説明

通信システム、送信機および受信機

【課題】同一の周波数により変調信号を生成する複数ユーザを多重可能であって、各ユーザの信号のPAPRの増加防止可能な通信システムを得ること。
【解決手段】送信機100−1、2、3、…は、時間と共に周波数の変化する位相回転系列の周波数変化速度を決定するパラメータを記憶するパラメータ記憶部と、前記パラメータに基づいて位相回転系列を生成する位相回転系列生成部と、変調信号に対して前記位相回転系列を乗算し、送信信号を得るChirp部と、を備え、受信機200は、送信機100−1、2、3、…で用いられるパラメータを記憶するパラメータ記憶部と、所望の送信機に対応するパラメータに基づいて、位相回転系列の逆数を生成する位相回転系列逆数生成部と、受信信号に対して前記位相回転系列の逆数を乗算し、所望の送信機からの信号を得るdechirp部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数ユーザの信号を多重可能な通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信システムにて用いられる変調方式には、PSK(Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、APSK(Amplitude Phase Shift Keying)、FSK(Frequency Shift Keying)などがある。このうち、FSKには、つぎのような利点がある。
【0003】
(a)PSK、QAM、APSKでは、信号の平均電力とピーク電力の比を表すピーク電力対平均電力比(PAPR:Peak-to-Average Power Ratio)が大きいため、非線形増幅器による歪みの影響が大きくなり、特性が劣化する問題がある。そのため、信号のPAPRをできるだけ小さくする必要がある。一方、FSKでは、PAPRを0dBとすることが可能であり、高効率な通信を行うことが可能である。
【0004】
(b)いずれの変調方式においても、変調多値数を大きくするほど1シンボル当たりの送信ビット数が増加し、送信レートを大きくすることができる利点がある。しかし、PSK、QAM、APSKでは、変調多値数を大きくするほど感度が悪くなる。すなわち、所要BER(Bit Error Ratio)を満たすEb/N0が大きくなる欠点がある。一方、FSKでは、変調多値数を大きくするほど感度が良くなる。すなわち、所要BERを満たすEb/N0が小さくなる。このように、FSKでは、変調多値数を大きくすることで送信レートが大きくなり、かつ、感度が良くなるという2つの利点を同時に享受できる。
【0005】
変調多値数がMのM値FSKの場合では、M本の搬送波を使用する。よって、FSKには、変調多値数が大きいほど1ユーザ当たりの周波数帯域が広がり、その分、周波数方向に多重できるユーザ数が少なくなる問題がある。FSKの利点(b)を活かすには変調多値数は大きいことが望ましいが、それにより多重ユーザ数が減少することは問題であり、他の多重方法を考える必要がある。
【0006】
ここで、同一時間、同一周波数により通信を行う複数ユーザを多重する技術としてCDMA(Code Division Multiple Access)方式がある(例えば下記非特許文献1)。このような多重方法を用いることにより、複数ユーザが同一周波数により通信を行うため、多重ユーザ数を増やしても帯域が広がらず、上記問題点を解消できると考えられる。
【0007】
また、下記非特許文献2では、FSK信号を位相回転系列により拡散して送信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】武田和晃、安達文幸著 「パイロットチャネル推定を用いるDS−CDMA周波数領域等化の誤り率特性」 電子情報通信学会技術研究報告、無線通信システムRCS2004−86、pp.61−65、2004年6月
【非特許文献2】佐野裕康、福井範行、久保博嗣著 「周波数軸上で逆拡散・復調が可能な直接スペクトル拡散方式に関する検討」 2009年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会、B−5−82
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のCDMA方式の技術によれば、ユーザ毎に異なる拡散符号を用いてユーザ多重を行うが、PN系列やM系列により送信信号を拡散する。そのため、信号のPAPRが大きくなり、FSKの場合に上記の利点(a)を活かせない、という問題があった。
【0010】
また、上記非特許文献1の技術によれば、PN系列やM系列ではなく位相回転系列により送信信号を拡散しているため、拡散によりPAPRは大きくならないが、ユーザ多重を行うことは検討されていない、という問題があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、同一の周波数により変調信号を生成する複数ユーザを多重可能であり、かつ、各ユーザの信号のPAPRの増加を防止可能な通信システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数の送信機と受信機から構成される通信システムであって、前記送信機は、時間と共に周波数の変化する位相回転系列の周波数変化速度を決定するパラメータを記憶する送信機パラメータ記憶手段と、前記パラメータに基づいて位相回転系列を生成する位相回転系列生成手段と、変調信号に対して前記位相回転系列を乗算し、送信信号を得る位相回転系列乗算手段と、を備え、前記複数の送信機の各送信機パラメータ記憶手段が、それぞれ異なる値のパラメータを記憶し、前記受信機は、前記複数の送信機で用いられるパラメータを記憶する受信機パラメータ記憶手段と、所望の送信機に対応するパラメータに基づいて、位相回転系列の逆数を生成する位相回転系列逆数生成手段と、受信信号に対して前記位相回転系列の逆数を乗算し、所望の送信機からの信号を得る位相回転系列逆数乗算手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、同一の周波数により変調信号を生成する複数ユーザを多重可能であり、また、各ユーザの信号のPAPRの増加を防止できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、送信機の構成例を示す図である。
【図3】図3は、システム帯域内の搬送波を示す図である。
【図4】図4は、変調信号が拡散されるイメージを示す図である。
【図5】図5は、送信データとCPの関係を示す図である。
【図6】図6は、位相回転系列の周波数を示す図である。
【図7】図7は、rateが負の場合の位相回転系列の周波数を示す図である。
【図8】図8は、受信機の構成例を示す図である。
【図9】図9は、逆離散フーリエ変換部より出力される受信信号を示す図である。
【図10】図10は、送信機の変調部における逆離散フーリエ変換処理を示す図である。
【図11】図11は、受信機の復調部における離散フーリエ変換処理を示す図である。
【図12】図12は、無線通信システムの構成例を示す図である。
【図13】図13は、送信機の構成例を示す図である。
【図14】図14は、位相回転系列の周波数を示す図である。
【図15】図15は、rate=4、Novs=4の場合の位相回転系列の周波数を示す図である。
【図16】図16は、長さN/4の位相回転系列を示す図である。
【図17】図17は、長さNの位相回転系列を示す図である。
【図18】図18は、変調の際に最も低周波側の搬送波を用いた場合の位相回転系列乗算後の信号を示す図である。
【図19】図19は、変調の際に最も高周波側の搬送波を用いた場合の位相回転系列乗算後の信号を示す図である。
【図20】図20は、システム帯域内の搬送波と位相回転系列乗算後の信号を示す図である。
【図21】図21は、位相回転系列の周波数変化の例を示す図である。
【図22】図22は、位相回転系列生成部での位相回転系列の生成処理を示すフローチャートである。
【図23】図23は、rate>0の場合でidx=pでステップS104:Noとなる場合の周波数を示す図である。
【図24】図24は、rate=2、4の場合の位相回転系列の周波数を示す図である。
【図25】図25は、rate<0の場合の例として、rate=−2の場合の位相回転系列の周波数を示す図である。
【図26】図26は、位相および周波数が常に連続となる位相回転系列の周波数変化の例を示す図である。
【図27】図27は、位相回転系列生成部での位相回転系列の生成処理を示すフローチャートを示す図である。
【図28】図28は、|rate|=3、4の場合の位相回転系列の周波数を示す図である。
【図29】図29は、|rate|=4の場合の位相回転系列の周波数を示す図である。
【図30】図30は、位相回転系列の周波数を正弦波状に変化させた図である。
【図31】図31は、Rate=3、4の場合の位相回転系列の周波数を示す図である。
【図32】図32は、電力の大きい周波数が繰り返し存在するスペクトルを模式的に表した図である。
【図33】図33は、実施の形態2における位相回転系列の周波数を示す図である。
【図34】図34は、実施の形態3における位相回転系列の周波数を示す図である。
【図35】図35は、実施の形態2の位相回転系列でrate>0として|rate|を変化させるようにした場合の位相回転系列の周波数を示す図である。
【図36】図36は、実施の形態3の位相回転系列で|rate|を変化させるようにした場合の位相回転系列の周波数を示す図である。
【図37】図37は、実施の形態1、2の位相回転系列のように絶対値が同じだが異なる正負のrateを異なるユーザが使用可能な場合の表を示す図である。
【図38】図38は、実施の形態3、4の位相回転系列のように絶対値が同じだが異なる正負のrateを異なるユーザに割り当てることができない場合の表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる通信システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態の無線通信システムの構成例を示す図である。無線通信システムは、送信機100−1、100−2、100−3、…と、受信機200と、から構成される。以降の説明において、送信機のことをユーザとも呼ぶことがある。具体的に、送信機100−m(m=1、2、3、…)、受信機200のそれぞれについて説明する。なお、本実施の形態では、無線通信システムを用いて説明するが、有線通信についても適用可能である。
【0017】
図2は、本実施の形態の送信機100−mの構成例を示す図である。送信機100−mは、変調部101と、位相回転系列生成部102と、chirp部103と、CP(Cyclic Prefix)付加部104と、周波数変換部105と、増幅器106と、アンテナ107と、パラメータ記憶部108と、を備える。
【0018】
まず、送信機100−mでは、変調部101が、情報データに応じた長さNの変調信号s(n)を生成する。使用する変調方式は特に限定せず、FSK、PSK、QAM、APSKなど、どのような方式であってもよい。また変調方式、及び変調多値数はユーザ毎に同じであってもよいし、異なっていてもよい。図3は、システム帯域内の搬送波を示す図である。図3のようにシステム帯域内に複数の搬送波が存在し、変調方式としてM値FSKを用いる場合には、M個の搬送波が送信機100−mに割り当てられる。PSK、QAM、APSKなどを用いる場合には、搬送波が1個割り当てられる。送信機100−mは、割り当てられた搬送波を用いて変調信号を生成する。このとき、割り当てられる搬送波は、送信機毎に異なっていてもよいし、同じであってもよい。どちらの場合であっても、後述する本実施の形態のユーザ多重方法を用いることにより、異なるユーザの信号を多重可能となる。
【0019】
一方、位相回転系列生成部102は、パラメータ記憶部108に保持されているパラメータ(後述のrate)を用いて位相回転系列c(n)を生成する。位相回転系列c(n)は電力が一定、つまり|c(n)|2がn(0≦n<N)によらず一定であり、なおかつ時間と共に周波数の変化する系列を用いる。なお、|x|はxの絶対値を意味する。
【0020】
chirp部103は、位相回転系列乗算手段であり、下記の式(1)に示すように変調信号s(n)に位相回転系列c(n)を乗算し、送信信号x(n)を得る。
【0021】
【数1】

【0022】
図4は、変調信号が拡散されるイメージを示す図である。変調信号s(n)は1個の搬送波であるが、時間と共に周波数の変化する位相回転系列c(n)を乗算することで、変調信号もまた、時間と共に周波数の変化する信号に変換される。その結果、位相回転系列c(n)乗算後の信号x(n)は、図4に示すように帯域全体に広がった信号となる。
【0023】
つぎに、CP付加部104が、拡散後の信号にCPを付加する。図5は、送信データとCPの関係を示す図である。図5に示すように、長さNの送信データの先頭に長さNcpのCPを付加する。CPには、長さNの送信信号の後のNcpシンボルをコピーしたものを用いる。このようにして作成される長さN+Ncpの信号をブロックと呼ぶ。
【0024】
CP付加部104にてCPを付加された信号に対して、周波数変換部105が、周波数変換し、増幅器106が、周波数変換後の信号を増幅する。そして、アンテナ107が、増幅器106からの信号を入力し、信号を送信する。
【0025】
ここで、位相回転系列c(n)は電力が一定の系列であるため、変調信号s(n)に位相回転系列c(n)を乗算しても、そのPAPRは変化しない。すなわち、CDMA方式のように、拡散によりPAPRが増加するような問題を防ぐことができる。また、特に変調方式にFSKを用いる場合は、送信信号のPAPRを0dBとすることが可能である。
【0026】
つぎに、ユーザ多重方法について説明する。位相回転系列c(n)の周波数の変化の速度がユーザ毎に異なるようにしておけば、位相回転系列c(n)乗算後の送信信号x(n)もまた、ユーザ毎に周波数の変化の速度が異なるようにできる。そのようにすることで、受信機200において、各ユーザの信号を分離可能となる。つまり、複数の送信機(ユーザ)からの送信信号x(n)を対象としてユーザ多重を行うには、ユーザ毎に異なる位相回転系列c(n)を用いるようにすればよい。
【0027】
例えば、以下の式(2)のような位相回転系列c(n)を用いることを考える。なお、式(2)は一例であり、電力が一定であり、時間と共に周波数が変化する位相回転系列c(n)であれば、他のどのようなものであってもよい。
【0028】
【数2】

【0029】
ここで、jは虚数単位、NはCPを除くブロック長であり、位相回転系列の系列長となる。また、rateは位相回転系列c(n)の周波数が変化する速度を決定するパラメータであり、パラメータ記憶部108に保持されている。|rate|が大きいほど、その位相回転系列c(n)の周波数が変化する速さが速いことになる。ユーザ毎に異なるrateを用いて位相回転系列c(n)を作成すれば、ユーザ毎に異なる位相回転系列c(n)を生成することが可能である。そのため、rateの値は送信機100−mと受信機200との間で予め決定され、各送信機100−mは自身が用いるrateの値をパラメータ記憶部108に保持しておく。
【0030】
rateは0<|rate|<Nを満たす実数とする。正の数であっても負の数であってもよいが、受信機200で各ユーザの信号を分離する際にユーザ間干渉を小さくするため、rateは整数としておくことが望ましい。
【0031】
図6は、式(2)に示す位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。図6において、横軸は時間を、縦軸は周波数f(n)を表しており、rate=2、3の場合の例を示している。rate>0の場合、nが増加するにつれ周波数f(n)も増加する。ただし、周波数f(n)が1/2Tsに達すると、周波数はf(n)=−1/2Tsに折り返し、再び増加し始める。ここで、送信信号は離散時間信号であり、その時間間隔をTsとしている。このとき、サンプリング定理により、周波数f(n)は−1/2Ts〜1/2Tsの間でしか表現できない。そのため、このような周波数f(n)の折り返しが発生する。
【0032】
図7は、rateが負の数の場合の位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。rateが負の数の場合の例として、rate=−3の場合を示す。rate<0の場合、nが増加するにつれ周波数f(n)は減少する。ただし、f(n)が−1/2Tsに達すると、周波数はf(n)=1/2Tsに折り返し、再び減少し始める。
【0033】
前述のように、rateは周波数f(n)の変化速度を表すが、図6、7よりnを0〜Nで変化させることで、位相回転系列c(n)の周波数f(n)がちょうど|rate|周していることが分かる。また、図6から、異なるrateを用いれば周波数f(n)の変化の速度が異なることが分かる。そのため、rateが異なれば、異なる位相回転系列c(n)となる。このような異なる位相回転系列c(n)を各ユーザに割り当てることで、ユーザ多重が可能となる。
【0034】
すなわち、送信機100−1、2、3、…が、それぞれ異なる位相回転系列c(n)を乗算して送信信号x(n)を送信することで、結果的に、送信機100−1、2、3、…側から、受信機200に対して、複数の送信信号x(n)が多重された多重信号を送信しているとみなすことができる。受信機200においては、複数の送信信号x(n)が多重された多重信号を受信しているとみなすことができる。後述するように、受信機200では、複数の送信機100−1、2、3、…からの信号を受信した場合に、各信号に乗算された位相回転系列c(n)が異なることから、所望の送信機で乗算された位相回転系列c(n)を利用して、所望の送信機からの信号を得ることができる。
【0035】
なお、本実施の形態では、絶対値が同じだが正負が異なるrateを異なるユーザに割り当てても、ユーザを多重することが可能である。例えば、ユーザAがrate=3、ユーザBがrate=−3としてもこれらのユーザを多重できる。
【0036】
つづいて、受信機200の動作について説明する。図8は、本実施の形態の受信機200の構成例を示す図である。受信機200は、アンテナ201と、周波数変換部202と、CP除去部203と、離散フーリエ変換部204と、周波数領域等化部205と、逆離散フーリエ変換部206と、位相回転系列逆数生成部207と、dechirp部208と、復調部209と、パラメータ記憶部210と、を備える。
【0037】
アンテナ201で受信した信号に対して、周波数変換部202が、ベースバンド信号に周波数変換する。周波数変換部202の出力はCP除去部203に入力される。CP除去部203では、CPを除去し、長さNの受信ブロックが得られる。
【0038】
本無線通信システムでは、送信機100−mにてCPを付加するようにしているため、伝搬路での歪を補償するために周波数領域等化を実施することが可能となる。よって、受信機200では、CP除去後に周波数領域等化を行う。すなわち、CP除去部203より出力される長さNの受信ブロックに対し、離散フーリエ変換部204が、NポイントDFT(Discrete Fourier Transform)(またはFFT(Fast Fourier Transform))を実施し、周波数領域の信号に変換する。その後、周波数領域等化部205が、周波数領域等化を行い、伝搬路での歪が補償される。そして、逆離散フーリエ変換部206が、NポイントIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)(またはIFFT(Inverse Fast Fourier Transform))を実施し、再度、時間領域の信号に変換する。
【0039】
受信機200では、複数ユーザの信号を1ユーザずつ順次復調していく。図9は、離散フーリエ変換部204より出力される受信信号を示す図である。各ユーザは同一時間、同一周波数で信号を送信するため、受信信号は図9に示すように、複数ユーザの信号が重ね合わされたものとなっている。受信機200では、これらの信号の中から復調しようとしている1ユーザの信号のみを取り出す必要がある。その処理を行うのがdechirp部208である。
【0040】
図9に示す各ユーザの信号は、周波数の変化の速度が互いに異なっている。dechirp部208は、そのことを利用して、復調しようとしているユーザの信号のみを取り出す。まず、位相回転系列逆数生成部207が、復調しようとしているユーザの位相回転系列c(n)の逆数の系列c-1(n)を生成する。位相回転系列逆数c-1(n)は、式(3)のようになる。
【0041】
【数3】

【0042】
なお、パラメータ記憶部210には各ユーザが用いるrateの値が保持されている。位相回転系列逆数生成部207は、この中から、復調しようとしているユーザのrateを選択し、位相回転系列逆数c-1(n)を生成する。
【0043】
そして、位相回転系列逆数乗算手段であるdechirp部208が、位相回転系列逆数c-1(n)を受信信号に乗算し、その結果を復調部209に出力する。逆離散フーリエ変換部206から入力した受信信号をy(n)、復調部209への出力をr(n)とすると、以下の式(4)の演算を行うことになる。
【0044】
【数4】

【0045】
この処理は、受信信号y(n)の中から位相回転系列c(n)と同一の周波数の変化速度をしている成分のみを取り出すことに相当する。すなわち、送信機100−mにて位相回転系列c(n)により送信信号を生成したユーザの信号のみを取り出すことができる。
【0046】
復調部209は、入力された信号の復調処理を行う。
【0047】
ここで、送信機100−mにおける変調部101の変調処理、および受信機200における復調部209の復調処理について補足する。送信機100−mにおける変調信号の生成方法としては様々な方法が考えられるが、1つの方法として、逆離散フーリエ変換を用いる方法が考えられる。図10は、送信機100−mの変調部101における逆離散フーリエ変換処理を示す図である。このようなポイント数Nの逆離散フーリエ変換により、変調信号を生成する。
【0048】
M値FSKにより変調する場合は、そのユーザに対し、NポイントのうちのMポイントが割り当てられており、送信するデータに応じてMポイントのうちのいずれか1つを非0の値とする。そして、残りのN−1ポイントを全て0として、逆離散フーリエ変換を行い、変調信号を生成する。
【0049】
PSK、QAM、APSKなどにより変調する場合は、そのユーザに対し、Nポイントのうちの1ポイントが割り当てられている。他のN−1ポイントは全て0とし、割り当てられた1ポイントは変調シンボルの値とする。そして、逆離散フーリエ変換を行い、変調信号を生成する。
【0050】
一方、受信機200の復調部209では、離散フーリエ変換により復調を行う。図11は、受信機200の復調部209における離散フーリエ変換処理を示す図である。dechirp部208からの長さNの出力信号に対し、Nポイント離散フーリエ変換を行う。
【0051】
送信機100−mにてM値FSKにより変調を行った場合は、そのユーザに割り当てられたMポイントの中から、最も送信された可能性の高い1ポイントを選択し、復調処理を行う。1ポイントの選択方法としては、実部の大きさが最も大きいものを選択する方法、或いは電力の大きさが最も大きいものを選択する方法が考えられる。
【0052】
送信機100−mにてPSK、QAM、APSKなどにより変調を行った場合は、そのユーザに割り当てられた1ポイントの値を用いて復調処理を行う。
【0053】
なお、以上の説明は図1のように1個の受信機200が複数のユーザである送信機100−mから各々異なる信号を受信する場合である。一方、本実施の形態のユーザ多重方法は、1個の送信機が複数の受信機(ユーザ)に対し、各々異なる信号を送信する場合にも適用可能である。図12は、1個の送信機および複数の受信機(ユーザ)からなる無線通信システムの構成例を示す図である。無線通信システムは、送信機300と、受信機200−1、200−2、200−3、…と、から構成される。図12において送信機300は、複数ユーザに対し異なる信号を多重して送信する。この構成の場合は、受信機200−k(k=1、2、3、…、Nu)のことをユーザと呼ぶことがある。
【0054】
この場合、送信機300が、各ユーザ向けの送信信号を生成し、多重後に送信する。図13は、送信機300の構成例を示す図である。最大Nu個のユーザ向けの信号の多重を行う送信機300について説明する。送信機300は、変調部301−1〜Nuと、位相回転系列生成部302−1〜Nuと、chirp部303−1〜Nuと、CP付加部304−1〜Nuと、周波数変換部305と、増幅器306と、アンテナ307と、パラメータ記憶部308−1〜Nuと、多重化部309と、を備える。
【0055】
図2の送信機100−mの構成と比較すると、図13の送信機300の構成では変調部からCP付加部までがユーザ数分(Nu個)あり、各々のユーザ向けの信号を個別に生成する。このとき、各ユーザは異なるrateを用いるため、各パラメータ記憶部308−1〜Nuには、各々のユーザが使用するrateの値が保持されている。
【0056】
各々のユーザ向けの信号は、多重化部309が多重し、その後、周波数変換部305、増幅器306を経てアンテナ307より送信される。
【0057】
一方、受信機200−kの構成は図8と同様である。ただし、図1の無線通信システムの場合、受信機200は複数の送信機100−mからの受信データを順次復調していく必要があった。そして、そのためにパラメータ記憶部210では全てのユーザのrateの値を保持していた。しかし、図12の無線通信システムの場合、受信機200−kは自身に向けられたデータのみを復調すればよい。よって、受信機200−kのパラメータ記憶部210では、自身が用いるrateの値のみを保持していればよい。
【0058】
このようにして、1個の送信機300が複数のユーザである受信機200−kに対し、各々異なる信号を送信する場合にも、ユーザ毎にrateの値を異なるようにすることで、ユーザ多重を行うことが可能である。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態では、送信機において、変調信号に対し、時間と共に周波数が変化する位相回転系列を乗算し、各ユーザの送信信号を時間と共に周波数の変化する信号とし、その周波数の変化の速度をユーザ毎に異なるようにすることで、各ユーザの信号を同一時間、同一周波数で送信する場合であっても、多重された状態として送信することが可能となる。また、受信機では、受信信号に対して所望の送信機で用いられた位相回転系列の逆数を乗算することで、所望の信号を得ることができる。これにより、送信機および受信機から構成される通信システムにおいて、各ユーザの信号を同一時間、同一周波数で送受信することが可能となる。また、信号のPAPRの増加を防止することが可能であり、特にFSKを用いる場合にはPAPRを0dBとすることが可能である。
【0060】
実施の形態2.
本実施の形態では、位相回転系列c(n)の生成方法が実施の形態1と異なる。そこで、以下に送信機での位相回転系列c(n)の生成方法を説明する。受信機での位相回転系列逆数c-1(n)は位相回転系列c(n)の逆数の系列であるため、「c-1(n)=1/c(n)」と求めることが可能である。なお、図1に示す1個の受信機が複数の送信機(ユーザ)から各々異なる信号を受信するシステムに基づいて説明するが、実施の形態1と同様、図12に示す1個の送信機が複数の受信機(ユーザ)に対し、各々異なる信号を送信するシステムにおいても適用可能である。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0061】
実施の形態1で述べた位相回転系列c(n)には、つぎのような問題がある。位相回転系列c(n)は離散信号であり、前述の通りサンプリング定理により表現できる周波数帯域に制限があるため、周波数f(n)=1/2Ts、または−1/2Tsで周波数f(n)の折り返しが発生する。例えば、rate=4の場合、位相回転系列c(n)の周波数f(n)は図14のようになる。図14は、位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。オーバーサンプリングを行っていない状態を示すものであり、周波数f(n)=1/2Tsで周波数f(n)の折り返しが発生する。
【0062】
一般に、送信機では送信信号に対しオーバーサンプリングを行う。時間間隔Tsの離散信号をNovs(>1)倍オーバーサンプリングすることで、時間間隔Ts/Novsの離散信号となる。このとき、サンプリング定理により表現できる周波数帯域はNovs倍に広がる。その結果、f(n)=1/2Tsで周波数f(n)の折り返しは発生せず、周波数f(n)=1/2Ts×Novsでようやく発生するようになる。図15は、rate=4、Novs=4の場合の位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。この結果、送信信号の帯域がNovs倍に広がる問題がある。具体的に、図15では「1/2Ts×4=2Ts」より、2Tsで周波数f(n)の折り返しが発生する。
【0063】
フィルタにより帯域外電力を除去することは可能であるが、その場合、信号の時間波形が大きく変化し、PAPRが大きくなる問題がある。
【0064】
そこで本実施の形態では、サンプリング定理により決まる周波数帯域に依存せず、数式上で強制的に周波数f(n)が折り返すように位相回転系列c(n)を作成する。すなわち、位相回転系列生成部102は、周波数f(n)が変化する一周期内では、周波数f(n)が連続した値をとりながら変化する位相回転系列c(n)を生成する。以降で、このような位相回転系列c(n)の生成方法を説明する。なお、これは一例であり、電力が一定であり時間と共に周波数f(n)の変化する位相回転系列c(n)であって、数式上で強制的に周波数f(n)が折り返すようなものであれば、他のどのようなものであってもよい。
【0065】
簡単のため、rate=4とし、Nが4の倍数の場合を例として説明する。図16は、長さN/4の位相回転系列c(n)を示す図である。また、図17は、長さNの位相回転系列c(n)を示す図である。図16のような長さN/4の位相回転系列c(n)を図17のように5個つなぎ合わせることで、長さNの位相回転系列c(n)を作成する。ただし、1個目と5個目の点線部分は使用しない。
【0066】
図16の位相回転系列をcori(n)とし、その位相をθori(n)、周波数をfori(n)とする。このとき、周波数fori(n)は図16より式(5)で表される。
【0067】
【数5】

【0068】
ここで、虚数単位をj、離散時間信号の時間間隔をTsとし、位相回転系列c(n)の位相をθ(n)、各周波数をω(n)、周波数をf(n)とすると、これらの間には以下の式(6)の関係が成り立つ。
【0069】
【数6】

【0070】
式(6)より、周波数fori(n)×2πTsをnで積分することで位相θori(n)が得られ、それを用いて位相回転系列cori(n)を表現できる。以上より、位相回転系列cori(n)は次式(7)で表される。
【0071】
【数7】

【0072】
この位相回転系列cori(n)を時間方向に5個つなぎ合わせた図17の位相回転系列c(n)は次式で表される。
【0073】
【数8】

【0074】
ただし、図17に点線で示した位相θ1(n)(−N/8≦n<0)、位相θ5(n)(N≦n<9N/8)の部分については使用しない。
【0075】
ここで、位相回転系列cori(n)をつなぎ合わせる際、その継ぎ目で位相θ(n)が不連続であり、スペクトルが広がり、帯域外電力が増加する原因となる。そこで、継ぎ目で位相θ(n)を連続とすべく、以下のように位相回転系列c(n)を作成する。なお、周波数f(n)は式(8)と同様である。
【0076】
【数9】

【0077】
このようにして、オーバーサンプリングするか否かに関わらず、周波数f(n)が−1/2Ts〜1/2Tsの間で変化する位相回転系列c(n)を作成できる。しかしながら、つぎの問題が生じる。
【0078】
変調信号に上記の位相回転系列c(n)を乗算すると、変調信号はその搬送波を中心として高周波側に0〜1/2Ts、低周波側に0〜1/2Tsの範囲で周波数が変化する。図18は、変調の際に最も低周波側の搬送波を用いた場合の位相回転系列c(n)乗算後の信号を示す図である。また、図19は、変調の際に最も高周波側の搬送波を用いた場合の位相回転系列c(n)乗算後の信号を示す図である。実施の形態1(図4参照)と比較して、使用する搬送波により、信号の周波数が変化する範囲が異なる。その結果、位相回転系列c(n)乗算後の信号はシステム帯域以外にも広がってしまい、問題となる。すなわち、図9に示すように、各ユーザの信号を同一周波数帯に重ねることができない。
【0079】
そこで、使用する搬送波に応じて周波数f(n)の変化する範囲が異なる位相回転系列c(n)を用いることを考える。図20は、システム帯域内の搬送波と位相回転系列c(n)乗算後の信号を示す図である。図20(a)のようにシステム帯域内にN個の搬送波があり、低周波側から順に、#0、#1、…、#N−1とインデックスを付ける。PSK、又はQAMにより変調する場合はN個の搬送波のうちの1個を用いることになり、そのインデックス番号をiとする。M値FSKにより変調する場合はN個の搬送波のうちのM個を用いることになり、そのM個のうちの真ん中の搬送波のインデックス番号をiとする。iの値に応じて周波数の変化する範囲が異なる位相回転系列c(n)を用いるようにする。
【0080】
これまでの位相回転系列c(n)は、周波数f(n)が−1/2Ts〜1/2Tsの範囲で変化するものであったが、「(((N−i)/N)−1)・1/Ts〜((N−i)/N)・1/Ts」の範囲で変化する位相回転系列c(n)を用いるようにする。図21は、この様な範囲で変化する位相回転系列c(n)の周波数f(n)の変化の例を示す図である。これまでは、高周波側、低周波側に1/2Tsずつ均等に周波数f(n)が変化していたが、図21では高周波側への変化量と、低周波側への変化量が異なっている。iが大きい場合ほど、すなわち、変調に使用する搬送波の周波数が大きい場合ほど、使用する位相回転系列c(n)の周波数f(n)の高周波側への変化量は少なくなり、低周波側への変化量は多くなる。このような位相回転系列c(n)を用いることで、N個のうちのいずれの搬送波を用いる場合であっても、位相回転系列c(n)乗算後の信号は図20(b)のようになる。つまり、使用する搬送波によらず信号の周波数f(n)が変化する範囲が同一となる。その結果、位相回転系列c(n)乗算後の信号がシステム帯域以外に広がる問題が解消される。
【0081】
ここで、M値FSKの場合、M個のうちの真ん中の搬送波のインデックス番号により、位相回転系列c(n)の周波数f(n)が変化する範囲を決定していることに注意する。すなわち、M個のうちのどの搬送波を用いるかによって、位相回転系列c(n)を変えるようなことはしない。そのようなことをすれば、受信側で復調できなくなるためである。
【0082】
このような「(((N−i)/N)−1)・1/Ts〜((N−i)/N)・1/Ts」の範囲で周波数fori(n)が変化する位相回転系列cori(n)の作り方をrate=4の場合を例に考える。これは、−1/2Ts〜1/2Tsの範囲で周波数fori(n)が変化する位相回転系列cori(n)を周波数軸方向に「((N−i)/N)・1/Ts−1/2・1/Ts」だけシフトしたものである。このような位相回転系列cori(n)の周波数fori(n)は、式(5)のfori(n)を周波数軸方向に「((N−i)/N)・1/Ts−1/2・1/Ts」だけシフトすることで求めることができる。そして式(6)の関係性を用いると、2πTs×fori(n)をnで積分することで、位相θori(n)が求まる。以上より、「(((N−i)/N)−1)・1/Ts〜((N−i)/N)・1/Ts」の範囲で周波数fori(n)が変化する位相回転系列cori(n)は、以下の式(10)で表すことができる。
【0083】
【数10】

【0084】
これを式(9)により時間方向につなぎ合わせることで、系列長Nの位相回転系列c(n)が得られる。
【0085】
ここで、rateが4以外の場合にも一般化し、位相回転系列生成部102での位相回転系列c(n)の生成処理について説明する。図22は、位相回転系列生成部102での位相回転系列c(n)の生成処理を示すフローチャートである。Nは系列長、nは作成済の系列数を示す。
【0086】
まず、位相回転系列生成部102では、使用する各変数を初期化する(ステップS101)。ここで、idx_iniはidxの初期値であり、0≦idx_ini<|N/rate|である。
【0087】
つぎに、位相回転系列生成部102は、以下の式(11)により、f、θを計算する(ステップS102)。
【0088】
【数11】

【0089】
rate>0の場合の式は、式(10)をrate=4以外の場合にも一般化し、nをidxと置き換えたものとなる。rate<0の場合についてもrate>0の場合と同様の考え方で式を作成可能であり、上式のようになる。
【0090】
つぎに、位相回転系列生成部102は、位相θにθoffを加算する(ステップS103)。このθoffは位相θを常に連続とするために必要なものである。
【0091】
つぎに、位相回転系列生成部102は、周波数fが適切な範囲にあるかをチェックする(ステップS104)。つまり、下記の式(12)を満たすかどうかを確認する。
【0092】
【数12】

【0093】
周波数fが適切な範囲である場合(ステップS104:Yes)、位相回転系列生成部102は、位相回転系列c(n)=exp(jθ)により位相回転系列c(n)を求める。そしてつぎの位相θ、周波数fを求めるためにidx、nの値を更新する(ステップS105)。位相回転系列c(n)をオーバーサンプリングせずに求める場合はΔ=1である。Novs倍オーバーサンプリングして作る場合は、Δ=1/Novsとする。
【0094】
つぎに、位相回転系列生成部102は、n<Nを満たす場合(ステップS106:Yes)、以降、上記ステップS101〜S105までの処理を繰り返す。n<Nを満たさない場合(ステップS106:No)、系列長Nの位相回転系列c(n)を作り終えたことになるため、処理を終了する。
【0095】
なお、ステップS104において、周波数fが適切な範囲にない場合(ステップS104:No)、位相回転系列生成部102は、idxを0に初期化し、またθoffをそのときの位相θの値に更新する(ステップS107)。そして再度周波数f、位相θを作成しなおす。
【0096】
図23は、rate>0の場合でidx=pでステップS104:Noとなる場合の周波数f(n)を示す図である。idx=p(※)で「f>(((N−1)/N)−1)・1/Ts」となるため、idx=0とリセットし、位相回転系列c(n)を引き続き作成していく。このとき、idx=p(※)での位相θをθoffとすることで、idxをリセット後も位相θを連続とすることができる。
【0097】
以上が本実施の形態における位相回転系列c(n)の作り方である。この場合も実施の形態1と同様にユーザ毎に異なるrateにより位相回転系列c(n)を生成すればユーザ多重が可能となる。図24は、rate=2、4の場合の位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。このようにrateが異なれば位相回転系列c(n)の周波数f(n)の変化の速度が異なるため、ユーザ多重が可能となる。また、図25は、rate<0の場合の例として、rate=−2の場合の位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。nが増加するにつれ周波数f(n)は減少する場合にも、位相θを連続とすることができる。
【0098】
なお、本実施の形態では、実施の形態1と同様に、絶対値が同じだが正負が異なるrateを異なるユーザに割り当てても、ユーザを多重することが可能である。例えば、ユーザAがrate=3、ユーザBがrate=−3としてもこれらのユーザを多重できる。
【0099】
以上説明したように、本実施の形態では、位相回転系列の位相を常に連続となるようにした。これにより、実施の形態1の効果に加え、さらに、オーバーサンプリングを行った場合においても、帯域が広がらないような送信信号を生成することができる。また、変調信号生成に使用する搬送波に関わらず、送信信号の帯域を同一とすることができる。
【0100】
実施の形態3.
本実施の形態では、位相回転系列c(n)の生成方法が実施の形態2と異なる。そこで、以下に送信機での位相回転系列c(n)の生成方法を説明する。図1に示す1個の受信機が複数の送信機(ユーザ)から各々異なる信号を受信するシステムに基づいて説明するが、実施の形態2と同様、図12に示す1個の送信機が複数の受信機(ユーザ)に対し、各々異なる信号を送信するシステムにおいても適用可能である。実施の形態2と異なる部分について説明する。
【0101】
実施の形態2の位相回転系列c(n)では、位相θ(n)は常に連続となるが、周波数f(n)は折り返す点で不連続となる。すなわち、rate>0の場合は、周波数f(n)が「((N−i)/N)・1/Ts」から「(((N−i)/N)−1)・1/Ts」に変化し、rate<0の場合は、周波数f(n)が「(((N−i)/N)−1)・1/Ts」から「((N−i)/N)・1/Ts」に変化する。これは、スペクトルが広がり、帯域外電力が増加する原因となる。
【0102】
フィルタにより帯域外電力を除去することは可能であるが、その場合、信号の時間波形が大きく変化し、PAPRが大きくなる問題がある。
【0103】
そこで本実施の形態では、位相θ(n)のみならず、周波数f(n)も常に連続となるように位相回転系列c(n)を作成する。すなわち、位相回転系列生成部102は、複数の周期に渡って位相回転系列c(n)の周波数f(n)が変化する場合に、周波数f(n)および位相θ(n)が連続した値をとりながら変化する位相回転系列c(n)を生成する。以降で、そのような位相回転系列c(n)の生成方法を説明する。なお、これは一例であり、電力が一定であり時間と共に周波数f(n)の変化する位相回転系列c(n)であって、系列の位相θ(n)、周波数f(n)が常に連続となっているものであれば、他のどのようなものであってもよい。
【0104】
図26は、位相θ(n)および周波数f(n)が常に連続となる位相回転系列c(n)の周波数変化の例を示す図である。これは系列長Nの間に周波数f(n)を4周する場合の例であり、周波数f(n)は増加と減少を繰り返している。このようにすることで、周波数f(n)は常に連続となる。このような位相回転系列c(n)は、周波数f(n)を1周するたびにrateの正負を切り替えることで実現できる。
【0105】
本実施の形態では、実施の形態2と同様に、位相回転系列cori(n)を時間方向につなぎ合わせて位相回転系列c(n)を生成する。図27は、本実施の形態における位相回転系列生成部102での位相回転系列c(n)を求めるフローチャートである。ステップS201〜S206までの処理は実施の形態2(図22参照)のステップS101〜S106と同様であり、違いはステップS207において以下の式(13)の処理が増えるのみである。
【0106】
【数13】

【0107】
これにより、1周するたびにrateの正負が切り替わり(|rate|は変化しない)、位相回転系列c(n)の周波数f(n)が増加/減少を繰り返すようになる。
【0108】
以上が本実施の形態における位相回転系列c(n)の作り方である。このように、各ユーザはrateの正負を切り替えて使用するため、実施の形態1、2では異なるユーザに、絶対値は同じだが正負が異なるrateを割り当てて多重することが可能であったが、本実施の形態ではそれはできないことに注意する。例えば、実施の形態1、2ではユーザAをrate=3、ユーザBをrate=−3とすることで多重可能であった。しかし、本実施の形態では、各ユーザはrateの正負を切り替えて使用するため、ユーザA、B共にrateとして3と−3の両方を用いることになる。従って、このような多重はできない。本実施の形態では、異なるユーザの|rate|が必ず異なるようにする必要がある。
【0109】
本実施の形態では、ユーザ毎に異なる|rate|により位相回転系列c(n)を生成すればユーザ多重が可能となる。図28は、|rate|=3、4の場合の位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。このように|rate|が異なれば位相回転系列c(n)の周波数f(n)の変化の速度が異なるため、ユーザ多重が可能となる。また、本実施の形態では、位相回転系列c(n)の周波数f(n)は増加と減少を繰り返すが、減少より始まることも勿論使用可能である。図29は、|rate|=4の場合の位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。このように、減少から始まる場合でも1周するたびにrateの正負が切り替わる動作を行うことで、増加から始まる場合と同様の効果を得ることができる。
【0110】
以上説明したように、本実施の形態では、さらに、位相回転系列の周波数を常に連続となるようにした。これにより、実施の形態2の効果に加え、さらに帯域が広がるのを抑え、帯域外電力をさらに小さくすることが可能である。
【0111】
実施の形態4.
本実施の形態では、位相回転系列c(n)の生成方法が実施の形態3と異なる。そこで、以下に送信機での位相回転系列c(n)の生成方法を説明する。図1に示す1個の受信機が複数の送信機(ユーザ)から各々異なる信号を受信するシステムに基づいて説明するが、実施の形態3と同様、図12に示す1個の送信機が複数の受信機(ユーザ)に対し、各々異なる信号を送信するシステムにおいても適用可能である。実施の形態3と異なる部分について説明する。
【0112】
実施の形態3のように位相回転系列c(n)を作成することで、周波数f(n)、位相θ(n)は常に連続となる。しかし、周波数f(n)が増加から減少、または減少から増加に切り替わる点においては、周波数f(n)が変化する速度が急激に変化する。これが、スペクトルの帯域外電力が増加する原因となる。
【0113】
フィルタにより帯域外電力を除去することは可能であるが、その場合、信号の時間波形が大きく変化し、PAPRが大きくなる問題がある。
【0114】
そこで、本実施の形態では、周波数f(n)をよりなめらかに変化させる方式について説明する。具体的には、周波数f(n)を正弦波状に変化させる。位相回転系列生成部102は、周波数f(n)が正弦波状に変化する位相回転系列c(n)を生成する。以降で、そのような位相回転系列c(n)の生成方法を説明する。なお、これは一例であり、電力が一定であり時間と共に周波数f(n)の変化する位相回転系列c(n)であって、系列の周波数f(n)が正弦波状に変化するものであれば、他のどのようなものであってもよい。図30は、位相回転系列c(n)の周波数f(n)を正弦波状に変化させた図である。
【0115】
このような位相回転系列c(n)の周波数f(n)は次式(14)で表される。
【0116】
【数14】

【0117】
図30は、rate=4、α=0とした場合の例となる。ここで、αは他の変数によらない定数であり、この値を変えることで、n=0の時点での周波数f(n)の値を変化させることができる。
【0118】
式(6)より、2πTs×f(n)をnで積分することで、次式(15)の位相θ(n)が得られ、位相回転系列c(n)を求めることができる。
【0119】
【数15】

【0120】
本実施の形態の位相回転系列c(n)は、式(15)に従って作成すればよい。実施の形態2、3のように、位相回転系列cori(n)を時間方向につなぎ合わせて位相回転系列c(n)を作るといった処理は不要であり、式(15)に0≦n<Nのnを順に代入していくだけで、位相回転系列c(n)を生成することができる。このように作成した位相回転系列c(n)の位相θ(n)、周波数f(n)は常に連続であり、また周波数f(n)は常に滑らかに変化する。
【0121】
ただし、本実施の形態では、絶対値は同じだが正負が異なる2つのrateで、式(15)により周波数θ(n)を計算すると、両者は同じ値となる。よって、本実施の形態では、実施の形態3と同様に、絶対値は同じだが正負が異なるrateを割り当てて多重することができない。例えば、実施の形態1、2では、ユーザAをrate=3、ユーザBをrate=−3とすることで多重可能であった。しかし、本実施の形態では、rate=3として生成したc(n)とrate=−3として生成したc(n)は全く同一の位相回転系列となるため、このような多重はできない。本実施の形態では、異なるユーザの|rate|が必ず異なるようにする必要がある。
【0122】
以上が本実施の形態における位相回転系列c(n)の作り方である。この場合もユーザ毎に異なるrateにより位相回転系列c(n)を生成すればユーザ多重が可能となる。図31は、|Rate|=3、4の場合の位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。このようにrateが異なれば位相回転系列c(n)の周波数f(n)の変化の速度が異なるため、これまでの実施の形態と同様、ユーザ多重が可能となる。
【0123】
以上説明したように、本実施の形態では、さらに、位相回転系列の周波数の変化をなめらかにさせることとした。これにより、実施の形態3の効果に加え、さらに帯域が広がるのを抑え、帯域外電力をさらに小さくすることが可能である。
【0124】
実施の形態5.
本実施の形態では、位相回転系列c(n)の生成方法が他の実施の形態と異なる。そこで、以下に送信機での位相回転系列c(n)の生成方法を説明する。図1に示す1個の受信機が複数の送信機(ユーザ)から各々異なる信号を受信するシステムに基づいて説明するが、実施の形態4と同様、図12に示す1個の送信機が複数の受信機(ユーザ)に対し、各々異なる信号を送信するシステムにおいても適用可能である。実施の形態1〜4と異なる部分について説明する。
【0125】
実施の形態1〜4の位相回転系列c(n)により送信信号を作成すると、帯域内の電力が一定とはならず、電力の大きい周波数が繰り返し存在する現象が生じる。図32は、電力の大きい周波数が繰り返し存在するスペクトルを模式的に表した図である。
【0126】
実施の形態1〜4では、各ユーザにおいて|rate|の値は常に一定であった。よって、これらの位相回転系列c(n)の周波数f(n)は周期性を持つと言える。図33は、実施の形態2における位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。また、図34は、実施の形態3における位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。図33であれば1周毎に、図34であれば2周毎に位相回転系列c(n)の周波数f(n)が同じパターンを繰り返し、周期性を持つことが分かる。この周期性が、「電力の大きい周波数」という形で周波数スペクトルに現れていると考えられる。
【0127】
この現象の結果、被探知性が大きくなる問題がある。被探知性が大きいとは、受信機以外の他者に通信を行っていることを気付かれる可能性が高いことを意味する。他者に気付かれない必要がある場合、帯域内電力が一定となるようにし、被探知性を小さくする対策が必要である。
【0128】
そこで、本実施の形態では、帯域内電力を一定とし、被探知性を小さくする位相回転系列c(n)の生成方法を説明する。この周期性は、ユーザ毎に|rate|が一定であるために発生するので、|rate|を変化させるようにすればよいと考えられる。すなわち、位相回転系列c(n)の周波数f(n)がNrate(≧1)周する度に、rateを0<MINrate≦|rate|≦MAXrateの範囲で変化させるようにする。位相回転系列生成部102は、rateを、周波数f(n)が変化するNrate周期ごとに変更して位相回転系列c(n)を生成する。ここで、MINrateは|rate|の最小値、MAXrateは|rate|の最大値となる。
【0129】
Nrate=1の場合、つまり周波数f(n)が1周する度に|rate|の値を変化させる場合の例を図35、36に示す。図35は、実施の形態2の位相回転系列c(n)でrate>0として|rate|を変化させるようにした場合の位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。また、図36は、実施の形態3の位相回転系列c(n)で|rate|を変化させるようにした場合の位相回転系列c(n)の周波数f(n)を示す図である。|rate|の値が変化するため、周波数f(n)のグラフの傾きが一周するたびに変化している。
【0130】
|rate|の値の変化のさせ方としては、ランダムに変化させてもよいし、一定の規則に従い規則的に変化させるような方法(例えば、一定値ずつ増加させるなど)でもよい。ただし、実施の形態3の位相回転系列c(n)を用いる場合は、rateの正負を周波数f(n)が一周するたびに切り替える必要がある。また実施の形態1、2の位相回転系列をc(n)用いる場合は、rateの正負は常に一定としておく必要がある。実施の形態4の位相回転系列c(n)を用いる場合は、rateが正であっても負であっても絶対値が同じであれば生成される位相回転系列c(n)は同じであるため、rateの正負に対する制約は特に必要ない。
【0131】
例えば、|rate|を2→10→7→13→3→…と変化させる場合、rateの値は以下のように変化する。
【0132】
実施の形態1、2の位相回転系列c(n)を用いる場合、
2→10→7→13→3→…
または、
−2→−10→−7→−13→−3→…
【0133】
実施の形態3の位相回転系列c(n)を用いる場合、
2→−10→7→−13→3→…
または
−2→10→−7→13→−3→…
【0134】
実施の形態4の位相回転系列c(n)を用いる場合、
2→10→7→13→3→…
【0135】
また、Nrate(≧1)の値を小さくするほど|rate|の値が変化する頻度が大きくなり、位相回転系列c(n)の周波数f(n)の周期性が小さくなる。つまり、帯域内電力を一定として被探知性を小さくするためには、Nrateの値は小さい方がよいと考えられる。
【0136】
つぎに、ユーザ多重を行う場合について説明する。なお、MINrate、MAXrate、Nrateの値はユーザ毎に異なっていてもよいし、同じであってもよい。他の実施の形態と同様、異なるユーザが同一のrateを用いることはできない。よって、各ユーザはrateの値を変化させつつ、異なるユーザが同一のrateを用いないようにする必要がある。
【0137】
そこで、Nuユーザを多重する場合、0<MINrate≦|rate|≦MAXrateの範囲にあるrateをNu個のグループに分割し、各グループを各ユーザに割り当てるようにする。ユーザは割り当てられたグループ内のrateのみを用いて位相回転系列c(n)を生成する。これにより、異なるユーザが常に異なるrateを用いるようにすることができる。
【0138】
MINrate=5、MAXrate=20、Nu=4で、rateとして整数のみを用いる場合の例を図37、38に示す。図37は、実施の形態1、2の位相回転系列c(n)のように絶対値が同じだが異なる正負のrateを異なるユーザが使用可能な場合の表を示す図である。また、図38は、実施の形態3、4の位相回転系列c(n)のように絶対値が同じだが異なる正負のrateを異なるユーザに割り当てることができない場合の表を示す図である。各グループに対応するrateおよびユーザへの割り当てを示すものである。どちらの場合も、rateをNu(=4)個のグループに分割し、各グループを異なるユーザに割り当てる。そして、各ユーザは、自身に割り当てられたグループの中から、位相回転系列c(n)の周波数f(n)がNrate周する度にrateの値を選択して使用する。このようにすることで、異なるユーザが同一のrateを用いないようにすることができる。
【0139】
具体的に、送信機100−m(または送信機300)では、複数のrateがグループ分けされ、パラメータ記憶部108(またはパラメータ記憶部308−1〜Nu)ごとにグループが割り当てられている場合、位相回転系列生成部102(または位相回転系列生成部302−1〜Nu)は、自身と接続するパラメータ記憶部に割り当てられたグループの中から選択したrateを用いて位相回転系列c(n)を生成する。
【0140】
以上説明したように、本実施の形態では、周波数がNrate周するたびに位相回転系列のrateを変化させることとした。これにより、実施の形態1〜4での効果に加え、さらに、周波数スペクトルの帯域内電力を一定にし、被探知性を小さくすることが可能である。
【符号の説明】
【0141】
100−1、100−2、100−3、300 送信機
101、301−1〜Nu 変調部
102、302−1〜Nu 位相回転系列生成部
103、303−1〜Nu chirp部
104、304−1〜Nu CP付加部
105、305 周波数変換部
106、306 増幅器
107、307 アンテナ
108、308−1〜Nu パラメータ記憶部
200、200−1、200−2、200−3 受信機
201 アンテナ
202 周波数変換部
203 CP除去部
204 離散フーリエ変換部
205 周波数領域等化部
206 逆離散フーリエ変換部
207 位相回転系列逆数生成部
208 dechirp部
209 復調部
210 パラメータ記憶部
309 多重化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信機と受信機から構成される通信システムであって、
前記送信機は、
時間と共に周波数の変化する位相回転系列の周波数変化速度を決定するパラメータを記憶する送信機パラメータ記憶手段と、
前記パラメータに基づいて位相回転系列を生成する位相回転系列生成手段と、
変調信号に対して前記位相回転系列を乗算し、送信信号を得る位相回転系列乗算手段と、
を備え、前記複数の送信機の各送信機パラメータ記憶手段が、それぞれ異なる値のパラメータを記憶し、
前記受信機は、
前記複数の送信機で用いられるパラメータを記憶する受信機パラメータ記憶手段と、
所望の送信機に対応するパラメータに基づいて、位相回転系列の逆数を生成する位相回転系列逆数生成手段と、
受信信号に対して前記位相回転系列の逆数を乗算し、所望の送信機からの信号を得る位相回転系列逆数乗算手段と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
送信機と複数の受信機から構成される通信システムであって、
前記送信機は、
時間と共に周波数の変化する位相回転系列の周波数変化速度を決定するパラメータを記憶する送信機パラメータ記憶手段と、
前記パラメータに基づいて位相回転系列を生成する位相回転系列生成手段と、
変調信号に対して前記位相回転系列を乗算し、送信信号を得る位相回転系列乗算手段と、
をそれぞれ前記受信機の数だけ備え、各送信機パラメータ記憶手段が、それぞれ異なる値のパラメータを記憶し、
さらに、各位相回転系列乗算手段から入力した送信信号を多重化する多重化手段、
を備え、
前記受信機は、
自身に対応したパラメータを記憶する受信機パラメータ記憶手段と、
自身に対応したパラメータに基づいて、位相回転系列の逆数を生成する位相回転系列逆数生成手段と、
受信信号に対して前記位相回転系列の逆数を乗算し、自身宛の信号を得る位相回転系列逆数乗算手段と、
を備え、前記複数の受信機の各受信機パラメータ記憶手段が、それぞれ異なる値のパラメータを記憶する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項3】
前記位相回転系列生成手段は、
周波数が変化する一周期内では、周波数が連続した値をとりながら変化する位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記位相回転系列生成手段は、
複数の搬送波からシステム帯域が構成される場合に、前記変調信号生成に使用された搬送波のシステム帯域における位置に基づいて、周波数の変化する範囲を変更した位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記位相回転系列生成手段は、
複数の周期に渡って位相回転系列の周波数が変化する場合に、周波数および位相が連続した値をとりながら変化する位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項6】
前記位相回転系列生成手段は、
前記周波数が正弦波状に変化する位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記位相回転系列生成手段は、
前記パラメータを、周波数が変化する所定の周期ごとに変更して位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項8】
複数のパラメータの値がグループ分けされ、送信機パラメータ記憶手段ごとにグループが割り当てられている場合に、
前記位相回転系列生成手段は、自身と接続する送信機パラメータ記憶手段に割り当てられたグループの中から選択したパラメータを用いて位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
複数の送信機と受信機から構成される通信システムにおける前記送信機であって、
時間と共に周波数の変化する位相回転系列の周波数変化速度を決定するパラメータを記憶する送信機パラメータ記憶手段と、
前記パラメータに基づいて位相回転系列を生成する位相回転系列生成手段と、
変調信号に対して前記位相回転系列を乗算し、送信信号を得る位相回転系列乗算手段と、
を備え、前記複数の送信機の各送信機パラメータ記憶手段が、それぞれ異なる値のパラメータを記憶することを特徴とする送信機。
【請求項10】
送信機と複数の受信機から構成される通信システムにおける前記送信機であって、
時間と共に周波数の変化する位相回転系列の周波数変化速度を決定するパラメータを記憶する送信機パラメータ記憶手段と、
前記パラメータに基づいて位相回転系列を生成する位相回転系列生成手段と、
変調信号に対して前記位相回転系列を乗算し、送信信号を得る位相回転系列乗算手段と、
をそれぞれ前記受信機の数だけ備え、各送信機パラメータ記憶手段が、それぞれ異なる値のパラメータを記憶し、
さらに、各位相回転系列乗算手段から入力した送信信号を多重化する多重化手段、
を備えることを特徴とする送信機。
【請求項11】
前記位相回転系列生成手段は、
周波数が変化する一周期内では、周波数が連続した値をとりながら変化する位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項9または10に記載の送信機。
【請求項12】
前記位相回転系列生成手段は、
複数の搬送波からシステム帯域が構成される場合に、前記変調信号生成に使用された搬送波のシステム帯域における位置に基づいて、周波数の変化する範囲を変更した位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項9、10または11に記載の送信機。
【請求項13】
前記位相回転系列生成手段は、
複数の周期に渡って位相回転系列の周波数が変化する場合に、周波数および位相が連続した値をとりながら変化する位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項9〜12のいずれか1つに記載の送信機。
【請求項14】
前記位相回転系列生成手段は、
前記周波数が正弦波状に変化する位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項13に記載の送信機。
【請求項15】
前記位相回転系列生成手段は、
前記パラメータを、周波数が変化する所定の周期ごとに変更して位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項9〜14のいずれか1つに記載の送信機。
【請求項16】
複数のパラメータの値がグループ分けされ、送信機パラメータ記憶手段ごとにグループが割り当てられている場合に、
前記位相回転系列生成手段は、自身と接続する送信機パラメータ記憶手段に割り当てられたグループの中から選択したパラメータを用いて位相回転系列を生成する、
ことを特徴とする請求項15に記載の送信機。
【請求項17】
複数の送信機と受信機から構成される通信システムにおける前記受信機であって、
時間と共に周波数の変化する位相回転系列の周波数変化速度を決定するパラメータであって、前記複数の送信機で用いられるパラメータを記憶する受信機パラメータ記憶手段と、
所望の送信機に対応するパラメータに基づいて、位相回転系列の逆数を生成する位相回転系列逆数生成手段と、
受信信号に対して前記位相回転系列の逆数を乗算し、所望の送信機からの信号を得る位相回転系列逆数乗算手段と、
を備えることを特徴とする受信機。
【請求項18】
送信機と複数の受信機から構成される通信システムにおける前記受信機であって、
時間と共に周波数の変化する位相回転系列の周波数変化速度を決定するパラメータであって、自身に対応したパラメータを記憶する受信機パラメータ記憶手段と、
自身に対応したパラメータに基づいて、位相回転系列の逆数を生成する位相回転系列逆数生成手段と、
受信信号に対して前記位相回転系列の逆数を乗算し、自身宛の信号を得る位相回転系列逆数乗算手段と、
を備え、前記複数の受信機の各受信機パラメータ記憶手段が、それぞれ異なる値のパラメータを記憶することを特徴とする受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−178721(P2012−178721A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40623(P2011−40623)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】