説明

通気緩衝シート

【課題】十分な通気性を確保でき、かつ防水層表面に凹凸が生じず、しかも施工が容易である通気緩衝シートを提供する。
【解決手段】下地20表面に設置されて、その上に塗膜防水層が形成される通気緩衝シートであって、布材からなる通気層3の一方の面に、下地20に接着される粘着剤層4が形成され、粘着剤層4は、通気層3の一方の面の一部のみに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋上、屋根などの防水施工において、下地表面に敷設する通気緩衝シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートなどからなる下地の防水施工としては、下地表面に通気緩衝シートを敷設し、この通気緩衝シートの上に塗膜防水層を形成する施工が行われている。
通気緩衝シートとしては、改質アスファルト、ゴム等を主材とするものがある。通気緩衝シートは、人の歩行等により加えられる力や、コンクリートの収縮により生じる応力などを緩衝する機能を有する。
【0003】
通気緩衝シートには、下地から放出される水蒸気等のガスにより塗膜防水層に局所的な浮き上がり(フクレ)が生じるのを防ぐため、前記ガスを排出する構造が採用される。
例えば、改質アスファルト、ゴム等からなるシートの裏面に溝状の通気路を形成したもの、下地に接着するための粘着剤をシート裏面に部分的に塗布することによって非接着部分を通気路としたもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−36324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記シートでは、高温や溶剤等の影響による変形によって溝状の通気路が狭隘化し、通気が不十分となり塗膜防水層にフクレが生じるおそれがある。その一方、通気量確保のため溝状の通気路を大きく形成すると、この部分が凹んで防水層表面に凹凸が生じ、美観の点で問題が生じる。
また、上記シートは液状接着剤によって下地に接着されるが、冬期などの低温時における接着剤のタック不足や、接着時にシートに加える圧力不足によって、接着力が十分に確保できないことがあった。
また、下地の凹凸を吸収するためシートを厚く形成すると重量が増し、施工時の取り扱いが容易でなくなるという問題もあった。
また、粘着剤の部分塗布により非接着部分を通気路とするシートでは、通気量確保のためには非接着部分にある程度の大きさが必要であるため、この非接着部分と粘着剤塗布部分の厚さの違いにより防水層表面に凹凸が生じ、美観に影響を及ぼすことがあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、十分な通気性を確保でき、かつ防水層表面に凹凸が生じず、しかも施工が容易である通気緩衝シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通気緩衝シートは、下地表面に設置されて、その上に塗膜防水層が形成される通気緩衝シートであって、布材からなる通気層の一方の面に、下地に接着される粘着剤層が形成され、前記粘着剤層は、前記通気層の一方の面の一部のみに形成されていることを特徴とする。
前記粘着剤層は、粘着剤層が形成されていない部分の通気層と下地との間に空間が確保されるように形成されていることが好ましい。
前記粘着剤層は、幅方向に間隔をおいて形成された複数の連続した帯状部分からなる構成として良い。
前記粘着剤層は、自着性を有するものであることが好ましい。
前記通気層は、ポリエステル製の不織布からなることが好ましい。
前記通気層の一方の面とは反対の面には、樹脂フィルム層を設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の通気緩衝シートは、粘着剤層が通気層の一部のみに形成されているため、下地から発生した水蒸気等のガスは、粘着剤層がない部分から通気層内に入り、通気層内を通過して外部に放出される。このため、防水層のフクレを防ぐことができる。
また、通気層が通気路として機能するため、粘着剤層の大きさや形状に制約がないことから、粘着剤層がない部分の大きさや形状を、防水層表面に凹凸が生じないように定めることができる。従って、美観の点で優れた防水層を形成することができる。
また、粘着剤層を備えているので、冬季などの低温時にタック不足による接着力低下を起こしやすい液状接着剤を用いる場合に比べ、下地に対する安定した接着力を得ることができる。
さらに、布材からなる通気層が用いられているため、改質アスファルト等からなるシートに比べ、非常に軽量であり、敷設時の作業性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である通気緩衝シート(下張緩衝シート)の敷設例を模式的に示す斜視図である。
【図2】通気緩衝シートの斜視図である。
【図3】通気緩衝シートを用いた防水構造を示す断面図である。
【図4】通気緩衝シートの他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態である通気緩衝シート10(下張緩衝シート)の敷設例を模式的に示す斜視図である。図2は、通気緩衝シート10の斜視図である。図3は、通気緩衝シート10を用いた防水構造を示す断面図である。
図1〜図3に示すように、ここに示す通気緩衝シート10は、表層である樹脂フィルム層1(樹脂層)に、補強層2、通気層3が順次積層され、通気層3の裏面(下面)には、粘着剤層4が形成されている。
【0011】
樹脂フィルム層1は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の汎用の合成樹脂フィルムを使用できる。特にPETからなる樹脂フィルムが好ましい。
樹脂フィルム層1の厚さは、例えば10〜100μmとすることができる。樹脂フィルム層1によって防水性を高めることができる。
樹脂フィルム層1の表面(図3における上面))は塗膜防水層30が形成される塗膜形成面である。
【0012】
補強層2は、網目状の繊維で構成することができ、この繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等からなる有機繊維、ガラス繊維、金属繊維などが使用できる。なかでも特に、価格、重量、入手容易性などの面からガラス繊維が好ましい。
なお、本発明の通気緩衝シートは、樹脂フィルム層および補強層を備えていない構成も可能である。
【0013】
通気層3としては、不織布、織布、ネットクロス(網状の布)などの布材が用いられる。布材とは、単繊維もしくは集束繊維によって布状または網状に形成されたもの、あるいは、これらが複数種類組み合わされたものである。
通気層3を構成する繊維としては、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリビニルアルコールなどの合成繊維;綿、麻などからなる天然繊維などの有機質繊維を用いてもよいし、ガラス、金属、カーボン等の無機質繊維を用いても良い。
これらの中でも、耐候性、機械的強度、下地貼り付け用接着剤との接着性などの面から、ポリエステルからなる不織布が好ましい。
【0014】
不織布としては、ニードルパンチング、樹脂バインダー、熱融着法等の汎用技術で作製したものを用いることができるが、特に、ニードルパンチングは、十分な厚さを有し、かつ通気性に優れた不織布が得られるため好ましい。
通気層3の目付量は、大きすぎれば通気性が低くなるため、500g/m以下が好ましい。目付量をこの範囲にすることによって、十分な通気性が得られる。また、目付量が小さすぎれば緩衝性能が低くなるため、50g/m以上が好ましい。
通気層3は、薄すぎれば通気量が低下するため、その厚さは0.2mm以上、好ましくは0.5mm以上が好適である。また、通気層3は厚すぎると通気緩衝シート10の厚さが大きくなり、施工の容易性の点で好ましくないため、通気層3の厚さは3mm以下が好ましい。
【0015】
通気層3は布材からなるため、弾力性に優れていることから、通気緩衝シート10に、人の歩行等により加えられる力やコンクリートの収縮により生じる応力などを緩衝する緩衝性能を与える。
【0016】
粘着剤層4としては、自着性を有する材料が好適であり、ポリマー改質アスファルトなどのアスファルト系、ゴム系(ブチルゴム等)の材料を使用できる。
図1および図2に示すように、粘着剤層4は、通気層3の下面全体ではなく一部のみに形成されている。
粘着剤層4の形状は、特に限定されない。連続的に形成されていてもよいし、不連続的に形成されていてもよい。
図示例では、粘着剤層4は幅方向に間隔をおいて形成された複数の帯状部分4aからなる。帯状部分4aは一定方向に連続的に形成され、これらは互いにほぼ平行とされている。
粘着剤層4が帯状部分4aからなるため、粘着剤層4が形成されていない部分の通気層3(以下、非形成部分3aという)も帯状部分4aの長さ方向に沿って連続的に延在する帯状となる。このため、非形成部分3aは、粘着剤層4の長さ方向には連続であり、幅方向には不連続である。
【0017】
粘着剤層4の厚さは、例えば0.2mm以上、好ましくは0.5mm以上が好適である。例えば0.2〜1mmとしてよい。
粘着剤層4の厚さは、非形成部分3aと下地20との間に十分な大きさ(断面積)の空間5(図3参照)が確保されるように定めるのが通気性確保の点で好ましい。
【0018】
帯状部分4aの幅は、通気層3の下面全体に対する非形成部分3aの面積が十分に確保されるように定めるのが通気性確保の点で好適である。この幅は、例えば1〜10mmとすることができる。
隣り合う帯状部分4aの間隔は、通気緩衝シート10表面に凹凸が生じないように、ある程度小さく設定するのが好ましく、例えば20mm以下(好ましくは10mm以下)とすることができる。また、間隔が小さすぎれば通気性が低下するため、例えば1mm以上とすることができる。
通気層3の下面全体に対する非形成部分3aの面積比率は、小さすぎれば通気性が低くなり、大きすぎれば下地20に対する接着性が低くなるため、10〜90%(好ましくは10〜40%)が好適である。
【0019】
通気緩衝シート10は、使用前は粘着剤層4に離型紙または樹脂製の離型フィルムを積層しておき、施工現場においてこの離型紙または離型フィルムを剥離させて敷設することができる。
【0020】
次に、通気緩衝シート10を敷設する方法について説明する。
図3に示すように、通気緩衝シート10は、粘着剤層4が形成された面を、コンクリートなどからなる下地20側に向けて下地20表面に敷設される。
粘着剤層4が下地20に接着することによって、通気緩衝シート10は下地20に固定される。
粘着剤層4として自着性を有するものを用いると、下地20表面の処理剤塗布が不要となるため施工が容易になる。
また、下地20表面が脆弱な場合は、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系等のプライマーを塗布し表面を強化することで粘着剤層4との接着力を高めることもできる。
樹脂フィルム層1の表面には、塗膜防水層30に対する接着性を高める処理剤を塗布することができる。
【0021】
通気緩衝シート10上には、液状防水材の吹き付け、塗布などにより塗膜防水層30が形成される。
液状防水材としては、例えば常温硬化性樹脂(または2液硬化型樹脂)を使用できる。特に、超速硬化性の常温硬化性樹脂が好ましく、具体的には、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、アクリルゴム系樹脂、ゴムアスファルト系樹脂などが用いられる。
これによって、通気緩衝シート10と塗膜防水層30からなる防水層40が形成される。
【0022】
通気緩衝シート10は、粘着剤層4が通気層3に部分的に形成されているため、下地20から水蒸気等のガスが発生した場合には、このガスは、図3に矢印で示すように、非形成部分3aから通気層3内に入り、通気層3内を通過して通気層3の周縁部を経て脱気筒等から外部に放出される。
また、図示例では非形成部分3aも連続して延在する帯状であるため、上記ガスは、非形成部分3aと下地20との間の空間5においても非形成部分3aの長さ方向に流れて脱気筒等から外部に放出される。
このため、粘着剤層4の変形により空間5が狭隘化したり閉塞した場合でも十分な通気性を確保できる。
このように、上記ガスが確実に排出されるため、防水層40のフクレを防ぐことができる。
【0023】
通気緩衝シート10では、通気層3が通気路として機能するため、粘着剤層4の大きさや形状に制約がない。例えば、非形成部分3aの面積が小さくても十分な通気量が確保できる。また、非形成部分3aが不連続的であっても通気性能に問題は生じない。
このため、非形成部分3aの大きさや形状を、防水層40表面に凹凸が生じないように定めることができる。
従って、美観の点で優れた防水層40を形成することができる。
また、粘着剤層4の大きさや形状を任意に選択できるため、下地20に応じて十分な接着力が得られるように粘着剤層4の大きさを設定できる。
【0024】
また、通気緩衝シート10は、粘着剤層4を備えているので、冬季などの低温時にタック不足による接着力低下を起こしやすい液状接着剤を用いる場合に比べ、下地20に対する安定した接着力を得ることができる。
さらに、布材からなる通気層3が用いられているため、改質アスファルト等からなるシートに比べ、非常に軽量であり、敷設時の作業性に優れている。
【0025】
通気緩衝シート10の粘着剤層4は、幅方向に間隔をおいて互いに平行に形成された複数の帯状部分4aからなるものであるので、製造において、一定方向に沿って一定幅の粘着剤を連続的に塗布することによって粘着剤層4を形成できる。このため、製造が容易であり、生産効率を高め、製造コスト削減を図ることができる。
【0026】
図4は、本発明の通気緩衝シートの他の例を示すもので、この通気緩衝シート50は、粘着剤層4が独立した島状に形成されている点で図1に示す通気緩衝シート10と異なる。この通気緩衝シート50では、粘着剤層4が上記形状であるため、非形成部分3aは方向によらず連続的な形状である。
通気緩衝シート50においても、下地20から発生した水蒸気等のガスは非形成部分3aから通気層3内を通過して外部に放出される。
このため、粘着剤層4の変形により粘着剤層4間の空間が狭隘化したり閉塞した場合でも十分な通気性を確保できる。
また、粘着剤層4の形状に制約がないため防水層表面の凹凸形成を防止できる。さらに、軽量であるため施工が容易である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・樹脂フィルム層、2・・・補強層、3・・・通気層、4・・・粘着剤層、3a・・・非形成部分、4a・・・帯状部分、10、50・・・通気緩衝シート、40・・・防水層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地表面に設置されて、その上に塗膜防水層が形成される通気緩衝シートであって、
布材からなる通気層の一方の面に、下地に接着される粘着剤層が形成され、
前記粘着剤層は、前記通気層の一方の面の一部のみに形成されていることを特徴とする通気緩衝シート。
【請求項2】
前記粘着剤層は、粘着剤層が形成されていない部分の通気層と下地との間に空間が確保されるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の通気緩衝シート。
【請求項3】
前記粘着剤層は、幅方向に間隔をおいて形成された複数の連続した帯状部分からなることを特徴とする請求項1または2に記載の通気緩衝シート。
【請求項4】
前記粘着剤層が自着性を有するものであることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の通気緩衝シート。
【請求項5】
前記通気層は、合成繊維の不織布からなることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の通気緩衝シート。
【請求項6】
前記通気層の一方の面とは反対の面に、樹脂フィルム層が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の通気緩衝シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−248757(P2010−248757A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98036(P2009−98036)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000133342)株式会社ダイフレックス (24)