説明

通信システム

【課題】スレーブ局が接続されていない接続コネクタから輻射ノイズが発生するのを防止し輻射ノイズの影響を他装置に与えない通信システムを提供する。
【解決手段】スレーブ局2は、マスタ局との間で信号を授受する。スレーブ局2は、マスタ局に接続可能な接続コネクタ21と、他のスレーブ局2の接続コネクタ21が接続可能な接続コネクタ22とを備える。信号処理部20は、接続コネクタ21、22の一方から入力された信号を他方の接続コネクタにリピート出力する。接続コネクタ21は電源電圧が印加される信号端子21aを備え、接続コネクタ22はプルダウン抵抗Rが接続された検出端子22aを備える。信号処理部20は、検出端子22aに信号端子21aからの電源電圧が印加されていないときには、接続コネクタ22へのリピート出力を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタ局とスレーブ局との間で信号を伝送するとともに、スレーブ局においてリピート出力を行う通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マスタ局と複数台のスレーブ局とからなる通信システムにおいて、スレーブ局にマスタ局または他のスレーブ局を接続するための2個ずつの接続部を設けたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。この種の通信システムには、一方の接続部に入力された信号を他方の接続部にリピート出力する構成のものがある。
【0003】
マスタ局の接続部にはスレーブ局を1台だけ接続することができ、スレーブ局の一方の接続部にはマスタ局または他のスレーブ局が接続される。したがって、2台以上のスレーブ局を用いて通信システムを構築する場合には、マスタ局に1台のスレーブ局が接続され、当該スレーブ局に残りのスレーブ局が接続される。すなわち、隣接する局(マスタ局、スレーブ局)間の伝送路の両端には各1台ずつの局が接続され、当該伝送路ではポイントツーポイントで信号が伝送されるようにしてある。
【0004】
このような構成の通信システムでは、接続部を接続コネクタにより構成するのが望ましく、接続コネクタを互いに結合(嵌合)させることにより、局同士の電気的接続と機械的接続とを同時に行うことが可能になる。この構成では、局同士を接続コネクタにより結合するから、伝送路を別途に設ける必要がなく、プログラマブルコントローラの入出力ユニットなどをスレーブ局としてこの技術を適用すれば高い利便性が得られる。
【特許文献1】特開平7−264219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、スレーブ局において一方の接続部に入力された信号を他方の接続部にリピート出力するから、スレーブ局はリピータのように機能する。以下では、リピート出力を行って信号を伝送することをリピート伝送と呼ぶ。
【0006】
リピート伝送を行う構成では、後段(マスタ局から遠い方)の接続コネクタにスレーブ局が接続されている場合には、リピート伝送により他のスレーブ局に信号を伝送することができるが、後段の接続コネクタにスレーブ局が接続されていない場合には、当該接続コネクタに出力された信号により不要な輻射ノイズを生じる可能性がある。つまり、負荷の接続されていない接続コネクタの開放端に信号が与えられることにより、接続コネクタの端子がアンテナとして機能し輻射ノイズを生じることになる。したがって、EMC(電磁環境適応性)が悪化することになる。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、スレーブ局が接続されていない接続コネクタから輻射ノイズが発生するのを防止し輻射ノイズの影響を他装置に与えない通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、マスタ局との間で信号を授受するスレーブ局を有し、スレーブ局は、マスタ局に接続可能な第1の接続コネクタと、他のスレーブ局の第1の接続コネクタに接続可能な第2の接続コネクタと、一方の接続コネクタから入力された信号を他方の接続コネクタにリピート出力する信号処理部とを有し、信号処理部は、第1の接続コネクタに信号が入力されたときに第2の接続コネクタに他のスレーブ局が接続されていなければ第2の接続コネクタへのリピート出力を禁止することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記第1の接続コネクタにおいて通信に用いていない端子を検知信号が出力される信号端子とし、前記第2の接続コネクタにおいて他の局装置の第1の接続コネクタと結合したときに当該第1の接続コネクタの信号端子に接続される端子を検出端子とし、前記信号処理部は、検出端子に検知信号が入力されていない場合に、第2の接続コネクタに他のスレーブ局が接続されていないと判断し、第1の接続コネクタに信号が入力されたときに第2の接続コネクタへのリピート出力を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明の構成によれば、第2の接続コネクタに他のスレーブ局が接続されていないときには、第1の接続コネクタに信号が入力されても第2の接続コネクタへのリピート出力を禁止するから、他のスレーブ局が接続されていない第2の接続コネクタから輻射ノイズが発生するのを防止することができるという利点がある。
【0011】
請求項2の発明の構成によれば、第1の接続コネクタに設けた信号端子と第2の接続コネクタに設けた検出端子とを用い、検出端子に検知信号が入力されていなければ、第2の接続コネクタに他のスレーブ局が接続されていないと判断することができるから、他のスレーブ局が接続されていない場合はもちろんのこと、他のスレーブ局の電源が投入されていない場合も検知信号が入力されないことによって、リピート出力を禁止するのであり、電源が投入されていない場合の輻射ノイズの発生も防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本実施形態の通信システムは、図2に示すように、マスタ局1と複数台のスレーブ局2とにより構成される。マスタ局1とスレーブ局2とは接続コネクタ11、21により結合され、スレーブ局2同士も接続コネクタ21、22により結合される。したがって、伝送路となる電線は不要である。
【0013】
マスタ局1とスレーブ局2との間で伝送される信号には、シリアル伝送されるデータ信号と、データ信号の同期用のクロック信号とを用いる。したがって、信号の伝送路Lsとしては、データ信号をシリアル伝送するデータ線と、同期用のクロック信号との少なくとも2線を備えるものを用いる。マスタ局1からスレーブ局2に信号を送信する下り信号線と、マスタ局1がスレーブ局2からの信号を受信する上り信号線とを個別に備える伝送路を用いることもできる。ただし、本実施形態では、マスタ局1においてHレベルとLレベルとを交互に繰り返すクロック信号を生成し、クロック信号がHレベルになる期間に同期してデータ信号がビット毎に伝送されるものとする。データ信号のビットの区切りはクロック信号がLレベルである期間内とする。
【0014】
スレーブ局2にはデバイスアドレスが設定され、マスタ局1がスレーブ局2にデータ信号を伝送する際はデバイスアドレスを指定することにより、特定のスレーブ局2にデータ信号を伝送する。すなわち、スレーブ局2では、伝送路Lsを伝送されたデバイスアドレスと、スレーブ局2に設定されているデバイスアドレスとが一致すると、マスタ局1からデータ信号を受信する。また、スレーブ局2では、マスタ局1からのデータ信号を受信すると、クロック信号に同期してマスタ局1への応答を返す。この応答は、マスタ局1から出力されるクロック信号に同期して返送される。
【0015】
スレーブ局2には、マスタ局1の接続コネクタ11に接続可能な接続コネクタ(第1の接続コネクタ)21と、他のスレーブ局2の接続コネクタ21が接続可能な接続コネクタ(第2の接続コネクタ)22とが設けられる。接続コネクタ21と接続コネクタ22とは、マスタ局1とスレーブ局2との連設を妨げないように、たとえば、器体において互いに反対側となる面に配置される。また、接続コネクタ21と接続コネクタ22とは一方が差込側であれば他方が受け側になる。各接続コネクタ21、22には複数本の端子が設けられており、データ信号やクロック信号を伝送する通信には用いない端子も含まれる。
【0016】
接続コネクタ21と接続コネクタ22との間には、一方の接続コネクタ21、22から入力された信号を他方の接続コネクタにリピート出力する機能を有した信号処理部20を備える。信号処理部20は、リピート出力する機能だけではなく、上述のようなデバイスアドレスの照合やマスタ局1から指示された命令を実行する機能も備える。この信号処理部20は、マイクロコンピュータにより構成される。
【0017】
ところで、図1に示すように、接続コネクタ21、22において通信に用いていない端子のうちの1本は、それぞれ信号端子21aと検出端子22aとに用いられる。信号端子21aには、検知信号としてスレーブ局2の電源投入時に発生する電源電圧(正電圧)が印加される。一方、検出端子22aは、信号処理部20に接続されるとともにプルダウン抵抗Rが接続される。
【0018】
検出端子22aにプルダウン抵抗Rを接続していることにより、接続コネクタ22にスレーブ局2が接続されていないか、スレーブ局2が接続されていても電源が投入されていなければ、検出端子22aから信号処理部20には電圧が印加されず、検出端子22aから信号処理部20への入力はLレベルに保たれる。信号処理部20では検出端子22aからの入力がLレベルであると、接続コネクタ22へのリピート出力を禁止するように動作が規定されている。したがって、接続コネクタ22に他のスレーブ局2が接続されていないか、スレーブ局2が接続されていても電源が投入されていなければ、信号処理部20ではリピート出力を行わず、接続コネクタ22に不要な信号が出力されず、結果的に不要な輻射ノイズの発生が防止される。
【0019】
一方、接続コネクタ22に他のスレーブ局2が接続され、かつ電源が投入されると、信号端子21aに電源電圧が印加され、検出端子22aにも電源電圧が印加されるから、信号処理部20への検出端子22aからの入力がHレベルになり、このことによって、リピート出力が可能になる。つまり、接続コネクタ21から入力された信号を接続コネクタ22を介して他のスレーブ局2に出力することが可能になる。
【0020】
なお、信号処理部20では、接続コネクタ22から入力された信号は接続コネクタ21に無条件に出力する。これは、接続コネクタ22から入力された信号はマスタ局1側に向かう信号であり、この信号を受信するスレーブ局2の接続コネクタ21にはマスタ局1とスレーブ局2とのいずれかが接続されているからである。
【0021】
上述した動作により、不要な輻射ノイズの発生を防止することができEMCを向上させることができる。なお、上述の構成例では、スレーブ局2の電源電圧を検知信号として用いているが、特定のパターンで変化する信号を検知信号に採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に用いるスレーブ局を示すブロック図である。
【図2】通信システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1 マスタ局
2 スレーブ局
20 信号処理部
21 (第1の)接続コネクタ
21a 信号端子
22 (第2の)接続コネクタ
22a 検出端子
Ls 伝送路
R プルダウン抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ局との間で信号を授受するスレーブ局を有し、スレーブ局は、マスタ局に接続可能な第1の接続コネクタと、他のスレーブ局の第1の接続コネクタに接続可能な第2の接続コネクタと、一方の接続コネクタから入力された信号を他方の接続コネクタにリピート出力する信号処理部とを有し、信号処理部は、第1の接続コネクタに信号が入力されたときに第2の接続コネクタに他のスレーブ局が接続されていなければ第2の接続コネクタへのリピート出力を禁止することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記第1の接続コネクタにおいて通信に用いていない端子を検知信号が出力される信号端子とし、前記第2の接続コネクタにおいて他の局装置の第1の接続コネクタと結合したときに当該第1の接続コネクタの信号端子に接続される端子を検出端子とし、前記信号処理部は、検出端子に検知信号が入力されていない場合に、第2の接続コネクタに他のスレーブ局が接続されていないと判断し、第1の接続コネクタに信号が入力されたときに第2の接続コネクタへのリピート出力を禁止することを特徴とする請求項1記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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