説明

通信システム及び通信機器

【課題】消費電力の低減を図ることが可能な通信システムを得る。
【解決手段】通信システム1は、物理回線L1〜L4を介して相互に接続された通信機器3A,3Bを備え、物理回線L1〜L4を論理的に一つの通信回線として用いて通信機器3A,3B間でデータ通信を行うことが可能な通信システムであって、各通信機器3A,3Bは、物理回線L1〜L4に対応するインタフェース部10A1〜10A4と、通信機器3A,3B間で通信されているデータ通信量を測定する測定部12と、測定部12によって測定されたデータ通信量に応じて、物理回線L1〜L4のうちリンクアップされる物理回線を選択する選択部13と、インタフェース部10A1〜10A4のうち、選択部13によって選択された物理回線に対応するインタフェース部に対して給電を行う給電制御部15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム及びそれに用いられる通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の通信機器間を複数の物理回線によって相互に接続し、当該複数の物理回線を論理的に一つの通信回線として用いることにより、通信回線の通信容量を仮想的に拡大する技術(リンク・アグリゲーション)が知られている。
【0003】
なお、下記特許文献1には、フレームリレープロトコルのリンク状態確認手段をサポートするデータ通信網において、使用中の通信リンク数が所定値を超えている場合には、通信リンク状態をビットマップ形式に編集し、所定値を超えていない場合にはリスト形式に編集し、その情報を対応するノードに通知することにより通信リンク状態を確認する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3441827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リンク・アグリゲーションにおいて、複数の通信機器間を接続する複数の物理回線のうち、論理的に一つの通信回線として束ねられることにより通信可能状態に設定される(つまりリンクアップされる)物理回線の数は、当該複数の通信機器間におけるデータ通信量の最大値を想定して固定的に設定されることが多い。従って、深夜の時間帯等のデータ通信量が減少する状況においては、リンクアップされている物理回線の合計の通信容量に対して、実際のデータ通信量が極端に小さくなる場合がある。その結果、過剰な数の物理回線がリンクアップされていることに起因して、無駄な電力が消費されることとなる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、消費電力の低減を図ることが可能な通信システム及びそれに用いられる通信機器を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る通信システムは、複数の物理回線を介して相互に接続された複数の通信機器を備え、前記複数の物理回線を論理的に一つの通信回線として用いて前記複数の通信機器間でデータ通信を行うことが可能な通信システムであって、前記複数の通信機器の各々は、前記複数の物理回線に対応する複数のインタフェース部と、前記複数の通信機器間で通信されているデータ通信量を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定された前記データ通信量に応じて、前記複数の物理回線の中から少なくとも一つの物理回線を選択して、当該物理回線を通信可能状態に設定する選択手段と、前記複数のインタフェース部のうち、前記選択手段によって選択された前記物理回線に対応するインタフェース部に対して給電を行う給電制御手段とを有することを特徴とするものである。
【0008】
第1の態様に係る通信システムによれば、測定手段は、複数の通信機器間で通信されているデータ通信量を測定し、選択手段は、測定手段によって測定されたデータ通信量に応じて、複数の物理回線の中から少なくとも一つの物理回線を選択して、当該物理回線を通信可能状態に設定する。そして、給電制御手段は、複数のインタフェース部のうち、選択手段によって選択された物理回線に対応するインタフェース部に対して給電を行う。従っ
て、複数の通信機器間のデータ通信量が少ない場合には、通信可能状態に設定される物理回線の数も削減され、対応するインタフェース部への給電も停止されるため、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る通信システムは、第1の態様に係る通信システムにおいて特に、前記測定手段によって測定された前記データ通信量が第1の閾値超である場合に、前記選択手段は、前記複数の物理回線のうち通信可能状態に設定する物理回線の数を増加させ、前記測定手段によって測定された前記データ通信量が第2の閾値未満である場合に、前記選択手段は、前記複数の物理回線のうち通信可能状態に設定する物理回線の数を減少させ、前記第2の閾値は前記第1の閾値より小さく設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
第2の態様に係る通信システムによれば、通信可能状態に設定する物理回線の数を減少させるか否かの判定に用いられる第2の閾値は、通信可能状態に設定する物理回線の数を増加させるか否かの判定に用いられる第1の閾値より小さく設定されている。従って、データ通信量が第1の閾値の近傍で増減を繰り返す場合に、通信可能状態に設定する物理回線の数がそれに伴って頻繁に増減される事態を回避することが可能となる。しかも、第2の閾値が第1の閾値より小さく設定されているため、通信可能状態に設定されている物理回線は、データ通信量が第1の閾値未満となっても、第2の閾値未満となるまでは通信可能状態を維持している。従って、減少傾向にあるデータ通信量が一時的に増加した場合であっても、その物理回線の通信可能状態が維持されているため、データを消失させることなくデータ通信を行うことが可能となる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る通信機器は、複数の物理回線を介して他の通信機器に接続され、前記複数の物理回線を論理的に一つの通信回線として用いて前記他の通信機器との間でデータ通信を行うことが可能な通信機器であって、前記複数の物理回線に対応する複数のインタフェース部と、前記他の通信機器との間で通信しているデータ通信量を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定された前記データ通信量に応じて、前記複数の物理回線の中から少なくとも一つの物理回線を選択して、当該物理回線を通信可能状態に設定する選択手段と、前記複数のインタフェース部のうち、前記選択手段によって選択された前記物理回線に対応するインタフェース部に対して給電を行う給電制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
第3の態様に係る通信機器によれば、測定手段は、他の通信機器との間で通信しているデータ通信量を測定し、選択手段は、測定手段によって測定されたデータ通信量に応じて、複数の物理回線の中から少なくとも一つの物理回線を選択して、当該物理回線を通信可能状態に設定する。そして、給電制御手段は、複数のインタフェース部のうち、選択手段によって選択された物理回線に対応するインタフェース部に対して給電を行う。従って、他の通信機器との間のデータ通信量が少ない場合には、通信可能状態に設定される物理回線の数も削減され、対応するインタフェース部への給電も停止されるため、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システムの全体構成を模式的に示す図である。
【図2】通信機器の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】通信機器間のデータ通信において、データ通信量の時間的な遷移の一例を簡略化して示す図である。
【図4】通信機器の選択部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る通信システム1の全体構成を模式的に示す図である。局舎2A,2Bは、ネットワークスイッチ等の通信機器3A,3Bをそれぞれ備えている。通信機器3A,3Bは、複数(図1の例では8個)のポート4A1〜4A8,4B1〜4B8をそれぞれ有している。各ポート4A1〜4A4と各ポート4B1〜4B4とは、物理回線L1〜L4によってそれぞれ相互に接続されている。各物理回線L1〜L4は、通信機器3Aから通信機器3Bに向かう方向への通信に関して、例えば1Gbpsの通信容量をそれぞれ有しており、同様に、通信機器3Bから通信機器3Aに向かう方向への通信に関して、例えば1Gbpsの通信容量をそれぞれ有している。従って、例えば、4本の物理回線L1〜L4の全てを論理的に一つの通信回線として通信可能状態に設定した場合(つまり物理回線L1〜L4の全てをリンクアップした場合)には、通信機器3Aから通信機器3Bに向かう方向、及び通信機器3Bから通信機器3Aに向かう方向のそれぞれに関して、最大で4Gbpsの通信容量を得ることができる。
【0017】
図2は、通信機器3Aの構成を概略的に示すブロック図である。図2に示すように通信機器3Aは、各ポート4A1〜4A8のインタフェース部10A1〜10A8と、インタフェース部10A1〜10A8に接続された通信制御部11とを備えて構成されている。また、通信機器3Aは、測定部12、選択部13、閾値設定部14、及び給電制御部15を備えている。通信制御部11は、その内部にリンク情報送信部16を有している。なお、図2には通信機器3Aの構成を示したが、通信機器3Bも通信機器3Aと同様の構成を有している。
【0018】
図3は、通信機器3A,3B間のデータ通信において、データ通信量の時間的な遷移の一例を簡略化して示す図である。深夜の時間帯(時刻T1以前又は時刻T6以降)においてデータ通信量は少なくなっており、日中の時間帯(時刻T3〜T4)においてデータ通信量は多くなっている。ここで、図3にはデータ通信量の大まかな時間遷移を示したが、微小な時間間隔内でもデータ通信量は時々刻々と変化しており、細かな増減を繰り返している。
【0019】
なお、図3に示した閾値U2,U3,U4は、それぞれ物理回線L2,L3,L4をリンクアップするか否かの判定(詳細は後述する)に用いられる閾値である。また、閾値D2,D3,D4は、それぞれ物理回線L2,L3,L4をリンクダウンするか否かの判定(詳細は後述する)に用いられる閾値である。本実施の形態の例では、閾値U2,U3,U4はそれぞれ0.8Gbps,1.8Gbps,2.8Gbpsに設定されており、閾値D2,D3,D4はそれぞれ0.6Gbps,1.6Gbps,2.6Gbpsに設定されている。つまり、閾値D2,D3,D4は、それぞれ閾値U2,U3,U4よりも小さな値に設定されている。
【0020】
図4は、通信機器3Aの選択部13が実行する処理の流れを示すフローチャートである。選択部13は、図4に示した処理を所定の時間間隔(例えば数秒又は数分間隔)で周期的に実行する。以下、図1〜4を参照して、通信機器3Aの動作について説明する。
【0021】
図3に示した時刻T1以前の時点では、リンクアップの判定に用いる閾値(以下「リンクアップ閾値」と称す)として閾値U2が閾値設定部14に設定されており、また、リンクダウンの判定に用いる閾値(以下「リンクダウン閾値」と称す)として「0bps」が
閾値設定部14に設定されている。また、時刻T1以前の時点では、給電制御部15からインタフェース部10A1に給電が行われることにより、物理回線L1がリンクアップされている。一方、給電制御部15からインタフェース部10A2〜10A4に給電が行われないことにより、物理回線L2〜L4がリンクダウンされている。従って、通信機器3Bから通信機器3Aに向けて送信されたデータは、物理回線L1及びインタフェース部10A1を介して、通信機器3Aの通信制御部11によって受信される。
【0022】
測定部12は、通信制御部11が受信したデータ通信量(1秒あたりの受信データ量)を測定する。そして、その測定結果を選択部13に通知する。
【0023】
図4に示したフローチャートを参照して、選択部13はまずステップS01において、測定部12によって測定されたデータ通信量が、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値(この時点では閾値U2=0.8Gbps)を超えているか否かを判定する。図3に示した例では、時刻T1以前の時点ではデータ通信量は0.8Gbps未満である。従って、ステップS01における判定の結果は「NO」となる。従って選択部13は次にステップS05において、測定部12によって測定されたデータ通信量が、閾値設定部14に設定されているリンクダウン閾値(この時点では0bps)未満であるか否かを判定する。データ通信量が0bps未満となることはあり得ないため、ステップS05における判定の結果は「NO」となり、ステップS01に戻る。その結果、時刻T1以前の時点では、選択部13はステップS01,S05の処理を繰り返し実行する。
【0024】
時刻T1の直後の時点においても上記と同様に、通信機器3Bから通信機器3Aに向けて送信されたデータは、物理回線L1及びインタフェース部10A1を介して、通信機器3Aの通信制御部11によって受信される。また、測定部12は、通信制御部11が受信したデータ通信量を測定し、その測定結果を選択部13に通知する。
【0025】
図4に示したフローチャートを参照して、選択部13はまずステップS01において、測定部12によって測定されたデータ通信量が、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値(この時点では閾値U2=0.8Gbps)を超えているか否かを判定する。図3に示した例では、時刻T1の直後の時点でデータ通信量は0.8Gbpsを超える。従って、ステップS01における判定の結果は「YES」となる。
【0026】
従って選択部13は次にステップS02において、物理回線L2のリンクアップが完了しているか否かを判定する。この時点では物理回線L2のリンクアップはまだ実行されていないため、ステップS02における判定の結果は「NO」となる。
【0027】
従って選択部13は次にステップS03において、物理回線L1に加えて物理回線L2をリンクアップさせる。具体的には、物理回線L2のリンクアップ命令が選択部13から給電制御部15に入力され、給電制御部15がインタフェース部10A2に給電を開始することにより、通信機器3Aにおいて物理回線L2がリンクアップされる。また、物理回線L2のリンクアップ命令が選択部13から通信制御部11に入力され、通信制御部11のリンク情報送信部16は、すでにリンクアップされている物理回線L1を介して、物理回線L2のリンクアップ命令を通信機器3Bに向けて送信する。これにより、通信機器3Bにおいても物理回線L2がリンクアップされる。物理回線L1に加えて物理回線L2がリンクアップされることにより、通信機器3A,3B間の通信容量は、最大で2Gbpsとなる。
【0028】
選択部13は次にステップS04において、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値及びリンクダウン閾値を、それぞれ閾値U3(=1.8Gbps)及び閾値D2(=0.6Gbps)に更新する。
【0029】
以降、時刻T2までは、物理回線L1,L2を論理的に一つの通信回線として用いて、通信機器3A,3B間のデータ通信が行われる。また、選択部13は、リンクアップ閾値U3及びリンクダウン閾値D2を用いて、図4に示した処理を周期的に実行する。但し、図3に示した例では、時刻T2以前の時点ではステップS01,S05の判定の結果はいずれも「NO」となるため、物理回線L3のリンクアップや物理回線L2のリンクダウンが実行されることはない。
【0030】
時刻T2の直後の時点においても上記と同様に、通信機器3Bから通信機器3Aに向けて送信されたデータは、物理回線L1,L2及びインタフェース部10A1,10A2を介して、通信機器3Aの通信制御部11によって受信される。また、測定部12は、通信制御部11が受信したデータ通信量を測定し、その測定結果を選択部13に通知する。
【0031】
図4に示したフローチャートを参照して、選択部13はまずステップS01において、測定部12によって測定されたデータ通信量が、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値(この時点では閾値U3=1.8Gbps)を超えているか否かを判定する。図3に示した例では、時刻T2の直後の時点でデータ通信量は1.8Gbpsを超える。従って、ステップS01における判定の結果は「YES」となる。
【0032】
従って選択部13は次にステップS02において、物理回線L3のリンクアップが完了しているか否かを判定する。この時点では物理回線L3のリンクアップはまだ実行されていないため、ステップS02における判定の結果は「NO」となる。
【0033】
従って選択部13は次にステップS03において、物理回線L1,L2に加えて物理回線L3をリンクアップさせる。物理回線L1,L2に加えて物理回線L3がリンクアップされることにより、通信機器3A,3B間の通信容量は、最大で3Gbpsとなる。
【0034】
選択部13は次にステップS04において、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値及びリンクダウン閾値を、それぞれ閾値U4(=2.8Gbps)及び閾値D3(=1.6Gbps)に更新する。
【0035】
以降、時刻T3までは、物理回線L1〜L3を論理的に一つの通信回線として用いて、通信機器3A,3B間のデータ通信が行われる。また、選択部13は、リンクアップ閾値U4及びリンクダウン閾値D3を用いて、図4に示した処理を周期的に実行する。但し、図3に示した例では、時刻T3以前の時点ではステップS01,S05の判定の結果はいずれも「NO」となるため、物理回線L4のリンクアップや物理回線L3のリンクダウンが実行されることはない。
【0036】
時刻T3の直後の時点においても上記と同様に、通信機器3Bから通信機器3Aに向けて送信されたデータは、物理回線L1〜L3及びインタフェース部10A1〜10A3を介して、通信機器3Aの通信制御部11によって受信される。また、測定部12は、通信制御部11が受信したデータ通信量を測定し、その測定結果を選択部13に通知する。
【0037】
図4に示したフローチャートを参照して、選択部13はまずステップS01において、測定部12によって測定されたデータ通信量が、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値(この時点では閾値U4=2.8Gbps)を超えているか否かを判定する。図3に示した例では、時刻T3の直後の時点でデータ通信量は2.8Gbpsを超える。従って、ステップS01における判定の結果は「YES」となる。
【0038】
従って選択部13は次にステップS02において、物理回線L4のリンクアップが完了
しているか否かを判定する。この時点では物理回線L4のリンクアップはまだ実行されていないため、ステップS02における判定の結果は「NO」となる。
【0039】
従って選択部13は次にステップS03において、物理回線L1〜L3に加えて物理回線L4をリンクアップさせる。物理回線L1〜L3に加えて物理回線L4がリンクアップされることにより、通信機器3A,3B間の通信容量は、最大で4Gbpsとなる。
【0040】
選択部13は次にステップS04において、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値を4Gbps以上の任意の値に更新するとともに、リンクダウン閾値を閾値D4(=2.6Gbps)に更新する。
【0041】
以降、時刻T4までは、物理回線L1〜L4を論理的に一つの通信回線として用いて、通信機器3A,3B間のデータ通信が行われる。また、選択部13は、リンクアップ閾値(例えば4Gbps)及びリンクダウン閾値D4を用いて、図4に示した処理を周期的に実行する。但し、通信機器3A,3B間のデータ通信量は、最大でも4Gbpsであるため、リンクアップ閾値を超えることはない。従って、図3に示した例では、時刻T4以前の時点ではステップS01,S05の判定の結果はいずれも「NO」となるため、新たな物理回線のリンクアップや物理回線L4のリンクダウンが実行されることはない。
【0042】
時刻T4の直後の時点においても上記と同様に、通信機器3Bから通信機器3Aに向けて送信されたデータは、物理回線L1〜L4及びインタフェース部10A1〜10A4を介して、通信機器3Aの通信制御部11によって受信される。また、測定部12は、通信制御部11が受信したデータ通信量を測定し、その測定結果を選択部13に通知する。
【0043】
図4に示したフローチャートを参照して、選択部13はまずステップS01において、測定部12によって測定されたデータ通信量が、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値(例えば4Gbps)を超えているか否かを判定する。上記の通り通信機器3A,3B間のデータ通信量は4Gbpsを超えることはないため、ステップS01における判定の結果は「NO」となる。
【0044】
従って選択部13は次にステップS05において、測定部12によって測定されたデータ通信量が、閾値設定部14に設定されているリンクダウン閾値(この時点では閾値D4=2.6Gbps)未満であるか否かを判定する。図3に示した例では、時刻T4の直後の時点でデータ通信量は2.6Gbps未満となる。従って、ステップS05における判定の結果は「YES」となる。
【0045】
従って選択部13は次にステップS06において、物理回線L4のリンクダウンが完了しているか否かを判定する。この時点では物理回線L4のリンクダウンはまだ実行されていないため、ステップS06における判定の結果は「NO」となる。
【0046】
従って選択部13は次にステップS07において、物理回線L4をリンクダウンさせる。具体的には、物理回線L4のリンクダウン命令が選択部13から給電制御部15に入力され、給電制御部15がインタフェース部10A4への給電を停止することにより、通信機器3Aにおいて物理回線L4がリンクダウンされる。また、物理回線L4のリンクダウン命令が選択部13から通信制御部11に入力され、通信制御部11のリンク情報送信部16は、リンクアップされている物理回線L1〜L3のいずれかを介して、物理回線L4のリンクダウン命令を通信機器3Bに向けて送信する。これにより、通信機器3Bにおいても物理回線L4がリンクダウンされる。物理回線L4がリンクダウンされることにより、通信機器3A,3B間の通信容量は、最大で3Gbpsとなる。
【0047】
選択部13は次にステップS08において、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値及びリンクダウン閾値を、それぞれ閾値U4(=2.8Gbps)及び閾値D3(=1.6Gbps)に更新する。
【0048】
以降、時刻T5までは、物理回線L1〜L3を論理的に一つの通信回線として用いて、通信機器3A,3B間のデータ通信が行われる。また、選択部13は、リンクアップ閾値U4及びリンクダウン閾値D3を用いて、図4に示した処理を周期的に実行する。但し、図3に示した例では、時刻T5以前の時点ではステップS01,S05の判定の結果はいずれも「NO」となるため、物理回線L4のリンクアップや物理回線L3のリンクダウンが実行されることはない。
【0049】
時刻T5の直後の時点においても上記と同様に、通信機器3Bから通信機器3Aに向けて送信されたデータは、物理回線L1〜L3及びインタフェース部10A1〜10A3を介して、通信機器3Aの通信制御部11によって受信される。また、測定部12は、通信制御部11が受信したデータ通信量を測定し、その測定結果を選択部13に通知する。
【0050】
図4に示したフローチャートを参照して、選択部13はまずステップS01において、測定部12によって測定されたデータ通信量が、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値(この時点では閾値U4=2.8Gbps)を超えているか否かを判定する。図3に示した例では、データ通信量は2.8Gbpsを超えないため、ステップS01における判定の結果は「NO」となる。
【0051】
従って選択部13は次にステップS05において、測定部12によって測定されたデータ通信量が、閾値設定部14に設定されているリンクダウン閾値(この時点では閾値D3=1.6Gbps)未満であるか否かを判定する。図3に示した例では、時刻T5の直後の時点でデータ通信量は1.6Gbps未満となる。従って、ステップS05における判定の結果は「YES」となる。
【0052】
従って選択部13は次にステップS06において、物理回線L3のリンクダウンが完了しているか否かを判定する。この時点では物理回線L3のリンクダウンはまだ実行されていないため、ステップS06における判定の結果は「NO」となる。
【0053】
従って選択部13は次にステップS07において、物理回線L3をリンクダウンさせる。物理回線L3がリンクダウンされることにより、通信機器3A,3B間の通信容量は、最大で2Gbpsとなる。
【0054】
選択部13は次にステップS08において、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値及びリンクダウン閾値を、それぞれ閾値U3(=1.8Gbps)及び閾値D2(=0.6Gbps)に更新する。
【0055】
以降、時刻T6までは、物理回線L1,L2を論理的に一つの通信回線として用いて、通信機器3A,3B間のデータ通信が行われる。また、選択部13は、リンクアップ閾値U3及びリンクダウン閾値D2を用いて、図4に示した処理を周期的に実行する。但し、図3に示した例では、時刻T6以前の時点ではステップS01,S05の判定の結果はいずれも「NO」となるため、物理回線L3のリンクアップや物理回線L2のリンクダウンが実行されることはない。
【0056】
時刻T6の直後の時点においても上記と同様に、通信機器3Bから通信機器3Aに向けて送信されたデータは、物理回線L1,L2及びインタフェース部10A1,10A2を介して、通信機器3Aの通信制御部11によって受信される。また、測定部12は、通信
制御部11が受信したデータ通信量を測定し、その測定結果を選択部13に通知する。
【0057】
図4に示したフローチャートを参照して、選択部13はまずステップS01において、測定部12によって測定されたデータ通信量が、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値(この時点では閾値U3=1.8Gbps)を超えているか否かを判定する。図3に示した例では、データ通信量は1.8Gbpsを超えないため、ステップS01における判定の結果は「NO」となる。
【0058】
従って選択部13は次にステップS05において、測定部12によって測定されたデータ通信量が、閾値設定部14に設定されているリンクダウン閾値(この時点では閾値D2=0.6Gbps)未満であるか否かを判定する。図3に示した例では、時刻T6の直後の時点でデータ通信量は0.6Gbps未満となる。従って、ステップS05における判定の結果は「YES」となる。
【0059】
従って選択部13は次にステップS06において、物理回線L2のリンクダウンが完了しているか否かを判定する。この時点では物理回線L2のリンクダウンはまだ実行されていないため、ステップS06における判定の結果は「NO」となる。
【0060】
従って選択部13は次にステップS07において、物理回線L2をリンクダウンさせる。物理回線L2がリンクダウンされることにより、通信機器3A,3B間の通信容量は、最大で1Gbpsとなる。
【0061】
選択部13は次にステップS08において、閾値設定部14に設定されているリンクアップ閾値及びリンクダウン閾値を、それぞれ閾値U2(=0.8Gbps)及び「0Gbps」に更新する。
【0062】
このように本実施の形態に係る通信システム1によれば、測定部12は、通信機器3A,3B間で通信されているデータ通信量を測定し、選択部13は、測定部12によって測定されたデータ通信量に応じて、物理回線L1〜L4のうちリンクアップさせる物理回線を選択する。そして、給電制御部15は、インタフェース部10A1〜10A4のうち、選択部13によって選択された物理回線に対応するインタフェース部に対して給電を行う。従って、通信機器3A,3B間のデータ通信量が少ない場合には、物理回線L1〜L4のうちリンクアップされる物理回線の数も削減され、対応するインタフェース部への給電も停止されるため、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0063】
また、本実施の形態に係る通信システム1によれば、各物理回線L1〜L4に関して、リンクダウン閾値はリンクアップ閾値より小さく設定されている。例えば物理回線L2に関しては、リンクアップ閾値は閾値U2(=0.8Gbps)に設定されており、リンクダウン閾値はそれより小さい閾値D2(=0.6Gbps)に設定されている。従って、通信機器3A,3B間のデータ通信量があるリンクアップ閾値の近傍で増減を繰り返す場合に、リンクアップ状態の物理回線の数がそれに伴って頻繁に増減するという事態を回避できる。しかも、リンクダウン閾値がリンクアップ閾値より小さく設定されているため、リンクアップ状態の物理回線は、通信機器3A,3B間のデータ通信量がその物理回線に関するリンクアップ閾値未満となっても、リンクダウン閾値未満となるまでは、リンクアップ状態を維持している。従って、減少傾向にあるデータ通信量が一時的に増加した場合であっても、その物理回線のリンクアップ状態が維持されているため、データを消失させることなくデータ通信を行うことが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態に係る通信システム1によれば、通信機器3Aが有するリンク情報送信部16は、通信機器3Aの選択部13によって選択されたリンクアップされる物理回
線に関する情報を、通信機器3Bに向けて送信する。その情報を受信した通信機器3Bが、当該物理回線に対応する自身のインタフェース部への給電を行うことにより、当該物理回線を介したデータ通信が可能となる。
【0065】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 通信システム
3A,3B 通信機器
10A1〜10A4 インタフェース部
11 通信制御部
12 測定部
13 選択部
14 閾値設定部
15 給電制御部
L1〜L4 物理回線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物理回線を介して相互に接続された複数の通信機器を備え、前記複数の物理回線を論理的に一つの通信回線として用いて前記複数の通信機器間でデータ通信を行うことが可能な通信システムであって、
前記複数の通信機器の各々は、
前記複数の物理回線に対応する複数のインタフェース部と、
前記複数の通信機器間で通信されているデータ通信量を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された前記データ通信量に応じて、前記複数の物理回線の中から少なくとも一つの物理回線を選択して、当該物理回線を通信可能状態に設定する選択手段と、
前記複数のインタフェース部のうち、前記選択手段によって選択された前記物理回線に対応するインタフェース部に対して給電を行う給電制御手段と
を有する、通信システム。
【請求項2】
前記測定手段によって測定された前記データ通信量が第1の閾値超である場合に、前記選択手段は、前記複数の物理回線のうち通信可能状態に設定する物理回線の数を増加させ、
前記測定手段によって測定された前記データ通信量が第2の閾値未満である場合に、前記選択手段は、前記複数の物理回線のうち通信可能状態に設定する物理回線の数を減少させ、
前記第2の閾値は前記第1の閾値より小さく設定されている、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
複数の物理回線を介して他の通信機器に接続され、前記複数の物理回線を論理的に一つの通信回線として用いて前記他の通信機器との間でデータ通信を行うことが可能な通信機器であって、
前記複数の物理回線に対応する複数のインタフェース部と、
前記他の通信機器との間で通信しているデータ通信量を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された前記データ通信量に応じて、前記複数の物理回線の中から少なくとも一つの物理回線を選択して、当該物理回線を通信可能状態に設定する選択手段と、
前記複数のインタフェース部のうち、前記選択手段によって選択された前記物理回線に対応するインタフェース部に対して給電を行う給電制御手段と
を備える、通信機器。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−219925(P2010−219925A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64827(P2009−64827)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】