説明

通信装置、多機能プリンタ装置及びその通信制御方法

【課題】周期的に出現するアナログ信号のケーデンス判定により、信号ありなしを判定すると誤検出は少なくなるが重畳されたノイズ等により判定までの時間が増大する。
【解決手段】アナログ信号のオン/オフの判定結果をメモリしておき、そのアナログ信号のオンが検知された時点で、メモリにアクセスして過去に格納されたアナログ信号を調べる。そして、その信号検知から過去に、同様のアナログ信号の受信があったかどうかを確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置、多機能プリンタ装置及びその通信制御方法に関する。本発明は、特に、通信装置、例えば、ファクシミリ機能を備えた多機能プリンタ装置及びその装置における通信制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電話回線に接続する端末は、変調された信号だけでなく様々なケーデンスをもつトーナル信号を検出する必要が存在する。これは電話回線から端末が情報を受信し、人間がこの情報を聴取し、受信情報に応じて情報を発信することがあるため、人間の聴覚で認識できるように定めたためである。また、ファクシミリ装置(以下、FAX装置)の規格を定めた勧告初期のころに、トーナル信号を定めたという経緯もある。
【0003】
これらの信号は単一周波数で規定されており、電話端末においてこれらの信号を検知するためには、信号検出フィルタをその帯域に設定する必要がある。ノイズや信号レベルが低いとその検知自体が難しい。従って、これまでにもこれらの信号を検知しやすくするために信号を増幅したり、ノイズをフィルタリングすることが行われてきた。しかしながら、信号増幅やフィルタリングの調整の仕方によっては信号の誤検知になる等の問題も発生した。
【0004】
このため、トーナル信号検出方法として、これまでにも、例えば、特許文献1に記載のような方法が提案されている。この方法は周期的に信号の送出が決められていることに着目し、1個の信号だけで検出の判断するのではなく複数個の信号のオンオフを一連のケーデンスとし、その複数のオンオフが時間的範囲に納まっておれば信号を検知したと判断するものである。具体的ケーデンス検証手段としてはソフトタイマによる方法が提案されている。
【0005】
そして、周期的に到来するアナログ信号を複数個がオン時間オフ時間のケーデンスとして判断する方法により、信号の誤検知を抑えることにかなりの程度、成功している。
【0006】
呼出音(Calling tone:以下、CNG)信号は周波数1100Hzで0.5秒オンとオフ時間3秒の繰り返しである。トレランスタイミングは±15%と規定されている。発呼側がFAX装置であった場合もその呼出を可聴音で表す為に送出する。FAX装置の一般的仕様であるFAX/電話の切り替え、留守番電話接続(以下、留守電)での自動応答などはCNG信号検知を行うことで行う。留守番電話接続の仕様動作は公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−48754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記従来例では、ノイズが重畳される場合、トーナル信号検出においてそのケーデンス全体がスキップされてしまうことが発生しやすくなり、トーナル信号を検出するまでの時間が長くなるという問題が生じている。以上の説明ではCNG信号を代表として説明したが、同様のことは他のアナログ信号(例えば、ビジートーン、リングバックトーン等)であってもケーデンスをもつ信号にも生じえる問題である。
【0009】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、たとえノイズが重畳される場合でも、高精度にトーナル信号の検出が可能な通信機能を備えた通信装置、多機能プリンタ装置及びその通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の通信装置は、次のような構成からなる。
【0011】
即ち、通信回線を介して送信される予め定められたアナログ信号を検知して、通信動作を開始する通信装置であって、前記予め定められたアナログ信号を所定の周期で監視する監視手段と、前記監視手段により監視されたアナログ信号のON状態を判定する判定手段と、前記判定手段によりON状態と判定されたアナログ信号の情報を順次格納する記憶手段と、前記判定手段によりON状態と判定されたアナログ信号の情報がある場合、前記記憶手段にアクセスして、予め定められたシーケンスに従う時刻に対応するアドレスに前記ON状態と判定されたアナログ信号より以前にON状態と判定されたアナログ信号が格納されているかどうかを判別する判別手段と、前記判別手段により前記以前にON状態と判定されたアナログ信号が格納されていると判別された場合には、有効なケーデンスが存在すると判定し、前記通信動作を開始するよう制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また本発明を別の側面から見れば、上記構成の通信装置を組み込んだ多機能プリンタ装置であり、前記通信装置を用いてファクシミリ通信を行うファクシミリ手段と、記録媒体に記録を行う記録手段と、画像の読み取りを行うスキャナ手段と、記録媒体の画像のコピーを行うコピー手段とを有することを特徴とする多機能プリンタ装置を備える。
【0013】
さらに本発明をさらに別の側面から見れば、通信回線を介して送信される予め定められたアナログ信号を検知して、通信動作を開始する通信装置の通信制御方法であって、前記予め定められたアナログ信号を所定の周期で監視する監視工程と、前記監視工程において監視されたアナログ信号のON状態を判定する判定工程と、前記判定工程においてON状態と判定されたアナログ信号の情報をメモリに順次格納する記憶工程と、前記判定工程においてON状態と判定されたアナログ信号の情報がある場合、前記メモリにアクセスして、予め定められたシーケンスに従う時刻に対応するアドレスに前記ON状態と判定されたアナログ信号より以前にON状態と判定されたアナログ信号が格納されているかどうかを判別する判別工程と、前記判別工程において前記以前にON状態と判定されたアナログ信号が格納されていると判別された場合には、有効なケーデンスが存在すると判定し、前記通信動作を開始するよう制御する制御工程とを有することを特徴とする通信制御方法を備える。
【発明の効果】
【0014】
従って本発明によれば、例えば、留守電機能のメッセージのようなノイズが重畳される場合でも、高精度に、例えば、CNG信号のようなトーナル信号の検出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の代表的な実施例であるファクシミリ機能を備えた多機能プリンタ装置(MFP)の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】待機モードにおける動作を示すフローチャートである。
【図3】子機による監視モードの処理の詳細を示すフローチャートである。
【図4】図3に示されたオンタイム判定A(第1の判定)とオンタイム判定B(第2の判定)の詳細な処理を示すフローチャートである。
【図5】信号サンプリングの処理を示すフローチャートである。
【図6】読み込んだデータをメモリ上に配列として管理したエリアH(i)に順次格納する様子を示す図である。
【図7】実施例1と従来のケーデンス判定とを比較して説明した図である。
【図8】実施例1に従うCNG信号のオンタイム判定Aとオンタイム判定Bの様子を模式化して示す図である。
【図9】実施例2に従うオンタイム判定Aとオンタイム判定Bの詳細な処理を示すフローチャートを示す図である。
【図10】モデムデータの解析処理を示すフローチャートである。
【図11】メモリのエリアH(i)の特定のアドレスにCNG信号ONのデータが格納されている様子を示す図である。
【図12】実施例2に従うCNG信号のオンタイム判定Aとオンタイム判定Bの様子を模式化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。なお、既に説明した部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0017】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0018】
図1は本発明の代表的な実施例であるファクシミリ機能を備えた多機能プリンタ装置(以下、MFP装置)の機能構成を示すブロック図である。MFP装置は、プリンタ機能とスキャナ機能とコピー機能とファクシミリ機能とを備え、これらの機能を1つ筐体内に収容した装置である。プリンタ機能は記録部150により実現されインクジェット記録ヘッドを備え、複数色のインクを用いてカラー記録が可能な構成となっている。また、スキャナ機能は読取部140により実現され、コピー機能は読取部140と記録部150とが連携して実現する。なお、図1に示されてはいないが、MFP装置はホストコンピュータやUSBメモリスティックなどからの画像データを入力するためのインタフェースも備えている。
【0019】
図1に示すように、MFP装置には装置全体の動作制御や各機能の動作を制御するCPU110を備え、ROM120に格納された各種プログラムを読みだして、RAM130を作業領域として実行することにより、各機能の制御を行っている。また、MFP装置の各種機能を実行する際に、ユーザインタフェースとしてキーボード、LEDランプ、LCDディスプレイを備えた表示部160がMFP装置には備えられている。そして、表示部160のキーボードにはファクシミリ(FAX)機能を実現するために通信相手にダイヤルするための10キーも含まれている。
【0020】
RAM130には、読取部140により画像原稿を読み取ることで生成される画像データや通信回線を経て受信したファクシミリデータやインタフェースを介して入力された画像データを格納するためのバッファが設けられる。
【0021】
また、ファクシミリ機能の実現のためにMODEM(モデム)180、NCU190が設けられている。そして、以上説明したような構成要素はバス200を介して互いに接続される。
【0022】
さて、通信機能という観点からすれば、このMFP装置はファクシミリ機能の他にNCU190の電話端子にハンドセット210が接続されて、通常の音声通話をすることもできる。この場合、このMFP装置では、ファクシミリ通信機能をもつMFP装置本体が親機として動作し、ハンドセット210は子機として動作する。
【0023】
従って、通信回線はFAX端末(MFP装置)として終端し、通信制御と信号検知が行われる。或いは、NCU190の電話端子に接続された留守番電話機能をもつハンドセット210に通信回線を終端させ、その応答と発呼側送出信号をモニタする形態をとっても良い。この場合、ハンドセット210に通信回線からの信号電流や電圧を監視する機能を持ち、外付けの子機が使用状態を検知する。
【0024】
なお、ハンドセット210は有線でMFP装置と接続されていても良いし、無線インタフェースを介してMFP装置と接続されていても良い。CPU110は、NCU190に設けられた電流センサを監視することで、ハンドセット210の状態がオフフック(OFF−Hook)状態かオンフック(ON−Hook)状態かを判断する。ハンドセット210をオンフック(ON−Hook)状態にすると、MFP装置は自動着信モードになり、音声通話或いはファクシミリデータの着信待ちとなる。一方、ハンドセット210をオフフック(OFF−Hook)状態にすると、音声通話が可能になる。このような動作の切り替えはCPU110からの指示によりNCU190によりなされる。
【0025】
モデム180は、図1に示されているように、CPU110とバス200を経由して接続され、CPU110により制御される。モデム180は、基本的にITU−T勧告の仕様に従った変調復調能力を備える。モデム180は内部にCPU110からの設定に従い通信回線上のある範囲の周波数を検知できる数個のフィルタをもつ。また、フィルタの出力結果は任意のタイミングで読み込みが可能である。なお、アナログ信号検知はモデム180でなく、CPU110から出力をアクセス可能であれば、ハード構成のフィルタ回路でも構わない。
【0026】
次に以上の構成のMFP装置が備える通信機能の通信動作を実行する契機となる通信回線からのアナログ信号検出の処理について、いくつかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0027】
まず、実施例のタスクと割り込みとフローとの関係について簡単に説明する。実際には複数のタスクで構成しても構わないが、ここでは。装置待機と子電話監視タスクは1つのタスクで構成する。CPU110がこのタスクを実行する。また、周期的な割り込みを10ミリ秒に1回実行するようにCPU110に設定する。なお、周期的な割り込みでなく周期的に実行されるタスクにより、この機能を実現しても良い。割り込み周期は検知対象となるアナログ信号の特性によって定められる。ここでは、ケーデンスをもつアナログ信号の検知例として留守電モード設定時におけるCNG信号の検知を用いて説明する。もちろん、発呼後のビジートーン信号の検知やリングバックトーン信号の検知もフィルタに設定する周波数の値とケーデンスが異なるだけで同様に行える。
【0028】
ここでは、オン時間500ミリ秒程度と勧告されているCNG信号を例として取り上げるので、割り込み周期として10ミリ秒を適用する。
【0029】
ここで、留守電モード仕様について簡単に説明する。
【0030】
留守電モードは、呼の着信時、MFP装置(ここでは、FAX装置)自らがこれに応答するのではなく、外付けの留守電機能を備えたハンドセットの自動起動を優先させる。留守電機能が応答し、応答メッセージを通信回線に送出するので発呼側が人間の場合、その促した音声により要件メッセージを留守電に録音したり、或いは、FAX操作を行い送信への操作を行うように導ける。また、発呼側が自動発呼のFAX装置の場合、回線接続後CNG信号が送出されてくる。
【0031】
この実施例では、これら通信回線に出現する信号はNCU190を経てモデム180に入る。CPU110は、モデム180のフィルタを用いてこの信号を監視する。そして、その信号がCNG信号と判断された場合、留守電機能を備えたハンドセットから回線制御を切り替え、FAX受信を開始する。
【0032】
次に、以上のような動作を実現させる処理をフローチャートを参照して説明する。MFP装置(通信機能だけに着目すればFAX装置)は種々の動作モードがあるので、それぞれの動作モードについて説明する。
【0033】
・待機モード(音声通信、ファクシミリ受信待ち受け状態)
図2は待機モードにおける動作を示すフローチャートである。
【0034】
まず、ステップS110〜S130ではそれぞれ、FAX送信指示/音声発呼(S110)があるかどうか、着信(S120)があるかどうか、他のイベント(スキャナ処理、コピー処理、プリント処理など)の発生があるかどうかを調べる。このようにして、待機モードでは待機制御のタスクがFAX装置のイベントを監視し、それぞれの事象が生じると対応する動作に移行する。
【0035】
FAX送信指示/音声発呼があると処理はステップS180に進み、着信があると処理はステップS140に進み、他のイベントがあると処理はステップS190に進む。ステップS180において送信動作が終了すると、処理は再び待機モードに戻る。同様に、ステップS190において他のイベントが終了すると、処理は再び、待機モードに戻る。
【0036】
着信があるとステップS140において留守電が応答するのを待ち合わせ、着信応答を検知する(yes)と処理はステップS150に進み、子機による監視に移行する。子機による監視の処理については後で詳細に説明する。さらに、ステップS150ではFAX信号を検知したかどうかを調べ、FAX信号の検知があれば処理はステップS170に進み、ファクシミリ信号の受信処理を行う。これに対して、FAX信号の検知がなければ、処理は再び待機モードに戻る。ステップS140の判定について補足すると、回線の閉結を検知する(yes)と処理はステップS150に進める。
【0037】
・子電話監視モード(子機を監視するモード)
図3はステップS150の処理の詳細を示すフローチャートである。また、図4は図3に示されたオンタイム判定A(第1の判定)とオンタイム判定B(第2の判定)の詳細な処理を示すフローチャートである。
【0038】
まず、ステップS210では、モデム180のフィルタ設定をCNG検知用のパラメータに設定する。ステップS220では信号サンプリングハンドラ(割り込み)をイネーブルする。
【0039】
これにより、図5に示す信号サンプリングの処理が10ミリ秒周期で実行される。ここで、その処理について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0040】
ステップS610では信号検知処理がイネーブルであるかどうかを確認し、イネーブルでなければ処理を終了し、イネーブルであれば処理はステップS620に進む。
【0041】
ステップS620ではCPU110が周期的に(ここでは10ミリ秒)モデムフィルタの出力を読み込み、ステップS630では。その読み込んだデータを図6に示すようにメモリ上に配列として管理したエリアH(i)に順次格納する。これはCPUにより検索可能なデータとなる。さらに、ステップS640では、エリアの格納アドレスをインクリメントし次の格納に備える。
【0042】
このデータ格納は10ミリ秒周期で実行されるので、例えば、1秒前のデータが必要であればH(i−10ミリ秒×100]のアドレスをアクセスすることで入手可能となる。この配列は理想的にはFAX信号のITU−T勧告に従ったT0(45秒)分のデータを格納可能な容量があると良い。メモリ容量を削減したい場合には、CNG信号を最低2周期分+α程度格納可能な容量を備えれば良い。なお、このメモリはFIFOバッファ構造を採用し、配列を開始と終端とが接続され、循環的にデータが格納されるように動作させる。この場合、データは上書きされるので、CPU110はそのデータ始点終点の管理を行う。ただ、このようなバッファ構造は公知であるので、これ以上の説明は省略する。
【0043】
図3に戻って説明を続けると、CPU110は割り込みで保存データをアクセスすることができる。さて、処理はステップS230〜S250において留守電が接続している通信回線の信号監視を行う。即ち、ステップS230では、着信後に通信回線が切断されたかどうかを調べ、ステップS240では着信検出後、応答なくタイムアウトになったかどうかを調べ、ステップS250ではエリアH(i)に“ON”となっている信号があるかどうかを調べる。ここで、通信回線の切断があったり、タイムアウトとなったりするなら、子機による監視そのものを終了する。また、エリアH(i)に“ON”となっている信号がなければ引き続き信号監視を続ける。
【0044】
さて、ステップS250において、エリアH(i)に“ON”となっている信号があることを確認したなら、処理はステップS260に進む。ステップS260では、CNG信号の検知を開始し、現在CNG信号の周波数帯域がONであることを認識すると、処理はステップS270においてオンタイム判定Aの処理を実行する。
【0045】
ここで、オンタイム判定Aの処理の詳細について図4(a)と図8とを参照して説明する。オンタイム判定Aはリアルタイムの信号検定に相当する。ここでは、CNG信号のON状態が連続300ミリ秒継続した場合に、その信号がONであると判別する処理を説明する。なお、ここで説明するのは、CNG信号がONであることを判定する一手段であり、これを他の手段を用いて実現しても構わない。例えば、ある着目範囲時間のヒット率が70%以上であればCNG信号をONと判定しても良い。
【0046】
まず、ステップS410では、現在時刻に相当するエリアHのアドレスiをmに代入し、さらに、連続オン時間の判定の為の変数kを“0”に初期化する。次に、ステップS420では、受信信号にモデム180のフィルタが検知する信号周波数が存在するかを調べるために、エリアH(i)をアクセスする。ここでは、k=0から始めて、ステップS430でkの値をインクリメントしながら、ステップS440ではkの値が閾値Tcに達するまで、i=m−kで示すアドレスでエリアHをアクセスし、過去データに相当するデータがオンかどうかを調べる。
【0047】
ここで、閾値Tcは図8に示すように、信号がON状態にあるかどうかのチェックを行う時間に相当するアドレスの数を表わしている。ステップS420〜S440の処理により、現在時刻t=t0から過去に遡ってt=tpまでの時間、CNG信号が連続してONとなっているかどうかがしらべられる。CNG信号は500ミリ秒と勧告されているので通信回線での減衰やマージンを考慮して短い値を選択する。例えば、300ミリ秒等の時間、連続的にON状態にあるかどうかを判定する。
【0048】
ここで、エリアHに所定時間以上連続して信号がONとなっていなければ、CNG信号は検知されなかったとして図4(a)の処理は終了する。これに対して、所定の閾値以上の時間CNG信号が連続してONであれば、処理はステップS450に進んで、CNG信号が検知されたとする。さらに、処理はステップS460において、CNG信号の始まりのエッジとして、i=m−Tcで表わされる時刻をmとして記憶しておく。この値は再び過去に遡ってCNG信号の存在を判定するための間隔を算出する為に使用される。
【0049】
ここで再び図3に戻って説明を続けると、処理はステップS280において、CNG信号の検知がなされたかどうかを調べる。ここで、CNG信号が検知されたと判定されたなら、処理はステップS290に進み、CNG信号が検知されなかったと反転されたなら、処理はステップS230に戻り、上述の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS290ではオンタイム判定Bの処理を実行する。ここで、オンタイム判定Bの処理の詳細について図4(b)と図8とを参照して説明する。この処理では、検知されたCNG信号より以前にCNG信号が検知されていたかどうかを判定する。一回前のCNG信号の判定のために、ITU−T勧告に従うシーケンスとしてOFF時間分遡れば良い。勧告では3000m±15%。即ち、2550ミリ秒〜3450ミリ秒となる。図8では、これはToff1とToff2で示される時間に相当する。従って、図4(b)の処理では、Toff1〜Toff2の間にCNG信号の到来があるかどうかを調べる。
【0051】
まず、ステップS510で、kの値をk=Toff1に初期化する。ステップS520〜S540において、k=Toff1から始めて、kの値をインクリメントしながら、kの値が閾値Toff2に達するまで、i=m−kで示すアドレスでエリアHをアクセスし、過去データに相当するデータがオンかどうかを調べる。そして、k=Toff2に達するまでに、CNG信号のONを検知できなければ、処理は終了する。これに対して、k=Toff2に達するまでに、CNG信号のONを検知できれば、処理はステップS550に進む。
【0052】
ステップS550では、kの値を再び“0”に初期化し、前述のステップS420〜S440の処理と同様の処理を実行する。即ち、ステップS560では、受信信号にモデム180のフィルタが検知する信号周波数が存在するかを調べるために、エリアH(i)をアクセスする。ここでは、k=0から始めて、ステップS570でkの値をインクリメントしながら、ステップS580ではkの値が閾値Tcに達するまで、i=m−kで示すアドレスでエリアHをアクセスし、過去データに相当するデータがオンかどうかを調べる。そして、連続的にON状態にあるかどうかを判定する。
【0053】
ここで、エリアHに所定時間以上連続して信号がONとなっていなければ、CNG信号は検知されなかったとして図4(b)の処理は終了する。これに対して、所定の閾値以上の時間CNG信号が連続してONであれば、処理はステップS590に進んで、CNG信号が検知されたとする。その後、処理は終了する。
【0054】
再び図3に戻って説明を続けると、処理はステップS300において、CNG信号の検知がなされたかどうかを調べる。ここで、CNG信号が検知されたと判定されたなら、処理はステップS310に進み、CNG信号が検知されなかったと反転されたなら、処理はステップS230に戻り、上述の処理を繰り返す。ステップS310では、ケーデンス検定が成功としたと判断し、発呼側装置はFAX装置であるとしてFAX受信起動の指示を行う。
【0055】
以上説明した実施例の効果を従来例と比較して説明する。
【0056】
図7はこの実施例と従来のケーデンス判定とを比較して説明した図である。
【0057】
図7において、(a)はCNG信号到来タイミングと留守電応答が重畳したところを表す図である。(b)はCNG信号の到来を厳しくチェックするためにCNG信号の検知が1サイクル+α時間、遅延する従来例を示す図である。CNG信号到来時、留守電の応答音声にCNG信号の周波数付近の1100Hzに近いものが含まれていると、CNG信号がオンであるとして誤検知してしまうことがある。ここで、本物のCNG信号(CNGq)が到来した場合、ケーデンスとしてリアルタイムに判断するにはCNGqをそのまま有効とするか、CNGpを無効としてCNGqを新しい有効な信号として採用するかの判定が必要となる。従来例の(b)に示すように、CNGqを有効とすると遅延は発生しないが、CNGpを有効とするとその区間のタイマはリセットされ、次のタイミングでCNG信号の検知がスキップされ、結果としてケーデンスの判定は遅延する。
【0058】
これに対して、図7(c)に示すように、留守電の応答音声の重畳時に、CNG信号のONの判定がなされても過去に遡ってCNG信号の状態からケーデンス判定をすることできるので、ケーデンス判定を遅延なく行うことができる。
【実施例2】
【0059】
ここでは、モデム180とCPU110のインタフェースとしてシリアルコマンドIF(例えば、ATコマンド)を用いて制御を行う場合について説明する。この実施例におけるモデムは検出した事象をシリアルIFを通してCPUに送信する。
【0060】
この実施例ではモデムに対し予め検出すべき信号を指示しておくと、通信回線においてその信号が検出されるとデータとしてCPUに転送される。インタフェース(IF)は割り込みでも可能であるし、通常のタスクで行うことも可能である。いずれにしても、この実施例では、信号検知のタイミングを把握して、メモリのエリアHに受信信号をその受信順に保存する。
【0061】
この実施例における子電話監視モード(子機による監視モード)は実施例1で図3を参照して説明したのとほぼ同様である。
【0062】
図9はこの実施例に従うオンタイム判定A(図9(a))とオンタイム判定B(図9(b))の詳細な処理を示すフローチャートである。
【0063】
まず、オンタイム判定Aについて説明すると、ステップS710では、エリアH(i)に格納されたデータがCNG信号ONを表わしているかどうかを調べる。図11にはメモリのエリアH(i)の特定のアドレスにCNG信号ONのデータが格納されている様子が示されている。ここで、その格納されたデータがCNG信号ONを表わしているなら、処理はステップS720に進み、CNG信号ONが検知されたと判定する。これに対して、そのデータアドレスが空きであれば、CNG信号ONが検知されていないとして処理は終了する。
【0064】
次に、オンタイム判定Bについて、図9(b)と図12とを参照して説明する。
【0065】
ここでは図12に示すように、CNG信号ONの検知タイミング(t=t0)から過去に遡る。そして、t=(t0−Tk1)〜(t0−Tk2)に以前のCNG信号ONが検知されたかどうかを調べる。ここでは、前回のCNG信号ONの発生タイミングはON(500ミリ秒)+OFF(3000ミリ秒)の±15%、つまり図12に示されたような時刻の間となる。
【0066】
このため、ステップS750では、現在時刻に相当するエリアHのアドレスiをmに代入し、さらに、CNG信号ONの判定の為の変数kを“Tk1”に初期化する。その後、図4(b)のステップS520〜S540と同様の処理をステップS760〜S780において実行する。
【0067】
ステップS760〜S780において、k=Tk1から始めて、kの値をインクリメントしながらエリアHをアクセスする。そして、kの値が閾値Tk2に達するまで、i=m−kで示すアドレスでエリアHをアクセスし、過去にCNG信号ONのデータがあるかどうかを調べる。そして、k=Tk2に達するまでに、CNG信号ONを検知できなければ、処理は終了する。これに対して、k=Tk2に達するまでに、CNG信号ONを検知できれば、処理はステップS790に進む。
【0068】
ステップS790では、前回のCNG信号ONを発見として処理を終了する。
【0069】
これ以降の処理は実施例1と同様にFAX受信を起動する。
【0070】
上記のようにCPU110はモデム180からシリアルにデータを受信し、そのデータについて解析する。図10はその解析処理を示すフローチャートである。
【0071】
まず、ステップS810では、モデム180から受信したデータの内容を解析する。次に、ステップS820では、そのデータが信号検知のデータであるかどうかを調べる。ここで、信号検知のデータでなければ、処理はステップS860に進み、それに対応する処理を行う。これに対して、信号検知のデータであれば処理はステップS830に進み、タイマの値を読み込む。この値は、タイマとは本当のハード的タイマでも良いし、周期的タスクの起動毎にインクリメントする変数でも良い。いずれにしても、この値は10ミリ秒に換算した値に変換される。
【0072】
さらに、ステップS840では、受信した信号検知データがCNG信号のデータであるかどうかを調べ、CNG信号以外の信号であれば、処理はステップS870に進み、その信号に対応した処理を実行する。これに対して、そのデータがCNG信号のデータであれば、処理はステップS850に進み、エリアHの配列上に時間との関連づけてCNG信号データを記憶する。これは図11に示されている通りである。
【0073】
従って以上説明した実施例に従えば、CPU側でモデムからの情報を受信しメモリにCNG信号ONのデータを格納することでCPU側でケーデンス判定を行うことができる。この実施例では、CNG信号のONの判定はモデムが行うので、ケーデンス判定処理ではCNG信号ON時間の判定などは不要となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線を介して送信される予め定められたアナログ信号を検知して、通信動作を開始する通信装置であって、
前記予め定められたアナログ信号を所定の周期で監視する監視手段と、
前記監視手段により監視されたアナログ信号のON状態を判定する判定手段と、
前記判定手段によりON状態と判定されたアナログ信号の情報を順次格納する記憶手段と、
前記判定手段によりON状態と判定されたアナログ信号の情報がある場合、前記記憶手段にアクセスして、予め定められたシーケンスに従う時刻に対応するアドレスに前記ON状態と判定されたアナログ信号より以前にON状態と判定されたアナログ信号が格納されているかどうかを判別する判別手段と、
前記判別手段により前記以前にON状態と判定されたアナログ信号が格納されていると判別された場合には、有効なケーデンスが存在すると判定し、前記通信動作を開始するよう制御する制御手段とを有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記判別手段は、
前記記憶手段にアクセスして、前記判定手段によりON状態と判定されたアナログ信号の情報が格納された前記記憶手段のアドレスから連続する予め定められた以上のアドレスにON状態と判定されたアナログ信号の情報が格納されているかどうかを調べ、前記連続する予め定められた以上のアドレスにON状態と判定されたアナログ信号の情報が格納されている場合に、前記予め定められたアナログ信号が受信されたと判定する第1の判定手段と、
前記第1の判定手段により前記予め定められたアナログ信号が受信されたと判定された場合、さらに前記記憶手段をアクセスして、前記予め定められたシーケンスに従って以前の周期において前記予め定められたアナログ信号が受信されたかどうかを調べ、前記記憶手段に前記連続する予め定められた以上のアドレスにON状態と判定されたアナログ信号の情報が格納されている場合に、前記以前の周期においても予め定められたアナログ信号が受信されたと判定する第2の判定手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記監視手段と前記判定手段とは前記アナログ信号の変調復調を行うモデムにより実現されることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記予め定められたアナログ信号とはCNG信号であり、
前記通信動作とはファクシミリ受信の動作であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の通信装置を組み込んだ多機能プリンタ装置であり、
前記通信装置を用いてファクシミリ通信を行うファクシミリ手段と、
記録媒体に記録を行う記録手段と、
画像の読み取りを行うスキャナ手段と、
記録媒体の画像のコピーを行うコピー手段とを有することを特徴とする多機能プリンタ装置。
【請求項6】
音声通信を行う留守電機能の付いたハンドセットをさらに有し、
着信があると、前記ハンドセットが応答し、
前記CNG信号の検知により回線制御が前記ハンドセットから前記ファクシミリ手段に切り替わることを特徴とする請求項5に記載の多機能プリンタ装置。
【請求項7】
通信回線を介して送信される予め定められたアナログ信号を検知して、通信動作を開始する通信装置の通信制御方法であって、
前記予め定められたアナログ信号を所定の周期で監視する監視工程と、
前記監視工程において監視されたアナログ信号のON状態を判定する判定工程と、
前記判定工程においてON状態と判定されたアナログ信号の情報をメモリに順次格納する記憶工程と、
前記判定工程においてON状態と判定されたアナログ信号の情報がある場合、前記メモリにアクセスして、予め定められたシーケンスに従う時刻に対応するアドレスに前記ON状態と判定されたアナログ信号より以前にON状態と判定されたアナログ信号が格納されているかどうかを判別する判別工程と、
前記判別工程において前記以前にON状態と判定されたアナログ信号が格納されていると判別された場合には、有効なケーデンスが存在すると判定し、前記通信動作を開始するよう制御する制御工程とを有することを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−21621(P2013−21621A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155144(P2011−155144)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】