説明

通行券発券システム及び通行券発券機

【課題】簡便な方法により車高を測定して最適な高さの発券口から通行券を発券することができる通行券発券システム及び通行券発券機を提供する。
【解決手段】有料道路の料金所入口に車両の進行方向に設置された車両検知器a、bで検知した車両検知情報を基に車両速度を算出し、この車両速度を基に当該車両の運転席での車高Hcを検知する車高検知タイミングを設定し、車両先端が車両検知器bに到達後設定された車高検知タイミングで車高Hcを計測し、この計測された車高情報に基づいて通行券の発券口15a、15bを設定し、当該設定された発券口15a、15bから通行券を発券する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有料道路料金所における通行券発券システム及び通行券発券機に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路などの有料道路の入口に設置された通行券発券機は、入口料金所を通過する車両を検知し、当該車両に対して入口情報の記録された通行券を発券する。車両の利用者(運転者)は、発券された通行券を受取り有料道路に進入する。
【0003】
また、出口料金所に設置された料金収受機は、当該利用者が入口料金所で受取った通行券を処理する。すなわち、通行券に記録された入口情報を元に当該出口料金所までの通行料金を計算し、利用者に通知する。この通知情報に基づき自動で、若しくは収受員を介して料金を受取ることにより、領収書を発行し、料金収受を完了する。
【0004】
上記入口に設置された通行券発券機で通行券を発券する場合、発券口を複数持つ通行券発券機は、車両検知器、軸数検知器、車高計、ナンバープレート読取装置などの複数機器を用いて総合的に運転席の高さを推測して、最適な高さの発券口から通行券を発券する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−55248号公報(第2−3頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の方法により車高を決定するために、車両検知器、軸数検知器、車高計、ナンバープレート読取装置などの機器を設置する必要があり、導入費用がかさむという課題があった。また、設置機器が多いため、設置位置及び設置スペースに制限が加わり、例えば、規模の小さな料金所出入口では、設置が困難になる場合があるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡便な方法により車高を測定して最適な高さの発券口から通行券を発券することができる通行券発券システム及び通行券発券機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の通行券発券システムは、有料道路の料金所入口に進入した車両を検知する車両検知器と、当該車両の高さを検知する車高計と、通行券を発券する通行券発券機とを備えた通行券発券システムであって、前記車両検知器は、車両の進行方向に少なくとも2箇所設置され、通行する車両を検知し、その車両検知情報を前記通行券発券機に送信し、前記車高計は、進入車両の上面に設置され、車両の最上面の高さから当該車高計の設置位置までの高さを計測し、その車高情報を前記通行券発券機に送信し、前記通行券発券機は、通行券を発券する発券部と、この発券部で発券された通行券を発券する複数の発券口と、記発券部で発券された通行券を何れの発券口から排出するか設定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記車両検知器から受信した車両検知情報を基に車両速度を算出する車両速度算出手段と、当該車両速度を基に当該車両の運転席での車高を検知するタイミングを設定する車高検知位置設定手段と、この車高検知位置設定手段により設定された位置での前記車高情報を基に通行券の発券口を設定する発券口設定手段と、この発券口設定手段によって設定された発券口設定情報を前記発券部に送信する送信手段と、を備え、前記発券部は、前記制御部から受信した発券口設定情報により設定された発券口から通行券を発券することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3記載の通行券発券機は、有料道路の料金所入口に進入した車両を検知する車両検知器と、当該車両の高さを検知する車高計と、通行券を発券する通行券発券機とを備えた通行券発券システムの通行券発券機であって、前記通行券発券機は、通行券を発券する発券部と、この発券部で発券された通行券を発券する複数の発券口と、前記発券部で発券された通行券を何れの発券口から排出するか設定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記車両検知器から受信した車両検知情報を基に車両速度を算出する車両速度算出手段と、当該車両速度を基に当該車両の運転席での車高を検知するタイミングを設定する車高検知位置設定手段と、この車高検知位置設定手段により設定された位置での前記車高情報を基に通行券の発券口を設定する発券口設定手段と、この発券口設定手段によって設定された発券口設定情報を前記発券部に送信する送信手段と、を備え、前記発券部は、前記制御部から受信した発券口設定情報により設定された発券口から通行券を発券することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係る通行券発券機及び車高検知装置の配置図
【図2】通行券発券機の構成を示すブロック図
【図3】図2に示す通行券発券機の通行券発券処理を説明するフローチャート
【図4】図1に示す車高検知装置の車高検知位置を説明する図
【図5】図4に示す車高検知装置の動作を説明するタイミングチャート
【図6】図2に示す通行券発券機の設定機能を説明するフローチャート
【図7】図4に示す車高計が車両検知器の真上にない場合の一例
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の通行券発券機及び発券口の高さ測定方法は、有料道路の料金所入口に設置する通行券発券装置及び車高検知装置に適用可能である。本発明を実施するための形態は、以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る通行券発券機10及び車高検知装置20の配置図である。また、図2は、通行券発券機10の構成を示すブロック図である。これらの図を参照して通行券発券機10及び車高検知装置20の構成を説明する。
【0013】
入口料金所には、本実施例に係る車高を検知する車高検知装置20及びこの車高検知装置20の進行方向下流に通行券発券器10が設置される。
【0014】
車高検知装置20は、車両の進入及び進行方向を検知する車両検知器22・23及び車両の高さを計測する車高計21を有して構成される。
【0015】
車両検知器22・23は、道路を挟んだ両側に設置された投光器及び受光器で構成され、当該投光器及び受光器間を通行する車両を検知する透過光検知方式と投光器の前を通過する車両からの反射光を検知する反射光検知方法があるが、いずれの方法も一般的によく知られており、これらの方法によって実現することが可能である。
【0016】
車両検知器22は、進行方向上流側に設置され、所定の距離離間した進行方向下流側に車両検知器23が設置される。
【0017】
車高計21は、進入車両の上面に設置され、車両の最上面の高さから当該車高計21の設置位置までの距離hcを計測する。この計測方法としては、例えば、超音波を送信後、その反射波を受信し、その間の時間を計測することにより、反射面までの距離hcを計測する方法が知られている。
【0018】
図2は、通行券発券機10の構成を示すブロック図である。通行券発券機10は、制御部11、発券部12、上段発券口15a及び下段発券口15bを有して構成される。
【0019】
制御部11は、車高計21、第1の車両検知器としての車両検知器a(22)及び第2の車両検知器としての車両検知器b(23)と通信可能に接続され、車両検知器22及び車両検知器23による車両検知情報に基づいて車両の進入方向及び車両の進入速度(車両速度)を算出する。
【0020】
車高計21は、上述したように、被測定車両の最上面から当該車高計21の設置位置までの距離hcを計測する。制御部11は、車高計21から車高情報としての距離hcを受信し、下式(1)に基づいて車両の高さHcを算出することができる。
【0021】
Hc=Hz−hc・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
Hc:被測定車両の車高
Hz:車高計の設置位置の高さ
hc:被測定車両の最上面から当該車高計の設置位置までの距離
なお、上式(1)から明らかなように、被測定車両の車高Hcは、車高計21の設置位置の高さHzが設定されれば、一義的に設定されるため、被測定車両の最上面から当該車高計21の設置位置までの距離hcを車高Hcとして扱うことも可能である。
【0022】
制御部11は、上記車両検知器22及び23が検知した車両検知情報に基づいて車両の進入を検知すると、上述した被測定車両の車高HCから運転席の高さにあった通行券発券口を発券部に送信する。
【0023】
発券部12は、制御部11から受信した通行券発券口に入口情報が記録された通行券Kを発券する。
【0024】
図3は、図2に示す通行券発券機10の通行券発券処理を説明するフローチャートである。図4は、図1に示す車高検知装置20の車高検知位置を説明する図である。図5は、車高検知の動作を説明するタイミングチャートである。
【0025】
車両Cが車両検知器a(22)によって検知され(S10のY、図5(1)の状態)、さらに車両検知器b(23)によって検知されると(S11のY、図5(2)の状態)、車両検知器a(22)によって検知されてから車両検知器b(23)によって検知されるまでの時間差Tbが算出される(S12、図5(2))。
【0026】
車両先端から運転席までの距離をX、車両検知器aから車両検知器bまでの距離をYとするとき、その間を通過する車両の速度Vは、車両先端が車両検知器a(22)によって検知されてから車両検知器b(23)に達するまでの時間をTbとすると、下式(2)で示される(車両速度算出手段)。
【0027】
車両速度V=Y/Tb ・・・・・・・・・・・・(2)
Tb:車両先端が車両検知器aによって検知されてから車両検知器bに達するまでの時間
車両先端が、さらに、位置Xに達するまでの距離(X−Y)を車両速度Vで通過する時間Tは、また、車高HCを検知するタイミングに該当し、上式(2)を用いて下式(3)又は(4)で示される。
【0028】
T=(X−Y)/V=(X−Y)・Tb/Y
=((X/Y)−1)・Tb ・・・・・・・・・(3)
T=(R−1)・Tb ・・・・・・・・・・・・・(4)
R:補正値 R=X/Y ・・・・・・・・・・・・(5)
T:(X−Y)を車両速度Vで通過するのにかかる時間(車高検知タイミング)
Tb:車両先端が車両検知器aによって検知されてから車両検知器bに達するまでの時間
上式(4)は、車両Cの先端が車両検知器bを通過後、式(4)で示す時間T経過後(遅延後)に、例えば、車両検知器a(22)の上面に設置されている車高検知器21により運転席での車高位置を検知できることを示している。
【0029】
また、上式(4)又は上式(5)に示す補正値Rは、車両Cの先端から運転席までの距離Xが、車両検知器a及び車両検知器b間の距離の何倍になるかを示す計数であり、車両Cの構造及び車両検知器a、bの設置位置により一義的に設定される値であるが、車両検知器a、bの設置位置により変動するため、ここでは補正値として事前に設定可能な値としてある。
【0030】
車高HCを検知するタイミングである遅延時間Tが設定遅延時間Tdに到達したか確認する(S14、車高検知位置設定手段)。なお、Tdは下式(6)により設定される。
【0031】
Td=T+D・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)
D:許容値
ステップS14による確認の結果、設定遅延時間Tdに到達した場合(S14のN)、車高HCを検知(計測と同義)する(S15)。
【0032】
一方、設定遅延時間Tdに到達していない場合(S14のY)、設定遅延時間Td経過後、車高HCを検知する(S16)。
【0033】
上記車高HCの計測結果、車高HCが低い場合は、下段発券口から発券する(S18、発券口設定手段)。一方、車高HCの計測結果、車高HCが高い場合は、上段発券口から発券する(S19、発券口設定手段)。
【0034】
上記発券口設定手段によって設定された発券口設定情報は、発券部12に送信される。発券部12は、制御部11から受信した発券口設定情報により設定された発券口から通行券を発券する。
【0035】
図6は、図2に示す通行券発券機10の設定機能を説明するフローチャートである。補正値Rが入力され(S21)、設定が終了すると(S22のY)、補正値Rを記憶する(S23)。一方、設定が終了していないときは、補正値Rが入力されるのを待つ(S21−S22)。
【0036】
図7は、図4に示す車高計21が、車両検知器a(22)の真上にない場合の一例である。図7(1)は、車高計21が車両検知器a(22)の進行方向下流に設置されている場合である。この場合には、上式(3)において、XをZ+Xで置き換えることにより遅延時間Tを算出することができるが、図に示されているように、車両検知器a(22)と車高検知器21の設置位置の距離Zを車両速度Vで通過する時間だけ設定遅延時間Tdが長くなる。このようにして設定した設定遅延時間Tdを用いて図3に示すステップS14以下の処理を行うことにより適正な発券口から発券することが可能である。
【0037】
図7(2)は、図4に示す車高計21が車両検知器a(22)の進行方向上流に設置されている場合である。この場合には、上式(3)において、XをX−Zで置き換えることにより遅延時間Tを算出することができるが、図に示されているように、車両検知器a(22)と車高検知器21の設置位置の距離Zが車両速度Vで通過済みであるため、設定遅延時間Tdが短くなる。このようにして設定した設定遅延時間Tdを用いて図3に示すステップS14以下の処理を行うことにより適正な発券口から発券することが可能である。
【0038】
なお、車両の形態によっては、2階建てバスに採用されているように車高HCが高いのに運転席が下部にあるため、通行券が上段発券口15bから発券されたため、操作できない場合は、当該通行券発券機10に搭載されたインターフォンから通行券発券口の変更を通知すると、操作員は、監視盤(図示しない)から操作し、例えば上述した例の場合には、上段発券口15aから発券された通行券Kを通行券発券機10内に取込み、下段発券口15bに当該通行券Kを発券することができる。
【0039】
当然ながら、下段発券口15bに発券された通行券を上段発券口15aから発券できるのは言うに及ばない。
【0040】
また、当該通行券発券機10の先に通行を規制する阻止棒(図示しない)が設置されている場合は、当該通行券を抜取るのに同期して阻止棒を開け通行可能にすることも可能であるが、通行券発券機10の先に阻止棒が設置されていないために、通行券を取らずに通過する場合が考えられる。この場合には、発券口に発券された通行券を通行券発券機10内部に回収することができる。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施例によれば、簡便な方法により車高HCを測定して最適な高さの発券口15a、15bから発券することが可能である。また、この方法によれば、通行券発券機10の制御部のプログラムを変更し、かつ、車両検知器a、b及び車高計21が設置されている設置位置にかんする補正値の設定を行うことにより既存の設備をそのまま利用することも可能になる。この結果、規模の小さな料金所出入口であっても導入費用を低く抑えながら、通行券の発券口の切り換えが可能である。
【符号の説明】
【0042】
T 通行券
C 車両
10 通行券発券機
11 制御部
12 発券部
15a 上段発券口
15b 下段発券口
20 車高検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有料道路の料金所入口に進入した車両を検知する車両検知器と、当該車両の高さを検知する車高計と、通行券を発券する通行券発券機とを備えた通行券発券システムであって、
前記車両検知器は、
車両の進行方向に少なくとも2箇所設置され、通行する車両を検知し、その車両検知情報を前記通行券発券機に送信し、
前記車高計は、
進入車両の上面に設置され、車両の最上面の高さから当該車高計の設置位置までの高さを計測し、その車高情報を前記通行券発券機に送信し、
前記通行券発券機は、
通行券を発券する発券部と、
この発券部で発券された通行券を発券する複数の発券口と、
前記発券部で発券された通行券を何れの発券口から排出するか設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記車両検知器から受信した車両検知情報を基に車両速度を算出する車両速度算出手段と、
当該車両速度を基に当該車両の運転席での車高を検知するタイミングを設定する車高検知位置設定手段と、
この車高検知位置設定手段により設定された位置での前記車高情報を基に通行券の発券口を設定する発券口設定手段と、
この発券口設定手段によって設定された発券口設定情報を前記発券部に送信する送信手段と、を備え、
前記発券部は、
前記制御部から受信した発券口設定情報により設定された発券口から通行券を発券することを特徴とする通行券発券システム。
【請求項2】
前記車両速度算出手段は、
前記少なくとも2個の車両検知器が、車両の進行方向上流に設置された第1の車両検知器と、この第1の車両検知器の下流に設置された第2の車両検知器と、で構成されるとき、
前記第1及び第2の車両検知器間の距離Yを、車両が前記第1の車両検知器に到達後、前記第2の車両検知器に到達するまでの時間Tbで割ることにより車両速度を算出し、
前記車高検知位置設定手段は、
車両が前記車両速度で進入し、車両先端から運転席までの距離をXとするとき、車両先端が前記第2の車両検知器に到達後時間T(=((X/Y)−1)・Tb)だけ遅延したタイミングを算出し、そのタイミングを車高を検知するタイミングと設定するものであることを特徴とする請求項1記載の通行券発券システム。
【請求項3】
有料道路の料金所入口に進入した車両を検知する車両検知器と、当該車両の高さを検知する車高計と、通行券を発券する通行券発券機とを備えた通行券発券システムの通行券発券機であって、
前記通行券発券機は、
通行券を発券する発券部と、
この発券部で発券された通行券を発券する複数の発券口と、
前記発券部で発券された通行券を何れの発券口から排出するか設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記車両検知器から受信した車両検知情報を基に車両速度を算出する車両速度算出手段と、
当該車両速度を基に当該車両の運転席での車高を検知するタイミングを設定する車高検知位置設定手段と、
この車高検知位置設定手段により設定された位置での前記車高情報を基に通行券の発券口を設定する発券口設定手段と、
この発券口設定手段によって設定された発券口設定情報を前記発券部に送信する送信手段と、を備え、
前記発券部は、
前記制御部から受信した発券口設定情報により設定された発券口から通行券を発券することを特徴とする通行券発券機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−3390(P2012−3390A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136077(P2010−136077)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】