説明

通し材の保護部材、保護部材の固定構造、およびケーブルの配線構造

【課題】 壁厚に左右されることなく強固に固定することができる、通し材の保護部材を提供する。
【解決手段】 保護部材3は、コンクリート壁101の貫通孔1aに取り付けられて、その貫通孔1aを通るケーブル201を貫通孔1aの周端縁1bから保護する。この保護部材3は、貫通孔1aに嵌められる中空筒部6と、その中空筒部6から延設されて貫通孔1aの周端縁1bの壁面1c側に配置されるフランジ部7とを備える。そして、フランジ部7には、通孔7aが設けられ、取付ビス8が、その通孔7aを通り、中空筒部6と貫通孔1aの内面1dとの間に進入してその貫通孔1aの内面1dに螺入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、壁の貫通孔に取り付けられる、通し材の保護部材、その保護部材の固定構造、および、保護部材を用いたケーブルの配線構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、貫通孔を通ってケーブルを配設する際に、ケーブルが貫通孔の周端縁と接触して傷つくのを防止する保護部材があった(例えば、特許文献1参照)。図9に示されるように、この保護部材21は、貫通孔20aの周端縁の壁表面20bに当接するフランジ部22と、そのフランジ部22から貫通孔20a内に突出形成されて壁裏面20cに係合する爪23とを備えていた。
【0003】
【特許文献1】特開平11−234864
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の保護部材21にあっては、壁裏面20cに係合する爪23により、貫通孔20aに固定される構造であったため、決まった壁厚にしか対応できなかった。しかも、爪23では、しっかりと壁裏面20cに引っかからない場合があり、係止力が弱かった。
【0005】
また、前記保護部材21は、配線用ボックスとか配電盤等の引出孔(貫通孔20a)に取り付けられるものであり、同様の保護部材21が、建物の壁に明けられた貫通孔に対して用いられることは無かった。
【0006】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、壁厚に左右されることなく強固に固定することができる、通し材の保護部材および保護部材の固定構造を提供することにある。
【0007】
また、他の目的は、建物の壁の貫通孔を通るケーブルを保護することができる、ケーブルの配線構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る通し材の保護部材、保護部材の固定構造、およびケーブルの配線構造は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る通し材の保護部材は、壁の貫通孔に取り付けられてその貫通孔を通る通し材を前記貫通孔の周端縁から保護する、保護部材である。この保護部材は、前記貫通孔に嵌められる中空筒部と、その中空筒部から延設されて前記貫通孔の周端縁の壁面側に配置されるフランジ部とを備える。そして、前記フランジ部には、前記中空筒部と前記貫通孔の内面との間に進入して前記貫通孔の内面に螺入する取付ビスが通るための、通孔が設けられている。
【0009】
この保護部材を壁の貫通孔に取り付けるには、中空筒部を貫通孔に挿入し、フランジ部を貫通孔の周端縁の壁面側に配置する。そして、取付ビスを、フランジ部に設けられた通孔を通して、中空筒部と貫通孔の内面との間に進入させるとともにその内面に螺入させる。こうして、保護部材は貫通孔に取付固定され、この保護部材の、特に中空筒部とフランジ部との境界部分が、貫通孔の周端縁を覆い、その周端縁から、通し材を保護する。そして、保護部材の貫通孔への取り付けにあたっては、取付ビスを貫通孔の内面に螺入させるため、壁厚に左右されることなく取り付けることができ、しかも、強固に固定することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明に係る通し材の保護部材のように、請求項1に記載の保護部材において、前記中空筒部の外面には、前記取付ビスのビス軸を案内する案内溝が、前記中空筒部の軸方向に沿って設けられてもよい。こうして、取付ビスは、そのビス軸が案内溝によって、中空筒部の軸方向に案内されるため、取付ビスを貫通孔の内面に的確に螺入させることができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明に係る通し材の保護部材のように、請求項1または2に記載の保護部材において、前記通孔は、前記取付ビスの頭部が前記フランジ部の表面から突出しないように、前記頭部を収容する、座ぐり孔を有してもよい。こうして、取付ビスの頭部が座ぐり孔に収容されることから、通し材が取付ビスの頭部と接触するのを避けることができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明に係る通し材の保護部材のように、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の保護部材において、前記中空筒部の外面には、外方に延設されて前記貫通孔の内面に弾性的に係合する、バネ性を備えた弾性係止片が設けられてもよい。これにより、保護部材の中空筒部を貫通孔に挿入したときに、弾性係止片が貫通孔の内面に係合して、この保護部材は、貫通孔に仮止めされる。したがって、その後の、取付ビスによる貫通孔への保護部材の固定作業を容易に行うことができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明に係る保護部材の固定構造は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の保護部材の、固定構造であって、壁の貫通孔に前記中空筒部が挿入されるとともに、前記貫通孔の周端縁の壁面側に前記フランジ部が配置されて、取付ビスが、前記通孔を通って前記中空筒部と前記貫通孔の内面との間に進入して前記貫通孔の内面に螺入することにより、前記保護部材が前記貫通孔の開口部に取付固定されている。
【0014】
また、請求項6に記載の発明に係る保護部材の固定構造のように、請求項5に記載の固定構造において、前記壁は、コンクリート壁であって、前記貫通孔は、前記コンクリート壁に埋設された平滑管によって形成されて、その平滑管の内面が、前記取付ビスが螺入する、前記貫通孔の内面となってもよい。
【0015】
また、請求項7に記載の発明に係るケーブルの配線構造は、中空筒部とその中空筒部から延設されたフランジ部とを備える保護部材が、前記中空筒部が建物のコンクリート壁の貫通孔に嵌められるとともに前記フランジ部が前記貫通孔の周端縁の壁面側に配置された状態で、前記貫通孔に取付固定される。そして、前記貫通孔内に配線されたケーブルが、前記貫通孔の周端縁から保護されるように、前記中空筒部内を通って壁表へと引き出されている。
【0016】
この配線構造によると、保護部材が、建物のコンクリート壁の貫通孔に取付固定される。そして、保護部材の、特に中空筒部とフランジ部との境界部分が、貫通孔の周端縁を覆い、その周端縁から、ケーブルを保護する。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る通し材の保護部材および保護部材の固定構造によれば、取付ビスを貫通孔の内面に螺入させることで、保護部材を壁厚に左右されることなく強固に固定することができる。
【0018】
また、この発明に係るケーブルの配線構造によれば、保護部材を建物のコンクリート壁の貫通孔に取付固定することで、その貫通孔を通るケーブルを保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明に係る通し材の保護部材、保護部材の固定構造、およびケーブルの配線構造を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1〜図7は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、壁であって、例えば建物のコンクリート壁101からなり、図示実施の形態においては、天井Xから下方に突設された梁を構成するコンクリート壁からなる。1aは、前記壁1としてのコンクリート壁101に明けられた貫通孔である。2は、前記貫通孔1aを通る通し材であって、例えばケーブル(電線等の配線材)201からなる。3は、保護部材であって、前記壁1としてのコンクリート壁101の貫通孔1aに取り付けられて(詳しくは、貫通孔1aの一方側および他方側の両開口部にそれぞれ取り付けられて)その貫通孔1aを通る前記通し材2としてのケーブル201を貫通孔1aの周端縁1bから保護するものである。4は、前記保護部材3の固定構造である。5は、前記ケーブル201の配線構造である。
【0021】
ここで、保護部材3は、前記貫通孔1aに嵌められる中空筒部6と、その中空筒部6から延設されて貫通孔1aの周端縁1bの壁面1c側に配置されるフランジ部7とを備える。そして、フランジ部7には、中空筒部6と貫通孔1aの内面1dとの間に進入して貫通孔1aの内面1dに螺入する取付ビス8が通るための、通孔7aが設けられている。
【0022】
保護部材3の固定構造4は、前記貫通孔1aに前記中空筒部6が挿入されるとともに、貫通孔1aの周端縁1bの壁面1c側に前記フランジ部7が配置される。そして、この固定構造4は、取付ビス8が、フランジ部7に明けられた通孔7aを通って中空筒部6と貫通孔1aの内面1dとの間に進入して貫通孔1aの内面1dに螺入することにより、保護部材3が貫通孔1aの開口部に取付固定されている。
【0023】
また、ケーブル201の配線構造5は、前記保護部材3、すなわち中空筒部6とその中空筒部6から延設されたフランジ部7とを備える保護部材が、前記中空筒部6が建物のコンクリート壁101の貫通孔1aに嵌められるとともに前記フランジ部7が貫通孔1aの周端縁1bの壁面1c側に配置された状態で、貫通孔1aに取付固定される。そして、この配線構造5は、貫通孔1a内に配線されたケーブル201が、貫通孔1aの周端縁1bから保護されるように、中空筒部6内を通って壁表9へと引き出されている。
【0024】
具体的には、保護部材3は、合成樹脂製であって、前記中空筒部6と前記フランジ部7とが一体に成形されている。ここにおいて、中空筒部6は、略円筒形状に形成されており、この中空筒部6の外面には、前記取付ビス8のビス軸8aを案内する案内溝6aが、中空筒部6の軸方向に沿って設けられている。詳細には、一対の突起部としてのリブ6b、6bが、中空筒部6の外面から、その周方向において対峙するようにして突出形成されており、これらリブ6b、6b間が、前記案内溝6aとなっている。そして、リブ6b、6bは、一端がフランジ部7の裏面から延びており、したがって、前記案内溝6aは、取付ビス8が通る前記通孔7aから連通するように形成される。
【0025】
また、中空筒部6の外面には、外方に延設されて前記貫通孔1aの内面1dに弾性的に係合する、バネ性を備えた弾性係止片6cが、設けられている。この弾性係止片6cは、前記リブ6bと並ぶように、一対設けられており、それら弾性係止片6c、6cの間に、前記取付ビス8の先端部分が進入する。詳細には、中空筒部6の外面の、弾性係止片6cが設けられる部分は、周囲よりも若干窪んで形成された窪み部6dとなっており、弾性係止片6cは、その窪み部6dにおいて、フランジ部7に対して離れた側から近づく側に向かって外方へと傾斜して延びている。
【0026】
さらに、中空筒部6の外面には、凸部6eが、中空筒部6の径方向において対向位置する二ヶ所に設けられている。ここで、これら凸部6e、6eの高さは、前記貫通孔1aの内面1dに近接あるいは当接する高さとなっている。
【0027】
フランジ部7は、中空筒部6の一方端において、その全周から円形状に延設されている。そして、このフランジ部7に明けられた前記通孔7aは、取付ビス8の頭部8bがフランジ部7の表面から突出しないように、頭部8bを収容する、座ぐり孔7bを有している。これにより、取付ビス8のビス軸8aだけでなく頭部8bもまた、中空筒部6の内面側に露出しないこととなる。また、この通孔7aは、二つ設けられており、それら通孔7a、7aは、フランジ部7の径方向において対向位置する。したがって、前記一対のリブ6b、6b、案内溝6a、さらには一対の弾性係止片6c、6cもまた、中空筒部6の径方向において対向位置するように二つ(二組)設けられる。
【0028】
この保護部材3とか固定構造4によると、保護部材3をコンクリート壁101(壁1)の貫通孔1aに取り付けるには、中空筒部6を貫通孔1aに挿入し、フランジ部7を貫通孔1aの周端縁1bの壁面1c側に配置する。そして、取付ビス8を、フランジ部7に設けられた通孔7aを通して、中空筒部6と貫通孔1aの内面1dとの間に進入させるとともに、ビス軸8aが貫通孔1aの貫通方向に延びた状態で、その取付ビス8を貫通孔1aの内面1dに螺入させる。
【0029】
こうして、保護部材3は、貫通孔1aに取付固定され、この保護部材3の、特に中空筒部6とフランジ部7との境界部分が、貫通孔1aの周端縁1bを覆い、その周端縁1bから、ケーブル201(通し材2)を保護する。しかも、取付ビス8の頭部8bが座ぐり孔7bに収容されることから、ケーブル201(通し材2)が取付ビス8の頭部8bと接触するのを避けることができる。そして、保護部材3の貫通孔1aへの取り付けにあたっては、取付ビス8を貫通孔1aの内面1dに螺入させるため、壁厚(壁1の厚さ)に左右されることなく取り付けることができ、しかも、強固に固定することができる。
【0030】
ところで、保護部材3の中空筒部6を貫通孔1aに挿入したときに、弾性係止片6cが貫通孔1aの内面1dに係合して、この保護部材3は、貫通孔1aに仮止めされる。したがって、その後の、取付ビス8による貫通孔1aへの保護部材3の固定作業を容易に行うことができる。また、取付ビス8は、そのビス軸8aが案内溝6aによって、中空筒部6の軸方向に案内されるため、取付ビス8を貫通孔1aの内面1dに的確に螺入させることができる。
【0031】
また、配線構造5によると、保護部材3が、建物のコンクリート壁101の貫通孔1aに取付固定され、その保護部材3の、特に中空筒部6とフランジ部7との境界部分が、貫通孔1aの周端縁1bを覆い、その周端縁1bから、ケーブル201を保護する。つまり、保護部材3を建物のコンクリート壁101の貫通孔1aに取付固定することで、その貫通孔1aを通るケーブル201を的確に保護することができる。
【0032】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、貫通孔1aの内面1dには、コンクリート壁101のコンクリートが露出していなくとも、図8に示すように、貫通孔1aは、コンクリート壁101に埋設された塩ビ管(塩化ビニル樹脂管)等の平滑管10によって形成されて、その平滑管10の内面が、前記取付ビス8が螺入する、貫通孔1aの内面1dとなってもよい。
【0033】
また、壁1は、コンクリート壁101でなくとも、その他の材料を用いた壁であってもよい。さらに、壁1は、建物の壁でなくとも、建造物とか構築物等の壁であってもよい。また、通し材2は、ケーブル201でなくとも、配管材等であってもよい。
【0034】
また、中空筒部6の外面には、案内溝6aとか弾性係止片6cが設けられているが、これら案内溝6aと弾性係止片6cの一方あるいは両方は、無くともよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の一実施の形態の、縦断面図である。
【図2】同じく、図1における要部拡大断面図である。
【図3】同じく、図2におけるA−A線による部分拡大断面図である。
【図4】同じく、保護部材の正面図である。
【図5】同じく、図4におけるB矢視図である。
【図6】同じく、図4におけるC矢視図である。
【図7】同じく、保護部材の斜視図である。
【図8】この発明の他の実施の形態の、図2相当図である。
【図9】従来の保護部材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 壁
101 コンクリート壁
1a 貫通孔
1b 周端縁
1c 壁面
1d 内面
2 通し材
201 ケーブル
3 保護部材
4 固定構造
5 配線構造
6 中空筒部
6a 案内溝
6c 弾性係止片
7 フランジ部
7a 通孔
7b 座ぐり孔
8 取付ビス
8a ビス軸
8b 頭部
9 壁表
10 平滑管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の貫通孔に取り付けられてその貫通孔を通る通し材を前記貫通孔の周端縁から保護する、保護部材であって、
前記貫通孔に嵌められる中空筒部と、その中空筒部から延設されて前記貫通孔の周端縁の壁面側に配置されるフランジ部とを備え、
前記フランジ部には、前記中空筒部と前記貫通孔の内面との間に進入して前記貫通孔の内面に螺入する取付ビスが通るための、通孔が設けられていることを特徴とする、通し材の保護部材。
【請求項2】
前記中空筒部の外面には、前記取付ビスのビス軸を案内する案内溝が、前記中空筒部の軸方向に沿って設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の、通し材の保護部材。
【請求項3】
前記通孔は、前記取付ビスの頭部が前記フランジ部の表面から突出しないように、前記頭部を収容する、座ぐり孔を有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の、通し材の保護部材。
【請求項4】
前記中空筒部の外面には、外方に延設されて前記貫通孔の内面に弾性的に係合する、バネ性を備えた弾性係止片が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の、通し材の保護部材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の保護部材の、固定構造であって、
壁の貫通孔に前記中空筒部が挿入されるとともに、前記貫通孔の周端縁の壁面側に前記フランジ部が配置されて、取付ビスが、前記通孔を通って前記中空筒部と前記貫通孔の内面との間に進入して前記貫通孔の内面に螺入することにより、前記保護部材が前記貫通孔の開口部に取付固定されていることを特徴とする、保護部材の固定構造。
【請求項6】
前記壁は、コンクリート壁であって、
前記貫通孔は、前記コンクリート壁に埋設された平滑管によって形成されて、その平滑管の内面が、前記取付ビスが螺入する、前記貫通孔の内面となることを特徴とする、請求項5に記載の、保護部材の固定構造。
【請求項7】
中空筒部とその中空筒部から延設されたフランジ部とを備える保護部材が、前記中空筒部が建物のコンクリート壁の貫通孔に嵌められるとともに前記フランジ部が前記貫通孔の周端縁の壁面側に配置された状態で、前記貫通孔に取付固定され、
前記貫通孔内に配線されたケーブルが、前記貫通孔の周端縁から保護されるように、前記中空筒部内を通って壁表へと引き出されていることを特徴とする、ケーブルの配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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