説明

通信装置、通信方法、及び通信処理プログラム

【課題】通信効率を考慮しつつ、コマンド信号に応答できずに通信エラーが発生することや決済処理に影響が出ること等を回避することが可能な通信装置、通信方法、及び通信処理プログラムを提供する。
【解決手段】インターフェースを介して複数のプロトコルによって他の通信装置と通信を行うことが可能な通信装置が他の通信装置から所定の信号を受信した場合に、当該信号の内容に基づいて、タイマにより設定された時間が到来してから応答するタイマ応答と、前記タイマにより設定された時間を待たずに直ちに応答する逐次応答との何れか一方を前記信号に対する応答として選択し前記他の通信装置に対して選択された応答を実行するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触型ICチップと非接触型ICチップ間の通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、日本国内において、交通系決済、クレジット決済、及び社員証による認証などの非接触のサービスに用いられる非接触型ICカードが普及しており、その殆どがFeliCa(登録商標)の通信方式を採用している。さらに、日本では海外に先駆けて、非接触型ICチップを搭載した携帯端末が普及している(例えば、おサイフケータイ(登録商標))。かかる携帯端末に搭載された非接触型ICチップにおいても、従来の非接触型ICカードとの互換性からFeliCaの通信方式が採用されている。このような携帯端末には、従来の接触型ICチップが搭載されたUIM(User Identity Module)も搭載されているが、UIMとFeliCa用の非接触型ICチップ(以下、「FeliCaチップ」という)とは完全に分離されている。そのため、携帯端末の機種交換をする際、FeliCaチップは使い捨てとなり、新たな携帯端末のFeliCaチップに情報を移行する必要がある。
【0003】
一方、外国では、非接触型ICカード技術の国際標準であるISO14443に規定されるType−A,Type−Bの通信方式がスタンダードになっている。そして、外国においても、UIMを搭載する携帯端末への非接触型ICチップの実装に向けて、交通系決済やクレジット決済などの非接触のサービスの実証実験が実施されており、かかる非接触型ICチップには、NFC(Near Field Communication)の規格で規定されるCLF(ContactLess Front-end)が採用されている。CLFでは、Type−A,Type−Bの通信方式に加えて、FeliCaの通信方式もType−Fとしてサポートしている。このようなCLFは、非接触のフィールド内でリーダライタ(以下、「R/W」という)からアンテナを介して受信したデータを、インターフェースを介してUIMに送信するようになっている。そして、このUIMには、CLFから受信したデータを処理する非接触インターフェースソフトウェアプログラム(以下、「非接触インターフェースソフト」という)が実装されている。なお、CLFとUIM間のインターフェースには、ETSI(European Telecommunications Standards Institute)により策定された標準仕様(ETSI TS 102.613)において、SWP(Single Wire Protocol)が採用されている。そして、CLFとUIM間のインターフェースは、SWIO(Single Wire protocol Input/Output)が活性化(ACTIVATED)された後、SHDLC(Simplified High level Data Link Control procedure)のプロトコル、又はCLT(ContactLess Tunnelling)のプロトコルを用いて信号(コマンド信号等)の送受信を行うように標準仕様に規定されている。
【0004】
以上のように、CLFを搭載する携帯端末(以下、「NFC対応端末」という)は、FeliCaチップを搭載する携帯端末とは異なり、UIM内に非接触インターフェースソフトが実装されるため、携帯端末の機種交換をする際、UIMの交換によって、非接触インターフェースソフトの情報を移行する必要が無い。よって、NFC対応端末は、UIMを交換するだけで、特別な処理を必要とすることなく、継続して非接触のサービスを利用できるというメリットがある。そして、NFCはGSMAでも採用されたことから、NFC対応端末の非接触インターフェースの実装がグローバルスタンダードになってきている。そのため、今後、日本国内においても、FeliCaチップ内に実装されているFeliCa用の非接触インターフェースソフトをUIMに実装することで、FeliCaチップ内蔵携帯端末から、NFC対応端末に移行されていくことが予想される。
【0005】
ところで、NFC対応端末は、非接触のフィールドに入った場合に、CLFは、R/Wからフィールドオン信号(Field ON)を受信し、続いて、R/Wからポーリングコマンド信号(Polling command)を受信するようになっている。ポーリングコマンド信号とは、これからどの通信方式(Type−A、Type−B、又はType−F)により通信を行うかを決めるためのコマンド信号である。そして、ポーリングコマンド信号に対する応答(例えば、Type−Aである旨)としてポーリングレスポンス信号(Polling response)をR/Wに返信する必要があるが、短い時間内(例えばゲート通過の場合、0.1秒以内)に応答しなければならないため、Type−A又はType−Bの場合、上記標準仕様では、CLFがポーリングレスポンス信号をR/Wに返信するように規定している。
【0006】
しかしながら、Type−F(FeliCa)の場合、上記標準仕様では、CLFがポーリングレスポンス信号を返信することを規定していない(CLFがポーリング応答機能をサポートしていない)ため、図7に示すように、CLFは、受信したポーリングコマンド信号をUIMに転送し、UIMから返信(つまり、UIMがポーリングコマンド信号に対する応答処理を担当)されたポーリングレスポンス信号をR/Wに返信することとなる。ここで、CLFからUIMへのポーリングコマンド信号の転送は、SHDLCのプロトコルではサポートされていないため、R/WとCLF間で用いられるCLTのプロトコルがそのまま用いられる。つまり、CLT LLC(Logical Link Control)を用いてCLFからUIMへポーリングコマンド信号が転送される。
【0007】
他方、NFC対応端末が、SWIOが非活性化(DEACTIVATED)以外の状態で非接触のフィールドに入ることにより、CLFがR/Wからフィールドオン信号を受信した場合、CLFは、SHDLCのプロトコルによってフィールドオン信号をUIMに送信(SHDLC LLCを用いて送信)することが上記標準仕様で規定されている。そして、CLFは、フィールドオン信号に対する肯定応答信号をSHDLCのプロトコルによってUIMから受信する。このSHDLCのプロトコルによる肯定応答は、上記標準仕様で規定される最大時間間隔(5ms)で行われることが推奨されている。これは、SHDLCのコマンド信号が連続して送信可能であるので、連続した各コマンド信号に対して、逐次、肯定応答を返していると、その分、通信のトラフィックが発生し処理内容が増加することにより処理速度が低下してしまうため、最大時間である5ms待って一度に肯定応答を返すことにより通信効率を向上させるという趣旨である。このように、各コマンド信号に対して所定の待ち時間が超えたときに応答を返す(これを、「タイマ応答」という)技術は、例えば特許文献1等でも提案されている。
【0008】
なお、NFC対応端末は、SWIOが非活性化の状態で非接触のフィールドに入った場合、ACT LLCでSWIOが活性化されることにより、UIMは非接触のフィールドに入ったとみなすので、CLFはフィールドオン信号をUIMに送信する必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−69511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、UIMへのフィールドオン信号の送信から、当該UIMからの肯定応答までの間に、CLFがR/Wからポーリングコマンド信号を受信する可能性がある。このとき、CLFは、未だ、SHDLCのプロトコルによる肯定応答待ちの状態であるので、R/Wから受信したポーリングコマンド信号を破棄してしまう。これは、CLFがSHLDCとCLTのプロトコルを混在することができないため、SHLDCのプロトコルによる通信が完結しないと、CLTのプロトコルによる通信を開始できないからである。
【0011】
したがって、ポーリングコマンド信号を一度しか送信しないR/Wの場合、この時点で通信エラーとなってしまうという問題がある。一方、ポーリングコマンド信号を再送するR/Wの場合でも、ポーリングコマンド信号の再送間隔は最低でも10ms程度と遅くなってしまうという問題がある。特に、交通系決済におけるゲート通過などの高速通信では0.1秒以内の決済が求められているため、最初のポーリングコマンド信号に応答できないことは、サービス上避けなければならない。
【0012】
そこで、本発明は、このような問題等に鑑みてなされたものであり、通信効率を考慮しつつ、コマンド信号に応答できずに通信エラーが発生することや決済処理に影響が出ること等を回避することが可能な通信装置、通信方法、及び通信処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、インターフェースを介して複数のプロトコルによって他の通信装置と通信を行うことが可能な通信装置であって、前記他の通信装置から所定の信号が受信された場合に、当該信号の内容に基づいて、タイマにより設定された時間が到来してから応答するタイマ応答と、前記タイマにより設定された時間を待たずに直ちに応答する逐次応答との何れか一方を前記信号に対する応答として選択する選択手段と、前記他の通信装置に対して前記選択手段により選択された応答を実行する応答実行手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の通信装置において、前記通信装置は接触型ICチップであり、前記他の通信装置は非接触型ICチップであり、前記非接触型ICチップが非接触のフィールドに入ることにより当該非接触型ICチップからフィールドオン信号が受信された場合、前記選択手段は、前記逐次応答を前記フィールドオン信号に対する応答として選択し、前記応答実行手段は、前記非接触型ICチップに対して前記選択手段により選択された逐次応答を実行することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の通信装置において、前記応答実行手段は、前記フィールドオン信号に対する前記逐次応答の実行後に前記非接触型ICチップから受信されたポーリングコマンド信号に対する応答を実行することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の通信装置において、前記フィールドオン信号は、SHDLCのプロトコルによって前記非接触型ICチップから受信され、前記ポーリングコマンド信号は、CLTのプロトコルによって前記非接触型ICチップから受信されることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項2又は3に記載の通信装置において、前記タイマ応答を実行するタイマ応答モードと、前記逐次応答を実行する逐次応答モードとの何れか一方を設定するモード設定手段を更に備え、前記タイマ応答モード設定中である場合において、前記非接触型ICチップからフィールドオン信号が受信された場合、前記モード設定手段は、前記タイマ応答モードから前記逐次応答モードに設定を切り換え、前記選択手段は、前記モード設定手段により切り換えられた前記逐次応答モードにしたがって、前記逐次応答を前記フィールドオン信号に対する応答として選択することを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の通信装置において、前記フィールドオン信号に対する前記逐次応答の実行後に前記非接触型ICチップから受信されたポーリングコマンド信号に対する応答が実行された場合には、前記モード設定手段は、前記逐次応答モードから前記タイマ応答モードに設定を切り換えることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の通信装置において、前記通信装置は、接触型ICチップが搭載されたUIM(User Identity Module)であることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明は、インターフェースを介して複数のプロトコルによって他の通信装置と通信を行うことが可能な通信装置における通信方法であって、前記通信装置が、前記他の通信装置から所定の信号を受信した場合に、当該信号の内容に基づいて、タイマにより設定された時間が到来してから応答するタイマ応答と、前記タイマにより設定された時間を待たずに直ちに応答する逐次応答との何れか一方を前記信号に対する応答として選択するステップと、前記通信装置が、前記他の通信装置に対して前記選択された応答を実行するステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の通信処理プログラムの発明は、インターフェースを介して複数のプロトコルによって他の通信装置と通信を行うことが可能な通信装置におけるコンピュータを、前記他の通信装置から所定の信号が受信された場合に、当該信号の内容に基づいて、タイマにより設定された時間が到来してから応答するタイマ応答と、前記タイマにより設定された時間を待たずに直ちに応答する逐次応答との何れか一方を前記信号に対する応答として選択する選択手段、及び、前記他の通信装置に対して前記選択手段により選択された応答を実行する応答実行手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、通信装置が他の通信装置から所定の信号を受信した場合に、当該信号の内容に基づいて、タイマにより設定された時間が到来してから応答するタイマ応答と、前記タイマにより設定された時間を待たずに直ちに応答する逐次応答との何れか一方を前記信号に対する応答として選択し前記他の通信装置に対して選択された応答を実行するように構成したので、通信効率を考慮しつつ、通信エラーが発生することや決済処理に影響が出ること等を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る携帯端末の概要構成例を示すブロック図である。
【図2】(A)は、本実施形態に係るUIM12の概要構成例を示すブロック図である。(B)は、CLF11とのインターフェースを担うC6端子から送受信するデータのプロトコルスタックの一例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る携帯端末1の基本動作を示す概念図である。
【図4】第一実施例に係るUIM12の応答処理を示すフローチャートである。
【図5】第二実施例に係る携帯端末1の動作を示す概念図である。
【図6】第二実施例に係るUIM12の応答処理を示すフローチャートである。
【図7】従来のNFC対応端末の動作を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、携帯端末に対して本発明を適用した場合の実施の形態である。
【0025】
先ず、図1を参照して、本実施形態に係る携帯端末の構成及び機能概要について説明する。
【0026】
図1は、本実施形態に係る携帯端末の概要構成例を示すブロック図である。図1に示すように、携帯端末1は、CLF11(他の通信装置の一例)、UIM12(通信装置の一例)、及びベースバンドプロセッサ13等を備えて構成されている。なお、携帯端末1には、例えば操作キー、ディスプレイ、スピーカ、及び移動体通信部等を備える携帯電話機やPDA等を適用できる。
【0027】
CLF11は、上述したように、NFCの規格で規定される非接触通信を行う非接触型ICチップであり、図示しないが、信号処理を担うCPU(Central Processing Unit)、所定のプログラムを記憶する不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリ等)、データを一時記憶する揮発性メモリ(例えばRAM)、UIM12との間のインターフェースを担うI/Oポート(SWIO)、及びベースバンドプロセッサ13との間のインターフェースを担うI/Oポート等を備えている。また、CLF11は、非接触のフィールド内でR/W2との間で各種信号の送受信を行うためのアンテナ11aに接続されている。なお、本実施形態においては、R/W2は、FeliCaの通信方式を採用しているものとする。
【0028】
一方、UIM12は、UICC(Universal Integrated Circuit Card)の一つであり、従来のSIM(Subscriber Identity Module)をベースに機能を拡張された接触型ICチップを搭載する。図2(A)は、本実施形態に係るUIM12の概要構成例を示すブロック図である。図2(A)に示すように、UIM12は、信号処理を担うCPU(Central Processing Unit)121、所定のデータやプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)122、データを一時記憶するRAM(Random Access Memory)123、所定のデータやプログラム等を記憶する不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリやEEPROM)124、及びI/Oポート(入出力ポート)125等を備えている。なお、UIM12はICカード基体Bに設けられ、ICカードとして携帯端末1に実装される。I/Oポート125は、図2(A)に示すように、ISO/IEC7816等によって定められた、C1〜C8の8個の端子を有する。ここで、C1端子は電源端子(VCC)であり、C5端子はグランド端子(GND)である。また、C2端子は、リセット端子(RST)であり、ベースバンドプロセッサ13とのインターフェースのリセット信号を入力するために用いられる。また、C3端子は、クロック端子(CLK)であり、ベースバンドプロセッサ13とのインターフェースのクロックを入力するために用いられる。また、C7端子は、ベースバンドプロセッサ13との間のインターフェースを担う端子であり、UIM12とベースバンドプロセッサ13との間の通信のために用いられる。また、C6端子は、CLF11との間のインターフェースを担う端子であり、UIM12とCLF11との間の通信のために用いられる。なお、CLF11とUIM12間のインターフェースには、上述したようにSWPが適用され、SHDLCのプロトコルとCLTのプロトコルによってCLF11と通信を行うことが可能になっている。図2(B)は、CLF11とのインターフェースを担うC6端子から送受信するデータのプロトコルスタックの一例を示す図である。図2(B)に示す例において、Upper layerは非接触インターフェースソフトにより異なり、本発明はupper layerに依存しない。また、本実施形態は、SHDLCに適用される。モード(後述する逐次応答モード、タイマ応答モード)を保持するのも、モードを判定するコードを持つのもSHDLCである。
【0029】
UIM12のCPU121は、本発明におけるモード設定手段、選択手段、及び応答実行手段として機能する。また、UIM12の不揮発性メモリ124には、電話番号や加入者ID等の個人情報、電子マネーの残高情報、及び上述した非接触インターフェースソフトが記録されている。
【0030】
ベースバンドプロセッサ13は、携帯端末1の通信(移動体通信網やインターネットを介して行われる通信)機能を担い、携帯端末1のユーザからの操作キーを介した操作指示に応じて各種処理を実行する。
【0031】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る携帯端末1の動作について説明する。
【0032】
図3は、本実施形態に係る携帯端末1の基本動作を示す概念図である。図3において、(A)は、R/W2とCLF11との間の信号の送受信タイミングを示し、(B)は、CLF11とUIM12間の信号の送受信タイミングを示す図である。
【0033】
なお、以下の説明においては、SWIOが非活性化(DEACTIVATED)以外の状態で携帯端末1が非接触のフィールドに入ることにより、CLF11が、FeliCaの通信方式を採用するR/W2からフィールドオン信号を受信した場合を想定する。SWIOが非活性化以外の状態で携帯端末1が非接触のフィールドに入る可能性としては、例えば、非活性化の状態をサポートしていない携帯端末(常時、活性化状態にある携帯端末1)の場合と、携帯端末1のユーザが操作キーを操作して該携帯端末1上で残高を確認した直後にR/W2に翳して決済する場合などが挙げられる。ここで、ユーザが操作キーを操作して残高の確認指示を入力すると、ベースバンドプロセッサ13は、直接、UIM12から残高情報を取得するのではなく、CLF11を介してUIM12に記録されている残高情報を取得するようになっている。従って、このときCLF11はSWIOを活性化の状態にさせるため、ユーザは残高を確認した直後はSWIOが活性化の状態にある。
【0034】
CLF11は、R/W2からのフィールドオン信号(Field ON)を受信すると、SHDLCのプロトコルによってフィールドオン信号(SHDLC Field ON)をUIM12に送信(SHDLC LLCを用いて送信)する。一方、UIM12は、CLF11からのフィールドオン信号(SHDLC Field ON)を受信すると、SHDLCのプロトコルの肯定応答を最大時間間隔(5ms)ではなく、逐次応答するべく、図3(B)に示すように、SHDLCのプロトコルによって肯定応答信号(SHDLC 肯定応答)を直ちに(即座に)CLF11に返信する。ここで、逐次応答とは、信号受信後、タイマにより設定された時間を待たずに直ちに応答することをいう。これにより、図3(A)に示すように、CLF11がR/W2からポーリングコマンド信号(Polling command)を受信する前のタイミングで、SIM12はCLF11に対して肯定応答を返すことができる。そのため、CLF11は、R/W2から受信したポーリングコマンド信号(Polling Command)を破棄することなく、CLTのプロトコルによってポーリングコマンド信号(CLT Polling command)をUIM12に送信(CLT LLCを用いて送信)することができる。
【0035】
ただし、SHDLCのプロトコルによる全て信号に対して逐次応答をした場合、上述したように通信効率が低下してしまう。そのため、以下の第一実施例及び第二実施例で説明するように、UIM12がCLF11から所定の信号を受信した場合に、当該信号の内容(例えば、フィールドオン信号であるか否か)に基づいて、タイマにより設定された時間が到来してから応答するタイマ応答と、タイマにより設定された時間を待たずに直ちに応答する逐次応答との何れか一方を信号に対する応答として選択し、CLF11に対して上記選択した応答を実行するように構成する。
【0036】
(第一実施例)
先ず、図4を参照して、第一実施例に係る携帯端末1の動作について説明する。
【0037】
図4は、第一実施例に係るUIM12の応答処理を示すフローチャートである。
【0038】
なお、第一実施例は、携帯端末1上でユーザが残高を確認しながらゲートを通過するなど、CLF11とベースバンドプロセッサ13間の通信と、CLF11とR/W2間の通信とが、同時に発生することを考慮しない場合の形態である。
【0039】
第一実施例の場合、UIM12はCLF11から信号を受信すると図4に示す処理を開始し、受信した信号がSHDLCのプロトコルによるフィールドオン信号(SHDLC Field ON)であるか否かを判定し(ステップS1)、SHDLCのプロトコルによるフィールドオン信号であると判定した場合には(ステップS1:YES)、逐次応答をフィールドオン信号(SHDLC Field ON)に対する応答として選択し、図3(B)に示すように、肯定応答信号(SHDLC 肯定応答)を直ちにCLF11に返信(選択した逐次応答を実行)する(ステップS2)。一方、SHDLCのプロトコルによるフィールドオン信号でないと判定した場合(ステップS1:NO)、タイマ応答を選択し、UIM12は、当該信号の受信から、タイマにより設定された最大時間間隔(5ms)が到来するまで待った後、肯定応答信号(SHDLC 肯定応答)をCLF11に返信(選択したタイマ応答を実行)する(ステップS3)。
【0040】
(第二実施例)
次に、図5及び図6を参照して、第二実施例に係る携帯端末1の動作について説明する。
【0041】
図5は、第二実施例に係る携帯端末1の動作を示す概念図であり、図6は、第二実施例に係るUIM12の応答処理を示すフローチャートである。
【0042】
なお、第二実施例は、携帯端末1上でユーザが残高を確認しながらゲートを通過するなど、CLF11とベースバンドプロセッサ13間の通信と、CLF11とR/W2間の通信とが、同時に発生することを考慮する場合の形態である。
【0043】
第二実施例の場合、UIM12は、逐次応答を実行する逐次応答モードと、タイマ応答を実行するタイマ応答モードの何れか一方を設定するための肯定応答モードフラグを持つ。そして、所定のイベント発生により図6に示す処理が開始されると、UIM12は、先ず、肯定応答モードフラグを“1”に初期化することによりタイマ応答モードを設定する(ステップS11)。
【0044】
次いで、UIM12は、CLF11から信号を受信したか否かを判定し(ステップS12)、CLF11から信号を受信していないと判定した場合には(ステップS12:NO)、ステップS13に進んで所定の処理を行いステップS12に戻る。一方、UIM12は、CLF11から信号を受信したと判定した場合には(ステップS12:YES)、当該受信した信号がSHDLCの信号であるか(SHDLCのプロトコルによる信号であるか)否かを判定する(ステップS14)。そして、UIM12は、当該受信した信号がSHDLCの信号であると判定した場合には(ステップS14:YES)、ステップS15に進み、当該受信した信号がSHDLCの信号でない(つまり、CLTの信号である)と判定した場合には(ステップS14:NO)、ステップS19に進む。
【0045】
ステップS15では、UIM12は、上記受信したSHDLCの信号がフィールドオン信号(SHDLC Field ON)であるか否かを判定し、フィールドオン信号(SHDLC Field ON)であると判定した場合(つまり、タイマ応答モード設定中である場合において、フィールドオン信号(SHDLC Field ON)が受信された場合)には(ステップS15:YES)、ステップS16に進み、フィールドオン信号(SHDLC Field ON)でない(例えば、残高確認コマンド信号)と判定した場合には(ステップS15:NO)、ステップS18に進む。
【0046】
ステップS16では、UIM12は、肯定応答モードフラグを“1”から“0”に変更することにより、図5に示すように、タイマ応答モードから逐次応答モードに設定を切り換え、切り換えられた逐次応答モードにしたがって逐次応答を選択し、肯定応答信号(SHDLC 肯定応答)を直ちにCLF11に返信(選択した逐次応答を実行)し(ステップS17)、ステップS12に戻る。
【0047】
一方、ステップS18では、UIM12は、現在設定中の肯定応答モードにて肯定応答信号(SHDLC 肯定応答)をCLF11に返信し、ステップS12に戻る。例えば、図5に示すように、SHDLC 肯定応答の直後に受信した残高確認コマンド信号(SHDLC 残高確認)に対する肯定応答である場合、逐次応答モード設定中であるので、肯定応答信号(SHDLC 肯定応答)が直ちにCLF11に返信(選択した逐次応答を実行)される。一方、図5に示すように、ポーリングレスポンス信号(CLT Polling response)の返信後である場合、タイマ応答モード設定中であるので、タイマにより設定された最大時間間隔(5ms)が到来してから肯定応答信号(SHDLC 肯定応答)がCLF11に返信(選択したタイマ応答を実行)される。
【0048】
一方、ステップS19では、UIM12は、上記受信したCLTの信号がポーリングコマンド信号(CLT Polling command)であるか否かを判定し、ポーリングコマンド信号(CLT Polling command)でないと判定した場合には(ステップS19:NO)、受信したCLTの信号に応じた応答を行い(ステップS20)、ステップS12に戻る。一方、UIM12は、ポーリングコマンド信号(CLT Polling command)であると判定した場合には(ステップS19:YES)、図5に示すように、ポーリングレスポンス信号(CLT Polling response)をCLF11に返信する(ステップS21)。このようにポーリングコマンド信号(CLT Polling command)に対する応答を実行した場合、UIM12は、肯定応答モードフラグを“0”から“1”に変更することにより、逐次応答モードからタイマ応答モードに設定を切り換え(ステップS22)、ステップS12に戻る。つまり、UIM12は、ポーリングレスポンス信号(CLT Polling response)送信後、逐次応答モードを解除することになる。
【0049】
以上説明したように、上記実施形態によれば、UIM12がCLF11から所定の信号を受信した場合に、当該信号の内容(例えば、フィールドオン信号であるか否か)に基づいて、タイマ応答と逐次応答との何れか一方を選択し、CLF11に対して上記選択した応答を肯定応答として実行するように構成し、UIM12がCLF11からフィールドオン信号(SHDLC Field ON)を受信した場合、逐次応答を肯定応答として選択、実行するようにした。従って、CLF11がR/W2からポーリングコマンド信号(Polling command)を受信する前のタイミングで、CLF11がUIM12からフィールドオン信号(SHDLC Field ON)に対する肯定応答を受信することができるので、通信効率を考慮しつつ、R/W2からのポーリングコマンド信号(Polling Command)に応答できないことにより、通信エラーが発生することや決済処理に影響が出ること等を回避することができる。また、UIM12がCLF11からフィールドオン信号(SHDLC Field ON)以外の信号を受信した場合、通常のタイマ応答を選択、実行するようにしたので、通信効率が低下してしまうことを回避することができる。
【0050】
なお、上記実施形態においては、本発明を携帯端末1に搭載されたUIMに対して適用した場合を例にとって説明したが、インターフェースを介して複数のプロトコル(例えば、USB(Universal Serial Bus)など)によって他の通信装置と通信を行うことが可能なその他の通信装置に対しても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 携帯端末
2 R/W
11 CLF
12 UIM
13 ベースバンドプロセッサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェースを介して複数のプロトコルによって他の通信装置と通信を行うことが可能な通信装置であって、
前記他の通信装置から所定の信号が受信された場合に、当該信号の内容に基づいて、タイマにより設定された時間が到来してから応答するタイマ応答と、前記タイマにより設定された時間を待たずに直ちに応答する逐次応答との何れか一方を前記信号に対する応答として選択する選択手段と、
前記他の通信装置に対して前記選択手段により選択された応答を実行する応答実行手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信装置は接触型ICチップであり、前記他の通信装置は非接触型ICチップであり、
前記非接触型ICチップが非接触のフィールドに入ることにより当該非接触型ICチップからフィールドオン信号が受信された場合、前記選択手段は、前記逐次応答を前記フィールドオン信号に対する応答として選択し、
前記応答実行手段は、前記非接触型ICチップに対して前記選択手段により選択された逐次応答を実行することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記応答実行手段は、前記フィールドオン信号に対する前記逐次応答の実行後に前記非接触型ICチップから受信されたポーリングコマンド信号に対する応答を実行することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記フィールドオン信号は、SHDLCのプロトコルによって前記非接触型ICチップから受信され、前記ポーリングコマンド信号は、CLTのプロトコルによって前記非接触型ICチップから受信されることを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記タイマ応答を実行するタイマ応答モードと、前記逐次応答を実行する逐次応答モードとの何れか一方を設定するモード設定手段を更に備え、
前記タイマ応答モード設定中である場合において、前記非接触型ICチップからフィールドオン信号が受信された場合、前記モード設定手段は、前記タイマ応答モードから前記逐次応答モードに設定を切り換え、
前記選択手段は、前記モード設定手段により切り換えられた前記逐次応答モードにしたがって、前記逐次応答を前記フィールドオン信号に対する応答として選択することを特徴とする請求項2又は3に記載の通信装置。
【請求項6】
前記フィールドオン信号に対する前記逐次応答の実行後に前記非接触型ICチップから受信されたポーリングコマンド信号に対する応答が実行された場合には、前記モード設定手段は、前記逐次応答モードから前記タイマ応答モードに設定を切り換えることを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信装置は、接触型ICチップが搭載されたUIM(User Identity Module)であ
ることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の通信装置。
【請求項8】
インターフェースを介して複数のプロトコルによって他の通信装置と通信を行うことが可能な通信装置における通信方法であって、
前記通信装置が、前記他の通信装置から所定の信号を受信した場合に、当該信号の内容に基づいて、タイマにより設定された時間が到来してから応答するタイマ応答と、前記タイマにより設定された時間を待たずに直ちに応答する逐次応答との何れか一方を前記信号に対する応答として選択するステップと、
前記通信装置が、前記他の通信装置に対して前記選択された応答を実行するステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項9】
インターフェースを介して複数のプロトコルによって他の通信装置と通信を行うことが可能な通信装置におけるコンピュータを、
前記他の通信装置から所定の信号が受信された場合に、当該信号の内容に基づいて、タイマにより設定された時間が到来してから応答するタイマ応答と、前記タイマにより設定された時間を待たずに直ちに応答する逐次応答との何れか一方を前記信号に対する応答として選択する選択手段、及び、
前記他の通信装置に対して前記選択手段により選択された応答を実行する応答実行手段として機能させることを特徴とする通信処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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