説明

通信路推定及びデータ検出方法

【課題】 装置の複雑さを軽減しつつ通信路変動に追従して優れた誤り率特性を達成できる通信路推定及びデータ検出方法を得る。
【解決手段】 無線通信システム10は、送信機12及び受信機14により構成され、送信機12からはN本の送信アンテナ261〜26Nから既知シンボルを含む送信フレームが各々送信される。各送信フレームは、受信機14の受信アンテナ281〜28Mで各々受信される。通信路推定及びデータ検出部20は、送信フレームに対応する受信データを複数のサブブロックに分割し、各サブブロック毎にSAGEアルゴリズムを適用して通信路推定及び送信フレームの検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信路推定及びデータ検出方法に係り、特に、複数の送受信アンテナを用いて無線通信を行うMIMOシステムにおいて、通信路を推定してデータ検出を行う通信路推定及びデータ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信において高速かつ大容量伝送を実現する手段として、複数の送受信アンテナを用いるMIMO(Multiple−Input Multiple−Output)システムが注目されている。
【0003】
しかしながら、MIMOシステムでは、通信路状態情報の精度が低いと、他のアンテナからの干渉により特性が大きく劣化する。従って、各アンテナから信号を検出するために、受信機において正確に通信路の状態を推定し、通信路の状態を知る必要がある。
【0004】
通信路の推定方法としては、例えば期待値最大化(EM:Expectation−Maximization)アルゴリズムが用いられる場合がある(例えば非特許文献1参照)。このEMアルゴリズムは、例えば非特許文献6に記載されたMISO(Multiple−Input Single−Output)システムや、非特許文献2に記載された時空間ブロック符号化(STBC)システムにおいて、通信路推定及びデータ検出に対し優れたアルゴリズムであることが知られている。
【0005】
通信路を推定する際に最尤(ML:Maximum Likelihood)推定が困難な場合、EMアルゴリズムは、通信路推定を複数回繰り返すことでML解に近づけることができる。
【0006】
また、EMアルゴリズムは、二つの繰り返しステップからなる対数尤度関数を用いる方法であり、以下のような処理を行う。
【0007】
まず、最初のステップであるExpectation−step(E−step)では、対数尤度関数の期待値を計算する。そして、二番目のステップであるMaximization−step(M−step)では、E−stepで求めた関数を最大にするパラメータを求める。
【0008】
しかしながら、従来のEMアルゴリズムは、通信路推定及びデータ検出に対するすべてのパラメータを同時に更新するため、収束速度が遅くなる、という問題があった。また、通信路の変動に対して効果的に追従することができない、という問題もあった。
【0009】
そこで、各パラメータを個別に逐次的に更新することで、EMアルゴリズムの収束速度が遅いという欠点を克服したSAGE(Space−Alternating Generalized EM)アルゴリズムが提案されている(例えば非特許文献5参照)。
【0010】
例えば非特許文献3に記載された直接拡散符号分割多元接続(DS−CDMA)システムや、非特許文献4に記載された時空間符号(STC)システムにおける通信路推定及びデータ検出に対して、SAGEアルゴリズムが適用されている。
【非特許文献1】C. N. Georghiades and J. C. Han, "Sequence estimation in the presence of random parameters via the EMalgorithm," IEEE Trans. Commun., vol. 45, no.3, pp.300-308, March 1997.
【非特許文献2】B. Lu and X. Wang and Y. Li, "Iterative receivers for space-time block coded OFDM systems in dispersive fading channels," IEEE Trans. Wireless Commun., vol. 1, no. 2, pp.213-225, April 2002.
【非特許文献3】A. Kocian and B. H. Fleury, "Iterative joint symbol detection and channel estimation for DS/CDMA via the SAGE algorithm," IEEE PIMRC 2000. vol. 2, pp.1410-1414.
【非特許文献4】Y. Xie and C. N. Georghiades, "Two EM-type channel estimation algorithm for OFDM with transmitter diversity," IEEE Trans. commun., vol. 51, no.1, pp.106-115, Jan. 2003.
【非特許文献5】J. A. Fessler and A. O. Hero, "Space-alternating generalized expectation-maximization algorithm," IEEE Trans. on Signal Processing, vol. 42, no.10, pp.2664-2677, Oct 1994.
【非特許文献6】C. H. Aldana and J. Cioffi, "Channel tracking for multiple Input, signal output systems using EM algorithm," IEEE ICC 2001. vol.2, pp. 586-590.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、MIMOシステムは、無線通信において高速かつ大容量伝送を実現する手段として有効であると共に、通信路推定の精度が重要となるが、装置の複雑さを軽減しつつ通信路変動に追従して優れた誤り率特性を達成できる方法については未だ提案されていない。
【0012】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、装置の複雑さを軽減しつつ通信路変動に追従して優れた誤り率特性を達成できる通信路推定及びデータ検出方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、複数の送信アンテナから送信された送信データを複数の受信アンテナで受信し、各受信アンテナで受信した受信データに基づいて、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の通信路利得を推定して前記送信データを検出する通信路推定及びデータ検出方法において、前記受信データ及び所定の送信データ推定値に基づいて、各送信アンテナとの間の通信路についての通信路利得を表す通信路推定値を各受信アンテナ毎に求めるステップと、前記送信データ推定値を更新すべき送信アンテナを決定するステップと、前記受信データの期待値を各受信アンテナ毎に求めるステップと、前記期待値が最大となる送信データ推定値を各受信アンテナ毎に求めるステップと、前記期待値が最大となる送信データ推定値及び前記通信路推定値に基づいて、前記更新すべき送信アンテナに対応する送信データ推定値を各受信アンテナ毎に更新するステップと、各受信アンテナ毎に更新された送信データ推定値を合成して復号するステップと、更新後の送信データ推定値を前記所定の送信データ推定値として設定するステップと、を含む処理を、少なくとも前記送信アンテナの数以上繰り返すことを特徴とする。
【0014】
この発明は、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナを有する多入力多出力のシステムに適用される発明であり、複数の送信アンテナから送信された送信データを複数の受信アンテナで受信し、各受信アンテナで受信した受信データに基づいて、送信アンテナと受信アンテナとの間の通信路利得を推定して送信データを検出する。
【0015】
各送信アンテナとの間の通信路についての通信路利得を表す通信路推定値は、受信データ及び所定の送信データ推定値に基づいて、各受信アンテナ毎に求める。なお、請求項5に記載したように、前記通信路推定値は、最小平均二乗誤差法により求めることができる。
【0016】
所定の送信データ推定値は、最初の通信路推定値の推定では初期送信データ推定値が設定され、それ以降は、前回更新した送信データ推定値である。
【0017】
初期送信データ推定値は、請求項2に記載した手順で求めることができる。すなわち、請求項2記載の発明は、前記送信データは、予め定めた既知データを含み、前記既知データに対応する受信データ及び前記既知データに基づいて初期通信路推定値を求め、求めた初期通信路推定値及び前記既知データに対応する受信データに基づいて、初期送信データ推定値を求め、求めた初期送信データ推定値を前記所定の送信データ推定値として設定することを特徴とする。なお、既知データは、各送信アンテナから送信される送信データの先頭に予め挿入しておく。 また、請求項4に記載したように、前記初期送信データ推定値は、最尤検出により算出することができる。
【0018】
そして、送信データ推定値を更新すべき送信アンテナを決定する。すなわち、本発明では多入力多出力のシステムにSAGEアルゴリズムを適用し、各送信アンテナ全てについての送信データ推定値を同時に更新するのではなく、一部の送信アンテナについての送信データ推定値を逐次更新していく。これにより、演算が収束する速度を速くすることができる。
【0019】
次に、SAGEアルゴリズムのE−stepの処理として受信データの期待値を各受信アンテナ毎に求め、M−stepの処理として期待値が最大となる送信データ推定値を各受信アンテナ毎に求める。
【0020】
そして、期待値が最大となる送信データ推定値及び通信路推定値に基づいて、更新すべき送信アンテナに対応する送信データ推定値を各受信アンテナ毎に更新し、各受信アンテナ毎に更新された送信データ推定値を合成して復号する。
【0021】
更新後の送信データ推定値は、所定の送信データ推定値として設定され、次の繰り返し計算に用いられる。
【0022】
これらの処理を、少なくとも送信アンテナの数以上繰り返す。すなわち、SAGEアルゴリズムでは全ての送信アンテナの送信データ推定値を同時に更新するのではなく、逐次的に送信データ推定値を更新するため、最低限、送信アンテナの数だけ上記の処理を繰り返し、各送信アンテナにつき1回は送信データ推定値を更新する。
【0023】
このように、多入力多出力システムにSAGEアルゴリズムを適用して、通信路推定値の推定及びデータ検出を行うため、装置の複雑さを軽減しつつ優れた誤り率特性を達成できる。
【0024】
なお、請求項3に記載したように、前記送信データを複数のサブブロックに分割し、前記サブブロック毎に前記処理を少なくとも前記送信アンテナの数以上繰り返すと共に、サブブロックの最後のデータについての通信路推定値に基づいて、次のサブブロックの初期送信データ推定値を求め、求めた初期送信データ推定値を前記所定の送信データ推定値として設定するようにしてもよい。
【0025】
すなわち、サブブロック間で通信路推定値を受け渡し、サブブロック毎にSAGEアルゴリズムを適用することにより、演算量を低減しつつ通信路変動に追従して優れた誤り率特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明は、装置の複雑さを軽減しつつ通信路変動に追従して優れた誤り率特性を達成できる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0028】
図1には、本発明に係る無線通信システム10の概略ブロック図を示した。図1に示すように、無線通信システム10は、送信機12及び受信機14により構成されている。
【0029】
送信機12は、シンボルマッピング部16及びデマルチプレクサ18を含んで構成されており、受信機14は、通信路推定及びデータ検出部20、マルチプレクサ22、及びシンボルデマッピング部24を含んで構成されている。
【0030】
デマルチプレクサ18には、N本(N≧2)の送信アンテナ261〜26Nが接続されており、通信路推定及びデータ検出部20には、M本(M≧2)の受信アンテナ281〜28Mが接続されている。
【0031】
シンボルマッピング部16は、入力信号を変調方式に応じてシンボルマッピングして送信シンボル行列Xをデマルチプレクサ18へ出力する。
【0032】
例えば、送信信号をQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)により変調して送信する場合には、2ビットで1つの送信シンボルを生成するので、(送信ビット、送信シンボル)とすると、iを虚数として、(10,1+i)、(00,−1+i)、(01,−1−i)、(11,1−i)のように、4種類の送信シンボルを複素平面上で表現できる。この場合、送信シンボルの実部及び虚部の何れか一方の正負が反転してしまった場合には、2つの送信ビットのうち何れか1ビットが誤ったと判定でき、実部及び虚部の両方の正負が反転してしまった場合は2つの送信ビット全てが誤ったと判定できる。このように、シンボルマッピング部16では、グレーマッピングに従い、送信信号を複素平面上の何れかの送信シンボルにマッピングする。
【0033】
デマルチプレクサ18は、送信シンボル行列Xから各送信アンテナ261〜26Nで送信すべき送信シンボル系列X1〜XNを生成し、それぞれ対応する送信アンテナ261〜26Nへ出力する。これにより、各送信アンテナから各送信アンテナに対応した送信シンボル系列が送信される。
【0034】
なお、送信シンボル系列(行列)Xn(n=1,2,…N)は、各送信アンテナから送信される送信フレームのフレーム長をLとして、Xn=[Xn1,Xn2,…XnLTで表される。ここで、上付きTは転置を表し、XnLは、n番目の送信アンテナから送信されたL番目の送信シンボルを表す。
【0035】
また、各送信シンボル系列Xnの先頭に予め定められたp個の既知シンボルを挿入して送信する。
【0036】
受信機14では、各送信アンテナ261〜26Nから送信された信号が各受信アンテナ281〜28Mによって受信され、通信路推定及びデータ検出部20に取り込まれる。
【0037】
m番目の受信アンテナで受信されたk番目の受信シンボルYmkは、次式で表される。
【0038】
【数1】

【0039】
なお、Hkn,mは複素ガウスランダム変数であり、n番目の送信アンテナと、m番目の受信アンテナとの間の通信路利得であり、Wkmはゼロ平均、雑音の分散σ2を持つガウス雑音である。
【0040】
ここで、受信シンボル系列(行列)Ym(m=1,2,…M)を、Ym=[Ym1,Ym2,…YmLTとおくと、上記(1)式は次式のように表すことができる。
【0041】
【数2】

【0042】
ここで、X=[diag(X1)…diag(XN)]はL×NLの送信シンボル行列、Hm=[H1,m…HN,mTはNL×1の通信路ベクトル、Hn,m=[H1n,m…HLn,mTはL×1の通信路ベクトル、Wm=[W1m…WLmTはL×1の雑音ベクトルである。
【0043】
通信路推定及びデータ検出部20では、詳細は後述するが、各受信アンテナ281〜28Mで受信された受信シンボル系列Y1〜YM等に基づいて各送信アンテナ及び各受信アンテナ間の通信路利得を表す通信路ベクトルHmを推定し、これに基づいて送信シンボル系列Xnを推定する。
【0044】
次に、本実施形態に係る通信路推定に用いられるアルゴリズムであるSAGEアルゴリズムについて説明する前に、上記非特許文献1及び非特許文献6等に記載されたEMアルゴリズムについて説明する。
【0045】
まず、b∈Bを、確率分布p(y|b)を用いて観測ベクトルy∈Yから推定されるパラメータベクトルとする。EMアルゴリズムは、bのML推定が困難な場合に、演算を繰り返すことでbの推定値を求めるものである。アルゴリズムの導出は、観測不可能な完全データz∈Zに依存し、もしこれが観測可能であれば、ML推定値は簡単に計算できる。
【0046】
EMアルゴリズムのフレームワーク内で不完全データとして呼ばれる観測ランダム変数yは、図2に示すように、写像z|→y(z)という関係をもつ。
【0047】
EMアルゴリズムは、不完全データと所望の推定データを用いて、完全データの期待値を算出するE−step(expectation step)と、E−stepで求めた関数を最大化するM−step(maximization step)の二つの反復体系からなる。
【0048】
E−stepにおける条件付き期待値Q(b|b[i])のi回目の繰り返し計算の計算式は次式で表される。
【0049】
【数3】

【0050】
M−stepでは、次式で示すように、上記(3)式で求めた関数を最大にするパラメータベクトルを求め、これを(i+1)回目の繰り返し計算における推定値b[i+1]として更新する。
【0051】
【数4】

【0052】
完全データzは実際には観測できないので、Λ(z|b)の最大化は、不完全データyとパラメータベクトルbの最新の推定値を用いて行う。
【0053】
[i]がEMアルゴリズムの初期値b[0]によって生成された推定値の系列であれば、Λ(y|b[i])は減少することはない(単調特性)。EMアルゴリズムは初期値に依存し、その収束速度は欠損情報の割合と反比例する。また、この収束速度は完全データスペースの大きさにも反比例する。
【0054】
次に、SAGEアルゴリズムについて説明する。ここでは、一例として非特許文献4に記載されたFessler等によって提案されたSAGEアルゴリズムについて説明する。
【0055】
SAGEアルゴリズムでは、繰り返しi回目で全てのパラメータを同時に更新するのではなく、S=S[i]によってインデックスがつけられたbの部分集合bSのみが更新され、次式で示すそれ以外の部分集合は更新されない。
【0056】
【数5】

【0057】
この部分的に更新する操作により、SAGEアルゴリズムの収束速度はEMアルゴリズムよりも早くなる。
【0058】
E−stepにおけるi回目の繰り返し計算の計算式は次式で表される。
【0059】
【数6】

【0060】
また、M−stepにおける繰り返し計算では、bSのみ更新する。このbSのみ更新する計算式は次式で表される。
【0061】
【数7】

【0062】
次に、本実施形態に係る受信機14の通信路推定及びデータ検出部20において実行される通信路推定及びデータ検出方法、すなわちMIMOシステムにSAGEアルゴリズムを適用して通信路を推定して送信シンボルを検出する方法について説明する。
【0063】
まず、既知シンボルを用いた通信路の初期推定について説明する。通信路推定としては、従来より公知のMMSE(Minimum Mean SquareError:最小平均二乗誤差)チャネル推定を適用する。また、既知シンボル系列はXtrとする。
【0064】
通信路ベクトルHmと雑音ベクトルNmは無相関であるので、既知シンボルブロックXtrに対する通信路ベクトルHtrは、下記に示す非特許文献7にも記載されたように、下記(8)式で表される。
【0065】
(非特許文献7) S. Haykin, Adaptive Filter Theory, Englewood Ciffs, N. J. : Prentice-Hall, third ed., 1996.
【0066】
【数8】

【0067】
ここで、Ipはp×pの単位行列であり、Rhhtrは既知シンボルに対する通信路の自己共分散行列であり既知であると仮定する。上付きHはエルミート転置を表す。また、σ2は加法的白色ガウス雑音の分散であり、本実施形態では既知であるものとする。Ymtrはm番目の受信アンテナ28mで受信した既知シンボル系列を表す。
【0068】
上記(8)式で求めた通信路推定値を既知シンボルの時間方向に平均化する。平均化した通信路推定値は次式で表される。
【0069】
【数9】

【0070】
そして、上記のようにして求めた平均通信路推定値Eを用いて下記(10)式で表される初期送信シンボル系列推定値を下記(11)式で表されるML検出(最尤検出)によって求める。
【0071】
【数10】

【0072】
【数11】

【0073】
なお、Xは送信シンボルの予測値であり、送信信号をQPSKで変調して送信した場合には、±1±iの4種類の何れかとなる。
【0074】
上記(11)式で求めた初期送信シンボル系列推定値を、後述するSAGEアルゴリズムにおいて初期送信シンボル系列推定値(X[0])として使用する。
【0075】
次に、SAGEアルゴリズムによる通信路推定とデータ検出について説明する。なお、既知シンボル以外の送信シンボル部分では、各受信アンテナにおける通信路推定処理及びデータ検出処理は同一であるため、下記(13)〜(18)式まで受信アンテナに関するインデックスを省略する。
【0076】
前述したEMアルゴリズムのように、推定するパラメータベクトルはb=Xであり、不完全データはy=Yである。完全データをz={Y,H}と選ぶと、zの対数尤度関数は、非特許文献3にも記載されたように、次式で表される。
【0077】
【数12】

【0078】
なお、上記(12)式の第二項は、送信信号と独立なので一定値となり無視できる。上記(12)式のΛ(Y|H,X)は、下記に示す非特許文献8にも記載されたように、ガウス分布に基づいて、下記(13)式により表すことができる。
【0079】
(非特許文献8) J. G. Proakis, Digital Communication, Fourth Edition, New York: McGraw-Hill, 2001.
【0080】
【数13】

【0081】
この条件付対数尤度関数Λ(Yk|H,X)を、一定である項を無視すると次式のように表すことができる。
【0082】
【数14】

【0083】
なお、上付き*は複素共役を示す。ここで、SAGEアルゴリズムにおけるbの部分集合bSをn番目の送信アンテナからの送信フレームXnと選ぶ(bS=Xn)。そして、Xnkと独立した項を除外し、i回目の繰り返し計算でのE−stepにおける関数、すなわち受信シンボルYの条件付き期待値は次式で表される。
【0084】
【数15】

【0085】
【数16】

【0086】
上記(15)式の繰り返し計算におけるi回目の計算のとき、n番目(n=(i mod N)+1)の送信アンテナから送信したシンボルのみ更新し、他の送信アンテナから送信したシンボルは更新しない。即ち、iが増えるごとに、更新するシンボルの送信アンテナのインデックスも増え、(N+1)回目の繰り返し計算において、最初に更新した送信アンテナのシンボルを再び更新する。
【0087】
そして、通信路の条件付期待値は、MMSE推定法により次式で表される。
【0088】
【数17】

【0089】
ここで、Rhhは通信路の自己共分散行列であり、既知であるものとする。σ2は加法的白色ガウス雑音の分散であり、本実施形態では既知であるものとする。INは、N×Nの単位行列である。そして、次式で示すように、上記(15)式を(Xnk*において微分することにより、M−stepの解を求めることができる。
【0090】
【数18】

【0091】
従って、(i+1)回目の繰り返し計算における送信シンボル系列推定値Xnk[i+1]は、次式で表すことができる。
【0092】
【数19】

【0093】
送信シンボル系列推定値は、各受信アンテナ毎に推定される。各受信アンテナ毎に推定された送信シンボル系列推定値は、最大比合成法(MRC:Maximal Ratio Combining)により合成する。
【0094】
最大比合成は、次式で示すように、各送信シンボルにその通信路推定値を重み付けすることにより合成するものである。
【0095】
【数20】

【0096】
ここで、F{・}は硬判定を意味する。最大比合成は、1回の繰り返し計算を行う毎に行う。
【0097】
硬判定では、送信信号をQPSKにより変調して送信した場合には、実部及び虚部の正負をそれぞれ判定し、正であれば+1(+i)、負であれば−1(−i)と判定する。これにより、送信シンボルが復号される。
【0098】
そして、上記(20)式によって合成した送信シンボル系列推定値を、各受信アンテナの次の繰り返し計算において用いる。
【0099】
このように、MIMOシステムにSAGEアルゴリズムを適用して通信路を推定して送信シンボルを検出することにより、既知シンボルを用いて通信路を推定して送信シンボルを検出するML検出よりも優れたビット誤り率(BER)を得ることができる。
【0100】
次に、送信フレームを複数のサブブロックに分割し、各サブブロックにSAGEアルゴリズムを適用して通信路を推定して送信シンボルを検出するSimp−SAGEアルゴリズムについて説明する。
【0101】
SAGEアルゴリズムにおいて、通信路推定を行うMMSEは、送信フレームのフレーム長L分の逆行列を必要とし、演算量のオーダはO(L3)となる。また、フレーム後部における初期データの検出精度が劣化するため、送信フレーム全体にSAGEアルゴリズムを適用した場合、通信路に変動がある場合、この通信路変動に対してうまく追従できない場合がある。
【0102】
そこで、1つの送信フレームを、l個のシンボルごとのサブブロック(SB)に分割し、各サブブロックにSAGEアルゴリズムを適用する。すなわち、図3に示すように、L個のシンボルを含む送信シンボル系列XをX={X[1]、…、X[B]、…、X[L/l]}のように分割し、各サブブロックにSAGEアルゴリズムを適用する。なお、以下では、Bはサブブロックのインデックスとする。
【0103】
Simp−SAGEアルゴリズムでは、通信路変動に追従できるようするため、一つ前のサブブロックのl番目のシンボル(サブブロックの最後のシンボル)に対する通信路推定値を、次のサブブロックの初期推定値として用いる。このように送信フレームをサブブロックに分割して各サブブロックにSAGEアルゴリズムを適用することにより、1フレーム内の全てのサブブロックの通信路推定に伴う演算量のオーダはO((L/l)×l3)=O(Ll2)となり、演算量を削減することができる。また、前のサブブロックの通信路推定値を、次のサブブロックの初期通信路推定値として用いることで、通信路への追従効果も得られる。
【0104】
なお、初期送信シンボル推定値Xk[0][B]=[Xk1[B]、…、XkN[B]]は、ML検出によって次式で求めることができる。
【0105】
【数21】

【0106】
次に、通信路推定及びデータ検出部20においてSimp−SAGEアルゴリズムを用いて通信路推定及びデータ検出を行う場合の処理の流れを図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0107】
まず、ステップ100では、各受信アンテナ281〜28Mで受信された受信シンボルYmtr、既知シンボル系列Xtrに基づいて、上記(8)式により既知シンボル系列Xtrに対する通信路推定値Htrを求める。
【0108】
ステップ102では、ステップ100で求めた通信路推定値Htrを上記(9)式で示されるように既知シンボルの時間方向に平均化した平均通信路推定値E[Hmtr]を求める。
【0109】
ステップ103では、サブブロック長l(=フレーム長L/サブブロック数)を設定する。
【0110】
ステップ104では、サブブロックのインデックスBに‘1’を代入する。次のステップ106では、ステップ102で求めた平均通信路推定値E[Hmtr]、各受信アンテナ281〜28Mで受信された既知シンボル以降の受信シンボルYmk(k=p+1〜L)に基づいて、上記(10)式で表される初期送信シンボル系列Xkを、上記(11)式によりML検出によって求める。求めた初期送信シンボル系列Xkは、次ステップ以降のSAGEアルゴリズムにおいてX[0][0]として用いられる。
【0111】
ステップ108では、繰り返し計算の繰り返し数iに‘0’を代入する。ステップ110では、送信シンボル系列X[i][B]、受信シンボル系列Yに基づいて、上記(17)式により通信路ベクトルの条件付き期待値E{H[B]|Y[B],X[i][B]}、すなわち(16)式の通信路推定値H[i][B]を各受信アンテナ毎に求める。
【0112】
ステップ112では、パラメータの更新対象の送信アンテナ番号nをモジュロ計算(n=(i mod N)+1)により決定する。
【0113】
ステップ114では、SAGEアルゴリズムにおけるE−stepの処理として、通信路推定値H[i][B]、送信シンボル系列X[i][B]、受信シンボル系列Y[B]に基づいて、上記(15)式により、受信シンボル系列Y[B]の条件付き期待値Q(Xn|X[i][B])を各受信アンテナ毎に求める。
【0114】
ステップ116では、SAGEアルゴリズムにおけるM−stepの処理として、上記(18)式により、ステップ114で求めた受信シンボル系列Y[B]の条件付き期待値を(Xnk*で微分する処理を各受信アンテナ毎に行う。これにより、M−stepの解、すなわち受信シンボル系列Y[B]の条件付き期待値が最大となる値を求めることができる。
【0115】
【数22】

【0116】
この送信シンボル推定値Xnk[i+1][B]の算出は、各受信アンテナ281〜28M毎に行われる。
【0117】
ステップ120では、上記(20)式により、各受信アンテナ毎に算出された送信シンボル推定値Xnk[i+1][B]の各々を、対応する通信路推定値Hn[i][B]で重み付けして加算することにより最大比合成処理を行うと共に、硬判定を行う。
【0118】
ステップ122では、繰り返し数(i+1)がImax以上であるか否か、すなわちステップ110〜120の計算をImax回繰り返したか否かを判定し、繰り返し数(i+1)がImax以上である場合には、ステップ124へ移行する。一方、繰り返し数(i+1)がImax未満の場合は、ステップ126へ移行して、繰り返し数iをインクリメントして、ステップ110へ移行し、上記と同様の処理を繰り返す。
【0119】
なお、全ての送信アンテナについて送信シンボルの推定を行う必要があるため、Imaxは少なくともN以上の値で、通信路推定値が収束するのに十分な値に設定される。
【0120】
ステップ126では、B+1がL/lを越えたか否か、すなわち、全サブブロックについて送信シンボル系列の検出が終了したか否かを判定する。B+1がL/lを越えた場合には、全サブブロックについて送信シンボル系列の推定が終了したと判断し、本ルーチンを終了する。一方、B+1がL/l以下の場合には、全サブブロックについて送信シンボル系列の推定が終了していないと判断し、ステップ128へ移行して、サブブロックのインデックスであるBをインクリメントする。
【0121】
ステップ130では、上記(21)式により、前サブブロック(B−1番目のサブブロック)の通信路推定値Hl[B−1]を用いて、次のサブブロック(B番目のサブブロック)の初期送信シンボル推定値Xk[0][B]を算出する。すなわち、前サブブロックのl番目の送信シンボル(当該サブブロックの最後の送信シンボル)についての通信路推定値を、次のサブブロックの初期送信シンボル推定値の計算に用いる。これにより、通信路変動が大きい場合でも、通信路変動に追従することができ、優れた誤り率特性を得ることができる。
【0122】
そして、ステップ108へ戻って繰り返し数iをリセットし、上記と同様の処理を行う。これらの処理を全てのサブブロックについて行うことにより、各送信アンテナ261〜26Nから送信された送信シンボル系列Xnが検出される。
【0123】
図5には、Simp−SAGEアルゴリズムを実行するときの通信路推定及びデータ検出部20をブロック図的に示した。
【0124】
図5に示すように、通信路推定及びデータ検出部20は、各サブブロック毎に初期送信シンボル推定値のML検出等を行うトラッキング部20A及びSAGEアルゴリズムにより通信路推定及びシンボル検出を行うと共に、最大比合成処理及び硬判定処理等を行うSAGE部20Bと、とから成る。以下、概略的に説明する。
【0125】
トラッキング部20Aでは、ML検出部30により、初期送信シンボル推定値X[0][B]をML検出により検出する。これは、図4のステップ106、130の処理に相当する。なお、先頭のサブブロック(B=1)については、通信路推定値Htrが用いられ、それ以降のサブブロックについてはHl[B−l]が用いられる。
【0126】
SAGE部20Bでは、通信路推定部32によって、通信路推定値H[i][B]を求め、シンボル検出部34へ出力する。この処理は、図4のステップ110の処理に相当する。なお、最初の通信路推定では、トラッキング部20Aからの初期送信シンボル推定値X[0][B]が用いられ、その後の繰り返し計算においては、シンボル検出部34において検出された送信シンボル推定値X[i][B]が用いられる。
【0127】
シンボル検出部34では、通信路推定値H[i][B]及び受信シンボル系列Yに基づいて、モジュロ計算部36において決定された送信アンテナ番号nから送信された送信シンボル系列Xn[i+1][B]を各受信アンテナ毎に求めて最大比合成及び硬判定部38へ出力する。なお、この処理は図4のステップ118の処理に相当する。
【0128】
最大比合成及び硬判定部38は、各受信アンテナ毎に求められた送信シンボル系列Xn[i+1][B]を最大比合成によって合成すると共に硬判定処理を行い、送信シンボル系列を決定する。なお、この処理は、図4のステップ120の処理い相当する。
【0129】
そして、繰り返し数判断部40によってImax回繰り返し計算を行ったか否かを判断し、繰り返し計算の回数がImax未満の場合にはインクリメント部42によってiをインクリメントして同様に繰り返し計算を行う。一方、繰り返し計算の回数がImaxに達した場合には、トラッキング部20Aの判断部44において、全サブブロックについて送信シンボル系列の推定が終了したか否かを判断し、終わってない場合には、インクリメント部46によりBをインクリメントして、次のサブブロックの繰り返し計算を上記と同様に行う。
【0130】
なお、本実施形態では、通信路推定の方法としてMMSEを用いて通信路推定を行う場合について説明したが、これに限らず、ZF(Zero Forcing)等の簡易なアルゴリズムを用いて通信路推定を行っても良い。
【実施例】
【0131】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0132】
シミュレーション諸元として以下のように設定した。送信アンテナ数N=2、 受信アンテナ数M=2、データの変調方式はQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式、通信路はフラットレイリーフェージング通信路、シンボル長TS=5μs、送信フレーム長L=40、既知シンボル数p=4、データシンボル数を36とした。
【0133】
また、すべての送信アンテナからの送信シンボル推定値を更新して繰り返し計算が1段階終了したこととするため、送信アンテナ数Nの数だけ繰り返し計算を行うことにより繰り返し計算が1段階終了することとなる。
【0134】
図6には、1ビットあたりの信号電力対雑音電力比Eb/N0が10dBと20dBの場合における、SAGEアルゴリズムによる繰り返し計算の段階数と通信路推定値の平均二乗誤差(MSE)との関係をシミュレーションした結果について示した。
【0135】
図6から明らかなように、繰り返し計算を1段階行っただけで十分収束していることがわかる。従って、以下のシミュレーションでは、繰り返し計算を1段階行った場合の結果を示す。
【0136】
表記として、ML−onlyを既知シンボルを用いてML検出した特性、SAGEを送信フレームを分割しない提案アルゴリズムの特性、Simp−SAGEを送信フレームを複数のサブブロックに分割した提案アルゴリズムの特性とする。
【0137】
図7には、ML推定、本発明に係るSimp−SAGEアルゴリズムの各々について、サブブロック長(SBL)lとビット誤り率(BER:Bit Error Rate)との関係を最大ドップラー周波数Fd×シンボル長Tsを変えてシミュレーションした結果について示した。なお、Fdsは、通信路の変動の速さを表し、1.0×10-3、5.0×10-4、1.0×10-4の3パターンについてシミュレーションした。また、図7では、ML推定のみによってシミュレーションしたものについては「ML−only」と、Simp−SAGEアルゴリズムによってシミュレーションしたものについては「Simp−SAGE」と表記した。
【0138】
なお、サブブロック長lが送信フレーム長Lと等しい場合、すなわちl=L=40の場合、SAGEアルゴリズムとSimp−SAGEアルゴリズムとは等価である。
【0139】
図7に示すように、Simp−SAGEアルゴリズムの場合には、最適なサブブロック長が存在することがわかる。これは、サブブロック長を短くする、 即ち1送信フレームに対する分割数を多くすると、通信路変動への追従効果が得られるが、通信路推定に用いるデータ系列のサンプル数は減少し、通信路推定の精度が落ちること、逆に、サブブロック長を長くすると、通信路変動への追従効果は減少するが、通信路推定に用いるデータ系列のサンプル数は増加し、通信路推定の精度は上がることによる。
【0140】
図7から明らかなように、最適なサブブロック長は、FdS=1.0×10-3の場合で8シンボル、FdS=5.0×10-4、1.0×10-4の場合で10シンボルとわかる。通信路変動が激しい環境では、追従効果が効果的に得られるよう最適なサブブロック長が短くなっている。
【0141】
以下の表1には、SAGEアルゴリズムの場合、サブブロック長を8シンボル、10シンボルにしたときのSimp−SAGEアルゴリズムの場合の演算量を示した。なお、前述したように送信フレーム長L=40、既知シンボル数p=4である。
【0142】
【表1】

【0143】
表1から明らかなように、サブブロック長が短くなれば演算量が低減されることがわかる。また、送信フレームを分割することにより、大幅に演算量が低減されることがわかる。
【0144】
図8には、FdS=1.0×10-3、1.0×10-4の場合におけるEb/N0とBERとの関係をシミュレーションした結果を示した。なお、Simp−SAGEアルゴリズムの場合は、FdS=1.0×10-3、1.0×10-4の場合で各々最適なサブブロック長l=8、10としてシミュレーションした。
【0145】
図8から明らかなように、SAGEアルゴリズムの場合、ML−onlyと比べ、Eb/N0が約1dB特性改善していることがわかる。また、Simp−SAGEアルゴリズムの場合、ML−onlyと比較して、FdS=1.0×10-3において、BER=10-2で約2.5dB、BER=10-3で約10dBEb/N0が改善され、FdS=1.0×10-4において、約2dBEb/N0が改善されることがわかる。すなわち、Simp−SAGEアルゴリズムは、高速フェージング環境の方が低速フェージング環境より改善効果が大きいことがわかる。これは、ML−onlyではフレーム先頭の既知シンボルから得られた通信路推定値のみを用いるのに対して、Simp−SAGEアルゴリズムでは、サブブロック間で通信路推定値を受け渡すことにより通信路変動に対し追従できているからである。
【0146】
このように、Simp−SAGEアルゴリズムでは、通信路変動が大きい高速フェージング環境においても、低演算量で且つ効果的に通信路変動に追従して優れた誤り率特性を達成できることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】無線通信システムのブロック図である。
【図2】写像について説明するための図である。
【図3】フレームの分割について説明するための図である。
【図4】通信路推定及びデータ検出部で実行される処理ルーチンのフローチャートである。
【図5】通信路推定及びデータ検出部のブロック図である。
【図6】繰り返し計算の段階数とMSEとの関係を示す線図である。
【図7】サブブロック長とビット誤り率との関係を示す線図である。
【図8】信号電力対雑音電力比とビット誤り率との関係を示す線図である。
【符号の説明】
【0148】
10 無線通信システム
12 送信機
14 受信機
16 シンボルマッピング部
18 デマルチプレクサ
20 データ検出部
22 マルチプレクサ
24 シンボルデマッピング部
261〜26N 送信アンテナ
281〜28M 受信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナから送信された送信データを複数の受信アンテナで受信し、各受信アンテナで受信した受信データに基づいて、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の通信路利得を推定して前記送信データを検出する通信路推定及びデータ検出方法において、
前記受信データ及び所定の送信データ推定値に基づいて、各送信アンテナとの間の通信路についての通信路利得を表す通信路推定値を各受信アンテナ毎に求めるステップと、
前記送信データ推定値を更新すべき送信アンテナを決定するステップと、
前記受信データの期待値を各受信アンテナ毎に求めるステップと、
前記期待値が最大となる送信データ推定値を各受信アンテナ毎に求めるステップと、
前記期待値が最大となる送信データ推定値及び前記通信路推定値に基づいて、前記更新すべき送信アンテナに対応する送信データ推定値を各受信アンテナ毎に更新するステップと、
各受信アンテナ毎に更新された送信データ推定値を合成して復号するステップと、
更新後の送信データ推定値を前記所定の送信データ推定値として設定するステップと、
を含む処理を、少なくとも前記送信アンテナの数以上繰り返す
ことを特徴とする通信路推定及びデータ検出方法。
【請求項2】
前記送信データは、予め定めた既知データを含み、前記既知データに対応する受信データ及び前記既知データに基づいて初期通信路推定値を求め、求めた初期通信路推定値及び前記既知データに対応する受信データに基づいて、初期送信データ推定値を求め、求めた初期送信データ推定値を前記所定の送信データ推定値として設定することを特徴とする請求項1記載の通信路推定及びデータ検出方法。
【請求項3】
前記送信データを複数のサブブロックに分割し、前記サブブロック毎に前記処理を少なくとも前記送信アンテナの数以上繰り返すと共に、サブブロックの最後のデータについての通信路推定値に基づいて、次のサブブロックの初期送信データ推定値を求め、求めた初期送信データ推定値を前記所定の送信データ推定値として設定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の通信路推定及びデータ検出方法。
【請求項4】
前記初期送信データ推定値は、最尤検出により算出することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の通信路推定及びデータ検出方法。
【請求項5】
前記通信路推定値は、最小平均二乗誤差法により求めることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の通信路推定及びデータ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−5790(P2006−5790A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181728(P2004−181728)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年3月8日 社団法人電子情報通信学会発行の「EiC電子情報通信学会2004年総合大会講演論文集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年5月14日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告 信学技報Vol.104 No.63」に発表
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】