を生じて腐敗するという問題点がある。
【0012】
このようなことから、従来、シャーレの表面に結露を生じた寒天培地を使用する際、寒天培地を分注したシャーレをプラスチック製袋から取り出し、クリーンベンチ内にシャーレの蓋を開けた状態で寒天培地を分注したシャーレを放置して、乾燥させている。
【0013】
しかしながら、クリーンベンチ内で乾燥中に、寒天培地を分注したシャーレに空気中に浮遊する微生物や塵等の異物が混入するおそれがある。食品中の大腸菌等の細菌の有無を検出する検体数が多いと、シャーレの取り扱いに手間取り、作業効率が低下してしまう。また、長期間、結露を生じた状態で寒天培地を分注したシャーレを保管しておくと、変質してしまう可能性が高まるという問題点がある。
【0014】
また、特許文献2の通気性包装袋では、滅菌紙を形成した部分だけが厚く、滅菌紙を形成していない部分が薄いため、包装材料の巻取り供給が困難で、ピロー包装機で包装できない。このため製袋してから内容物を充填するため、充填速度が低速であり、また、充填機の構造が複雑となるため、生産性が悪く、コストが高くなるという問題点がある。
【0015】
また、特許文献3の透湿性包装用袋では、多数平行に形成された熱可塑性樹脂の幅や間隔を調節することにより水蒸気透過度を調節できるが、幅を太くしようとすると、押し出し機の速度を下げる必要がある。同時に熱可塑性樹脂の厚みも増してしまうことから同じ直径の巻取りで巻き取れる包材の量が減少してしまい、生産性が顕著に低下するという問題があって、内容物が乾燥し過ぎる場合でも、我慢して使用しているのが現状である。
【0016】
また、特許文献4の透湿性包装用袋では、ヒートシール剤の水蒸気透過度が高いため、全面にヒートシール剤を塗布しても乾燥し過ぎる内容物が多く、内容物を限定して使用せざるを得ない。また、全面にヒートシール剤を塗布する場合でも、乾燥に時間が掛かるため、塗付スピードを極端に落とさねばならず、生産性の低下を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平8−205854号公報
【特許文献2】実公昭51−15682号公報
【特許文献3】特開2006−282240号公報
【特許文献4】特開2008−239230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、飲食品、医薬品等の水分を含有する固体からなる内容物を包装しても、内容物自身から蒸散される水蒸気によってフィルムの内部表面で結露することなく、余分な水蒸気を外部に放出可能であり、内容物が乾燥し過ぎることを防止することができ、水蒸気透過度の調節が可能で、かつ、生産性に優れる透湿性包装用材料、透湿性包装用袋、および透湿性包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、透湿性を有する基材フィルムと、基材フィルムにパターン状に設けられた透湿阻害剤層とを有する透湿調整フィルムと、透湿調整フィルムに設けられたヒートシール剤層とを備えたことを特徴とする透湿性包装用材料である。
【0020】
本発明は、ヒートシール剤層は透湿調整フィルムに、透湿性を有する追加基材フィルムを介して設けられていることを特徴とする透湿性包装用材料である。
【0021】
本発明は、基材フィルムは、プレーンセロハンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ナイロンフィルム、MXDナイロン共押し出しナイロンフィルム、MXDナイロンブレンドナイロンフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体共押し出しナイロンフィルム、酸素バリア層コートナイロンフィルム、またはエチレン・ビニルアルコール共重合体フィルムからなることを特徴とする透湿性包装用材料である。
【0022】
本発明は、透湿阻害剤層は、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなることを特徴とする透湿性包装用材料である。
【0023】
本発明は、ヒートシール剤層および透湿阻害剤層は、いずれもポリ塩化ビニリデン樹脂からなり、かつヒートシール剤層および透湿阻害剤層は基材フィルムの同一面上に設けられていることを特徴とする透湿性包装用材料である。
【0024】
本発明は、ヒートシール剤層および透湿阻害剤層は、いずれもポリ塩化ビニリデン樹脂を基材フィルムの同一面上に塗布して一体に形成され、ヒートシール剤層および透湿阻害剤層はエンドレスパターンを有することを特徴とする透湿性包装用材料である。
【0025】
本発明は、上記記載の透湿性包装用材料を袋状に形成してなり、周縁部のヒートシール剤層を融着して構成された透湿性包装用袋である。
【0026】
本発明は、上記記載の透湿性包装用袋と、透湿性包装用袋内に収納された内容物とを備えたことを特徴とする透湿性包装体である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、内容物自身から蒸散される水蒸気によって基材フィルムの内部表面で結露することなく、余分な水蒸気を外部に放出可能となる。更に、パターン状に設けられた透湿阻害剤層の面積を調節することにより、内容物に適した水蒸気透過度を有する透湿性包装用袋の製造が可能となる。
【0028】
また、透湿阻害剤層としてポリ塩化ビニリデン樹脂を用いることにより、通常のグラビア輪転印刷機を用いて、パターンコートすることができ、塗布面積の調節による水蒸気透過度の調節が容易にでき、かつパターンコートすることにより印刷後の乾燥も、全面ベタ印刷と比較して容易になり、生産性が向上する。
【0029】
また、ポリ塩化ビニリデン樹脂は、ヒートシール剤層と透湿阻害剤層の双方を構成するため、ヒートシール剤と透湿阻害剤の双方を基材フィルムの同一面に、印刷機の一つのユニットで印刷をすることができる。従って、ヒートシール剤塗布パターンと透湿阻害剤塗布パターンとの見当合せ印刷の必要が無くなることから、生産効率が顕著に向上する。
【0030】
また、ポリ塩化ビニリデン樹脂は、乾燥後透明になってしまうため、これらの樹脂の見当合わせ印刷には困難を伴うが、塗布パターンをエンドレスパターンとすることにより、基材フィルムのどの部分を用いて透湿性包装用袋体を形成しても、調節された水蒸気透過度を得ることができ、かつ、前記樹脂の見当合わせ印刷が不要となる。
【0031】
また、本発明の透湿性包装用袋は、内容物から発生した水蒸気を袋の外部に放出可能でありながら、内容物の乾燥し過ぎを防止することができる。このことによって、青果物、畜肉加工品、水産練り製品、パン類、半生麺類、半生菓子等の食品、生培地等の含水医療器具、含水固形医薬品、含水固形化粧品等の内容物の鮮度維持、保存性を発揮することができる。
【0032】
冷却工程を経た後に包装していた内容物を、袋内の結露水を気にすることなく、加熱直後に包装できるため、微生物汚染の確率を大幅に低下させることができる。また冷却工程を省くことによる工程の大幅な簡略化と、冷却のためのスペースや設備を省略できる。
【0033】
更に、寒天培地をシャーレに分注した状態で流通させる生培地の包装において、袋から出してすぐに生培地を使用できる。さらにまた寒天培地が含む自由水の量や、寒天培地の使用期限に応じた袋体の水蒸気透過度の設計が可能となるので、生培地の使用期限の延長に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は本発明に係る透湿性包装用材料の断面図である。
【図2】図2は本発明に係る透湿性包装用材料の変形例を示す断面図である。
【図3】図3はヒートシール剤層と透湿阻害剤層をパターンで塗布した透湿性包装用フィルムの一例を示す概略図である。
【図4】図4は透湿阻害剤層をエンドレスパターンで塗布し、ヒートシール剤層をパターン塗布した透湿性包装用材料の一例を示す概略図である。
【図5】図5はヒートシール剤と透湿阻害剤を共通化し、両者をエンドレスパターンで塗布した透湿性包装用材料の一例を示す概略図である。
【図6】図6はヒートシール剤と透湿阻害剤を共通化し、両者をエンドレスパターンで塗布した透湿性包装用材料の他の例を示す概略図である。
【図7】図7は本発明に係る透湿性包装用袋を示す概略図である。
【図8】図8はヒートシール剤と透湿阻害剤を共通化し、エンドレスパターンで塗布した透湿性包装用袋を示す概略図である。
【図9】図9は本発明に係る透湿性包装用袋に内容物を収納した透湿性包装体の概略図である。
【図10】図10は基材フィルムに一体に形成されたヒートシール剤層と透湿阻害剤層とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0036】
図1に示すように、透湿性包装用袋10を構成する透湿性包装用材料1は、透湿性を有する基材フィルム2と、基材フィルム2の下面にパターン状に設けられた透湿阻害剤層4と、基材フィルム2の下面に、透湿阻害剤層4を覆って設けられたヒートシール剤層3とを備えている。
【0037】
このうち、基材フィルム2と透湿阻害剤層4とにより、透湿調整フィルム2Aが構成される。なお、図1において透湿調整フィルム2Aの下面にヒートシール剤層3が設けられているが、図2に示すように透湿調整フィルム2Aの下面に接着層5を介して透湿性を有する追加基材フィルム2aを設け、この追加基材フィルム2aの下面にヒートシール剤層3を設けてもよい。
【0038】
透過調整フィルム2Aに追加の基材フィルム2aを接着層5を用いて積層する方法は、ドライラミネーション、またはウェットラミネーションが好ましい。なお、溶融樹脂の押し出しラミネーションは、接着層の樹脂がフィルム全面の透湿性を著しく損なうため好ましくない。
【0039】
また、透湿性を有する基材フィルム2および追加基材フィルム2aを対向させ、熱融着して作製した透湿性包装用袋において、内容物によって乾燥が進み過ぎてしまう場合は、透湿性包装用袋の少なくとも1面に水蒸気透過度の低いフィルムを使用することにより、内容物の乾燥が抑えられる点で好ましい。
【0040】
上記の透湿性を有する基材フィルム2および追加基材フィルム2aは、水蒸気透過性、および、吸水性を有するフィルムであることが必要である。
【0041】
具体的には、基材フィルム2および追加基材フィルム2aは、40℃、90%R.H.における水蒸気透過度が50g/m2・d(測定条件、40℃、90%R.H.、以下同様)以上、吸水率が5%以上であることが好ましい。
【0042】
基材フィルム2および追加基材フィルム2aの水蒸気透過度、または、吸水率が、上記の範囲を満たさない場合、特に吸水率が低いと、内容物自身から蒸散される余分な水蒸気を外部へ放出するのに要する時間が長くなってしまい、透湿性包装用袋の内部で結露を生じてしまうので好ましくない。
【0043】
尚、水蒸気透過度の数値は基材フィルム2および追加基材フィルム2aを透過する水蒸気の透過量を表しているが、吸水率が高い基材フィルム2および追加基材フィルム2aは袋内部の結露水を直接吸収して袋の外面から放出するため、水蒸気透過度の数値以上に袋内部の水分を外部に放出する。また、内容物の保存期間が長い場合、水蒸気透過度を低く設計しないと乾燥し過ぎてしまうが、吸水率の高い基材フィルム2および追加基材フィルム2aを用いれば、水蒸気透過度を50g/m2・d未満に設計しても、包装直後に発生する結露水は基材フィルム2の透湿阻害剤層4が塗布されない部分が吸水して外部に放出する。そして結露水が無くなった後は水蒸気の外部放出量が基材フィルム2および追加基材フィルム2aの水蒸気透過度に支配されて低く抑えられ、長期保存が可能となるので、水蒸気透過度に関する上記数値は目安である。但し、PVdCコート(ポリ塩化ビニリデンコート)ナイロンフィルム、金属蒸着ナイロンフィルム、および、金属酸化物蒸着ナイロンフィルム等の場合、吸水率が高い基材フィルム2および追加基材フィルム2aを使用しても、全面に透湿阻害層が形成されているため、基材フィルム2および追加基材フィルム2aとしては用いられない。
【0044】
上記の透湿性を有する基材フィルム2および追加基材フィルム2aとしては、具体的に、プレーンセロハンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ナイロンフィルム、MXD(メタキシレンジアミン)ナイロン共押し出しナイロンフィルム(株式会社興人製、商品名「SPY」等)、MXDナイロンブレンドナイロンフィルム(出光ユニテック株式会社製、商品名「ユニアスロン」等)、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)共押し出しナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製、商品名「エンブレムE300」等)、酸素バリア層コートナイロンフィルム(株式会社興人製、商品名「コーバリア」、呉羽化学工業株式会社製、商品名「ベセーラ」、株式会社クラレ製、商品名「クラリスタ」等)、またはEVOHフィルムを使用できる。
【0045】
本発明において、中でも、MXDナイロン共押し出しナイロンフィルム、MXDナイロンブレンドナイロンフィルム、EVOH共押し出しナイロンフィルム、酸素バリア層コートナイロンフィルム、またはEVOHフィルムは、水蒸気透過量が高く、かつ酸素バリア性に優れ、いわば擬似選択透過膜の効果を有するフィルムが得られるので、基材フィルム2および追加基材フィルム2aとして用いた場合、内容物と共に脱酸素剤を封入する脱酸素包装に利用でき好ましい。
【0046】
上記の透湿性を有する基材フィルム2および追加基材フィルム2aの厚みは、10μm〜100μm程度のものを使用することが好ましい。基材フィルム2および追加基材フィルム2aの厚みが、10μm未満であると、包装用袋10を構成するフィルムとしての強度が低下してしまうため、好ましくなく、また、100μmを超えると、水蒸気透過度が低下してしまうため、好ましくない。
【0047】
また、上記の基材フィルム2および追加基材フィルム2aには、グラビア印刷等により文字、絵柄等を印刷することもできる。
【0048】
透湿阻害剤層4としては、水性、または、油性のPVdC(ポリ塩化ビニリデン)樹脂コート剤を好適に用いることができる。
【0049】
透湿阻害剤層4は、透湿性を有する基材フィルム2の片面にパターン塗布し、前記基材フィルム2の水蒸気透過度を調節するために形成される。
【0050】
透湿阻害剤層4は、パターン塗布可能な各種コーター、グラビア印刷機を用いて塗付される。グラビア印刷機でヒートシール剤や他の印刷インキと見当合わせ印刷をする際、透湿阻害剤層4が透明な場合は、透湿阻害剤に顔料、または、染料を添加したり、相溶性のあるインキを混合する等して着色すると良い。
【0051】
また、必要に応じてブロッキング防止剤、スリップ剤、帯電防止剤等の添加剤を透湿阻害剤層4に加えることもある。
【0052】
透湿阻害剤層4の塗付量は、透湿阻害剤の透湿阻害性能にもよるが、10g/m2(未塗布部を考慮せず、塗付部のみの塗布量を1m2当たりの塗布量で表す、以下同様)以下が好ましい。一般的に10g/m2を越えると乾燥が困難になり、ブロッキングが生じたり、機械のローラーに付着したりして不適当である。但し、塗付面積の比率が小さかったり、一つ一つのパターンが小さかったりする場合は乾燥しやすくなるのでこの限りではない。
【0053】
透湿阻害剤層4を形成する場合、透湿性を有する基材フィルム2の水蒸気透過度、内容物、および、内容物の保存期間等によって、使用する透湿阻害剤の透湿阻害性能、塗付量、および、塗付面積率を検討する。例えば水蒸気透過度が300g/m2・dの基材フィルム2に、水蒸気透過度が100g/m2・dの透湿阻害剤層4を塗付面積率50%で形成すると、水蒸気透過度は計算上約190g/m2・dとなる。
【0054】
すなわち、水蒸気透過度が約190g/m2・dとなる理由は以下の通りである。一般に水蒸気透過度AのフィルムとBのフィルムを積層したフィルムの水蒸気透過度Cは、1/A+1/B=1/Cという関係で表される。
水蒸気透過度300gの基材フィルムに水蒸気透過度100gの塗膜を形成した時の水蒸気透過度Xは、1/300+1/100=0.0033+0.01=0.0133=1/Xなので、X=75g/m2・dと算出される。
従って、透湿阻害剤塗布部の水蒸気透過度は75g、非塗布部の水蒸気透過度は300gなので、透湿阻害剤の塗布面積率が50%だと、1m2あたりでは、塗布部から37.5g/d、非塗布部から150g/dの水蒸気が透過するため、37.5+150=187.5g/m2・d、すなわち約190g/m2・dとなる。
【0055】
このように、本発明に係る透湿性包装用材料1の水蒸気透過度は、透湿性を有する基材フィルム2と透湿阻害剤層4との組合せにより決定され、更に、例えばナイロンフィルム一つ取っても、同じ厚さでもメーカーによって水蒸気透過度が異なるため、一概に透湿阻害剤の性能について規定することはできない。但し、同じ塗布量でより低い水蒸気透過度が得られる透湿阻害剤層4は、塗布量や、塗付面積率を減らすことができるので、塗付後の乾燥が容易になり、生産効率が良く、好ましい。あえて透湿阻害剤の性能について述べるとすれば、全面ベタで塗布量5g/m2の透湿阻害剤層を形成した際の水蒸気透過度が200g/m2・d以下である透湿阻害剤が、より好適に用いることができる。
【0056】
本発明に係る透湿性包装用材料1の水蒸気透過度は、内容物の水分含有量や保存期間に応じて設計するものであり、また、水蒸気透過度が低くても基材フィルム2は水分放出量も多い。このため、一概に透湿性包装用フィルムとして機能するための水蒸気透過度の範囲を限定することはできないが、一般的に50g/m2・d以上の水蒸気透過度を有していれば透湿性包装用材料1として好適に用いることができる。
【0057】
尚、パターン蒸着した金属蒸着膜、または金属酸化物蒸着膜も上述した材料からなる透湿阻害剤を塗付するのと同様の効果を得ることができ、このためこれら金属蒸着膜または金属酸化物蒸着剤によって透湿阻害剤層4を形成してもよい。
【0058】
透湿阻害剤層4は、透湿性を有する基材フィルム2の片面に形成される。通常はヒートシール剤塗布面と同じく基材フィルム2の内面に形成されるが、内容物の干渉により透湿阻害効果が低下したり、塗膜が溶解したり、削りとられたりする場合は基材フィルム2の外面に形成してもよい。
【0059】
透湿阻害剤層4の塗布パターンとしては、矩形、格子状、市松模様、ストライプ、水玉模様、文字、図柄等何でも良く、特に限定する必要はない。
【0060】
透湿阻害剤を塗付する位置は、図3に示すように、透湿性包装用袋10の内面にのみ見当合わせ印刷してもよく、また、図4に示すように、基材フィルム2の全面にエンドレスパターンで塗付して透湿阻害剤層4を形成し、透湿阻害剤層4上にヒートシール剤層3を設けてもよい。
【0061】
なお、図3および図4において、ヒートシール部8にはスリット線6および断裁線7が設けられている。
【0062】
本発明に係るヒートシール剤層3は、基材フィルム2あるいは追加基材フィルム2aの片面にヒートシール性を付与するために形成するものである。
【0063】
また、上記のヒートシール剤層3は、基材フィルム2または追加基材フィルム2aの片面全面にベタで、またはエンドレスパターンで形成するか、またはグラビア印刷機等により包装袋を製袋する際のヒートシール部にのみ、選択的にパターン状に形成することもできる。ヒートシール剤層3をエンドレスパターンで形成する場合、パターンが全て繋がった連続パターンとし、かつ非塗付部の横、および、縦の長さがヒートシール幅の半分以下となるようにすることで、ヒートシール部8の密封性が向上する(図7および図8)。
特に透湿性包装用袋10において完全密封袋の製造が可能となり、吸水性を有すると共に、酸素バリア性を有する基材フィルム2または追加基材フィルム2aを用いることにより内容物と共に脱酸素剤を封入した脱酸素包装やガス置換包装等が可能となる。
【0064】
上記のヒートシール剤層3としては、加熱によって溶融し相互に融着し得るヒ−トシ−ル性を有する樹脂であればよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂のエマルジョン、ポリエチレン・イミン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、PVdC樹脂等を使用することができる。また、上記のヒートシール剤層3のコート量としては、1g/m2〜10g/m2 位が好ましい。
【0065】
図5は、ヒートシール剤層3および透湿阻害剤層4として同一の材料が用いられ、これらヒートシール剤層3および透湿性阻害剤層4がエンドレスパターンで塗布され一体に形成された透湿性包装用材料1を示す概略図である。
【0066】
図5および図10に示すように、透湿性包装用材料1は、透湿性を有する基材フィルム2と、基材フィルム2の下面にパターン状に一体に形成されたヒートシール剤層3および透湿性阻害剤層4とを有している。
【0067】
また、図6は、ヒートシール剤層3および透湿阻害剤層4として同一の材料が用いられ、これらヒートシール剤層3および透湿性阻害剤層4がエンドレスパターンで塗布されて一体に形成された透湿性包装用材料1を示す概略図であり、図5と異なり、縦シール部のみヒートシール剤層3および透湿性阻害剤層4を全ベタで塗付したものである。
【0068】
エンドレスパターンで塗布してヒートシール剤層3と透湿阻害剤層4を一体に形成し、基材フィルム2の両端の未塗布部を裁断工程で除去して一定幅の巻取り状の透湿性包装用材料1を得ることができ、幅の広い基材フィルム2を用いることにより、複数列の巻取り状の透湿性包装用材料1を得ることができる。
【0069】
このようにエンドレスパターンで塗布された同一材料からなるヒートシール剤層3と透湿阻害剤層4を形成することで、乾燥後透明になるため見当合わせ印刷が困難なヒートシール剤層3と透湿阻害剤層4を各種コーターで容易に形成することができ、見当合わせせずにグラビア印刷機で塗付できる。尚、乾燥後透明になる場合でも、顔料、または、染料を添加したり、相溶性のあるインキを混合することにより着色することで、他の文字、絵柄等の印刷との見当合わせ印刷が容易になる。
【0070】
また、ヒートシール剤層3と透湿阻害剤層4を形成する場合、基材フィルム2に対する文字、絵柄等の印刷の前、または、後、更には、基材フィルム2に対して絵柄等の印刷を施し、接着剤を用いて積層した基材フィルム2にも、別工程でヒートシール剤層3と透湿阻害剤層4を形成することができる。その場合、塗布量が多く乾燥が困難なため印刷速度を上げることができないヒートシール剤と透湿阻害剤の塗付工程と、文字、絵柄等の印刷工程を分けることができ、大幅に生産効率を向上させることができる。
【0071】
特に、一の基材フィルム2に文字、絵柄等の裏刷りを施し、当該印刷面に接着剤を用いて他の基材フィルム2を積層した積層基材フィルム2にヒートシール剤と透湿阻害剤を塗布することができるので、印刷インキ面が表面に露出することなく、内容物とインキが接触せず衛生的で、かつ、インキ落ちしない透湿性包装用材料1の製造が可能となる。この場合は2つの基材フィルム2により、積層基材フィルム2が構成される。
【0072】
ヒートシール剤層3と透湿阻害剤層4の塗布パターンとしては、矩形、格子状、市松模様、ストライプ、水玉模様、文字、図柄等何でも良い。パターンが全て繋がった連続パターンとし、かつ、非塗付部の横、および、縦の長さがヒートシール幅の半分以下となるようにすることで、ヒートシール部の密封性が向上し、特に四方シール袋において完全密封袋の製造が可能となる。また吸水性を有すると共に、酸素バリア性を有する基材フィルム2を用いることにより内容物と共に脱酸素剤を封入した脱酸素包装や、ガス置換包装等が可能となる。
【0073】
図7に示すように、本発明に係る透湿性包装用袋10は、基材フィルム2の内側のヒートシール予定部にヒートシール剤層3が形成され、内容物を覆う部分に透湿阻害剤層4が形成された透湿性包装用材料1を有する。図7において、ヒートシール剤同士が融着されて全体として開口部11を残して三方がヒートシール部8で閉じられた透湿性包装袋10が示されている。
【0074】
透湿性包装用袋10としては、その目的、用途等により、三方シール袋、かます袋、ピロー袋、ガゼット袋、スタンドパック、その他等の種々の形態からなる包装用袋が考えられる。尚、脱酸素包装、ガス置換包装等、密封性が必要な用途には四方シール袋が適している。
【0075】
なお、ヒートシール部8にノッチ9を設けることにより、包装体用袋10の開封が容易になる。
【0076】
図8に示すように、ヒートシール剤層3および透湿阻害剤層4が同一材料から一体に形成され、ヒートシール層3および透湿性阻害剤層4がエンドレスパターンを有する透湿性包装用袋10は、基材フィルム2の内側のヒートシール予定部と内容物を覆う部分に、同一材料からなる透湿阻害剤層4(ヒートシール剤層3)が形成された透湿性包装用材料1を有する。そしてヒートシール予定部同士が融着されて全体として開口部11を残して背シール部8aと底シール部8bにより閉じられて透湿性包装袋10が構成される。
【0077】
本発明による透湿性包装用袋10としては、その目的、用途等により、三方シール袋、かます袋、ピロー袋、ガゼット袋、スタンドパック、その他等の種々の形態からなる包装袋を製造することができる。尚、脱酸素包装、ガス置換包装等、密封性が必要な用途には四方シール袋が適している。
【0078】
また、底シール部8b近傍にノッチ9を設けることにより、透湿性包装用袋10の開封が容易になる。
【0079】
図9は、本発明による透湿性包装用袋10内に内容物Mを収納してなる透湿性包装体20を示す概略図である。
【0080】
本発明に係る透湿性包装体20は、透湿性包装用袋10の開口部11から内容物を充填した後、開口部11を融着することにより得られる。透湿性包装体20において、内容物から発生した水蒸気を包装用袋10の外部に放出可能であり、かつ、透湿阻害剤層4を設けた効果により内容物の乾燥し過ぎを防止することができる。
【0081】
特に、図示した如く四方シール袋において完全密封袋の製造ができるので、吸水性を有すると共に、酸素バリア性を有する基材フィルム2および追加基材フィルム2aを用いることにより、内容物Mと共に脱酸素剤12を封入した脱酸素包装や、ガス置換包装等が可能となる。
【実施例1】
【0082】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳述する。
【0083】
実施例1は図1に示す透湿性包装用材料1を用いた透湿性包装用袋10に対応している。
【0084】
吸水性を有する基材フィルム2として、厚み15μmのナイロンフィルム(興人株式会社製、製品名「ボニールQ」、水蒸気透過度300g/m2・d、吸水率15%)を使用し、基材フィルム2のそのコロナ処理面に、ヒートシール剤として、エチレン・酢酸ビニル共重合体(以後EVAと称する)エマルジョン(大日精化工業株式会社製、製品名「セイカダイン1900W」)を用い、縦360mm×横340mm、塗布幅10mm、塗布量5g/m2(未塗布部を考慮せず、塗付部のみの塗布量を1m2当たりの塗布量で表す、以下同様)の枠型パターンで、ヒートシール剤層3を形成した。
【0085】
また基材フィルム2の中央余白部に透湿阻害剤として、赤色2号で着色したPVdC樹脂エマルジョン(大日精化工業株式会社製、試作品)を、縦235mm×横230mm、塗付量4g/m2のベタ印刷の長方形で用い、グラビア印刷機を用いた見当合わせ印刷で印刷し、透湿阻害剤層4を形成した。このようにして本発明に係る透湿性包装用材料1を製造した。尚、当該透湿性包装用材料1の透湿阻害剤層4の塗付面積率は50%である。
【0086】
上記で得られた透湿性包装用材料1をヒートシール剤層3の枠型の外縁に沿って切り取り、ヒートシール剤層3の形成部を内側にしてヒートシール巾10mmで背部と底部をヒートシールし、ヒートシール部8を形成して、縦360mm、横160mmの、一端に開口部を有するピロー袋からなる本発明に係る透湿性包装用袋10を作製した。なお、ヒートシール部8にはノッチ9を設けた。
【実施例2】
【0087】
実施例2は、図1に示す透湿性包装用材料1を用いた透湿性包装用袋10に対応している。
【0088】
吸水性を有する基材フィルム2として、実施例1と同じナイロンフィルムを用いて、実施例1と同じ透湿阻害剤を、塗付量4g/m2で、幅2mm、スペース幅2mmの縦ストライプ状に、全面に塗付して透湿阻害剤層4を形成した。その塗付面上に、実施例1と同じヒートシール剤を、縦360mm×横340mm、塗布幅10mm、塗布量5g/m2の枠型パターンで、グラビア印刷機を用いて印刷し、ヒートシール剤層3を形成して、本発明に係る透湿性包装用材料1を製造した。尚、当該透湿性包装用材料1の透湿阻害剤層4の塗付面積率は50%である。
【0089】
上記で得られた透湿性包装用材料をヒートシール剤層3の枠型の外縁に沿って切り取り、ヒートシール剤層3の形成部を内側にしてヒートシール巾10mmで背部と底部をヒートシールし、ヒートシール部8を形成して、縦360mm、横160mmの一端に開口部を有するピロー袋からなる本発明に係る透湿性包装用袋10を作製した。なお、ヒートシール部8にはノッチ9を設けた。
【実施例3】
【0090】
実施例3は、図1に示す透湿性包装用材料1を用いた透湿性包装用袋10に対応している。
【0091】
吸水性を有する基材フィルム2として、実施例1と同じナイロンフィルムを用い、実施例1で用いた透湿阻害剤を、線幅0.8mm、スペース幅2mm、塗布量4g/m2、角度45度の格子模様で前記フィルム2全面に印刷し、ヒートシール剤層3および透湿阻害剤層4を一体に形成し、本発明に係る透湿性包装用材料1を製造した。尚、当該透湿性包装用材料の透湿阻害剤層4の塗付面積率は50%である。
【0092】
上記で得られた透湿性包装用材料から、製袋機を用いて縦360mm、横180mm、ヒートシール幅10mmの一端に開口部11を有し、残りの三方にヒートシール部8を有する本発明に係る透湿性包装用袋10を作製した。なお、ヒートシール部8にはノッチ9を設けた。
【実施例4】
【0093】
実施例4は、図1に示す透湿性包装用材料1を用いた透湿性包装用袋10に対応している。
【0094】
吸水性を有する基材フィルム2として、実施例1と同じナイロンフィルムを用い、実施例1で用いた透湿阻害剤を、線幅1.5mm、スペース幅1.5mm、塗布量4g/m2、角度45度の格子模様で前記フィルム全面に印刷し、ヒートシール剤層3および透湿阻害剤層4を一体に形成し、本発明に係る透湿性包装用材料1を製造した。尚、当該透湿性包装用材料1の透湿阻害剤層4の塗付面積率は75%である。
【0095】
上記で得られた透湿性包装用材料1から、製袋機を用いて縦360mm、横180mm、ヒートシール幅10mmの一端に開口部11を有し、残りの三方にヒートシール部8を有する本発明に係る透湿性包装用袋10を作製した。なお、ヒートシール部8にはノッチ9を設けた。
【実施例5】
【0096】
実施例5は、図1に示す透湿性包装用材料1を用いた透湿性包装用袋10に対応している。
【0097】
吸水性および酸素バリア性を有する基材フィルム2として、厚み15μmのMXDナイロン共押し出しナイロンフィルム(株式会社興人製、商品名「SPY」、水蒸気透過度100g/m2・d、吸水率8%)を用い、そのコロナ処理面全面に、実施例3と同様にしてヒートシール剤層3および透湿阻害剤層4を一体に形成して、本発明に係る透湿性包装用材料1を製造した。
【0098】
上記で得られた透湿性包装用材料1から、製袋機を用いて縦360mm、横180mm、ヒートシール幅10mmの一端に開口部11を有し、残りの三方にヒートシール部8を有する本発明に係る透湿性包装用袋10を作製した。なお、ヒートシール部8にはノッチ9を設けた。
【実施例6】
【0099】
実施例6は、図2に示す透湿性包装用材料1を用いた透湿性包装用袋10に対応している。
【0100】
吸水性および酸素バリア性を有する基材フィルム2として、厚み15μmのEVOHフィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバールCR」、水蒸気透過度140g/m2・d、吸水率10%)を用い、そのコロナ処理面に、グラビア印刷機を用いて文字、絵柄を印刷し、続けて実施例3と同様の透湿阻害剤を用い、同様パターンおよび塗布量で、基材フィルム2全面に透湿阻害剤層4の印刷を施した。更に、基材フィルム2の印刷面に二液硬化型ウレタン樹脂系接着剤5を用いて、吸水性を有する追加基材フィルム2aとして、厚み15μmのナイロンフィルム(興人株式会社製、製品名「ボニールW」、水蒸気透過度300g/m2・d、吸水率15%)を貼り合わせた。次にそのナイロンフィルム面全面に、ヒートシール剤として、EVAエマルジョン(大日精化工業株式会社製、製品名「セイカダイン1900W」)を、線幅0.8mm、スペース幅2mm、塗布量5g/m2、角度45度の格子模様で印刷し、ヒートシール剤層3を設け、層構成、EVOHフィルム(15μm)/インキ・透湿阻害剤層/接着剤層/ナイロンフィルム(15μm)/ヒートシール剤層からなる本発明に係る透湿性包装用材料1を製造した。
【0101】
上記で得られた透湿性包装用材料から、製袋機を用いて縦360mm、横180mm、ヒートシール幅10mmの一端に開口部11を有し、残りの三方にヒートシール部8を有する本発明に係る透湿性包装用袋10を作製した。なお、ヒートシール部10にはノッチ9を設けた。
【0102】
〔比較例1〕
基材フィルムとして、厚み15μmの酸化ケイ素蒸着ナイロンフィルム(大日本印刷株式会社製、製品名「IB−ON−FRC」、水蒸気透過度2g/m2・d)を使用し、その蒸着面に、PVdC樹脂エマルジョン(大日精化工業株式会社製、試作品)を、線幅0.8mm、スペース幅2mm、塗布量4g/m2、角度45度の格子模様で前記フィルム全面に印刷し、ヒートシール剤層、および、透湿阻害剤層を設け、比較例1の包装用材料を製造した。
【0103】
上記で得られた透湿性包装用フィルムから、製袋機を用いて縦360mm、横180mm、ヒートシール幅10mmの、一端に開口部を有し、残りの三方にヒートシールを施した袋からなる比較例1の包装用袋を作製した。なお、ヒートシール部にはノッチを設けた。
【0104】
〔比較例2〕
実施例1と同じナイロンフィルムとヒートシール剤、パターン、塗布量でヒートシール剤層を印刷し、透湿阻害剤を塗付しない点のみ実施例1と異なる、比較例2の包装用材料を製造した。
【0105】
上記で得られた比較例2の包装用材料をヒートシール剤層の枠型の外縁に沿って切り取り、ヒートシール性樹脂の形成部を内側にしてヒートシール巾10mmで背部と底部をヒートシールし、ヒートシール部を形成して、縦360mm、横160mmの、一端に開口部を有するピロー袋からなる比較例2の包装用袋を作製した。なお、ヒートシール部にはノッチを設けた。
【0106】
〔比較例3〕
実施例5と同じ基材フィルムに、実施例1と同じヒートシール剤、パターン、塗布量でヒートシール剤層を印刷し、比較例3の包装用材料を製造した。
【0107】
上記で得られた比較例3の包装用フィルムから、製袋機を用いて縦360mm、横180mm、ヒートシール幅10mmの、一端に開口部を有し、残りの三方にヒートシールを施した袋からなる比較例3の包装用袋を作製した。なお、ヒートシール部にはノッチを設けた。
【0108】
(水蒸気透過度の測定結果)
上記で得られた透湿性包装用フィルムの構成をまとめて表1に、水蒸気透過度とヒートシール強度(ヒートシール条件、140℃、0.1MPa、2秒)の測定結果を表2に示す。
【表1】

【0109】
水蒸気透過度の測定方法は、JIS Z0208(防湿包装材料の水蒸気透過度試験方法(カップ法))に基いて温度40℃、相対湿度90%R.H.にて測定したものである。
【0110】
表1に示すように、実施例1〜実施例4の透湿性包装用材料、および、比較例3の包装用材料は、いずれも水蒸気透過度が、100g/m2・d以上であるため、速やかに余分な水蒸気を外部に放出可能で、水分の多い内容物の包装に適している。また、実施例5、実施例6の透湿性包装用フィルムの水蒸気透過度は100g/m2・d未満であり、水分含有量が少ない内容物や、長期保存の必要な内容物の包装に適している。
【0111】
(水分放出試験1)
内容物として、直径90mm、高さ14mmのポリスチレン製シャーレにポテトデキストロース寒天培地(栄研化学株式会社製)を調製、分注したものを用いた。
【0112】
その後、内容物である上記の寒天培地を分注し、倒置したシャーレを10枚重ねた状態で、上記で得られた実施例1〜6の本発明に係る透湿性包装用袋、および、比較例1〜3の包装用袋の開口部から収納し、開口部に10mm巾のヒートシールを施して密封し、本透湿性包装体を作製した。
【0113】
しかる後、上記で得られた包装体を庫内温度約5℃の冷蔵庫中で保存し、2週間後と4週間後に内容物を取り出して観察した。
【0114】
その結果、実施例1〜3の透湿性包装体は、2週間後、および、4週間後において内容物自身から蒸散される水蒸気を外部に放出することによって基材フィルムの内部表面で結露することなく、また、内容物が乾燥しすぎることなく、透湿性包装用袋から出してすぐに使用できる状態であった。
【0115】
従って、従来行っていたシャーレ表面の水分乾燥のために一晩放置する工程が不要となり、放置中に微生物に汚染される心配が無くなった。また、シャーレ表面が濡れていないため、包装体から取り出してすぐに、培地に検体を塗抹する際の識別用ラベルを貼付することができ、また、シャーレ表面に油性インキで文字を記載することも可能であった。
【0116】
また、実施例4〜6の透湿性包装体でも、2週間後、および、4週間後において内容物自身から蒸散される水蒸気を外部に放出することによって基材フィルムの内部表面で結露することなく、また、内容物が乾燥しすぎることなく、袋から出してすぐに使用できる状態であった。また、シャーレ表面が濡れていないため、培地に検体を塗抹する際に識別用ラベルを貼付することができ、また、シャーレ表面に油性インキで文字を記載することも可能であった。
【0117】
従って、これらの包装体においても、従来行っていたシャーレ表面の水分乾燥のために一晩放置する工程が不要となり、放置中に微生物に汚染される心配が無くなった。
【0118】
また、比較例1の透湿性包装体は、2週間後、および、4週間後において内容物自身から蒸散される水蒸気を外部に放出することができず、包装用袋内に水が結露すると共に溜まってしまっていて、シャーレ表面が濡れているため、包装用袋から取り出してすぐに識別用ラベルを貼付したり、シャーレ表面に油性インキで文字を記載したりすることはできなかった。
【0119】
従って、内容物を使用する前に包装用袋から取り出して乾燥させる必要があり、乾燥中の微生物による汚染が懸念された。
【0120】
また、比較例2の透湿性包装体は、2週間後において内容物自身から蒸散される水蒸気を外部に放出することによって基材フィルムの内部表面で結露することは無かったが、2週間後において既に内容物が乾燥しすぎて寒天が収縮してしまい、使用できる状態ではなかった。
【0121】
また、比較例3の透湿性包装体は、2週間後、および、4週間後において内容物自身から蒸散される水蒸気を外部に放出することによって基材フィルムの内部表面で結露することなく、また、内容物が乾燥しすぎることなく、袋から出してすぐに使用できる状態であった。
【0122】
しかし、透湿阻害剤層が形成されていないため、自由水が少なく、乾燥しやすい内容物の包装には対応できないことから、基材フィルム、保存期間、用途等が限定されてしまう。
【0123】
(水分放出試験2)
内容物として、直径90mm、高さ14mmのポリスチレン製シャーレに普通寒天培地(栄研化学株式会社製)を調製、分注したものを用い、倒置したシャーレを10枚重ねた状態で、上記で得られた実施例5、6の本発明に係る透湿性包装用袋、および、比較例1の包装用袋の開口部から脱酸素剤(製品名「エージレスSA−200」、三菱瓦斯化学株式会社製)と共に収納し、袋開口部に10mm巾のヒートシールを施して密封し、透湿性包装体を作製した。
【0124】
しかる後、上記で得られた包装体を庫内温度約5℃の冷蔵庫中で保存し、1週間後に包装体内の状況を観察すると共に包装体内の酸素濃度をジルコニア式酸素計にて測定した。
【0125】
その結果、実施例5、6の本発明に係る透湿性包装袋は、袋内酸素濃度がゼロであると共に、内容物自身から蒸散される水蒸気によってフィルムの内部表面で結露することなく、また、内容物が乾燥しすぎることなく、余分な水蒸気を外部に放出可能であり、内容物である普通寒天培地の鮮度維持、保存性に優れるものであった。
【0126】
従って、従来行っていたシャーレ表面の水分乾燥のために一晩放置する工程が不要となり、放置中に微生物に汚染される心配が無くなり、かつ、放置中に寒天培地に大量の酸素が溶け込んで、嫌気培養に悪影響を及ぼす心配が無くなった。また、シャーレ表面が濡れていないため、包装体から取り出してすぐに、培地に検体を塗抹する際の識別用ラベルを貼付することができ、また、シャーレ表面に油性インキで文字を記載することも可能であった。
【0127】
また、比較例1の包装用袋は、袋内酸素濃度はゼロであったが、内容物自身から蒸散される水蒸気を外部に放出することができず、包装用袋内に水が結露すると共に溜まってしまっていて、シャーレ表面が濡れているため、包装用袋から取り出してすぐに識別用ラベルを貼付したり、シャーレ表面に油性インキで文字を記載したりすることはできなかった。
【0128】
従って、内容物を使用する前に包装用袋から取り出して乾燥させる必要があり、乾燥中の微生物による汚染と、寒天培地中への酸素溶解による嫌気培養への悪影響が懸念された。
【0129】
(水分放出試験3)
実施例3〜5の本発明に係る透湿性包装用材料、および、比較例1、2の包装用材料で縦180mm、横100mm、ヒートシール幅10mmの、一端に開口部を有し、残りの三方にヒートシールを施した袋からなる、本発明の透湿性包装用袋を作製した。
【0130】
実施例3、4、および、比較例2の包装用袋の開口部から、内容物として笹の葉形状の蒲鉾(1枚)を収納し、袋開口部に10mm巾のヒートシールを施して密封し、透湿性包装体を作製した。更に、実施例5および比較例1の包装用袋の開口部から、前記笹の葉形状の蒲鉾と共に脱酸素剤(製品名「エージレスSA−50」、三菱瓦斯化学株式会社製)を収納し、開口部に10mm巾のヒートシールを施して密封し、透湿性包装体を作製した。
【0131】
しかる後、上記で得られた透湿性包装体を庫内温度約25℃のインキュベーター中に1週間保存した。
【0132】
その結果、実施例3〜5の本発明に係る透湿性包装体は、内容物が乾燥しすぎることなく、余分な水蒸気を外部に放出可能であるため、透湿性包装袋の内面フィルムと内容物が貼り付く現象は認められず、良好な外観であり、また、微生物の繁殖も外観的には認められなかった。また、実施例5の本発明に係る透湿性包装体を、更に1週間、庫内温度約25℃のインキュベーター中に保存したが、カビ等の微生物の繁殖は外観的には認められなかった。
【0133】
また、比較例1の包装体は、内容物自身から蒸散される水蒸気、及び離水による水分によってフィルムと内容物が貼り付く現象が認められ、見苦しい外観を呈した。また、蒲鉾表面に酵母が繁殖してしまい、異臭を呈した。
【0134】
また、比較例2の包装体は、内容物が乾燥し過ぎてしまい、食感の低下を引き起こした。
【0135】
(水分放出試験4)
実施例4の本発明に係る透湿性包装用袋、および、比較例2の包装用袋の開口部から、内容物として、表面温度約90℃の焼きたてのバターロールパン4個を収納した後、袋開口部に10mm巾のヒートシールを施して包装体を製造した。
【0136】
上記で得られた包装体を30℃の恒温槽中で2日間保存した。
【0137】
その結果、実施例4による透湿性包装体は内容物自身から蒸散される水蒸気によってフィルムの内部表面で結露することなく、また、内容物が乾燥しすぎることなく、余分な水蒸気を外部に放出可能で、焼きたてのしっとり感を維持した状態であった。
【0138】
しかし、比較例2による包装体は、内容物自身から蒸散される水蒸気によってフィルムの内部表面で結露することなく、余分な水蒸気を外部に放出可能ではあるが、パンの表面が乾燥してしまい、食感が低下してしまった。
【0139】
この結果から、焼きたてパンの包装が可能であることが明らかとなり、放冷工程を省くことによる微生物汚染の減少や、通常の焼きたてパンの販売店において裸でお盆に載せて販売されているものを、包装した状態で販売できるため、本発明によって衛生性に優れる販売方法を提供できることが分かった。
【符号の説明】
【0140】
1 透湿性包装用材料
2 基材フィルム
2A 透湿調整フィルム
2a 追加基材フィルム
3 ヒートシール剤層
4 透湿阻害剤層
5 接着層
6 スリット位置
7 断裁位置
8 ヒートシール部
9 ノッチ
10 透湿性包装用袋
11 開口部
12 脱酸素剤
20 透湿性包装体
M 内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿性を有する基材フィルムと、基材フィルムにパターン状に設けられた透湿阻害剤層とを有する透湿調整フィルムと、
透湿調整フィルムに設けられたヒートシール剤層とを備えたことを特徴とする透湿性包装用材料。
【請求項2】
ヒートシール剤層は透湿調整フィルムに、透湿性を有する追加基材フィルムを介して設けられていることを特徴とする請求項1記載の透湿性包装用材料。
【請求項3】
基材フィルムは、プレーンセロハンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ナイロンフィルム、MXDナイロン共押し出しナイロンフィルム、MXDナイロンブレンドナイロンフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体共押し出しナイロンフィルム、酸素バリア層コートナイロンフィルム、またはエチレン・ビニルアルコール共重合体フィルムからなることを特徴とする請求項1記載の透湿性包装用材料。
【請求項4】
透湿阻害剤層は、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の透湿性包装用材料。
【請求項5】
ヒートシール剤層および透湿阻害剤層は、いずれもポリ塩化ビニリデン樹脂からなり、かつヒートシール剤層および透湿阻害剤層は基材フィルムの同一面上に設けられていることを特徴とする請求項1記載の透湿性包装用材料。
【請求項6】
ヒートシール剤層および透湿阻害剤層は、いずれもポリ塩化ビニリデン樹脂を基材フィルムの同一面上に塗布して一体に形成され、ヒートシール剤層および透湿阻害剤層はエンドレスパターンを有することを特徴とする請求項1記載の透湿性包装用材料。
【請求項7】
請求項1の透湿性包装用材料を袋状に形成してなり、周縁部のヒートシール剤層を融着して構成された透湿性包装用袋。
【請求項8】
請求項7記載の透湿性包装用袋と、
透湿性包装用袋内に収納された内容物とを備えたことを特徴とする透湿性包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−25411(P2012−25411A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164277(P2010−164277)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】