速度情報生成装置、速度情報生成方法、渋滞情報生成装置及びプログラム
【課題】道路を移動中の携帯端末装置で測位されるＧＰＳ位置情報、測位時刻情報に基づいて、道路リンクの速度情報を迅速かつ正確に生成する。
【解決手段】ＧＰＳ位置情報を道路リンクにマッチングさせる。道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、携帯端末装置の移動速度を算出する。第１リンクでは、一つの携帯端末装置に対して、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置とＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差から算出した移動速度と、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置とＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差から算出した移動速度が得られる。
【解決手段】ＧＰＳ位置情報を道路リンクにマッチングさせる。道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、携帯端末装置の移動速度を算出する。第１リンクでは、一つの携帯端末装置に対して、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置とＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差から算出した移動速度と、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置とＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差から算出した移動速度が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、道路リンクの速度情報を生成する装置、方法及びプログラム、並びに渋滞情報を生成する装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
自動車のナビゲーションシステムにより、現在地から目的地へ最短時間で到達できるルートを算出するには、地図情報だけでなく、道路の渋滞情報が必要である。渋滞情報の生成には、道路上を走行する自動車の動きを監視する必要がある。
【０００３】
自動車の動きを監視して渋滞情報を生成するシステムとして、ＶＩＣＳ（Vehicle Information and Communication System：登録商標）がある（特許文献１）。ＶＩＣＳ（登録商標）は、道路上に設置されたセンサにより、走行している自動車を検出し、その検出結果をＶＩＣＳ（登録商標）センタが収集して渋滞情報を作成し、カーナビゲーション装置等の端末へ提供するシステムである。しかし、ＶＩＣＳ（登録商標）ではセンサが設置された主要な道路のみの渋滞情報しか作成できず、情報提供される対象道路の範囲が狭いという問題がある。
【０００４】
また、自動車の動きを監視して渋滞情報を生成する別のシステムとして、ＧＰＳ（Global Positioning System）受信機を搭載したプローブカーから収集したプローブ情報（位置、時刻等の情報）を用い、一定時間毎に各道路リンクの速度情報、即ち各道路リンクを走行するプローブカーの平均速度を求め、平均速度に応じて、「渋滞」、「混雑」、「渋滞無し」などの渋滞度を決定するシステムがある（特許文献２）。このプローブカーシステムでは、ＶＩＣＳ（登録商標）のように情報収集範囲が限定されず、極めて広い範囲からリアルタイムでデータを集めることができるという利点がある。
【０００５】
しかし、プローブカーシステムでは、自動車とセンタとの間で定時的に通信する必要があるため、プローブカーとしては、タクシーやバス或いはトラックのような特定業種の車両が用いられる。そのため、一般車両の交通量は多いが、タクシー等の特定業種の車両の交通量が少なく、例えばバス路線から外れているような道路については、プローブ情報の収集が難しいという問題がある。
【０００６】
このような問題を解決するため、道路を走行中の自動車に乗っているユーザが携帯する携帯端末装置で測位されるＧＰＳ位置情報、測位時刻情報を収集し、その履歴に基づいて渋滞情報を生成するシステムが提案されている（特許文献３）。
【０００７】
しかしながら、プローブカーで測位されるＧＰＳ位置情報と比べると、携帯端末装置で測位されるＧＰＳ位置情報は誤差が大きいため、例えば図１１に示すように、ＧＰＳ位置情報を道路リンクにマッチングさせたマッチング位置情報の示す位置（マッチング位置）が、ある道路リンクから出て前の道路リンクや次の道路リンクに入った後にある道路リンクに戻ることがある。なお、ＧＰＳ位置情報を番号で表すが、この番号はＧＰＳ位置情報を測位する際の測位時刻情報により特定することができるものであり、測位した時刻により順番を決めたことを示している。
【０００８】
図１１の場合、ある道路リンクに戻った位置を示すマッチング位置情報（図では６番目のＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置情報）を適切に処理（正否判断等）して道路リンク毎の正確なマッチング位置情報を収集するとともに、迅速に渋滞情報を生成することが望ましいが、特許文献３に記載されたシステムではこのことは考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００９】
【特許文献１】特開２００５−１４９３５８号公報
【特許文献２】特開２００８−２３４１６２号公報
【特許文献３】特開２００８−２９９３７１号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１０】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、道路を移動中の携帯端末装置で測位されるＧＰＳ位置情報、測位時刻情報に基づいて、道路リンクの速度情報を迅速かつ正確に生成できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明の速度情報生成装置は、道路を移動中の携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報が道路リンクにマッチングされたマッチング位置情報を道路リンクＩＤに対応付けて前記ＧＰＳ位置情報に対応する測位時刻情報とともに記憶装置に格納するＧＰＳ情報収集手段と、前記記憶装置に格納された速度情報を生成する対象となる対象道路リンクのマッチング位置情報及び測位時刻情報を用いて、該対象道路リンクでの前記携帯端末装置の移動速度を求めるリンク速度算出手段とを有するとともに、該リンク速度算出手段は、前記対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、前記携帯端末装置の移動速度を算出する速度情報生成装置である。
本発明の速度情報生成方法は、道路を移動中の携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報が道路リンクにマッチングされたマッチング位置情報を道路リンクＩＤに対応付けて前記ＧＰＳ位置情報に対応する測位時刻情報とともに記憶装置に格納するＧＰＳ情報収集工程と、前記記憶装置に格納された速度情報を生成する対象となる対象道路リンクのマッチング位置情報及び測位時刻情報を用いて、該対象道路リンクでの前記携帯端末装置の移動速度を求めるリンク速度算出工程とを有するとともに、該リンク速度算出工程では、前記対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、前記携帯端末装置の移動速度を算出する速度情報生成方法である。
本発明のプログラムは、コンピュータを本発明の速度情報生成装置の各手段として機能させるためのプログラムである。
【００１２】
［作用］
本発明によれば、道路を移動中の携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報を道路リンクにマッチングさせ、道路リンクＩＤに対応付けて測位時刻情報とともに記憶装置に格納し、対象道路リンクでの前記携帯端末装置の移動速度を求めるときに、前記対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて速度を算出する。
【発明の効果】
【００１３】
本発明によれば、道路を移動中の携帯端末装置で測位されるＧＰＳ位置情報、測位時刻情報に基づいて、道路リンクの速度情報を迅速かつ正確に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】本発明の実施形態の渋滞情報生成装置を含む渋滞情報提供システムを示す図である。
【図２】図１における携帯端末装置のブロック図である。
【図３】センタ装置のブロック図である。
【図４】図１における携帯端末装置の動作を示すフローチャートである。
【図５】図１におけるセンタ装置の概略動作を示すフローチャートである。
【図６】図５に示す各ステップのタイミング関係の一例を示す図である。
【図７】図５における渋滞情報の生成処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図８】図７における道路リンク集計処理の対象である道路リンクの一例を示す図である。
【図９】道路リンクにおけるＧＰＳ情報の示す位置及びマッチング位置を示す図である。
【図１０】図７における道路リンク集計処理に用いる道路種別毎の平均速度と渋滞度との関係を示す図である。
【図１１】携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報の示す位置及びマッチング位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
〈渋滞情報提供システムの構成〉
図１は、本発明の実施形態の渋滞情報生成装置を含む渋滞情報提供システムを示す図である。このシステムは、インターネットなどのネットワーク１に接続されるセンタ装置２と、基地局３経由でネットワーク１に接続される携帯端末装置４からなる。携帯端末装置４は携帯電話機、ＰＤＡ（Personal Digital Assistant）、ＰＮＤ（Personal Navigation Device）などである。携帯端末装置４とセンタ装置２とは、基地局３及びネットワーク１を介して通信可能である。センタ装置２が本発明の渋滞情報生成装置に対応する。
【００１６】
〈携帯端末装置の構成〉
図２は携帯端末装置４のブロック図である。この携帯端末装置４は制御部４１、操作部４２、表示部４３、ＧＰＳ受信部４４、及び無線通信部４５を備えている。
【００１７】
制御部４１は携帯端末装置４の各部を制御するためのコントローラであり、ＣＰＵ（Central Processing Unit）４１１と、ＲＯＭ（Read Only Memory）４１２と、ＲＡＭ（Random Access Memory）４１３とを備えている。ＣＰＵ４１１はＲＯＭ４１２に記憶されたプログラムをＲＡＭ４１３にロードして実行することで、後述する種々の処理を実現する。
【００１８】
操作部４２は、この携帯端末装置４をユーザが操作するための各種ボタンからなる。表示部４３は、この携帯端末装置４の動作状態や、操作部４２からユーザが入力した情報などを表示するための液晶表示装置などからなる。
【００１９】
ＧＰＳ受信部４４は一定時間（例えば１秒）毎にＧＰＳ衛星から送信される電波を受信し、現在位置を測定（測位）する。そして、測位情報であるＧＰＳ位置情報、及び測位時刻情報をＧＰＳ情報として制御部４１へ出力する。
【００２０】
無線通信部４５は基地局３との間で無線通信を行うための回路である。無線通信部４５は基地局３を介してセンタ装置２にアクセスし、ＧＰＳ受信部４４で生成されたＧＰＳ情報、及びＲＯＭ４１２に保存されている携帯端末装置４の端末装置ＩＤを送信することができる。
【００２１】
〈センタ装置の構成〉
センタ装置２は、図３に示すように、制御部２１、通信部２２、及び記憶部２３を備えている。
【００２２】
制御部２１はＣＰＵ２１１、ＲＯＭ２１２、及びＲＡＭ２１３を含み、このセンタ装置全体の制御などを行う。また、ＣＰＵ２１１は、ＲＯＭ２１２に記憶されたプログラムをＲＡＭ２１３にロードして実行することで、後述する種々の処理を実現する。
【００２３】
通信部２２はネットワーク１及び基地局３を介して携帯端末装置４と通信を行う。記憶部２３はＨＤＤ（ハードディスク装置）からなり、プローブ情報ＤＢ（データベース）２３１、地図情報ＤＢ２３２、及び渋滞情報ＤＢ２３３が設けられている。
【００２４】
プローブ情報ＤＢ２３１には、携帯端末装置４から送信されたＧＰＳ情報（ＧＰＳ位置情報、測位時刻情報）が端末装置ＩＤに対応付けられて記憶される。地図情報ＤＢ２３２は、道路及び各種施設などを含む地図データ、道路リンクのリンクＩＤなどが予め記憶されている。渋滞情報ＤＢ２３３には、道路リンク毎の渋滞情報が記憶される。道路リンクは道路に存在する交差点、Ｔ字路、Ｙ字路の間や任意の長さで定義されるものである。
【００２５】
〈渋滞情報提供システムの動作〉
以上の構成を有する渋滞情報提供システムの概略動作について、図４及び図５に示すフローチャートを用いて説明する。ここで、図４は携帯端末装置４の動作であり、図５はセンタ装置２の動作である。携帯端末装置４は、センタ装置２にアクセスして、地図情報ＤＢ２３２からダウンロードした現在位置付近の地図を表示部４３に表示しつつ図４に示す動作を実行する。なお、携帯端末装置４に記憶されている地図データを表示することもできる。
【００２６】
図４に示すように、携帯端末装置４では、ＧＰＳ受信部４４が一定時間（例えば１秒）毎に緯度・経度等からなるＧＰＳ位置情報を測位し、ＧＰＳ位置情報と測位時刻情報とからなるＧＰＳ情報を生成し、制御部４１のＣＰＵ４１１に渡す（ステップＳ１）。ＣＰＵ４１１はＧＰＳ情報を受け取り、ＲＯＭ４１２から端末装置ＩＤを読み出すことで、ＧＰＳ情報と端末装置ＩＤからなるプローブ情報を取得する（ステップＳ２）。次いでＣＰＵ４１１は取得したプローブ情報を無線通信部４５へ渡し、無線通信部４５がセンタ装置２へ送信する（ステップＳ３）。
【００２７】
センタ装置２では、制御部２１のＣＰＵ２１１が、携帯端末装置４から送信されたプローブ情報を、通信部２２を通して受信し、プローブ情報ＤＢ２３１に格納する。このとき、ＣＰＵ２１１は、地図情報ＤＢ２３２を参照することにより、ＧＰＳ位置情報を道路にマッチングさせるとともに、道路リンクＩＤを取得し、そのＩＤをプローブ情報に対応付ける。所定時間（例えば５分）分のプローブ情報をプローブ情報ＤＢ２３１に格納することで、１回のプローブ情報収集動作が終わる（ステップＳ１１）。
【００２８】
次にＣＰＵ２１１は、収集済みの所定時間分のプローブ情報をプローブ情報ＤＢ２３１から読み出し、道路リンク毎の渋滞情報を生成し、渋滞情報ＤＢ２３３に記憶する（ステップＳ１２）。このステップの詳細については後述する。
【００２９】
次にＣＰＵ２１１は、生成済みの所定時間分の道路リンク毎の渋滞情報を、通信部２２を通して携帯端末装置４へ送信することで、携帯端末装置４に提供する（ステップＳ１３）。携帯端末装置４は渋滞情報を受信し、表示部４３に表示する。
【００３０】
Ｓ１１〜Ｓ１３のタイミング関係の一例を図６に示す。図示のように、所定時間（例えば５分）分のプローブ情報の収集（Ｓ１１）が終了する毎に新たな渋滞情報を生成し（Ｓ１２）、それが終了する毎に新たな渋滞情報を提供する（Ｓ１３）。つまり、携帯端末装置４に提供される渋滞情報は所定時間毎に更新される。
【００３１】
《渋滞情報生成処理の詳細》
ステップＳ１２の詳細を図７に示す。
まずＣＰＵ２１１は、道路リンクを選択し（ステップＳ２１）、携帯端末装置を選択する（ステップＳ２２）。次に、選択した道路リンクにおける選択した携帯端末装置のＧＰＳ情報をプローブ情報ＤＢ２３１からＲＡＭ２１３に読み込む（ステップＳ２３）。
【００３２】
次いで、選択した道路リンクに他の携帯端末装置のＧＰＳ情報があるか否かを判定する（ステップＳ２４）。判定の結果、あった場合（Ｓ２４：YES）は、ＧＰＳ位置情報の読み込み対象である携帯端末装置を変更し、ステップＳ２３に戻り、上記処理を繰り返す。判定の結果、なかった場合（Ｓ２４：NO）は、全携帯端末装置に対して上記処理が終了しているので、ステップＳ２６へ進み、選択した道路リンクの集計処理を行う。集計処理の結果を渋滞情報ＤＢ２３３に保存する(ステップＳ２７)。
【００３３】
《道路リンクの集計処理》
道路リンクの集計処理の対象である道路リンクの一例を図８に示す。ここでは、４個の道路リンクを図示している。この図において、白丸（Ｎ１〜Ｎ５）は各道路リンクの端（ノード）を示す。即ち、ノードＮ１、Ｎ２、Ｎ３、Ｎ４、Ｎ５は、それぞれ第１リンクの始端、第１リンクの終端かつ第２リンクの始端、第２リンクの終端かつ第３リンクの始端、第３リンクの終端かつ第４リンクの始端、第４リンクの終端である。ここでは、ノードＮ１からノードＮ５の方向へ移動する携帯端末装置のＧＰＳ情報を用いて渋滞情報を生成する場合について説明する。
【００３４】
Ｐ１Ｓ、Ｐ１Ｅは、それぞれある１つの携帯端末装置から送信されたＧＰＳ位置情報を道路リンクにマッチングさせたマッチング位置情報を示す位置（マッチング位置）の内、第１リンクの始端に最も近いマッチング位置、第１リンクの終端に最も近いマッチング位置である。同様に、Ｐ２Ｓ、Ｐ２Ｅは、第２リンクの始端に最も近いマッチング位置、第２リンクの終端に最も近いマッチング位置、Ｐ３Ｓ、Ｐ３Ｅは、第３リンクの始端に最も近いマッチング位置、第３リンクの終端に最も近いマッチング位置である。第４リンクについては、マッチング位置はＰ４Ｓだけである。
【００３５】
道路リンク毎の渋滞情報を生成するため、まず各道路リンクの携帯端末装置４の移動速度を算出する。各道路リンクの携帯端末装置の移動速度は、各道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の道路リンク上の距離を測位時刻の差で割ることにより算出するので、図８に示したＰ１Ｓ、Ｐ２Ｓ、Ｐ３Ｓのような各道路リンクの始端に最も近いマッチング位置、Ｐ１Ｅ、Ｐ２Ｅ、Ｐ３Ｅのような終端に最も近いマッチング位置を特定する必要がある。
【００３６】
各道路リンクの始端に最も近いマッチング位置、終端に最も近いマッチング位置の特定は、各道路リンクに存在する全てのマッチング位置の中から単純に特定するのではなく、各道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の中から選択する。
【００３７】
例えば、ＧＰＳ位置情報の示す位置及びマッチング位置が図９に示されるような場合、第１リンクについては、存在する全てのマッチング位置の中から単純に特定すると、始端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｓは１番目のＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置、終端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｅは７番目のＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置となる。
【００３８】
しかし、４番目のＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置の次が６番目のＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置であり、５番目のＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置が抜けている。即ち時間的に不連続である。時間的に連続しているのは、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置迄、及びＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置迄である。なお、ＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置で連続性が途絶えたことは、ＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置が第１リンク外（ここでは第２リンク）に位置することを検出することで判定できる。
【００３９】
そこで、本実施形態では、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置迄については、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置を第１リンクの始端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｓとし、ＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置を第１リンクの終端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｅとする。また、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置については、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置を第１リンクの始端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｓとし、ＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置を第１リンクの終端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｅとする。
【００４０】
そして、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置とＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置との間の距離を、ＧＰＳ位置情報(1)の測位時刻とＧＰＳ位置情報(4)の測位時刻との差で割ることにより移動速度を算出し、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置とＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置との間の距離を、ＧＰＳ位置情報(6)の測位時刻とＧＰＳ位置情報(7)の測位時刻との差で割ることにより移動速度を算出する。このため、一台の携帯端末装置に対し、二つの移動速度が得られる。この二つの移動速度については、単純に平均した値を第１リンクの移動速度としてもよいし、マッチング位置の数に応じた重み付け（ここでは４：２）を行ってもよい。
【００４１】
なお、図９において、もしもＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置がＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置と第１リンクの終端との間に存在する場合は、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置迄が全て時間的に連続して第１リンク内に存在するので、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置が第１リンクの始端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｓとなり、ＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置が第１リンクの終端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｅとなる。
【００４２】
第２リンクの場合は、ＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置の次がＧＰＳ位置情報(8)に対応するマッチング位置であり、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置、ＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置が抜けている。即ち時間的に不連続である。時間的に連続しているのは、ＧＰＳ位置情報(8)対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(10)に対応するマッチング位置迄である。なお、ＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置で連続性が途絶えたことは、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置が第２リンク外（ここでは第１リンク）に位置することを検出することで判定できる。
【００４３】
ＧＰＳ位置情報(8)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(10)に対応するマッチング位置の内、第２リンクの始端に最も近いマッチング位置Ｐ２ＳはＧＰＳ位置情報(8)に対応するマッチング位置であり、第２リンクの終端に最も近いマッチング位置Ｐ２ＥはＧＰＳ位置情報(9)に対応するマッチング位置である。
【００４４】
従って、第２リンクでは、ＧＰＳ位置情報(8)に対応するマッチング位置とＧＰＳ位置情報(9)に対応するマッチング位置との間の距離を、ＧＰＳ位置情報(8)の測位時刻とＧＰＳ位置情報(9)の測位時刻との差で割ることにより移動速度を算出する。なお、ＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置については、第２リンク内に時間的に連続するマッチング位置が存在しないことから、距離及び測位時刻の差を求めることができないため、移動速度の算出には使用しない。
【００４５】
同様に、図８のＰ３ＳとＰ３Ｅを特定し、それらの間の距離を測位時刻の差で割ることにより第３リンクにおける移動速度を算出することができる。第４リンクについては、マッチング位置が一つしかないため、移動速度を算出することはできない。
【００４６】
所定時間（例えば５分）の間に図８に示す道路リンクを図の左方向へ移動した全ての携帯端末装置の移動速度を道路リンク毎に算出する。次いで、図１０に示す道路種別毎の平均時速と渋滞度との関係を示すテーブルを参照することで、第１リンク〜第４リンクの渋滞度を道路リンク毎に取得する。
【００４７】
なお、以上の実施形態では、道路リンク毎に渋滞情報を生成しているが、複数の道路リンク毎に渋滞情報を生成することもできる。この場合、各道路リンクにおける携帯端末装置の移動速度の平均値を基に複数の道路リンク全体としての渋滞度を取得する。複数の道路リンクについては、道路種別、測位間隔、道路の幅（車線数）、過去の交通状況や渋滞状況により設定することができる。また、各集計処理単位リンクが一定長となるように設定することもできるし、集計処理単位リンク毎に長さが異なるように設定することもできる。また、ＶＩＣＳ（登録商標）リンクを用いることもできる。
【００４８】
以上詳細に説明したように、本実施形態の渋滞情報生成装置によれば、道路リンクでの携帯端末装置の移動速度を算出する際、対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、携帯端末装置の移動速度を算出するので、一旦対象道路リンク外に出た後にその対象道路リンクに戻った場合の位置を処理（正否判断等）する場合と比べると、処理が簡単になるため、移動速度の算出に要する時間が短縮される。その結果、渋滞情報の生成に要する時間が短縮される。また、不規則な動きを示すＧＰＳ位置情報が除外されることから、道路リンク毎の正確なＧＰＳ位置情報に基づく渋滞情報を生成することができる。
【００４９】
なお、以上の実施形態では、ＧＰＳ位置情報を道路リンクにマッチングさせ、道路リンクＩＤに対応付ける処理をセンタ装置２で実行しているが、携帯端末装置４で実行することもできる。
【００５０】
さらに、以上の実施形態では、携帯端末装置４がセンタ装置２にアクセスして、地図情報ＤＢ２３２からダウンロードした現在位置付近の地図を表示部４３に表示しつつ図４に示す動作を実行するものとしたが、携帯端末装置４はプローブ情報を送信すればよく、現在位置付近の地図を表示することは必須ではない。
【符号の説明】
【００５１】
２…センタ装置、４…携帯端末装置、２１…制御部、２２…通信部、２３…記憶部、２３１…プローブ情報ＤＢ、２３３…渋滞情報ＤＢ。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、道路リンクの速度情報を生成する装置、方法及びプログラム、並びに渋滞情報を生成する装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
自動車のナビゲーションシステムにより、現在地から目的地へ最短時間で到達できるルートを算出するには、地図情報だけでなく、道路の渋滞情報が必要である。渋滞情報の生成には、道路上を走行する自動車の動きを監視する必要がある。
【０００３】
自動車の動きを監視して渋滞情報を生成するシステムとして、ＶＩＣＳ（Vehicle Information and Communication System：登録商標）がある（特許文献１）。ＶＩＣＳ（登録商標）は、道路上に設置されたセンサにより、走行している自動車を検出し、その検出結果をＶＩＣＳ（登録商標）センタが収集して渋滞情報を作成し、カーナビゲーション装置等の端末へ提供するシステムである。しかし、ＶＩＣＳ（登録商標）ではセンサが設置された主要な道路のみの渋滞情報しか作成できず、情報提供される対象道路の範囲が狭いという問題がある。
【０００４】
また、自動車の動きを監視して渋滞情報を生成する別のシステムとして、ＧＰＳ（Global Positioning System）受信機を搭載したプローブカーから収集したプローブ情報（位置、時刻等の情報）を用い、一定時間毎に各道路リンクの速度情報、即ち各道路リンクを走行するプローブカーの平均速度を求め、平均速度に応じて、「渋滞」、「混雑」、「渋滞無し」などの渋滞度を決定するシステムがある（特許文献２）。このプローブカーシステムでは、ＶＩＣＳ（登録商標）のように情報収集範囲が限定されず、極めて広い範囲からリアルタイムでデータを集めることができるという利点がある。
【０００５】
しかし、プローブカーシステムでは、自動車とセンタとの間で定時的に通信する必要があるため、プローブカーとしては、タクシーやバス或いはトラックのような特定業種の車両が用いられる。そのため、一般車両の交通量は多いが、タクシー等の特定業種の車両の交通量が少なく、例えばバス路線から外れているような道路については、プローブ情報の収集が難しいという問題がある。
【０００６】
このような問題を解決するため、道路を走行中の自動車に乗っているユーザが携帯する携帯端末装置で測位されるＧＰＳ位置情報、測位時刻情報を収集し、その履歴に基づいて渋滞情報を生成するシステムが提案されている（特許文献３）。
【０００７】
しかしながら、プローブカーで測位されるＧＰＳ位置情報と比べると、携帯端末装置で測位されるＧＰＳ位置情報は誤差が大きいため、例えば図１１に示すように、ＧＰＳ位置情報を道路リンクにマッチングさせたマッチング位置情報の示す位置（マッチング位置）が、ある道路リンクから出て前の道路リンクや次の道路リンクに入った後にある道路リンクに戻ることがある。なお、ＧＰＳ位置情報を番号で表すが、この番号はＧＰＳ位置情報を測位する際の測位時刻情報により特定することができるものであり、測位した時刻により順番を決めたことを示している。
【０００８】
図１１の場合、ある道路リンクに戻った位置を示すマッチング位置情報（図では６番目のＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置情報）を適切に処理（正否判断等）して道路リンク毎の正確なマッチング位置情報を収集するとともに、迅速に渋滞情報を生成することが望ましいが、特許文献３に記載されたシステムではこのことは考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００９】
【特許文献１】特開２００５−１４９３５８号公報
【特許文献２】特開２００８−２３４１６２号公報
【特許文献３】特開２００８−２９９３７１号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１０】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、道路を移動中の携帯端末装置で測位されるＧＰＳ位置情報、測位時刻情報に基づいて、道路リンクの速度情報を迅速かつ正確に生成できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明の速度情報生成装置は、道路を移動中の携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報が道路リンクにマッチングされたマッチング位置情報を道路リンクＩＤに対応付けて前記ＧＰＳ位置情報に対応する測位時刻情報とともに記憶装置に格納するＧＰＳ情報収集手段と、前記記憶装置に格納された速度情報を生成する対象となる対象道路リンクのマッチング位置情報及び測位時刻情報を用いて、該対象道路リンクでの前記携帯端末装置の移動速度を求めるリンク速度算出手段とを有するとともに、該リンク速度算出手段は、前記対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、前記携帯端末装置の移動速度を算出する速度情報生成装置である。
本発明の速度情報生成方法は、道路を移動中の携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報が道路リンクにマッチングされたマッチング位置情報を道路リンクＩＤに対応付けて前記ＧＰＳ位置情報に対応する測位時刻情報とともに記憶装置に格納するＧＰＳ情報収集工程と、前記記憶装置に格納された速度情報を生成する対象となる対象道路リンクのマッチング位置情報及び測位時刻情報を用いて、該対象道路リンクでの前記携帯端末装置の移動速度を求めるリンク速度算出工程とを有するとともに、該リンク速度算出工程では、前記対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、前記携帯端末装置の移動速度を算出する速度情報生成方法である。
本発明のプログラムは、コンピュータを本発明の速度情報生成装置の各手段として機能させるためのプログラムである。
【００１２】
［作用］
本発明によれば、道路を移動中の携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報を道路リンクにマッチングさせ、道路リンクＩＤに対応付けて測位時刻情報とともに記憶装置に格納し、対象道路リンクでの前記携帯端末装置の移動速度を求めるときに、前記対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて速度を算出する。
【発明の効果】
【００１３】
本発明によれば、道路を移動中の携帯端末装置で測位されるＧＰＳ位置情報、測位時刻情報に基づいて、道路リンクの速度情報を迅速かつ正確に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】本発明の実施形態の渋滞情報生成装置を含む渋滞情報提供システムを示す図である。
【図２】図１における携帯端末装置のブロック図である。
【図３】センタ装置のブロック図である。
【図４】図１における携帯端末装置の動作を示すフローチャートである。
【図５】図１におけるセンタ装置の概略動作を示すフローチャートである。
【図６】図５に示す各ステップのタイミング関係の一例を示す図である。
【図７】図５における渋滞情報の生成処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図８】図７における道路リンク集計処理の対象である道路リンクの一例を示す図である。
【図９】道路リンクにおけるＧＰＳ情報の示す位置及びマッチング位置を示す図である。
【図１０】図７における道路リンク集計処理に用いる道路種別毎の平均速度と渋滞度との関係を示す図である。
【図１１】携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報の示す位置及びマッチング位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
〈渋滞情報提供システムの構成〉
図１は、本発明の実施形態の渋滞情報生成装置を含む渋滞情報提供システムを示す図である。このシステムは、インターネットなどのネットワーク１に接続されるセンタ装置２と、基地局３経由でネットワーク１に接続される携帯端末装置４からなる。携帯端末装置４は携帯電話機、ＰＤＡ（Personal Digital Assistant）、ＰＮＤ（Personal Navigation Device）などである。携帯端末装置４とセンタ装置２とは、基地局３及びネットワーク１を介して通信可能である。センタ装置２が本発明の渋滞情報生成装置に対応する。
【００１６】
〈携帯端末装置の構成〉
図２は携帯端末装置４のブロック図である。この携帯端末装置４は制御部４１、操作部４２、表示部４３、ＧＰＳ受信部４４、及び無線通信部４５を備えている。
【００１７】
制御部４１は携帯端末装置４の各部を制御するためのコントローラであり、ＣＰＵ（Central Processing Unit）４１１と、ＲＯＭ（Read Only Memory）４１２と、ＲＡＭ（Random Access Memory）４１３とを備えている。ＣＰＵ４１１はＲＯＭ４１２に記憶されたプログラムをＲＡＭ４１３にロードして実行することで、後述する種々の処理を実現する。
【００１８】
操作部４２は、この携帯端末装置４をユーザが操作するための各種ボタンからなる。表示部４３は、この携帯端末装置４の動作状態や、操作部４２からユーザが入力した情報などを表示するための液晶表示装置などからなる。
【００１９】
ＧＰＳ受信部４４は一定時間（例えば１秒）毎にＧＰＳ衛星から送信される電波を受信し、現在位置を測定（測位）する。そして、測位情報であるＧＰＳ位置情報、及び測位時刻情報をＧＰＳ情報として制御部４１へ出力する。
【００２０】
無線通信部４５は基地局３との間で無線通信を行うための回路である。無線通信部４５は基地局３を介してセンタ装置２にアクセスし、ＧＰＳ受信部４４で生成されたＧＰＳ情報、及びＲＯＭ４１２に保存されている携帯端末装置４の端末装置ＩＤを送信することができる。
【００２１】
〈センタ装置の構成〉
センタ装置２は、図３に示すように、制御部２１、通信部２２、及び記憶部２３を備えている。
【００２２】
制御部２１はＣＰＵ２１１、ＲＯＭ２１２、及びＲＡＭ２１３を含み、このセンタ装置全体の制御などを行う。また、ＣＰＵ２１１は、ＲＯＭ２１２に記憶されたプログラムをＲＡＭ２１３にロードして実行することで、後述する種々の処理を実現する。
【００２３】
通信部２２はネットワーク１及び基地局３を介して携帯端末装置４と通信を行う。記憶部２３はＨＤＤ（ハードディスク装置）からなり、プローブ情報ＤＢ（データベース）２３１、地図情報ＤＢ２３２、及び渋滞情報ＤＢ２３３が設けられている。
【００２４】
プローブ情報ＤＢ２３１には、携帯端末装置４から送信されたＧＰＳ情報（ＧＰＳ位置情報、測位時刻情報）が端末装置ＩＤに対応付けられて記憶される。地図情報ＤＢ２３２は、道路及び各種施設などを含む地図データ、道路リンクのリンクＩＤなどが予め記憶されている。渋滞情報ＤＢ２３３には、道路リンク毎の渋滞情報が記憶される。道路リンクは道路に存在する交差点、Ｔ字路、Ｙ字路の間や任意の長さで定義されるものである。
【００２５】
〈渋滞情報提供システムの動作〉
以上の構成を有する渋滞情報提供システムの概略動作について、図４及び図５に示すフローチャートを用いて説明する。ここで、図４は携帯端末装置４の動作であり、図５はセンタ装置２の動作である。携帯端末装置４は、センタ装置２にアクセスして、地図情報ＤＢ２３２からダウンロードした現在位置付近の地図を表示部４３に表示しつつ図４に示す動作を実行する。なお、携帯端末装置４に記憶されている地図データを表示することもできる。
【００２６】
図４に示すように、携帯端末装置４では、ＧＰＳ受信部４４が一定時間（例えば１秒）毎に緯度・経度等からなるＧＰＳ位置情報を測位し、ＧＰＳ位置情報と測位時刻情報とからなるＧＰＳ情報を生成し、制御部４１のＣＰＵ４１１に渡す（ステップＳ１）。ＣＰＵ４１１はＧＰＳ情報を受け取り、ＲＯＭ４１２から端末装置ＩＤを読み出すことで、ＧＰＳ情報と端末装置ＩＤからなるプローブ情報を取得する（ステップＳ２）。次いでＣＰＵ４１１は取得したプローブ情報を無線通信部４５へ渡し、無線通信部４５がセンタ装置２へ送信する（ステップＳ３）。
【００２７】
センタ装置２では、制御部２１のＣＰＵ２１１が、携帯端末装置４から送信されたプローブ情報を、通信部２２を通して受信し、プローブ情報ＤＢ２３１に格納する。このとき、ＣＰＵ２１１は、地図情報ＤＢ２３２を参照することにより、ＧＰＳ位置情報を道路にマッチングさせるとともに、道路リンクＩＤを取得し、そのＩＤをプローブ情報に対応付ける。所定時間（例えば５分）分のプローブ情報をプローブ情報ＤＢ２３１に格納することで、１回のプローブ情報収集動作が終わる（ステップＳ１１）。
【００２８】
次にＣＰＵ２１１は、収集済みの所定時間分のプローブ情報をプローブ情報ＤＢ２３１から読み出し、道路リンク毎の渋滞情報を生成し、渋滞情報ＤＢ２３３に記憶する（ステップＳ１２）。このステップの詳細については後述する。
【００２９】
次にＣＰＵ２１１は、生成済みの所定時間分の道路リンク毎の渋滞情報を、通信部２２を通して携帯端末装置４へ送信することで、携帯端末装置４に提供する（ステップＳ１３）。携帯端末装置４は渋滞情報を受信し、表示部４３に表示する。
【００３０】
Ｓ１１〜Ｓ１３のタイミング関係の一例を図６に示す。図示のように、所定時間（例えば５分）分のプローブ情報の収集（Ｓ１１）が終了する毎に新たな渋滞情報を生成し（Ｓ１２）、それが終了する毎に新たな渋滞情報を提供する（Ｓ１３）。つまり、携帯端末装置４に提供される渋滞情報は所定時間毎に更新される。
【００３１】
《渋滞情報生成処理の詳細》
ステップＳ１２の詳細を図７に示す。
まずＣＰＵ２１１は、道路リンクを選択し（ステップＳ２１）、携帯端末装置を選択する（ステップＳ２２）。次に、選択した道路リンクにおける選択した携帯端末装置のＧＰＳ情報をプローブ情報ＤＢ２３１からＲＡＭ２１３に読み込む（ステップＳ２３）。
【００３２】
次いで、選択した道路リンクに他の携帯端末装置のＧＰＳ情報があるか否かを判定する（ステップＳ２４）。判定の結果、あった場合（Ｓ２４：YES）は、ＧＰＳ位置情報の読み込み対象である携帯端末装置を変更し、ステップＳ２３に戻り、上記処理を繰り返す。判定の結果、なかった場合（Ｓ２４：NO）は、全携帯端末装置に対して上記処理が終了しているので、ステップＳ２６へ進み、選択した道路リンクの集計処理を行う。集計処理の結果を渋滞情報ＤＢ２３３に保存する(ステップＳ２７)。
【００３３】
《道路リンクの集計処理》
道路リンクの集計処理の対象である道路リンクの一例を図８に示す。ここでは、４個の道路リンクを図示している。この図において、白丸（Ｎ１〜Ｎ５）は各道路リンクの端（ノード）を示す。即ち、ノードＮ１、Ｎ２、Ｎ３、Ｎ４、Ｎ５は、それぞれ第１リンクの始端、第１リンクの終端かつ第２リンクの始端、第２リンクの終端かつ第３リンクの始端、第３リンクの終端かつ第４リンクの始端、第４リンクの終端である。ここでは、ノードＮ１からノードＮ５の方向へ移動する携帯端末装置のＧＰＳ情報を用いて渋滞情報を生成する場合について説明する。
【００３４】
Ｐ１Ｓ、Ｐ１Ｅは、それぞれある１つの携帯端末装置から送信されたＧＰＳ位置情報を道路リンクにマッチングさせたマッチング位置情報を示す位置（マッチング位置）の内、第１リンクの始端に最も近いマッチング位置、第１リンクの終端に最も近いマッチング位置である。同様に、Ｐ２Ｓ、Ｐ２Ｅは、第２リンクの始端に最も近いマッチング位置、第２リンクの終端に最も近いマッチング位置、Ｐ３Ｓ、Ｐ３Ｅは、第３リンクの始端に最も近いマッチング位置、第３リンクの終端に最も近いマッチング位置である。第４リンクについては、マッチング位置はＰ４Ｓだけである。
【００３５】
道路リンク毎の渋滞情報を生成するため、まず各道路リンクの携帯端末装置４の移動速度を算出する。各道路リンクの携帯端末装置の移動速度は、各道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の道路リンク上の距離を測位時刻の差で割ることにより算出するので、図８に示したＰ１Ｓ、Ｐ２Ｓ、Ｐ３Ｓのような各道路リンクの始端に最も近いマッチング位置、Ｐ１Ｅ、Ｐ２Ｅ、Ｐ３Ｅのような終端に最も近いマッチング位置を特定する必要がある。
【００３６】
各道路リンクの始端に最も近いマッチング位置、終端に最も近いマッチング位置の特定は、各道路リンクに存在する全てのマッチング位置の中から単純に特定するのではなく、各道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の中から選択する。
【００３７】
例えば、ＧＰＳ位置情報の示す位置及びマッチング位置が図９に示されるような場合、第１リンクについては、存在する全てのマッチング位置の中から単純に特定すると、始端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｓは１番目のＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置、終端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｅは７番目のＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置となる。
【００３８】
しかし、４番目のＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置の次が６番目のＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置であり、５番目のＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置が抜けている。即ち時間的に不連続である。時間的に連続しているのは、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置迄、及びＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置迄である。なお、ＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置で連続性が途絶えたことは、ＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置が第１リンク外（ここでは第２リンク）に位置することを検出することで判定できる。
【００３９】
そこで、本実施形態では、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置迄については、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置を第１リンクの始端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｓとし、ＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置を第１リンクの終端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｅとする。また、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置については、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置を第１リンクの始端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｓとし、ＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置を第１リンクの終端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｅとする。
【００４０】
そして、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置とＧＰＳ位置情報(4)に対応するマッチング位置との間の距離を、ＧＰＳ位置情報(1)の測位時刻とＧＰＳ位置情報(4)の測位時刻との差で割ることにより移動速度を算出し、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置とＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置との間の距離を、ＧＰＳ位置情報(6)の測位時刻とＧＰＳ位置情報(7)の測位時刻との差で割ることにより移動速度を算出する。このため、一台の携帯端末装置に対し、二つの移動速度が得られる。この二つの移動速度については、単純に平均した値を第１リンクの移動速度としてもよいし、マッチング位置の数に応じた重み付け（ここでは４：２）を行ってもよい。
【００４１】
なお、図９において、もしもＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置がＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置と第１リンクの終端との間に存在する場合は、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置迄が全て時間的に連続して第１リンク内に存在するので、ＧＰＳ位置情報(1)に対応するマッチング位置が第１リンクの始端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｓとなり、ＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置が第１リンクの終端に最も近いマッチング位置Ｐ１Ｅとなる。
【００４２】
第２リンクの場合は、ＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置の次がＧＰＳ位置情報(8)に対応するマッチング位置であり、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置、ＧＰＳ位置情報(7)に対応するマッチング位置が抜けている。即ち時間的に不連続である。時間的に連続しているのは、ＧＰＳ位置情報(8)対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(10)に対応するマッチング位置迄である。なお、ＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置で連続性が途絶えたことは、ＧＰＳ位置情報(6)に対応するマッチング位置が第２リンク外（ここでは第１リンク）に位置することを検出することで判定できる。
【００４３】
ＧＰＳ位置情報(8)に対応するマッチング位置からＧＰＳ位置情報(10)に対応するマッチング位置の内、第２リンクの始端に最も近いマッチング位置Ｐ２ＳはＧＰＳ位置情報(8)に対応するマッチング位置であり、第２リンクの終端に最も近いマッチング位置Ｐ２ＥはＧＰＳ位置情報(9)に対応するマッチング位置である。
【００４４】
従って、第２リンクでは、ＧＰＳ位置情報(8)に対応するマッチング位置とＧＰＳ位置情報(9)に対応するマッチング位置との間の距離を、ＧＰＳ位置情報(8)の測位時刻とＧＰＳ位置情報(9)の測位時刻との差で割ることにより移動速度を算出する。なお、ＧＰＳ位置情報(5)に対応するマッチング位置については、第２リンク内に時間的に連続するマッチング位置が存在しないことから、距離及び測位時刻の差を求めることができないため、移動速度の算出には使用しない。
【００４５】
同様に、図８のＰ３ＳとＰ３Ｅを特定し、それらの間の距離を測位時刻の差で割ることにより第３リンクにおける移動速度を算出することができる。第４リンクについては、マッチング位置が一つしかないため、移動速度を算出することはできない。
【００４６】
所定時間（例えば５分）の間に図８に示す道路リンクを図の左方向へ移動した全ての携帯端末装置の移動速度を道路リンク毎に算出する。次いで、図１０に示す道路種別毎の平均時速と渋滞度との関係を示すテーブルを参照することで、第１リンク〜第４リンクの渋滞度を道路リンク毎に取得する。
【００４７】
なお、以上の実施形態では、道路リンク毎に渋滞情報を生成しているが、複数の道路リンク毎に渋滞情報を生成することもできる。この場合、各道路リンクにおける携帯端末装置の移動速度の平均値を基に複数の道路リンク全体としての渋滞度を取得する。複数の道路リンクについては、道路種別、測位間隔、道路の幅（車線数）、過去の交通状況や渋滞状況により設定することができる。また、各集計処理単位リンクが一定長となるように設定することもできるし、集計処理単位リンク毎に長さが異なるように設定することもできる。また、ＶＩＣＳ（登録商標）リンクを用いることもできる。
【００４８】
以上詳細に説明したように、本実施形態の渋滞情報生成装置によれば、道路リンクでの携帯端末装置の移動速度を算出する際、対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、携帯端末装置の移動速度を算出するので、一旦対象道路リンク外に出た後にその対象道路リンクに戻った場合の位置を処理（正否判断等）する場合と比べると、処理が簡単になるため、移動速度の算出に要する時間が短縮される。その結果、渋滞情報の生成に要する時間が短縮される。また、不規則な動きを示すＧＰＳ位置情報が除外されることから、道路リンク毎の正確なＧＰＳ位置情報に基づく渋滞情報を生成することができる。
【００４９】
なお、以上の実施形態では、ＧＰＳ位置情報を道路リンクにマッチングさせ、道路リンクＩＤに対応付ける処理をセンタ装置２で実行しているが、携帯端末装置４で実行することもできる。
【００５０】
さらに、以上の実施形態では、携帯端末装置４がセンタ装置２にアクセスして、地図情報ＤＢ２３２からダウンロードした現在位置付近の地図を表示部４３に表示しつつ図４に示す動作を実行するものとしたが、携帯端末装置４はプローブ情報を送信すればよく、現在位置付近の地図を表示することは必須ではない。
【符号の説明】
【００５１】
２…センタ装置、４…携帯端末装置、２１…制御部、２２…通信部、２３…記憶部、２３１…プローブ情報ＤＢ、２３３…渋滞情報ＤＢ。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
道路を移動中の携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報が道路リンクにマッチングされたマッチング位置情報を道路リンクＩＤに対応付けて前記ＧＰＳ位置情報に対応する測位時刻情報とともに記憶装置に格納するＧＰＳ情報収集手段と、
前記記憶装置に格納された速度情報を生成する対象となる対象道路リンクのマッチング位置情報及び測位時刻情報を用いて、該対象道路リンクでの前記携帯端末装置の移動速度を求めるリンク速度算出手段とを有するとともに、
該リンク速度算出手段は、前記対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、前記携帯端末装置の移動速度を算出する速度情報生成装置。
【請求項２】
請求項１に記載された速度情報生成装置において、
前記リンク速度算出手段は、一つの携帯端末装置に対して、一つの対象道路リンクで複数の移動速度が得られた場合に、それらの得られた移動速度を用いて、該対象道路リンクでの移動速度を算出する速度情報生成装置。
【請求項３】
請求項１又は２に記載された速度情報生成装置において、
前記リンク速度算出手段は、一つの対象道路リンクで複数の携帯端末装置の移動速度が得られた場合、それらの得られた移動速度の平均値を該対象道路リンクでの移動速度とする速度情報生成装置。
【請求項４】
請求項１〜３のいずれかに記載された速度情報生成装置で算出された移動速度を基に対象道路リンクの渋滞情報を生成する渋滞情報生成装置。
【請求項５】
道路を移動中の携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報が道路リンクにマッチングされたマッチング位置情報を道路リンクＩＤに対応付けて前記ＧＰＳ位置情報に対応する測位時刻情報とともに記憶装置に格納するＧＰＳ情報収集工程と、
前記記憶装置に格納された速度情報を生成する対象となる対象道路リンクのマッチング位置情報及び測位時刻情報を用いて、該対象道路リンクでの前記携帯端末装置の移動速度を求めるリンク速度算出工程とを有するとともに、
該リンク速度算出工程では、前記対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、前記携帯端末装置の移動速度を算出する速度情報生成方法。
【請求項６】
コンピュータを、請求項１〜３のいずれかに記載された速度情報生成装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項１】
道路を移動中の携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報が道路リンクにマッチングされたマッチング位置情報を道路リンクＩＤに対応付けて前記ＧＰＳ位置情報に対応する測位時刻情報とともに記憶装置に格納するＧＰＳ情報収集手段と、
前記記憶装置に格納された速度情報を生成する対象となる対象道路リンクのマッチング位置情報及び測位時刻情報を用いて、該対象道路リンクでの前記携帯端末装置の移動速度を求めるリンク速度算出手段とを有するとともに、
該リンク速度算出手段は、前記対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、前記携帯端末装置の移動速度を算出する速度情報生成装置。
【請求項２】
請求項１に記載された速度情報生成装置において、
前記リンク速度算出手段は、一つの携帯端末装置に対して、一つの対象道路リンクで複数の移動速度が得られた場合に、それらの得られた移動速度を用いて、該対象道路リンクでの移動速度を算出する速度情報生成装置。
【請求項３】
請求項１又は２に記載された速度情報生成装置において、
前記リンク速度算出手段は、一つの対象道路リンクで複数の携帯端末装置の移動速度が得られた場合、それらの得られた移動速度の平均値を該対象道路リンクでの移動速度とする速度情報生成装置。
【請求項４】
請求項１〜３のいずれかに記載された速度情報生成装置で算出された移動速度を基に対象道路リンクの渋滞情報を生成する渋滞情報生成装置。
【請求項５】
道路を移動中の携帯端末装置で測位されたＧＰＳ位置情報が道路リンクにマッチングされたマッチング位置情報を道路リンクＩＤに対応付けて前記ＧＰＳ位置情報に対応する測位時刻情報とともに記憶装置に格納するＧＰＳ情報収集工程と、
前記記憶装置に格納された速度情報を生成する対象となる対象道路リンクのマッチング位置情報及び測位時刻情報を用いて、該対象道路リンクでの前記携帯端末装置の移動速度を求めるリンク速度算出工程とを有するとともに、
該リンク速度算出工程では、前記対象道路リンク内に時間的に連続して存在するマッチング位置の内、前記対象道路リンクの始端に最も近いマッチング位置と終端に最も近いマッチング位置との間の距離及び測位時刻の差に基づいて、前記携帯端末装置の移動速度を算出する速度情報生成方法。
【請求項６】
コンピュータを、請求項１〜３のいずれかに記載された速度情報生成装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【公開番号】特開２０１２−１３７８３５（Ｐ２０１２−１３７８３５Ａ）
【公開日】平成２４年７月１９日（２０１２．７．１９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−２８８０８８（Ｐ２０１０−２８８０８８）
【出願日】平成２２年１２月２４日（２０１０．１２．２４）
【出願人】（５００５７８２１６）株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年７月１９日（２０１２．７．１９）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１２月２４日（２０１０．１２．２４）
【出願人】（５００５７８２１６）株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Ｆターム（参考）】
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