説明

通信装置、および通信装置のバックアップ方法

【課題】複数の制御系を有する通信装置において、ある制御系に異常が発生した場合に、この制御系で実行中であった処理を他の制御系に引き継がせる。
【解決手段】第一制御系10Aは、メイン機能としてルータ機能部101を、そしてバックアップ機能としてVoIP機能部102を有する。一方、第二制御系10Bは、メイン機能としてVoIP機能部102を、そしてバックアップ機能としてルータ機能部101を有する。各制御系10は、正常時にはメイン機能を有効とし、バックアップ機能を無効としている。また、各制御系10は、自制御系10の実行履歴を記録するとともに、他方の制御系10の状態を監視する。そして、他方の制御系10の異常を検出した場合に、バックアップ機能を有効にするとともに、実行履歴を参照して他方の制御系10が実行中であった処理を特定し、この特定した処理を引き継ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の機能を複数の制御系で分担する通信装置において、ある制御系を他の制御系でバックアップする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、通信系制御CPUおよびメディア系制御CPUを搭載した通信端末において、通信系制御CPUがメディア系制御CPUをバックアップする技術が開示されている。この技術では、通信系制御CPUが、メディア系制御CPUの状態を監視し、メディア系制御CPUに異常が生じた場合に、ユーザインターフェースに対する接続をメディア系制御CPUから通信系制御CPUに切り替えて、メディア系制御CPUの代わりにメディア系制御処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−214684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、メディア系制御CPUのバックアップを通信系制御CPUに行わせることができる。しかし、特許文献1に記載の技術は、メディア系制御処理を実行中のメディア系制御CPUに異常が生じた場合に、この実行中のメディア系制御処理を通信系制御CPUに引き継がせることについて何ら考慮されていない。また、特許文献1に記載の技術によれば、メディア系制御CPUに異常が生じた場合、通信系制御CPUが通信系制御処理およびメディア系制御処理の両方を行うこととなるため、通信系制御CPUに高い処理能力が要求される。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複数の制御系を有する通信装置において、ある制御系に異常が発生した場合に、この制御系が実行中であった処理を他の制御系に引き継がせることのできるバックアップ技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、それぞれがバックアップ機能を有し、複数の機能を分担する複数の制御系を有する。各制御系は、自制御系の各機能の処理の実行履歴を記録するとともに、他の制御系の状態を監視する。そして、他の制御系の異常を検出した場合に、バックアップ機能を有効にするとともに、他の制御系の実行履歴を参照して他の制御系が実行中であった処理を特定し、この特定した処理を引き継ぐ。ここで、各制御系は、他の制御系が担当する機能のうち、予め定められた機能のみを実行するものでもよい。また、各制御系は、バックアップ機能を有効にした場合に、自制御系の予め定められた一部の機能を無効にしてもよい。
【0007】
例えば、複数の機能を有する通信装置であって、
それぞれがバックアップ機能を備え、前記複数の機能を分担する複数の制御系と、
前記複数の制御系が共用する記憶手段と、を有し、
前記制御系各々は、
自制御系における前記複数の機能の処理の実行履歴を前記記憶手段に記憶する履歴登録手段と、
他の前記制御系の状態を監視する監視手段と、
前記監視手段により他の前記制御系の異常を検出した場合に、前記バックアップ機能を有効にするとともに、前記記憶手段に記憶されている他の前記制御系の実行履歴を参照して他の前記制御系が実行中であった処理を特定し、当該特定した処理を引き継ぐバックアップ制御手段と、を有する。
【0008】
ここで、前記バックアップ制御手段は、前記監視手段により他の前記制御系の異常を検出した場合に、前記バックアップ機能を有効にして、他の前記制御系が担当する機能のうちの予め定められた機能をバックアップするものでもよい。また、前記バックアップ制御手段は、前記バックアップ機能を有効にした場合に、自制御系が担当する機能のうちの予め定められた一部の機能を無効にするものでもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ある制御系が実行中の処理を他の制御系で特定することができるので、ある制御系に異常が発生した場合に、この制御系が実行中であった処理を他の制御系に引き継がせることができる。また、ある制御系のバックアップ機能によるバックアップ範囲を他の制御系が担当する機能の一部に限定することにより、あるいは、バックアップ機能を有効にした制御系が担当する機能の一部を無効にすることにより、制御系に要求されるハードウェアの処理能力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態が適用されたVoIPルータ1の概略機能構成図である。
【図2】図2(A)は、基準記憶部14の登録内容例を模式的に表した図であり、図2(B)は、履歴記憶部15の登録内容例を模式的に表した図である。
【図3】図3(A)は、制御系10の動作フローを説明するための図であり、図3(B)は、図3(A)に示す復旧処理(S10)を説明するための図である。
【図4】図4(A)は、図3(A)に示すバックアップ起動処理(S14)を説明するための図であり、図4(B)は、図3(A)に示すバックアップ停止処理(S16)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態が適用されたVoIPルータ1の概略機能構成図である。
【0013】
図示するように、本実施の形態のVoIPルータ1は、第一制御系10Aと、第二制御系10Bと、LANインターフェース部11と、WANインターフェース部12と、パケット送受信部13と、基準記憶部14と、履歴記憶部15と、を有する。なお、以下では、第一制御系10A、第二制御系10Bを、まとめて制御系10とも呼ぶこととする。
【0014】
制御系10は、ルータ機能部101と、VoIP機能部102と、状態監視部103と、バックアップ制御部104と、を有する。
【0015】
ルータ機能部101は、ルータとして機能するために必要な処理を行う処理部である。具体的には、ルータ機能部101は、基本機能であるルータ機能を実現するためのルーティング処理の他、PPPoE(Point to Point Protocol over Ethernet(登録商標))クライアント機能、SNTP(Simple Network Time Protocol)クライアント機能、DNS(Domain Name System)クライアント機能、DNSサーバ機能、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ機能、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)サーバ機能、FTP(File Transfer Protocol)サーバ機能等の付加機能を実現するための処理を行う。
【0016】
VoIP機能部102は、VoIP(Voice over Internet Protocol)に必要な処理を行う処理部である。具体的には、VoIP機能部102は、SIP(Session Initiation Protocol)処理およびRTP(Realtime Transport Protocol)処理を行う。
【0017】
状態監視部103は、他方の制御系10の状態監視部103と通信を行って、他方の制御系10の状態を監視する。具体的には、状態監視部103は、他方の制御系10の状態監視部103に生存確認信号を定期的に送信し、これに対する応答を所定時間内に受信したか否かにより、他方の制御系10の状態を監視する。また、他方の制御系10から生存確認信号を受信したならば応答を返信する。
【0018】
バックアップ制御部104は、ルータ機能部101およびVoIP機能部102の有効・無効を制御して、他方の制御系10に異常が生じた場合のバックアップを行う。具体的には、バックアップ制御部104は、他方の制御系10が正常である場合、ルータ機能部101およびVoIP機能部102のうちのいずれか一方(メイン機能と呼ぶ)を有効とし、他方(バックアップ機能と呼ぶ)を無効にする。他方の制御系10に異常が生じた場合、バックアップ機能を有効にして、他方の制御系10で実行中であった処理をバックアップ機能に引き継がせる。ここでは、第一制御系10Aは、ルータ機能部101をメイン機能、VoIP機能部102をバックアップ機能に設定している。一方、第二制御系10Bは、VoIP機能部102をメイン機能、ルータ機能をバックアップ機能に設定している。
【0019】
LANインターフェース部11は、LANに接続するためのインターフェースである。
【0020】
WANインターフェース部12は、WANに接続するためのインターフェースである。
【0021】
パケット送受信部13は、LANインターフェース部11を介してLANから、あるいはWANインターフェース部12を介してWANから受信したパケットの種別を判別し、このパケットを、その種別に応じて、有効にされているルータ機能部101あるいはVoIP機能部102に送信する。また、パケット送受信部13は、有効にされているルータ機能部101あるいはVoIP機能部102から受信したパケットの宛先を判別し、このパケットを、その宛先に応じてLANインターフェース部11あるいはWANインターフェース部12から送信する。
【0022】
基準記憶部14には、他方の制御系10の異常発生によりバックアップ制御部104がバックアップ機能を有効にした場合における、ルータ機能部101の付加機能の取扱い基準に関する情報が記憶されている。図2(A)は、基準記憶部14の登録内容例を模式的に表した図である。図示するように、基準記憶部14は、ルータ機能部101の付加機能毎にレコード140が登録されている。レコード140は、付加機能の識別情報(例えば名称)が登録されたフィールド1401と、この付加機能をバックアップ機能の有効時に有効にするか否かを示す設定フラグが登録されたフィールド1402と、を有する。ここで、設定フラグがオンの付加機能は有効とし、オフの付加機能は無効としている。
【0023】
履歴記憶部15は、ルータ機能部101およびVoIP機能部102の処理の実行履歴が記憶される。図2(B)は、履歴記憶部15の登録内容例を模式的に表した図である。図示するように、履歴記憶部15には、ルータ機能部101およびVoIP機能部102のそれぞれについてテーブル150が設けられている。テーブル150には、対応するルータ機能部101あるいはVoIP機能部102で処理が実行される毎にレコード151が追加される。レコード151は、処理の実行ID(例えばシーケンス番号)を登録するフィールド1510と、処理を担当する機能の種別を登録するフィールド1511と、処理内容を登録するフィールド1512と、処理の対象データ(パケット)そのものを格納するフィールド1513と、処理の実行状態を登録するフィールド1514と、処理の実行元(第一制御系10Aか、それとも第二制御系10Bか)を登録するフィールド1515と、を有する。ルータ機能部101およびVoIP機能部102は、処理を開始する毎に、対応するテーブル150にレコード151を追加し、このレコード151のフィールド1510〜1515に情報を登録する。そして、処理の実行状態が変わる毎にフィールド1514を更新する。
【0024】
図3(A)は、制御系10の動作フローを説明するための図である。このフローは、異常等によって制御系10が再起動されることにより開始される。
【0025】
まず、バックアップ制御部104は、後述の復旧処理を行って(S10)、メイン機能を有効にし、他方の制御系10のバックアップ機能に実行中の処理があるならば、この処理をメイン機能に引き継がせる。
【0026】
つぎに、状態監視部103は、他方の制御系10の状態監視部103に対して生存確認信号を送信し(S11)、他方の制御系10からの応答を待つ。状態監視部103は、所定時間内に応答を受信しなかった場合(S12でNO)、他方の制御系10が異常停止していると判断し、その旨をバックアップ制御部104に通知する。これを受けて、バックアップ制御部104は、バックアップ機能が無効にされているならば(S13でYES)、後述のバックアップ起動処理を実行して(S14)、バックアップ機能を有効にし、その後、S11に戻る。一方、バックアップ機能が有効にされているならば(S13でNO)、直ちにS11に戻る。
【0027】
一方、状態監視部103は、所定時間内に応答を受信した場合(S12でYES)、他方の制御系10が正常稼働していると判断し、その旨をバックアップ制御部104に通知する。これを受けて、バックアップ制御部104は、バックアップ機能が有効にされているならば(S15でYES)、後述のバックアップ停止処理を実行して(S16)、バックアップ機能を無効にし、その後、S11に戻る。一方、バックアップ機能が無効にされているならば(S15でNO)、直ちにS11に戻る。
【0028】
図3(B)は、復旧処理(S10)を説明するための図である。
【0029】
まず、バックアップ制御部104は、自制御系10のメイン機能(第一制御系10Aの場合はルータ機能部101、第二制御系10Bの場合はVoIP機能部102)を有効にする(S101)。なお、バックアップ機能(第一制御系10Aの場合はVoIP機能部102、第二制御系10Bの場合はルータ機能部101)は、無効のままとする。
【0030】
つぎに、バックアップ制御部104は、自制御系10のメイン機能を有効にした旨をパケット送受信部13に通知する(S102)。これにより、パケット送受信部13は、LANインターフェース部11あるいはWANインターフェース部12から受信した、メイン機能に関するパケットの送信先を自制御系10に設定する。
【0031】
つぎに、バックアップ制御部104は、履歴記憶部15に記憶されている、自制御系10のメイン機能に対応するテーブル150を参照して(S103)、フィールド1514に登録されている実行状態が処理実行中であることを示すレコード151を検索する。
【0032】
そして、レコード151を検索できなかった場合は(S104でNO)、このフローを終了する。
【0033】
一方、レコード151を検索できた場合(S104でYES)、バックアップ制御部104は、検索したレコード151のフィールド1510に登録されている実行IDの指定を伴う処理引継ぎをメイン機能に指示する。これを受けて、メイン機能は、指定された実行IDを含むレコード151のフィールド1515に登録されている実行元を自制御系10に更新する。また、メイン機能は、このレコード151のフィールド1513から対象データを取得し、この対象データを用いて、検索したレコード151のフィールド1511、1512に登録されている機能種別、処理内容により特定される処理を、このレコード151のフィールド1514に登録されている実行状態から引き継ぐ(S105)。その後、このフローを終了する。
【0034】
図4(A)は、バックアップ起動処理(S14)を説明するための図である。
【0035】
まず、バックアップ制御部104は、基準記憶部14を参照して、ルータ機能部101の各付加機能の設定フラグを調べる(S141)。
【0036】
つぎに、ルータ機能部101がメイン機能である場合(S142でNO)、つまり自制御系10が第一制御系10Aである場合、バックアップ制御部104は、基準記憶部14で設定フラグがオフに設定されているルータ機能部101の付加機能を無効にする(S143)。それから、バックアップ機能(ここでは、VoIP機能部102)を有効にして(S144)、S146に進む。
【0037】
一方、ルータ機能部101がバックアップ機能である場合(S142でYES)、つまり自制御系10が第二制御系10Bである場合、バックアップ制御部104は、基準記憶部14で設定フラグがオフに設定されている付加機能を除くルータ機能部101の各機能を有効にする(S145)。それから、S146に進む。
【0038】
S146において、バックアップ制御部104は、自制御系10のバックアップ機能を有効にした旨をパケット送受信部13に通知する(S146)。これにより、パケット送受信部13は、LANインターフェース部11あるいはWANインターフェース部12から受信した、バックアップ機能に関するパケットの送信先を自制御系10に設定する。
【0039】
つぎに、バックアップ制御部104は、履歴記憶部15に記憶されている、自制御系10のバックアップ機能に対応するテーブル150を参照して(S147)、フィールド1514に登録されている実行状態が処理実行中であることを示すレコード151を検索する。
【0040】
そして、レコード151を検索できなかった場合は(S148でNO)、このフローを終了する。
【0041】
一方、レコード151を検索できた場合(S148でYES)、バックアップ制御部104は、検索したレコード151のフィールド1510に登録されている実行IDの指定を伴う処理引継ぎをバックアップ機能に指示する。これを受けて、バックアップ機能は、指定された実行IDを含むレコード151のフィールド1515に登録されている実行元を自制御系10に更新する。また、バックアップ機能は、このレコード151のフィールド1513から対象データを取得する。そして、この対象データを用いて、検索したレコード151のフィールド1511、1512に登録されている機能種別、処理内容により特定される処理を、このレコード151のフィールド1514に登録されている実行状態から引き継ぐ(S149)。その後、このフローを終了する。
【0042】
図4(B)は、バックアップ停止処理(S16)を説明するための図である。
【0043】
まず、バックアップ制御部104は、バックアップ機能を無効にする(S161)。
【0044】
つぎに、ルータ機能部101がバックアップ機能である場合(S162でNO)、つまり自制御系10が第二制御系10Bである場合は、このフローを終了する。
【0045】
一方、ルータ機能部101がメイン機能である場合(S162でYES)、つまり自制御系10が第一制御系10Aである場合、バックアップ制御部104は、基準記憶部14を参照して、ルータ機能部101の各付加機能の設定フラグを調べる(S163)。それから、バックアップ制御部104は、基準記憶部14で設定フラグがオフに設定されているルータ機能部101の付加機能を有効にする(S164)。その後、このフローを終了する。
【0046】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0047】
本実施の形態のVoIPルータ1は、それぞれが他方のバックアップ機能を有し、ルータ機能およびVoIP機能を分担する二つの制御系10を有する。各制御系10は、自制御系10におけるルータ機能およびVoIP機能の処理の実行履歴を、他方の制御系10から参照可能に記録するとともに、他方の制御系10の状態を監視する。そして、他方の制御系10の異常を検出した場合に、バックアップ機能を有効にするとともに、実行履歴を参照して他方の制御系10が実行中であった処理を引き継ぐ。このため、本実施の形態によれば、一方の制御系10が実行中の処理を他方の制御系10で特定することができるので、一方の制御系10に異常が発生した場合に、この制御系10が実行中であった処理を他方の制御系10に引き継がせることができる。
【0048】
また、本実施の形態のVoIPルータ1において、第一制御系10Aは、バックアップ機能(VoIP機能部102)を有効にする場合に、メイン機能(ルータ機能部101)の一部の付加機能を無効にしている。このため、本実施の形態によれば、第一制御系10Aに要求されるハードウェアの処理能力を抑えることができる。
【0049】
また、本実施の形態のVoIPルータ1において、第二制御系10Bは、バックアップ機能(ルータ機能部101)を有効にする場合に、バックアップ機能(ルータ機能部101)の一部の付加機能は無効のままとしている。このため、本実施の形態によれば、第二制御系10Bに要求されるハードウェアの処理能力を抑えることができる。
【0050】
また、本実施の形態のVoIPルータ1において、各制御系10は、他方の制御系10の正常復帰を検出した場合に、バックアップ機能を無効にする。また、自制御系10が再起動等により正常復帰した場合に、実行履歴を参照して、他方の制御系10がバックアップ機能により実行中であった自制御系10のメイン機能の処理を引き継ぐ。このため、本実施の形態によれば、一方の制御系10が実行中の処理を他方の制御系10で特定することができるので、一方の制御系10が正常復帰した際に他方の制御系10が実行中であった一方の制御系10のメイン機能の処理を、一方の制御系10に引き継がせることができる。
【0051】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0052】
例えば、上記の実施の形態において、図1に示すVoIPルータ1の機能構成は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積ロジックICによりハード的に実現されるものでもよいし、あるいはDSP(Digital Signal Processor)などの計算機によりソフトウエア的に実現されるものでもよい。または、CPUと、揮発性メモリ等の主記憶と、HDD等の補助記憶装置と、NIC(Network Interface Card)、モデム等の通信インターフェースと、を備えたPC(Personal Computer)等の汎用コンピュータにおいて、CPUが所定のプログラムを補助記憶装置から主記憶上にロードして実行することにより実現されるものでもよい。ここで、第一制御系10Aおよび第二制御系10Bは、それぞれ異なるハードウェア上に構築されるものでもよい。
【0053】
また、上記の実施の形態では、ルータ機能およびVoIP機能を第一、第二制御系10A、10Bで分担するVoIPルータ1を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、複数の機能を二つの制御系で分担する様々な通信装置に適用可能である。
【0054】
また、上記の実施の形態では、第一制御系10Aおよび第二制御系10Bの二つの制御系を具備する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されない。複数の制御系を具備していてもよい。
【0055】
また、上記の実施の形態では、基準記憶部14にルータ機能部101の付加機能の取扱い基準に関する情報が記憶され、バックアップ機能の有効時に、設定フラグ1402がオンで付加機能を有効、オフで付加機能を無効と説明しているが、本発明はこれに限定されない。オン、オフの代わりに予め処理の重要度に応じて優先順位を設定してもよいし、履歴記憶部15からよく利用される付加機能の利用頻度を算出し、利用頻度に応じて優先順位を設定してもよい。そして、第二制御系10Bは、バックアップ機能であるルータ機能部101の有効時に、ハードウェア処理能力の許容範囲内で優先順位の高いものから順番にルータの付加機能を有効にし、第一制御系10Aは、バックアップ機能であるVoIP機能部102の有効時に、ハードウェア処理能力の許容範囲内に収まるように優先順位の低いものから順番にルータの付加機能を無効にしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:VoIPルータ、10A:第一制御系、10B:第二制御系、11:LANインターフェース部、12:WANインターフェース部、13:パケット送受信部、14:基準記憶部、15:履歴記憶部、101:ルータ機能部、102:VoIP機能部、103:状態監視部、104:バックアップ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能を有する通信装置であって、
それぞれがバックアップ機能を備え、前記複数の機能を分担する複数の制御系と、
前記複数の制御系が共用する記憶手段と、を有し、
前記制御系各々は、
自制御系における前記複数の機能の処理の実行履歴を前記記憶手段に記憶する履歴登録手段と、
他の前記制御系の状態を監視する監視手段と、
前記監視手段により他の前記制御系の異常を検出した場合に、前記バックアップ機能を有効にするとともに、前記記憶手段に記憶されている他の前記制御系の実行履歴を参照して他の前記制御系が実行中であった処理を特定し、当該特定した処理を引き継ぐバックアップ制御手段と、を有する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記バックアップ制御手段は、
前記監視手段により他の前記制御系の異常を検出した場合に、前記バックアップ機能を有効にして、他の前記制御系が担当する機能のうち、予め定められた機能を実行する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の通信装置であって、
前記バックアップ制御手段は、
前記バックアップ機能を有効にした場合に、自制御系が担当する機能のうち、予め定められた一部の機能を無効にする
ことを特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の通信装置であって、
前記バックアップ制御手段は、
前記監視手段により他の前記制御系の正常復帰を検出した場合に、前記バックアップ機能を無効にし、
前記制御系各々は、
正常復帰時に、前記記憶手段に記憶されている他の前記制御系の実行履歴を参照して他の前記制御系が前記バックアップ機能により実行中であった自制御系の処理を特定し、当該特定した処理を引き継ぐ
ことを特徴とする通信装置。
【請求項5】
複数の機能を有する通信装置のバックアップ方法であって、
それぞれがバックアップ機能を有し、前記複数の機能を分担する複数の制御系各々が、自制御系における前記複数の機能の処理の実行履歴を記録するとともに、他の前記制御系の状態を監視し、他の前記制御系の異常を検出した場合に、バックアップ機能を有効にするとともに、他の前記制御系の実行履歴を参照して他の前記制御系が実行中であった処理を特定し、当該特定した処理を引き継ぐ
ことを特徴とする通信装置のバックアップ方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate