説明

速度制御装置、車両衝突試験装置

【課題】複数のダイナモをそれぞれ個別のインバータで駆動制御する速度制御装置として、制御応答性の向上を実現し、ハンチングを防止・抑制可能なものを提供する。
【解決手段】負荷Lに接続した第1ダイナモメータ1と、第1ダイナモメータ1を速度制御する第1インバータ3と、第2ダイナモメータ2と、第2ダイナモメータ2をトルク制御する第2インバータ4と、速度指令に対して微分処理を行う微分処理手段5と、微分処理手段5によって算出した加速度に所定の慣性を乗算して加速トルクを算出する加速トルク算出手段6と、加速トルク算出手段6で算出した加速トルクをダイナモメータの台数及び容量に応じて分配する加速トルク分配手段7とを備え、加速トルク分配手段7により分配された加速トルクに応じたトルク指令に基づいて第2ダイナモメータ2を第2インバータ4によりトルク制御する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度制御装置、及びこの速度制御装置を備えた車両衝突試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばワイヤロープで牽引して走行路上を所定速度で走行させた自動車等のテスト車両を衝突壁(バリア)や車両等の衝突対象物に衝突させて、その損壊状況等を試験する車両衝突試験装置が知られている(例えば特許文献1)。このような衝突試験装置では、正確な試験結果が得られるように、車両を目標速度で走行させて衝突対象物に衝突させることが要求されている。
【0003】
そこで、負荷である車両を所定速度で走行させる制御は、ダイナモメータと、ダイナモメータの作動を制御するインバータとを備えた速度制御装置によって行われている。また、試験車両が大型である場合には、複数台のダイナモメータを相互に連結し、各ダイナモの作動をそれぞれ個別のインバータで制御するように構成された速度制御装置が適用されている。
【0004】
その一例として、図4に示すように、負荷L’を複数のダイナモメータ1’,2’によって所定の目標速度で作動させる場合において、速度指令と速度フィードバックに基づいてPI演算処理を行う速度制御部31’を有し、この速度制御部31’の出力値(速度制御出力トルク)に基づいて1台目のダイナモメータ1’を速度制御するインバータ3’(第1インバータ)と、第1インバータ3’で演算した演算トルク(トルク指令)に基づいて2台目のダイナモメータ2’をトルク制御するインバータ4’(第2インバータ)とを備えた速度制御装置X’が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−142091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した態様では、第1インバータ3’で演算トルクを算出し、その算出した演算トルクを第2インバータ4’に送る処理が必須であるため、演算トルクを第2インバータ4’へ送る際の遅れにより、ダイナモメータ1’,2’同士の連結部分でトルクハンチングが発生し、機械的な損傷を招来するおそれがある。そこで、フィルタを設けてトルクハンチングの発生を防止・抑制する態様も考えられるが、その場合はフィルタを用いることによって応答性が低下するというデメリットがあり得る。
【0007】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、複数台のダイナモメータを連結して各ダイナモメータを個別のインバータで駆動制御する速度制御装置として、制御応答性の向上を実現し、ハンチングを防止・抑制可能なものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、複数台のダイナモメータによって1つの負荷を所定の速度で移動させる速度制御装置に関するものであり、負荷に接続(連結)した1台目のダイナモメータである第1ダイナモメータと、所定の速度指令及び速度フィードバックに基づいてPI演算処理を行う速度制御部を有し且つ第1ダイナモメータを速度制御する第1インバータと、第1ダイナモメータ以外の1又は複数のダイナモメータである第2ダイナモメータと、第2ダイナモメータをトルク制御する第2インバータとを備えたものである。
【0009】
ここで、本発明は、1台の第2ダイナモメータを1台のインバータでトルク制御する態様、あるいは複数の第2ダイナモメータをそれぞれ個別の第2インバータでトルク制御する態様、これら何れの態様も包含する。なお、所定の速度で作動させる負荷としては、例えば車両衝突試験装置における車両(テスト車両)を挙げることができるが、本発明の速度制御装置による駆動制御対象である負荷は特に車両に限定されることはない。
【0010】
そして、本発明に係る速度制御装置は、速度指令に対して微分処理を行う微分処理手段と、微分処理手段で算出した加速度に所定の慣性を乗算した加速トルクを算出する加速トルク算出手段と、加速トルク算出手段で算出した加速トルクをダイナモメータの台数及び容量に応じて分配する加速トルク分配手段とを備え、第2インバータが、加速トルク分配手段により分配された加速トルクに応じたトルク指令に基づいて第2ダイナモメータをトルク制御するものであり、第1インバータが、速度制御部の出力値である速度制御出力トルクに加速トルク分配手段により分配された加速トルクを加算した補正トルク指令に基づいて第1ダイナモメータを速度制御するものであることを特徴としている。
【0011】
このような速度制御装置であれば、微分処理手段によって速度指令に応じた加速度を算出することができ、加速トルク算出手段でこの加速度に所定の慣性(例えば負荷の慣性やダイナモメータの慣性)を乗算して加速トルクを算出し、この加速トルクに基づいて第2ダイナモメータを第2インバータによりトルク制御するように構成している。このように、本発明の速度制御装置は、トルク制御側のインバータである第2インバータが、速度制御側のインバータである第1インバータに入力される速度指令そのものに基づいて算出した加速トルクに応じたトルク指令によって第2ダイナモメータの駆動を制御しているため、速度制御側のインバータで算出した演算トルクに基づいてトルク制御側のインバータにより第2ダイナモメータをトルク制御する態様と比較して、制御応答性が向上し、制御遅れによるトルクハンチングの発生を防止・抑制することができる。
【0012】
また、本発明の速度制御装置では、速度指令に基づいて算出した加速トルクを、加速トルク分配手段によって分配して第1インバータによる第1ダイナモメータの駆動制御、及び第2インバータによる第2ダイナモメータの駆動制御にそれぞれ反映させることができる。また、本発明の速度制御装置では、速度指令に対して微分処理手段、加算トルク手段及び加速トルク分配手段でそれぞれ演算して算出したトルク指令に基づいて各インバータが対応するダイナモメータの駆動を制御するように構成しているため、速度指令に対する追従性も向上する。
【0013】
特に、本発明に係る速度制御装置で適用する速度指令としては速度パターンを挙げることができる。
【0014】
また、本発明に係る車両衝突試験装置は、テスト車両を所定の目標速度で走行させて衝突対象物に衝突させるものであって、テスト車両を負荷としてその走行速度を上述した構成を有する速度制御装置によって制御することを特徴としている。
【0015】
このような車両衝突試験装置であれば、テスト車両が大型であっても2台以上のダイナモメータによって得られる大きなトルクで好適に走行させることができ、制御応答性の向上を実現してトルクハンチングを防止・抑制可能な速度制御装置によって、テスト車両を所定の目標速度で走行させることができ、正確な衝突試験結果を得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トルク制御側のインバータ(第2インバータ)が、速度制御側のインバータ(第1インバータ)に入力される速度指令自体に基づいて算出したトルク指令に基づいて第2ダイナモメータをトルク制御する構成であるため、制御遅れを改善して、トルクハンチングの発生を防止・抑制することが可能な速度制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る速度制御装置を適用した車両衝突試験装置の全体構成模式図。
【図2】同実施形態に係る速度制御装置の構成模式図。
【図3】同実施形態に係る速度制御装置の一変形例を図2に対応して示す図。
【図4】従来の速度制御装置の図2対応図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る速度制御装置Xは、例えば図1に示すように、所定速度で走行させた自動車等のテスト車両Tを衝突対象物B(図1では衝突対象物Bとして「バリア」を示す)に衝突させ、その衝突状況を例えばテスト車両Tの下方からカメラCで撮影する衝突試験装置Yに適用可能なものである。衝突対象物Bとして車両を適用した場合には、車両同士を衝突させてその損壊状況をカメラCで撮影することもできる。
【0020】
衝突試験装置Yは、図1に示すように、テスト車両Tが走行する走行路Sと、走行路Sのうちテスト車両Tの走行方向Ta(走行路Sの延伸方向)に沿って設置され、テスト車両Tを走行路Sの延伸方向に牽引する閉ループの牽引ワイヤロープRと、走行路Sの終端Saよりもテスト車両Tの走行方向Ta下流側に配置した衝突対象物Bと、走行路Sの終端Laと衝突対象物Bとの間に設けられ内部にカメラCを設置したピットPとを備えたものである。本実施形態では、周回走行する牽引ワイヤロープRに連結させたドーリー装置Dを駆動走行させることにより、連結用ワイヤロープRaを介してドーリー装置Dに連結しているテスト車両Tを走行方向Taに牽引するように構成している。そして、テスト車両Tの走行速度を速度制御装置Xによって制御している。
【0021】
牽引ワイヤロープRは、一方端に配置した駆動装置であるウインチ装置Wにより駆動走行し、他方端に配置したリターンシーブ装置Sにより折り返して周回走行するものである。ウインチ装置Wは、円筒状の胴Waを対向配置し、胴Waを回転させることによって胴Wa間に架け渡したワイヤロープRを所定方向に繰り出したり、巻き取るものである。
【0022】
本実施形態に係る速度制御装置Xは、このウインチ装置Wの何れか一方の胴Waの回転速度を制御することによって、牽引ワイヤロープRに連結させたドーリー装置Dに取り付けたテスト車両Tを所定速度で走行させるものである。したがって、図2に示す速度制御装置Xの制御対象である負荷Lは、直接的にはウインチ装置Wの胴Waであり、また胴Waに巻回したワイヤーロープR、このワイヤーロープRに連結したドーリー装置D、及びドーリー装置Dを取り付けたテスト車両T、これら各物品・各部品の集合であると捉えることができる。
【0023】
速度制御装置Xは、図2に示すように、出力軸1aを負荷Lに連結した第1ダイナモメータ1と、この第1ダイナモメータ1の入力軸1bに出力軸2bを連結した第2ダイナモメータ2と、第1ダイナモメータ1を速度制御する第1インバータ3と、第2ダイナモメータ2をトルク制御する第2インバータ4と、微分処理手段5と、加速トルク算出手段6と、加速トルク分配手段7とを備えている。
【0024】
第1ダイナモメータ1及び第2ダイナモメータ2は周知のものを適用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
第1インバータ3は、速度指令及び速度フィードバックに基づいてPI演算処理を行う速度制御部31(Automatic Speed Regulator)と、速度制御部31の出力値である速度制御出力トルクに、加速トルク分配手段7により分配された加速トルクを加算して補正トルク指令を生成する補正トルク指令生成部32とを備え、この補正トルク指令生成部32で生成した補正トルク指令に基づいて第1ダイナモメータ1を速度制御するものである。速度制御部31は、速度アンプ31a等を用いて構成することができ、速度指令生成部8から入力される速度指令と、図示しない適宜の検出手段によって検出した速度検出値(速度フィードバック)とに基づいて算出した速度制御出力トルクを出力するものである。また、補正トルク指令生成部32は、加算器32aを用いて構成することができる。すなわち、この第1インバータ3はPI制御(P制御(比例制御)とI制御(積分制御)を併用したフィードバック制御)によって出力した速度制御出力トルクに基づいて第1ダイナモメータ1の駆動を制御している。
【0026】
ここで、本実施形態では、速度指令として、図2に示すように、時間及び回転数をx軸,y軸としたグラフに示すことができる速度パターンPtを適用している。このような速度指令(速度パターンPt)は速度指令生成部8で生成され、この速度指令生成部8から速度制御部31及び微分処理手段5に入力される。
【0027】
微分処理手段5は、微分器5aを用いて構成することができ、速度パターンPtで示される速度指令に対して微分処理を行い、速度パターンPtに応じた加速度を算出するものである。
【0028】
加速トルク算出手段6は、微分処理手段5で算出した加速度に、所定の慣性(本実施形態では負荷Lの慣性及び各ダイナモメータ1,2の慣性)を所定値として乗算する処理を行い、加速トルクを算出するものである。
【0029】
加速トルク分配手段7は、加速トルク分配器7aを用いて構成することができ、加速トルク算出手段6で算出した加速トルクを、本装置Xが備えるダイナモメータの台数及び容量に応じて分配し、分配した加速トルクを各インバータ3,4にそれぞれ出力するものである。したがって、例えば各ダイナモメータ3,4の容量が同じである場合、加速トルク分配手段7は、加速トルク算出手段6で算出した加速トルクを等分配した加速トルクを各インバータ3,4に出力することになる。本実施形態では、この加速トルク分配手段7で分配した加速トルクを、第1インバータ3のうち速度制御部31の出力側、及び第2インバータ4の入力側にそれぞれ入力するように構成している。
【0030】
そして、第2インバータ4は、加速トルク分配手段7から出力される加速トルク(分配済み加速トルク)をトルク指令として第2ダイナモメータ2をトルク制御する。
【0031】
一方、第1インバータ3は、速度制御部31の出力値(トルク制御指令)に、加速トルク分配手段7から入力される加速トルク(分配済み加速トルク)を加算して生成した補正トルク指令に基づいて第1ダイナモメータ1を制御する。
【0032】
次に、このような構成を有する本実施形態に係る速度制御装置Xによる制御方法及び作用について説明する。
【0033】
本実施形態に係る速度制御装置Xは、負荷Lと第1ダイナモメータ1を第1カップリングC1で連結するとともに、第1ダイナモメータ1と第2ダイナモメータ2を第2カップリングC2で連結した状態で起動し、速度指令である速度パターンPtを速度指令生成部8から第1インバータ3及び微分処理手段5へ出力する。そして、速度制御装置Xは、第1インバータ3において、入力された速度パターンPt及び速度フィードバックに基づいて速度制御部31によりPI演算処理を行い、速度制御出力トルクを出力する。
【0034】
一方、微分処理手段5では速度指令生成部8から入力された速度パターンPtに対して微分処理を行い、加速度を算出し、次いで、加速トルク算出手段6において、微分処理手段5で算出した加速度に所定値(負荷L及びダイナモメータ1,2の慣性)を乗算して加速トルクを算出する。引き続いて、加算トルクを加速トルク分配器7aでダイナモメータの数・容量に応じた加算トルクに分配し、この分配した加算トルク(分配済み加算トルク)を各インバータ3,4に出力する。
【0035】
そして、本実施形態の速度制御装置Xは、第1インバータ3の補正トルク指令生成部32により、速度制御部31の出力値である速度制御出力トルクに分配済み出力トルクを加算した補正トルク指令を生成し、この補正トルク指令に基づいて第1ダイナモメータ1を制御する。また、本実施形態の速度制御装置Xは、第1インバータ3により第1ダイナモメータ1を速度制御すると同時に、第2インバータ4において、加速トルク分配器7aから入力される加速トルク(分配済み加速トルク)に基づいて第2ダイナモメータ2をトルク制御する。
【0036】
以上の処理を経て、本実施形態に係る速度制御装置Xは、各ダイナモメータ(第1ダイナモメータ1、第2ダイナモメータ2)の駆動を制御して、第1ダイナモメータ1に連結した負荷Lを速度パターンPtに応じた速度で作動させることができる。
【0037】
特に、本実施形態に係る速度制御装置Xは、微分処理手段5によって速度パターンPtに応じた加速度を算出し、加速トルク算出手段6でこの加速度に負荷Lの慣性やダイナモメータ(第1ダイナモメータ1、第2ダイナモメータ2)の慣性を乗算して加速トルクを算出し、この加速トルクに基づいて第2インバータ4が第2ダイナモメータ2をトルク制御するように構成している。このような構成を採用している本実施形態に係る速度制御装置Xは、トルク制御側のインバータである第2インバータ4が、速度制御側のインバータである第1インバータ3に入力される速度指令そのものに基づいて算出した加速トルクによって第2ダイナモメータ2の駆動を制御しているため、速度制御側のインバータで算出した演算トルクに基づいてトルク制御側のインバータにより第2ダイナモメータ2をトルク制御する態様と比較して、制御応答性が向上し、制御遅れによるトルクハンチングの発生を防止・抑制することができ、速度指令(速度パターンPt)に対する追従性の向上を図ることができる。
【0038】
さらに、第2インバータ4では、加算トルク分配手段7によって分配された加速トルク(分配済み加速トルク)に基づいて第2ダイナモメータ2をトルク制御するとともに、第1インバータ3では、加算トルク分配手段7によって分配された加速トルク(分配済み加速トルク)を速度制御部31の出力値に加算して生成した補正トルク指令に基づいて第1ダイナモメータ1の作動を制御しているため、これら各ダイナモメータ(第1ダイナモメータ1、第2ダイナモメータ2)の総出力トルクによって、制御対象(負荷L)を速度指令(速度パターンPt)に応じた速度で作動させることができる。
【0039】
したがって、このような速度制御装置Xを適用した衝突試験装置Yでは、テスト車両Tとドーリー装置Dとを連結用ワイヤロープ6によって連結し、ドーリー装置Dに牽引ワイヤロープRを取り付けた状態で、ウインチ装置Wを速度制御装置Xの制御下において作動させると、牽引ワイヤロープRが周回走行し、ドーリー装置Dの駆動走行に伴い、テスト車両Tを走行路Sの延伸方向(テスト車両Tの走行方向Ta)に沿って所定の目標速度で走行させることができる。そして、本実施形態の衝突試験装置Yでは、ドーリー装置Dが走行路Sの終端La近辺まで走行した時点で、テスト車両Tとドーリー装置Dとの連結状態を解除して、テスト車両Tを衝突対象物Bに衝突させ、この衝突時点の損壊状況や衝突前後の状況をピットP内に設置したカメラCによって撮影することができる。
【0040】
このように、速度制御装置Xを適用した車両衝突試験装置Yでは、車両を所定の速度パターンPtで走行させて衝突対象物Bに衝突させることができ、正確な衝突試験結果を得ることができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、図3に示すような構成を採用した速度制御装置であってもよい。すなわち、第1インバータ3として、速度制御部31の出力値(速度制御出力トルク)を分配する分配器33を備えたものを適用して、第1インバータ3では、この分配された速度制御出力トルク(分配済み速度制御出力トルク)に分配済み加算トルクを加算してなるトルク指令に基づいて第1ダイナモメータ1を速度制御するとともに、第2インバータ4では、分配済み加算トルクに分配済み速度制御出力トルクを加算してなるトルク指令に基づいて第2ダイナモメータ2をトルク制御するように構成してもよい。
【0042】
また、メカロストルクを事前に把握できる環境下では、加速トルク算出手段で算出した加速トルクにメカロストルクを加算したトルクを加速トルク分配手段に出力するように構成することもできる。
【0043】
さらには、加速度指令(加速度パターン)を積分して得られる速度指令を第1インバータ及び微分処理手段に出力しても構わない。
【0044】
また、トルク制御によって作動が制御される第2ダイナモメータは2台以上であってもよい。その場合、第2ダイナモメータの台数に応じて第2インバータも増設すればよい。
【0045】
本発明の速度制御装置は車両衝突試験装置以外の適宜の試験装置や、試験を目的としない種々の装置にも好適に適用することができる。
【0046】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…第1ダイナモメータ
2…第2ダイナモメータ
3…第1インバータ
31…速度制御部
4…第2インバータ
5…微分処理手段
6…加速トルク算出手段
7…加速トルク分配手段
B…衝突対象物
L…負荷
T…テスト車両
X…速度制御装置
Y…車両衝突試験装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のダイナモメータによって1つの負荷を所定の速度で作動させる速度制御装置であって、
前記負荷に接続した1台目のダイナモメータである第1ダイナモメータと、
所定の速度指令及び速度フィードバックに基づいてPI演算処理を行う速度制御部を有し、前記第1ダイナモメータを速度制御する第1インバータと、
前記第1ダイナモメータ以外の1又は複数のダイナモメータである第2ダイナモメータと、
前記第2ダイナモメータをトルク制御する第2インバータと、
前記速度指令に対して微分処理を行う微分処理手段と、
前記微分処理手段によって算出した加速度に所定の慣性を乗算して加速トルクを算出する加速トルク算出手段と、
前記加速トルク算出手段で算出した加速トルクを前記ダイナモメータの台数及び容量に応じて分配する加速トルク分配手段とを備え、
前記第2インバータが、前記加速トルク分配手段により分配された加速トルクに応じたトルク指令に基づいて前記第2ダイナモメータをトルク制御するものであり、
前記第1インバータが、前記速度制御部の出力値である速度制御出力トルクに、前記加速トルク分配手段により分配された加速トルクを加算した補正トルク指令に基づいて前記第1ダイナモメータを速度制御するものであることを特徴とする速度制御装置。
【請求項2】
前記速度指令が速度パターンである請求項1に記載の速度制御装置。
【請求項3】
テスト車両を所定の目標速度で走行させて衝突対象物に衝突させる車両衝突試験装置であって、
前記テスト車両を前記負荷としてその走行速度を請求項1又は2に記載の速度制御装置によって制御することを特徴とする車両衝突試験装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−211822(P2012−211822A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77553(P2011−77553)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)