説明

通帳処理装置

【課題】通帳に印字されている預金残高や取引内容等が、周囲にいる他人に見られたり、不正に取り付けられたカメラで盗撮されるのを防止することで、セキュリティを向上させた通帳処理装置を提供する。
【解決手段】ATM1は、通帳を受け付けて行った取引処理の終了時に、通帳を開いた状態で放出するか、表表紙を上にして閉じて放出するか、さらには裏表紙を上にして閉じて放出するかの選択を受け付ける。そして、表表紙を上にして閉じて放出、または裏表紙を上にして閉じて放出、が選択されたときには、捲り/閉じ部45で、通帳20を選択された状態に閉じて放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、銀行等の金融機関に設置されている、入金取引や出金取引等の取引処理を行うATM等に適用される通帳処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者の操作に基づいて、入金取引、出金取引、振込取引、振替取引等、様々な種類の取引を行うATMがあった。銀行等の金融機関では、ATMを設置することにより、利用者の利便性の向上を図っている。ATMは、取引処理時に受け付けた利用者の通帳に対して取引後の預金残高や取引内容(以下、総称して取引明細と言う。)を印字し、当該通帳を利用者に返却する通帳処理部を備えている。利用者は、通帳の印字開始頁を開いた状態で、当該通帳を通帳挿入口に挿入する。通帳処理部は、通帳挿入口に開いた状態で挿入された冊子状の通帳を取り込んで印字位置まで搬送し、取引明細を印字する。通帳処理部は、取引明細の印字途中に、印字している頁の印字欄が一杯になると、この通帳の頁を1枚捲り、未印字の取引明細を捲った頁に印字する。通帳処理部は、通帳に対する取引明細の印字が完了すると、取引明細を印字した最終印字欄の頁を開いた状態で通帳を通帳挿入口へ搬送し、この通帳挿入口から放出することにより、当該通帳を利用者に返却する。
【0003】
また、印字満了になった通帳を受け付け、新規通帳を発行する通帳発行装置が特許文献1等で提案されている。この特許文献1に記載されている通帳発行装置では、利用者が印字満了になった通帳を、最終印字頁を開いた状態で通帳挿入口に挿入する。通帳発行装置は、挿入された通帳を取り込んで、最終印字行の下に「繰越」を印字するとともに、この通帳を閉じて表表紙および裏表紙のそれぞれに「繰越済み」を印字する。また、本体に予め収納されている新規通帳を1冊繰り出し、顧客名や口座番号等を繰り出した新規通帳の表表紙に印字するとともに、裏表紙に貼り付けられている磁気ストライプに口座番号等の情報を磁気データで記録する。さらに、新規通帳の印字開始頁を開いて、この印字開始頁に繰越情報を印字する。そして、印字満了になった通帳、および新規通帳をそれぞれ通帳挿入口から放出する。
【特許文献1】特開平10−109451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のATMは、上述したように、取引明細を印字した最終印字欄の頁を開いた状態で通帳挿入口から放出し、当該通帳を利用者に返却していた。また、特許文献1に記載されている通帳発行装置も、新規通帳については、繰越情報を印字した頁を開いた状態で通帳挿入口から放出していた。このため、通帳に印字されている取引明細の履歴が周囲にいる他人に見られたり、ATM本体等に不正に取り付けられたカメラで盗撮される危険性があり、個人情報の漏洩に対するセキュリティが十分に確保されていないという問題があった。
【0005】
この発明の目的は、通帳に印字されている取引明細の履歴が、周囲にいる他人に見られたり、カメラで盗撮されるのを防止することにより、個人情報の漏洩に対するセキュリティを向上させた通帳処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の通帳処理装置は、上記課題を解決するために、以下の構成を備えている。
【0007】
(1)開いた状態で通帳挿入口に挿入された冊子状の通帳を搬送路に沿って本体内部に取り込む方向、および本体内部に取り込んだ冊子状の通帳を前記搬送路に沿って前記通帳挿入口から放出する方向に選択的に搬送する通帳搬送手段と、
前記通帳搬送手段により開いた状態で印字位置に搬送された通帳に対して、この開かれている頁に印字する印字手段と、
前記搬送手段により開いた状態で通帳閉じ位置に搬送された通帳を閉じる通帳閉じ手段と、
前記通帳搬送手段により本体内部に取り込んだ通帳を前記通帳挿入口から放出するときに、この通帳を開いた状態で放出するか、または閉じた状態で放出するかの設定を行う放出状態設定手段と、
前記放出状態設定手段により、通帳を閉じて放出する設定がなされている場合、前記通帳搬送手段が開いた状態で本体に取り込んだ通帳を、前記通帳閉じ手段で閉じた後に、この閉じた通帳を前記通帳搬送手段により前記搬送路に沿って搬送し、前記通帳挿入口から放出する放出制御手段と、を備えている。
【0008】
この構成では、放出状態設定手段において、通帳挿入口から放出される通帳について、閉じた状態で放出するか、開いた状態で放出するかの設定がなされる。放出状態設定手段において通帳を閉じて放出する設定が行われていると、放出制御手段が、印字手段で取引内容等を印字した通帳を、通帳閉じ手段に閉じさせる、そして、この閉じた通帳を通帳搬送手段に搬送させて通帳挿入口から放出する。したがって、放出状態設定手段における設定を、通帳を閉じた状態で通帳挿入口から放出する、とした設定を行うことにより、通帳挿入口から放出された通帳に印字されている取引明細の履歴が、周囲にいる他人に見られたり、カメラで盗撮されるのを防止することができる。したがって、個人情報の漏洩等に対するセキュリティを十分に確保することができる。
【0009】
また、放出状態設定手段を備えているので、取引内容を印字した頁を開いた状態で通帳を放出することもできる。例えば、取引内容等が印字された頁を開いた状態で放出しても、他人に見られたり、カメラで盗撮される可能性が極めて低い環境、すなわち個人情報の漏洩に対するセキュリティが十分に確保されている環境、で使用されていれば、通帳を開いた状態で放出しても特に問題はない。一方、放出された通帳を受け取る利用者にとっては、今回印字された取引内容等の確認にかかる手間、今回取引内容が印字された頁を開く手間、が無駄に増加させられることがない。
【0010】
このため、本体の使用環境等に応じて、通帳挿入口から放出される通帳について、閉じた状態で放出するか、開いた状態で放出するかの設定が行える。
【0011】
(2)前記通帳閉じ手段は、表表紙を上にして通帳を閉じる第1の通帳閉じ機構、および裏表紙を上にして通帳を閉じる第2の通帳閉じ機構を有する手段であり、
前記放出状態設定手段は、通帳を閉じた状態で表表紙を上にして放出するか、裏表紙を上にして放出するかの設定を行う手段であり、
前記放出制御手段は、前記放出状態設定手段により通帳を閉じた状態で表表紙を上にして放出する設定がなされている場合には、前記通帳閉じ手段の前記第1の通帳閉じ機構により表表紙を上にして閉じた通帳を前記通帳搬送手段により前記搬送路に沿って搬送し、前記通帳挿入口から放出し、また、前記放出状態設定手段により通帳を閉じた状態で裏表紙を上にして放出する設定がなされている場合には、前記通帳閉じ手段の前記第2の通帳閉じ機構により裏表紙を上にして閉じた通帳を前記通帳搬送手段により前記搬送路に沿って搬送し、前記通帳挿入口から放出する手段である。
【0012】
この構成では、通帳を閉じて放出するときに、表表紙を上にして放出するか、裏表紙を上にして放出するかの設定が行える。通常、通帳の表表紙には顧客名や口座番号等が印字されていることから、裏表紙を上にして放出する設定を行うことにより、これらの印字内容についても、周囲にいる他人に見られたり、カメラで盗撮されるのを防止できる。また、表表紙を上にして放出する設定を行うことにより、放出された通帳を受け取る利用者に、その通帳が自分の通帳であるかどうかを速やかに確認させることができる。
【0013】
(3)前記放出状態設定手段は、前記通帳搬送手段により通帳を本体内部に取り込む毎に、前記通帳挿入口からこの通帳を放出するときの状態にかかる設定入力を受け付ける手段である。
【0014】
この構成では、通帳をどのような状態で放出させるかについて、利用者が自分の使い勝手に応じて設定することができ、利用者に対するサービスの向上が図れる。
【0015】
(4)前記放出状態設定手段は、前記通帳搬送手段が本体に取り込んだ通帳から、この通帳を前記通帳挿入口から放出するときの状態を示すデータを読み取り、該データに基づいて前記通帳挿入口から放出する通帳の状態を設定する手段である。
【0016】
この構成では、通帳をどのような状態で放出させるかについて、利用者が特別な操作を行うことなく、常に自分の使い勝手に応じた状態で通帳が放出される。したがって、利用者の利便性の向上も図れる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、通帳に印字されている取引明細の履歴が、周囲にいる他人に見られたり、カメラで盗撮されるのを防止できる。したがって、個人情報の漏洩等に対するセキュリティを十分に確保することができる。
【0018】
また、放出状態設定手段を備えているので、取引内容を印字した頁を開いた状態で通帳を放出することもできるので、すでに個人情報の漏洩等に対するセキュリティが確保されている環境で使用する場合には、利用者における、今回印字された取引内容等の確認にかかる手間を無駄に増加させるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態にかかる通帳処理装置を適用したATMについて詳細に説明する。
【0020】
図1は、この発明の実施形態にかかる通帳処理装置を適用したATMの主要部の構成を示すブロック図であり、図2は、このATMの外観を示す図である。このATM1は、本体に設けられた各部の動作を制御する制御部2を備えている。また、ATM1は、カードを処理するカード処理部3と、通帳を処理する通帳処理部4と、伝票を発行する伝票発行部5と、紙幣を処理する紙幣処理部6と、硬貨を処理する硬貨処理部7と、入力操作の受け付けや入力操作にかかるガイダンス表示等を行う操作部8と、利用者の有無を検知する利用者検知部9と、センタに設置されたホスト装置(不図示)等の上位装置との通信を制御する通信部10と、を備えている。
【0021】
カード処理部3は、カード挿入口3aから本体に挿入された利用者のカードを本体内部に取り込み、該カードに記録されているデータの読み取りや、該カードに対するデータの書き込みを行う。カード処理部3は、カードを搬送する搬送機構を備えている。カードには、口座番号等のデータが記録されている。また、カード処理部3は、本体内部に取り込んだカードをカード挿入口3aから放出する。カード処理部3は、使用されるカードの種類、例えば磁気カード、接触式ICカード、非接触式ICカード、に応じた構成である。また、カード処理部3は、複数種類のカードに対応させた構成であってもよい。さらに、カード処理部3は、カード挿入口3aにおけるカードの挿入検知や、カード挿入口3aにおけるカードの抜き取り検知を行うためのセンサを有している。このセンサは、例えば発光部と受光部とをカードの搬送路を挟んで対向させた透過型のセンサで構成し、カード挿入口3a付近の本体内部側に設けている。
【0022】
通帳処理部4は、通帳挿入口4aから本体に挿入された利用者の通帳を本体内部に取り込み、この通帳に対する処理を行う。通帳処理部4は、通帳を搬送する搬送機構、通帳貼り付けられている磁気ストライプに対するデータの読み取りや書き込みを行うデータ処理機能、通帳に取引内容等を印字する印字機能、通帳の頁を捲ったり、通帳を閉じる捲り/閉じ機構等を備えている。また、通帳処理部4は、本体内部に取り込んだ通帳を通帳挿入口4aから放出する。さらに、通帳処理部4は、通帳挿入口4aにおける通帳の挿入検知や、通帳挿入口4aにおける通帳の抜き取り検知を行うためのセンサを有している。このセンサも、例えば発光部と受光部とを通帳の搬送路を挟んで対向させた透過型のセンサで構成し、通帳挿入口4a付近の本体内部側に設けている。この通帳処理部4の詳細な構成については後述する。
【0023】
伝票発行部5は、取引の内容を印字した伝票を発行するとともに、この伝票を伝票放出口5aから放出する。伝票発行部5は、伝票放出口5aにおける伝票の抜き取り検知を行うためのセンサを有している。このセンサも、例えば発光部と受光部とを伝票の搬送路を挟んで対向させた透過型のセンサで構成され、伝票放出口5a付近の本体内部側に設けている。伝票発行部5は、伝票を搬送する搬送機構を備えている。
【0024】
紙幣処理部6は、紙幣投入口6aから投入された紙幣(入金紙幣)や、紙幣投入口6aから放出する紙幣(出金紙幣)について、その真偽や金種を鑑別する紙幣鑑別部を有している。紙幣投入口6aには蓋が設けられており、紙幣処理部6がこの蓋を開閉する。また、この蓋の下には、入金紙幣や出金紙幣を一時的に貯留する貯留部が設けられている。また、紙幣投入口6aから本体に投入され、貯留部に貯留されている入金紙幣を本体内部に取り込んだり、本体内部に設けられたカートリッジに収納されている出金紙幣を貯留部に搬送する紙幣搬送機構を備えている。さらに、紙幣処理部6は、入金紙幣や出金紙幣を貯留する貯留部における紙幣の有無を検知するセンサを有している。このセンサは、例えば発光部と受光部とを、貯留部に貯留される紙幣を挟んで対向する位置に配置した透過型のセンサで構成される。ATM1は、この透過型センサを貯留部における紙幣の幅方向に複数並べている。
【0025】
硬貨処理部7は、硬貨投入口7aから投入された硬貨(入金硬貨)や、硬貨投入口7aから放出する硬貨(出金硬貨)について、その真偽や金種を鑑別する硬貨鑑別部を有している。硬貨投入口7aには蓋が設けられており、硬貨処理部7がこの蓋を開閉する。また、この蓋の下には、入金硬貨や出金硬貨を一時的に貯留する貯留部が設けられている。また、硬貨投入口7aから投入され、貯留部に貯留されている入金硬貨を本体内部に取り込んだり、本体内部に設けられたカートリッジに収納されている出金硬貨を貯留部に搬送する硬貨搬送機構を備えている。さらに、硬貨処理部7は、入金硬貨や出金硬貨を貯留する貯留部における硬貨の有無を検知するセンサを有している。このセンサは、例えば発光部と受光部とを、貯留部に貯留される硬貨を挟んで対向する位置に配置した透過型のセンサで構成される。ATM1は、この透過型のセンサを貯留部の幅方向に複数並べている。
【0026】
操作部8は、表示器8aおよびこの表示器8aの上に設けたタッチパネル8bを有している。操作部8は、操作ガイダンス等を表示器8aにおいて表示するとともに、タッチパネル8bで利用者の入力操作を検知し、当該入力を受け付ける構成である。また、操作部8には、利用者に対して音声でメッセージを出力する音声出力部が設けられている。また、利用者検知部9は、本体正面に設けられた利用者検知センサ9aを有し、この利用者検知センサ9aにより、本体正面に人がいるかどうか、すなわち利用者がいるかどうか、を検知する。この利用者検知センサ9aは、例えば発光部と、受光部を有する反射型のセンサで構成される。さらに、通信部10は、専用回線を介して、接続されている上位装置との通信を制御する。この上位装置とは、例えばセンタに設置されているホスト装置である。ATM1は、専用回線を介して直接上位装置に接続されていてもよいし、他の装置を介して上位装置に接続されていてもよい。
【0027】
また、カード挿入口3a、通帳挿入口4a、伝票放出口5a、紙幣投入口6a、および硬貨投入口7aの近傍には、それぞれフリッカランプ3b、4b、5b、6b、7bが設けられている。フリッカランプ3b、4b、5b、6b、7bは、対応する処理部により、その点灯が制御される。
【0028】
ここで、通帳処理部4の構成について説明する。図3は、通帳処理部の構成を示す図である。通帳処理制御部40は、制御部2からの指示等にしたがって、以下に示す各構成の動作を制御する。通帳を搬送する搬送路に沿って搬送ローラ41が並べられている。各搬送ローラ41は、対向させた一対の搬送ローラ41a、41bで構成されている。搬送ローラ41は、所謂櫛歯ローラである。この実施形態では、搬送ローラ41aが駆動ローラであり、搬送ローラ41bが従動ローラである。図3では、搬送ローラ41aを駆動するモータや、このモータの駆動を制御するドライバについては、図示を省略している。また、図3では、搬送ローラ41が設けられているピッチを適当に示しているが、このピッチは実際には閉じた通帳20の搬送方向の長さよりも短いピッチである。また、通帳処理部4は、搬送ローラ41aの回転方向を切り換えることにより、通帳挿入口4aに挿入された通帳20を本体内部に取り込む方向(図3における右方向)、および本体に取り込んだ通帳20を通帳挿入口4aから放出する方向(図3における左方向)に搬送する。さらに、通帳処理部4は、通帳挿入口4aにおける通帳の挿入を検知するセンサ、通帳にバーコードで印刷されているデータ(開かれている頁の頁数等)を読み取る光学読取ヘッド43、通帳20に貼り付けられている磁気ストライプに対するデータの読取、および書込を行う磁気ヘッド42、通帳20に取引内容を印字する印字ヘッド44、通帳20の頁を捲ったり、通帳20を閉じる捲り/閉じ部45が搬送路に沿って設けられている。図3では、磁気ヘッド42、光学ヘッド43、印字ヘッド44を動作させるドライバについては図示を省略している。
【0029】
図4、および図5は、捲り/閉じ部の構成を示す図である。この捲り/閉じ部45は、通帳20の頁を1枚ずつ捲ったり、開かれている通帳20を閉じるための構成である。捲り/閉じ部45は、図3に示すように、略T字型の頁捲りアーム51を、搬送路の上方に設けたフレーム50に揺動自在に取り付けている。頁捲りアーム51は、支点51aを中心に揺動する。この頁捲りアーム51は、図示していないソレノイドにより、図4に示す位置と、図5に示す位置との間で揺動する。フレーム50の側壁が、頁捲りアーム51の揺動幅を規制する。また、頁捲りアーム51の下端には、頁捲り部材52が回転自在に取り付けられている。この頁捲り部材52は、略扇形状で、ゴム等の高摩擦部材を外周部に付加したものであり、支点52aを中心に回転する。頁捲り部材52は、図示していないモータにより回転される。頁捲りアーム51は、通帳20の幅方向の略中心に頁捲り部材52が当接する位置に取り付けている。
【0030】
また、通帳20の搬送路は、搬送する通帳20の両側部に位置するように配置したペーパガイド60により構成されている。このペーパガイド60は、対向配置した2枚のガイド板60a、60bを備え、通帳20は、両側部がこれら2枚のガイド板60a、60bの間に挿入された状態で搬送される。図示するように、頁捲りアーム51の下側において、ガイド板60bが存在しない部分を設けており、この部分にシャッタ61を取り付けている。シャッタ61は、支点61aを中心に回動自在に取り付けられており、図4に示す状態では、ガイド板60bとして機能する。シャッタ61は、ソレノイドやモータ等の駆動部(不図示)により、図4に示す状態と、図5に示す状態との間で回動される。シャッタ61は、その両側に位置するガイド板60bとの端部において、櫛歯状に組み合う。また、各組の搬送ローラ41も、駆動ローラ41aと、従動ローラ41bとが櫛歯状に組み合う構成である。また、フレーム50には、図5に示す状態の頁捲りアーム51と連携して、搬送されている通帳20の先端を一括して上方に案内する円弧形状のガイド板62が形成されている。さらに、捲り/閉じ部45には、図4、および図5に示すように、ガイド板62によって案内された通帳20の搬送を制限するストッパ63が設けられている。通帳20は、その先端がストッパ63に当たる位置で搬送が制限される。ガイド板62は、頁捲りアーム51の揺動動作に干渉しないように、頁捲りアーム51に対して搬送される通帳20の幅方向にずらした位置に設けている。
【0031】
さらに、通帳20の搬送路の下方には、ソレノイド70により駆動され、搬送路の下方に位置し、上方に突出していない状態(図4に示す状態)と搬送路の上方に突出している状態(図5に示す状態)と、の間で動作される閉じガイド71を備えている。この閉じガイド71は、搬送路の上方に突出している状態であるとき、通帳20の先端を頁捲りアーム51や円弧形状のガイド板62へ案内する。ソレノイド70は、リンク72を介してリンク73に取り付けられている。リンク73は、支点73aに回動自在に取り付けられている。そして、このリンク73が支点71aに回動自在に取り付けられた閉じガイド71に連結されている。ソレノイド70を励磁することで、図5に示すように、閉じガイド71が搬送路の上方に突出する。
【0032】
この捲り/閉じ部45が、通帳20の頁を捲ったり、通帳20を閉じる動作を行う。ここで、捲り/閉じ部45における通帳20の頁を捲る動作について説明する。捲り/閉じ部45は、通常図4に示す状態である。通帳処理部4は、この状態で通帳20の後端部が頁捲りローラ52に対向する位置まで搬送し、通帳20の搬送を停止する(図6参照)。通帳処理部4は、次にシャッタ61を回動させ、シャッタ61がガイド板61bと組み合っていない状態にする(図7参照)。そして、頁捲りローラ52を回転させる。これにより、通帳20の開かれている頁が捲り上げられ、この捲られた頁が頁捲りアーム51の後側(シャッタ61側)に移動する(図8参照)。その後、通帳処理部4が、通帳20を印字ヘッド44側に搬送する。これにより、通帳20は、1枚捲られた頁が開かれている状態になる。通帳処理部4は、この後、シャッタ61を回動させて、シャッタ61がガイド板61bと組み合っている状態に戻す。ここでは、この動作を頁捲り動作と呼ぶ。
【0033】
また、通帳処理部4は、通帳20の裏表紙が捲られるまで、頁捲りローラ52を回転させることで、通帳20を裏表紙を上にして閉じることができる。
【0034】
次に、通帳20を表表紙を上にして閉じるときの動作について説明する。通帳処理部4は、図4に示す状態で通帳20を搬送し、この通帳20の先端部がシャッタ61の手前に達すると、通帳20の搬送を停止する(図9参照)。通帳処理部4は、次にシャッタ61を回動させ、シャッタ61がガイド板61bと組み合っていない状態にする。また、頁捲りアーム51を揺動させるとともに、ソレノイド70を励磁し、閉じガイド71を搬送路の上方に突出させた状態にする(図10参照)。そして、通帳20を閉じガイド71側に搬送する。これにより、通帳20の先端が、閉じガイド71によって上方に案内され、さらに頁捲りアーム51、ガイド板62に案内されてストッパ63に達する(図11参照)。通帳処理部4は、通帳20の先端がストッパ63に達すると、通帳20の搬送を停止する。ここで、通帳処理部4は、ソレノイド70の励磁を停止する。これにより、閉じガイド71が、搬送路の下側に下がる(図12参照)。
【0035】
なお、閉じガイド71は、比較的柔軟性の高い弾性体で形成しており、ソレノイド70の励磁が停止されたときに、通帳20に引っ掛かって停止することはなく、変形して搬送路の下側に下がる。
【0036】
通帳処理部4は、上方に案内した通帳20の先端側が折り目で折れて、当該通帳20が閉じられる位置まで搬送する(図13参照)。これにより、通帳20を、表表紙を上にして閉じた状態にできる。通帳処理部4は、この状態でシャッタ61を回動させて、シャッタ61がガイド板61bと組み合っている状態に戻すとともに、頁捲りアーム51を揺動させて元の位置に戻す。ここでは、この動作を一気閉じ動作と呼ぶ。
【0037】
次に、この実施形態のATM1の動作について説明する。図14は、この実施形態のATMの動作を示すフローチャートである。ATM1は、利用者検知部9において利用者を検知すると(s1)、取引内容にかかる入力を受け付ける(s2)。s2では、これから実行する取引に応じて、カード、通帳、入金紙幣、入金硬貨等の媒体の中で必要な媒体の挿入や投入を受け付けるとともに、操作部8において利用者による取引種別の選択にかかる入力や、利用者の暗証番号にかかる入力、出金金額にかかる入力等を必要に応じて受け付ける。このとき、操作部8は、表示器8aに利用者に対する操作ガイダンスや、入力操作画面を表示し、タッチパネル8b上における利用者の押下位置を検知することで、利用者の入力操作を検知する。
【0038】
ATM1は、s2で今回の取引を行うにあたり、必要な媒体の挿入や投入、および利用者による入力の全てを受け付けると、通信部10から上位装置に対して取引可否の認証要求を送信し(s3)、上位装置からの認証結果を待つ(s4)。この認証要求には、s2で取得したデータ、例えば口座番号、暗証番号、が含まれている。ATM1は、上位装置からの認証結果を通信部10において受信すると、取引の可否を判断し(s5)、取引可であれば、取引処理を行う(s6)。s6では、通帳処理部4における通帳への印字処理、伝票発行部5における伝票の発行処理、紙幣処理部6における紙幣の入出金処理、硬貨処理部7における硬貨の入出金処理等を、必要に応じて行う。また、ATM1は、s5で取引不可であると判定すると、エラー処理を行い(s7)、本処理を終了する。
【0039】
なお、s6では、出金紙幣については紙幣投入口6aの下に位置する貯留部まで搬送し、この貯留部に出金紙幣を貯留するが、紙幣投入口6aに設けられている蓋を開しない。また、出金硬貨についても硬貨投入口7aの下に位置する貯留部まで搬送し、この貯留部に出金硬貨を貯留するが、硬貨投入口7aに設けられている蓋を閉しない。
【0040】
また、s6において、通帳への印字処理を行っているときに、印字している頁が一杯になると、当該通帳20を印字位置から捲り/閉じ部45へ搬送し、捲り/閉じ部45において、上述した頁捲り動作を行う。そして、この通帳20を再度印字位置に戻し、未印字の取引明細を印字する。これにより、ATM1は印字すべき取引明細を通帳20に全て印字する。
【0041】
ATM1は、s6にかかる取引処理が終了すると、今回の取引において、通帳を受け付けているかどうかを判定する(s8)。ATM1は、s8で通帳20を受け付けていると判定すると、通帳20の放出状態の選択を受け付ける(s9、s10、s11)。s9〜s11では、表示器8aに図15に示す画面を表示し、
(1)取引内容を印字した頁を開いて放出
(2)表表紙を上にして閉じて放出
(3)裏表紙を上にして閉じて放出
の3つの中から、利用者による通帳20の放出状態の選択を受け付ける。このとき、通帳20は、印字位置に位置している。
【0042】
ATM1は、通帳20の放出状態として、「取引内容を印字した頁を開いて放出」が選択された場合、媒体の放出処理を実行する(s12)。このとき、通帳20は、印字位置に位置しており、印字位置から通帳挿入口4aへ搬送して放出する。また、カード、紙幣、硬貨等の他の種類の媒体についても、必要に応じて放出する。
【0043】
また、ATM1は、通帳20の放出状態として、「表表紙を上にして閉じて放出」が選択された場合、通帳20を印字位置から通帳を捲り/閉じ部45へ搬送し、上述した一気閉じ動作を実行し(s13)、その後、s12で媒体の放出処理を実行する。これにより、通帳挿入値4aにおいて、通帳20が表表紙を上にして閉じられた状態で放出される。
【0044】
また、ATM1は、通帳20の放出状態として、「裏表紙を上にして閉じて放出」が選択された場合、通帳20を印字位置から捲り/閉じ部45に搬送し、捲り/閉じ部45において、通帳20の裏表紙を捲るまで、頁捲りを繰り返し、通帳20を閉じる(s14)。s14にかかる処理の実行により、通帳20は、裏表紙を上にして閉じた状態になる。そして、s12で媒体の放出処理を実行する。これにより、通帳挿入値4aにおいて、通帳20が裏表紙を上にして閉じられた状態で放出される。
【0045】
このように、この実施形態のATM1では、通帳20を閉じた状態で放出することができるので、通帳20に印字されている取引明細が、周囲にいる他人に見られたり、カメラで盗撮されるのを防止することができ、個人情報の漏洩に対するセキュリティを十分に確保することができる。また、通帳20を、閉じた状態で放出するか、開いた状態で放出すかの選択を利用者に行わせる構成としたので、利用者が自分の使い勝手に応じて通帳20の放出状態を選択でき、利用者に対するサービスの向上も図れる。さらに、通帳20の裏表紙を上にして放出する選択も行えるので、通帳20の表表紙に印字されている口座番号や利用者の氏名等についても、周囲にいる他人に見られたり、カメラで盗撮されるのを防止することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、通帳20の放出状態を利用者に選択させるとしたが、係員等が機器単位で設定する構成としてもよい。このようにすれば、ATM1を、使用環境に応じて動作させることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、通帳20の放出状態を利用者に選択させる構成としたが、通帳20に貼り付けられている磁気ストライプに、当該通帳20を放出するときの状態を記録しておき、通帳20を受け付けたときに、磁気ストライプから当該通帳20を放出するときの状態を読み取り、ここで読み取った状態で放出する構成としてもよい。このようにすれば、利用者が、通帳20の放出状態の選択にかかる操作を行う必要がなく、操作性の向上が図れる。
【0048】
また、通帳20を、裏表紙を上にして一気に閉じれるように、図4等に示した捲り/閉じ部45を左右反転させた構成としてもよい。この構成では、通帳20を表表紙を上にして閉じるときには、表表紙を捲るまで頁捲りを繰り返す。また、図4示した構成と、この左右反転させた構成とを組みあわせ、通帳20を、表表紙を上にして一気に閉じられ、且つ、裏表紙を上にしても一気に閉じられる構成としてもよい。ただし、一気閉じ動作や、頁捲り動作における、通帳20の停止位置や、頁捲りアーム51の状態遷移等を、この左右反転させた構成に応じて変化させる。
【0049】
なお、通帳20の放出時に通帳20に貼り付けられている磁気ストライプへのデータの書き込みを行うATM1では、裏表紙を上にして閉じた状態で放出する場合を考慮し、搬送路を挟んで磁気ヘッド42を対向させて配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施形態であるATMの主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施形態であるATMの外観を示す図である。
【図3】この発明の実施形態であるATMの通帳処理部の構成を示す図である。
【図4】この発明の別の実施形態にかかるATMの通帳処理部の捲り/閉じ部の構成を示す図である。
【図5】この発明の別の実施形態にかかるATMの通帳処理部の捲り/閉じ部の構成を示す図である。
【図6】この発明の別の実施形態にかかるATMの通帳処理部の捲り/閉じ部における頁捲り動作を説明する図である。
【図7】この発明の別の実施形態にかかるATMの通帳処理部の捲り/閉じ部における頁捲り動作を説明する図である。
【図8】この発明の別の実施形態にかかるATMの通帳処理部の捲り/閉じ部における頁捲り動作を説明する図である。
【図9】この発明の別の実施形態にかかるATMの通帳処理部の捲り/閉じ部における一気閉じ動作を説明する図である。
【図10】この発明の別の実施形態にかかるATMの通帳処理部の捲り/閉じ部における一気閉じ動作を説明する図である。
【図11】この発明の別の実施形態にかかるATMの通帳処理部の捲り/閉じ部における一気閉じ動作を説明する図である。
【図12】この発明の別の実施形態にかかるATMの通帳処理部の捲り/閉じ部における一気閉じ動作を説明する図である。
【図13】この発明の別の実施形態にかかるATMの通帳処理部の捲り/閉じ部における一気閉じ動作を説明する図である。
【図14】この発明の別の実施形態にかかるATMの動作を示すフローチャートである。
【図15】この発明の実施形態にかかるATMにおける、通帳を放出する状態を選択するときに表示される画面例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1−ATM
2−制御部
3−カード処理部
4−通帳処理部
5−伝票発行部
6−紙幣処理部6
7−硬貨処理部
8−操作部8
9−利用者検知部
45−捲り/閉じ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開いた状態で通帳挿入口に挿入された冊子状の通帳を搬送路に沿って本体内部に取り込む方向、および本体内部に取り込んだ冊子状の通帳を前記搬送路に沿って前記通帳挿入口から放出する方向に選択的に搬送する通帳搬送手段と、
前記通帳搬送手段により開いた状態で印字位置に搬送された通帳に対して、この開かれている頁に印字する印字手段と、
前記搬送手段により開いた状態で通帳閉じ位置に搬送された通帳を閉じる通帳閉じ手段と、
前記通帳搬送手段により本体内部に取り込んだ通帳を前記通帳挿入口から放出するときに、この通帳を開いた状態で放出するか、または閉じた状態で放出するかの設定を行う放出状態設定手段と、
前記放出状態設定手段により、通帳を閉じて放出する設定がなされている場合、前記通帳搬送手段が開いた状態で本体に取り込んだ通帳を、前記通帳閉じ手段で閉じた後に、この閉じた通帳を前記通帳搬送手段により前記搬送路に沿って搬送し、前記通帳挿入口から放出する放出制御手段と、を備えた、
通帳処理装置。
【請求項2】
前記通帳閉じ手段は、表表紙を上にして通帳を閉じる第1の通帳閉じ機構、および裏表紙を上にして通帳を閉じる第2の通帳閉じ機構を有する手段であり、
前記放出状態設定手段は、通帳を閉じた状態で表表紙を上にして放出するか、裏表紙を上にして放出するかの設定を行う手段であり、
前記放出制御手段は、前記放出状態設定手段により通帳を閉じた状態で表表紙を上にして放出する設定がなされている場合には、前記通帳閉じ手段の前記第1の通帳閉じ機構により表表紙を上にして閉じた通帳を前記通帳搬送手段により前記搬送路に沿って搬送し、前記通帳挿入口から放出し、また、前記放出状態設定手段により通帳を閉じた状態で裏表紙を上にして放出する設定がなされている場合には、前記通帳閉じ手段の前記第2の通帳閉じ機構により裏表紙を上にして閉じた通帳を前記通帳搬送手段により前記搬送路に沿って搬送し、前記通帳挿入口から放出する手段である、
請求項1に記載の通帳処理装置。
【請求項3】
前記放出状態設定手段は、前記通帳搬送手段により通帳を本体内部に取り込む毎に、前記通帳挿入口からこの通帳を放出するときの状態にかかる設定入力を受け付ける手段である、
請求項1または2に記載の通帳処理装置。
【請求項4】
前記放出状態設定手段は、前記通帳搬送手段が本体に取り込んだ通帳から、この通帳を前記通帳挿入口から放出するときの状態を示すデータを読み取り、該データに基づいて前記通帳挿入口から放出する通帳の状態を設定する手段である、
請求項1または2に記載の通帳処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−328452(P2007−328452A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157745(P2006−157745)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】