説明

通気手段を備えた外通路を有する客船

【課題】乗客の快適さに影響することなく、その中で使用される空調のためのエネルギー消費レベルを減らす客船を提供する。
【解決手段】いくつかの重なり合ったデッキP1〜P6からなる上部構造を備え、その少なくとも一部分が客室CE、CIからなり、それらの客室CEのいくつかが、関連するデッキ上で、客室と船殻との間に延びる長手方向外通路COとつながっている。各外通路COが、客室CEに対向するその長手方向側面に沿って少なくとも部分的に閉鎖されており、各外通路COの両端の少なくとも一方が開放されており、二つの重なり合ったデッキの外通路COを区切るフロアが少なくとも部分的に採光窓を有し、外通路を介して客室からの処理された空気を外へ排出する、客室CEのための空調手段5を備え、上記特徴が組み合わさって、空調手段5による該通路COの長手方向および垂直方向それぞれの通気を保証することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は客船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、客船は、いくつかの重なり合ったデッキからなる少なくとも一つの上部構造を備え、その少なくとも一部分が客室からなる。
【0003】
このような客室は、外が見えない(すなわち、海が見えない)かまたはそうではない(すなわち、海が見える少なくとも一つの嵌め殺し窓を備える)かにかかわらず、通路、すなわち長い廊下からアクセス可能である。
【0004】
このような廊下は、廊下が通じる客室に共通の壁によって長手方向に区切られている。したがって、快適性の点で何ら付加価値を提供しない内部循環区域を形成する。
【0005】
このような客室および関連する通路は、伝統的には空調と共に提供される同数の公共空間である。
【0006】
したがって、冬季の航行条件下では、暖められた空気が供給される。
【0007】
逆に、夏期の航行条件下では、冷涼な空気が供給される。
【0008】
これは空調手段によって達成される。
【0009】
ここで、そのような手段が大きなエネルギーを消費することは広く知られている。そして、化石エネルギーの価格の上昇により、船舶交通セクター自体が、そのようなエネルギーの消費をできるだけ減らすことを強いられている。
【0010】
さらに、「遊歩甲板」、すなわち、船殻に沿って延び、直接外に通じている通路を備えた客船が公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、乗客の快適さに影響することなく、その中で使用される空調のためのエネルギー消費レベルを減らす客船を提案することにより、上記課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
いくつかの重なり合ったデッキからなる少なくとも一つの上部構造を備え、その少なくとも一部分が客室からなり、それらの客室のいくつかが、関連するデッキ上で、客室と船殻との間に延びる長手方向の「外」通路とつながっている本発明の客船は、本質的に、
― 各外通路が、客室に対向するその長手方向側面に沿って少なくとも部分的に閉鎖されており、
― 各外通路の両端の少なくとも一方が開放されており、
― 二つの重なり合ったデッキの外通路を区切るフロアが少なくとも部分的に採光窓を有し、
― 該船が、外通路を介して客室からの処理された空気を外へ排出する、客室のための空調手段を備え、
上記特徴が組み合わさって、空調手段による該通路の長手方向および垂直方向への通気を保証することを可能にするということを特徴とする。
【0013】
客室に対向する側面に沿った、外通路の「閉鎖」により、外部世界、特に悪天候から防護された循環空間を乗客に提供することができる。さらには、その中に設けられる空気循環が真の快適性を乗客に提供し、空調空気を直接送風する必要がない、すなわち、エネルギーを不必要に消費しないで済む。
【0014】
他の有利で非限定的な特徴によると、
― 各外通路は、客室に対向するその長手方向側面に沿って、透明または半透明の、たとえばガラスをはめた壁によって閉鎖されており、
― 該壁の少なくとも一部分は、通路の内部から外部世界へおよびその逆に空気を通すことができるよう、可動性であり、
― 外通路は、光を遮るための手段、特にベネチアンブラインドを備え、
― 二つの重なり合ったデッキの外通路は、それらの両端の少なくとも一方で、外部世界と連絡する階段によって接続されており、
― フロアはグラフティングからなり、
― 客室は、関連する外通路と直接連絡する、すなわち、通路からアクセス可能なドアなどのアクセス手段を備え、
― 空調手段は、空気を外通路に排出することを考慮して、空気を処理するための手段を含み、
― 船は三胴船からなり、上部構造がその中央主船殻の少なくとも一部分にかけて延び、
― 空調手段は、新鮮な空気が主船殻とそのフロートとの間に位置する空間に取り込まれることを保証する、新鮮な空気を吸い込むための手段を含む。
【0015】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、好ましい態様に関する以下の詳細な説明を読むことによって明らかになる。この詳細な説明は、添付図面を参照しながら提供される。
【0016】
本発明(1)は、いくつかの重なり合ったデッキ(P1〜P6)からなる少なくとも一つの上部構造(S)を備え、その少なくとも一部分が客室(CE、CI)からなり、それらの客室(CE)それぞれが、関連するデッキ上で、客室と船殻との間に延びる長手方向外通路(CO)とつながっている客船(1)であって、
― 各外通路(CO)が、客室(CE)に対向するその長手方向側面に沿って少なくとも部分的に閉鎖されており、
― 各外通路(CO)の両端の少なくとも一方が開放されており、
― 二つの重なり合ったデッキの外通路(CO)を区切るフロア(6)が少なくとも部分的に採光窓を有し、
― 該船が、外通路(CO)を介して客室からの処理された空気を外へ排出する、客室(CE)のための空調手段(5)を備え、
上記特徴が組み合わさって、空調手段(5)による該通路(CO)の長手方向および垂直方向それぞれの通気を保証することを可能にする、船である。
本発明(2)は、各外通路(CO)が、客室(CI)に対向するその長手方向側面に沿って、透明または半透明の、たとえばガラスをはめた壁(4)によって閉鎖されている、本発明(1)の船である。
本発明(3)は、壁(4)の少なくとも一部分が、通路(CO)の内部から外部世界へおよびその逆に空気を通すことができるよう、可動性である、本発明(2)の船である。
本発明(4)は、外通路(CO)が、光を遮るための手段、特にベネチアンブラインド(40)を備える、本発明(1)〜(3)のいずれか一発明の船である。
本発明(5)は、二つの重なり合ったデッキ(P1〜P6)の外通路(CO)が、それらの両端の少なくとも一方で、外部世界と連絡する階段によって接続されている、本発明(1)〜(4)のいずれか一発明の船である。
本発明(6)は、フロア(6)がグラフティングからなる、本発明(1)〜(5)のいずれか一発明の船である。
本発明(7)は、客室(CE)が、関連する外通路(CO)と直接連絡する、すなわち、通路(CO)からアクセス可能なドアなどのアクセス手段を備える、本発明(1)〜(6)のいずれか一発明の船である。
本発明(8)は、空調手段(5)が、空気を外通路(CO)に排出することを考慮して、空気を処理するための手段を含む、本発明(1)〜(7)のいずれか一発明の船である。
本発明(9)は、三胴船からなり、上部構造(S)がその中央主船殻(10)の少なくとも一部にかけて延びる、本発明(1)〜(8)のいずれか一発明の船である。
本発明(10)は、空調手段(5)が、新鮮な空気が主船殻(10)とそのフロート(2、2')との間に位置する空間に取り込まれることを保証する、新鮮な空気を吸い込むための手段を含む、本発明(9)の船である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、いくつかの重なり合ったデッキからなる少なくとも一つの上部構造を備え、その少なくとも一部分が客室からなり、それらの客室それぞれが、関連するデッキ上で、客室と船殻との間に延びる長手方向外通路とつながっている客船であって、
― 各外通路が、客室に対向するその長手方向側面に沿って少なくとも部分的に閉鎖されており、
― 各外通路の両端の少なくとも一方が開放されており、
― 二つの重なり合ったデッキの外通路を区切るフロアが少なくとも部分的に採光窓を有し、
― 該船が、外通路を介して客室からの処理された空気を外へ排出する、客室のための空調手段を備え、
上記特徴が組み合わさって、空調手段による該通路の長手方向および垂直方向の通気を保証することを可能にすることを特徴とする船が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の船の垂直断面図である。
【図2】該船の通路を備えるフロアの部分透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面に示す船は三胴船である。しかし、本発明は、いかなるタイプの客船にも適用され、特に、一重船殻船舶に適用される。
【0020】
図1に示す三胴船1は、中央主船殻10ならびにフロートを形成する二つの補助船殻2および2'を備える。補助船殻は連結アームによって主船殻に接続されている。
【0021】
船の縦方向対称面をAとして参照する。
【0022】
図面を明確にするために、図面の右側部分だけが参照番号を有し、左側部分だけが、船内を循環する空気の流れを示す矢印を有する。
【0023】
しかし、前述の面Aに対して船は完璧に対称であるため、当然、これらの参照番号および矢印は船のどちらの部分にも当てはまる。
【0024】
船1の主船殻は、P1〜P6として参照されるいくつかの重なり合ったデッキからなる上部構造Sを備える。
【0025】
当然、図示されない態様において、この重なり合ったデッキの数は異なり、6よりも小さくても大きくてもよい。
【0026】
従来、この上部構造は多数の客室を収容する。
【0027】
船の対称面にもっとも近く位置する客室は「内側客室」CIと記され、通路または廊下Cがそれらに通じ、互いに対面する内側客室を二つずつ区切っている。
【0028】
さらに、船殻の縁にもっとも近く位置する客室がCEとして参照されている。
【0029】
これらの客室CEは、図1によって示すように、関連するデッキ上で、客室と船殻との間に延びる長手方向外通路COによってつながっている。
【0030】
換言するならば、デッキP1〜P6の通路COは重なり合っている。
【0031】
本発明の特徴によると、各外通路COは、客室CEに対向するその長手方向側面に沿って少なくとも閉鎖されている。
【0032】
ここに示す例では、これらの通路は、透明または半透明の、たとえばガラスをはめた壁4によって閉鎖されている。
【0033】
したがって、これらの通路CO中を循環する乗客は、外光の恩恵を受けながらも、壁4によって外部世界から隔離される。また、これらの壁が透明である場合、壁から海を直接見ることができる。
【0034】
好ましい態様によると、これらの壁4の少なくとも一部分は、通路COの内部から外部世界へおよびその逆に空気を通すことができるよう、可動性である。
【0035】
この壁の開閉は、たとえば、特に外部温度および/または風力および/または風向に依存してこの開閉を起動する手段を使用することにより、自動的に達成することができる。
【0036】
有利には、これらの通路COは、光を遮るための手段、特にベネチアンブラインド40を備える。
【0037】
ここでもまた、これらのブラインドの展開は、外の明るさおよび/または日差しの強さに依存して自動的に達成することができる。
【0038】
図示されない別の態様において、これらは、スライド式パネルのような他の手段であってもよい。
【0039】
この装備により、通路COは、乗客が安全かつ快適に歩くことができる循環空間を通路と同じ数だけ形成する。
【0040】
通路が大きな幅、たとえば2.50m程度の幅を有する場合、通路は、より多くの日陰を客室の方向に作り出すことに貢献する。
【0041】
図示されてはいないが、二つの重なり合ったデッキ、たとえばデッキP1およびP2の外通路COは、それらの両端の少なくとも一方で、外部世界と連絡する階段によって接続されている。
【0042】
これらの条件の下、これらの端部の少なくとも一方は、その中を外の空気が水平方向および長手方向に循環するよう開放されており、それにより、既存の空気の入れ替えおよび調整に貢献する。
【0043】
さらに、本発明のもう一つの特徴によると、特に図2で見てとれる、二つの重なり合ったデッキの二つの外通路COを区切るフロア6は、少なくとも部分的に採光窓を有する。
【0044】
示されているように、図2で見てとれるこのフロア6は、関連するデッキの構造金属桁62のネットワークからなり、それらの間にハニカム構造60が配置され、それらは循環フロア61で覆われている。
【0045】
しかし、ここで図示する例では、このフロアは、その長手方向部分が、保護メッシュ64で覆われた広く開口したグリッド63からなるため、実際にはグラフティングからなる。
【0046】
この構造により、通路を循環する空気は、一つの通路COから他方の通路まで垂直方向に自由に移動してその通気を改良することができ、乗客の快適さにおいて好ましい影響が得られる。
【0047】
図1に示すように、船は空調手段5を装備している。これらの手段は複数あり、たとえば、図1に示すように、上部構造Sの上部および主船殻10の上区域に位置している。
【0048】
上部構造Sの上部に位置する手段5は、シャフト50によって客室CIおよびCE内に通じている。
【0049】
この循環流は、図1の左側部分の矢印fおよびgによって示されている。
【0050】
本発明の特徴によると、これらの空調手段は、客室の処理された空気を外通路COを介して外に放出するための手段を含む。この循環流は、図1の左側部分の矢印hによって示されている。
【0051】
したがって、各通路COは、前述の調整手段により、長手方向および垂直方向に空気を受け入れる。
【0052】
通路は、それゆえに空調の必要のない空間を通路と同じ数だけ形成し、それが、船のエネルギー消費を減らすことに貢献する。
【0053】
さらには、夏期条件下、また、通路の幅が大きい場合、通路が作り出す日陰が船内全体温度を下げることに貢献し、客室の空調を過度に強める必要がなくなる。
【0054】
好ましくは、CE客室は、対応する外通路COと直接連絡する、すなわち、該通路COからアクセス可能なドアなどのアクセス手段を備える。
【0055】
有利には、空調手段5は、空気を客室から外通路COに向けて排出することを考慮して、空気を処理するための手段、たとえばフィルタを含む。
【0056】
空調手段5は、新鮮な空気が主船殻10とフロート2および2'との間に位置する空間に取り込まれることを保証する、新鮮な空気を吸い込むための手段を含むことができる。循環する空気の流れが矢印jによって示されており、この場合、新鮮な空気は、船殻に位置する空調手段5によって処理され、その近くに位置する公共空間EPに再び注入される(矢印jおよびk)。
【0057】
そして、この空調空気の一部が、矢印mによって示すように通路に排出され、通路を通って垂直方向にフロアを通って流れる。
【0058】
本発明は、当然、任意のタイプの船、たとえば五胴船または一重船殻船舶に適用することができる。後者の場合、空調に使用される新鮮な空気は、遊歩甲板の階層で取り込まれることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 客船、2 フロート、2’ フロート、4 壁、5 空調、6 フロア、10 主船殻、40 ベネチアンブラインド、50 シャフト、60 ハニカム構造、61 循環フロア、62 構造金属桁、63 グリッド、64 保護メッシュ P1〜P6 デッキ、CE 客室、CI 客室、CO 外通路、EP 公共空間、C 通路または廊下、A 船の縦方向対称面、f 船内を循環する空気の流れ、g 船内を循環する空気の流れ、h 船内を循環する空気の流れ、j 船内を循環する空気の流れ、k 船内を循環する空気の流れ、l 船内を循環する空気の流れ、m 船内を循環する空気の流れ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかの重なり合ったデッキ(P1〜P6)からなる少なくとも一つの上部構造(S)を備え、その少なくとも一部分が客室(CE、CI)からなり、それらの客室(CE)それぞれが、関連するデッキ上で、客室と船殻との間に延びる長手方向外通路(CO)とつながっている客船(1)であって、
― 各外通路(CO)が、客室(CE)に対向するその長手方向側面に沿って少なくとも部分的に閉鎖されており、
― 各外通路(CO)の両端の少なくとも一方が開放されており、
― 二つの重なり合ったデッキの外通路(CO)を区切るフロア(6)が少なくとも部分的に採光窓を有し、
― 該船が、外通路(CO)を介して客室からの処理された空気を外へ排出する、客室(CE)のための空調手段(5)を備え、
上記特徴が組み合わさって、空調手段(5)による該通路(CO)の長手方向および垂直方向それぞれの通気を保証することを可能にする、船。
【請求項2】
各外通路(CO)が、客室(CI)に対向するその長手方向側面に沿って、透明または半透明の、たとえばガラスをはめた壁(4)によって閉鎖されている、請求項1記載の船。
【請求項3】
壁(4)の少なくとも一部分が、通路(CO)の内部から外部世界へおよびその逆に空気を通すことができるよう、可動性である、請求項2記載の船。
【請求項4】
外通路(CO)が、光を遮るための手段、特にベネチアンブラインド(40)を備える、請求項1〜3のいずれか一項記載の船。
【請求項5】
二つの重なり合ったデッキ(P1〜P6)の外通路(CO)が、それらの両端の少なくとも一方で、外部世界と連絡する階段によって接続されている、請求項1〜4のいずれか一項記載の船。
【請求項6】
フロア(6)がグラフティングからなる、請求項1〜5のいずれか一項記載の船。
【請求項7】
客室(CE)が、関連する外通路(CO)と直接連絡する、すなわち、通路(CO)からアクセス可能なドアなどのアクセス手段を備える、請求項1〜6のいずれか一項記載の船。
【請求項8】
空調手段(5)が、空気を外通路(CO)に排出することを考慮して、空気を処理するための手段を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の船。
【請求項9】
三胴船からなり、上部構造(S)がその中央主船殻(10)の少なくとも一部にかけて延びる、請求項1〜8のいずれか一項記載の船。
【請求項10】
空調手段(5)が、新鮮な空気が主船殻(10)とそのフロート(2、2')との間に位置する空間に取り込まれることを保証する、新鮮な空気を吸い込むための手段を含む、請求項9記載の船。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−111385(P2010−111385A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249929(P2009−249929)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(509302353)エスティーエックス フランス ソシエテ アノニム (1)