説明

透過型スクリーン用紫外線硬化型樹脂組成物及びその硬化物

【目的】高屈折率で、離型性、型再現性、復元性、耐傷性に優れた硬化物を与える透過型スクリーン用紫外線硬化型樹脂組成物を提供する。
【構成】特定の構造を有するジオール(a)と分子量200以下であるジオール化合物(b)と有機ポリイソシアネート(c)と水酸基含有(メタ)アクリレート(d)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)該(A)成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含むことを特徴とする透過型スクリーン用紫外線硬化型樹脂組成物及びその硬化物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はビデオプロジェクター、プロジェクションテレビなどに使用するフレネルレンズ、レンチキュラーレンズなどの透過型スクリーンに適している紫外線硬化型樹脂組成物及びその硬化物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のレンズはプレス法、キャスト法等の方法により形成されていた。前者のプレス法は加熱、加圧、冷却のサイクルで製造するため生産性が悪かった。又、後者のキャスト法は金型にモノマーを流し込んで重合するため製作時間が長くかかるとともに金型が多数個必要なため、製造コストが上がるという問題があった。このような問題を解決するために、紫外線硬化型樹脂組成物を使用することについて種々提案がなされている。(例えば、特開昭61−177215、特開昭61−248707、特開昭61−248708、特開昭63−163330、特開昭63−167301、特開昭63−199302、特開昭64−6935等参照)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これら紫外線硬化型樹脂組成物を使用することによって透過型スクリーンを製造する方法はある程度成功している。しかしながら、プロジェクションテレビなどの薄型化の要求に対応した提案はなされていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明者らが鋭意研究の結果、紫外線による硬化が速く、又その硬化物が高屈折率である樹脂組成物を見出し本発明を完成するに至った。即ち、本発明は1.式(1)
【0005】
【化2】


【0006】(式中、R1 は水素原子又はメチル基、X1 〜X4 は、それぞれ独立して水素原子、メチル基、又は臭素原子、Yは−O−又は−S−、R2 は−CH2 −、−S−又は−C(CH2)−、a、bの数はそれぞれ1〜10の数、a+bの平均値は5〜20の数である。)で表されるジオール(a)と分子量200以下のジオール化合物(b)と有機ポリイソシアネート(c)と水酸基含有(メタ)アクリレート(d)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、該(A)成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含むことを特徴とする透過型スクリーン用紫外線硬化型樹脂組成物及びこれらの硬化物に関する。
【0007】本発明では、式(1)で表されるジオール(a)と分子量200以下のジオール化合物(b)と有機ポリイソシアネート(c)と水酸基含有(メタ)アクリレート(d)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)を使用する。式(1)で表されるジオール(a)の具体例としては、例えば、ビスフェノールA1モルとエチレンオキサイド15モルの反応物、ビスフェノールA1モルとエチレンオキサイド10モルの反応物、ビスフェノールF1モルとプロピレンオキサイド8モルの反応物、テトラブロムビスフェノールA1モルとエチレンオキサイド15モルの反応物、
【0008】
【化3】


【0009】
【化4】


【0010】等を挙げることができる。分子量200以下のジオール化合物(b)の具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0011】有機ポリイソシアネート(c)の具体例としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフエニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、イソホロンジイシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。特に好ましいものとしては、例えばトリレンジイソシアネート2,4−2,6−及び混合物)、キシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0012】水酸基含有(メタ)アクリレート(d)の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、フェニルグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、式(1)で表されるジオール(a)及び分子量200以下のジオール化合物(b)の混合物の水酸基1当量あたり、有機ポリイソシアネート(c)のイソシアネート基好ましくは1.1〜2.0当量を反応温度好ましくは70〜100℃で反応させウレタンオリゴマーを合成する。(a)成分と(b)成分の使用割合は、(a)成分100重量部に対して(b)成分の使用割合好ましくは1〜50重量部である。次いでウレタンオリゴマーのイソシアネート基1当量あたり、水酸基含有(メタ)アクリレート(d)の水酸基好ましくは1〜1.5当量を反応温度好ましくは70〜100℃で反応させて得ることができる。得られたウレタン(メタ)アクリレートの屈折率(25℃)は、通常1.53以上であり、好ましい条件下では1.55以上である。
【0013】次に、該(A)成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物(B)の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエトシキ(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリブロモベンジル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジブロモフェニルグリシジエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、O−フェニルフェノールのポリエトキシ(メタ)アクリレート、P−フェニルフェノールのポリエトキシ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート等の反応性単量体、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、有機ポリイソシアネート変成ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル等のエポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート等の反応性高分子化合物等を挙げることができる。
【0014】光重合開始剤(c)としては、例えば、
【0015】
【化5】


【0016】
【化6】


【0017】
【化7】


【0018】
【化8】


【0019】等や共重合性光重合開始剤やベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノープロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アセトフェノンジメチルケタール、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラ−ズケトン等を挙げることができる。これらは、単独或いは2種以上を組合せて用いることができる。更に、このような光重合開始剤(C)はN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエタノールアミン、トリエチルアミンの様な公知慣用の光増感剤を単独或いは2種以上を組合せて用いることができる。
【0020】本発明で使用される各成分の使用割合は、(A)成分を100重量部とした場合、(B)成分は50〜1000重量部が好ましく、特に好ましくは100〜500重量部である。(C)成分の使用割合は(A)+(B)を100重量部とした場合、0.1〜10重量部が好ましく、特に好ましくは0.3〜5重量部である。
【0021】本発明の樹脂組成物は前記成分以外に離型剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン等)、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤等の添加剤を併用することができる。又、樹脂組成物の塗布性の改良のため有機溶剤を任意の量を使用することができる。
【0022】本発明の樹脂組成物は、各成分を混合、溶解することにより得ることができる。本発明の樹脂組成物はフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等の透過スクリーン用として有用である。
【0023】本発明の樹脂組成物の硬化物は常法に従い本発明の樹脂組成物に紫外線を照射することにより得ることができる。具体的には、本発明の透過型スクリーン用紫外線硬化型樹脂組成物を、例えば、フレネルレンズ又はレンチキュラーレンズの形状を有するスタンパー上に塗布し、該紫外線硬化型樹脂組成物の層を設け、その層の上に硬質透明基板(例えば、ポリカーボネート基板、ポリアクリル基板、ポリエステルシート、硬質塩化ビニル基板或いは、これら基板にプライマー層を設けたもの等)を接着させ、次いでその状態で該硬質透明基板側から高圧水銀灯などにより、紫外線を照射して該樹脂組成物を硬化させた後、該スタンパーから剥離する。この様にして通常屈折率(25℃)が1.55以上、好ましい条件下では1.56以上を有したフレネルレンズ或いはレンチキュラーレンズ等の透過スクリーンが得られる。
【0024】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。実施例中の評価は、次の方法で行った。なお、合成例中の部は重量部を示す。
(1)離型性:硬化した樹脂を金型より離型させる時の難易○────金型からの離型性が良好△────離型がやや困難×────離型が困難或いは型のこりがある。
(2)型再現性:硬化した紫外線硬化性樹脂層の表面形状を観察した。
○────再現性良好×────再現性が不良(3)復元性:硬化した紫外線硬化性樹脂層の金型より離型した面に爪を押しつけ跡をつけ30分放置後観察した。
○────爪を押しつけた跡が全くない△────爪を押しつけた跡がかすかに残っている×────爪を押しつけた跡が残っている(4)屈折率(25℃):硬化した紫外線硬化型樹脂層の屈折率(25℃)を測定
【0025】ウレタン(メタ)アクリレート(A)の合成例合成例1ビスフェノールA1モルにエチレンオキサイド10モルを反応させたジオール(分子量668、OH価168)500部、エチレングリコール26.3部、トリレンジイソシアネート408部を仕込み、昇温後80℃で約10時間反応し、次いで2ーヒドロキシエチルアクリレート258.7部、メトキノン0.6部を仕込み80℃で約10時間反応を行いウレタンアクリレート(A−1)を得た。屈折率(25℃)は1.56であった。
【0026】合成例2ビスフェノールF1モルにエチレンオキサイド8モルを反応させたジオール(分子量480、OH価233.8)500部、エチレングリコール26.3部、キシリレンジイソシアネート551.2部を仕込み、昇温後、80℃で約10時間反応し、次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート357部、メトキノン0.7部を仕込み80℃で約10時間反応を行いウレタンアクリレート(A−2)を得た。屈折率(25℃)は1.57であった。
【0027】合成例3テトラブロモビスフェニルA1モルにエチレンオキサイド15モルを反応させたジオール(分子量1207.7、OH価92.9)500部、ネオペンチルグリコール55.6部、トリレンジイソシアネート330部を仕込み、昇温後80℃で約10時間反応し、次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート231部、メトキノン0.56部を仕込み80℃で約10時間反応を行いウレタンアクリレート(A−3)を得た。屈折率(25℃)は1.58であった。
【0028】合成例4前記式(2)で表されるジオール500部、1,4−ブタンジオール26.3部、トリレンジイソシアネート399.7部を仕込み、昇温後80℃で約10時間反応し、次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート278部、メトキノン0.6を仕込み、80℃で約10時間反応を行いウレタンアクリレート(A−4)を得た。屈折率(25℃)は1.59であった。
【0029】実施例1〜5表1に示すような組成(数値は重量部を示す)の紫外線硬化型樹脂組成物はフレネルレンズ金型と厚さ2.5mmのアクリル樹脂板との間に注入し、常法により紫外線を照射して硬化させフレネルレンズを得た。
【0030】
表 1 実施例 1 2 3 4 5ウレタンアクリレート(A−1) 30 40ウレタンアクリレート(A−2) 20ウレタンアクリレート(A−3) 30ウレタンアクリレート(A−4) 30KAYARAD R-310 *1 15KAYARAD R-128 *2 10 10 10KAYARAD OPP-2 *3 30 30 30トリブロモフェニルオキシエチルアクリレート 18 22フェニルオキシエチルアクリレート 10 18 8ビスフェノールAポリ(n=10) エトキシジアクリレート 23 37 10KAYARAD R-551 *4 20 10 20KAYARAD HX-220 *5 10LA−82 *6 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 イルガキュア−184*7 3 3 3 3 3硬化物の物性 屈折率(25℃) 1.564 1.581 1.552 1.566 1.572 離型性 ○ ○ △ ○ ○ 型再現性 ○ ○ ○ ○ ○ 復元性 ○ ○ △ ○ ○
【0031】注 *1 KAYARAD R−310:日本化薬(株)製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シエルエポキシ(株)製エピコート1004)のエポキシアクリレートでフェニルグリシジルエーテルのアクリレート、50%希釈品*2 KAYARAD R−128:日本化薬(株)製 フェニルグリシジルエーテルのアクリレート*3 KAYARAD OPP−2:日本化薬(株)製 o−フェニルフェノールのエチレンオキサイド付加物のアクリレート*4 KAYARAD R−551:日本化薬(株)製 ビスフェノールA テトラエトキシジアクリレート*5 KAYARAD HX−220:日本化薬(株)製 ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート*6 LA−82:旭電化工業(株)製 光安定剤*7 イルガキュアー184:チバ・ガイギー社製 光重合開始剤
【0032】表1から明らかなように、本発明の樹脂組成物の硬化物は離型性、型再現性、復元性に優れ、1.55以上の高屈折率であった。
【0033】
【発明の効果】本発明の樹脂組成物の硬化物は高屈折率で、離型性、型再現性、復元性に優れ、透過型スクリーンに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】式(1)で表されるジオール(a)と
【化1】


(式中、R1 は水素原子又はメチル基、X1 〜X4 はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又は臭素原子、Yは−O−又は−S−、R2 は−CH2 −、−S−、又は−C(CH3)2 −、a、bの数はそれぞれ1−10の数、a+bの平均値は5〜20の数である。)分子量200以下であるジオール化合物(b)と有機ポリイソシアネート(c)と水酸基含有(メタ)アクリレート(d)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、該(A)成分以外のエチレン性不飽和基含有化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含むことを特徴とする透過型スクリーン用紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】請求項1記載の樹脂組成物の硬化物。