通行管理装置
【課題】1つの読取装置で複数の車両の管理が可能な通行管理装置を提供する。
【解決手段】本発明の読取装置20は、読取り領域に電波を放射して各ICタグ7が変調した反射波を受信するアンテナ6と、アンテナ6を介して各ICタグ7に電波を送信する送信手段23と、各反射波を夫々復調する復調手段24と、各反射波の遅延時間を求める遅延時間算出手段25と、各ICタグ7からの各反射波の遅延時間の差分に基づいてアンテナ6と各ICタグ7との離間距離を演算すると共に、アンテナ6に対する各ICタグ7の移動方向を識別する制御装置(制御手段)21と、を備えて構成されている。
【解決手段】本発明の読取装置20は、読取り領域に電波を放射して各ICタグ7が変調した反射波を受信するアンテナ6と、アンテナ6を介して各ICタグ7に電波を送信する送信手段23と、各反射波を夫々復調する復調手段24と、各反射波の遅延時間を求める遅延時間算出手段25と、各ICタグ7からの各反射波の遅延時間の差分に基づいてアンテナ6と各ICタグ7との離間距離を演算すると共に、アンテナ6に対する各ICタグ7の移動方向を識別する制御装置(制御手段)21と、を備えて構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通行管理装置に関し、特に、非接触記録媒体を搭載した車両についての通行の許否等の管理を無線通信手段により行う通行管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人の駐車場等では、通路の外側縁にID情報を非接触で読み取るリーダを設置し、ID情報を記録したICカードを搭載した車両がリーダに接近したときに読み取ったID情報に基づいて車両の進入、退出の許否を判断してゲートを開閉する車両通行管理装置が設置されている。しかし、1台の車両に搭載したICカードの情報を1台のリーダにより読み取って判断する構成であるため、2つの隣接した通路(例えば、入場と出場)を通行する車両を管理するためには、夫々個別のリーダが1台ずつ必要となる。
【0003】
例えば、図11は従来の車両通行管理装置の構成を示す模式図であり、図11(a)は、車両が対面通行する通路の中央にアイランドを設置した車両通行管理装置を示す模式図である。アイランド40には、入場側及び出場側の通路を開閉するゲート47、48が設けられ、入場側の読取範囲45及び出場側の読取範囲46に電波を夫々放射するリーダライタ41、42と、を備えている。また、各車両A、Bには、入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を記録したICカード(ICタグ)43a、43bを夫々搭載している。この構成の場合、読取範囲45と46が明確に分離しているため、車両Aが矢印の方向から読取範囲45に進入するとリーダライタ41がICカード43aに記録された情報を読取って、入場可能車両であると判定した場合にはゲート47を開放する。また、車両Bが矢印の方向から読取範囲46に進入するとリーダライタ42がICカード43bに記録された情報を読取って、出場可能車両であると判定した場合にはゲート48を開放する。このように、図11(a)の場合は、入出場の車両の認識を正確に行うことができるが、通路44の中央にアイランド40が必要となり、車両の通行スペースが狭くなる、或いは通路の全幅を拡張する必要が生じる、という不具合がある。
図11(b)は、通路の狭小化、設置スペースの増大をもたらすアイランドを不要とするために、入場側及び出場側の通路の外側縁に夫々入出場の許否を判定するための識別情報を取得するためのリーダライタ41、42を設置した車両通行管理装置を示す模式図である。この構成の場合は、通路44の中央にアイランドを設置する必要は無いが、リーダライタ41、42の夫々の読取範囲を図11(a)と同じにすると、読取範囲45と46が重複してしまい、一方の通路のみに車両が通過しているにも拘わらず、入出場側の2つのゲート47、48が同時に動作してしまうといった問題が発生する。
【0004】
図11(c)は、図11(b)の問題を解決するために、各リーダライタを離して配置した車両通行管理装置を示す模式図である。この場合は、読取範囲45と46が重複することはないが、リーダライタ41と42を離して配置する必要があるため、設置領域を広く必要とする。また、制御上の問題として、例えば、車両Aが矢印の方向から進入すると、読取範囲45によりリーダライタ41が車両Aに搭載したICカード43aに記録されたID情報を読み取ってゲート47を開放するが、車両Aがゲート47を通過後、再び読取範囲46に進入するため、リーダライタ42が車両Aに搭載したICカード43aに記録されたID情報を読み取ってゲート48を間違って開放してしまうといった問題がある。出場側も同様な問題が発生する。
図11(d)は、図11(c)の問題を解決するために、各リーダライタの読取範囲を縮小した車両通行管理装置を示す模式図である。この場合は、リーダライタ41と42の間隔を狭くできるが、読取範囲を縮小して隣接する通路に電波が届かないように、各リーダライタ41、42の出力パワーを抑制する必要がる。この場合、図11(c)のような不具合は起きないが、出力パワーが小さいため、車両に搭載したICカード43aのID情報を読み取る際のS/Nが悪くなり、読取エラーを起こす確率が高くなる。
【0005】
特許文献1には、1台の無線ICタグリーダ装置と画像取得装置により、複数の無線ICタグのID情報と位置とを結び付け、無線ICタグの位置を特定する無線ICタグID読取りシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−59261公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上説明した従来の車両通行管理装置では、入出場の許否を判定するための識別情報を取得するために入場用と出場用の2台の専用のリーダライタが必要となり、システムのコストが高くなる、或いは、通路の中央にアイランドが必要となり、車両の通行スペースが狭くなるため、通路の全幅を拡張する必要が生じる、といった問題がある。尚、リーダライタの種類として、1つのリーダライタで複数のICカードの情報を一括で読み取るタイプのものもあるが、あくまでもICカードに記録されたID情報を一括で読取るのが主目的であり、一括して読み取った複数のID情報の何れが入場する車両のもので、何れが出場する車両のものであるかを識別することはできなかった。また、従来の車両通行管理装置は、2つの読取範囲が重複しないように各リーダライタを最適な位置に配置する必要があるため、配置のために領域を広く確保せざるを得ないといった問題がある。
また、特許文献1に開示されている従来技術は、距離センサを用いて対象物までの距離を推定して、それと同時に対象物のID情報をリーダにより読み取って、推定した距離とID情報とを対応付けるものである。従って、距離を測定するための距離センサが必要となるため装置構成が複雑となり、装置コストも高くなるといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、1つのアンテナを介して複数のICカードからの反射波を受信し、その反射波の遅延時間に基づいて各ICカードとアンテナとの距離、及びアンテナに対する移動方向を演算することにより、1つの読取装置で複数の移動体(車両)の管理が可能な通行管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、移動体に関する固有情報を記録した非接触情報記録媒体を夫々搭載した複数の移動体(車両)が該非接触情報記録媒体の読取り領域を略同時期に通過する際に、前記各非接触情報記録媒体の固有情報を読取る単一の読取装置を備えた通行管理装置であって、前記読取装置は、前記読取り領域に電波を放射して前記各非接触情報記録媒体が変調した反射波を受信するアンテナと、前記アンテナを介して前記各非接触情報記録媒体に前記電波を送信する送信手段と、前記各反射波を夫々復調する復調手段と、前記各反射波の遅延時間を求める遅延時間算出手段と、前記遅延時間算出手段が算出した前記各非接触情報記録媒体からの各反射波の遅延時間の差分に基づいて前記アンテナと前記各非接触情報記録媒体との離間距離を演算すると共に、前記アンテナに対する前記各非接触情報記録媒体の移動方向を判定する制御手段と、従来の読取装置により非接触情報記録媒体の記録情報を読み取る場合は、1台の読取装置が1つの非接触情報記録媒体の記録情報を読み取るのが一般的であった。従って、対面通行する2台の車両に夫々搭載された各非接触情報記録媒体の記録情報を読み取って各車両を個別に識別するためには、夫々専用の読取装置が必要となり、装置のコストが嵩むといった問題があった。本発明はこの問題を解決するために、1つのアンテナを介して複数の非接触情報記録媒体からの反射波を受信し、その反射波の遅延時間に基づいて各非接触情報記録媒体とアンテナとの距離、及びアンテナに対する移動方向を演算する。これにより、非接触情報記録媒体を夫々搭載した複数の移動体のアンテナからの距離と、アンテナに対する移動方向とを1台の読取装置により判定することができる。
【0009】
請求項2は、前記各移動体が前記読取り領域を通過する方向の下流側に夫々配置された通行ゲートと、該各通行ゲートを夫々開閉駆動するゲート開閉機構と、を備え、前記制御手段は、前記各移動体の移動経路に夫々配置された前記各通行ゲートを開放するために対応する前記各ゲート開閉機構を制御することを特徴とする。
本発明の制御手段は、アンテナから各移動体までの距離と、アンテナに対する移動方向を演算により求めることができる。従って、その演算結果に基づいて対応する移動経路上にある各ゲート開閉機構を制御することができる。
請求項3は、前記離間距離は、前記アンテナと前記各非接触情報記録媒体とが最も接近したときの距離であることを特徴とする。
制御手段がアンテナと各非接触情報記録媒体との距離を演算する場合、アンテナが固定されて、移動体が移動するため、移動体のベクトル方向が2次元的に変化する。そして、2次元曲線の極小値がアンテナと移動体が最も接近した距離である。本発明では、この極小値を常に検出して、そのときの距離をアンテナと各非接触情報記録媒体との離間距離として確定する。これにより、アンテナと移動体との距離を常に一定条件下で正確に演算することができる。
【0010】
請求項4は、2台の前記移動体の各移動経路が隣接し、且つ並行している場合に、前記アンテナを前記各移動経路の境界部に配置するか、一方の移動経路の外側縁に配置することを特徴とする。
1台の読取装置で2台の移動体の距離を夫々演算するためには、1つのアンテナと各移動体との距離が明確に差がつくようにアンテナを配置することが重要である。また、1台の読取装置で読み取った情報に基づいて2台の移動体の移動方向を夫々演算するためには、各移動体との距離が略同じになるようにアンテナを配置することが重要である。そこで本発明では、2台の移動体の各移動経路が隣接し、且つ並行している場合に、アンテナを各移動経路の境界部に配置するか、一方の移動経路の外側縁に配置する。これにより、2台の移動体とアンテナとの距離を明確に区分けすることができると共に、2台の移動体の移動方向を的確に判定することができる。
請求項5は、2台の前記移動体の各移動経路が読取り領域に達するまでは並行しているが、読取り領域内では反対方向に分岐している場合に、前記アンテナを分岐した2つの分岐経路の中間位置に配置したことを特徴とする。
並行して走行している2台の移動体が、読み取り領域に達した所で反対方向へ分岐して、別々のゲートを通過する場合、その分岐点で移動体の移動方向を演算することにより、左右のどちらのゲートを開放するかを判断することができる。
請求項6は、前記各非接触情報記録媒体に記録された各固有情報に基づいて前記各移動体の通行を許可するか否かを判定する判定手段を備えたことを特徴とする。
各非接触情報記録媒体には、必ずその非接触情報記録媒体に特有なID情報が記録されており、そのID情報により各移動体を個別に識別することができる。例えば、セキュリティ管理を行う場合、予め、入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を登録しておき、ゲートの上流側でこのID情報を読取って、ID情報が入場可能車両に係るものであるか否かにより、車両の通行を許可するか否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1つのアンテナを介して複数の非接触情報記録媒体からの反射波を受信し、その反射波の遅延時間に基づいて各非接触情報記録媒体とアンテナとの距離、及びアンテナに対する移動方向を演算することにより、非接触情報記録媒体を夫々搭載した複数の移動体のアンテナからの距離と、アンテナに対する移動方向とを1台の読取装置により認識することができる。
また、制御手段は、アンテナから各移動体までの距離と、アンテナに対する移動方向を演算により求めることができるので、その演算結果に基づいて対応する移動経路上にある各ゲート開閉機構を制御することができる。
また、アンテナと各非接触情報記録媒体との距離の極小値を常に検出して、そのときの距離をアンテナと各非接触情報記録媒体との離間距離として確定することにより、アンテナと移動体との距離を常に一定条件下で正確に演算することができる。
【0012】
また、2台の移動体の各移動経路が隣接し、且つ並行している場合に、アンテナを各移動経路の境界部に配置するか、一方の移動経路の外側縁に配置することにより、2台の移動体とアンテナとの距離を明確に区分けすることができると共に、2台の移動体の移動方向を的確に判断することができる。
また、並行して走行している2台の移動体が、読み取り領域に達した所で反対方向へ分岐して、別々のゲートを通過する場合、その分岐点で移動体の移動方向を演算することにより、左右のどちらのゲートを開放するかを判断することができる。
また、セキュリティ管理を行う場合、予め、入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を登録しておき、ゲートの上流側でこのID情報を読取って登録ID情報と比較することにより、各車両の通行を許可するか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の読取装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のICタグ(ICカード)の構成を示すブロック図である。
【図3】ICタグが移動した場合のアンテナとICタグの距離との関係を示す模式図である。
【図4】図2の動作を更に詳細に説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る通行管理装置の構成を示す模式図であり、(a)は、本実施形態の全体構成を示す図であり、(b)は、アンテナと各車両との位置関係を示す図であり、(c)は、ゲートの位置を並列に設置した場合の変形実施例を示す図である。
【図6】制御装置がアンテナから各車両までの距離を演算する過程を説明する図であり、(a)は各移動経路に夫々車両が同時に、又は時間がずれて進入したときの図であり、(b)は1つの移動経路にのみ車両が進入した図であり、(c)は1つの別の移動経路にのみ車両が進入した図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る通行管理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図8】(a)(b)は本発明の第2の実施形態に係る通行管理装置の構成を示す模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る通行管理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図10】(a)〜(c)は各実施例における車両とゲートとの位置関係を示す図である。
【図11】従来の車両通行管理装置の構成を示す模式図であり、(a)は、車両が対面通行する通路の中央にアイランドを設置した車両通行管理装置を示す模式図であり、(b)はアイランドを不要とするために、入場側及び出場側の通路の外側縁に入出場を識別するリーダライタを夫々設置した車両通行管理装置を示す模式図であり、(c)は各リーダライタを離して配置した車両通行管理装置を示す模式図であり、(d)は各リーダライタの読取範囲を縮小した車両通行管理装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0015】
本発明の通行管理装置を説明する前に、本発明の主たる構成要件である読取装置について説明する。図1は本発明の読取装置の構成を示すブロック図である。本発明の読取装置20は、読取り領域に電波を放射して各ICタグ(非接触情報記録媒体)7が変調した反射波を受信するアンテナ6と、アンテナ6を介して各ICタグ7に電波を送信する送信手段23(PLL1、VCO2、変調器(Modulator)3、及び増幅器(AMP)4を含む)と、各反射波を夫々復調する復調手段24(ミキサ9、11、90°移相器(Shifter)10、及びBPF12、13を含む)と、各反射波の遅延時間を求める遅延時間算出手段25(A/Dコンバータ14、16及び演算器15を含む)と、遅延時間算出手段25が算出した各ICタグ7からの各反射波の遅延時間の差分に基づいてアンテナ6と各ICタグ7との離間距離を演算すると共に、アンテナ6に対する各ICタグ7の移動方向を判定する制御装置(制御手段)21と、を備えて構成されている。尚、本実施形態では、送信手段23、復調手段24、及び遅延時間算出手段25を含む構成をリーダユニット22と呼ぶ。
【0016】
次に、本発明のリーダユニット22について更に説明する。リーダユニット22は、VCO2の出力信号の位相を、基準となる入力信号の位相に同期させるPLL回路1と、PLL回路1の制御電圧に基づいて所定の周波数を発振するVCO(電圧制御発振器)2と、VCO2から発信された信号をマイクロ波(電波)に変調する変調器(Modulator)3と、マイクロ波を増幅する増幅器(AMP)4と、マイクロ波の方向により向きを決定するサーキュレータ5と、マイクロ波を発信して非接触ICタグ(以下、単にICタグと呼ぶ)(非接触情報記録媒体)7からの反射波を受信するアンテナ6と、サーキュレータ5により合成された合成波を増幅する増幅器(AMP)8と、VCO2の信号と増幅器8により増幅された信号を加算重畳してsin波を復調するミキサ(Mixer)9と、VCO2の信号を90°移相器(Shifter)10により移相した信号と増幅器8により増幅された信号を加算重畳してcos波を復調するミキサ11と、ミキサ9の信号から所定の周波数成分のみを通過するBPF12と、ミキサ11の信号から所定の周波数成分のみを通過するBPF13と、BPF12の出力信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ14と、BPF13の出力信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ16と、A/Dコンバータ14とA/Dコンバータ16から位相を演算する演算器15と、を備えて構成されている。
電波を利用したRFIDシステムでは、ICタグ7に与えた電波(CW波)の一部を、ICタグ7が変調を加えて戻す(振幅・位相を変化させて反射させる)ことにより、ICタグ7からリーダユニット22への通信を行っている。
リーダユニット22には「自ら発信した電波の反射波(後方散乱波)」が戻ることとなるが、この後方散乱波は、ICタグ7とアンテナ6との間を往復した波であるため、自ら発信した電波に対しICタグ7とアンテナ6の距離の倍に比例した遅延を持った波であると考えることができる。
【0017】
本実施形態では、この後方散乱波の遅延時間の差分を測定することにより、アンテナ6とICタグ7との距離の変化の認識を行う。
ここで、リーダユニット22に接続されたアンテナ6から送信されるCW波を
・・・(1)
とした時(AとθCは回路による決まる一定値)、同じアンテナ6で受信されるICタグ7からの後方散乱波は、以下のように表せる。
・・・(2)
l[m]はICタグ−アンテナ間の距離、cは電波の速度[m/s]、Bは空間やICタグでの減衰を表す係数、θTはICタグでの反射時の位相変化である。電波を利用するRFIDにおいては、ICタグ7からリーダユニット22への通信を行う際、ICタグ7で加えられる変調により、このBとθTが変化する。
【0018】
ここで、ICタグ→リーダユニット間における通信がASK変調により行われる場合には、1を表すシンボルに同期して遅延時間の測定を行うものとすると、θTをタグ固有のある一定の値とすることができる。
また、BPSK変調の場合では、1または0を表すシンボルに同期して遅延時間の測定を行うものとすると、θTをICタグ固有のある一定値θT1、もしくは、θT2(=θT1+π)のどちらかの値とすることができる。同様に、その他の位相変調においても、あるシンボルに同期して遅延時間の測定を行うことで、θTをICタグ固有のある一定の値とすることができる。
【0019】
このように、ICタグ7との通信を行う際に、そのシンボルと同期して遅延時間を測定することにより、ICタグ7で反射される際の位相が安定し、θTを定数値とみなすことができる。また、変調のかけられた後方散乱波を対象として測定を行うことで、変化を持たない後方散乱波(反射波)を、BPF12、13により除去することが可能となり、周囲の金属物や通信状態に無いICタグからの反射等の影響を排除することができる。
更に、ICタグ7からリーダユニット22への通信を行う際に遅延時間を測定しているため、アンチコリジョン機能を持つプロトコルのもとでは、通信相手となるICタグを一つに限定した条件の下で遅延時間の測定を行うことが可能となり、複数のICタグが存在する環境においても、特定のICタグの後方散乱波のみを選択して遅延時間を測定することと、その通信で得られたデータ(ID)と遅延時間を関連付けて管理することが可能となる。
【0020】
次に、後方散乱波の遅延時間の測定について説明する。CW波と共通の信号源から作成されるローカル信号、
・・・(3)
を使用して、直交検波を行うことによって行う。
これにより、以下のIQ信号が得られる。
・・・(4)
・・・(5)
ここで、CとθRは、直交検波の操作により付加される変数であるが、Cは回路により決まる値であるため一定値と考えることができる。また、ローカル信号とCW波は、同じ信号源からの信号であるため、その位相差を回路により決まる一定値とみなすことができ、これにより、θRも回路により決まる一定値とみなすことができる。
【0021】
このIQ信号をA/D変換器14、16により取り込み、演算器15により、位相θr、
・・・(6)
を得る。
ここで、θc・θT・θRはいずれも定数値とみなせるため、lをtの関数とすれば、θrは以下のように表すことができる。
・・・(7)
ここで、距離の変化Δlがλc/4を超えない内に、再度θrの取得を行うことで、このθrから遅延時間の差分を得ることができる。
【0022】
そして、
・・・(8)
であれば、この通信で得られたIDを持つICタグはアンテナから離れる方向に動いているといえ、また、
・・・(9)
であれば、この通信で得られたIDを持つICタグはアンテナに近づく方向に動いているといえる。
ここで、ICタグ7もしくはアンテナ6、もしくは両方が移動し、また、その移動方向・速度が一定であるシステムであれば、距離l(t)は2次関数により表され、dl/dt=0となるのは、両者の距離が極小となる点であるので(ICタグとアンテナの移動方向・速度が同一ではない場合)、dl/dt=0となる点、即ちdθ/dt=0となる点は、ICタグとアンテナの距離が最短となる位置といえる。
【0023】
これにより、dθ/dtを得ることにより、ICタグ7とアンテナ6が最も接近したタイミングを検出することができる。さらに、ここで、移動方向・速度が同じであり、かつ、同一の線上を移動するICタグ同士に対しては、このdθ/dtの大小比較により、ICタグの順序を決定することができるといえる。
即ち、リーダユニット22は、マイクロ波を利用してICタグ7と通信を行うマイクロ波方式におけるリーダである。従って、リーダユニット22から送信した電波(マイクロ波)は、ICタグ7により変調されて反射波としてリーダユニット22により受信される。このとき発信した電波と反射波の間には、距離に応じた遅延時間が生じる。本実施形態はこの遅延時間を演算して求めることにより、ICタグ7とアンテナ6の距離の変化を求めるものである。これにより、移動するICタグ7の距離の変化を把握することにより、移動するシステムにおいて、読み取り領域内の複数のICタグの配列順序と移動状態を識別することができる。
尚、直交変調とは、sin波とcos波を90度位相をずらして(直交して)加算重畳することにより、合成波の振幅は、sin波の振幅がゼロとなる位相のときに、cos波の最大振幅になり、cos波の振幅がゼロとなる位相のときに、sin波の最大振幅になるように合成振幅が生成される。即ち、2つの信号を1つの合成波にまとめて変調することができる。本実施形態はこの原理により変調された合成波から直交復調することによりsin波(発信した電波)とcos波(反射波)を復調する。
【0024】
図2は、ICタグの構成を示すブロック図である。本発明のICタグ7は、リーダユニット22からの電力用搬送波によりデータの授受をするアンテナ33と、書き込みコマンド読み出しコマンドを生成する送受信回路34と、アンテナ33からの電力用搬送波を受け、それを整流して直流電力に変換する電力生成回路37と、制御用ファームウェアとデータの記憶を司るメモリ装置38と、制御回路32からの送信コマンドに搬送波を乗せて変調する変調器36と、送受信回路34からの搬送波データから2値化データに変換する検波器35と、ICタグ7の全体の動作を制御する制御回路32から構成されている。
【0025】
図3は、ICタグが移動した場合のアンテナとICタグの距離との関係を示す模式図である。この図では、ICタグ7を取り付けた物品a、物品b、物品cが所定の間隔を維持して矢印Aの方向に移動しているものとする。そして、図2では、アンテナ6と物品aの距離がla、アンテナ6と物品bの距離がlb、アンテナ6と物品cの距離がlcとなる。
例えば、アンテナ6が固定され、ICタグ7が一定速度で移動する場合、距離と時間との関係は2次関数となる。即ち、1つの移動するICタグに注目したとき、所定方向(矢印Aの上流側)からアンテナ6に近づき、最もアンテナ6に近づいた位置から遠ざかって行く。つまり、ICタグのベクトルの向きと大きさから移動方向と速度を認識することができる。これにより、物品a、b、cの並び順とアンテナ6からの移動方向を識別することができる。
【0026】
図4は、図3の動作を更に詳細に説明するための図である。縦軸にアンテナ6(原点)と物品a、b、cまでの距離を示し、横軸に通過時間を示す。この図から明らかなように、物品aはアンテナ6までの距離がlaのとき、ベクトルの向きと大きさは矢印Laとなり、アンテナ6に対して距離が2次関数17に従って減少してくる(近づいてくる)。また、物品bはアンテナ6までの距離がlbのとき、ベクトルの向きと大きさは矢印Lbとなり、アンテナ6に対して距離が2次関数17の極小点(最接近)にある。また、物品cはアンテナ6までの距離がlcのとき、ベクトルの向きと大きさは矢印Lcとなり、アンテナ6に対して距離が2次関数17に従って増加してくる(遠ざかる)。
【0027】
このように移動する物品に対して、上記式(1)〜(7)を演算することにより、アンテナ6もしくはICタグ7、もしくはその両方が移動するシステムにおいて、ICタグ7とアンテナ6の距離の変化方向と、その変化量を検出することが可能となる。
これにより、アンテナ6もしくはICタグ7、もしくは両方が移動するシステムにおいて、交信可能エリア内に複数のICタグが存在する場合でも、その順序・移動状態を識別することが可能となり、読み取ったIDとICタグを正確に対応付けることが可能となる。また、その変化方向・変化量から、ICタグ7とアンテナ6が最も近づいたタイミングを知ることができ、ICタグの位置の取得が可能となる。他にも、アンテナとICタグとの距離の変化方向、またその変化量などの情報からICタグをフィルタリングすることで、様々な用途に応用が可能である。
【0028】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る通行管理装置の構成を示す模式図であり、(a)は、本実施形態の全体構成を示す図であり、(b)は、アンテナと各車両との位置関係を示す図であり、(c)は、ゲートの位置を並列に設置した場合の変形実施例を示す図である。
本発明の通行管理装置50は、車両(移動体)に関するID情報(固有情報)を記録したICタグ(非接触情報記録媒体)7を夫々搭載した複数の車両がICタグ7の読取り領域29を略同時期に通過する際に、ICタグ7のID情報をアンテナ6を介して読取る単一の読取装置20を備えている。
読取り領域29とは、異なった方向、或いは同じ方向へ並行して移動する各車両がゲートの手間で近接した状態となる領域であり、この読取り領域内に位置する各車両が搭載したICタグの記録情報を読取装置20によって読取ることが可能となるように読取り領域と読取装置20との位置関係が設定されている。
本実施形態では、センターライン27により分離された移動経路26、28と、夫々の移動経路を走行する車両の走行方向下流側に設置され、当該移動経路を開閉するゲート30、31と、一方の移動経路26の外側縁(他方の移動経路28とは反対側の側縁)に設置され、両移動経路26、28をカバーする領域を読取り領域29とする電波を放射するアンテナ6と、図1で説明したリーダユニット22と、制御装置21と、を備えて構成されている。尚、ゲート30、31には図示を省略するが、各ゲートを夫々開閉駆動するゲート開閉機構が備えられ、制御装置21は、このゲート開閉機構を制御する。
【0029】
また図5では、ICタグ7aを搭載した車両Aはゲート30に向かって移動し、ICタグ7bを搭載した車両Bはゲート31に向かって移動しており、その移動過程で、アンテナ6の読み取り領域29内に車両Aと車両Bが略同時期に進入した場合を図示している。尚、アンテナ6は、図5(b)に示すように、電波が障害物に妨害されることなく車両AとBに到達する位置に配置されることにより、車両AとBとが読取り領域29内に同時に進入した場合であっても、電波が各車両により妨害されることを防止できる。また、図5(a)の場合は、各車両が夫々の移動経路内を走行する限り、必ずLa<Lbの関係が維持できるので、制御装置21が車両Aに搭載したICタグ7aの反射波を受信して演算した距離がLaである場合は、移動経路26上に車両があると判定できるので、移動経路26に対応するゲート30を開放すればよい。また、制御装置21が車両Bに搭載したICタグ7bの反射波を受信して演算した距離がLbである場合は、移動経路28上に車両があると判定できるので、移動経路28に対応するゲート31を開放すればよい。
【0030】
図5(c)は、ゲート30と31が並列に設置され、各車両が同一方向に走行する場合を示す図である。この場合も、図5(a)と同様に、制御装置21が車両Aに搭載したICタグ7aの反射波を受信して演算した距離がLaである場合は、移動経路26上に車両があると判定できるので、移動経路26に対応するゲート30を開放すればよい。また、制御装置21が車両Bに搭載したICタグ7bの反射波を受信して演算した距離がLbである場合は、移動経路28上に車両があると判定できるので、移動経路28に対応するゲート31を開放すればよい。尚、制御装置21が演算する距離は、各車両に搭載されたICタグからアンテナ6までの最短距離として演算するため、車両に搭載するICタグの位置や、移動経路に対する車両の位置により、±の範囲内で変動する。
【0031】
図6は、制御装置がアンテナから各ICタグまでの距離を演算する過程を説明する図である。図6(a)は移動経路26、28に夫々ICタグ7a、7bが同時に、又は時間がずれて進入したときの図であり、図5(b)はICタグ7aのみが移動経路26に進入した図であり、図5(c)はICタグ7bのみが移動経路28に進入した図である。縦軸はアンテナ6とICタグ7a、7bまでの距離、横軸はICタグ7a、7bの走行時間を示す。
図6(a)では、アンテナとICタグ7aとの距離と、時間との関係が2次曲線Pのように変化し、時間t0(a点)で極小値となり、そのときのアンテナ6とICタグ7aの距離がLaとなり、再び遠ざかって行く。同様にアンテナとICタグ7bの距離と時間との関係が2次曲線Qのように変化し、時間t0(b1点)で極小値となり、そのときのアンテナ6との距離がLbとなり、再び遠ざかって行く。この場合は、ICタグ7a、7bが同時(t0)に読取り領域29に進入した場合であり、その場合でも、制御装置21はICタグ7a、7bの各ID情報を読取って、夫々のID情報と演算した距離La、Lbとを関連付けて車両Aが移動経路26を走行し、車両Bが移動経路28を走行していると判断することができる。
【0032】
また、図6(b)の場合は、ICタグ7aの反射波のみがアンテナ6で受信されるため、そのときの距離を演算して距離がLaであると判断されて、車両Aが移動経路26を走行していると判断することができる。また、図5(c)の場合は、ICタグ7bの反射波のみがアンテナ6で受信されるため、そのときの距離を演算して距離がLbであると判断されて、車両Bが移動経路28を走行していると判断することができる。
【0033】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る通行管理装置の動作を説明するフローチャートである。図5を参照して説明する。リーダユニット22は常時電波を読取り領域29に放射している。この状態で車両Aと車両Bが略同時に読取り領域29に進入したとする。車両Aには、車両Aを特定するID情報が記録されたICタグ7aが搭載され、車両Bには、車両Bを特定するID情報が記録されたICタグ7bが搭載されている。その結果、電波によりICタグ7a、7bが変調されて、変調された夫々の反射波がアンテナ6を介してリーダユニット22により読取られる(S1)。このとき、各ICタグに記録されたID情報も同時に読み取られる。次に、リーダユニット22は、夫々のICタグからの反射波の遅延時間を求めて(S2)、制御装置21にID情報と共に渡す。制御装置21では、受信したID情報と遅延時間とを対応付けて、遅延時間の差分を演算して記憶する(S3)。演算した差分からアンテナ6と各ICタグとの距離を計算する(S4)。制御装置21は、計算した距離がLaであるか否かをチェックして(S5)、距離がLaであると判断すると(S5でY)、ゲート30を開放する(S6)。一方、ステップS5で距離がLaでないと判断すると(S5でN)ゲート30を閉止する(S9)。次に計算した距離がLbであるか否かをチェックして(S7)、距離がLbであると判断すると(S7でY)、ゲート31を開放する(S8)。一方、ステップS7で距離がLbでないと判断すると(S7でN)ゲート31を閉止する(S10)。
【0034】
尚、ゲート30と31は、実際には一旦ゲートが開放されると、所定の時間開放しておき、所定時間経過後、次のゲート開放の指示がないか、或いはゲート閉止の指示があるとゲートを閉止するように動作する。また、各ICタグに入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を記録しておき、記録された各ID情報に基づいて各車両の通行を許可するか否かを判定する判定手段を備え、当該判定手段により許可された場合にのみ、距離の判定を行うようにしても良い。
【0035】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る通行管理装置の構成を示す模式図であり、(a)は、本実施形態の全体構成を示す図であり、(b)は、アンテナと各車両との位置関係を示す図である。本発明の通行管理装置51は、車両(移動体)に関するID情報(固有情報)を記録したICタグ(非接触情報記録媒体)7を夫々搭載した複数の車両がICタグ7の読取り領域29を略同時期に通過する際に、ICタグ7のID情報をアンテナ6を介して読取る単一の読取装置20を備えている。本実施形態は、センターライン27により分離された移動経路26、28と、夫々の移動経路を走行する車両の走行方向下流側に設置され、当該移動経路を開閉するゲート30、31と、移動経路26と移動経路28の境界部(センターライン27の近傍)に設置され、移動経路26と28をカバーする領域を読取り領域29とする電波を放射するアンテナ6と、図1で説明したリーダユニット22と、制御装置21と、を備えて構成されている。
また図8は、ICタグ7aを搭載した車両Aがゲート30に向かって移動し、ICタグ7bを搭載した車両Bがゲート31に向かって移動しており、その移動過程で、アンテナ6の読み取り領域29内に車両Aと車両Bが略同時期に進入した場合を図示している。尚、アンテナ6は、図8(b)に示すように、車両A、B間の距離が略等しくなる位置に配置される。
【0036】
図9は本発明の第2の実施形態に係る通行管理装置の動作を説明するフローチャートである。図8を参照して説明する。リーダユニット22は常時電波を読取り領域29に放射している。この状態で車両Aと車両Bが略同時に読取り領域29に進入したとする。車両Aには、車両Aを特定するID情報が記録されたICタグ7aが搭載され、車両Bには、車両Bを特定するID情報が記録されたICタグ7bが搭載されている。その結果、電波によりICタグ7a、7bが変調されて、変調された夫々の反射波がアンテナ6を介してリーダユニット22により読取られる(S11)。このとき、各ICタグに記録されたID情報も同時に読み取られる。次に、リーダユニット22は、夫々のICタグからの反射波の遅延時間を求めて(S12)、制御装置21にID情報と共に渡す。制御装置21では、受信したID情報と遅延時間とを対応付けて、遅延時間の差分を演算して記憶する(S13)。演算した差分からアンテナ6と各ICタグとの距離を計算して、移動方向を識別する(S14)。制御装置21は、識別した移動方向がAであるか否かをチェックして(S15)、移動方向がAであると判断すると(S15でY)、ゲート30を開放する(S16)。一方、ステップS15で移動方向がAでないと判断すると(S15でN)ゲート30を閉止する(S19)。次に識別した移動方向がBであるか否かをチェックして(S17)、移動方向がBであると判断すると(S17でY)、ゲート31を開放する(S18)。一方、ステップS17で移動方向がBでないと判断すると(S17でN)ゲート31を閉止する(S20)。
【0037】
尚、ゲート30と31は、実際には一旦ゲートが開放されると、所定の時間開放しておき、時間経過後、次のゲート開放の指示がないか、或いはゲート閉止の指示があれば閉止するように動作する。また、各ICタグに入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を記録しておき、記録された各ID情報に基づいて各車両の通行を許可するか否かを判定する判定手段を備え、当該判定手段により許可された場合にのみ、移動方向の判定を行うようにしても良い。
【0038】
図10は、各実施例における車両とゲートとの位置関係を示す図である。本発明の通行管理装置は、車両に搭載したICタグとアンテナまでの距離、又はアンテナから移動する車両に搭載したICタグの移動方向を識別して、どのゲートを開放すべきかを判断するものである。従って、車両に搭載したICタグが移動する経路の何処にゲートが設置されているかにより、車両に搭載したICタグとアンテナまでの距離により判断するか、又はアンテナから移動する車両に搭載したICタグの移動方向により判断するかを決定する必要がある。例えば、図9(a)の場合は、各車両は対面通行しているので、距離と移動方向何れの方法でも可能である。即ち、アンテナとICタグまでの距離で判断する場合は、距離がLaであればゲート30を開放し、距離がLbであればゲート31を開放する。また、移動方向で判断する場合は、移動方向が矢印Aであれば、ゲート30を開放し、移動方向が矢印Bであれば、ゲート31を開放する。
また、図9(b)では、2台の車両の各移動経路が読取り領域29に達するまでは並行しているが、読取り領域29内では反対方向に分岐している場合であり、この場合は、読取り領域29内では、アンテナ6から各車両に搭載したICタグまでの距離は略同じなので、距離により判断することは困難であるため、移動方向を識別する方法で行う。
また、図9(c)では、2台の車両が同一方向に移動し、ゲートが並列して設置されている。この場合は、読取り領域29内では、各ICタグの移動方向が同じであるので、アンテナ6から各車両に搭載したICタグまでの距離で識別する方法が可能である。
【0039】
以上説明した本発明の実施形態により、1つのアンテナ6を介して複数のICタグ7からの反射波を受信し、その反射波の遅延時間に基づいて各ICタグ7とアンテナ6との距離、及びアンテナ6に対する移動方向を演算することにより、ICタグ7を夫々搭載した複数の車両のアンテナ6からの距離と、アンテナ6に対する移動方向とを1台のリーダユニット22により認識することができる。
また、制御装置21は、アンテナ6から各車両に搭載したICタグまでの距離と、アンテナ6に対する各ICタグの移動方向を演算により求めることができるので、その演算結果に基づいて対応する移動経路上にある各ゲート開閉機構を制御することができる。
また、アンテナ6と各ICタグ7との距離の極小値を常に検出して、そのときの距離をアンテナ6と各ICタグ7との離間距離として確定することにより、アンテナ6とICタグとの距離を常に一定条件下で正確に演算することができる。
【0040】
また、2台の車両の各移動経路が隣接し、且つ並行している場合に、アンテナ6を各移動経路の境界部に配置するか、一方の移動経路の外側縁に配置することにより、2台の車両に夫々搭載された各ICタグとアンテナ6との距離を明確に区分けすることができると共に、2台の車両の移動方向を的確に判断することができる。
また、並行して走行している2台の車両が、読み取り領域に達した所で左右に分岐して、別々のゲートを通過する場合、その分岐点で車両に搭載したICタグの移動方向を演算することにより、左右のどちらのゲートを開放するかを判断することができる。
また、セキュリティ管理を行う場合、予め、入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を登録しておき、ゲートの上流側でこのID情報を読取って登録ID情報と比較することにより、各車両の通行を許可するか否かを判定することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 PLL、2 VCO、3 変調器、4、8 増幅器、5 サーキュレータ、6 アンテナ、7 ICタグ、9、11 ミキサ、10 90°移相器、12、13 BPF、14、16 A/Dコンバータ、15 演算器、20 読取装置、21 制御装置、22 リーダユニット、23 送信手段、24 復調手段、25 遅延時間算出手段、26、28 移動経路、27 センターライン、29 読取り領域、30、31 ゲート、32 制御回路、33 アンテナ、34 送受信回路、35 検波器、36 変調器、37 電圧生成回路、38 メモリ装置、40 アイランド、41、42 リーダライタ、43 ICカード、44 通路、45、46 読取り領域、47、48 ゲート、P、Q、R 2次曲線、50、51 通行管理装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、通行管理装置に関し、特に、非接触記録媒体を搭載した車両についての通行の許否等の管理を無線通信手段により行う通行管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人の駐車場等では、通路の外側縁にID情報を非接触で読み取るリーダを設置し、ID情報を記録したICカードを搭載した車両がリーダに接近したときに読み取ったID情報に基づいて車両の進入、退出の許否を判断してゲートを開閉する車両通行管理装置が設置されている。しかし、1台の車両に搭載したICカードの情報を1台のリーダにより読み取って判断する構成であるため、2つの隣接した通路(例えば、入場と出場)を通行する車両を管理するためには、夫々個別のリーダが1台ずつ必要となる。
【0003】
例えば、図11は従来の車両通行管理装置の構成を示す模式図であり、図11(a)は、車両が対面通行する通路の中央にアイランドを設置した車両通行管理装置を示す模式図である。アイランド40には、入場側及び出場側の通路を開閉するゲート47、48が設けられ、入場側の読取範囲45及び出場側の読取範囲46に電波を夫々放射するリーダライタ41、42と、を備えている。また、各車両A、Bには、入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を記録したICカード(ICタグ)43a、43bを夫々搭載している。この構成の場合、読取範囲45と46が明確に分離しているため、車両Aが矢印の方向から読取範囲45に進入するとリーダライタ41がICカード43aに記録された情報を読取って、入場可能車両であると判定した場合にはゲート47を開放する。また、車両Bが矢印の方向から読取範囲46に進入するとリーダライタ42がICカード43bに記録された情報を読取って、出場可能車両であると判定した場合にはゲート48を開放する。このように、図11(a)の場合は、入出場の車両の認識を正確に行うことができるが、通路44の中央にアイランド40が必要となり、車両の通行スペースが狭くなる、或いは通路の全幅を拡張する必要が生じる、という不具合がある。
図11(b)は、通路の狭小化、設置スペースの増大をもたらすアイランドを不要とするために、入場側及び出場側の通路の外側縁に夫々入出場の許否を判定するための識別情報を取得するためのリーダライタ41、42を設置した車両通行管理装置を示す模式図である。この構成の場合は、通路44の中央にアイランドを設置する必要は無いが、リーダライタ41、42の夫々の読取範囲を図11(a)と同じにすると、読取範囲45と46が重複してしまい、一方の通路のみに車両が通過しているにも拘わらず、入出場側の2つのゲート47、48が同時に動作してしまうといった問題が発生する。
【0004】
図11(c)は、図11(b)の問題を解決するために、各リーダライタを離して配置した車両通行管理装置を示す模式図である。この場合は、読取範囲45と46が重複することはないが、リーダライタ41と42を離して配置する必要があるため、設置領域を広く必要とする。また、制御上の問題として、例えば、車両Aが矢印の方向から進入すると、読取範囲45によりリーダライタ41が車両Aに搭載したICカード43aに記録されたID情報を読み取ってゲート47を開放するが、車両Aがゲート47を通過後、再び読取範囲46に進入するため、リーダライタ42が車両Aに搭載したICカード43aに記録されたID情報を読み取ってゲート48を間違って開放してしまうといった問題がある。出場側も同様な問題が発生する。
図11(d)は、図11(c)の問題を解決するために、各リーダライタの読取範囲を縮小した車両通行管理装置を示す模式図である。この場合は、リーダライタ41と42の間隔を狭くできるが、読取範囲を縮小して隣接する通路に電波が届かないように、各リーダライタ41、42の出力パワーを抑制する必要がる。この場合、図11(c)のような不具合は起きないが、出力パワーが小さいため、車両に搭載したICカード43aのID情報を読み取る際のS/Nが悪くなり、読取エラーを起こす確率が高くなる。
【0005】
特許文献1には、1台の無線ICタグリーダ装置と画像取得装置により、複数の無線ICタグのID情報と位置とを結び付け、無線ICタグの位置を特定する無線ICタグID読取りシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−59261公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上説明した従来の車両通行管理装置では、入出場の許否を判定するための識別情報を取得するために入場用と出場用の2台の専用のリーダライタが必要となり、システムのコストが高くなる、或いは、通路の中央にアイランドが必要となり、車両の通行スペースが狭くなるため、通路の全幅を拡張する必要が生じる、といった問題がある。尚、リーダライタの種類として、1つのリーダライタで複数のICカードの情報を一括で読み取るタイプのものもあるが、あくまでもICカードに記録されたID情報を一括で読取るのが主目的であり、一括して読み取った複数のID情報の何れが入場する車両のもので、何れが出場する車両のものであるかを識別することはできなかった。また、従来の車両通行管理装置は、2つの読取範囲が重複しないように各リーダライタを最適な位置に配置する必要があるため、配置のために領域を広く確保せざるを得ないといった問題がある。
また、特許文献1に開示されている従来技術は、距離センサを用いて対象物までの距離を推定して、それと同時に対象物のID情報をリーダにより読み取って、推定した距離とID情報とを対応付けるものである。従って、距離を測定するための距離センサが必要となるため装置構成が複雑となり、装置コストも高くなるといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、1つのアンテナを介して複数のICカードからの反射波を受信し、その反射波の遅延時間に基づいて各ICカードとアンテナとの距離、及びアンテナに対する移動方向を演算することにより、1つの読取装置で複数の移動体(車両)の管理が可能な通行管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、移動体に関する固有情報を記録した非接触情報記録媒体を夫々搭載した複数の移動体(車両)が該非接触情報記録媒体の読取り領域を略同時期に通過する際に、前記各非接触情報記録媒体の固有情報を読取る単一の読取装置を備えた通行管理装置であって、前記読取装置は、前記読取り領域に電波を放射して前記各非接触情報記録媒体が変調した反射波を受信するアンテナと、前記アンテナを介して前記各非接触情報記録媒体に前記電波を送信する送信手段と、前記各反射波を夫々復調する復調手段と、前記各反射波の遅延時間を求める遅延時間算出手段と、前記遅延時間算出手段が算出した前記各非接触情報記録媒体からの各反射波の遅延時間の差分に基づいて前記アンテナと前記各非接触情報記録媒体との離間距離を演算すると共に、前記アンテナに対する前記各非接触情報記録媒体の移動方向を判定する制御手段と、従来の読取装置により非接触情報記録媒体の記録情報を読み取る場合は、1台の読取装置が1つの非接触情報記録媒体の記録情報を読み取るのが一般的であった。従って、対面通行する2台の車両に夫々搭載された各非接触情報記録媒体の記録情報を読み取って各車両を個別に識別するためには、夫々専用の読取装置が必要となり、装置のコストが嵩むといった問題があった。本発明はこの問題を解決するために、1つのアンテナを介して複数の非接触情報記録媒体からの反射波を受信し、その反射波の遅延時間に基づいて各非接触情報記録媒体とアンテナとの距離、及びアンテナに対する移動方向を演算する。これにより、非接触情報記録媒体を夫々搭載した複数の移動体のアンテナからの距離と、アンテナに対する移動方向とを1台の読取装置により判定することができる。
【0009】
請求項2は、前記各移動体が前記読取り領域を通過する方向の下流側に夫々配置された通行ゲートと、該各通行ゲートを夫々開閉駆動するゲート開閉機構と、を備え、前記制御手段は、前記各移動体の移動経路に夫々配置された前記各通行ゲートを開放するために対応する前記各ゲート開閉機構を制御することを特徴とする。
本発明の制御手段は、アンテナから各移動体までの距離と、アンテナに対する移動方向を演算により求めることができる。従って、その演算結果に基づいて対応する移動経路上にある各ゲート開閉機構を制御することができる。
請求項3は、前記離間距離は、前記アンテナと前記各非接触情報記録媒体とが最も接近したときの距離であることを特徴とする。
制御手段がアンテナと各非接触情報記録媒体との距離を演算する場合、アンテナが固定されて、移動体が移動するため、移動体のベクトル方向が2次元的に変化する。そして、2次元曲線の極小値がアンテナと移動体が最も接近した距離である。本発明では、この極小値を常に検出して、そのときの距離をアンテナと各非接触情報記録媒体との離間距離として確定する。これにより、アンテナと移動体との距離を常に一定条件下で正確に演算することができる。
【0010】
請求項4は、2台の前記移動体の各移動経路が隣接し、且つ並行している場合に、前記アンテナを前記各移動経路の境界部に配置するか、一方の移動経路の外側縁に配置することを特徴とする。
1台の読取装置で2台の移動体の距離を夫々演算するためには、1つのアンテナと各移動体との距離が明確に差がつくようにアンテナを配置することが重要である。また、1台の読取装置で読み取った情報に基づいて2台の移動体の移動方向を夫々演算するためには、各移動体との距離が略同じになるようにアンテナを配置することが重要である。そこで本発明では、2台の移動体の各移動経路が隣接し、且つ並行している場合に、アンテナを各移動経路の境界部に配置するか、一方の移動経路の外側縁に配置する。これにより、2台の移動体とアンテナとの距離を明確に区分けすることができると共に、2台の移動体の移動方向を的確に判定することができる。
請求項5は、2台の前記移動体の各移動経路が読取り領域に達するまでは並行しているが、読取り領域内では反対方向に分岐している場合に、前記アンテナを分岐した2つの分岐経路の中間位置に配置したことを特徴とする。
並行して走行している2台の移動体が、読み取り領域に達した所で反対方向へ分岐して、別々のゲートを通過する場合、その分岐点で移動体の移動方向を演算することにより、左右のどちらのゲートを開放するかを判断することができる。
請求項6は、前記各非接触情報記録媒体に記録された各固有情報に基づいて前記各移動体の通行を許可するか否かを判定する判定手段を備えたことを特徴とする。
各非接触情報記録媒体には、必ずその非接触情報記録媒体に特有なID情報が記録されており、そのID情報により各移動体を個別に識別することができる。例えば、セキュリティ管理を行う場合、予め、入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を登録しておき、ゲートの上流側でこのID情報を読取って、ID情報が入場可能車両に係るものであるか否かにより、車両の通行を許可するか否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1つのアンテナを介して複数の非接触情報記録媒体からの反射波を受信し、その反射波の遅延時間に基づいて各非接触情報記録媒体とアンテナとの距離、及びアンテナに対する移動方向を演算することにより、非接触情報記録媒体を夫々搭載した複数の移動体のアンテナからの距離と、アンテナに対する移動方向とを1台の読取装置により認識することができる。
また、制御手段は、アンテナから各移動体までの距離と、アンテナに対する移動方向を演算により求めることができるので、その演算結果に基づいて対応する移動経路上にある各ゲート開閉機構を制御することができる。
また、アンテナと各非接触情報記録媒体との距離の極小値を常に検出して、そのときの距離をアンテナと各非接触情報記録媒体との離間距離として確定することにより、アンテナと移動体との距離を常に一定条件下で正確に演算することができる。
【0012】
また、2台の移動体の各移動経路が隣接し、且つ並行している場合に、アンテナを各移動経路の境界部に配置するか、一方の移動経路の外側縁に配置することにより、2台の移動体とアンテナとの距離を明確に区分けすることができると共に、2台の移動体の移動方向を的確に判断することができる。
また、並行して走行している2台の移動体が、読み取り領域に達した所で反対方向へ分岐して、別々のゲートを通過する場合、その分岐点で移動体の移動方向を演算することにより、左右のどちらのゲートを開放するかを判断することができる。
また、セキュリティ管理を行う場合、予め、入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を登録しておき、ゲートの上流側でこのID情報を読取って登録ID情報と比較することにより、各車両の通行を許可するか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の読取装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のICタグ(ICカード)の構成を示すブロック図である。
【図3】ICタグが移動した場合のアンテナとICタグの距離との関係を示す模式図である。
【図4】図2の動作を更に詳細に説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る通行管理装置の構成を示す模式図であり、(a)は、本実施形態の全体構成を示す図であり、(b)は、アンテナと各車両との位置関係を示す図であり、(c)は、ゲートの位置を並列に設置した場合の変形実施例を示す図である。
【図6】制御装置がアンテナから各車両までの距離を演算する過程を説明する図であり、(a)は各移動経路に夫々車両が同時に、又は時間がずれて進入したときの図であり、(b)は1つの移動経路にのみ車両が進入した図であり、(c)は1つの別の移動経路にのみ車両が進入した図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る通行管理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図8】(a)(b)は本発明の第2の実施形態に係る通行管理装置の構成を示す模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る通行管理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図10】(a)〜(c)は各実施例における車両とゲートとの位置関係を示す図である。
【図11】従来の車両通行管理装置の構成を示す模式図であり、(a)は、車両が対面通行する通路の中央にアイランドを設置した車両通行管理装置を示す模式図であり、(b)はアイランドを不要とするために、入場側及び出場側の通路の外側縁に入出場を識別するリーダライタを夫々設置した車両通行管理装置を示す模式図であり、(c)は各リーダライタを離して配置した車両通行管理装置を示す模式図であり、(d)は各リーダライタの読取範囲を縮小した車両通行管理装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0015】
本発明の通行管理装置を説明する前に、本発明の主たる構成要件である読取装置について説明する。図1は本発明の読取装置の構成を示すブロック図である。本発明の読取装置20は、読取り領域に電波を放射して各ICタグ(非接触情報記録媒体)7が変調した反射波を受信するアンテナ6と、アンテナ6を介して各ICタグ7に電波を送信する送信手段23(PLL1、VCO2、変調器(Modulator)3、及び増幅器(AMP)4を含む)と、各反射波を夫々復調する復調手段24(ミキサ9、11、90°移相器(Shifter)10、及びBPF12、13を含む)と、各反射波の遅延時間を求める遅延時間算出手段25(A/Dコンバータ14、16及び演算器15を含む)と、遅延時間算出手段25が算出した各ICタグ7からの各反射波の遅延時間の差分に基づいてアンテナ6と各ICタグ7との離間距離を演算すると共に、アンテナ6に対する各ICタグ7の移動方向を判定する制御装置(制御手段)21と、を備えて構成されている。尚、本実施形態では、送信手段23、復調手段24、及び遅延時間算出手段25を含む構成をリーダユニット22と呼ぶ。
【0016】
次に、本発明のリーダユニット22について更に説明する。リーダユニット22は、VCO2の出力信号の位相を、基準となる入力信号の位相に同期させるPLL回路1と、PLL回路1の制御電圧に基づいて所定の周波数を発振するVCO(電圧制御発振器)2と、VCO2から発信された信号をマイクロ波(電波)に変調する変調器(Modulator)3と、マイクロ波を増幅する増幅器(AMP)4と、マイクロ波の方向により向きを決定するサーキュレータ5と、マイクロ波を発信して非接触ICタグ(以下、単にICタグと呼ぶ)(非接触情報記録媒体)7からの反射波を受信するアンテナ6と、サーキュレータ5により合成された合成波を増幅する増幅器(AMP)8と、VCO2の信号と増幅器8により増幅された信号を加算重畳してsin波を復調するミキサ(Mixer)9と、VCO2の信号を90°移相器(Shifter)10により移相した信号と増幅器8により増幅された信号を加算重畳してcos波を復調するミキサ11と、ミキサ9の信号から所定の周波数成分のみを通過するBPF12と、ミキサ11の信号から所定の周波数成分のみを通過するBPF13と、BPF12の出力信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ14と、BPF13の出力信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ16と、A/Dコンバータ14とA/Dコンバータ16から位相を演算する演算器15と、を備えて構成されている。
電波を利用したRFIDシステムでは、ICタグ7に与えた電波(CW波)の一部を、ICタグ7が変調を加えて戻す(振幅・位相を変化させて反射させる)ことにより、ICタグ7からリーダユニット22への通信を行っている。
リーダユニット22には「自ら発信した電波の反射波(後方散乱波)」が戻ることとなるが、この後方散乱波は、ICタグ7とアンテナ6との間を往復した波であるため、自ら発信した電波に対しICタグ7とアンテナ6の距離の倍に比例した遅延を持った波であると考えることができる。
【0017】
本実施形態では、この後方散乱波の遅延時間の差分を測定することにより、アンテナ6とICタグ7との距離の変化の認識を行う。
ここで、リーダユニット22に接続されたアンテナ6から送信されるCW波を
・・・(1)
とした時(AとθCは回路による決まる一定値)、同じアンテナ6で受信されるICタグ7からの後方散乱波は、以下のように表せる。
・・・(2)
l[m]はICタグ−アンテナ間の距離、cは電波の速度[m/s]、Bは空間やICタグでの減衰を表す係数、θTはICタグでの反射時の位相変化である。電波を利用するRFIDにおいては、ICタグ7からリーダユニット22への通信を行う際、ICタグ7で加えられる変調により、このBとθTが変化する。
【0018】
ここで、ICタグ→リーダユニット間における通信がASK変調により行われる場合には、1を表すシンボルに同期して遅延時間の測定を行うものとすると、θTをタグ固有のある一定の値とすることができる。
また、BPSK変調の場合では、1または0を表すシンボルに同期して遅延時間の測定を行うものとすると、θTをICタグ固有のある一定値θT1、もしくは、θT2(=θT1+π)のどちらかの値とすることができる。同様に、その他の位相変調においても、あるシンボルに同期して遅延時間の測定を行うことで、θTをICタグ固有のある一定の値とすることができる。
【0019】
このように、ICタグ7との通信を行う際に、そのシンボルと同期して遅延時間を測定することにより、ICタグ7で反射される際の位相が安定し、θTを定数値とみなすことができる。また、変調のかけられた後方散乱波を対象として測定を行うことで、変化を持たない後方散乱波(反射波)を、BPF12、13により除去することが可能となり、周囲の金属物や通信状態に無いICタグからの反射等の影響を排除することができる。
更に、ICタグ7からリーダユニット22への通信を行う際に遅延時間を測定しているため、アンチコリジョン機能を持つプロトコルのもとでは、通信相手となるICタグを一つに限定した条件の下で遅延時間の測定を行うことが可能となり、複数のICタグが存在する環境においても、特定のICタグの後方散乱波のみを選択して遅延時間を測定することと、その通信で得られたデータ(ID)と遅延時間を関連付けて管理することが可能となる。
【0020】
次に、後方散乱波の遅延時間の測定について説明する。CW波と共通の信号源から作成されるローカル信号、
・・・(3)
を使用して、直交検波を行うことによって行う。
これにより、以下のIQ信号が得られる。
・・・(4)
・・・(5)
ここで、CとθRは、直交検波の操作により付加される変数であるが、Cは回路により決まる値であるため一定値と考えることができる。また、ローカル信号とCW波は、同じ信号源からの信号であるため、その位相差を回路により決まる一定値とみなすことができ、これにより、θRも回路により決まる一定値とみなすことができる。
【0021】
このIQ信号をA/D変換器14、16により取り込み、演算器15により、位相θr、
・・・(6)
を得る。
ここで、θc・θT・θRはいずれも定数値とみなせるため、lをtの関数とすれば、θrは以下のように表すことができる。
・・・(7)
ここで、距離の変化Δlがλc/4を超えない内に、再度θrの取得を行うことで、このθrから遅延時間の差分を得ることができる。
【0022】
そして、
・・・(8)
であれば、この通信で得られたIDを持つICタグはアンテナから離れる方向に動いているといえ、また、
・・・(9)
であれば、この通信で得られたIDを持つICタグはアンテナに近づく方向に動いているといえる。
ここで、ICタグ7もしくはアンテナ6、もしくは両方が移動し、また、その移動方向・速度が一定であるシステムであれば、距離l(t)は2次関数により表され、dl/dt=0となるのは、両者の距離が極小となる点であるので(ICタグとアンテナの移動方向・速度が同一ではない場合)、dl/dt=0となる点、即ちdθ/dt=0となる点は、ICタグとアンテナの距離が最短となる位置といえる。
【0023】
これにより、dθ/dtを得ることにより、ICタグ7とアンテナ6が最も接近したタイミングを検出することができる。さらに、ここで、移動方向・速度が同じであり、かつ、同一の線上を移動するICタグ同士に対しては、このdθ/dtの大小比較により、ICタグの順序を決定することができるといえる。
即ち、リーダユニット22は、マイクロ波を利用してICタグ7と通信を行うマイクロ波方式におけるリーダである。従って、リーダユニット22から送信した電波(マイクロ波)は、ICタグ7により変調されて反射波としてリーダユニット22により受信される。このとき発信した電波と反射波の間には、距離に応じた遅延時間が生じる。本実施形態はこの遅延時間を演算して求めることにより、ICタグ7とアンテナ6の距離の変化を求めるものである。これにより、移動するICタグ7の距離の変化を把握することにより、移動するシステムにおいて、読み取り領域内の複数のICタグの配列順序と移動状態を識別することができる。
尚、直交変調とは、sin波とcos波を90度位相をずらして(直交して)加算重畳することにより、合成波の振幅は、sin波の振幅がゼロとなる位相のときに、cos波の最大振幅になり、cos波の振幅がゼロとなる位相のときに、sin波の最大振幅になるように合成振幅が生成される。即ち、2つの信号を1つの合成波にまとめて変調することができる。本実施形態はこの原理により変調された合成波から直交復調することによりsin波(発信した電波)とcos波(反射波)を復調する。
【0024】
図2は、ICタグの構成を示すブロック図である。本発明のICタグ7は、リーダユニット22からの電力用搬送波によりデータの授受をするアンテナ33と、書き込みコマンド読み出しコマンドを生成する送受信回路34と、アンテナ33からの電力用搬送波を受け、それを整流して直流電力に変換する電力生成回路37と、制御用ファームウェアとデータの記憶を司るメモリ装置38と、制御回路32からの送信コマンドに搬送波を乗せて変調する変調器36と、送受信回路34からの搬送波データから2値化データに変換する検波器35と、ICタグ7の全体の動作を制御する制御回路32から構成されている。
【0025】
図3は、ICタグが移動した場合のアンテナとICタグの距離との関係を示す模式図である。この図では、ICタグ7を取り付けた物品a、物品b、物品cが所定の間隔を維持して矢印Aの方向に移動しているものとする。そして、図2では、アンテナ6と物品aの距離がla、アンテナ6と物品bの距離がlb、アンテナ6と物品cの距離がlcとなる。
例えば、アンテナ6が固定され、ICタグ7が一定速度で移動する場合、距離と時間との関係は2次関数となる。即ち、1つの移動するICタグに注目したとき、所定方向(矢印Aの上流側)からアンテナ6に近づき、最もアンテナ6に近づいた位置から遠ざかって行く。つまり、ICタグのベクトルの向きと大きさから移動方向と速度を認識することができる。これにより、物品a、b、cの並び順とアンテナ6からの移動方向を識別することができる。
【0026】
図4は、図3の動作を更に詳細に説明するための図である。縦軸にアンテナ6(原点)と物品a、b、cまでの距離を示し、横軸に通過時間を示す。この図から明らかなように、物品aはアンテナ6までの距離がlaのとき、ベクトルの向きと大きさは矢印Laとなり、アンテナ6に対して距離が2次関数17に従って減少してくる(近づいてくる)。また、物品bはアンテナ6までの距離がlbのとき、ベクトルの向きと大きさは矢印Lbとなり、アンテナ6に対して距離が2次関数17の極小点(最接近)にある。また、物品cはアンテナ6までの距離がlcのとき、ベクトルの向きと大きさは矢印Lcとなり、アンテナ6に対して距離が2次関数17に従って増加してくる(遠ざかる)。
【0027】
このように移動する物品に対して、上記式(1)〜(7)を演算することにより、アンテナ6もしくはICタグ7、もしくはその両方が移動するシステムにおいて、ICタグ7とアンテナ6の距離の変化方向と、その変化量を検出することが可能となる。
これにより、アンテナ6もしくはICタグ7、もしくは両方が移動するシステムにおいて、交信可能エリア内に複数のICタグが存在する場合でも、その順序・移動状態を識別することが可能となり、読み取ったIDとICタグを正確に対応付けることが可能となる。また、その変化方向・変化量から、ICタグ7とアンテナ6が最も近づいたタイミングを知ることができ、ICタグの位置の取得が可能となる。他にも、アンテナとICタグとの距離の変化方向、またその変化量などの情報からICタグをフィルタリングすることで、様々な用途に応用が可能である。
【0028】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る通行管理装置の構成を示す模式図であり、(a)は、本実施形態の全体構成を示す図であり、(b)は、アンテナと各車両との位置関係を示す図であり、(c)は、ゲートの位置を並列に設置した場合の変形実施例を示す図である。
本発明の通行管理装置50は、車両(移動体)に関するID情報(固有情報)を記録したICタグ(非接触情報記録媒体)7を夫々搭載した複数の車両がICタグ7の読取り領域29を略同時期に通過する際に、ICタグ7のID情報をアンテナ6を介して読取る単一の読取装置20を備えている。
読取り領域29とは、異なった方向、或いは同じ方向へ並行して移動する各車両がゲートの手間で近接した状態となる領域であり、この読取り領域内に位置する各車両が搭載したICタグの記録情報を読取装置20によって読取ることが可能となるように読取り領域と読取装置20との位置関係が設定されている。
本実施形態では、センターライン27により分離された移動経路26、28と、夫々の移動経路を走行する車両の走行方向下流側に設置され、当該移動経路を開閉するゲート30、31と、一方の移動経路26の外側縁(他方の移動経路28とは反対側の側縁)に設置され、両移動経路26、28をカバーする領域を読取り領域29とする電波を放射するアンテナ6と、図1で説明したリーダユニット22と、制御装置21と、を備えて構成されている。尚、ゲート30、31には図示を省略するが、各ゲートを夫々開閉駆動するゲート開閉機構が備えられ、制御装置21は、このゲート開閉機構を制御する。
【0029】
また図5では、ICタグ7aを搭載した車両Aはゲート30に向かって移動し、ICタグ7bを搭載した車両Bはゲート31に向かって移動しており、その移動過程で、アンテナ6の読み取り領域29内に車両Aと車両Bが略同時期に進入した場合を図示している。尚、アンテナ6は、図5(b)に示すように、電波が障害物に妨害されることなく車両AとBに到達する位置に配置されることにより、車両AとBとが読取り領域29内に同時に進入した場合であっても、電波が各車両により妨害されることを防止できる。また、図5(a)の場合は、各車両が夫々の移動経路内を走行する限り、必ずLa<Lbの関係が維持できるので、制御装置21が車両Aに搭載したICタグ7aの反射波を受信して演算した距離がLaである場合は、移動経路26上に車両があると判定できるので、移動経路26に対応するゲート30を開放すればよい。また、制御装置21が車両Bに搭載したICタグ7bの反射波を受信して演算した距離がLbである場合は、移動経路28上に車両があると判定できるので、移動経路28に対応するゲート31を開放すればよい。
【0030】
図5(c)は、ゲート30と31が並列に設置され、各車両が同一方向に走行する場合を示す図である。この場合も、図5(a)と同様に、制御装置21が車両Aに搭載したICタグ7aの反射波を受信して演算した距離がLaである場合は、移動経路26上に車両があると判定できるので、移動経路26に対応するゲート30を開放すればよい。また、制御装置21が車両Bに搭載したICタグ7bの反射波を受信して演算した距離がLbである場合は、移動経路28上に車両があると判定できるので、移動経路28に対応するゲート31を開放すればよい。尚、制御装置21が演算する距離は、各車両に搭載されたICタグからアンテナ6までの最短距離として演算するため、車両に搭載するICタグの位置や、移動経路に対する車両の位置により、±の範囲内で変動する。
【0031】
図6は、制御装置がアンテナから各ICタグまでの距離を演算する過程を説明する図である。図6(a)は移動経路26、28に夫々ICタグ7a、7bが同時に、又は時間がずれて進入したときの図であり、図5(b)はICタグ7aのみが移動経路26に進入した図であり、図5(c)はICタグ7bのみが移動経路28に進入した図である。縦軸はアンテナ6とICタグ7a、7bまでの距離、横軸はICタグ7a、7bの走行時間を示す。
図6(a)では、アンテナとICタグ7aとの距離と、時間との関係が2次曲線Pのように変化し、時間t0(a点)で極小値となり、そのときのアンテナ6とICタグ7aの距離がLaとなり、再び遠ざかって行く。同様にアンテナとICタグ7bの距離と時間との関係が2次曲線Qのように変化し、時間t0(b1点)で極小値となり、そのときのアンテナ6との距離がLbとなり、再び遠ざかって行く。この場合は、ICタグ7a、7bが同時(t0)に読取り領域29に進入した場合であり、その場合でも、制御装置21はICタグ7a、7bの各ID情報を読取って、夫々のID情報と演算した距離La、Lbとを関連付けて車両Aが移動経路26を走行し、車両Bが移動経路28を走行していると判断することができる。
【0032】
また、図6(b)の場合は、ICタグ7aの反射波のみがアンテナ6で受信されるため、そのときの距離を演算して距離がLaであると判断されて、車両Aが移動経路26を走行していると判断することができる。また、図5(c)の場合は、ICタグ7bの反射波のみがアンテナ6で受信されるため、そのときの距離を演算して距離がLbであると判断されて、車両Bが移動経路28を走行していると判断することができる。
【0033】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る通行管理装置の動作を説明するフローチャートである。図5を参照して説明する。リーダユニット22は常時電波を読取り領域29に放射している。この状態で車両Aと車両Bが略同時に読取り領域29に進入したとする。車両Aには、車両Aを特定するID情報が記録されたICタグ7aが搭載され、車両Bには、車両Bを特定するID情報が記録されたICタグ7bが搭載されている。その結果、電波によりICタグ7a、7bが変調されて、変調された夫々の反射波がアンテナ6を介してリーダユニット22により読取られる(S1)。このとき、各ICタグに記録されたID情報も同時に読み取られる。次に、リーダユニット22は、夫々のICタグからの反射波の遅延時間を求めて(S2)、制御装置21にID情報と共に渡す。制御装置21では、受信したID情報と遅延時間とを対応付けて、遅延時間の差分を演算して記憶する(S3)。演算した差分からアンテナ6と各ICタグとの距離を計算する(S4)。制御装置21は、計算した距離がLaであるか否かをチェックして(S5)、距離がLaであると判断すると(S5でY)、ゲート30を開放する(S6)。一方、ステップS5で距離がLaでないと判断すると(S5でN)ゲート30を閉止する(S9)。次に計算した距離がLbであるか否かをチェックして(S7)、距離がLbであると判断すると(S7でY)、ゲート31を開放する(S8)。一方、ステップS7で距離がLbでないと判断すると(S7でN)ゲート31を閉止する(S10)。
【0034】
尚、ゲート30と31は、実際には一旦ゲートが開放されると、所定の時間開放しておき、所定時間経過後、次のゲート開放の指示がないか、或いはゲート閉止の指示があるとゲートを閉止するように動作する。また、各ICタグに入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を記録しておき、記録された各ID情報に基づいて各車両の通行を許可するか否かを判定する判定手段を備え、当該判定手段により許可された場合にのみ、距離の判定を行うようにしても良い。
【0035】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る通行管理装置の構成を示す模式図であり、(a)は、本実施形態の全体構成を示す図であり、(b)は、アンテナと各車両との位置関係を示す図である。本発明の通行管理装置51は、車両(移動体)に関するID情報(固有情報)を記録したICタグ(非接触情報記録媒体)7を夫々搭載した複数の車両がICタグ7の読取り領域29を略同時期に通過する際に、ICタグ7のID情報をアンテナ6を介して読取る単一の読取装置20を備えている。本実施形態は、センターライン27により分離された移動経路26、28と、夫々の移動経路を走行する車両の走行方向下流側に設置され、当該移動経路を開閉するゲート30、31と、移動経路26と移動経路28の境界部(センターライン27の近傍)に設置され、移動経路26と28をカバーする領域を読取り領域29とする電波を放射するアンテナ6と、図1で説明したリーダユニット22と、制御装置21と、を備えて構成されている。
また図8は、ICタグ7aを搭載した車両Aがゲート30に向かって移動し、ICタグ7bを搭載した車両Bがゲート31に向かって移動しており、その移動過程で、アンテナ6の読み取り領域29内に車両Aと車両Bが略同時期に進入した場合を図示している。尚、アンテナ6は、図8(b)に示すように、車両A、B間の距離が略等しくなる位置に配置される。
【0036】
図9は本発明の第2の実施形態に係る通行管理装置の動作を説明するフローチャートである。図8を参照して説明する。リーダユニット22は常時電波を読取り領域29に放射している。この状態で車両Aと車両Bが略同時に読取り領域29に進入したとする。車両Aには、車両Aを特定するID情報が記録されたICタグ7aが搭載され、車両Bには、車両Bを特定するID情報が記録されたICタグ7bが搭載されている。その結果、電波によりICタグ7a、7bが変調されて、変調された夫々の反射波がアンテナ6を介してリーダユニット22により読取られる(S11)。このとき、各ICタグに記録されたID情報も同時に読み取られる。次に、リーダユニット22は、夫々のICタグからの反射波の遅延時間を求めて(S12)、制御装置21にID情報と共に渡す。制御装置21では、受信したID情報と遅延時間とを対応付けて、遅延時間の差分を演算して記憶する(S13)。演算した差分からアンテナ6と各ICタグとの距離を計算して、移動方向を識別する(S14)。制御装置21は、識別した移動方向がAであるか否かをチェックして(S15)、移動方向がAであると判断すると(S15でY)、ゲート30を開放する(S16)。一方、ステップS15で移動方向がAでないと判断すると(S15でN)ゲート30を閉止する(S19)。次に識別した移動方向がBであるか否かをチェックして(S17)、移動方向がBであると判断すると(S17でY)、ゲート31を開放する(S18)。一方、ステップS17で移動方向がBでないと判断すると(S17でN)ゲート31を閉止する(S20)。
【0037】
尚、ゲート30と31は、実際には一旦ゲートが開放されると、所定の時間開放しておき、時間経過後、次のゲート開放の指示がないか、或いはゲート閉止の指示があれば閉止するように動作する。また、各ICタグに入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を記録しておき、記録された各ID情報に基づいて各車両の通行を許可するか否かを判定する判定手段を備え、当該判定手段により許可された場合にのみ、移動方向の判定を行うようにしても良い。
【0038】
図10は、各実施例における車両とゲートとの位置関係を示す図である。本発明の通行管理装置は、車両に搭載したICタグとアンテナまでの距離、又はアンテナから移動する車両に搭載したICタグの移動方向を識別して、どのゲートを開放すべきかを判断するものである。従って、車両に搭載したICタグが移動する経路の何処にゲートが設置されているかにより、車両に搭載したICタグとアンテナまでの距離により判断するか、又はアンテナから移動する車両に搭載したICタグの移動方向により判断するかを決定する必要がある。例えば、図9(a)の場合は、各車両は対面通行しているので、距離と移動方向何れの方法でも可能である。即ち、アンテナとICタグまでの距離で判断する場合は、距離がLaであればゲート30を開放し、距離がLbであればゲート31を開放する。また、移動方向で判断する場合は、移動方向が矢印Aであれば、ゲート30を開放し、移動方向が矢印Bであれば、ゲート31を開放する。
また、図9(b)では、2台の車両の各移動経路が読取り領域29に達するまでは並行しているが、読取り領域29内では反対方向に分岐している場合であり、この場合は、読取り領域29内では、アンテナ6から各車両に搭載したICタグまでの距離は略同じなので、距離により判断することは困難であるため、移動方向を識別する方法で行う。
また、図9(c)では、2台の車両が同一方向に移動し、ゲートが並列して設置されている。この場合は、読取り領域29内では、各ICタグの移動方向が同じであるので、アンテナ6から各車両に搭載したICタグまでの距離で識別する方法が可能である。
【0039】
以上説明した本発明の実施形態により、1つのアンテナ6を介して複数のICタグ7からの反射波を受信し、その反射波の遅延時間に基づいて各ICタグ7とアンテナ6との距離、及びアンテナ6に対する移動方向を演算することにより、ICタグ7を夫々搭載した複数の車両のアンテナ6からの距離と、アンテナ6に対する移動方向とを1台のリーダユニット22により認識することができる。
また、制御装置21は、アンテナ6から各車両に搭載したICタグまでの距離と、アンテナ6に対する各ICタグの移動方向を演算により求めることができるので、その演算結果に基づいて対応する移動経路上にある各ゲート開閉機構を制御することができる。
また、アンテナ6と各ICタグ7との距離の極小値を常に検出して、そのときの距離をアンテナ6と各ICタグ7との離間距離として確定することにより、アンテナ6とICタグとの距離を常に一定条件下で正確に演算することができる。
【0040】
また、2台の車両の各移動経路が隣接し、且つ並行している場合に、アンテナ6を各移動経路の境界部に配置するか、一方の移動経路の外側縁に配置することにより、2台の車両に夫々搭載された各ICタグとアンテナ6との距離を明確に区分けすることができると共に、2台の車両の移動方向を的確に判断することができる。
また、並行して走行している2台の車両が、読み取り領域に達した所で左右に分岐して、別々のゲートを通過する場合、その分岐点で車両に搭載したICタグの移動方向を演算することにより、左右のどちらのゲートを開放するかを判断することができる。
また、セキュリティ管理を行う場合、予め、入出場を許可するか否かの手掛かりとなるID情報を登録しておき、ゲートの上流側でこのID情報を読取って登録ID情報と比較することにより、各車両の通行を許可するか否かを判定することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 PLL、2 VCO、3 変調器、4、8 増幅器、5 サーキュレータ、6 アンテナ、7 ICタグ、9、11 ミキサ、10 90°移相器、12、13 BPF、14、16 A/Dコンバータ、15 演算器、20 読取装置、21 制御装置、22 リーダユニット、23 送信手段、24 復調手段、25 遅延時間算出手段、26、28 移動経路、27 センターライン、29 読取り領域、30、31 ゲート、32 制御回路、33 アンテナ、34 送受信回路、35 検波器、36 変調器、37 電圧生成回路、38 メモリ装置、40 アイランド、41、42 リーダライタ、43 ICカード、44 通路、45、46 読取り領域、47、48 ゲート、P、Q、R 2次曲線、50、51 通行管理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に関する固有情報を記録した非接触情報記録媒体を夫々搭載した複数の移動体(車両)が該非接触情報記録媒体の読取り領域を略同時期に通過する際に、前記各非接触情報記録媒体の固有情報を読取る単一の読取装置を備えた通行管理装置であって、
前記読取装置は、前記読取り領域に電波を放射して前記各非接触情報記録媒体が変調した反射波を受信するアンテナと、前記アンテナを介して前記各非接触情報記録媒体に前記電波を送信する送信手段と、前記各反射波を夫々復調する復調手段と、
前記各反射波の遅延時間を求める遅延時間算出手段と、
前記遅延時間算出手段が算出した前記各非接触情報記録媒体からの各反射波の遅延時間の差分に基づいて前記アンテナと前記各非接触情報記録媒体との離間距離を演算すると共に、前記アンテナに対する前記各非接触情報記録媒体の移動方向を判定する制御手段と、を備えたことを特徴とする通行管理装置。
【請求項2】
前記各移動体が前記読取り領域を通過する方向の下流側に夫々配置された通行ゲートと、該各通行ゲートを夫々開閉駆動するゲート開閉機構と、を備え、
前記制御手段は、前記各移動体の移動経路に夫々配置された前記各通行ゲートを開放するために対応する前記各ゲート開閉機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の通行管理装置。
【請求項3】
前記離間距離は、前記アンテナと前記各非接触情報記録媒体とが最も接近したときの距離であることを特徴とする請求項1に記載の通行管理装置。
【請求項4】
2台の前記移動体の各移動経路が隣接し、且つ並行している場合に、前記アンテナを前記各移動経路の境界部に配置するか、一方の移動経路の外側縁に配置することを特徴とする請求項1又は3に記載の通行管理装置。
【請求項5】
2台の前記移動体の各移動経路が読取り領域に達するまでは並行しているが、読取り領域内では反対方向に分岐している場合に、前記アンテナを分岐した2つの分岐経路の中間位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載の通行管理装置。
【請求項6】
前記各非接触情報記録媒体に記録された各固有情報に基づいて前記各移動体の通行を許可するか否かを判定する判定手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の通行管理装置。
【請求項1】
移動体に関する固有情報を記録した非接触情報記録媒体を夫々搭載した複数の移動体(車両)が該非接触情報記録媒体の読取り領域を略同時期に通過する際に、前記各非接触情報記録媒体の固有情報を読取る単一の読取装置を備えた通行管理装置であって、
前記読取装置は、前記読取り領域に電波を放射して前記各非接触情報記録媒体が変調した反射波を受信するアンテナと、前記アンテナを介して前記各非接触情報記録媒体に前記電波を送信する送信手段と、前記各反射波を夫々復調する復調手段と、
前記各反射波の遅延時間を求める遅延時間算出手段と、
前記遅延時間算出手段が算出した前記各非接触情報記録媒体からの各反射波の遅延時間の差分に基づいて前記アンテナと前記各非接触情報記録媒体との離間距離を演算すると共に、前記アンテナに対する前記各非接触情報記録媒体の移動方向を判定する制御手段と、を備えたことを特徴とする通行管理装置。
【請求項2】
前記各移動体が前記読取り領域を通過する方向の下流側に夫々配置された通行ゲートと、該各通行ゲートを夫々開閉駆動するゲート開閉機構と、を備え、
前記制御手段は、前記各移動体の移動経路に夫々配置された前記各通行ゲートを開放するために対応する前記各ゲート開閉機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の通行管理装置。
【請求項3】
前記離間距離は、前記アンテナと前記各非接触情報記録媒体とが最も接近したときの距離であることを特徴とする請求項1に記載の通行管理装置。
【請求項4】
2台の前記移動体の各移動経路が隣接し、且つ並行している場合に、前記アンテナを前記各移動経路の境界部に配置するか、一方の移動経路の外側縁に配置することを特徴とする請求項1又は3に記載の通行管理装置。
【請求項5】
2台の前記移動体の各移動経路が読取り領域に達するまでは並行しているが、読取り領域内では反対方向に分岐している場合に、前記アンテナを分岐した2つの分岐経路の中間位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載の通行管理装置。
【請求項6】
前記各非接触情報記録媒体に記録された各固有情報に基づいて前記各移動体の通行を許可するか否かを判定する判定手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の通行管理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−243016(P2012−243016A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111416(P2011−111416)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
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