説明

通信装置、位置関連情報取得方法およびプログラム

【課題】通信装置が、相手の通信装置の測位結果を取得できない場合でも、当該相手の通信装置の位置に関する情報を表示し得るようにする。
【解決手段】携帯電話機(通信装置)1において、近距離通信部131が、相手の通信装置と近距離通信を行う。そして、受信レベル測定部141が、相手の通信装置から送信される無線信号の受信レベルを測定する。受信レベル測定部141の測定する受信レベルに基づいて、近さ推定部151が相手の通信装置の近さを推定し、推定された近さを表示部171が表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離通信可能な通信装置、当該通信装置の位置関連情報取得方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの携帯型の通信装置を用いて、当該通信装置の位置情報を取得する幾つかの方法が示されている。例えば、特許文献1に記載の所在位置監視方法では、監視者(例えば親)の携帯電話端末に、被監視者(例えば子供)の外出先の位置情報やスケジュールを格納しておく。そして、監視者の携帯電話端末が、被監視者の携帯電話端末の測位結果を受信し、測位結果の位置と、スケジュールに基づく位置とが合致しないとき異常アラームの表示を行う。これにより、第三者機関のサーバやコンピュータを使用することなく、被監視者の所在位置を監視可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−81338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の所在位置監視方法では、監視者の携帯電話端末または被監視者の携帯電話端末のいずれかが通信圏外に位置している場合、監視者の携帯電話端末は、被監視者の携帯電話端末の測位結果を取得出来ない。これにより、監視者は、被監視者の監視を行うことが出来なくなってしまう。また、被監視者の携帯電話端末がGPS(Global Positioning System)圏外に位置するなど、被監視者の携帯電話端末が測位を行えない場合は、やはり、監視者の携帯電話端末は、被監視者の携帯電話端末の測位結果を取得出来ない。これにより、監視者は、被監視者の監視を行うことが出来なくなってしまう。すなわち、特許文献1に記載の所在位置監視方法では、通信装置(監視者の携帯電話端末)は、相手の通信装置(被監視者の携帯電話端末)の測位結果を取得できない場合、当該相手の通信装置の位置に関する情報を表示(ユーザに通知)出来なくなってしまう。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決することのできる通信装置、位置関連情報取得方法およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による通信装置は、所定の強度で無線信号を送信するよう要求する信号を送信する要求信号送信部と、前記所定の強度で送信される前記無線信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部と、前記受信レベル測定部の測定する受信レベルに基づいて、前記所定の強度で送信される前記無線信号の発信元である相手通信装置の近さを推定する近さ推定部と、前記近さ推定部の推定する前記近さを表示する近さ表示部と、を具備することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様による位置関連情報取得方法は、所定の強度で無線信号を送信するよう要求する信号を送信する要求信号送信ステップと、前記所定の強度で送信される前記無線信号の受信レベルを測定する受信レベル測定ステップと、前記受信レベル測定ステップにて測定する受信レベルに基づいて、前記所定の強度で送信される前記無線信号の発信元である相手通信装置の近さを推定する近さ推定ステップと、前記近さ推定ステップにて推定する前記近さを表示する近さ表示ステップと、を具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様によるプログラムは、近距離通信可能な通信装置としてのコンピュータに、所定の強度で無線信号を送信するよう要求する信号を送信する要求信号送信ステップと、前記所定の強度で送信される前記無線信号の受信レベルを測定する受信レベル測定ステップと、前記受信レベル測定ステップにて測定する受信レベルに基づいて、前記所定の強度で送信される前記無線信号の発信元である相手通信装置の近さを推定する近さ推定ステップと、前記近さ推定ステップにて推定する前記近さを表示する近さ表示ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信装置は、相手の通信装置の測位結果を取得できない場合でも、当該相手の通信装置の位置に関する情報を表示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態における本発明の一実施形態における携帯電話機の概略構成を示す構成図である。
【図2】同実施形態におけるアンテナの配置例を示す配置図である。
【図3】同実施形態において、無指向性アンテナを用いる場合の携帯電話機(近距離通信部)の通信可能領域の例を示す図である。
【図4】同実施形態において、指向性アンテナを用いる場合の携帯電話機(近距離通信部)の通信可能領域の例を示す図である。
【図5】同実施形態において、携帯電話機が指向性アンテナを用いて行う相手通信装置の方向の判定の例を示す説明図である。
【図6】同実施形態における、相手通信装置の方向および近さの表示例を示す説明図である。
【図7】同実施形態において、携帯電話機が相手通信装置の方向および近さを推定して表示する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における携帯電話機の概略構成を示す構成図である。
同図において、携帯電話機(通信装置)1は、無指向性アンテナ101と、指向性アンテナ111〜113と、アンテナ切換部121と、近距離通信部(要求信号送信部)131と、受信レベル測定部141と、近さ推定部151と、方向推定部161と、表示部(近さ表示部、方向表示部)171と、ネットワークアンテナ201と、ネットワーク通信部(相手位置情報取得部)211と、取得可否判定部221と、受信レベル判定部231と、要求信号生成部241と、相手情報記憶部301とを具備する。
【0012】
携帯電話機1は、特定の携帯電話機(以下、「相手通信装置」と称する)の位置情報を取得するよう設定されると、相手通信装置の位置情報を、携帯電話通信網(携帯通信サービス事業者によって提供される携帯電話用の通信ネットワーク)経由で取得可能か否かを判定する。取得できないと判定すると、携帯電話機1は、近距離通信手段を用いて相手通信装置の位置の推定を試み、推定結果を表示する。
【0013】
なお、携帯電話機1が、携帯電話通信網経由で行う通信は、基地局装置を介して行う通信の一例である。すなわち、携帯電話機1は、基地局装置との間で無線通信を行うことによって携帯電話通信網に接続し、携帯電話通信網経由で相手側の通信装置との通信を行う。以下では、携帯電話通信網経由で行う通信を、「ネットワーク通信」と称する。
なお、本発明の適用範囲は、携帯電話機に限らない。本発明は、相手通信装置を登録可能であり、かつ、近距離通信手段を用いて相手通信装置と通信可能な様々な通信装置に適用することができる。
【0014】
無指向性アンテナ101および指向性アンテナ111〜113は、いずれも近距離通信用のアンテナである。後述するように、無指向性アンテナ101は全方向に対して同様の利得(ゲイン)を示す。一方、指向性アンテナ111〜113は、特定の方向に対して大きい利得を示す。また、指向性アンテナ111と、112と、113とは、それぞれ異なる方向(携帯電話機1の方向に対する相対方向)に対して大きい利得を示す。
【0015】
なお、携帯電話機1の具備する指向性アンテナの数は、同図に示す3つに限らない。例えば、携帯電話機1が指向性アンテナを具備しない場合、後述する相手通信装置の近さの推定を行うことができる。また、携帯電話機1が1つ以上の指向性アンテナを具備する場合、後述する相手通信装置の近さの推定に加え、後述する相手通信装置の方向の推定を行うことができる。
【0016】
アンテナ切換部121は、無指向性アンテナ101および指向性アンテナ111〜113に対するアンテナの切換を行う。アンテナ切換部121の行うアンテナの切換により、無指向性アンテナ101および指向性アンテナ111〜113のうち何れか1つが選択され、近距離通信部131は当該アンテナを用いて近距離通信を行う。
【0017】
近距離通信部131は、アンテナ切換部121を介して接続されるアンテナを用いて近距離通信を行う。特に近距離通信部131は、相手通信装置の位置情報の判定を行う際、相手通信装置に対して、所定の強度で無線信号を送信するよう要求する無線信号を送信する。そして、近距離通信部131は、相手通信装置から送信される所定の強度の無線信号を受信し、受信した無線信号を受信レベル測定部141に出力する。
【0018】
近距離通信部131は、例えばBlutooth(登録商標)規格に従って近距離通信を行う。あるいは、近距離通信部131が、ZigBee(登録商標)または赤外線通信など、Blutooth(登録商標)以外の近距離通信を行うようにしてもよい。近距離通信部131が赤外線通信を行う場合、携帯電話機1は、無指向性アンテナ101および指向性アンテナ111〜113に代えて、赤外線発光部および赤外線受光部を具備する。
なお、近距離通信部131が、低周波の無線通信など無指向性の通信方式を用いて通信を行う場合、携帯電話機1は、後述する相手通信装置の近さの推定を行うことができる。また、近距離通信部131が、指向性のある通信方式を用いて通信を行う場合、携帯電話機1は、後述する相手通信装置の近さの推定に加え、後述する相手通信装置の方向の推定を行うことができる。
【0019】
受信レベル測定部141は、相手通信装置が所定の強度で送信した無線信号が近距離通信部131から出力されると、当該無線信号の受信レベルを測定する。特に受信レベル測定部141は、指向性アンテナ111〜113が受信する無線信号について、アンテナ毎(すなわち、指向性の方向毎)に受信レベルを測定する。
近さ推定部151は、受信レベル測定部141の測定する受信レベルに基づいて、相手通信装置の近さを推定する。
【0020】
方向推定部161は、受信レベル測定部141の測定する受信レベルに基づいて、相手通信装置の方向を推定する。
表示部171は、例えば液晶パネルなどの表示画面を有し、動画像や静止画像やテキストデータなど各種データを表示する。特に、表示部171は、近さ推定部151の推定する相手通信装置の近さや、方向推定部161の推定する相手通信装置の方向を表示する。
【0021】
ネットワークアンテナ201は、ネットワーク通信用のアンテナである。
ネットワーク通信部211は、ネットワークアンテナ201を用いたネットワーク通信により、電子メールデータや通話音声データなど、各種データの送受信を行う。特に、ネットワーク通信部211は、相手通信装置の位置情報を、携帯電話通信網経由で相手通信装置から取得する。
【0022】
取得可否判定部221は、ネットワーク通信部211による相手通信装置の位置情報の取得可否を判定する。例えば、携帯電話機1が携帯電話の通信圏外に位置する場合、取得可否判定部221は、ネットワーク通信部211による相手通信装置の位置情報の取得不可と判定する。取得可否判定部221の判定結果は、携帯電話機1が、近距離通信を行って相手通信装置の近さおよび方向を推定するか否かの判定結果として用いられる。すなわち、携帯電話機1は、取得可否判定部221が、ネットワーク通信部211による相手通信装置の位置情報の取得不可と判定すると、近距離通信を行って相手通信装置の近さおよび方向を推定する処理を行う。
【0023】
受信レベル判定部231は、受信レベル測定部141の測定する受信レベルが所定レベル以下か否かを判定する。要求信号生成部241は、受信レベル判定部231が、受信レベル測定部141の測定する受信レベルが所定レベル以下であると判定すると、受信した無線信号(所定の強度の無線信号)よりも強い強度で無線信号を送信するよう要求する信号を生成し、近距離通信部131に出力する。
相手情報記憶部301は、相手通信装置の近距離通信用識別子(ID)や、相手通信装置のメールアドレスや、相手通信装置のユーザの氏名など、相手通信装置に関する情報を予め記憶する。相手情報記憶部301は、例えば携帯電話機1の具備する記憶デバイスを用いて実現される。
【0024】
次に図2〜5を参照して、携帯電話機1(近距離通信部131)が、無指向性アンテナ101および指向性アンテナ111〜113を用いて行う通信について説明する。
図2は、アンテナの配置例を示す配置図である。同図に示すように、携帯電話機1は、その内部に無指向性アンテナ101と、指向性アンテナ111〜113と、ネットワークアンテナ201とを具備する。これらのアンテナのうち、無指向性アンテナ101および指向性アンテナ111〜113は、近距離通信部131(図1)が近距離通信を行うために用いるアンテナである。近距離通信部131は、アンテナ切換部121を介して何れかのアンテナに接続し、当該アンテナを用いて近距離通信を行う。
【0025】
図3は、無指向性アンテナ101を用いる場合の携帯電話機1(近距離通信部131)の通信可能領域の例を示す図である。同図において、携帯電話機1の通信可能領域が、領域A11にて示されている。ここでいう通信可能領域は、携帯電話機1および相手通信装置が、予め定められた一定の送信パワー(所定の強度)で無線信号を送信する場合に、携帯電話機1と相手通信装置との間で近距離通信可能な領域である。
なお、図を見易くするため、通信可能領域A11に対して携帯電話機1を大きく表示している。通信可能領域A11は、例えば、半径10メートル程度の円形状の領域である。なお、同図に示す通信可能領域A11の形状は理想的な通信環境における形状であり、障害物などの条件により変形する。
【0026】
図4は、指向性アンテナ112を用いる場合の携帯電話機1(近距離通信部131)の通信可能領域の例を示す図である。同図において、携帯電話機1の通信可能領域が、領域A21にて示されている。なお、図を見易くするため、通信可能領域A21に対して携帯電話機1を大きく表示している。通信可能領域A21は、例えば、長径10メートル程度の楕円形状の領域である。なお、図3の通信可能領域A11と同様、図4に示す通信可能領域A12の形状は、障害物などの条件により変形する。
また、図4に示す通信可能領域A12の楕円形状は一例であり、扇形など、他の形状をしていてもよい。
【0027】
図5は、携帯電話機1が指向性アンテナ111〜113を用いて行う相手通信装置の方向の判定の例を示す説明図である。
同図の例において、携帯電話機1の通信可能領域は、指向性アンテナ111を用いた場合に領域A31となり、指向性アンテナ112を用いた場合に領域A21となり、指向性アンテナ113を用いた場合に領域A33となる。これら領域A31〜A33は、例えば、図4に示す領域A21と同様の大きさおよび形状を有する領域である。そして、領域A31とA32と、および、領域A32とA33とは、それぞれ所定の角度θ(例えば45度)の間隔で配置されている。
また、相手通信装置である携帯電話機2は、領域A31内、かつ、領域A32およびA33の外に位置している。
【0028】
この場合、近距離通信部131は、指向性アンテナ111を用いて近距離通信を行うことで、相手通信装置から送信される無線信号を検出し得る。一方、近距離通信部131が、指向性アンテナ112または113を用いて近距離通信を行うと、相手通信装置は、これらのアンテナに対応する通信可能領域の外に位置するため、近距離通信部131は、相手通信装置から送信される無線信号を検出しない。
従って、方向推定部161は、各方向における近距離通信部131の受信信号のレベルを比較することにより、相手通信装置が、指向性アンテナ111の指向性の方向(領域A31の方向)に位置すると判定し得る。
【0029】
図6は、相手通信装置の方向および近さの表示例を示す説明図である。同図において、表示部171の有する表示画面のうち、部分D11には、相手通信装置の方向の判定結果が表示される。ここでは、図5の例に示されるように、指向性アンテナ111の指向性の領域A31に相手通信装置が位置すると、方向推定部161が判定した場合の表示例が示されている。
【0030】
また、部分D12には、相手通信装置の近さの判定結果が表示される。同図の表示例では、表示部171は、判定結果において相手通信装置が携帯電話機1に近いほど、表示画面に向かって右側にマークを表示する。ここでは、相手通信装置は携帯電話機1から遠くに位置すると判定されており、表示画面に向かって左側にマークが表示されている。
また、部分D13には、相手通信装置からの無線信号の受信レベルが数値で表示される。
【0031】
次に図7を参照して携帯電話機1の動作について説明する。
図7は、携帯電話機1が相手通信装置の方向および近さを推定して表示する処理手順を示すフローチャートである。携帯電話機1は、電源入(ON)状態となり、かつ、相手通信装置の位置情報を表示するよう設定された状態となると、他のアプリケーションの実行と並列して同図の処理を開始する。相手通信装置の位置情報を表示する設定は、例えば、携帯電話機1の具備する操作入力部がユーザの設定操作を受け付けて行われる。
【0032】
まず、取得可否判定部221が、相手通信装置の位置情報(測位結果)を、携帯電話通信網経由で取得不可か否かを判定する(ステップS101)。ここで、相手通信装置の位置情報を携帯電話通信網経由で取得不可であると判定すると、携帯電話機1は、近距離通信を用いて、相手通信装置の位置に関する情報(携帯電話機1に対する、相手通信装置の近さおよび方向)の取得を試みる。
【0033】
取得可否判定部221は、例えば、携帯電話機1が基地局装置との通信を確立できない場合、すなわち、携帯電話機1が、携帯電話通信網の通信圏外に位置する場合に、相手通信装置の位置情報を携帯電話通信網経由で取得不可と判定する。一方、携帯電話機1(ネットワーク通信部211)が基地局装置との通信を確立できる場合、すなわち、携帯電話機1が、携帯電話通信網の通信圏内に位置する場合に、相手通信装置の位置情報を携帯電話通信網経由で取得可能と判定する。
【0034】
なお、取得可否判定部221が、相手通信装置の位置情報を携帯電話通信網経由で取得不可か否かを判定する方法は、携帯電話機1が携帯電話通信網の通信圏外に位置するか否かによる方法に限らない。
例えば、携帯電話機1が、相手通信装置から定期的に位置情報を受信するようにし、相手通信装置からの位置情報を最後に受信してからの経過時間が所定時間以上になると、相手通信装置の位置情報を携帯電話通信網経由で取得不可と判定するようにしてもよい。
【0035】
あるいは、携帯電話機1がGPS装置を具備し、このGPS装置がGPS圏外(GPS衛星からの送信信号を適切に受信可能なエリアの外)に位置するなど、測位(自らの位置情報を取得)不可となった場合に、相手通信装置も測位(相手通信装置の位置情報を取得)不可と判定し、したがって、相手通信装置の位置情報を携帯電話通信網経由で取得不可と判定するようにしてもよい。
【0036】
ステップS101において、相手通信装置の位置情報を携帯電話通信網経由で取得不可でない(すなわち取得可能)と判定した場合(ステップS101:NO)、ステップS101に戻り、同図の処理を繰り返す。この場合、携帯電話機1は、ユーザによる相手通信装置の位置情報取得要求を受け付けると、図7の処理と並列に行われる処理において、携帯電話通信網経由で相手通信装置から、当該相手通信装置の位置情報を取得する。
【0037】
一方、ステップS101において、相手通信装置の位置情報を携帯電話通信網経由で取得不可と判定した場合(ステップS101:YES)、当該判定結果を受けて、アンテナ切換部121が、無指向性アンテナ101と近距離通信部131とを接続する(ステップS111)。
そして、要求信号生成部241が、相手通信装置に対して予め定められた信号強度(所定の強度)で無線信号を送信するよう要求する信号を生成し、近距離通信部131に出力する。そして、要求信号生成部241の生成した信号を取得した近距離通信部131は、当該信号を、無指向性アンテナ101を用いて近距離通信にて送信する(ステップS112)。
【0038】
その後、受信レベル判定部231は、(例えばステップS112で無線信号を送信してから一定時間以内に、)相手通信装置からの無線信号であると判定可能な受信レベルの無線信号(所定レベル以上の無線信号)を、相手通信装置から受信したか否かを判定する(ステップS121)。ここで、近距離通信部131の受信信号のレベルを受信レベル測定部141が測定し、その測定結果に基づいて、受信レベル判定部231が当該判定を行う。
受信していないと判定した場合(ステップS121:NO)、ステップS101に戻り、同図の処理を繰り返す。
【0039】
なお、ステップS121において、受信レベル判定部231が、所定レベル以上の無線信号を受信していないと判定した場合、ステップS112において、近距離通信部131が、前回送信された信号強度(所定の強度)よりも強い信号強度で無線信号を送信するよう要求する無線信号を、相手通信装置に送信するようにしてもよい。例えば、要求信号生成部241が、最大送信パワーの無線信号の送信を要求する信号を生成し、近距離通信部131が当該信号を送信するようにする。
これにより、携帯電話機1は、相手通信装置が遠くに位置する場合など、充分な強度の無線信号を取得できなかった場合にも、再送によって相手通信装置の位置に関する情報を取得できることが期待される。
【0040】
一方、ステップS121において、受信レベル判定部231が、所定レベル以上の無線信号を受信したと判定した場合(ステップS121:YES)、近さ推定部151が、受信レベル測定部141の測定結果に基づいて、相手通信装置の近さを推定する(ステップS131)。具体的には、近さ推定部151は、受信レベル測定部141の測定する受信レベルが高い(受信信号のパワーが大きい)ほど、相手通信装置が近くに位置すると判定し、受信レベルが低い(受信信号のパワーが小さい)ほど、相手通信装置が遠くに位置すると判定する。
【0041】
次に、携帯電話機1は、指向性アンテナ毎の処理を行う処理ループL11を開始する(ステップS141)。以下では、ループ変数をi(iは、1≦i≦指向性アンテナ数(本実施形態では3)の整数)と表記する。
ループL11において、まず、アンテナ切換部121が、i番目の指向性アンテナ(本実施形態では、指向性アンテナ111、112、113の順)を選択し、選択したアンテナと近距離通信部131とを接続する(ステップS142)。
【0042】
次に、ステップS112の場合と同様に、近距離通信部131が、相手通信装置に対して無線信号の送信を要求する無線信号を送信する。そして、受信レベル測定部141は、(例えば無線信号の送信を要求する無線信号を送信してから一定時間以内に受信する、)相手通信装置から送信され、近距離通信部131が受信する無線信号の受信レベルを測定し、測定結果を記憶する(ステップS143)。
【0043】
その後、携帯電話機1は、その具備する全ての指向性アンテナ(指向性アンテナ111〜113)についてループL11の処理を完了したか否かを判定する。残りの指向性アンテナがあると判定した場合は、ステップS141に戻り、残りの指向性アンテナに対して引き続きループL11の処理を行う(ステップS144)。
処理ループL11を完了すると、方向推定部161は、受信レベル測定部141の記憶する指向性アンテナ毎の受信レベルに基づき、相手通信装置の方向を推定する(ステップS151)。例えば、方向推定部161は、受信レベルの最も高い指向性アンテナの志向性の方向(例えば、図5における指向性アンテナ111の通信可能領域A31の長径方向)に相手通信装置が位置すると推定する。
そして、表示部171が、ステップS131において近さ推定部151の推定した相手通信装置の近さと、ステップS151において方向推定部161の推定した相手通信装置の方向とを表示する(ステップS152)。
その後、携帯電話機1は、予め定められた測定間隔時間の経過を待ち受ける(ステップS153)。
その後、ステップS101に戻り、同図の処理を繰り返す。
【0044】
以上のように、携帯電話機1は、近距離通信にて相手通信装置から送信される無線信号の受信レベルに基づいて、相手通信装置の位置に関する情報として、相手通信装置の近さを推定し表示する。従って、携帯電話機1は、相手通信装置の位置情報を取得できない場合でも、当該相手通信装置の位置に関する情報を表示し得る。
【0045】
また、携帯電話機1は、携帯電話通信網経由の通信(基地局装置を介する通信)にて相手通信装置の位置情報を取得できないと判定すると、近距離通信を行って、相手通信装置の近さを推定し、表示する。
従って、携帯電話機1のユーザは、操作を行う手間無しに、また、操作手順を覚える必要無しに、相手通信装置の近さを知ることが出来る。
【0046】
また、携帯電話機1は、相手通信装置から送信される無線信号の受信レベルを、複数の指向性アンテナに対応する複数の方向の各々について測定し、測定される受信レベルに基づいて相手通信装置の位置する方向を推定し、表示する。従って、携帯電話機1は、相手通信装置の位置情報を取得できない場合でも、当該相手通信装置の位置に関する情報として、相手通信装置の位置する方向を表示し得る。
【0047】
また、携帯電話機1は、相手通信装置から所定レベル以上の無線信号を受信したか否かを判定し、受信していないと判定すると、より強い強度で無線信号を送信するよう要求する。これにより、携帯電話機1は、相手通信装置が遠くに位置する場合など、充分な強度の無線信号を取得できなかった場合にも、再送によって相手通信装置の位置に関する情報を取得できることが期待される。
【0048】
なお、表示部171が、画面表示に加えて、あるいは画面表示に代えて、携帯電話機1の筐体を振動(以下、「バイブ振動」と称する)させることによって、近さ推定部151による相手通信装置の近さの判定結果を表示(通知)するようにしてもよい。例えば、受信レベルが強い場合にバイブ振動の周期を短くし、受信レベルが弱い場合に、バイブ振動の周期を長くする。すなわち、表示部171は、携帯電話機1の筐体を断続的に繰り返し振動させることにより、相手通信装置の近さを通知する。その際、例えば、相手通信装置が近いほど、すなわち、受信レベルが強いほど、表示部171は、バイブ振動を行わない時間間隔を短くする。一方、相手通信装置が遠いほど、すなわち、受信レベルが弱いほど、表示部171は、バイブ振動を行わない時間間隔を長くする。
【0049】
このように、表示部171がバイブ振動による通知を行うことで、携帯電話機1のユーザが携帯電話機1の表示画面を見ていない場合でも、近さ推定部151による相手通信装置の近さの判定結果を当該ユーザに通知できる。また、受信レベルに応じてバイブ振動の周期を変えることにより、携帯電話機1のユーザは、直感的に対象の装置の近さを把握できる。
【0050】
なお、携帯電話機1の通信可能領域A11は、5メートル、10メートル、100メートルなど切換可能であってもよい。例えば、携帯電話機1が近距離通信を行って他の携帯電話機とデータ交換を行う際は、通信可能領域を100メートルとして、データ交換の可能性を高め、相手通信装置の近さや方向を推定する際は、通信可能領域を10メートルとして、携帯電話機1の近くに相手通信装置が位置するか否かを判定可能としてもよい。
この携帯電話機1の通信可能領域の切換は、近距離通信部131の受信感度を切り換えることによって、あるいは、近距離通信用アンテナを異なる感度のものに切り替えることによって行うことができる。
【0051】
なお、携帯電話機1が、相手通信装置の方向を推定する方法は、上述した指向性アンテナを切り換える方法に限らない。例えば、携帯電話機1が、1つのアンテナと、当該アンテナの無給電端子に対して指向性を変える複数(例えば3つ)の位相回路とを具備し、位相回路を切り替えることで角度の異なる指向性特性を実現するようにしてもよい。これによって、アンテナを切り換える方法と同様、相手通信装置の方向を推定することができる。
【0052】
なお、携帯電話機1が、指向性アンテナ毎に近距離通信部131および受信レベル測定部141を具備し、各方向について、同時に受信レベルを測定するようにしてもよい。これにより、携帯電話機1は、相手通信装置から1つの無線信号を受信することによって相手通信装置の位置を推定することができる。
従って、携帯電話機1は、より速く相手通信装置の位置を推定することができる。また、携帯電話機1や相手通信装置の、通信を行う負荷を軽減させることができる。
【0053】
なお、携帯電話機1の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することで各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0054】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 携帯電話機
101 無指向性アンテナ
111〜113 指向性アンテナ
121 アンテナ切換部
131 近距離通信部
141 受信レベル測定部
151 近さ推定部
161 方向推定部
171 表示部
201 ネットワークアンテナ
211 ネットワーク通信部
221 取得可否判定部
231 受信レベル判定部
241 要求信号生成部
301 相手情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の強度で無線信号を送信するよう要求する信号を送信する要求信号送信部と、
前記所定の強度で送信される前記無線信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部と、
前記受信レベル測定部の測定する受信レベルに基づいて、前記所定の強度で送信される前記無線信号の発信元である相手通信装置の近さを推定する近さ推定部と、
前記近さ推定部の推定する前記近さを表示する近さ表示部と、
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
基地局装置を介する通信により前記相手通信装置の位置情報を取得する相手位置情報取得部と、
前記相手位置情報取得部による前記相手通信装置の位置情報の取得可否を判定する取得可否判定部と、
を具備し、
前記近さ表示部は、前記取得可否判定部が前記相手通信装置の位置情報を取得不可と判定すると、前記近さ推定部の推定する前記近さを表示する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記受信レベル測定部は、前記相手通信装置から送信される無線信号の受信レベルを、複数の方向の各々について測定し、
前記通信装置は、
前記受信レベル測定部の測定する前記受信レベルに基づいて、前記相手通信装置の位置する方向を推定する方向推定部と、
前記方向推定部の推定する前記方向を表示する方向表示部と、
を具備することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記受信レベル測定部が所定レベル以上の無線信号を検出したか否かを判定する受信レベル判定部、を具備し、
前記要求信号送信部は、前記所定レベル以上の無線信号を検出していないと前記受信レベル判定部が判定すると、前記所定の強度よりも強い強度で無線信号を送信するよう要求する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記近さ表示部は、前記近さ前記近さ推定部の推定する前記近さに応じた長さの時間間隔で断続的に前記通信装置を振動させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
所定の強度で無線信号を送信するよう要求する信号を送信する要求信号送信ステップと、
前記所定の強度で送信される前記無線信号の受信レベルを測定する受信レベル測定ステップと、
前記受信レベル測定ステップにて測定する受信レベルに基づいて、前記所定の強度で送信される前記無線信号の発信元である相手通信装置の近さを推定する近さ推定ステップと、
前記近さ推定ステップにて推定する前記近さを表示する近さ表示ステップと、
を具備することを特徴とする位置関連情報取得方法。
【請求項7】
近距離通信可能な通信装置としてのコンピュータに、
所定の強度で無線信号を送信するよう要求する信号を送信する要求信号送信ステップと、
前記所定の強度で送信される前記無線信号の受信レベルを測定する受信レベル測定ステップと、
前記受信レベル測定ステップにて測定する受信レベルに基づいて、前記所定の強度で送信される前記無線信号の発信元である相手通信装置の近さを推定する近さ推定ステップと、
前記近さ推定ステップにて推定する前記近さを表示する近さ表示ステップと、
を実行させるためのプログラム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−191291(P2012−191291A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51143(P2011−51143)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】