説明

通話装置及び通話方法

【課題】通話者同士が通話を行っている際に、一方の通話者の応答遅延によって、他方の通話者の情緒が乱れないよう(不安感やストレスを与えないよう)にする。
【解決手段】無音区間検出部231は、通話相手の発話の有音/無音を監視することで、通話相手の発話の再生状況を検出し、通話相手の発話が終了したと判断した場合には、タイマをスタートさせるとともに、発話検出部220から送られてくる発話音声信号を参照して利用者の発話の有音/無音を監視することで、利用者の発話状況を検出する。タイマによる計測時間が所定時間(例えば5秒)になっても利用者の発話が検出されなかった場合には、無音区間検出部は、自動応答メッセージ作成232に対して自動応答メッセージの作成を指示し、自動応答メッセージ作成部は、通話相手に対して利用者の応答が遅れることを通知するための音声メッセージを作成、送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通話者同士が通話を行う通信システムにおける通話装置及び通話方法に関する。本発明は、特に、通話者の少なくとも一方が車両運転中のドライバであり、車載システムに搭載されている通話装置を利用してドライバがハンズフリー通話を行う場合の通話装置及び通話方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通話者同士がお互いに通話端末を利用して通話を行う通信技術は、飛躍的に発達しており、昨今、通話者同士は、お互いに様々な状況において通話を行うことができるようになっている。
【0003】
例えば、通話端末として移動電話機が広く普及しており、利用者は、どのような状況においても、またどのような場所においても相手と通話を行うことが可能である。また、車両運転中のドライバであっても、ハンズフリー通話システムを利用することで、車両を運転しながら通話を行うことが可能である。
【0004】
一方、通話者が何らかの理由で着呼に対して応答できない場合(電話に出られない場合)もあり、こうした場合に関連して、いくつかの従来技術が存在している。
【0005】
例えば下記の特許文献1には、着呼から予め設定した時間の経過後に自動応答し、被呼者に対してはベル音の発生で応答を促し続け、発呼者に対しては被呼者のメッセージを送出することにより、短時間の遅延で応答できる被呼者の意志を発呼者が認識できるようにする技術が開示されている。
【0006】
また、例えば下記の特許文献2には、発呼者に対し行き届いた自動応答サービスを行い、自動応答により発呼者を苛立たせないようにする技術が開示されている。特許文献2に開示されている技術によれば、通話開始時からこの通話中の別の発呼者による着信時までの時間と前記平均通話時間との差により現在通話中の通話終了時間を推定し、これに基づく通話終了推定時間に関する音声メッセージを別の発呼者の着信回線に対して出力する。これにより、通話中における別の発呼者は、音声メッセージによりあとどれくらい待てば通話できるかを明確に認識できるようになる。
【0007】
また、例えば下記の特許文献3には、ハンズフリー装置(ハンズフリー通話システム)が使用不可能のときに、停車中であれば呼び出しを行い、停車中でなければメッセ−ジ送出部を呼び出して応答できない旨を送出することにより、通話先への不安を解消する技術が開示されている。
【0008】
また、例えば下記の特許文献4には、相手側に不快感を与えることなく自動再発呼動作を行う技術が開示されている。
【0009】
また、例えば下記の特許文献5には、応答するのが困難な状況にあるとき、本人が応答するまでの間、相手には保留メッセージを伝え、本人には呼出音を鳴らすことができるようにする技術が開示されている。
【0010】
また、例えば下記の特許文献6には、着信に応答するための複数のメッセ−ジをあらかじめ記憶し、発信相手からの着信に対して直ちに通話できない場合、自動又は手動で記憶手段に記憶されたメッセージを選択し、発信相手に送出することにより、着信側の状況を容易に発信相手に通知可能とする技術が開示されている。
【0011】
また、例えば下記の特許文献7には、着呼に対して構内PHS電話機の所有者の不在で一定時間無応答が継続したとき、発呼元の相手に対して所有者の不在理由が分かるように、そのときのスケジュールを示すメッセ−ジを自動的に送出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平3−258065号公報
【特許文献2】特開平4−326845号公報
【特許文献3】特開平6−169281号公報
【特許文献4】特開平7−115457号公報
【特許文献5】特開平10−229433号公報
【特許文献6】特開平10−243086号公報
【特許文献7】特開平11−252651号公報
【特許文献8】特開2002−186044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
通話者はどのような状況においても通話を行えるようになった反面、通者同士が互いに通話相手の状況を十分に把握せずに通話をしている場合も多い。このような場合に、通話相手からの応答が遅いと不安感やイライラ感が生じ、ストレスを感じてしまうこともある。このような応答の遅延は、スムーズな意思疎通を妨げるだけでなく、相手の情緒を乱し、相手への印象及び人間関係を悪化させたり、相手も運転中であれば集中力を欠かせたりする原因にもなるため、できる限り避けなければならないものである。しかしながら、通話者は別の用事を行いながら通話を行っている場合もあり、必ずしも、相手に対して迅速に応答できない場合も多々ある。例えば、通話者がドライバの場合には、あくまでも主タスクは運転行為であり、通話(ハンズフリー通話)は副タスクとなる。通話に気を取られて運転に集中できなくなる状況は避けなければならず、ドライバにとっては、応答の遅延はある程度止むを得ないものである。
【0014】
また、特に、問い合わせを行ってそれに対して回答を行うような問答形式の会話において、問い合わせに対する回答が遅延する場合、問い合わせた者(問合せ者)及び問い合わせに対して回答を行う者(回答者)の両者に対して、不安感やイライラなど、高いストレスを与えることになる。例えば、ドライバが回答者の場合、問合せ者が回答者の状況(運転中であること)を知らずに会話している状態が多く、問合せ者が、ドライバの安全運転を妨害するばかりではなく、自分の問合せに対する応答が遅いことに憤慨することになりかねない。
【0015】
また、ドライバがオンラインのオペレータサービスを利用する場合、ドライバが問合せ者となり、電話オペレータが回答者となる。電話オペレータは、運転中のドライバの運転負荷(運転集中)の度合いが分からない状態で接客することになるので、この場合も、ドライバの運転負荷が高い状況で話しかけてしまい、運転集中を阻害することになる。
また、ドライバは、特に重要な回答を受ける場合、運転負荷が高い状態にも関わらず、聴覚に集中してしまうこともあり、運転に対する集中力が低下して危険な状態に陥りやすい。
【0016】
なお、上述した特許文献1〜8に記載の技術は、いずれも発着呼時における動作を規定したものである。すなわち、着信に応答し難い状況にある着呼者が居る場合に、発呼者に対して何らかの自動応答メッセージを送信することで、発呼者及び着呼者の一方又は双方の利便性を向上させるものである。一方、本発明は、本明細書に説明されているように、通話中の状況に応じて自動応答メッセージを送信するものであり、構成も作用効果も全く異なっている。
【0017】
本発明は、上記の問題に鑑み、通話者同士が通話を行っている際に、一方の通話者の応答遅延によって、他方の通話者の情緒が乱れないよう(不安感やストレスを与えないよう)にする通話装置及び通話方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の通話装置は、利用者が通話相手と通話を行うために、前記通話相手の通話端末との間で通信を行う通話装置であって、
前記通話相手の通話端末から受信する受話信号に基づいて、前記通話相手の発話終了を判断する手段と、
前記通話相手の発話終了の時点から所定時間のうちに、前記利用者の発話が行われるかどうかを判断する手段と、
前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上、前記利用者の発話が行われないと判断された場合に、前記通話相手の発話に対する前記利用者の応答が遅れることを通知するための音声メッセージを作成して、前記通話相手の通話端末へ送信する手段とを、
有する。
【0019】
また、本発明によれば、前記利用者の発話が行われるかどうかを判断する手段が、
前記通話相手の発話終了の時点から計時するタイマをスタートするとともに、前記通話相手の通話端末へ送信される前記利用者の発話音声信号に基づいて前記利用者の発話状況を検出する手段と、
前記タイマにおいて所定時間経過した場合であっても、前記利用者の発話が検出されなかった場合に、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上前記利用者の発話が行われないと判断する手段とを、
有する通話装置が提供される。
【0020】
また、本発明によれば、前記利用者の発話が行われるかどうかを判断する手段が、
前記利用者の主タスクの負荷状態を検出する手段と、
前記利用者の主タスクの高負荷状態が所定時間以上続くかどうかを予測し、前記利用者の主タスクの負荷が所定時間以上続くと予測された場合に、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上前記利用者の発話が行われないと判断する手段とを、
有する通話装置が提供される。
【0021】
また、本発明によれば、前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合に、前記利用者の主タスクの負荷状態を前記通話相手に周期的に通知する手段を有し、
前記利用者の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通話相手からの前記通話相手の応答が遅れることを示す音声メッセージの送信を遅らせるか、あるいは抑制させる通話装置が提供される。
【0022】
また、本発明によれば、前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合に、前記通話相手の主タスクの負荷状態を前記通話相手から周期的に受信する手段と、
前記通話相手の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通利用者の応答が遅れることを示す前記音声メッセージの送信を遅らせるか、あるいは抑制する手段とを、
有する通話装置が提供される。
【0023】
また、本発明によれば、前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合、かつ、前記利用者の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通話相手からの前記通話相手の応答が遅れることを示す音声メッセージを受信した際、前記通話相手からの前記音声メッセージの報知を遅らせるか、あるいは抑制する手段を有する通話装置が提供される。
【0024】
また、本発明によれば、前記所定時間が5秒に設定される通話装置が提供される。
【0025】
また、本発明によれば、前記通話相手との会話において前記利用者による応答の要否を把握する手段を有し、
前記利用者による応答が必要な場合であって、かつ、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上、前記利用者の発話が行われないと判断された場合に、前記通話相手の発話に対する前記利用者の応答が遅れることを通知するための音声メッセージを作成して、前記通話相手の通話端末へ送信する通話装置が提供される。
【0026】
また、本発明によれば、前記音声メッセージに更に前記利用者の現在の状況を表す音声情報が挿入される通話装置が提供される。
【0027】
また、本発明によれば、前記通話装置が車両に搭載され、前記利用者が前記車両を運転するドライバである通話装置が提供される。
【0028】
また、上記目的を達成するため、本発明の通話方法は、利用者が通話相手と通話を行うために、前記通話相手の通話端末との間で通信を行う通話装置において実行される通話方法であって、
前記通話相手の通話端末から受信する受話信号に基づいて、前記通話相手の発話終了を判断するステップと、
前記通話相手の発話終了の時点から所定時間のうちに、前記利用者の発話が行われるかどうかを判断するステップと、
前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上、前記利用者の発話が行われないと判断された場合に、前記通話相手の発話に対する前記利用者の応答が遅れることを通知するための音声メッセージを作成して、前記通話相手の通話端末へ送信するステップとを、
有する通話方法が提供される。
【0029】
また、本発明によれば、前記利用者の発話が行われるかどうかを判断するステップが、
前記通話相手の発話終了の時点から計時するタイマをスタートするとともに、前記通話相手の通話端末へ送信される前記利用者の発話音声信号に基づいて前記利用者の発話状況を検出するステップと、
前記タイマにおいて所定時間経過した場合であっても、前記利用者の発話が検出されなかった場合に、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上前記利用者の発話が行われないと判断するステップとを、
有する通話方法が提供される。
【0030】
また、本発明によれば、前記利用者の発話が行われるかどうかを判断するステップが、
前記利用者の主タスクの負荷状態を検出するステップと、
前記利用者の主タスクの高負荷状態が所定時間以上続くかどうかを予測し、前記利用者の主タスクの負荷が所定時間以上続くと予測された場合に、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上前記利用者の発話が行われないと判断するステップとを、
有する通話方法が提供される。
【0031】
また、本発明によれば、前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合に、前記利用者の主タスクの負荷状態を前記通話相手に周期的に通知するステップを有し、
前記利用者の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通話相手からの前記通話相手の応答が遅れることを示す音声メッセージの送信を遅らせるか、あるいは抑制させる通話方法が提供される。
【0032】
また、本発明によれば、前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合に、前記通話相手の主タスクの負荷状態を前記通話相手から周期的に受信するステップと、
前記通話相手の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通利用者の応答が遅れることを示す前記音声メッセージの送信を遅らせるか、あるいは抑制するステップとを、
有する通話方法が提供される。
【0033】
また、本発明によれば、前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合、かつ、前記利用者の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通話相手からの前記通話相手の応答が遅れることを示す音声メッセージを受信した際、前記通話相手からの前記音声メッセージの報知を遅らせるか、あるいは抑制するステップを有する通話方法が提供される。
【0034】
また、本発明によれば、前記所定時間が5秒に設定される通話方法が提供される。
【0035】
また、本発明によれば、前記通話相手との会話において前記利用者による応答の要否を把握するステップを有し、
前記利用者による応答が必要な場合であって、かつ、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上、前記利用者の発話が行われないと判断された場合に、前記通話相手の発話に対する前記利用者の応答が遅れることを通知するための音声メッセージを作成して、前記通話相手の通話端末へ送信する通話方法が提供される。
【0036】
また、本発明によれば、前記音声メッセージに更に前記利用者の現在の状況を表す音声情報が挿入される通話方法が提供される。
【0037】
また、本発明によれば、前記通話装置が車両に搭載され、前記利用者が前記車両を運転するドライバである通話方法が提供される。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、通話者同士が通話を行っている際に、一方の通話者の応答遅延によって、他方の通話者の情緒が乱れないよう(不安感やストレスを与えないよう)にするという効果を有している。また、本発明は、最適なタイミングで自動応答メッセージによる応答を行うことで、上記の効果を大きくすることが可能である。また、本発明は、さらに、利用者の現在の状況を含む自動応答メッセージを送信することで、通話相手に利用者の状況(応答遅延が発生している原因)を知らせてストレス許容度を高め、スムーズな意思疎通が行われるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明が適用される通信システムの一例を示す図
【図2】本発明の実施の形態における自動応答機能付通話システムを含む構成の一例を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態における自動応答機能付通話システム200の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0041】
図1には、本発明が適用される通信システムの一例が図示されている。本発明は、通話者同士が通話回線ネットワーク130を介して通話を行う通信システム(通話装置及び通話方法)に適用可能である。図1では、一方の通話者がドライバであって車載システム110を通話端末として利用しており、他方の通話者が固定電話機又は移動電話機などの通話端末120を利用している状態が一例として図示されている。なお、本発明は、一方の通話者がドライバの場合に特に有用であるが、両方の通話者がドライバであってもよく、あるいは、両方の通話者が、固定電話機又は移動電話機などの通話端末を利用している場合にも適用可能である。また、通話端末は、固定電話機、移動電話機、車載システム、PC(Personal Computer:パーソナルコンピュータ)など、任意の通話可能な装置が利用可能である。また、通話者同士をつなぐ通話回線ネットワークに関しても、携帯電話ネットワーク、インターネットなどの公衆ネットワーク、専用ネットワークなど、任意の通信ネットワークが利用可能である。
【0042】
図2には、本発明の実施の形態における自動応答機能付通話システムを含む構成の一例が図示されている。なお、図2に図示されている構成要素は、例えば、図1の車載システムに設けられる。なお、図2に図示されている構成要素を組み込むことによって、任意の通話端末において、本発明に係る自動応答を実現することが可能となる。また、図2では、各機能をブロックによって模式的に示しているが、これらの各構成要素は、ハードウェアで実現されてもよく、ソフトウェアで実現されてもよい(所定のプログラムをCPUによって処理することで機能を実現する)。
【0043】
図2には、本発明に係る自動応答を実現する主要な機能が含まれている自動応答機能付通話システム200、通信モジュール250、スピーカ(音声出力部)260、マイクロホン(音声入力部)270が図示されている。なお、通信モジュール250は、任意の通信技術によって外部との間で音声信号(音声データ)の送受信を行う機能を有しており、スピーカ260は、利用者が聴取可能なように音声を出力する機能を有しており、マイクロホン270は、利用者の発話音声を集音する機能を有している。
【0044】
また、自動応答機能付通話システム200は、受話再生部320、発話検出部220、無応答検出部230を有しており、
【0045】
受話再生部320は、通信モジュール250を介して通話相手(相手側の通話端末)から音声信号(受話音声信号)を受信し、スピーカ260を介して音声出力を行うとともに、受信した通話音声信号を無音区間検出部231へ出力する機能を有している。なお、本明細書では、通話相手から受信する信号を受話音声信号と記載するが、この信号は、アナログ又はデジタルのいずれであってもよく、また、ビデオチャットやVoIP(Voice over IP)などの受信信号に含まれる音声であってもよい。また、発話検出部220は、マイクロホン270を介して入力された利用者の音声信号(発話音声信号)と、自動応答メッセージ作成部232で作成された自動応答メッセージの音声信号とを、通信モジュール250を介して通話相手(相手側の通話端末)へ送信する機能、さらには、無音区間検出部231へ出力する機能を有している。
【0046】
また、無応答検出部230は、無音区間検出部231、自動応答メッセージ作成部232を有している。無音区間検出部231は、受話再生部320から送られてきた受話音声信号を参照して通話相手の発話の有音/無音を監視することで、通話相手の発話の再生状況を検出する機能を有している。無音区間検出部231は、発話検出部220から送られてきた発話音声信号を参照して利用者の発話の有音/無音を監視することで、利用者の発話状況を検出する機能を有している。さらに、無音区間検出部231は、通話相手の発話の再生が終わった後(例えば、通話相手の発話が一区切りついて無音状態となった場合)、利用者の発話の有音/無音を監視して所定の時間(N秒)以上無音が継続するかどうかを判断し、利用者の発話が所定の時間(N秒)以上無音であった場合には、自動応答メッセージ作成232に対して自動応答メッセージの作成を指示する機能を有している。
【0047】
なお、無音区間検出部231は、例えば、通話相手の発話が一定時間無音になった場合に、通話相手の発話の再生が終了したと判断できる。このようにして通話相手の発話が終了したかどうかを検出する方法は、問答形式の会話(問い合わせを行う者と、それに対する回答を行う者による会話)において特に有用である。なお、本発明において、通話相手の発話が終了したことを検出する方法は上記の方法に限定されるものではなく、例えば、通話相手の通話端末から発話を終了したことを告げる任意の信号が送られてきたことを検出することで、通話相手の発話終了を把握する方法などを始めとして、任意の方法を採用することが可能である。
【0048】
また、自動応答メッセージ作成部232は、無音区間検出部231からの指示(すなわち、通話相手の発話の再生が終わった後、利用者の発話が所定の時間(N秒)以上無音であった場合に受け取る指示)に応じて自動応答メッセージを作成し、発話検出部に出力することで、通信モジュール250を介して通話相手(相手側の通話端末)へ送信する機能を有している。この自動応答メッセージは、通話相手に対して利用者の応答が遅れることを通知する音声メッセージであり、『応答が遅れます』などの音声が含まれている。
【0049】
なお、自動応答メッセージ作成部232は、利用者の現在の状況を取得する機能を有し、利用者の現在の状況が自動応答メッセージに更に含まれるように自動応答メッセージの作成を行ってもよい。例えば、利用者が運転中の場合(車両の速度やエンジンの状態などから検出可能)には、『“運転に集中しているため”応答が遅れます』などの音声を含む自動応答メッセージを作成して通話相手に送信することで、通話相手に利用者の現在の状況を理解してもらえる自動応答メッセージを送信することが可能となる。
【0050】
次に、図3を参照しながら、本発明の実施の形態における自動応答機能付通話システム200の動作の一例について説明する。図3は、本発明の実施の形態における自動応答機能付通話システム200の動作の一例を示すフローチャートである。
【0051】
図3における処理の初期状態として、通話相手との間で通話が行われていると仮定する。自動応答機能付き通話システム200は、通信モジュール250を介して通話相手から受話音声信号を受信し、スピーカ260を介して音声出力を行うとともに、無音区間検出部231において、通話相手の発話の有音/無音を監視することで、通話相手の発話の再生状況を検出する(ステップS301:受話音声再生状態)。そして、無音区間検出部231は、通話相手の発話の再生が終了したかどうかを判断する(ステップS302:受話音声再生終了?)。なお、無音区間検出部231は、例えば、通話相手の発話が一定時間無音になった場合に、通話相手の発話の再生が終了したと判断することが可能である。
【0052】
無音区間検出部231は、通話相手の発話の再生が終了するまで通話相手の発話の再生状況を監視し、通話相手の発話の再生が終了したと判断した場合には、タイマをスタートさせるとともに、発話検出部220から送られてくる発話音声信号を参照して利用者の発話の有音/無音を監視することで、利用者の発話状況を検出する(ステップS303:発話音声監視(タイマスタート)。
【0053】
タイマによる計測時間が所定時間(N秒)未満で利用者の発話が検出された場合には、処理は終了となる。一方、タイマによる計測時間が所定時間(N秒)になっても利用者の発話が検出されなかった場合には、無音区間検出部231は、自動応答メッセージ作成232に対して自動応答メッセージの作成を指示する(ステップS304:N秒以上無音?)。なお、このとき、通話相手の発話が所定時間(N秒)未満で再開された場合には、タイマによる計時を終了し、再びステップS301に戻る。すなわち、ステップS303における監視は、通話相手の発話の再生が終了してから、利用者及び通話相手の両者が沈黙している状態を計時するものである。
【0054】
無音区間検出部231からの自動応答メッセージの作成指示を受けた自動応答メッセージ作成部232は、通話相手に対して利用者の応答が遅れることを通知するための音声メッセージを作成し、発話検出部220及び通信モジュール250を介して、通話相手の通話端末へ自動応答メッセージを送信する(ステップS305:自動応答メッセージ作成、送信)。なお、このとき、自動応答メッセージ作成部232は、利用者の現在の状況を取得して自動応答メッセージに含めることも可能である。
【0055】
なお、ステップS305で自動応答メッセージによる応答を行った場合には、再びステップS303に戻って、ステップS303〜S305の処理を繰り返し行うようにしてもよい。すなわち、所定時間(N秒)以上利用者が発話応答できなかった場合には、自動応答メッセージによる応答を行い、自動応答メッセージ送信後に所定時間(N秒)以上利用者が発話応答できなかった場合には、再び自動応答メッセージによる応答を繰り返し行うようにしてもよい。
【0056】
また、本願の発明者らは応答がどのくらい遅延した場合に通話相手の不安やストレスが大きくなるかを計測する実験を行った。その結果、応答の無音状態が6秒を超えると通話相手が不安やストレスを感じることが分かった。すなわち、通話相手に対して応答を行う場合には6秒以内(通話相手に対する無応答状態が6秒を超えないようにする)とすることが望ましく、よって、自動応答を開始するタイミングは5秒後(所定時間をN=5秒とする)とすることが望ましい。
【0057】
以上の動作によって、通話相手の発話が終了してから利用者の応答が遅い場合(N秒以上発話が無い状態)であっても、自動応答機能付き通話システム200が利用者の応答が遅れることを通知する自動応答メッセージを自動的に応答として返すことが可能となる。この自動応答メッセージを受信して再生した通話相手は、通話相手からの応答が遅いことによって感じるストレスが小さくなり、通話者間におけるスムーズな意思疎通が実現されるようになる。また、例えば、利用者がドライバであり、運転中のために応答が遅れるような場合であっても、自動応答機能付き通話システム200が自動応答メッセージで応答してくれるため、副タスクであるハンズフリー通話に気を取られることなく、安心して主タスクである運転行為に集中できるようになる。さらに、利用者の現在の状況も自動応答メッセージとして応答することで、利用者(ドライバ)にとっては運転集中状態にある自分の状況を説明でき、通話相手にとっては相手(ドライバ)の状況が把握できるようになるため、通話者間双方で応答タイムラグに係るストレス許容度が高くなり、スムーズな意思疎通が実現されるようになる。
【0058】
なお、上述の実施の形態では、無音区間検出部231が、タイマをスタートさせて応答の無音状態が6秒を超える場合に、自動応答メッセージの作成及び送信を行っているが、利用者の主タスク(例えば、利用者がドライバの場合には車両の運転)の負荷状態を検出し、利用者の主タスクの負荷が高い状態がN秒以上続くかどうかを予測して、N秒以上続くと予測された場合に、自動応答メッセージの作成及び送信を行うようにしてもよい。
【0059】
また、通話相手側においても、本発明の自動応答機能付通話システムを利用している場合も考えられる。このような場合には、利用者と通話相手との間で、事前に又は周期的に利用者及び通話相手の主タスクの負荷状態を交換する(相互に通知し合う)ようにしてもよい。
【0060】
例えば、利用者の主タスクの負荷状態が高い場合には、通話相手からの自動応答メッセージが邪魔となる(自動応答メッセージの報知によって、利用者の主タスクへの集中力が低下する)場合もある。このような場合には、通話相手側で利用者の主タスクの高負荷状態を事前に把握することによって、通話相手側が、通話相手の応答が遅れることを示す自動応答メッセージの送信を遅らせたり、あるいは、自動応答メッセージの送信を抑制したりすることで、高負荷状態の利用者の集中力(主タスクへの集中力)を妨げないようにすることが可能である。また、通話相手の主タスクの負荷状態が高い場合も同様に、利用者側が、利用者の応答が遅れることを示す自動応答メッセージの送信を遅らせたり、あるいは、自動応答メッセージの送信を抑制したりすることで、高負荷状態の通話相手の集中力(主タスクへの集中力)を妨げないようにすることが可能となる。
【0061】
また、例えば、利用者の主タスクの負荷状態が高い場合には、通話相手の応答が遅れることを示す自動応答メッセージを通話相手側から受信したとしても、その自動応答メッセージの報知を遅らせたり、抑制したりすることで、高負荷状態の利用者の集中力(主タスクへの集中力)を妨げないようにしてもよい。
【0062】
また、利用者(又は通話相手)による応答の要否を把握する機構が実装されてもよい。例えば、通話相手(又は利用者)が、相手に対して何らかの応答を求める際に何らかの操作を行うことで(例えば、ボタンの押下など)、応答を求める会話であることを相手のシステムに対して通知してもよい。また、例えば、利用者(又は通話相手)による応答の要否を把握する機構として、会話の内容を解釈する機構が実装され、会話の内容を解釈することで利用者(又は通話相手)による応答が求められているタイミングを把握できるようにしてもよい。このような応答の要否を把握する機構が実装される場合には、応答が必要となる場合においてのみ通話相手の発話終了を判断し、N秒以上の無応答が生じないように自動応答メッセージの作成及び送信を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、通話者同士が通話を行っている際に、一方の通話者の応答遅延によって、他方の通話者の情緒が乱れないよう(不安感やストレスを与えないよう)にするという効果を有しており、通話者同士が通話を行う際に利用される通信技術及びデータ処理技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
110 車載システム
120 通話端末
130 通話回線ネットワーク
200 自動応答機能付通話システム
210 受話再生部
220 発話検出部
230 無応答検出部
231 無音区間検出部
232 自動応答メッセージ作成部
250 通信モジュール
260 スピーカ
270 マイクロホン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が通話相手と通話を行うために、前記通話相手の通話端末との間で通信を行う通話装置であって、
前記通話相手の通話端末から受信する受話信号に基づいて、前記通話相手の発話終了を判断する手段と、
前記通話相手の発話終了の時点から所定時間のうちに、前記利用者の発話が行われるかどうかを判断する手段と、
前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上、前記利用者の発話が行われないと判断された場合に、前記通話相手の発話に対する前記利用者の応答が遅れることを通知するための音声メッセージを作成して、前記通話相手の通話端末へ送信する手段とを、
有する通話装置。
【請求項2】
前記利用者の発話が行われるかどうかを判断する手段が、
前記通話相手の発話終了の時点から計時するタイマをスタートするとともに、前記通話相手の通話端末へ送信される前記利用者の発話音声信号に基づいて前記利用者の発話状況を検出する手段と、
前記タイマにおいて所定時間経過した場合であっても、前記利用者の発話が検出されなかった場合に、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上前記利用者の発話が行われないと判断する手段とを、
有する請求項1に記載の通話装置。
【請求項3】
前記利用者の発話が行われるかどうかを判断する手段が、
前記利用者の主タスクの負荷状態を検出する手段と、
前記利用者の主タスクの高負荷状態が所定時間以上続くかどうかを予測し、前記利用者の主タスクの負荷が所定時間以上続くと予測された場合に、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上前記利用者の発話が行われないと判断する手段とを、
有する請求項1に記載の通話装置。
【請求項4】
前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合に、前記利用者の主タスクの負荷状態を前記通話相手に周期的に通知する手段を有し、
前記利用者の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通話相手からの前記通話相手の応答が遅れることを示す音声メッセージの送信を遅らせるか、あるいは抑制させる請求項3に記載の通話装置。
【請求項5】
前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合に、前記通話相手の主タスクの負荷状態を前記通話相手から周期的に受信する手段と、
前記通話相手の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通利用者の応答が遅れることを示す前記音声メッセージの送信を遅らせるか、あるいは抑制する手段とを、
有する請求項3又は4に記載の通話装置。
【請求項6】
前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合、かつ、前記利用者の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通話相手からの前記通話相手の応答が遅れることを示す音声メッセージを受信した際、前記通話相手からの前記音声メッセージの報知を遅らせるか、あるいは抑制する手段を有する請求項3から5のいずれか1つに記載の通話装置。
【請求項7】
前記所定時間が5秒に設定される請求項1から6のいずれか1つに記載の通話装置。
【請求項8】
前記通話相手との会話において前記利用者による応答の要否を把握する手段を有し、
前記利用者による応答が必要な場合であって、かつ、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上、前記利用者の発話が行われないと判断された場合に、前記通話相手の発話に対する前記利用者の応答が遅れることを通知するための音声メッセージを作成して、前記通話相手の通話端末へ送信する請求項1から7のいずれか1つに記載の通話装置。
【請求項9】
前記音声メッセージに更に前記利用者の現在の状況を表す音声情報が挿入される請求項1から8のいずれか1つに記載の通話装置。
【請求項10】
前記通話装置が車両に搭載され、前記利用者が前記車両を運転するドライバである請求項1から9のいずれか1つに記載の通話装置。
【請求項11】
利用者が通話相手と通話を行うために、前記通話相手の通話端末との間で通信を行う通話装置において実行される通話方法であって、
前記通話相手の通話端末から受信する受話信号に基づいて、前記通話相手の発話終了を判断するステップと、
前記通話相手の発話終了の時点から所定時間のうちに、前記利用者の発話が行われるかどうかを判断するステップと、
前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上、前記利用者の発話が行われないと判断された場合に、前記通話相手の発話に対する前記利用者の応答が遅れることを通知するための音声メッセージを作成して、前記通話相手の通話端末へ送信するステップとを、
有する通話方法。
【請求項12】
前記利用者の発話が行われるかどうかを判断するステップが、
前記通話相手の発話終了の時点から計時するタイマをスタートするとともに、前記通話相手の通話端末へ送信される前記利用者の発話音声信号に基づいて前記利用者の発話状況を検出するステップと、
前記タイマにおいて所定時間経過した場合であっても、前記利用者の発話が検出されなかった場合に、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上前記利用者の発話が行われないと判断するステップとを、
有する請求項11に記載の通話方法。
【請求項13】
前記利用者の発話が行われるかどうかを判断するステップが、
前記利用者の主タスクの負荷状態を検出するステップと、
前記利用者の主タスクの高負荷状態が所定時間以上続くかどうかを予測し、前記利用者の主タスクの負荷が所定時間以上続くと予測された場合に、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上前記利用者の発話が行われないと判断するステップとを、
有する請求項11に記載の通話方法。
【請求項14】
前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合に、前記利用者の主タスクの負荷状態を前記通話相手に周期的に通知するステップを有し、
前記利用者の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通話相手からの前記通話相手の応答が遅れることを示す音声メッセージの送信を遅らせるか、あるいは抑制させる請求項13に記載の通話方法。
【請求項15】
前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合に、前記通話相手の主タスクの負荷状態を前記通話相手から周期的に受信するステップと、
前記通話相手の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通利用者の応答が遅れることを示す前記音声メッセージの送信を遅らせるか、あるいは抑制するステップとを、
有する請求項13又は14に記載の通話方法。
【請求項16】
前記通話相手も同様の通話装置を利用する場合、かつ、前記利用者の主タスクの負荷状態が高い場合には、前記通話相手からの前記通話相手の応答が遅れることを示す音声メッセージを受信した際、前記通話相手からの前記音声メッセージの報知を遅らせるか、あるいは抑制するステップを有する請求項13又は15に記載の通話方法。
【請求項17】
前記所定時間が5秒に設定される請求項11から16のいずれか1つに記載の通話方法。
【請求項18】
前記通話相手との会話において前記利用者による応答の要否を把握するステップを有し、
前記利用者による応答が必要な場合であって、かつ、前記通話相手の発話終了の時点から所定時間以上、前記利用者の発話が行われないと判断された場合に、前記通話相手の発話に対する前記利用者の応答が遅れることを通知するための音声メッセージを作成して、前記通話相手の通話端末へ送信する請求項11から17のいずれか1つに記載の通話方法。
【請求項19】
前記音声メッセージに更に前記利用者の現在の状況を表す音声情報が挿入される請求項11から18のいずれか1つに記載の通話方法。
【請求項20】
前記通話装置が車両に搭載され、前記利用者が前記車両を運転するドライバである請求項11から19のいずれか1つに記載の通話方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−147052(P2011−147052A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7839(P2010−7839)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【Fターム(参考)】