説明

通信制御装置、制御ネットワークシステム

【課題】複数の制御装置をネットワークに同時に接続して通信を行うことを可能にした通信制御装置等を提供する。
【解決手段】被制御用入出力部(C3)と、前記被制御用入出力部のための複数の制御用入出力部(C1,C2)と、通信切替信号(30)を発生する通信切替制御部(C4)と、複数の制御用入出力部のうちの1つと被制御用入出力部との間の通信を行うように前記通信切替信号に従って信号切り替えを行う信号切替手段(C1,C2,C3,C5)と、を備えたことを特徴とする通信制御装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばプラント等における制御装置に多数の非制御端末が接続された制御ネットワークシステム、特にその通信制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、古い制御装置から新しい制御装置へ更新する場合には、新しい制御装置は古い制御装置と完全にネットワークを切り離した状態でテストを行い、更新する時も古い制御装置のネットワークを完全に切り離した後で、新しい制御装置を接続して立ち上げる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−290231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラント等の制御ネットワークシステムにおいて、製品サイクルの加速により制御装置の更新が多くなってきている。また、古い制御装置から新しい制御装置へ更新する場合には、制御装置の端末である制御端末を全て更新する場合が多い。
【0005】
この更新の時に、新しく納入する制御装置と古い制御装置を同一ネットワーク上で動作させて、古い制御装置で制御を継続させた状態の中で新しい制御装置の機能もテストできることが望ましいが、古い制御装置と新しい制御装置を同じネットワークに接続するには、IPアドレスを古い制御装置とは別アドレスを取得して設定する必要があった。
【0006】
また、古い制御装置と新しい制御装置を同一ネットワーク上に接続すると通信負荷も増大し、現実的には同一ネットワーク上に新しい制御装置と古い制御装置を混在した環境を構築した上で制御装置を更新するのは困難であった。
【0007】
このため、新しい制御装置を実際のネットワークに接続して試験できるのが、制御装置を納めてからになるため、実プラントで動作をした時にソフトウェアのミスに初めて気付くことが多い。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、複数の制御装置をネットワークに同時に接続して通信を行うことを可能にした通信制御装置、制御ネットワークシステを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、被制御用入出力部と、前記被制御用入出力部のための複数の制御用入出力部と、通信切替信号を発生する通信切替制御部と、複数の制御用入出力部のうちの1つと被制御用入出力部との間の通信を行うように前記通信切替信号に従って信号切り替えを行う信号切替手段と、を備えたことを特徴とする通信制御装置にある。
また、前記通信制御装置と、被制御用入出力部に接続された、それぞれのIPアドレスを有する少なくとも1つの被制御端末を含む被制御装置と、複数の制御用入出力部にそれぞれ接続された前記被制御端末に前記IPアドレスを共有して制御を行う複数の制御装置と、を備えたことを特徴とする制御ネットワークシステムにある。
【発明の効果】
【0010】
この発明では、複数の制御装置をネットワークに同時に接続して通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施の形態による通信制御装置を含む制御ネットワークシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の通信制御装置の詳細な構成を示す図である。
【図3】この発明による通信制御装置の通信切り替え制御を示すタイミングチャートである。
【図4】この発明における被制御装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明では、複数の制御装置をネットワークに同時に接続することを可能にしたことにより、例えば古い制御装置とこの古い制御装置の更新・変更のためのリニューアル用の新しい制御装置等で、古い制御装置で制御を継続したままの状態で新しい制御装置のテストを行い、新しい制御装置の機能に問題が無いことを確認した後で古い制御装置を撤去することが可能となる。そのため、事前の段階で実際に納める環境で新しい制御装置を接続してテストができることにより、ソフトウェアのミスを未然に防ぐことが可能となる。また、また双方の制御装置においてIPアドレスを共有することで通信負荷も増大も抑制できる。
【0013】
以下、この発明による通信制御装置、制御ネットワークシステムを実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態による通信制御装置を含む制御ネットワークシステムの構成を示すブロック図である。この発明に係る通信切り替え機能を有する通信制御装置Cは、制御装置Aの複数の制御端末A1−A4を接続するモジュラージャックC1aを4口と、制御装置Bの複数の制御端末B1−B4を接続するモジュラージャックC2aを4口と、被制御装置Dを接続するモジュラージャックC3を例えば1口と、を設けている。なお、これらの数は一例であり、制御装置は複数個、制御装置の制御端末は少なくとも1個であればよい。被制御装置Dは1個として示されているが、複数のモジュラージャックC3(図示省略)を設けて複数の通信制御装置Cが接続されていてもよい。制御装置Aの複数の制御端末A1−A4および制御装置Bの複数の制御端末B1−B4の被制御装置Dとの通信は通信制御装置Cの制御により管理される。被制御装置Dは、例えばPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)からなる複数の制御部D1−D4を含み、各制御部D1−D4には、例えば図4に示されるように該制御部により制御される少なくとも1つの被制御端末E1,E2…が接続されている。
【0015】
例えば制御装置Aは運転中の制御装置、制御装置Bはリニューアル用制御装置であり、制御装置Aと被制御装置Dとの間の通信、制御装置Bと被制御装置Dとの間の通信を通信制御装置Cにて時分割的に切り替えて行うことで、それぞれの通信で同じIPアドレスを共有することを可能にする。例えば、制御装置Bの複数の制御端末B1−B4は制御装置Aの複数の制御端末A1−A4とそれぞれ同じIPアドレスを有し、また制御装置Aと制御装置Bで被制御装置Dの各制御部D1−D4に接続されたそれぞれの被制御端末E1,E2…のIPアドレスを共有する。
【0016】
図2は図1の通信制御装置Cの詳細な構成を示す図であり、(a)は内部構成、(b)は制御装置A,Bとの接続関係だけを示す。LANポート(A群)C1、LANポート(B群)C2はそれぞれ制御用入出力部を構成し、LANポート(A群)C1は例えば図1の4つのモジュラージャックC1a、LANポート(B群)C2は例えば図1の4つのモジュラージャックC2aから構成される。LANポート(A群)C1の各モジュラージャックC1aは制御装置Aの制御端末A1−A4とLANケーブルで接続されている。LANポート(B群)C2の各モジュラージャックC2aは制御装置Bの制御端末B1−B4とLANケーブルで接続されている。
【0017】
LANポート(D群)C3は被制御用入出力部を構成し、例えば図1の1つのモジュラージャックC3から構成される。LANポート(D群)C3のモジュラージャックは被制御装置DとLANケーブルで接続されている。
【0018】
制御装置Aの制御端末A1−A4からの制御信号10はLANポート(A群)C1に送られ、制御装置Bの制御端末B1−B4からの制御信号10はLANポート(B群)C2に送られる。LANポート(A群)C1からの制御信号10とLANポート(B群)C2からの制御信号10は通信切替制御部C4へ送られ、通信切替制御部C4での制御結果に基づく通信切替信号30に従って信号切替部C5で切り替えられて、制御装置Aと制御装置Bのいずれか一方からの制御信号10がLANポート(D群)C3を介して被制御装置Dへ送られる。
【0019】
一方、被制御装置Dからの応答信号20は、LANポート(D群)C3を介して信号切替部C5へ送られ、信号切替部C5で切り換えられて、応答した制御信号と同じ方のLANポート(A群)C1またはLANポート(B群)C2を介して制御装置Aの制御端末A1−A4または制御装置Bの制御端末B1−B4で受けとられる。
【0020】
図3はこの発明による通信制御装置の通信切り替え制御を示すタイミングチャートを示す。図3において、通信切替制御部C4は信号切替部C5を制御して(少なくともLANポート(A群)C1およびLANポート(B群)C2、さらにLANポート(D群)C3のポート制御も行うようにしてもよい)、通信開始のタイミングからLANポート(A群)C1のモジュラージャックC1aの通信を開始させ、制御装置Aの通信時間(TA)の時間分だけ通信を行い、制御装置Aの通信時間(TA)経過後に通信切替信号30がオンすることでLANポート(A群)C1のモジュラージャックC1aの通信を停止させ、切替時間(t)経過後に、LANポート(B群)C2のモジュラージャックC2aの通信を開始させる。
【0021】
そして制御装置Bの通信時間(TB)経過後に、再び通信切替信号30がオンすることでLANポート(B群)C2のモジュラージャックC2aの通信を停止させ、切替時間(t)経過後に、LANポート(A群)C1のモジュラージャックC1aの通信を開始させて制御装置Aの通信時間(TA)の時間分だけ通信を行う。
【0022】
なお、信号切替部C5がポート制御も行う場合に、LANポート(D群)C3は常時通信状態でもよく、また制御装置A,Bのそれぞれの通信時間(TA,TB)で通信状態とさせてもよい。また、LANポート(A群)C1、LANポート(B群)C2、LANポート(D群)C3、信号切替部C5が信号切替手段を構成する。
【0023】
また制御装置A,Bと被制御装置Dとの通信は、制御装置A,Bから制御信号10等の信号を送信した際に被制御装置Dからの該信号の受信確認信号を受けた時点で1つの通信の完了としている。従って、制御装置A,Bで信号送信後、受信確認信号を受ける前に通信時間(TA,TB)が経過してしまった場合には、次の割り当て通信時間で、受信確認信号を受けていない信号の送信から始める。
【0024】
この様にLANポート(A群)C1のモジュラージャックC1aの通信とLANポート(B群)C2のモジュラージャックC2aの通信を切り替えながら通信させることにより、互いの通信が重複しない方法を実現し、これによりIPアドレスの重複と通信負荷の増大の問題もなく、それぞれの系統の制御装置が動作できる。
【0025】
図4にはこの発明における被制御装置Dの構成の一例を示す。上述のように被制御装置DはPLCからなる複数の制御部D1−D4を含み、各制御部D1−D4には該制御部により制御される少なくとも1つの被制御端末E1,E2…が接続されている。各制御部D1−D4は、制御信号10に従って実際に被制御端末E1,E2…の制御を行い、制御結果としての応答信号20を返信するための制御ロジック部LA(制御手段)と、リニューアル用制御装置のための制御ロジック部LB(シミュレーション用制御手段)を備える。制御ロジック部LAは制御中のデータ等を格納するメモリ部Mを含む。一方、リニューアル用制御装置の構築中の特に初期段階では、試作中の制御信号(プログラム)で実機の被制御端末E1,E2…を実際に駆動させることはできないため、リニューアル用の制御ロジック部LBは、制御ロジック部LAと同じ制御ロジック部分LBaと、制御信号に対する被制御端末E1,E2…の動作のシミュレーションを行い応答信号を生成するためのシミュレーション部分LBbとを含む。
【0026】
なお、通信切替信号30は例えば、複数の制御用入出力部C1,C2に接続された制御装置A,Bが、見かけ上、並行して動作しているように切り替えを行わせるタイミングの信号であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
10 制御信号、20 応答信号、30 通信切替信号、A,B 制御装置、A1−A4,B1−B4 制御端末、C 通信制御装置、C1,C2 制御用入出力部、C1a,C2a,C3 モジュラージャック、C4 通信切替制御部、C5 信号切替部、D 被制御装置、D1−D4 制御部、E1,E2 被制御端末、LA,LB 制御ロジック部、LBa 制御ロジック部分、LBb シミュレーション部分、M メモリ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御用入出力部と、
前記被制御用入出力部のための複数の制御用入出力部と、
通信切替信号を発生する通信切替制御部と、
複数の制御用入出力部のうちの1つと被制御用入出力部との間の通信を行うように前記通信切替信号に従って信号切り替えを行う信号切替手段と、
を備えたことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記複数の制御用入出力部がそれぞれ複数のモジュラージャックを含み、前記信号切替手段が前記通信切替信号に従った周期で、前記複数の制御用入出力部の複数のモジュラージャックのグループ間の信号を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記通信切替信号が、前記複数の制御用入出力部に接続される装置が、見かけ上、並行して動作しているように切り替えを行わせるタイミングの信号であることを特徴とする請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の通信制御装置と、
被制御用入出力部に接続された、それぞれのIPアドレスを有する少なくとも1つの被制御端末を含む被制御装置と、
複数の制御用入出力部にそれぞれ接続された前記被制御端末に前記IPアドレスを共有して制御を行う複数の制御装置と、
を備えたことを特徴とする制御ネットワークシステム。
【請求項5】
前記複数の制御装置の1つが運転中の制御装置であり、残りの少なくとも1つが該制御装置更新・変更のためのリニューアル用制御装置であることを特徴とする請求項4に記載の制御ネットワークシステム。
【請求項6】
前記複数の制御用入出力部がそれぞれ複数のモジュラージャックを含み、前記複数の制御装置がそれぞれに同一の制御用入出力部の前記複数のモジュラージャックにそれぞれ接続された複数の制御端末を含み、
前記信号切替手段が前記通信切替信号に従った周期で、前記複数の制御用入出力部の複数のモジュラージャックのグループ間の信号を切り替えることを特徴とする請求項4または5に記載の制御ネットワークシステム。
【請求項7】
前記被制御装置が、少なくとも1つの前記被制御端末が接続されると共に、前記少なくとも1つの被制御端末を制御し応答信号を返信する制御手段と、前記リニューアル用制御装置からの制御に対して前記制御手段と前記IPアドレスを共有して前記少なくとも1つの被制御端末のためのシミュレーションを行って応答信号を返信するシミュレーション用制御手段(LB)と、を含む制御部を少なくとも1つ含む、ことを特徴とする請求項4から6までのいずれか1項に記載の制御ネットワークシステム。
【請求項8】
前記通信切替信号が、前記複数の制御用入出力部に接続された前記複数の制御装置が、見かけ上、並行して動作しているように切り替えを行わせるタイミングの信号であることを特徴とする請求項4から7までのいずれか1項に記載の制御ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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