説明

透湿性材料及び薄肉成形体

【課題】成形性、耐ブロッキング性に優れ、透湿度の調節が容易な、エチレン・極性モノマー共重合体をベースとする透湿性材料及び薄肉成形体を提供する。
【解決手段】極性モノマー含有量が2〜50重量%、透湿係数が5.0×10−4g/m/day以上のエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に0.1〜10重量部の化学発泡剤を配合し、発泡成形させて得られる透湿係数が1.0×10−3g/m/day以上の薄肉状透湿性材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性、耐ブロッキング性に優れ、透湿度の調節が容易な透湿性材料及び薄肉成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつや生理用品のような衛生材料、コートなどの衣料品、食品の鮮度保持包装材料などにおいて、湿分を選択的に透過せしめる透湿性材料が使用されつつある。その代表的なものが、微粉末状無機質充填剤を配合したポリオレフィンをシート成形した後延伸して得られる微多孔性フィルムである。このタイプの透湿性材料においては、透湿度を高くするため孔径を大きくしすぎると耐水性が低下するが、上記製法によれば透湿性の度合と耐水性の度合のバランスをとるための孔径の調節が難しく、往々にして耐水性が犠牲になることがあった。また無機質充填剤の配合量が多くなるとシート強度が弱くなり、成形加工性が損なわれた。さらに微多孔性であるため、臭気成分が殆ど通過することが衛生材料分野では嫌われていた。
【0003】
このような微多孔性型透湿性材料と異なるものとして、ポリエーテル単位を相当量で分子内に含有するポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ウレタン系エラストマーなどのフィルムからなる透湿性材料が知られているが、これらは高価であり、また用途によっては柔軟すぎ、かつ粘着性が高くてブロッキングし易いなどの問題点があった。
【0004】
一方、フィルムに透湿性を付与する手段として、厚みを数ミクロンから数十ミクロンのように薄くする方法は知られている。この方法は安価なポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンに対してはあまり有効でないが、エチレンと極性モノマーの共重合体に対しては効果的である。しかしながら該共重合体の薄いフィルムは、ブロッキングし易く、作業性や取扱い性に問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、透湿度を容易に調節することができ、かつ成形性に優れ、ブロッキングトラブルのない、エチレン・極性モノマー共重合体からなる透湿性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明によれば、極性モノマー含有量が5〜45重量%、透湿係数が5.5×10−4g/m/day以上のエチレン・極性モノマー共重合体に化学発泡剤として重炭酸ナトリウムを配合し、発泡させてなる、透湿係数が1.0×10−3g/m/day以上の肉厚が5〜70μmの薄肉成形体形状の透湿性材料が提供される。
【0007】
また本発明によれば、極性モノマー含有量が5〜45重量%、透湿係数が5.5×10−4g/m/day以上のエチレン・極性モノマー共重合体100重量部当たり、化学発泡剤として0.1〜10重量部の重炭酸ナトリウムを配合してなる透湿性樹脂組成物を発泡させてなる、透湿係数が1.0×10−3g/m/day以上の肉厚が5〜70μmの薄肉成形体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブロッキングがなく、作業性、取扱い性に優れた透湿材料を提供することができる。このような透湿材料は、紙おむつのギャザーやバックシート、生理用品、医療用ディスポーザルシート、手術用・処置用ガウン裏地、絆創膏などの医療衛生材料、コート、スポーツ衣料等の衣料品、結露防止フィルム、ルーフィング材、透湿壁紙、床材のような建材、土木用シート、農園芸用フィルムのような農業用資材などに使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において使用されるエチレン・極性モノマー共重合体は、極性モノマー含有量が2〜50重量%、好ましくは5〜45重量%、透湿係数が5.0×10−4g/m/day以上、好ましくは5.5×10−4g/m/day以上のものである。上記エチレン・極性モノマー共重合体においては、極性モノマーの種類によっても若干異なるが、極性モノマー含量が上記範囲より少ないものは一般に透湿係数が小さく、良好な透湿材料とするのは難しい。一方、極性モノマー含有量が多い共重合体は透湿性が良好であるが、あまりにその含有量が多いものは機械的強度が小さく、またブロッキングし易くなる傾向がある。尚、本発明における透湿係数は、膜厚50μmのフィルムを用い、カップ法(JIS Z0208に準拠、40℃、相対湿度90%)で測定した透湿度に膜厚を乗ずることにより求めたものである。したがってエチレン・極性モノマー共重合体の透湿係数については、膜厚50μmとして算出したものであるが、発泡製品である本発明の透湿材料の透湿係数については、50μm厚みの発泡製品中のエチレン・極性モノマー共重合体が占める実質厚みを目付けから計算して、それを膜厚として算出したものである。
【0010】
上記エチレン・極性モノマー共重合体の極性モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これら不飽和カルボン酸の塩、一酸化炭素、二酸化硫黄などの一種又は二種以上などを例示することができる。
【0011】
上記不飽和カルボン酸の塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などの多価金属の塩などを挙げることができる。
【0012】
エチレン・極性モノマー共重合体としてより具体的には、エチレン・酢酸ビニル共重合体のようなエチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸n−ブチル共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・アクリル酸n−ブチル・一酸化炭素共重合体のようなエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の部分金属塩などを代表例として例示することができる。
【0013】
このようなエチレン・極性モノマー共重合体としては、成形加工性、機械的強度などを考慮すると、JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR、以下同じ)が0.05〜500g/10分、とくに0.1〜100g/10分のものを使用するのが好ましい。これらエチレン・極性モノマー共重合体の多くは、高温、高圧下のラジカル共重合により得ることができる。
【0014】
本発明の透湿性材料及び薄肉成形体に用いる透湿性樹脂組成物は、上記エチレン・極性モノマー共重合体に、その100重量部当たり、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部の化学発泡剤を配合してなるものである。その好適な配合量は、化学発泡剤の種類によっても異なるが、透湿性、耐ブロッキング性、フィルム強度などを考慮すると、発泡倍率が1.1〜10倍、とくに1.2〜5倍となるような割合とするのが好ましい。化学発泡剤としては、加熱によってガスを発生することができる分解型のものであれば如何なるものでもよく、例えばアゾジカルボアミド、ジニトロソペンタメチレンジアミン、スルフォニルヒドラジッド、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、重炭酸アンモニウム(炭酸水素アンモニウム)などを使用することができる。これらの中では特に重炭酸ナトリウムが好ましい。尚、これらの化学発泡剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明の透湿性材料及び薄肉成形体に用いる透湿性樹脂組成物には、必要に応じ、種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、親水性化合物、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、難燃助剤などを挙げることができる。
【0016】
本発明の透湿性材料は、上記透湿性樹脂組成物を、エチレン・極性モノマー共重合体の融点以上、化学発泡剤の分解温度以上の温度でフィルム、シート、中空容器などの薄肉成形体に成形することによって得ることができる。この場合、薄肉成形体の成形と発泡を同時に行なってもよく、あるいはエチレン・極性モノマー共重合体の融点以上、化学発泡剤の分解温度以下の温度で薄肉成形体を成形し、その後化学発泡剤の分解温度以上の温度で発泡させることによって行なうことができる。いずれにしても最終製品である発泡薄肉成形体状の透湿材料の透湿係数が1.0×10−3g/m/day以上、好ましくは1.2×10−3g/m/day以上となるものであり、そのためには発泡倍率が1.1〜10倍、とくに1.2〜5倍とし、その肉厚が好ましくは1〜100μm、とくに好ましくは5〜70μmの範囲のものとするのがよい。本発明の透湿材料は、発泡倍率によっても異なるが、通常、同一厚みの原料エチレン・極性モノマー共重合体の透湿度(g/m/day)の2〜10倍の透湿度を示す。
【0017】
本発明の透湿性材料は、種々の基材に積層して使用することができる。このような基材の例としては、織布、不織布、紙、各種合成樹脂フィルム、アルミニウム箔のような金属箔、木材などを例示することができる。本発明の透湿性材料と基材からなる積層体を製造する方法としては、上記透湿性樹脂組成物を発泡させつつ基材に押出コーティングする方法、上記透湿性樹脂組成物の溶液又は分散液を基材上に塗布したのち発泡させる方法、フィルム状の透湿材料と基材を貼り合わせる方法などを採用することができる。
【0018】
基材との積層に際し、基材との接着性を向上させるために高温での加工が要求される場合には、エチレン・極性モノマー共重合体における極性モノマーとして不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸の塩を有するものを使用するのが好ましい。また基材がアルミニウム箔、金属箔のような極性を有する材料の場合は、極性モノマーとして不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸の塩を有するものを使用するのが好ましい。さらに用途において最終製品に柔軟な風合いが求められる場合には、ビニルエステルまたは不飽和カルボン酸エステルを極性モノマーとして有するエチレン・極性モノマー共重合体を用いることが望ましい。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例及び比較例で用いた原料及び物性評価方法は、以下の通りである。
【0020】
1.原料
Znアイオノマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含有量9重量%)の亜鉛アイオノマー(中和度18%、MFR5.5g/10分)
EVA:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量10重量%、MFR9g/10分)
LDPE:高圧法低密度ポリエチレン(密度923kg/m、MFR3.7g/10分)
NaHCO:ポリスレンE205(永和化成(株)製、NaHCO20%マスターバッチ)
【0021】
2.物性評価方法
(1)透湿度:50μm厚みのフィルムサンプルを用い、カップ法(JIS Z0208準拠、測定雰囲気:40℃×90%RH)により測定。
(2)透湿係数:透湿度×膜厚により算出。尚、発泡サンプルについては、目付けから実質膜厚を推定し、これを膜厚とした。
【0022】
[実施例1、比較例1]
上記Znアイオノマー100重量部に対し、ポリスレンE205をNaHCOとして0.5重量部配合し、インフレーション成形機にて加工温度180℃で膜厚50μmのフィルムを作成した。比較のためポリスレンE205を配合しないZnアイオノマーについても同様にして50μmのフィルムを作成した。これらフィルムについて透湿度を測定すると共に、透湿係数を算出した。結果を表1に示す。
【0023】
[実施例2、比較例2]
Znアイオノマーの代わりに上記EVAを用いた以外は、実施例1及び比較例1と同様にしてフィルム成形を行ない、その透湿度を測定すると共に、透湿係数を算出した。結果を表1に示す。
【0024】
[比較例3〜4]
Znアイオノマーの代わりに上記LDPEを用いた以外は、実施例1及び比較例1と同様にしてフィルム成形を行ない、その透湿度を測定すると共に、透湿係数を算出した。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性モノマー含有量が5〜45重量%、透湿係数が5.5×10−4g/m/day以上のエチレン・極性モノマー共重合体に化学発泡剤として重炭酸ナトリウムを配合し、発泡させてなる、透湿係数が1.0×10−3g/m/day以上の肉厚が5〜70μmの薄肉成形体形状の透湿性材料。
【請求項2】
極性モノマー含有量が5〜45重量%、透湿係数が5.5×10−4g/m/day以上のエチレン・極性モノマー共重合体100重量部当たり、化学発泡剤として0.1〜10重量部の重炭酸ナトリウムを配合してなる透湿性樹脂組成物を発泡させてなる、透湿係数が1.0×10−3g/m/day以上の肉厚が5〜70μmの薄肉成形体。



【公開番号】特開2011−157563(P2011−157563A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115690(P2011−115690)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【分割の表示】特願2004−132542(P2004−132542)の分割
【原出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】