説明

透過型電子顕微鏡、その撮影方法及びその制御プログラム

【課題】透過型電子顕微鏡によるつなぎ写真の作成スループットを向上させる。
【解決手段】試料ステージの移動と同期して試料を動画像撮影し、その後、撮像された動画像を連続視野の静止画像に変換し、それらをつなぎ合わせてつなぎ写真を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型電子顕微鏡による試料のつなぎ写真撮影技術に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型電子顕微鏡を生物分野で使用する場合(例えば生物試料、微生物、細胞の観察に使用する場合)、観察対象である試料を低倍率で撮影し、その後、試料像を広視野かつ高精細で観察することが求められる。ところで、最近の透過型電子顕微鏡では、試料像の取得に、CCD(Charge Coupled Device)カメラが用いられる。
【0003】
ところが、CCDカメラを用いて取得したデジタル画像は、解像度がフィルムに比べて劣る。このため、CCDカメラによっては、広視野の精細画像を撮影することが困難である。このような問題を解決するため、CCDカメラを使用する透過型電子顕微鏡においては、CCDカメラの解像度不足を補うべく、高倍率により数枚から数十枚の連続視野の写真を撮影し、撮影した視野像をつなぎ合わせて1枚のつなぎ写真を得る手法が用いられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−126750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来装置においては、試料ステージを順次ステップ移動し、一枚一枚写真を撮影した後、それぞれの写真をつなぎ合わせて、1枚のつなぎ写真を作成する。このように従来装置では、一枚ずつ写真を撮影しなければ、つなぎ写真を作成することができない。また、従来装置では、それぞれの写真を撮影する際に試料移動によるドリフトを抑制する必要があり、そのために1枚の写真を撮影する度に十数秒待つ必要がある。このため、全ての写真を撮り終えるまでには多くの時間を必要とする。そのため、撮影時に使用する電子線量が多くなり易く、電子線に弱い生物試料の構造が壊れてしまう問題も生じている。
【0006】
本発明者は、このような問題を鋭意検討した結果、撮影領域の全体に相当するつなぎ写真を透過型電子顕微鏡を用いて効率よく、短時間に作成することができる技術を想到するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る透過型電子顕微鏡では、試料ステージの移動と同期して試料像を動画像として撮影し、その後、撮像された動画像を連続視野の静止画像に変換し、それらをつなぎ合わせて1枚のつなぎ写真を作成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透過型電子顕微鏡を用いた試料のつなぎ写真が作成されるまでの時間を大幅に減少させることができる。さらに、本発明によれば、試料に対する電子線の照射時間も大幅に減少させることができ、電子線に弱い試料についてもつなぎ写真の作成が可能となる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】透過型電子顕微鏡の概略構成を示す図。
【図2】画像取得動作を説明するフローチャート。
【図3】試料ステージの移動経路を説明する図。
【図4】画像つなぎ処理動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施の形態は、発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備える必要は無い。その一方で、実施の形態に係る装置構成に他の構成要素を追加し、又はその一部を他の構成要素に置換することも可能である。また、以下に説明する制御装置や処理装置は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウェアとして実現しても良いし、コンピュータにより実行されるプログラム(ソフトウェア)として実現しても良い。以下の実施の形態に現われる画像データ(ファイルを含む)、プログラム等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示すものであり、製品上必要な全ての制御線や情報線を表すものでない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
[装置構成]
図1に、実施の形態に係る透過型電子顕微鏡の構成例を示す。図1は、透過型電子顕微鏡の装置構成を機能的に表したものである。電子顕微鏡本体1の電子銃2より放出された電子線(図中破線で示す)は、筐体上部に配置された照射レンズ系3により収束され、試料ステージ(不図示)に保持されている試料Sを照射する。試料Sを透過した電子は、対物レンズ系4及び拡大レンズ系6により拡大される。電子線によって拡大された試料Sの画像は、蛍光板7の面上で観察される。さらに、拡大された画像は、シンチレータ板とCCDカメラを備えた画像検出部8によって撮影され記録される。
【0012】
電子銃2は、電子銃制御装置9によって制御される。照射レンズ系3は、照射レンズ系制御装置10によって制御される。対物レンズ系4は、対物レンズ系制御装置11によって制御される。試料ステージ制御機構5は、試料ステージ駆動機構制御装置13によって制御される。拡大レンズ系6は、拡大レンズ系制御装置12によって制御される。これらの制御装置(すなわち、電子銃制御装置9、照射レンズ系制御装置10、対物レンズ系制御装置11、拡大レンズ系制御装置12、試料ステージ駆動機構制御装置13)は、観察条件制御装置を構成する。
【0013】
試料Sを透過し、画像検出部8により検出された電子線像の信号は、撮像装置制御装置14に供給され、画像信号に変換される。撮像装置制御装置14から出力された画像信号は画像処理装置15に供給され、画像データとして記録される。後述するように、画像データは、試料ステージの移動(走査)と同期した動画像として取り込まれる。画像処理装置15には、キーボードやマウス等の入力機器16と、画像を表示するためのモニタ17が接続されている。
【0014】
図1に示すように、観察条件制御装置を構成する電子銃制御装置9と、照射レンズ系制御装置10と、対物レンズ系制御装置11と、拡大レンズ系制御装置12と、試料ステージ駆動機構制御装置13のそれぞれは、画像処理装置15に接続されており、画像処理装置15が装置全体の動作を制御する。例えば画像処理装置15は、加速電圧、観察倍率等の各レンズの条件設定や試料ステージの駆動動作を制御する。画像処理装置15を構成するコンピュータ上では、本明細書で提案するプログラムが実行される。ここでのプログラムは、画像検出部8から動画像として得られる画像信号を連続視野の静止画像に変換し、静止画像のボケを補正し、補正後の静止画像を試料ステージの移動経路の情報に基づいてつなぎ合わせる画像処理の実行を制御する。
【0015】
試料撮影の際、オペレータは、入力機器16を用い、各レンズ制御装置及び試料ステージ駆動制御装置13の使用条件を予め入力し、所望の加速電圧、観察倍率、試料位置を設定することができる。それぞれの使用条件は、入力機器16から画像処理装置15に転送されてモニタ17に表示され、オペレータに提供される。
【0016】
試料Sのつなぎ写真を作成する場合、オペレータは、画像処理装置15に撮影開始位置、試料ステージの移動速度等の条件を設定する。これら条件の入力も、入力機器16を用いて行われるが、画像処理装置15が既存の情報を用いて自動設定してもよい。
【0017】
[処理動作]
以下、実施の形態に係る透過型電子顕微鏡を用いて、生物試料等の透過像のつなぎ写真を作成する際に実行される処理動作を説明する。なお、処理動作は、画像取得動作と画像つなぎ処理動作で構成される。これらの処理動作は、画像処理装置15による制御の下に実行される。
【0018】
ここで、画像取得動作では、オペレータが定めた試料Sの所望の領域(少なくともCCDカメラの画角(視野)より広い領域)を構成する短冊領域の像を、試料ステージの移動(走査)に同期した動画像として撮影する処理が実行される。一方、画像つなぎ処理動作では、動画像を連続視野の静止画像に変換し、各静止画像のボケを補正し、補正後の静止画像を試料ステージの移動情報に基づいてつなぎ合わせる画像処理が実行される。
【0019】
[画像取得動作]
図2に、画像取得動作時に画像処理装置15で実行される処理動作の実行順序を示す。
ステップ201において、画像処理装置15は、入力機器16を通じ、加速電圧、撮影倍率、動画像のフレームレート等の動画撮影条件を入力し設定する。これらの条件の入力や入力された条件の確認は、例えばモニタ17に表示される専用の設定画面を通じて行うことができる。入力条件に対応するデータは、画像処理装置15から電子銃制御装置9、照射レンズ系制御装置10、対物レンズ系制御装置11、拡大レンズ系制御装置12、試料ステージ駆動機構制御装置13に与えられる。
【0020】
ステップ202において、画像処理装置15は、入力機器16を通じ、試料ステージの移動速度、撮影領域の始点(x1, y1)および終点(xn, ym)を入力し設定する。ここで、座標の添え字は、各軸方向におけるCCDカメラの画角(視野)を単位として表現した静止画像の位置座標を表している。詳細については後述する。これら情報の入力や入力された情報の確認も、例えばモニタ17に表示される専用の設定画面を通じて行うことができる。入力条件に対応するデータは、画像処理装置15から電子銃制御装置9、照射レンズ系制御装置10、対物レンズ系制御装置11、拡大レンズ系制御装置12、試料ステージ駆動機構制御装置13に与えられる。
【0021】
ステップ203において、対物レンズ系制御装置11は、対物レンズ系4を制御して画像の焦点を合わせる。
【0022】
焦点合わせが終了すると、試料ステージの移動(走査)に同期して、動画像の撮影を開始する。図3に、試料ステージの移動経路例を示す。図3では横軸をx軸とし、縦軸をy軸とする。なお、図3においては、原点位置を図中の右上隅とする。図3は、試料について設定された撮影領域の全体を太線で示す矩形領域として表している。また、図3は、撮影領域が、CCDカメラの画角(視野)に相当する画像(フレーム画像)をx軸方向にn個、y軸方向にm個並べた大きさを有することを表している。勿論、nとmは自然数である。もっとも、指定された撮影領域の大きさと後述する重なり領域の幅によっては、フレーム画像をx軸方向にn個、y軸方向にm個並べた領域のサイズが一致するとは限らない。
【0023】
ステップ204において、試料ステージ駆動機構制御装置13は、試料ステージをx方向に移動(走査)させる。ここでの移動は、撮影領域の一端側から他端側への等速度による移動であり、他端側に到達するまでの間でフレーム画像単位で停止することはない。もっとも、補正が可能であれば移動速度は等速度に限らない。この試料ステージの移動(走査)開始に同期して、画像検出部8は画像の撮影を開始する。画像検出部8で撮影された画像は、撮像装置制御装置14を通じて画像処理装置15に転送され、動画像として保存される。ただし、動画像を保存する際には、各フレーム画像の位置毎に試料ステージの座標を記録しておく。試料ステージの座標は、試料ステージ駆動機構制御部13から画像処理装置15に与えられている。
【0024】
試料ステージが撮影領域の左端位置(xn )まで試料を移動すると、画像処理装置15は、動画像の保存を停止する。この後、試料ステージ駆動機構制御装置13は、試料ステージを撮影領域の右端位置(x1 )まで反対方向に移動(走査)する。
【0025】
ステップ205において、試料ステージ駆動機構制御装置13は、y軸方向に1フレーム画像分だけ試料ステージを移動する。y軸方向への移動は、動画像撮影後の画像をつなぎ合わせを考慮し、図3に示すようにy軸方向に隣り合う2つのフレーム画像間で領域の重なり領域ができるように移動量を決定する。重なり領域の幅に相当する移動量は、オペレータが個別に設定してもよいし、初期値を用いてもよい。
【0026】
ステップ206において、試料ステージ駆動機構制御装置13は、ステップ204の場合と同様、試料ステージを撮影領域の右端位置(x1 )から左端位置(xn )まで移動させ、画像処理装置15は、その間に画像検出部8で撮影された動画像を保存する。
【0027】
2走査目以降の動画像の撮影が終了すると、画像処理装置15はステップ207に進み、撮影領域の全体が撮影されたか否かを判定する。この例であれば、取得された動画像の個数がm個か否かが判定される。ステップ207で否定結果が得られた場合、画像処理装置15はステップ205に戻り、試料ステージ駆動機構制御装置13に対して試料ステージの移動(走査)を指示する。
【0028】
以後同様の処理動作が、ステップ207で肯定結果が得られるまで継続され、試料ステージの図中左方向への移動(走査)の度、その移動中における動画像の撮影が継続される。最終的には、オペレータにより指定された撮影領域全体の画像が取得される。
【0029】
[画像つなぎ処理動作]
図4に、画像つなぎ処理動作時に画像処理装置15で実行される処理動作の実行順序を示す。
ステップ401において、画像処理装置15は、不図示の記憶領域からm個の動画像を読み込む。
【0030】
ステップ402において、画像処理装置15は、動画像を連続視野の静止画像に変換する際に使用する表示間隔を算出する。この表示間隔は、フレーム画像のx軸方向のサイズに依存する。
【0031】
ステップ403において、画像処理装置15は、ステップ402で算出した表示間隔により、各動画像をn個の静止画像fn(x,y)に変換する。CCDカメラによる動画像の撮影は、先に設定されたフレームレートに基づいて静止画像をコマ撮りしたものであるため、表示間隔に対応する時間位置の静止画像を取り出すことにより、動画を静止画像に変換することができる。なお、表示間隔に対応する時間位置に静止画像が存在しない場合には、対応する時間位置の前後に取得された静止画像を時間補間して所望の静止画像を生成する。
【0032】
ただし、動画像から取り出された直後の静止画像は、試料ステージを移動させた状態で撮影された画像であるため、像がx軸方向に流れている。すなわち、x軸方向にボケた画像となっている。
【0033】
ここで、ボケのない理想的な画像の関数をg(x,y) 、試料移動の影響を与えるボケ関数をh(x,y) とすると、これらの関係は、以下のようにコンボリューション(畳み込み積分)で表すことができる。
【0034】
f(x,y)=g(x,y)*h(x,y)
上式をフーリエ変換すると、次式となる。
F(u,v)=G(u,v)H(u,v)
【0035】
ここで、F,G,Hはそれぞれ関数f,g,hをフーリエ変換したものである。なお、H(u,v) は、点拡がり関数(point spread function)として表される。本実施の形態の場合、ボケは、試料ステージの移動方向、すなわちx方向のみであるので、H(u,v) は既知の関数を用いて以下のように表すことができる。
【0036】
H(u,v)=sinπuVT/πuV
ここで、Vは直線のブレ距離、Tは周波数であり、試料ステージの移動速度と撮影時間から求めることができる。これらの数値を用いて計算されるH(u,v) を逆フーリエ変換すれば、ボケ関数hを求めることができる。
【0037】
ステップ404において、画像処理装置15は、上述した計算に基づき、ボケ関数hを導出する。前述したように、本実施の形態の場合、x軸方向についてのみ動画像を撮影するため、求めるボケ関数hは一つである。なお、ボケ関数hは、入力画面を通じてオペレータが入力した条件(例えば試料ステージの移動速度やフレームレート)に基づいて画像処理装置15が導出する。もっとも、条件の一部は、既知の情報を使用して画像処理装置15が自動的に導出してもよい。
【0038】
ステップ405において、画像処理装置15は、ステップ403で得られた各静止画像f(x,y) とステップ404で求められたボケ関数hのデコンボリューション処理を実行することにより、試料ステージの移動によるボケを補正した画像g(x,y) を得る。画像処理装置15は、全ての変換後の静止画像fn(x,y)について、ボケ関数とのデコンボリューション処理を実行する。
【0039】
なお、ステップ404及び405では、ボケ関数hを求める前に、GにHを用いた逆フィルター処理を実行してFを求め、その後、逆フーリエ変換により静止画像fを求めてもよい。
【0040】
因みに、得られた静止画像fの解像度が悪い場合には、試料ステージを撮影領域の右端位置(x1 )から左端位置(xn )まで移動させるまでの間だけでなく、撮影領域の左端位置(xn )から右端位置(x1 )に戻る間にも動画像を撮影して保存し、以下の補正手法を適用すればよい。
【0041】
具体的には、試料ステージを撮影領域の左端位置(xn )から右端位置(x1 )に戻す際に取得された動画像から取得される静止画像に対しても、前述の処理動作(ステップ401〜405)と同様の処理を実行し、ボケ補正後の静止画像を生成する。そして、試料上の同じ領域に対応する往路走査時の静止画像と復路走査時の静止画像とを統合又は加算すれば、ボケの影響が打ち消され、画質を改善することができる。
【0042】
ステップ406において、画像処理装置15は、ステップ405で生成されたボケ補正後の各画像(g(x,y) )をつなぎ合わせて一枚の画像(つなぎ写真)を作成する。
【0043】
[まとめ]
以上説明したように、本実施の形態に係る透過型電子顕微鏡では、つなぎ写真の作成時、試料ステージの移動(走査)と同期して、試料像を動画像として取得する。このため、本実施の形態に係る透過型電子顕微鏡の場合には、従来装置のような一枚ずつフレーム画像を撮影する必要がなく、その分、画像取得に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0044】
また、動画像から静止画像を取り出してつなぎ画像を生成する際に要する時間は、精密な試料ステージの位置合わせとフレーム画像の取得を繰り返す際に要する時間に比較して格段に短く済む。このため、作成されるつなぎ写真のスループットを向上させることができる。
【0045】
さらに、画像取得に要する時間の短縮は、試料に対する電子線の照射時間の短縮も意味する。この結果、電子線による試料の損傷を最小限に留めることができる。よって、電子線に弱い試料についても、透過電子像のつなぎ写真を作成することが可能となる。
【0046】
[その他の形態]
図3の説明では、試料ステージをx軸方向に往復移動(走査)させた後、y軸方向に1フレーム画像だけずらす動作を繰り返す場合について説明したが、往路だけ又は復路だけの走査によっても十分な画質の静止画像を生成できる場合にあっては、試料ステージが撮影領域の右端位置から左端位置まで移動すると、当該左端位置でy軸方向に試料ステージを移動し、その後、試料ステージを撮影領域の左端位置から右端位置まで移動させ、さらに動画像を撮影すべき領域が残っている場合には、撮影領域の右端位置でy軸方向に試料ステージを移動させる動作と対応する移動期間中の動画像の撮像とを繰り返してもよい。
【0047】
前述の説明では、画像取得動作と画像つなぎ処理動作が時系列に実行される場合について説明したが、1つの動画像が取得される度に、動画像を静止画像に変換する処理を他の動画像の取得動作と並行して実行してもよい。このように処理動作を並行して進行させることにより、つなぎ写真の作成スループットを一段と向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1…電子顕微鏡本体
2…電子銃
3…照射レンズ系
4…対物レンズ系
5…試料ステージ制御機構
6…拡大レンズ系
7…蛍光板
8…画像検出部
9…電子銃制御装置
10…照射レンズ系制御装置
11…対物レンズ系制御装置
12…拡大レンズ系制御装置
13…試料ステージ駆動機構制御装置
14…撮像装置制御装置
15…画像処理装置
16…入力機器
17…モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を発生させる電子銃と、
発生した電子線を試料に照射させる照射系と、
試料を電子線の照射軸に対して直交する面内で移動させる試料ステージと、
試料を透過した電子線像を拡大する拡大系と、
拡大された前記電子線像を検出する検出部と、
前記検出部において検出される前記電子線像に対応する画像データを、前記試料ステージの走査に同期した動画像として取得する画像処理装置と
を有することを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の透過型電子顕微鏡において、
前記画像処理装置は、前記動画像を連続視野の静止画像に変換する
ことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項2に記載の透過型電子顕微鏡において、
前記画像処理装置は、前記連続視野の静止画像をつなぎ合わせ、つなぎ写真を作成する
ことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項2に記載の透過型電子顕微鏡において、
前記画像処理装置は、入力画面を通じてオペレータが入力した条件に基づいて前記静止画像を補正する関数を算出する
ことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項2に記載の透過型電子顕微鏡において、
前記画像処理装置は、設定条件を記憶領域から自動的に読み出して前記静止画像を補正する関数を算出する
ことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項4に記載の透過型電子顕微鏡において、
前記画像処理装置は、前記関数を用い、前記静止画像のボケを補正する
ことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項7】
請求項5に記載の透過型電子顕微鏡において、
前記画像処理装置は、前記関数を用い、前記静止画像のボケを補正する
ことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項8】
請求項1に記載の透過型電子顕微鏡において、
前記試料ステージは、前記電子線が試料の同一領域を往復走査するように第1の方向に移動し、
前記画像処理装置は、往復走査のうち一方の走査期間に対応する画像データを前記動画像として取得する
ことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項9】
請求項1に記載の透過型電子顕微鏡において、
前記試料ステージは、前記電子線が試料の同一領域を往復走査するように第1の方向に移動し、
前記画像処理装置は、往復走査の両期間のそれぞれに対応する画像データを前記動画像として個別に取得する
ことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項10】
請求項1に記載の透過型電子顕微鏡において、
前記試料ステージは、前記電子線が試料上を第1の方向に所定距離だけ走査すると、当該第1の方向に直交する第2の方向に所定量だけ前記試料を移動させた後、第1の方向とは反対方向に前記試料を移動させ、
前記画像処理装置は、第1の方向への走査期間とその反対方向への走査期間のそれぞれに対応する画像データを前記動画像として個別に取得する
ことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項11】
請求項2に記載の透過型電子顕微鏡において、
前記画像処理装置は、オペレータにより指定された領域全体の動画像の撮影後、各動画像を静止画像に変換する
ことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項12】
請求項2に記載の透過型電子顕微鏡において、
前記画像処理装置は、オペレータにより指定された領域全体の動画像の撮影と並行して、各動画像を静止画像に変換する
ことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【請求項13】
電子線を発生させる電子銃と、発生した電子線を試料に照射させる照射系と、試料を電子線の照射軸に対して直交する面内で移動させる試料ステージと、試料を透過した電子線像を拡大する拡大系と、拡大された前記電子線像を検出する検出部とを有する透過型電子顕微鏡に搭載される又は前記透過型電子顕微鏡に接続される外部装置に搭載されるコンピュータに、
前記検出部において検出される前記電子線像に対応する画像データを、前記試料ステージの操作に同期した動画像として取得する機能を実行させるプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムにおいて、
前記コンピュータに、前記動画像を連続視野の静止画像に変換する機能を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムにおいて、
前記コンピュータに、前記連続視野の静止画像をつなぎ合わせ、つなぎ写真を作成する機能を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項16】
透過型電子顕微鏡の撮影方法において、
電子銃から電子線を発生させる処理と、
発生した電子線を試料に照射させる処理と、
試料ステージの駆動を制御し、試料を電子線の照射軸に対して直交する面内で移動させる処理と、
試料を透過した電子線像を拡大する処理と、
拡大された前記電子線像を検出する処理と、
前記検出部において検出される前記電子線像に対応する画像データを、試料ステージの走査に同期した動画像として取得する処理と
を有することを特徴とする透過型電子顕微鏡の撮影方法。
【請求項17】
請求項16に記載の透過型電子顕微鏡の撮影方法において、
前記動画像を連続視野の静止画像に変換する処理
を有することを特徴とする透過型電子顕微鏡の撮影方法。
【請求項18】
請求項17に記載の透過型電子顕微鏡の撮影方法において、
前記連続視野の静止画像をつなぎ合わせ、つなぎ写真を作成する処理
を有することを特徴とする透過型電子顕微鏡の撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−105598(P2013−105598A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247918(P2011−247918)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)