説明

通信システムにおける摂動デコーダ及び復号化方法とこれを用いた装置

通信システムにおいて送信された信号を受信するデコーダであって、受信信号をフィルタリングする前に受信信号にある干渉プラスノイズの影響を減らすために受信信号を先処理するモジュールと、受信信号をフィルタリングした結果を後処理する一つ以上のモジュールと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムで用いられるデコーダ、復号化方法、この方法を用いた通信システムの装置に関し、より詳細には、多重入出力(MIMO)無線システムにおける摂動デコーダ、摂動復号化方法、及びこれを用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多重入出力無線通信システムは、高いデータ送信率を提供してダイバシティ利得を得ることができる。高いデータ送信率で動作する多重入出力通信システムにおいて円滑に動作することのできるデコーダが必要である。
【0003】
今までは多重入出力通信システムにおいて、受信機が最大の性能を出すために、ML(Maximum Likelihood)復号化方式を使用しなければならなかった。しかし、MLデコーダは優れた性能を有する一方、高い複雑度を有する。従って、性能と複雑度の間で適切な妥協が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ゼロフォーシング(ZF:zero forcing)デコーダ及びMMSEデコーダのような線形デコーダの性能を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本発明の一特徴による通信システムにおいて送信された信号を受信するデコーダは、摂動ベクトルを提供するモジュールと、前記摂動ベクトルをもって送信シンボルベクトルの推定値を摂動して前記送信シンボルベクトルの候補を提供するモジュールと、を備える。
前記通信システムは多重入力多重出力(MIMO)通信システムであってもよい。
前記摂動ベクトルは、ランダムに生成されたベクトルであり、平均的に前記推定値周辺の球内に含んでもよい。
前記摂動ベクトルは、前記送信シンボルベクトルの推定値と前記送信シンボルベクトルの候補を提供するためにマッピングされた結果とに応じて個別に加えられてもよい。
前記デコーダは、受信ベクトルをフィルタリングすることによって前記送信シンボルベクトルの推定値を提供するモジュールを更に含んでもよい。
前記送信シンボルベクトルの候補を提供するモジュールは、前記送信シンボルベクトルの推定値に前記摂動ベクトルを個別に加えることによって送信シンボルベクトル推定値を提供するモジュールと、コンスタレーションシンボルに前記送信シンボルベクトル推定値をマッピングすることによって前記送信シンボルベクトル候補を提供するモジュールと、を含んでもよい。
前記デコーダは、前記送信シンボルベクトルの候補に基づいて硬判定復号を行うモジュールを更に含んでもよい。
前記デコーダは、前記送信シンボルベクトルの候補に基づいて受信ビットに対して軟判定復号を行うモジュールを更に含んでもよい。
前記送信シンボルベクトルの候補の数は、摂動ベクトルの数より少なくてもよい。
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の特徴による通信システムにおいて送信された信号を受信するデコーダは、摂動ベクトルを提供するモジュールと、前記摂動ベクトルをもって受信ベクトルを摂動することによって処理された受信ベクトルを提供するモジュールと、を備える。
前記デコーダは、前記処理された受信ベクトルをフィルタリングすることによって送信シンボルベクトルの推定値を提供するモジュールを更に含んでもよい。
前記デコーダは、事後摂動ベクトルをもって送信シンボルベクトルの推定値の少なくとも1つのサブセットを摂動することによって送信シンボルベクトルの候補を提供するモジュールを更に含んでもよい。
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の一特徴による通信システムにおいて送信された信号を受信する装置を用いる方法は、摂動ベクトルを生成するステップと、前記摂動ベクトルをもって送信シンボルベクトルの推定値を摂動して前記送信シンボルベクトルの候補を生成するステップと、を有する。
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の特徴による通信システムにおいて送信された信号を受信する装置を用いる方法は、摂動ベクトルを生成するステップと、前記摂動ベクトルをもって受信ベクトルを摂動することによって処理された受信ベクトルを生成するステップと、を有する。
前記摂動ベクトルを生成するステップは、受信ベクトルで干渉プラスノイズに対応する統計的な性質を有するベクトルをランダムに生成するステップを含んでもよい。
前記処理された受信ベクトルを生成するステップは、前記受信ベクトルに前記摂動ベクトルを個別に加えるステップを含んでもよい。
前記処理された受信ベクトルをフィルタリングすることによって提供される送信シンボルベクトルの推定値を獲得するステップを更に含んでもよい。
前記方法は、コンスタレーションシンボルに前記送信シンボルベクトルの推定値をマッピングすることによって送信シンボルベクトルの候補を生成するステップを更に含んでもよい。
前記方法は、前記送信シンボルベクトルの候補に基づいて受信ビットに対して硬判定復号化及び軟判定復号化のうちのいずれか1つを行うステップを更に含んでもよい。
前記方法は、事後摂動ベクトルをもって前記送信シンボルベクトルの推定値の少なくとも1つのサブセットを摂動することによって送信シンボルベクトルの候補を生成するステップを更に含んでもよい。
前記事後摂動ベクトルはランダムに生成されたベクトルであり、平均的に送信シンボルベクトルの推定値周辺の球内に含まれてもよい。
前記送信シンボルベクトルの候補を生成するステップは、前記事後摂動ベクトルに前記送信シンボルベクトルの推定値の少なくとも1つのサブセットを個別に加えてその結果をマッピングするステップを含んでもよい。
前記送信シンボルベクトルの候補を生成するステップは、前記送信シンボルベクトルの推定値の少なくとも1つのサブセットを前記事後摂動ベクトルに個別に加えることによって事後送信シンボルベクトルの推定値を生成するステップと、コンスタレーションシンボルに前記事後送信シンボルベクトルの推定値をマッピングすることによって前記送信シンボルベクトルの候補を生成するステップと、を含んでもよい。
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の一特徴による多重入力多重出力通信システムにおいて信号を受信及び/又は送信する装置は、検出器と、1つ以上のデコーダと、を備え、前記デコーダは、受信信号をフィルタリングする前に前記受信信号にある干渉プラスノイズの影響を減らすために前記受信信号を先処理するモジュールと、前記受信信号をフィルタリングした結果を後処理するモジュールと、を含む。
前記後処理するモジュールは、摂動ベクトルをもって前記結果を摂動することによって前記送信シンボルベクトルの候補を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ML復号化より複雑度を減らすことができる。また、本発明のデコーダは、線形デコーダだけを用いるよりも更に優れた性能を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による多重入出力通信システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の通信システムにおける摂動デコーダ及び復号化方法とこれを用いた装置を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
下記の実施形態は、多重入力多重出力(MIMO)システム、単一入力多重出力(SIMO)システム、多重入力単一出力(MISO)システムに適用され、単一ユーザの多重入力多重出力システム及び多重ユーザの多重入力多重出力システムに適用される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による多重入出力通信システムを示す図であり、この多重入出力通信システムにおいてデコーダ及び復号化方法が適用される。
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施形態による多重入出力通信システム100は基地局110及びL名のユーザ140を含む。
【0016】
図1は、アップリンク送信及びダウンリンク送信の両方を表す。ダウンリンク環境において基地局110は送信機として、L名のユーザ140は受信機として動作し、アップリンク環境において基地局110は受信機として、L名のユーザ140は送信機として動作する。ダウンリンク環境又はアップリンク環境において、本発明の一実施形態によるデコーダは受信機として動作する。下記ではダウンリンク環境を仮定して基地局110及びL名のユーザ140の動作を説明する。
【0017】
基地局110にはN個の送信アンテナが設けられ、ユーザl(l=1、…、L)にはNRl個の受信アンテナが設けられる。基地局とそれぞれのL名のユーザ140の間にはチャネルが形成され、そのチャネルは

のサイズを有するチャネルマトリックスのように表してもよい。
【0018】
ユーザlの受信信号はベクトル形態に表してもよい。即ち、ユーザlの受信ベクトルは下記の数1のように表してもよい。
【0019】
【数1】

【0020】
ここで、

であり、ユーザlに対する実効チャネルマトリックスは

である。また、Wは単位プリコーディングマトリックスであって、

であり、Hactはユーザlに対する実際のチャネルマトリックスである。
【0021】
また、

は基地局110からユーザ140に送信されたN×1のシンボルベクトルであって、

であり、

である。ここで、

に属する各要素(element)は独立的に複素コンスタレーション(complex constellation)

から決定される。下記では上記要素を送信シンボルベクトルと呼ぶことにする。
【0022】
また、ユーザ140は、受信ベクトルに基づいてユーザ140それぞれに対応する送信シンボルベクトルをエラーなしに検出する必要がある。
【0023】
数1は理論的に(実際には様々な理由により実現できないこともあるが)干渉を完全に除去することができる場合を仮定したものである。
【0024】
<事後摂動(post−perturbed)デコーダ及び復号化方法>
【0025】
本発明の事後摂動デコーダは、完全なフィードバック(full feedback)、制限されたフィードバック(limited feedback)の両方に用いられてもよい。
【0026】
本発明によれば、事後摂動デコーダは、最大の尤度推定値を送信シンボルベクトルの推定値から探す。これはランダムに生成されたベクトルを用いて送信シンボルベクトルの推定値を摂動することによって達成される。ランダムに生成されたベクトルは、平均的に、線形デコーダによって提供される推定値周辺の球(sphere)内に含まれる。線形デコーダは、ゼロフォーシング(ZF)デコーダ及びMMSEデコーダを含んでもよく、受信ベクトルに基づいて送信シンボルベクトルの推定値を算出するために用いられる。ランダムに生成されたベクトルは、個別に送信シンボルベクトルの推定値に加えられ、可能な送信シンボルベクトルの候補のリストを形成するためにマッピングされる。本発明によれば、そのリストに基づいて、ML(最大尤度)のケースで最小距離復号化(minimum distance decoding)が行われてもよく、送信されたビットに対する軟判定情報(soft information)を生成することができる。
【0027】
l番目のユーザの受信ベクトルを

とする。このとき、受信ベクトル

と線形フィルタ係数Gを内積して数2のように送信シンボルベクトルの推定値Zestが検出される。
【0028】
【数2】

【0029】
ここで、

であり、GZFはゼロフォーシング方式による復号化マトリックスであり、GMMSEはMMSE方式による復号化マトリックスである。
【0030】
摂動ベクトルの集合がPであり、PがK+1個の摂動ベクトルを元素として有する場合、Pは

のように表してもよい。ここで、Pはゼロベクトルである。また、摂動ベクトルは任意のベクトルから生成されてもよく、摂動ベクトルは平均的に送信シンボルベクトルの推定値周辺の球内で統計的な特性を有する。摂動ベクトルは、送信シンボルベクトルの推定値から予め決定されたユークリッドの距離内に存在する。例えば、ユークリッドの距離が

である時、摂動ベクトルは

によって生成されてもよい。

は平均が0であり、分散がENTのガウス分布であり、INTはN×Nサイズの恒等行列である。
【0031】
また、摂動ベクトルをもって送信シンボルベクトルの推定値を摂動して送信シンボルベクトルの候補が抽出される。
【0032】
即ち、送信シンボルベクトルの推定値Zestには下記の数3のようにK+1個の事後摂動ベクトルが加えられてもよい。
【0033】
【数3】

【0034】
このとき、K+1のZを元素として有する集合Zは

で表してもよい。
【0035】
また、送信シンボルベクトルの推定値に事後摂動ベクトルそれぞれが加えられた結果に基づいて、送信シンボルベクトルの候補を抽出することができる。特に、送信シンボルベクトルの推定値に事後摂動ベクトルそれぞれが加えられた結果をコンスタレーション(constellation map)

にマッピングして送信シンボルベクトルの候補が抽出されてもよい。
【0036】
即ち、送信シンボルベクトルの候補から構成された集合



のように表してもよく、

の1つの元素である

は下記の数4のように表してもよい。
【0037】
【数4】

【0038】
数個の送信シンボルベクトルの推定値Z

内で同一の送信シンボルベクトルの候補にマッピングしてもよい。このような場合、



のように表してもよい。
【0039】
送信シンボルベクトルの可能な候補のリストは、最大尤度硬判定(hard maximum likelihood decision)のためのサーチスペースとして用いられてもよい。
【0040】
言い換えると、デコーダは硬判定で最大尤度判定を行なってもよい。このとき、事後摂動(post−perturbed)デコーダ

は下記の数5のように表してもよい。
【0041】
【数5】

【0042】
送信機及び受信機が畳み込みコード又はターボコードのようなアウターチャネル(outer channel)コードを用いる場合、本発明のデコーダは下記の数6に表すような対数尤度比(LLR、Log Likelihood Ratio)を用いて軟判定を行なうことができる。ここで、大きい尤度比は軟判定情報の例である。
【0043】
【数6】

【0044】
数6において、

はi番目のビットが1である送信シンボルベクトルを元素として含み、

の部分集合である。また、

はi番目のビットが0である送信シンボルベクトルを元素として含み、

の部分集合である。
【0045】
本発明の一実施形態による事後摂動デコーダの動作を簡略に要約すれば次の通りである。
【0046】
送信シンボルベクトルの推定値Zestは線形デコーダによって求めてもよい。

【0047】
K個のランダム摂動ベクトルが生成される。

、Pはゼロベクトルである。
【0048】
P内にあるベクトルを用いてZestを摂動することによって、送信シンボルベクトルの推定値の集合を生成する。

【0049】
リスト

を生成する。

【0050】
リスト

から最大尤度硬判定又は軟判定が行われる。
【0051】
事後摂動デコーダの性能は、摂動ベクトルの数Kに依存してもよい。摂動ベクトルの数は、送信シンボルベクトルの可能な候補のリストのサイズを決めることができる。各摂動ベクトルは、送信シンボルベクトルに1対1にマッピングされないこともある。摂動の数個は同じ唯一の送信シンボルベクトルにマッピングされることがある。従って、送信シンボルベクトルの符号の最終的なリストのサイズは一般的に用いられる摂動ベクトルの数よりも少ない。
【0052】
<事前摂動(pre−perturbed)デコーダ及び復号化方法>
【0053】
事前摂動ベクトルの集合である

を生成する。ここで、Pはゼロベクトルである。また、事前摂動ベクトルはランダムベクトルで生成され、干渉プラスノイズのような同一の統計的な特性を有する。例えば、単一ユーザの多重入力多重出力システムにおいて、

の分布は

(平均が0であり、分散がINT)であってもよい。しかし、多重ユーザを有するMIMOシステムでは、ユーザ間の干渉が考慮され得る。従って、多重ユーザを有するMIMOシステムにおいて

の分布度は

(平均が0であり、分散がσ)であってもよい。このとき、σは干渉プラスノイズコンポーネントの変化である。
【0054】
また、事前摂動ベクトル

をもって受信ベクトルYを摂動し、摂動された受信ベクトル

を生成する。ここで、K番目の摂動された受信ベクトルは下記の数7のように表してもよい。
【0055】
【数7】

【0056】
また、摂動された受信ベクトル

をフィルタリングして送信シンボルベクトルの推定値Zを生成する。このとき、下記の数8のようにゼロフォーシング方式によるGZF及びMMSE方式によるGMMSEを用いてフィルタリングしてもよい。
【0057】
【数8】

【0058】
また、送信シンボルベクトルの推定値をコンスタレーションにマッピングして送信シンボルベクトルの候補

を抽出する。K番目の送信シンボルベクトルの候補は下記の数9のように表してもよい。
【0059】
【数9】

【0060】
数個の送信シンボルベクトルの推定値は同一の送信シンボルベクトルの候補にマッピングされてもよい。従って、下記の数10で表してもよい。
【0061】
【数10】

【0062】
また、軟判定方式の一種である対数尤度検出による判定の出力

は下記の数11のように表してもよい。
【0063】
【数11】

【0064】
単一ユーザのシナリオで、リストは送信シンボルベクトルを構成するビットに対する軟判定情報を生成するために用いられてもよい。従って、軟判定の復号化は、受信したビットに対して行われてもよい。デコーダの性能は畳み込みコード又はターボコードのようなアウターチャネルコードを用いる場合よりも向上し得る。軟判定情報の一種であるLLRは、下記の数12のように求められる。
【0065】
【数12】

【0066】
数6において、

はi番目のビットが1である送信シンボルベクトルを元素として含み、

の部分集合である。また、

はi番目のビットが0である送信シンボルベクトルを元素として含み、

の部分集合である。
【0067】
本発明の一実施形態による事前摂動デコーダの動作を簡略に要約すれば、次の通りである。
【0068】
事前摂動ベクトル(P、…、P)が形成され、Pを更に含む事前摂動ベクトルの集合

が求められる。ここで、Pはゼロベクトルである。
【0069】
受信ベクトルYを事前摂動ベクトル

をもって摂動することによって、摂動された受信ベクトル

が生成される。ここで、

である。
【0070】
線形デコーダを用い、

をフィルタリングして送信シンボルベクトルの推定値Zを生成する。ここで、

であり、

である。
【0071】
また、送信シンボルベクトルの推定値に基づいて送信シンボルベクトルの候補

を抽出する。ここで、

である。
【0072】
また、送信シンボルベクトルの候補に基づいて軟判定又は硬判定を行う。
【0073】
<事前−事後摂動(dual−perturbed)デコーダ及び復号化方法>
【0074】
事後摂動デコーダ及び事前摂動デコーダは互いに結合して1つの事前−事後摂動デコーダで実現することができる。
【0075】
事前−事後摂動デコーダにおいて、事前摂動ベクトル

をもって受信ベクトル

を摂動し、摂動された受信ベクトル

を生成する。ここで、P1,0はゼロベクトルであり、

は次元がNRlのコンプレックス空間である

の元素であり、干渉プラスノイズのような統計的な性質を有する。
【0076】
ここで、

のk番目の元素は下記の数13のように表してもよい。
【0077】
【数13】

【0078】
下記の数14のように摂動された受信ベクトル

を線形フィルタリングして送信シンボルベクトルの推定値

を検出する。
【0079】
【数14】

【0080】
送信シンボルベクトルの推定値

に属するそれぞれの元素に事後摂動ベクトル

を加える。このとき、事後摂動ベクトル

は送信シンボルベクトルの推定値

それぞれから予め決定されたユークリッド距離だけ離れたベクトルであってもよい。
【0081】
例えば、事後摂動ベクトル

が送信シンボルベクトルの推定値

それぞれから

内に属する場合、分布度は

である。
【0082】
事後摂動の出力は下記の数15のように表してもよい。
【0083】
【数15】

【0084】
事後摂動の出力をコンスタレーションにマッピングして送信シンボルベクトルの候補

を抽出する。このとき、k番目の送信シンボルベクトルの候補

は下記の数16のように表してもよい。
【0085】
【数16】

【0086】
送信シンボルベクトルの候補

に基づいて軟判定又は硬判定を行う。最大尤度硬判定を行う場合、その出力は下記の数17のように表してもよい。
【0087】
【数17】

【0088】
また、軟判定を行う場合、軟判定で用いられるLLRは下記の数18のように表してもよい。
【0089】
【数18】

【0090】
本発明の一実施形態による事前−事後摂動デコーダの動作を要約すれば次の通りである。
【0091】
事前−事後摂動デコーダは事前摂動ベクトル

を生成する。
【0092】
また、事前−事後摂動デコーダは受信ベクトル

を事前摂動ベクトル

をもって摂動し、摂動された受信ベクトル

を生成する。ここで、k番目に摂動された受信ベクトルは

である。
【0093】
また、事前−事後摂動デコーダは

に基づいて空間フィルタリングして送信シンボルベクトルの推定値

を生成する。
【0094】
また、事前−事後摂動デコーダは事後摂動ベクトル

を生成する。
【0095】
また、事前−事後摂動デコーダは事後摂動ベクトル

をもって送信シンボルベクトルの推定値

を摂動し、

を生成する。ここで、

のk番目の元素は

である。
【0096】
また、事前−事後摂動デコーダは

をもって送信シンボルベクトルの候補

を抽出する。ここで、

である。
【0097】
また、事前−事後摂動デコーダは

に基づいて判定を行う。
【0098】
事前−事後摂動デコーダの性能は、摂動ベクトルの数K及びKに依存し、それは送信シンボルベクトルの可能な候補のリストのサイズを決定する。各摂動ベクトルは送信シンボルベクトルに1対1でマッピングされないこともある。摂動の数個は同じ唯一の送信シンボルベクトルにマッピングされることがある。従って、送信シンボルベクトルの符号の最終的なリストのサイズは一般的に用いられる摂動ベクトルの数よりも少ない。
【0099】
事前−事後摂動された送信シンボルベクトルの推定値のリストのサイズはK1、だけ増加してもよく、それは全面的なサーチだけ大きいこともあるため、重複的であってもよい。従って、他の実施形態によると、そのリストのサイズは先処理の後に制限されてもよい。これは例えば先処理の後に最も信頼できる推定値を有するサブセットを選択することによって達成することができる。事後摂動はこのサブセットにあるベクトルに対して提供され得る。例えば、10個の最も近い送信シンボルベクトルの推定値は先摂動後に選択されてもよく、事後摂動はこのサブセットで行われてもよい。
【0100】
本発明による事前、事後、事前−事後摂動復号化方法は、多様なコンピュータにより行われるプログラム命令で実現され、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読取可能な記録媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独又は組み合わせて含むこともできる。記録媒体に記録されるプログラム命令は、本発明の目的のために特別に設計されて構成されたものでもよく、コンピュータソフトウェア分野の技術を有する当業者にとって公知であり使用可能なものであってもよい。コンピュータ読取可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、及び磁気テープのような磁気媒体、CD−ROM、DVDのような光記録媒体、フロプティカルディスクのような磁気−光媒体、及びROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令を保存して実行するように特別に構成されたハードウェア装置が含まれる。プログラム命令の例としては、コンパイラによって生成されるような機械語コードだけでなく、インタプリタなどを用いてコンピュータによって実行され得る高級言語コードを含む。
【0101】
上述したように、本発明は、限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような基材から多様な修正及び変形が可能である。
従って、本発明の範囲は説明した実施形態に限定されて決められてはならず、特許請求の範囲だけでなく、特許請求の範囲と均等なものなどによって定められなければならない。
【符号の説明】
【0102】
100 多重入出力通信システム
110 基地局
140 ユーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムにおいて送信された信号を受信するデコーダであって、
摂動ベクトルを提供するモジュールと、
前記摂動ベクトルをもって送信シンボルベクトルの推定値を摂動して前記送信シンボルベクトルの候補を提供するモジュールと、を備えることを特徴とするデコーダ。
【請求項2】
前記通信システムは多重入力多重出力(MIMO)通信システムであることを特徴とする請求項1に記載のデコーダ。
【請求項3】
前記摂動ベクトルは、ランダムに生成されたベクトルであり、平均的に前記推定値周辺の球内に含まれることを特徴とする請求項1に記載のデコーダ。
【請求項4】
前記摂動ベクトルは、前記送信シンボルベクトルの推定値と前記送信シンボルベクトルの候補を提供するためにマッピングされた結果とに応じて個別に加えられることを特徴とする請求項1に記載のデコーダ。
【請求項5】
受信ベクトルをフィルタリングすることによって前記送信シンボルベクトルの推定値を提供するモジュールを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のデコーダ。
【請求項6】
前記送信シンボルベクトルの候補を提供するモジュールは、
前記送信シンボルベクトルの推定値に前記摂動ベクトルを個別に加えることによって送信シンボルベクトル推定値を提供するモジュールと、
コンスタレーションシンボルに前記送信シンボルベクトル推定値をマッピングすることによって前記送信シンボルベクトル候補を提供するモジュールと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のデコーダ。
【請求項7】
前記送信シンボルベクトルの候補に基づいて硬判定復号を行うモジュールを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のデコーダ。
【請求項8】
前記送信シンボルベクトルの候補に基づいて受信ビットに対して軟判定復号を行うモジュールを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のデコーダ。
【請求項9】
前記送信シンボルベクトルの候補の数は、摂動ベクトルの数より少ないことを特徴とする請求項1に記載のデコーダ。
【請求項10】
通信システムにおいて送信された信号を受信するデコーダであって、
摂動ベクトルを提供するモジュールと、
前記摂動ベクトルをもって受信ベクトルを摂動することによって処理された受信ベクトルを提供するモジュールと、を備えることを特徴とするデコーダ。
【請求項11】
前記処理された受信ベクトルをフィルタリングすることによって送信シンボルベクトルの推定値を提供するモジュールを更に含むことを特徴とする請求項10に記載のデコーダ。
【請求項12】
事後摂動ベクトルをもって送信シンボルベクトルの推定値の少なくとも1つのサブセットを摂動することによって送信シンボルベクトルの候補を提供するモジュールを更に含むことを特徴とする請求項11に記載のデコーダ。
【請求項13】
通信システムにおいて送信された信号を受信する装置を用いる方法であって、
摂動ベクトルを生成するステップと、
前記摂動ベクトルをもって送信シンボルベクトルの推定値を摂動して前記送信シンボルベクトルの候補を生成するステップと、を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
通信システムにおいて送信された信号を受信する装置を用いる方法であって、
摂動ベクトルを生成するステップと、
前記摂動ベクトルをもって受信ベクトルを摂動することによって処理された受信ベクトルを生成するステップと、を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
前記摂動ベクトルを生成するステップは、受信ベクトルで干渉プラスノイズに対応する統計的な性質を有するベクトルをランダムに生成するステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記処理された受信ベクトルを生成するステップは、前記受信ベクトルに前記摂動ベクトルを個別に加えるステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記処理された受信ベクトルをフィルタリングすることによって提供される送信シンボルベクトルの推定値を獲得するステップを更に含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
コンスタレーションシンボルに前記送信シンボルベクトルの推定値をマッピングすることによって送信シンボルベクトルの候補を生成するステップを更に含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記送信シンボルベクトルの候補に基づいて受信ビットに対して硬判定復号化及び軟判定復号化のうちのいずれか1つを行うステップを更に含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
事後摂動ベクトルをもって前記送信シンボルベクトルの推定値の少なくとも1つのサブセットを摂動することによって送信シンボルベクトルの候補を生成するステップを更に含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記事後摂動ベクトルはランダムに生成されたベクトルであり、平均的に送信シンボルベクトルの推定値周辺の球内に含まれることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記送信シンボルベクトルの候補を生成するステップは、前記事後摂動ベクトルに前記送信シンボルベクトルの推定値の少なくとも1つのサブセットを個別に加えてその結果をマッピングするステップを含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記送信シンボルベクトルの候補を生成するステップは、
前記送信シンボルベクトルの推定値の少なくとも1つのサブセットを前記事後摂動ベクトルに個別に加えることによって事後送信シンボルベクトルの推定値を生成するステップと、
コンスタレーションシンボルに前記事後送信シンボルベクトルの推定値をマッピングすることによって前記送信シンボルベクトルの候補を生成するステップと、を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
多重入力多重出力通信システムにおいて信号を受信及び/又は送信する装置であって、
検出器と、
1つ以上のデコーダと、を備え、
前記デコーダは、受信信号をフィルタリングする前に前記受信信号にある干渉プラスノイズの影響を減らすために前記受信信号を先処理するモジュールと、
前記受信信号をフィルタリングした結果を後処理するモジュールと、を含むことを特徴とする装置。
【請求項25】
前記後処理するモジュールは、摂動ベクトルをもって前記結果を摂動することによって前記送信シンボルベクトルの候補を提供することを特徴とする請求項24に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2011−530198(P2011−530198A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509394(P2011−509394)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006626
【国際公開番号】WO2009/139527
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(503447036)サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド (2,221)
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】