説明

造血幹細胞の培養方法

【課題】造血幹細胞移植のための造血幹細胞を製造することのできる造血幹細胞の培養方法を提供する。
【解決手段】造血幹細胞の培養方法は、造血幹細胞をSFRP-2タンパク質存在下で培養する工程を含む。そのために、培地にSFRP-2タンパク質を添加してもよく、造血幹細胞にSFRP-2タンパク質発現ベクターを導入してもよい。上記いずれかの培養方法において、SFRP-2タンパク質の培地中の濃度が、0.1μg/mL以上10μg/mL以下であってもよい。得られた細胞を造血幹細胞移植に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造血幹細胞の培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
造血幹細胞とは、白血球(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球を含む)、赤血球、血小板など、あらゆる血球系細胞に分化可能な幹細胞のことである。造血幹細胞は、ヒト成体では、主に、造血器官である骨髄に存在し、自己複製と各血球細胞への分化という2つの機能を有することによって、生涯、血球細胞を提供する。造血幹細胞はまた、臍帯血にも存在し、化学療法後の白血球が回復する時期やG-CSFを投与した場合には、末梢血にも流出する。
【0003】
造血能が低下した患者に対し、造血幹細胞を移植し、その患者の造血能を回復させる治療法があり、造血幹細胞移植と呼ばれている。造血幹細胞移植の主な目的は2つあり、まず、再生不良性貧血など、造血機能の低下を認める疾患の患者に対し、造血幹細胞移植によって造血機能を回復させるために行われる。あるいは、白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等の血液悪性疾患や、一部の固形癌を有する患者に対し、あらかじめ、多量の抗がん剤や放射線を投与し、腫瘍細胞を死滅させた後で、抗がん剤や放射線によって打撃を受けた造血幹細胞を回復させるために行われることもある。
【0004】
造血幹細胞は、上記のように、骨髄、臍帯血、末梢血に存在するため、造血幹細胞移植の移植片として、末梢血から単離した造血幹細胞、骨髄、臍帯血が用いられているが、それぞれ長所・短所があり、移植の目的によって使い分けられている。これらの造血幹細胞を用いた移植において、あらかじめ、造血幹細胞を効率よく増殖させたり、造血幹細胞の移植細胞の生着率を向上させ、造血能と長期骨髄再建能を向上させたりすることによって、造血幹細胞移植による治療成績が高まることが期待されている。その一例として、造血幹細胞の培養液にTIMP−3を添加することによって、造血幹細胞の生理学的性質を改善する方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2007/148609
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、造血幹細胞移植のための造血幹細胞を製造することのできる造血幹細胞の培養方法を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる造血幹細胞の培養方法は、前記造血幹細胞をSFRP-2タンパク質存在下で培養する工程を含む。そのために、培地にSFRP-2タンパク質を添加してもよく、前記造血幹細胞にSFRP-2タンパク質発現ベクターを導入してもよい。上記いずれかの培養方法において、前記SFRP-2タンパク質の培地中の濃度が、0.1μg/mL以上10μg/mL以下であってもよい。
【0008】
上記いずれかの培養方法は、骨髄細胞または血液細胞から、CD34陰性、Sca-1陽性、c-Kit陽性、lineage抗原陰性の造血幹細胞を単離する工程を含んでもよい。前記lineage抗原が、CD5, CD45R (B220), CD11b, Gr-1 (Ly-6G/C), 7-4, Ter-119の抗原セットであってもよい。
【0009】
本発明にかかる造血幹細胞の機能向上剤は、SFRP-2タンパク質、またはSFRP-2タンパク質を発現する発現ベクターを含有する。
【0010】
本発明にかかる造血幹細胞の培養キットは、SFRP-2タンパク質、またはSFRP-2タンパク質を発現する発現ベクターを含有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、造血幹細胞移植のための造血幹細胞を製造することのできる造血幹細胞の培養方法を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例において、造血幹細胞のin vitroでの増殖を調べた結果を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施例において、造血幹細胞のコロニーアッセイの結果を示すグラフである。(*: p<0.05)
【図3】本発明の一実施例において、CD34-KSL細胞を移植されたマウスの末梢血におけるドナー由来の細胞の割合を調べた結果を示すグラフである。(*: p<0.05)
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0014】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0015】
==造血幹細胞の培養==
まず、本発明の培養方法に用いる造血幹細胞を準備する。
造血幹細胞が由来する動物種は特に限定されないが、脊椎動物が好ましく、哺乳動物がより好ましく、ヒトが最も好ましい。造血幹細胞を取得する組織は、造血幹細胞が存在する組織であれば特に限定されないが、造血組織であることが好ましく、ヒト成体の場合、骨髄、臍帯血、または末梢血であることが好ましい。それらの組織が細胞塊の時は、プロテアーゼやコラゼナーゼ等で処理することによって解離し、個々に分離した細胞を、そのまま培養に用いても良い。また、血液のように細胞が分離している組織であれば、細胞の分離処理無しにそのまま培養に用いても良い。または、分離した細胞から造血幹細胞を単離して、造血幹細胞だけを用いても良い。
【0016】
造血幹細胞を単離するためのマーカーも、当業者の定法に従って選択すればよい。例えばマウスの場合、CD34陰性、Sca-1陽性、c-Kit陽性、lineage抗原陰性の特性によって、長期骨髄再建能を有する造血幹細胞を高頻度に含む細胞集団が得られる。また、CD34陽性、Sca-1陽性、c-Kit陽性、lineage抗原陰性の特性によって、短期骨髄再建能を有する造血幹細胞を高頻度に含む細胞集団が得られる。ヒトの場合、CD34陽性、CD38陰性、lineage抗原陰性の特性によって、造血幹細胞を高頻度に含む細胞集団が得られる。得られる細胞集団内で、造血幹細胞の頻度は低くても良いが、高い方が好ましい。ここで、lineage抗原とは、造血幹細胞以外の血液細胞のマーカー抗原であって、例えば、CD5, CD45R (B220), CD11b, Gr-1 (Ly-6G/C), 7-4, Ter-119の抗原セットである。単離方法も、特に限定されないが、それぞれのマーカーに対する抗体を用い、FACSあるいは磁気ビーズなどによって、各マーカー特性を有する細胞を単離できる。
【0017】
造血幹細胞の培養用培地は、当業者の定法に従って選択すればよく、例えば、α−MEM+10%FBSや、市販の造血幹細胞培養用無血清培地(S-Clone SF-02(三光純薬(株))、StemPro-34(Invitrogen)など)など、特に限定されない。
【0018】
本発明にかかる培養方法では、造血幹細胞をSFRP-2タンパク質存在下で培養する。その具体的な方法は特に限定されないが、培地に、外来的にSFRP-2タンパク質を添加してもよく、培養細胞にSFRP-2発現ベクターを導入し、発現したSFRP-2タンパク質を含む上清を添加してもよく、造血幹細胞に、SFRP-2発現ベクターを導入してもよい。添加するSFRP-2タンパク質の調製方法も特に限定されず、発現細胞から精製しても、大腸菌や培養細胞などを用いて組換えタンパク質として製造してもよい。SFRP-2タンパク質の精製度も特に限定されない。
【0019】
SFRP-2タンパク質の由来は特に限定されず、ヒトSFRP-2(mRNA: NM_003013, Protein: NP_003004)でもマウスSFRP-2(mRNA: NM_009144, Protein: NP_033170)でも、その他の動物のホモログでもオーソログでもよいが、造血幹細胞の由来する動物種と同じ由来であることが好ましい。培地中のSFRP-2タンパク質濃度は特に限定されないが、0.1μg/mL以上10μg/mL以下であることが好ましく、0.5μg/mL以上5μg/mL以下であることがより好ましく、1μg/mL前後であることが最も好ましい。SFRP-2タンパク質は、造血幹細胞に対し造血能と長期骨髄再建能を向上させる機能を失わない限り、タグなどが融合した融合タンパク質でもよく、機能に影響しない一部分が欠失などの変異を生じていても構わない。
【0020】
==造血幹細胞移植==
このようにして増殖させた造血幹細胞の移植方法も、当業者に公知の方法を用いればよい。移植した造血幹細胞が生着すると次第に造血機能が回復するが、ここで、造血幹細胞の造血能と長期骨髄再建能を向上させておけば、機能回復能がより増強する。本発明によって、SFRP-2タンパク質存在下で培養した造血幹細胞を移植に用いた場合、以下の実施例に示すように、SFRP-2タンパク質非存在下で培養した造血幹細胞に比べ、造血幹細胞の造血能と長期骨髄再建能が向上する。従って、SFRP-2タンパク質またはSFRP-2タンパク質を発現する発現ベクターは、造血幹細胞の機能向上剤として有用である。また、誰でも容易に本発明の方法を実施できるように、SFRP-2タンパク質またはSFRP-2タンパク質を発現する発現ベクターを、造血幹細胞の培養キットとしてもよい。このキットには、これら以外に、培地や造血幹細胞などが含まれていてもよい。
【0021】
造血幹細胞移植の目的としては、例えば、再生不良性貧血など、造血機能の低下を認める疾患の患者に対しては、造血機能を回復させるために造血幹細胞移植を行う。あるいは、腫瘍患者に対し、あらかじめ、多量の抗がん剤や放射線を投与し、腫瘍細胞を死滅させた後で、抗がん剤や放射線によって打撃を受けた造血幹細胞を回復させるために行う。後者の場合、治療適用となるのは、抗がん剤や放射線に対して感受性のある腫瘍であって、具体的には、白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等の血液悪性疾患や、一部の固形癌である。
【0022】
ここで用いる造血幹細胞は、自己の造血幹細胞あるいは、HLAハプロタイプが多く一致している血縁者や非血縁者から取得してもよい。
【実施例】
【0023】
[実施例1]in vitroでの造血幹細胞の増殖と多分化能の維持
CD34-KSL細胞は、以下のようにして単離した(Ema H et al., Nat. Protoc. 2006; vol.1, p.2979-2987)。まず、8週齢〜12週齢のC57BL/6(日本クレア社)から骨髄細胞を単離し、さらにLymphoprep(Nycomed社)を用いて、単球を単離した。次に、その細胞群から、Lineage Cell Depletion Kit(Miltenyi Biotec)を用いて、lineage陽性細胞を除去した。残った細胞に対し、FITC結合抗CD34抗体、PE結合抗Sca-1抗体、APC結合抗c-Kit抗体、及びLineage Cell Depletion Kit添付のbiotin結合抗lineage抗体カクテルを結合させ、つづいてストレプトアビジン−PE−Cy7を結合させた。そして、FACS CaliburまたはFACS Ariaを用いて、細胞群を解析し、CD34-KSL細胞を単離した。
【0024】
100個のCD34-KSL細胞を96ウエルの培養皿の各ウエルにソートし、S-clone SF03(三光純薬)(0.5% BSA-50 ng/mL SCF-50ng/mL TPO-1 ug/mL SFRP-2 含有)を用いて、培養した(得られた細胞をSFRP-2群とする。)(図ではSFRP-1と示す。)。ネガティブコントロールとして、SFRP-2(R&D systems社)を含有しない培地(得られた細胞をコントロール群とする。)(図ではControlと示す。)、及び、比較のためSFRP-2の代わりにSFRP-1(R&D systems社)を含有する培地(得られた細胞をSFRP-1群とする。)(図ではSFRP-1と示す。)を用いて実験を行った。
【0025】
培養した細胞を24時間ごとに顕微鏡下で観察し、細胞数を測定したところ、図1Aに示すように、SFRP-1及びSFRP-2は、両方とも、CD34-KSL細胞の増殖を促進したが、SFRP-2(約1.5倍)は、SFRP-1(約1.3倍)より、増殖促進能力が高かった。
【0026】
次に、CD34-KSL細胞に、SFRP-1またはSFRP-2の強制発現ベクターを導入し、恒常的に発現させ、CD34-KSL細胞の増殖能に対する影響を調べた。まず、マウス骨髄細胞由来のcDNAを鋳型とし、下記のプライマーを用いて、SFRP-1またはSFRP-2のコード領域をPCRによって増幅した。
SFRP-1に用いたプライマー
Forward 5’-ggatccatgggcgtcgggcgcagcgc-3’ (配列番号1)
Reverse 5’-gaattctcacttaaaaacagactgga-3’ (配列番号2)

SFRP-2に用いたプライマー
Forward 5’-ggatccatgccgcggggccctgcctc-3’ (配列番号3)
Reverse 5’-gaattcctagcattgcagcttgcgga-3’ (配列番号4)
【0027】
得られたDNAをEcoRI及びBamHIで切断し、発現ベクターpMXs-IGのEcoRI-BamHI部位に挿入して得られた組換えプラスミドをPLAT-E, BOSC23,などのレトロウイルス産生細胞にトランスフェクトし、48時間培養後、組換えレトロウイルスが含まれた上清を回収した。この上清を、CD34-KSL細胞の培地に加えて(moi= 30 )、組換えレトロウイルスを細胞に感染させ、SFRP-1またはSFRP-2をCD34-KSL細胞で強制発現させた。その後、100個の組換えCD34-KSL細胞を96ウエルの培養皿の各ウエルに播種した。
【0028】
上記と同様にして、時間経過とともに細胞の増殖を測定したところ、図1Bに示すように、SFRP-1及びSFRP-2は、両方とも、CD34-KSL細胞の増殖を促進したが、SFRP-2(約2倍)は、SFRP-1(約1.5倍)より、より増殖促進能力が高かった。
【0029】
さらに、CD34-KSL細胞を用いて、コロニーアッセイを行った。すなわち、単離したCD34-KSL細胞を、上記と同様に培養し、1週間(図では1Wと示す。)または2週間(図では2Wと示す。)後に、分化誘導培地(10% FBS-20 ng/ml SCF-20 ng/ml IL-3-50 ng/ml TPO-2 U/ml Epo含有S-clone SF03(三光純薬))に培地を交換し、7日間さらに培養して各細胞へ分化させ、細胞をスライドガラス上に回収して遠心し、May-Giemsaで染色して細胞の形状を調べた。そして、赤血球と巨核球の混在するコロニー(EM)、顆粒球とマクロファージの混在するコロニー(GM)、顆粒球と赤血球とマクロファージの混在するコロニー(GEM)、顆粒球と赤血球とマクロファージと巨核球の混在するコロニー(GEMM)に分類し、コロニー数をグラフ化した。
【0030】
結果は、図2に示すように、SFRP-1群で、多分化能を有する前駆細胞(MPP、すなわちGEM及びGEMMを含む)が、コントロール群の約半分にまで有意に減少した。このことは、SFRP-1存在下での2週間の培養中に、CD34-KSL細胞の分化が進み、多くの細胞が多分化能を失ったことを示す。それに対し、SFRP-2群のMPPは、コントロール群の約1.2倍存在した。このことは、SFRP-2が、CD34-KSL細胞の多分化能を維持するか、あるいは少し増強することを示す。
【0031】
[実施例2] CD34-KSL細胞のマウスへの移植と、in vivoでの造血能及び長期骨髄再建能
B6-Ly5.1マウス(三協ラボサービス社)から実施例1と同様に単離した20個のCD34-KSL細胞を2週間培養した細胞をドナー細胞とした。一方、950radの致死的な放射線量をB6-Ly5.2マウスに投与し、B6-Ly5.2マウス骨髄から単離した単球2x10個と共に、ドナー細胞を移植した。4週後、8週後、12週後、23週後に(図では、それぞれ4W、8W、12W、23Wと示す。)、末梢血におけるドナー細胞由来の細胞の割合を計測した。なお、ドナー細胞由来の細胞はLy5.1陽性であり、FACSによりLy5.1陽性細胞の比率を計測することによって、ドナー細胞由来の細胞の割合を測定した。
【0032】
図3Aに示すように、コントロール群とSFRP-2群では、計測した全ての時間において、有意な差はなかった。一方、コントロール群とSFRP-1群では、計測した全ての時間において、SFRP-1群のほうが、有意にCD34-KSL細胞由来の細胞数が少なかった。
【0033】
次に、各群の骨髄における造血能と長期骨髄再建能をもつ細胞数を比較するために、CD34-KSL細胞を移植されたマウスから、移植24週間後に骨髄を採取し、B6-Ly5.2マウスへ2次移植を行った。なお、2次移植では、2x10個の骨髄細胞を、950radの致死的な放射線量を投与したB6-Ly5.2マウスへ移植した。移植後4週後と12週後に(図では、それぞれ4W、12Wと示す。)、末梢血におけるドナー細胞由来の細胞の割合を計測した。
【0034】
図3Bに示すように、末梢血におけるドナーの細胞の割合は、1次移植では、コントロール群とSFRP-2群では、有意差がなかったにもかかわらず、2次移植では、SFRP-2群は、コントロール群に比べ、有意に多かった。このことは、1次移植において、骨髄に生着した造血幹細胞の割合が、SFRP-2群は、コントロール群に比べ、有意に多いということを意味する。なお、SFRP-1群では、1次移植において、ほとんど細胞が骨髄に生着していない。
【0035】
このように、造血幹細胞を生体に移植する前に、SFRP-2存在下で培養することにより、骨髄への生着率が増加し、造血能及び長期骨髄再建能が向上する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞の培養方法であって、
前記造血幹細胞をSFRP-2タンパク質存在下で培養する工程を含む方法。
【請求項2】
前記造血幹細胞の培地にSFRP-2タンパク質を添加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記造血幹細胞にSFRP-2タンパク質発現ベクターを導入する工程を含む方法。
【請求項4】
前記SFRP-2タンパク質の培地中の濃度が、0.1μg/mL以上10μg/mL以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
骨髄細胞または血液細胞から、CD34陰性、Sca-1陽性、c-Kit陽性、lineage抗原陰性の造血幹細胞を単離する工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記lineage抗原が、CD5, CD45R (B220), CD11b, Gr-1 (Ly-6G/C), 7-4, Ter-119の抗原セットであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
SFRP-2タンパク質、またはSFRP-2タンパク質を発現する発現ベクターを含有する、造血幹細胞の機能向上剤。
【請求項8】
SFRP-2タンパク質、またはSFRP-2タンパク質を発現する発現ベクターを含有する、造血幹細胞の培養キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−55768(P2011−55768A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209763(P2009−209763)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】