説明

通気性シート材の裁断加工方法

【課題】不織布等の通気性シート材からなる被裁断物から、所定形状の製品(ブランク)を製造するために、機械的に裁断加工を行うに際して、該裁断加工を容易かつ安定して(不良品発生率少なく)行うことができる通気性シート材の機械裁断方法を提供すること。
【解決手段】複数枚通気性シート材を積層させた被裁断物Wから、所定形状の製品(ブランク)を製造するために機械的に裁断加工を行う方法。被裁断物Wを全面吸引可能な裁断テーブル16上に載置した状態で、被裁断物Wの表面側をシール用フィルム36で被覆して、裁断テーブルにより減圧吸引しながら、シール用フィルム36も含めて裁断加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚又は複数枚通気性シート材を積層させた被裁断物から、所定形状の製品(ブランク)を製造するために機械的に裁断加工をする方法に関する。
【0002】
ここでは、通気性シート材として、不織布を例に主として採り説明するが、フェルト、織物、編物(ニット)などの繊維製品、さらには、連泡発泡体(スポンジ)等にも本発明の裁断加工方法は、適用できるものである。
【背景技術】
【0003】
不織布は、例えば、乗用車の座席における表皮と座席スプリング(Sばねやフォームドワイヤ)との間に配される座席用パッドとして、不織布シート材から裁断した図1に示すようなパッド(製品:ブランク)12が使用される。
【0004】
パッド12は、座席フレームに安定保持させるために、大・小丸孔12a、12b、矩形孔12cさらにはスリット12d、切れこみ12e等の内部形状も裁断加工をする必要がある。
【0005】
そして、それらの裁断は、下記のような手作業が主流であった。
【0006】
製品の設計形状を厚紙に写しとり、製品の外形及び上記内部形状を切り出して、型紙を作成する。そして、該型紙を、被裁断物(不織布シート材)上に載せ、型紙から外形及び内部形状を、チョークを用いて写しとった後、又は、直接的に外形及び内部形状をハンドカッターなどで裁断して製品を得ていた。
【0007】
しかし、これらの方法は、基本的に手作業であるため、工数がかかると共に製品不良を発生させないためには熟練を要した。
【0008】
このため、機械裁断をする方法が考えられえるが、安定保持する適当な方法がなく、不織布からの製品裁断は困難視されていた。
【0009】
なお、本発明の発明性に影響を与えるものではないが、特許文献1に「自動裁断機における吸引域分割装置」、特許文献2に「レーザ裁断方法およびレーザ裁断機」、特許文献3に「裁断装置」の各発明の名称のもとに、それぞれ機械裁断装置が開示されている。
【特許文献1】特開平5−98562号公報
【特許文献1】特開2002−79385号公報
【特許文献3】特開平6−320486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記にかんがみて、不織布等の通気性シート材からなる被裁断物から、所定形状の製品(ブランク)を製造するために、機械的に裁断加工を行うに際して、該裁断加工を容易かつ安定して(不良品発生率少なく)行うことができる通気性シート材の機械裁断方法及び機械装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決する過程で、フィルムで吸引保持しながら裁断すればよいことを見出して、下記構成の通気性シート材の機械裁断方法に想到した。
【0012】
1枚又は複数枚通気性シート材を積層させた被裁断物から、所定形状の製品(ブランク)を製造するために機械的に裁断加工を行うに際して、
被裁断物を全面吸引可能な裁断テーブル上に載置した状態で、
被裁断物の表面側をシール用フィルムで被覆して、裁断テーブルにより減圧吸引しながら、前記シール用フィルムも含めて裁断加工を行うことを特徴とする。
【0013】
通気性の被裁断物における表面側の全面をシール用フィルムで覆い、かつ、真空吸引による適度に圧縮(押圧)した状態で裁断を行なうため、安定した綺麗な裁断を容易に行うことができる。
【0014】
上記構成において、裁断テーブル上で、順次複数ブロックずつ裁断を行うに際して、裁断加工済み部位の前段側ブロックを再シール用フィルムで被覆した状態で、裁断加工を行うことが望ましい。裁断により製品の外周及び内部形状に発生した隙間が再シール用フィルムによりふさがれるため、加工済み部位の前段側ブロックをシールした状態で、未加工部位の後段側ブロックの裁断加工を行うため、加工済み部位ブロックと未加工部位ブロックとの吸引力の差に基づく厚み差がほとんど発生しない。したがって、両ブロックの厚み差に基づく裁断形状のわずかな誤差も発生し難くなる。
【0015】
上記各構成において、一個の製品に対応する内側裁断と外周裁断とからなる一裁断加工組において、内側裁断後、外周裁断を行うことが望ましい。
【0016】
外周裁断に先立ちを内側裁断を行うため、内側の裁断加工及び最終の外周の裁断加工をフィルムで吸引押圧した状態で最後まで行うことができ、特に、内部形状の安定した裁断加工が可能となる。
【0017】
上記構成において、内側裁断加工を、裁断長の短い側から行うことが望ましい。可及的に吸引押圧力の低減を抑制でき、安定した内部形状の裁断が可能となる。
【0018】
前記裁断テーブルを、減圧室に部分露出させて配設したブラシコンベアで形成することが望ましい。ブラシコンベアとすることにより、被裁断物の滑りがないとともに、既存のブラシコンベアのブラシを適宜間隔で抜くことにより、裁断テーブルを容易に製造することができる。
【0019】
上記構成の通気性シートの裁断方法に使用する装置は、下記構成のものとなる。
【0020】
前記全面吸引可能な裁断テーブルと、該テーブルの全面にシール用フィルムを供給可能な第1フィルム供給ロールと、該シール用フィルムの上側から裁断可能に配された切断手段と、該切断手段を、被裁断物に平面方向及び裁断方向に駆動制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0021】
そして、望ましい態様の装置は、下記各構成のものとなる。
【0022】
さらに、該切断手段の切断加工進行方向の背面側に再シール用フィルムを供給可能な第2フィルム供給ロールとを備えている、また、裁断テーブルは、減圧室の上面に部分露出して配設されたブラシコンベアで形成されている構成である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図例に基づいて詳細に説明する。ここでは、複数枚の不織布(通気性シート材)を積層させた被裁断物から、図1に示すような所定形状の製品(シート用パッド)に機械裁断する場合を、主として例に採り説明する。
【0024】
図2に本発明の方法を示すモデル図、図3〜4にそれぞれ、本発明の方法に使用する細断装置の要部図及びそのシール用フィルムを除去した平面図を示す。
【0025】
本実施形態で使用する、ブラシコンベア14の一部で形成した裁断テーブル16を示す。なお、裁断テーブルは、全面吸引可能であれば、特に限定されない。ブラシコンベアの代わりに多孔板でベルトコンベアを構成したものや、減圧室の上面を多孔板(ブラシ多孔板を含む。)で覆ったものでもよい。ここで、ブラシコンベアを使用するのは、下記のような理由による。
【0026】
裁断時に裁断ナイフを、被裁断物を完全に裁断できるまで下降させても、ブラシで受けることにより逃げることができ、裁断ナイフ及びベルト面を傷つけるおそれがない。即ち、裁断ナイフ及び裁断テーブルの耐久性が良好であるためである。また、ベルトコンベアとすることで、被裁断物の裁断テーブル上への搬入・搬出の自動化が容易となるためである。
【0027】
該裁断テーブル16は、テーブル形成用の開口部18を上面に備えた減圧室18に、上記開口部18にエンドレスのブラシコンベヤ20の上面を覗かせて形成されている。
【0028】
減圧室20は、室内を減圧にするために図示しない真空吸引手段(ファン、ブロア、コンプレッサ)と吸引口20aを介して接続されている。
【0029】
減圧室20の開口部16の大きさは、たとえば、幅2m×長さ2.5mとする。そして、開口部16の周縁は減圧室18内に減圧を効果的に発生させるためにブラシコンベヤ20のブラシ部20aの上面と略0当たりをするよう筒状シール壁16bが形成されている。なお、ブラシコンベヤ20は、キャタピラー型のエプロンコンベア本体に剛毛を植設させて形成したものである。ここで、開口部が上記大きさの場合、エプロンの連結方向長さ幅L1は、例えば、10cmであり、ブラシ部高さhは30〜35mmとする。また、ブラシ部は、通常、ポリエステル等の硬質合成繊維(0.5〜1.0mmφ)で形成されている。
【0030】
そして、本実施形態では、裁断テーブル16上面の全面吸引可能とするために、ブラシ部の剛毛を適宜間隔で抜いて吸引孔を散在させて形成してある。このとき、例えば、孔の大きさは、2〜3mmφで、散在ピッチは、5mmとする。
【0031】
なお、ブラシコンベアは、図示しない原動機により、所定距離(略開口部縦長さ)を移動ごとに、停止する間欠運転可能とされている。
【0032】
そして、裁断テーブル(被裁断物載置台)16の上方には、制御装置(通常、コンピュータ制御)22により制御される裁断装置24が配されている。
【0033】
該裁断装置24は、クロスヘッド(図示せず)に保持されて、制御装置22により三軸数値制御可能とされたナイフヘッド(裁断ヘッド)26を備えてものである。
【0034】
なお、本実施形態では裁断手段として、切断刃(ナイフ)32としたが、他の切断手段でもよい。たとえば、レーザ、ウォータジェット、超音波等であってもよい。
【0035】
さらに、本実施形態では、裁断テーブル16上に、それぞれ裁断テーブル16の幅より大きな幅のフィルム(シール用フィルム及び再シール用フィルム)を繰り出し可能に、第1・2繰り出しロール28、30が配されている。
【0036】
そして、第2繰り出しロール30は、ナイフヘッド26を保持するクロスヘッドにおける横方向レールとの間に所定距離(1ブロック)をおいて、同時移動可能とされている。
【0037】
次に、上記装置を使用して本実施形態の裁断方法について説明する。
【0038】
先ず、裁断テーブル16上に、送り込み搬送手段(ベルトコンベア)等で搬送されてきた、略裁断テーブル16に載る大きさに裁断された矩形状不織布の複数枚からなる被裁断物(被加工物:ワーク)Wを載置する。このとき、載置は、手作業で行ってもよいが、送り込み搬送手段に連動させてブラシコンベヤ14を駆動して、裁断テーブル16の中央位置まで搬送して停止させるように制御することが、裁断の自動化度(機械化度)を高めることができる。
【0039】
このとき、被裁断物Wの厚みは、薄い方が不織布の積層枚数が増えて、裁断加工生産性が増大する。不織布の仕様、裁断装置の能力により異なるが、被裁断物Wの厚みは、例えば、不織布厚み2〜3mmの場合、通常、40〜50mm(積層枚数で20〜25枚)、単位面積あたり重量で3000g/m以下とする。
【0040】
また、裁断テーブル16の上に載置された被裁断物Wの上に、シール用フィルム34を繰り出し、覆った状態で、減圧手段を駆動して、減圧室20を減圧状態にする(減圧度は通常0.006〜0.013MPa(50〜100mm・Hg)。すると、シール用フィルム34は被裁断物Wに密着するとともに、若干吸引押圧(圧縮)する。
【0041】
ここで、シール用フィルムとしては、被裁断物Wを押圧したとき、破損しない強度を有し、切断刃(ナイフ)32で容易に切断可能なものなら特に限定されないが、通常、透明なプラスチックフィルムを使用する。例えば、ポリエチレンフィルムを使用する場合、0.1〜0.2mmtのものを使用する。
【0042】
この状態を維持しながら、裁断装置24のナイフヘッド26を制御装置22により三軸制御して、被裁断物Wの裁断を、内側加工部(図例では丸孔12a、スリット12d)の内側裁断後、外周形状12fを最終的に外周裁断する。このとき、内側裁断を、スリット12d、丸孔12aの順に行う。できるだけ、裁断切片が発生しない方、さらには、裁断長の短い方から先にしたほうが望ましい。この結果、最終裁断を行うまで、被裁断物Wがシール用フィルムで押圧(圧縮)した状態で行うことができ、綺麗かつ精度の高い(正確な)裁断が可能となる。
【0043】
なお、内側加工部が複数箇所ある場合の裁断加工で、図1に示す如く、スリット、丸孔が複数個ずつある場合は、それらの群の中で、裁断長の短い側から行うことが望ましい。裁断に伴って、発生する切断片が空気流入に伴う減圧度低減を可及的に小さくすることができ、シール用フィルムによる被裁断物に対する押圧力の低限度も最小限となるためである。
【0044】
そして、外周裁断加工が終了したなら、次の裁断位置にナイフヘッド26を移動させる。すると、それに伴ない、第2繰り出しロールが、ナイフヘッド26を保持するクロスヘッドの長さ方向レールとともに移動して、再シール用フィルム36により、前段の裁断加工跡12a、12dが覆われる。したがって、裁断加工跡12a、12d、12fの隙間から空気が流入することによる、減圧室20の低減度も低減することができ、かつ、裁断加工により発生したシール用フィルムの切片も被裁断物W上に保持しておくことができる。フィルム切片を除去する作業も不要となる。
【0045】
そして、上記と同様、裁断加工を一段ずつ、順次、行っていく。
【0046】
こうして、順次一段ごとに、裁断加工を行っていく。図例では一段の裁断加工で、1個の製品に対応する内側裁断12a、12dと外周裁断12fとからなる一裁断加工組のみを行う構成としたが、図5に示す如く、複数組(図例では6個)の裁断加工組を1ブロックとし、該1ブロックの裁断加工を1)〜6)全部終了した時点を一段とし、順次、再シール用フィルムを繰り出す構成としてもよい。なお、その場合も各裁断加工組において、内側裁断後、外周裁断を行う。
【0047】
なお、再シール用フィルムを裁断加工組dごとに覆い可能に、再シール用フィルムの繰り出しロールを複数個設けてよい。
【0048】
なお、1組の裁断加工部ごとでも、裁断長さの短い順から行っていくことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を適用する裁断加工品の一例である乗用車シート用パッドの平面図である。
【図2】本発明の裁断方法を示すモデル図である。
【図3】本発明の裁断方法に使用する裁断テーブル16を形成する減圧室20のモデル断面図である。
【図4】図3においてシール用フィルムを除去した平面図である。
【図5】複数組の裁断加工組を1ブロックとして、該1ブロックを一段として裁断加工を行う場合の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
12・・・シート用パッド
16・・・裁断テーブル
20・・・減圧室
22・・・制御装置
24・・・裁断装置
26・・・ナイフヘッド
28・・・第1繰り出しロール
30・・・第2繰り出しロール
34・・・シール用フィルム
36・・・再シール用フィルム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚又は複数枚の通気性シート材を積層させた被裁断物から、所定形状の製品(ブランク)を製造するために機械的に裁断加工を行うに際して、
前記被裁断物を全面吸引可能な裁断テーブル上に載置した状態で、
前記被裁断物の表面側をシール用フィルムで被覆して、前記裁断テーブルにより減圧吸引しながら、前記シール用フィルムも含めて前記裁断加工を行うことを特徴とする通気性シート材の裁断加工方法。
【請求項2】
前記裁断テーブル上で、順次、長手方向に複数段で裁断加工を行うに際して、前段側の裁断加工部位を再シール用フィルムで被覆した状態で、前記裁断加工を行うことを特徴とする請求項1記載の通気性シート材の裁断加工方法。
【請求項3】
前記裁断加工を、一個の製品に対応する内側裁断と外周裁断とからなる一裁断加工組において、内側裁断後、外周裁断を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の通気性シート材の裁断加工方法。
【請求項4】
前記内側裁断を、裁断長の短い側から行うことを特徴とする請求項3記載の通気性シート材の裁断加工方法。
【請求項5】
前記一段の裁断加工が、複数組の裁断加工組からなることを特徴とする請求項3、4又は5記載の通気性シート材の裁断加工方法。
【請求項6】
前記裁断テーブルとして、減圧室に部分露出して配設したブラシコンベアで形成したものを使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の通気性シート材の裁断加工方法。
【請求項7】
請求項1記載の通気性シート材の裁断加工方法に使用する装置であって、
前記全面吸引可能な裁断テーブルと、該テーブルの全面にシール用フィルムを供給可能な第1フィルム供給ロールと、該シール用フィルムの上側から裁断可能に配された切断手段と、該切断手段を、被裁断物に平面方向及び裁断方向に駆動制御する制御手段とを備えていることを特徴とする通気性シート材の裁断装置。
【請求項8】
さらに、該切断手段の切断加工進行方向の背面側に再シール用フィルムを供給可能な第2フィルム供給ロールを備えていることを特徴とする請求項7記載の通気性シート材の裁断装置。
【請求項9】
前記裁断テーブルが、減圧室の上面に部分露出して配設されるブラシコンベアで形成されていることを特徴とする請求項7又は8記載の通気性シート材の裁断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−88259(P2006−88259A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275422(P2004−275422)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000149446)株式会社オーツカ (7)
【Fターム(参考)】