説明

連接棒を製造する方法

【課題】
1つの中心材2及び2つの端部材3を有する連接棒1を製造する方法であって、これらの端部材3は、摩擦溶接によってこの中心材2に接合される方法において、前記中心材2が、回転しないように固定され且つ軸方向にシフトしないように支承され、前記端部材3が同時に、同期する回転運動によって前記中心材2に接して摩擦し、前記中心材2の固定した挟み込みが、当該摩擦溶接の終了時に解除され、摩擦溶接部分6が、少なくとも1つの端部材3の軸線方向の移動によって押圧されることを特徴とする方法。
【解決手段】
その結果、押圧の進行中に発生する摩擦溶接部分6の領域内の溶接隆起部7が、依然として同じ挟み込み中に除去でき且つ後の加工が施され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両のシャーシ用の連接棒を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車輪懸架装置は、多くの場合に個々の連接棒、例えば横連接棒、傾斜連接棒及び縦連接棒から構成される。車輪懸架装置は、シャーシの構成要素として車輪スプリングをシャーシ又は車体に直接接続する。回転運動、減衰及び弾性挙動によって可動に軸支すべき車輪懸架装置の一部を車両に接続するため、当該車輪懸架装置は、支持部材としてその端部に配置された接続要素を有する。ゴム・金属軸受が、接続要素として一般的である。車両分野では同時に複数個を使用することに起因して、連接棒は、大量生産されるものである。当該大量生産は、経済上の観点から迅速で且つほとんど後工程を伴わない製造が要求される。それにもかかわらず、特にシャーシ要素としては、高い寸法安定性が要求される。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許第10255049号明細書は、連接棒を製造する方法を開示する。この連接棒は、連結管の端部に取り付けられた2つの軸受孔を有する。これらの軸受孔はそれぞれ、支持結合部を有するスリーブと当該スリーブ内に嵌め込まれた軸受要素とから構成される。説明されている当該方法では、最初に、連結管が、導管からも分割されるし、使用すべきスリーブの対応する軸線方向の高さを、当該スリーブの横断面形状を有する型からも取り出せる。スリーブを連結管の端部に接合する前に、最初に、支持結合部が、スリーブ未加工部品に対して機械加工で取り付けられ、さらなる工程で摩擦溶接によってこのスリーブ未加工部品に接合されて1つの連接棒にされる。このため、スリーブ未加工品と連結管との双方が、摩擦溶接機内で軸周りに軸支可能に挟み込まれる。摩擦溶接後に、接合部分の周囲面が、依然として同じ挟み込み部内で研磨される。この場合、スリーブ内に加硫成形されたゴム・金属軸受としての軸受要素は、特に摩擦溶接前に嵌入される。
【0004】
この場合、個々の構成部材の接合は、回転する締付チャック及び締付チャックに対して軸支可能な保持装置を有する従来の摩擦溶接機によって実施される。この場合、連結管の片側だけが順々に、スリーブに接合され得るので、当該時間をずらした接合は、構造部材の必要な締め付けステップ及び必要になりうる補正に起因して時間がかかる。少なくとも1つの構成部材の締め付けの解除及び新たな挟み込みを必要とする作業工程の中断によって、確実な加工で同時に位置及び角度の正確な末端部どうしの接合を辛うじて達成する。摩擦工程を終了させるための、大質量の回転体としての締付チャックの必要な突然の停止は、エネルギー的な観点からさらなる欠点を招く。特にこの工程は、連接棒の他方の端部に対して繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第10255049号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来の技術から出発して、個々の構成部材の接合が摩擦溶接によって同時に実施でき、当該接合が接合部分の引き続く後の加工と一緒に挟み込み部(クランプ)内で実施できるように、連接棒を製造する方法を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明により、請求項1の手段による連接棒を製造する方法によって解決される。
【0008】
好適なその他の構成は、従属請求項2〜9に記載されている。
【0009】
本発明は、1つの中心材及び2つの端部材を有する連接棒を製造する方法に関する。この場合、端部材が、摩擦溶接によって中心材に接合される。このため、最初に中心材が、回転しないように固定され且つ軸方向にシフトしないように摩擦溶接機の保持装置内に支承される。この場合、これらの端部材のそれぞれが同時に、摩擦溶接機の対向する2つの締付チャックによって収容され、引き続きこれらの締付チャックの同期する回転運動中に中心材に対する軸線方向の相対運動中に向き合って移動され、この中心材に接して摩擦する。さらなる工程では、中心材の回転しないように固定した挟み込み部が、摩擦工程の終了時に急に解除される。その結果、この中心材は、回転する端部材と一緒に自由に回転できる。連接棒の依然として停止しない回転中に連動して、摩擦溶接部分が、少なくとも1つの端部材の軸線方向の移動によって押圧される。これによって、当該接合の終了に加えて、向き合う両端部材の最終距離が得られる。基本的に、当該両端部材は、既に開始に対して互いに異なる角度オフセットを受け取り得る。何故なら、互いに離れている独立した締付チャックの各々が、回転軸周りの任意の角度位置を可能にするからである。
【0010】
別の好適な方法ステップでは、接合工程によって発生する摩擦溶接部分の溶接隆起部が、依然として連接棒の回転運動中に同じ挟み込み部内で除去される。この場合、利点は、複数の作業ステップにわたる持続する回転運動の有効利用にある。これらの複数の作業ステップの場合、例えば締付チャックとしての大質量体が、全方法の開始及び終了に対して加速され停止されるだけで済む。
【0011】
中心材を端部材間に正確に取り付けて中心合わせするため、もう1つの方法ステップでは、端部材の回転の開始と引き続く中心材に接する摩擦工程との間に、支持結合部が、端部材に形成される。これらの端部材が、これらの支持結合部を介して中心材に摩擦溶接される。基本的には、端部材が、既に支持結合部と一緒に形成されていて回転溶接機の締付チャック内に入れられることも可能である。
【0012】
こうして完成された連接棒を、例えば取り外し可能な接続要素によってその連接棒の所定の場所に取り付けできるようにするため、軸受要素が、端部材内に収容される。軸受要素は、摩擦溶接の工程後に、つまり完成した連接棒内に収容され得るか又は摩擦溶接前に中心材にまだ接合されていない端部材内に収容され得る。
【0013】
当該軸受要素は、基本的には異なる方式で例えば押し込みによってスリーブ内に収容され得るときでも、特にこの軸受要素は、スリーブ内に加硫成形したゴム・金属軸受として直接形成される。これによって、完成された軸受要素をスリーブ内に押し込むことが省略される。軸受要素が、玉軸受、いわゆる球継手として構成される場合、加硫成形が省略される。この場合、端部材自体が、球継手用の軸受ソケットを形成する。継手ボールが、この軸受ソケット内に嵌合される。しかし、軸受ソケット及び継手ボールから構成される予め完成された継手ユニットを端部材内に押し込むことも可能である。この押し込みは、特に摩擦溶接工程前に実施できる。
【0014】
容易で安価で且つ取り扱いにおいて複雑でない構成部材を提供するため、管状の構成部材を中心材用の初期材として使用することが好ましい。
【0015】
本発明の方法は、摩擦溶接によって連接棒を製造するための新規で且つ非常に経済的な可能性を提供する。製造工程中の不要な嵌め込み及び取り外しを省略することによって、特に経済的な加工が可能になる。当該加工は、中心材に同時につまり明らかに時間短縮して両端部材を中心材に接合することを可能にする。
【0016】
作業ステップの低減に加えて、両端部材が、摩擦溶接機の同期して回転する締付チャック内に確実な工程で有益に嵌め込まれる。これによって、連接棒の個々の構成部材が、極めて位置正確に且つ角度正確に配置される。このことは、同時に、製造中の著しい単純化が達成される。この場合、締め付けによって時折何度も必要な接合すべき構成部材の測定の省略が、作業経費の低減及びサイクル時間の短縮を可能にする。
【0017】
さらに、1回の同じ締め付け中に実施される構成部材の接合及び引き続く両摩擦溶接部分の後の加工の工程が、製造経費の全体を著しく低減させる。
【0018】
大質量の回転体、例えば締付チャックの加速及び停止が、不要な挟み込みを中止することによって製造工程の開始及び終了に対してだけ実施されるので、本発明は、エネルギー的な観点からも利点を有する。通常は相前後して実施される複数の作業ステップを統合することによって、摩擦溶接の実効が明らかに改善される。
【0019】
以下に、本発明を図示された1つの実施の形態に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】投影して見た連接棒の構成部材を展開して示した投影図である。
【図2】接合された構成部材を有する図1の連接棒の第2の投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、連接棒1の個々の要素を示す。この連接棒1は、長さLに仕上代(余裕)を加えた管状の1つの中心材2と2つの端部材3とから構成される。これらの端部材3は、縦軸X,Y方向に貫通する回転対称な開口部から成るほぼ円柱状の横断面を有する。その最も薄い箇所に存在する肉厚は、中心材2の約1.5倍の肉厚に相当する。端部材3の縦軸X,Yに対して垂直に分割されたこの端部材3の高さは、管状の中心材2の外径にほぼ一致する。
【0022】
複数の端部材3の貫通する開口部内にはそれぞれ、軸受要素4が存在する。この場合、この軸受要素4は、端部材3の貫通孔の中心内で縦軸X,Y方向に貫通し且つ端部材3に対して端部が突出しているリング状のブッシュを有する。この場合、当該ブッシュの外径と端部材3の内径との差は、この端部材3の肉厚にほぼ一致する。
【0023】
軸受要素4のブッシュを端部材3に持続して接合するため、ブッシュが、端部材3の貫通孔内に加硫成形されている。
【0024】
端部材3はそれぞれ、その周囲面に支持接合部5を有する。この支持接合部5は、縦軸X,Yに対して平行に且つ端部材3の外周に対する接線に沿ってほぼ円形の平面を有する。この場合、端部材3の縦軸X,Yに対して垂直に延在する支持結合部5の高さは、端部材3の肉厚にほぼ一致する。支持結合部5の外側の形状が、端部材3にかけてこの端部材3の外側の形状と一体化している。
【0025】
支持結合部5の円い外径は、管状の中心材3の外径に一致する。支持結合部5の前面が、先細りする短い横断面延在部を長手軸Z方向に沿って有する。この場合、その外径部分が、中心材2の内径寸法部分内に入り込んでいる。
【0026】
中心材2の長手軸Zに対して垂直方向に区分され且つ開口している端部がそれぞれ、ヘッド部の前方で周回する肉厚にわたって摩擦溶接部分6を有する。支持結合部5の前面がそれぞれ、同様に摩擦溶接部分6を有する。この場合、これらの摩擦溶接部分6は、支持結合部5の外径と先細り部分との間の横断面延在部の領域内に存在し、それ故に中心材2の摩擦溶接部分6の鏡像面を形成する。
【0027】
図2は、組み立てられた連接棒1を示す。この場合、中心材2は、接合材としてこの接合材のそれぞれの端部に存在する端部材3間に存在し、摩擦溶接部分6を介してこれらの端部材3に接合されている。この場合、両端部材3の縦軸X,Yは互いに、間隔Aをあけて軸平行に延在する。溶接隆起部7がそれぞれ、中心材2の摩擦溶接部分6と両端部材3との接触領域内に存在する。これらの溶接隆起部7は、外側に向かって盛り上げられている材料として摩擦溶接部分6の周りに放射状に延在する。
【0028】
説明されている方法にしたがって連接棒1を製造するため、管状の中心材2が、対応する導管から仕上代を加えた長さLに分割される。その後、中心材2は、ここでは詳しく図示しなかった回転式摩擦溶接機の保持装置Bに供給され、最初にこの回転式摩擦溶接機内に回転しないように固定され、この中心材2の長手軸Zに合わせて支承される。この場合、中心材2の端部は、自由にアクセスでき且つ当該保持装置によってマスクされていない。
【0029】
ここでは詳しく図示しなかった回転式摩擦溶接機は、対向する2つの締付チャックを有する。この場合、これらの締付チャックは、同じ回転軸線上に存在し且つ同じ方向に同期する回転方向Cを可能にする。この場合、保持装置内に存在する中心材2の長手軸Zは、当該両締付チャック間に正確に位置し、したがってこれらの締付チャックの共通の回転軸線上に存在する。
【0030】
支持結合部5を備えた端部材3がそれぞれ、両締付チャック内に挿入される。この場合、この端部材はそれぞれ、予め分割することによってその横断面形状に対応する型取要素から取り出され、加硫成形した軸受要素4を備え付けられる。それぞれの締付チャック内での挟み込みは、支持結合部5の長手軸Zが締付チャックの回転軸上に位置し且つこの支持結合部5がこの締付チャックから突出することを目的とする。
【0031】
端部材3が、締付チャック内に収容された後に、これらの端部材3が、支持結合部5の長手軸Zの周りに同期し且つ同じ方向Cに回転する。
【0032】
次のステップでは、端部材3の摩擦溶接部分6と中心材2の摩擦溶接部分6とが接触するまで、回転するこれらの端部材3が、長手軸Zの方向に互いに向かって同時に移動する、すなわちこれらの端部材3間に存在する中心材2及びこの中心材2の端部に対する相対運動中に近づく。中心材2を回転しないように固定して支承することによって、これらの構成部品が、摩擦溶接部分6に接して摩擦を開始する。これによって、摩擦溶接工程が開始される。
【0033】
摩擦によって摩擦溶接部分6内で発生した熱は、これらの摩擦溶接部分6を包囲する材料を柔らかくする。
【0034】
材料が柔らかくなると、保持装置Bの当該回転しないように固定した支承が急激に解除される。これによって、中心材2が、その長手軸Z周りに加速され、次いで両端部材3間で同期して当該固有の軸周りに回転する。その後、連接棒1のこれらの接合された構成部材は、全体として長手軸Z周りに方向Cの方向に回転する。
【0035】
中心材2の当該支承の解除後に、摩擦溶接部分6が押圧される。この場合、少なくとも1つの締付チャックが、この締め付けチャック内に支承された端部材3と一緒に長手軸Z周りの回転中に対向する締付チャックに向かって移動される。端部材3の両軸X,Yが互いに、最終寸法Aに達すると、当該押圧工程が終了する。
【0036】
当該押圧の進行中に、柔らかい材料が、摩擦溶接部分6の領域内で除去される。このことは、材料を隆起させ、したがって完全な溶接隆起部7を形成する。摩擦時に到達した温度の降下によって、連接棒1の回転している構成部材が、摩擦溶接部分6で互いに溶接される。
【0037】
構成部材が押圧された後に、その後の加工が、依然として同じ挟み込み中に実施される。連接棒1が、両締付チャック間の全体としての回転運動の中断なしに回転する間に、当該押圧時に発生した摩擦溶接部分6の領域内の溶接隆起部7が除去される。
【0038】
中心材2が端部材3に接合され、溶接隆起部7が除去された後に、締付チャック、すなわち連接棒1の回転運動が終了される。したがって、完成された連接棒1が取り外され得る。当該一連の方法が最初から新たに開始する。
【符号の説明】
【0039】
1 連接棒
2 中心材
3 端部材
4 軸受要素
5 支持結合部
6 摩擦溶接部分
7 溶接隆起部

A 間隔
B 中心材2用の保持装置
C 回転方向
L 中心材2の軸
X 端部材3の軸
Y 端部材3の軸
Z 中心材2及び支持継目5の軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの中心材(2)及び2つの端部材(3)を有する連接棒(1)を製造する方法であって、これらの端部材(3)は、摩擦溶接によってこの中心材(2)に接合される方法において、
前記中心材(2)が、回転しないように固定され且つ軸方向にシフトしないように支承され、前記端部材(3)が同時に、同期する回転運動によって前記中心材(2)に接して摩擦し、前記中心材(2)の固定した挟み込みが、当該摩擦溶接の終了時に解除され、摩擦溶接部分(6)が、少なくとも1つの端部材(3)の軸線方向の移動によって押圧されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記摩擦溶接部分(6)の溶接隆起部(7)が、摩擦溶接を実施している挟み込み中に除去されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
支持結合部(5)が、前記端部材(3)に形成されていて、これらの端部材(3)は、これらの支持結合部(5)を介して前記中心材(2)に摩擦溶接されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
軸受要素(4)が、前記端部材(3)内に嵌入されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記軸受要素(4)は、ゴム・金属軸受として形成される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記軸受要素(4)は、摩擦溶接前に加硫成形されることを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記軸受要素(4)は、摩擦溶接前に前記端部材(3)内に押し込まれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記軸受要素(4)は、球継手として形成されることを特徴とする請求項4又は7に記載の方法。
【請求項9】
管状の構成部材が、前記中心材(2)のために使用されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−83823(P2011−83823A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233840(P2010−233840)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】