説明

連結ソケット及び該連結ソケットを用いたコンデンサ素子製造用治具

【課題】化成処理液や半導体層形成溶液が腐食性を有する場合であっても、化成処理液や半導体層形成溶液を汚染することなくコンデンサ素子を製造でき、コンデンサ素子を製造する途中で熱処理する場合にも支障なく熱処理を実施できる連結ソケットを提供する。
【解決手段】本発明の連結ソケット1は、差込口37が設けられた複数個の導電性のソケット本体部2と、ソケット本体部2の少なくとも一部を受容し得る収容部6が複数個形成され、下面5bに収容部6の底面に連通する小孔7が複数個設けられた絶縁部5とを備え、絶縁部5は、耐熱性及び耐腐食性を有する材料で構成され、絶縁部5の収容部6内にソケット本体部2の少なくとも一部が収容されて固定され、差込口37と小孔7が連通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、固体電解コンデンサ等に使用されるコンデンサ素子を製造するコンデンサ素子製造用治具に好適に用いられる連結ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン等に使用されるCPU(中央演算処理装置)周りのコンデンサは、電圧変動を抑制し、高リップル(ripple)通過時の発熱を低く抑えるために、高容量かつ低ESR(等価直列抵抗)であることが求められている。このようなコンデンサとしては、アルミニウム固体電解コンデンサ、タンタル固体電解コンデンサ等が用いられている。これら固体電解コンデンサは、表面層に微細な細孔を有するアルミニウム箔または内部に微小な細孔を有するタンタル粉を焼結した焼結体からなる一方の電極(陽極体)と、該電極の表面に形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成された他方の電極(通常、半導体層)とから構成されたものが知られている。
【0003】
前記固体電解コンデンサは、電気回路が形成された回路基板の下端部に取り付けられたソケットの金属製接続端子に、陽極体から延ばされたリード線の一端を電気的に接続すると共に、この陽極体を化成処理液に浸漬し、該陽極体側を陽極にして前記化成処理液中に配置せしめた陰極との間に電圧を印加して定電流を通電することにより、陽極体の表面に誘電体層を形成し、次いで、表面に誘電体層が設けられた前記陽極体を半導体層形成溶液に浸漬し、該陽極体側を陽極にして前記半導体層形成溶液中に配置せしめた陰極との間に電圧を印加して定電流を通電することにより、前記陽極体表面の誘電体層の表面にさらに半導体層を形成する方法が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/107011号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記化成処理液として燐酸等の酸を含有する処理液を用いる場合には、ソケットの底面側に露出している金属製接続端子が、燐酸等の酸を含有する化成処理液のミスト等に晒されることによって、その一部が腐食等して落下して前記化成処理液中に混ざり、該化成処理液を汚染するという問題があった。このように化成処理液が汚染されると、良好な誘電体層を形成することが困難になり、十分な耐湿性能を備えたコンデンサを製造することができない。
【0006】
また、上記半導体層形成溶液として、酸を含有する溶液を用いる場合には、前記同様にソケットの底面側に露出している金属製接続端子が、酸を含有する半導体層形成溶液のミスト等に晒されることによって、その一部が腐食等して落下して前記半導体層形成溶液中に混ざり、この溶液を汚染するという問題があった。このように半導体層形成溶液が汚染されると、良好な半導体層を形成することが困難になる。
【0007】
一方、コンデンサ素子から製造されるコンデンサは、用途によって、コンデンサ素子の製造過程で、高温で熱処理することを要する場合がある。例えば、誘電体層形成後に数百度(例えば400℃程度)の高温放置を行い誘電体層における微小なクラックを修復する場合、或いは半導体層や導電体層形成後に、反応や乾燥硬化による応力で劣化した誘電体層を熱処理(例えば200℃以上)と再化成を組み合わせて修復する場合等が挙げられる。しかしながら、このようなコンデンサ素子の製造過程で熱処理を行う場合に、ソケットの絶縁部が従来の樹脂製では、このような高温での熱処理には耐えられない(溶融してしまう)という問題があった。
【0008】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、化成処理液が酸を含有する場合や半導体層形成溶液が酸を含有する場合など、腐食性を有する場合であっても、化成処理液や半導体層形成溶液を汚染することなくコンデンサ素子を製造できる連結ソケット、コンデンサ素子を製造する途中で熱処理を行うことが必要な場合には支障なく熱処理を行うことができる連結ソケット、および、コンデンサ素子製造用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]差込口が設けられた複数個の導電性のソケット本体部と、
前記ソケット本体部の、差込口を含む少なくとも一部を受容し得る収容部が複数個形成されている連結ソケットであって、
前記ソケット本体部が差込口を前記収容部の底面に向けて収容され、個々の収容部の各底面から連結ソケットの下面に連通する小孔が設けられた絶縁部を備え、
前記絶縁部の少なくとも下面は、耐腐食性を有する材料で構成され、
前記絶縁部の収容部内に前記ソケット本体部の少なくとも一部が収容されて固定され、前記差込口と前記小孔が連通されていることを特徴とする連結ソケット。
【0011】
[2]前記絶縁部は、さらに耐熱性をも有する材料で構成されている前項1に記載の連結ソケット。
【0012】
[3]前記絶縁部を構成する材料として、合成樹脂、セラミックス、ガラス及びステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料が用いられている前項1または2に記載の連結ソケット。
【0013】
[4]前記絶縁部を構成する材料として、透明な材料が用いられている前項1〜3のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【0014】
[5]前記小孔を下方より平面視した形状は、直径0.1mmの円形より大きく、一辺が0.55mmの正方形以下の範囲に入る前項1〜4のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【0015】
[6]前記小孔は、リード線を有するコンデンサ用陽極体の該リード線が挿通されるための孔であり、前記小孔を下方より平面視した形状が、前記挿通されるリード線の横断面形状より大きく、かつ、該断面形状を1.1倍に拡大した相似形状と同じかまたはそれより小さい形状範囲に入る前項1〜5のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【0016】
[7]前記小孔の深さが、0.2mm〜8mmである前項1〜6のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【0017】
[8]前記収容されたソケット本体部と前記絶縁部との間の隙間の少なくとも一部に充填材が封入されることによって、前記ソケット本体部が前記絶縁部の収容部内に固定されている前項1〜7のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【0018】
[9]前記絶縁部の収容部内に前記ソケット本体部の全部が収容され、前記充填材の上面は、前記絶縁部の上面よりも低い位置にある前項1〜8のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【0019】
[10]前記ソケット本体部は、柱部と、該柱部の下端の周縁部から下方に向けて外側に拡がるように延ばされた傾斜面部とを備える前項1〜9のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【0020】
[11]前記ソケット本体部が、電気的に接続された導電性のリード線部を有する前項1〜10のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【0021】
[12]電気回路が形成された回路基板と、
前記回路基板に着脱自在に取り付けられた前項1〜11のいずれか1項に記載の連結ソケットと、を備え、
前記ソケット本体部は、電気的に前記電気回路に接続され、
前記電気回路が個々の前記ソケット本体部毎に電流を制限することを特徴とするコンデンサ素子製造用治具。
【0022】
[13]前記電気回路が定電流回路である前項12に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0023】
[14]前記電気回路が、さらに、個々の前記ソケット本体部毎に電圧を制限する回路でもある前項12または13に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0024】
[15]前項12〜14のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具の連結ソケットにコンデンサ用陽極体を接続すると共に、該陽極体を化成処理液中に浸漬し、この浸漬状態で、前記陽極体を陽極にして通電することによって、前記陽極体の表面に誘電体層を形成する誘電体層形成工程と、
前記誘電体層形成工程の後に、陽極体が接続された連結ソケットを、前記治具の回路基板から取り外し、該連結ソケットに接続された状態の陽極体に対し熱処理を行う熱処理工程と、を含むことを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
【0025】
[16]前項12〜14のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具の連結ソケットに、表面に誘電体層が設けられた陽極体を接続すると共に、該陽極体を半導体層形成用溶液中に浸漬し、この浸漬状態で、前記陽極体を陽極にして通電することによって、前記陽極体表面の誘電体層の表面に半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記半導体層形成工程の後に、陽極体が接続された連結ソケットを、前記治具の回路基板から取り外し、該連結ソケットに接続された状態の陽極体に対し熱処理を行う熱処理工程と、を含むことを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
【0026】
[17]前項12〜14のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具の連結ソケットに陽極体を接続すると共に、該陽極体を化成処理液中に浸漬し、この浸漬状態で、前記陽極体を陽極にして通電することによって、前記陽極体の表面に誘電体層を形成する誘電体層形成工程と、
前記誘電体層形成工程を経て得られた、表面に誘電体層が設けられた陽極体を、半導体層形成用溶液中に浸漬し、この浸漬状態で、前記陽極体を陽極にして通電することによって、前記陽極体表面の誘電体層の表面に半導体層を形成する半導体層形成工程と、を含み、
前記誘電体層形成工程と前記半導体層形成工程の間に、及び/又は前記半導体層形成工程の後に、陽極体が接続された連結ソケットを、前記治具の回路基板から取り外し、該連結ソケットに接続された状態の陽極体に対し熱処理を行う熱処理工程をさらに備えることを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
【0027】
[18]前記熱処理を200℃〜500℃で行う前項15〜17のいずれか1項に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【0028】
[19]前項15〜18のいずれか1項に記載の製造方法で得たコンデンサ素子の陽極体及び半導体層に、それぞれ電極端子を電気的に接続し、前記電極端子の一部を残して封止するコンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0029】
[1]の発明に係る連結ソケットでは、耐腐食性を有する材料で構成された絶縁部の収容部内にソケット本体部の少なくとも一部が収容されて固定され、絶縁部の下面に、ソケット本体部の差込口と連通する小孔が形成されており、陽極体のリード線を小孔を介して差込口に挿通すると、絶縁部の下面の小孔がリード線で塞がれるものとなるから、化成処理液が酸を含有する場合や半導体層形成溶液が酸を含有する場合であっても、ソケット本体部の差込口等が、化成処理液や半導体層形成溶液のミスト(酸を含むミスト)等に晒され難く、ソケット本体部の差込口等の腐食を防止できると共に、たとえソケット本体部が腐食したとしてもその腐食物の落下を防止することができ、これにより化成処理液や半導体層形成溶液を汚染することなくコンデンサ素子を製造できる。
【0030】
[2]の発明では、絶縁部は、さらに耐熱性をも有する材料で構成されているから、コンデンサ素子を製造する途中で熱処理を行うことが必要な場合であっても支障なく熱処理を行うことができる。
【0031】
[3]の発明では、絶縁部が、合成樹脂、セラミックス、ガラス及びステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料を用いて構成されているから、絶縁部の耐腐食性をさらに向上させることができる。特に、絶縁部が、合成樹脂、セラミックス、ガラス及びステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料で構成されると、絶縁部の耐熱性をさらに向上させることができ、コンデンサ素子を製造する途中で熱処理を行うことが必要な場合であっても支障なく熱処理を行うことができる。
【0032】
[4]の発明では、絶縁部を構成する材料として透明な材料が用いられているので、ソケット本体部の腐食の有無や腐食の程度の確認を容易に行うことができる。
【0033】
[5]、[6]及び[7]の発明では、絶縁部の下面の小孔がリード線でより塞がれるものとなるから、ソケット本体部の差込口等が、化成処理液や半導体層形成溶液のミスト(酸を含むミスト)等にさらに晒され難く、ソケット本体部の差込口等の腐食を防止でき、たとえソケット本体部が腐食したとしてもその腐食物の落下をさらに防止することができる。
【0034】
[8]の発明では、収容されたソケット本体部と絶縁部との間の隙間の少なくとも一部に充填材が封入されることによって、ソケット本体部が絶縁部の収容部内に固定されているから、複数個のソケット本体部が絶縁部に十分に固定された連結ソケットが提供される。
【0035】
[9]の発明では、絶縁部の収容部内にソケット本体部の全部が収容され、充填材の上面は、絶縁部の上面よりも低い位置にあるから、本発明の連結ソケットを、例えば、回路基板に取り付けられた1段目連結ソケットに取り付ける際に、絶縁部の上面を該1段目連結ソケットの下面に当接させて取り付けることで連結ソケットの取り付けの上下位置(本発明の連結ソケットの取り付け高さ)を正確に位置決めすることができる。
【0036】
[10]の発明では、ソケット本体部は、柱部と、該柱部の下端の周縁部から下方に向けて外側に拡がるように延ばされた傾斜面部とを備えた構成であるから、該傾斜面部の外側縁を収容部の底面の周縁に略合わせた態様でソケット本体部を絶縁部の収容部内に収容することで、ソケット本体部の収容部内における水平面内における固定位置の位置決めをすることができると共に、ソケット本体部と絶縁部との間に隙間(ガラス等の接合材封入用の隙間)を確保できる。
【0037】
[11]の発明では、ソケット本体部が、電気的に接続された導電性のリード線部を有しており、このようにリード線部を設けることにより後述する電気回路とソケットなどを介し接続できるので、該電気回路との接続や別の電気回路への交換が容易になる。
【0038】
[12]、[13]及び[14]の発明では、化成処理液が酸を含有する場合や半導体層形成溶液が酸を含有する場合であっても、化成処理液や半導体層形成溶液を汚染することなくコンデンサ素子を製造できるコンデンサ素子製造用治具が提供される。従って、本発明に係るコンデンサ素子製造用治具を用いれば、十分な耐湿性能を備えたコンデンサ素子を製造することができる。また、絶縁部が耐熱性を有する材料で構成された連結ソケットが、回路基板に着脱自在に取り付けられているから、コンデンサ素子を製造する途中で熱処理を行うことが必要な場合には、陽極体が接続された連結ソケットを、治具の回路基板から取り外し、該陽極体が接続された連結ソケットに対し熱処理を行うことができる(回路基板等に対する熱処理の適用を回避できる)ので、何ら支障なくスムーズに熱処理を行うことができる。熱処理後に更なる処理を要する場合には、熱処理後に、連結ソケット接続部に対して本発明の連結ソケット(陽極体が接続された状態のもの)を再び取り付ければよい。
【0039】
[15]、[16]、[17]及び[18]の発明では、コンデンサ素子を製造する際に化成処理液や半導体層形成溶液を汚染することがないから、十分な耐湿性能を備えた高品質のコンデンサ素子を製造できる。また、絶縁部が耐熱性を有する材料で構成された連結ソケットが、回路基板に着脱自在に取り付けられているから、熱処理を行う時に、陽極体が接続された連結ソケットを、治具の回路基板から取り外し、該連結ソケットに接続された状態の陽極体に対し熱処理を行うことができる(回路基板等に対する熱処理の適用を回避できる)ので、何ら支障なくスムーズに熱処理を行うことができる。
【0040】
[19]の発明では、十分な耐湿性能を備えた高品質のコンデンサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るコンデンサ素子製造用治具の一実施形態を示す図であって、(A)は正面図、(B)は背面図である。
【図2】図1のコンデンサ素子製造用治具の左側面図である。
【図3】本発明の連結ソケットの一実施形態を拡大して示す図であって、(A)は正面図、(B)は底面図、(C)は(A)におけるY−Y線の断面図である。
【図4】ソケット本体部と絶縁部とを分離した状態で示す断面図である。
【図5】絶縁部を示す斜視図である。
【図6】(A)(B)(C)いずれも本発明の連結ソケットの他の実施形態を示す断面図である。
【図7】絶縁部の他の例を示す斜視図である。
【図8】本発明のコンデンサ素子製造用治具を用いたコンデンサ素子の製造方法を示す概略図である。
【図9】図8におけるソケットと陽極体の接続態様を示す断面図である。
【図10】本発明のコンデンサ素子の製造方法を電気回路的に示す模式図である(コンデンサ素子製造用治具における回路は2回路のみ示した)。
【図11】コンデンサ素子製造用治具の回路基板における電気接続回路の他の例を示す回路図である。
【図12】本発明に係る製造方法で製造されるコンデンサ素子の一実施形態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明に係る連結ソケット1の一実施形態を図3に示す。この連結ソケット1は、複数個の導電性のソケット本体部2と、絶縁部5とを備える(図3〜5参照)。好ましくは、後述する接続部88との脱着を容易にするため、前記各ソケット本体部2の上面2aから1本のリード線部4が延ばされている。本実施形態では、複数個のソケット本体部2が絶縁部5を介して一列に連結されて並列連結ソケット1が構成されている(図3〜5参照)。
【0043】
前記ソケット本体部2は、陽極体52等と電気接続する電気接続端子としての役割を担う部材であり、電気的導通を得るために、金属材等の導電性材料で構成される。前記ソケット本体部2を構成する金属としては、特に限定されるものではないが、銅、鉄、銀及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を主成分(50質量%以上含有する)とする金属(合金を含む)を用いるのが好ましい。前記ソケット本体部2の表面に、錫メッキ、半田メッキ、ニッケルメッキ、金メッキ、銀メッキ、銅メッキ等の従来公知のメッキが少なくとも一層施されていてもよい。
【0044】
本実施形態では、前記ソケット本体部2は、円柱部21と、該円柱部21の底面の周縁部から下方に向けて外側に拡がるように延ばされた傾斜面部22とからなり(図3、4参照)、これら円柱部21及び傾斜面部22は、金属材等の導電性材料で構成されている。前記円柱部21の底面の中央部にリード線差込口37が形成されている(図3、4参照)。前記円柱部21の内部には、空洞部23が設けられている。この空洞部23は、前記リード線差込口37と連通している。前記空洞部23の内周面には金属製ばね部材24が連接されており、該金属製ばね部材24で取り囲まれてリード線挿通孔38が形成されている。前記リード線挿通孔38は、前記リード線差込口37の空間と連通している。前記リード線挿通孔38に、陽極体52のリード線53等が接触状態に挿通配置されることによって、前記ソケット本体部2と前記陽極体52とが電気的に接続される。
【0045】
前記ソケット本体部2は、後述する接続部88を介して後述する電気回路30に接続される。該接続は、電気的に接続可能なものであれば特に限定されないが、例えば、以下の形態が挙げられる。
【0046】
前記ソケット本体部2の上面2a(円柱部21の上面)の中央部からリード線部4が延設されている(図3、4参照)。前記リード線部4は、金属材等の導電性材料で構成される。即ち、前記リード線部4は、前記ソケット本体部2と一体に形成されていて該ソケット本体部2と電気的に接続されている。前記リード線部4を構成する金属としては、前記ソケット本体部2を構成する金属として例示したものと同様のものが挙げられる。前記リード線部4は、通常は、前記ソケット本体部2を構成する金属と同一の金属で構成される。
【0047】
前記絶縁部5の、少なくとも下面5bが、好ましくは下面5bおよび側面が、耐腐食性を有する材料で構成されている。さらに、前記絶縁部5は、好ましくは耐熱性をも有する材料で構成されている。前記絶縁部5は、上面5a等に前記ソケット本体部2の少なくとも一部を受容し得る形状(例えば、円柱形状の凹部を有する形状)の収容部6が複数個一列に並んで形成され、下面5bに小孔7が複数個設けられている(図3〜5参照)。即ち、前記絶縁部5の下面5bにおける前記各収容部6の底面の直下位置に該底面に連通する小孔7が1個ずつ形成されている(図3、4参照)。なお、上記実施形態では、絶縁部5において複数個の収容部6は一列に配設されていた(図5)が、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば図7に示すように、多数個の収容部6が複数列設けられた構成(横方向に複数行、縦方向に複数列配置された構成)を採用してもよい。
【0048】
前記絶縁部5を構成する材料としては、耐腐食性を有する材料が好ましく、より好ましくは耐熱性及び耐腐食性を有する材料である。耐腐食性を有する材料の具体例としては、例えば、合成樹脂、セラミックス、ガラス又はステンレス鋼等の材料が好適に用いられる。前記絶縁部5を構成する材料としてより好ましくは耐熱性及び耐腐食性を有する材料であり、セラミックス、ガラス、ステンレス鋼等の材料が挙げられる。なお、ステンレス鋼を用いる場合には、金属製ばね部材24との絶縁を図るように構成する必要がある。
【0049】
前記合成樹脂材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、カーボネート樹脂、アミド樹脂、アミドイミド樹脂、エステル樹脂、フェニレンサルファイド樹脂等の硬質樹脂等が挙げられる。
【0050】
前記セラミックス材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア等が挙げられる。
【0051】
前記ガラス材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホウ珪酸ガラス等が挙げられる。
【0052】
前記絶縁部5を構成する材料として透明な材料を用いると、ソケット本体部2の腐食の有無や腐食の程度の確認をする場合には目視で容易に行うことができる。
【0053】
一般に、陽極体のリード線53は、外径が0.1mm〜0.5mmの円形または辺の長さが0.1mm〜0.5mmの略長方形の横断面形状を持つ。そのため、前記小孔7を下方より平面視した形状は、内径が0.1mmより大きく0.55mm以下の円形状、または、一辺の長さが0.1mmより大きく0.55mm以下の長方形状であることが好ましい。即ち、前記小孔7を下方より平面視した形状としては、直径0.1mmの円形より大きく、一辺0.55mmの正方形以下の範囲に入る形状であることが好ましい。
【0054】
あるいは、前記小孔7を下方より平面視した形状は、ここに挿通される、陽極体のリード線53の横断面形状に合わせて、該横断面形状より大きく、かつ該横断面形状を1.1倍に拡大した相似形状と同じかまたはそれより小さい形状に設定されるのがより好ましい。例えば、陽極体のリード線53の横断面形状が円形である場合、前記小孔7の径(直径)は、ここに挿通される、陽極体のリード線53の外径より大きく該外径の1.1倍以下に設定されるのが好ましい。さらに具体的には、リード線53の外径が0.29mmである場合には、小孔7の径(直径)は、0.30mm〜0.31mmに設定されるのが好ましい。
【0055】
上述の範囲に設定することで、ソケット本体部2(特に差込口)の腐食を十分に防止できる。前記小孔7は、テーパー部を有してもよい。例えば、図3に示すような略円柱状の孔であってもよいし、これ以外には例えば図6(C)に示すような下方に向けて拡がる円錐台形状の孔であってもよい。
【0056】
前記小孔7の深さは、ソケット本体部2の腐食を抑えるためには深い方がよいが、陽極体のリード線53の長さを短くし材料費を抑えるには浅い方がよい。そのため、前記小孔7の深さの範囲としては、0.2mm〜8mmであることが好ましく、0.5mm〜6mmであることがより好ましく、1mm〜3mmであることがさらに好ましい。なお、前記小孔7がテーパー部を持つなど、前記小孔7の横断面形状(該横断面形状が均一であれば前記小孔7を下方より平面視した形状に一致する)が、前述の前記小孔7を下方より平面視した形状の範囲のいずれをも超える部分がある場合は、該部分を含めない前記小孔7の深さを、前述の深さの範囲の下限値以上とすることがより好ましい。
【0057】
しかして、前記絶縁部5の収容部6内にソケット本体部2の全部が収容されると共に、前記収容されたソケット本体部2と前記絶縁部5との間の隙間9に低融点ガラス(例えば融点が600℃のガラス)等の充填材3が充填されて、両者が溶融固着されること等によって、ソケット本体部2が絶縁部5の収容部6内に固定されている(図3参照)。この固定状態において、ソケット本体部2のリード線差込口37と絶縁部5の小孔7とが連通している(図3参照)。前記封入ガラス3の上面3aは、絶縁部5の上面5aよりも低い位置にある(図3参照)。また、前記ソケット本体部2の上面2aは、絶縁部5の上面5aよりも低い位置にある(図3参照)。
【0058】
上記構成に係る連結ソケット1を、後述するように、例えば、回路基板11に取り付けられた接続部88に取り付ける際に、絶縁部5の上面5aを該接続部88の下面に当接させて取り付けることで連結ソケット1の取り付けの上下位置(本発明の連結ソケット1の取り付け高さ)を正確に位置決めすることができる(図1、2参照)。
【0059】
上記構成に係る連結ソケット1の耐熱温度は低融点ガラスに依存する。連結ソケット1は、通常、用いた低融点ガラスの変形温度以下の温度で使用される。
【0060】
次に、本発明に係る連結ソケット1の他の実施形態を図6に示す。図6(A)に示す構成では、前記絶縁部5の収容部6内にソケット本体部2の全部が収容されると共に、前記収容されたソケット本体部2と前記絶縁部5との間の隙間9における上部のみに低融点ガラス等のガラス材3が充填されることによって、ソケット本体部2が絶縁部5の収容部6内に固定されている。この固定状態において、ソケット本体部2のリード線差込口37と絶縁部5の小孔7とが連通している。前記封入ガラス3の上面3aは、絶縁部5の上面5aよりも低い位置にある。また、前記ソケット本体部2の上面2aは、絶縁部5の上面5aよりも低い位置にある。従って、図6(A)に示す連結ソケット1を、後述するように、例えば、回路基板11に取り付けられた接続部88に取り付ける際に、絶縁部5の上面5aを該接続部88の下面に当接させて取り付けることで連結ソケット1の取り付けの上下位置(本発明の連結ソケット1の取り付け高さ)を正確に位置決めすることができる。
【0061】
また、図6(B)に示す構成では、前記絶縁部5の収容部6内にソケット本体部2の一部が収容されると共に、前記収容されたソケット本体部2と前記絶縁部5との間の隙間9に低融点ガラス等のガラス材3が充填されることによって、ソケット本体部2が絶縁部5の収容部6内に固定されている。この固定状態において、ソケット本体部2のリード線差込口37と絶縁部5の小孔7とが連通している。前記封入ガラス3の上面3aは、ソケット本体部2の上面2aより低い位置である。また、前記ソケット本体部2の上面2aは、絶縁部5の上面5aよりも高い位置にある。従って、図6(B)に示す連結ソケット1を、後述するように、例えば、回路基板11に取り付けられた接続部88に取り付ける際に、ソケット本体部2の上面2aを該接続部88の下面に当接させて取り付けることで連結ソケット1の取り付けの上下位置(本発明の連結ソケット1の取り付け高さ)を正確に位置決めすることができる。
【0062】
また、図6(C)に示す構成では、前記絶縁部5の収容部6内にソケット本体部2の全部が収容されている。前記収容されたソケット本体部2と前記絶縁部5との間には上部領域を除いて隙間9はなく、前記上部領域においてソケット本体部2と絶縁部5との間に隙間9があり、該隙間9に低融点ガラス等のガラス材3が充填されることによって、ソケット本体部2が絶縁部5の収容部6内に固定されている。この固定状態において、ソケット本体部2のリード線差込口37と絶縁部5の小孔7とが連通している。前記ソケット本体部2の上面2aは、絶縁部5の上面5aよりも低い位置にある。また、前記ソケット本体部2の上面2aにも低融点ガラス等のガラス材3が封入されており、該封入ガラス3の上面3aは、絶縁部5の上面5aよりも低い位置にある。従って、図6(C)に示す連結ソケット1を、後述するように、例えば、回路基板11に取り付けられた接続部88に取り付ける際に、絶縁部5の上面5aを該接続部88の下面に当接させて取り付けることで連結ソケット1の取り付けの上下位置(本発明の連結ソケット1の取り付け高さ)を正確に位置決めすることができる。
【0063】
次に、本発明に係るコンデンサ素子製造用治具10の一実施形態を図1、2に示す。前記コンデンサ素子製造用治具10は、上述した本発明の連結ソケット1を用いて構成されたものである。前記コンデンサ素子製造用治具10は、回路基板11と、連結ソケット1とを備える。
【0064】
前記回路基板11としては、絶縁性基板が用いられる。前記絶縁性基板の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスエポキシ樹脂、イミド樹脂、セラミックス等が挙げられる。
【0065】
前記回路基板11の表面には、図1に示すように、一対の電気接続端子14、15を有する電気回路30が形成されている。この電気回路30は、電流を制限する回路(例えば、図10、図11の回路等)を有し、本発明の連結ソケット1及びそれに接続されたリード線53を介して、各陽極体52ごとに独立して電流を供給する。
【0066】
したがって、各陽極体52に流れる最大の電流値は、前記回路の電流制限値になる。電流を制限する回路としては、得られるコンデンサの偏差をできるだけ少なくするために、定電流回路(例えば、図10)とすることが好ましい。前記電気回路30が、さらに、各陽極体52に印加される電圧を制限する回路であるのがより好ましい。比較的大きな電流を流しても、陽極体52に印加される最大の電圧値が制限されるので、化成や半導体層形成の処理時間を短縮できる。
【0067】
前記一対の電気接続端子14、15は、一方の端子14が前記回路基板11の長さ方向の一端部に設けられ、他方の端子15が前記回路基板11の長さ方向の他端部に設けられている。一方の電気接続端子は、電流制限端子14であり、この端子14に与える電圧により電流の制限値が設定される。例えば、図10の回路の場合、電流制限端子14と後述する電圧制限端子15との電位差により、図11の回路の場合、電流制限端子14と陰極板51との電位差により、それぞれ設定できる。
【0068】
前記他方の電気接続端子は、電圧制限端子15であり、この端子15に与える電圧により各陽極体52に印加される最大の電圧値が制限される。例えば、図10及び図11の回路の場合、電圧制限端子15と陰極板51との電位差により設定できる。なお、図10、図11において、18は抵抗器、19はトランジスタ、31はダイオードである。
【0069】
また、前記回路基板11の下端部に前記連結ソケット1が取り付けられている。即ち、図1、2に示すように、前記回路基板11に、前記連結ソケット1の接続部88が固定され、各接続部81の上方に延ばされたリード線部84が約90度湾曲状に折り曲げられ、該リード線部84の先端側が前記回路基板11の下部に設けられた貫通孔にそれぞれ挿通されて半田20で該回路基板11に固着されている(図2参照)。
【0070】
なお、図1、2では、接続部88として、連結ソケット1を接続可能な通常の連結ソケット(連結ソケット1と区別するため、「1段目連結ソケット88」と言うこともある)を用いている。
【0071】
そして、前記回路基板11に固着された各接続部81の底面の差込口に、本発明の連結ソケット1の各ソケット本体部2のリード線部4が挿通接続されることによって、前記連結ソケット1が前記回路基板11の下端部に取り付けられている(図1、2、9参照)。前記回路基板11にこのような態様で前記連結ソケット1(複数個のソケット本体部2が絶縁部5を介して一列に連結された並列連結ソケット1)が取り付けられて本発明のコンデンサ素子製造用治具10が構成されている。図2に示す接続部88において、82は導電性のソケット本体部、85は樹脂製の絶縁部である。
【0072】
また、本発明において、コンデンサ素子製造用治具10の回路基板11の電気接続回路は、図10に示す構成のものに特に限定されるものではなく、例えば図11に示すような回路構成であってもよい。
【0073】
次に、上記コンデンサ素子製造用治具10を用いたコンデンサ素子の製造方法について説明する。図8にコンデンサ素子の製造方法の一例を概略図で示す。図10は、このコンデンサ素子の製造方法を電気回路的に示した模式図である。
【0074】
まず、中に処理液59が投入された処理容器50を準備する。前記処理液59としては、誘電体層54形成のための化成処理液、半導体層55形成のための半導体層形成用溶液等が挙げられる。
【0075】
一方、前記コンデンサ素子製造用治具10の連結ソケット1に、リード線53を有する陽極体52を接続する。即ち、前記コンデンサ素子製造用治具10の連結ソケット1のリード線差込口37を介してリード線挿通孔38に、陽極体52のリード線53を挿通せしめることによって、連結ソケット1に陽極体52を電気的に接続する(図9参照)。前記リード線53の先端側が、前記ソケット本体部2の空洞部23内の金属製ばね部材24と接触状態となるから、連結ソケット1と陽極体52とが電気的に接続される。
【0076】
次いで、前記陽極体52がセットされたコンデンサ素子製造用治具10を、前記処理容器50の上方位置に配置せしめ、前記陽極体52の少なくとも一部(通常は全部)が前記処理液59に浸漬される状態まで治具10を下降(または前記処理容器50を上昇)せしめてその高さ位置で治具10を固定する(図8参照)。
【0077】
そして、前記陽極体52の浸漬状態において、前記陽極体52を陽極にし、前記処理液59中に配置した陰極板51を陰極にして通電する(図8、10参照)。第1番目の処理液59として化成処理液を用いると、前記通電により陽極体52の表面に誘電体層54(図12参照)を形成することができる(誘電体層形成工程)。
【0078】
次いで、必要に応じて前記誘電体層54を表面に備えた陽極体52を水洗、乾燥させた後、前記とは別の処理容器50内に新たに半導体層形成用溶液59を投入して、前記同様に前記陽極体52の少なくとも一部(通常は全部)が前記半導体層形成用溶液59に浸漬される状態まで治具10を下降せしめてその高さ位置で治具10を固定し、前記陽極体52を陽極にし、前記半導体層形成用溶液59中に配置した陰極板51を陰極にして通電すると、即ち第2番目の処理液59として半導体層形成用溶液を用いて通電すると、陽極体52表面の誘電体層54の表面に半導体層55を形成することができ(半導体層形成工程)、こうして陽極体52の表面に誘電体層54が積層され、該誘電体層54の表面にさらに半導体層55が積層されてなるコンデンサ素子56を製造することができる(図12参照)。
【0079】
そして、本発明に係るコンデンサ素子の製造方法においては、例えば、前記誘電体層形成工程と前記半導体層形成工程の間に、及び/又は半導体層形成工程の後に、陽極体52が接続された連結ソケット1を、コンデンサ製造用治具10の回路基板11の接続部88から取り外し、連結ソケット1に接続した状態の該陽極体52に対し熱処理を行う(熱処理工程)。連結ソケット1は、回路基板11に電気接続されている接続部88に対して脱着自在に取り付けられているから、接続部88から連結ソケット1(陽極体52が接続された状態のもの)を離脱させて連結ソケット1(陽極体52が接続された状態のもの)だけを熱処理に供することができる(回路基板11等に対する熱処理の適用を回避できる)。
【0080】
前記熱処理は、主にコンデンサの信頼性を上げることを目的として行うものであるが、その用途によって熱処理するタイミングは種々異なる。誘電体層形成工程と半導体層形成工程の間で行う熱処理の加熱温度は、通常200℃〜500℃であり、半導体層形成工程とカーボンペースト形成工程の間で行う熱処理の加熱温度は、通常150℃〜300℃であり、カーボンペースト形成工程と銀ペースト形成工程の間で行う熱処理の加熱温度は、通常150℃〜300℃である。
【0081】
前記熱処理の際の雰囲気は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気にするのが好ましい。なお、窒素は、ニオブなどの陽極体材料と300℃程度の温度でも反応してしまうので、不活性ガスとしない。
【0082】
前記熱処理後に更なる処理をするために、熱処理後に、接続部88に連結ソケット1(陽極体52が接続された状態のもの)を再び取り付けて電気接続すればよい。
【0083】
なお、上記熱処理工程において、陽極体52のみを取り外して熱処理するのではなく、陽極体52が接続された状態の連結ソケット1を、回路基板11の接続部88から取り外し、この陽極体52が接続された状態の連結ソケット1を熱処理に供するのは、陽極体52のみを連結ソケット1から取り外すと、既に陽極体52に形成されている誘電体層54や半導体層55を傷付ける恐れがあるためである。また、陽極体52のみを連結ソケット1から取り外した場合に熱処理後に更なる処理を要する時には、陽極体52を再び連結ソケット1に取り付けなければならないが、この時に同様に既に陽極体52に形成されている誘電体層54や半導体層55を傷付ける恐れがあるからである。
【0084】
また、連結ソケット1の大きさは、特に制限はないが、処理液59に浸漬する際のコンデンサ素子の配置に合わせた大きさ、連結ソケット1を輸送する装置にあわせて取り扱い易い大きさ、などにすればよい。
【0085】
前記陽極体52としては、特に限定されるものではないが、例えば、弁作用金属及び弁作用金属の導電性酸化物からなる群より選ばれる陽極体の少なくとも1種を例示できる。これらの具体例としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、一酸化ニオブ、一酸化ジルコニウム等が挙げられる。また、基体の表層に陽極体が積層された積層体であってもよい。表層に陽極体が積層された積層体の例としては、紙、絶縁性高分子、ガラス等の基体に前記陽極体が積層された積層体等が挙げられる。
【0086】
前記陽極体52の形状としては、特に限定されず、箔状、板状、棒状、直方体状等が挙げられる。
【0087】
前記化成処理液59としては、特に限定されるものではないが、例えば有機酸またはその塩(例えば、アジピン酸、酢酸、アジピン酸アンモニウム、安息香酸等)、無機酸またはその塩(例えば、燐酸、珪酸、燐酸アンモニウム、珪酸アンモニウム、硫酸、硫酸アンモニウム等)等の従来公知の電解質が溶解又は懸濁した液などが挙げられる。このような化成処理液を用いて前記通電を行うことによって陽極体52の表面に、Ta25、Al23、Zr23、Nb25等の絶縁性金属酸化物を含む誘電体層54を形成することができる。
【0088】
なお、このような化成処理液を用いた誘電体層形成工程を省略して、既に表面に誘電体層54が設けられた陽極体52を前記半導体層形成工程に供してもよい。このような表面の誘電体層54としては、絶縁性酸化物から選ばれる少なくとも1つを主成分とする誘電体層、セラミックコンデンサやフィルムコンデンサの分野で従来公知の誘電体層が挙げられる。
【0089】
前記半導体層形成用溶液59としては、通電により半導体が形成され得る溶液であれば特に限定されず、例えば、アニリン、チオフェン、ピロール、メチルピロール、これらの置換誘導体(例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン等)等を含有する溶液などが挙げられる。前記半導体層形成用溶液59にさらにドーパントを添加してもよい。前記ドーパントとしては、特に限定されるものではないが、例えば、アリールスルホン酸またはその塩、アルキルスルホン酸またはその塩、各種高分子スルホン酸またはその塩等の公知のドーパント等が挙げられる。このような半導体層形成用溶液59を用いて前記通電を行うことによって前記陽極体52表面の誘電体層54の表面に、例えば導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリメチルピロール等)からなる半導体層55を形成することができる。
【0090】
本発明では、上記製造方法で得られたコンデンサ素子56の半導体層55の上に、コンデンサの外部引き出し用の電極端子(例えば、リードフレーム)との電気的接触を良くするために、電極層を設けてもよい。
【0091】
前記電極層は、例えば導電ペーストの固化、メッキ、金属蒸着、耐熱性の導電樹脂フィルムの形成等により形成することができる。導電ペーストとしては、銀ペースト、銅ペースト、アルミニウムペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト等が好ましい。
【0092】
このようにして得たコンデンサ素子56の陽極体52及び半導体層55に、それぞれ電極端子を電気的に接続し(例えば、リード線53を一方の電極端子に溶接し、電極層(半導体層)55を銀ペーストなどで他方の電極端子に接着する)、前記電極端子の一部を残して封止することによりコンデンサが得られる。
【0093】
封止方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂モールド外装、樹脂ケース外装、金属製ケース外装、樹脂のディッピングによる外装、ラミネートフィルムによる外装などがある。これらの中でも、小型化と低コスト化が簡単に行えることから、樹脂モールド外装が好ましい。
【実施例】
【0094】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0095】
<実施例1>
[陽極体52の作製]
ニオブ(Nb)インゴットを水素脆性を利用して粉砕して得たニオブ一次粉(平均粒子径0.32μm)を造粒することによって、平均粒子径124μmのニオブ粉末を得た(このニオブ粉末は表面が自然酸化されていて酸素を8900ppm含有する)。次に、得られたニオブ粉末を450℃の窒素雰囲気中に放置した後、さらに700℃のアルゴン雰囲気中に放置することにより、窒化量8000ppmの一部窒化されたニオブ粉末(CV値:290000μF・V/g)を得た。前記一部窒化ニオブ粉末を直径0.29mmのニオブ線(リード線)と共に成形した後、1270℃で焼結することにより、直方体形状で長さ2.3mm×幅1.7mm×厚さ1.0mmの焼結体(陽極体)52を作製した。なお、ニオブのリード線53は、焼結体52の1.7mm×1.0mmの面から内方に1.3mm入り込んだ位置まで埋め込まれる一方、該面の中央から外方に向けて10mm突出するように一体に成形されている。
【0096】
[本発明の連結ソケット1の作製]
図3〜5に示す構成を備えた並列連結ソケット1を作製した。絶縁部5は、アルミナ粉末を焼結して得たアルミナ焼結体からなり、小孔7の直径は、0.306mm±0.012mmであり、小孔7の深さは1.6mmである。絶縁部5の上面5aには64個の収容部6が等間隔(2.54mmピッチ)で形成され(図5参照)、絶縁部5の下面5bにおける各収容部6の底面の直下位置に該底面に連通する小孔7が1個ずつ合計で64個形成されている(図3、4参照)。前記絶縁部5の各収容部6内に64個のソケット本体部2を1個ずつ収容すると共に、この収容されたソケット本体部2と絶縁部5との間の隙間9に低融点ガラス(融点が400℃のガラス)粉末を充填して溶融固着させることによって、ソケット本体部2を絶縁部5の収容部6内に固定して、並列連結ソケット1を得た(図3参照)。この連結ソケット1は、ソケット本体部2のリード線差込口37と絶縁部5の小孔7とが連通している(図3参照)。封入ガラス3の上面3aは、絶縁部5の上面5aよりも低い位置にあり、ソケット本体部2の上面2aは、絶縁部5の上面5aよりも低い位置にある(図3参照)。
【0097】
[本発明の固体電解コンデンサ素子製造用治具の作製]
長さ194.0mm×幅33.0mm×厚さ1.6mmの銅張ガラスエポキシ基板(回路基板)11を準備した(図1参照)。この銅張ガラスエポキシ基板11は、長さ方向(図面左右方向)の両端部における幅方向(図面上下方向)の一端側(図面下側)にそれぞれ10mm×8mmの切り欠き部12、13が設けられており、この左右の切り欠き部12、13の上側の領域にそれぞれ23mm×8mmの大きさの電気端子部14、15が設けられている(図1(A)参照)。一方の切り欠き部12の上側の領域に電流制限端子14が設けられ、他方の切り欠き部13の上側の領域に電圧制限端子15が設けられている(図1(A)参照)。また、正面側の電気端子部14(図1(A)参照)は、該端子部14にあるスルーホール16により背面側の同面積の電気端子部14(図1(B)参照)と電気的に接続している。また、正面側の電気端子部15(図1(A)参照)は、該端子部15にあるスルーホール16により背面側の同面積の電気端子部15(図1(B)参照)と電気的に接続している。
【0098】
前記銅張ガラスエポキシ基板11には、図10の回路、すなわち64個の20kΩの抵抗器(誤差1%)18及び64個のトランジスタ(2SA2154GR)19並びに片面(正面)のみに接続部88として1段目連結ソケット(プレシデップ社製「PCDレセプタクル399シリーズ丸ピンDIPソケット」、2.54mmピッチ、64ピン連結ソケット)88が実装されている(図1、2参照)。
【0099】
各接続部81のリード線84は、図2に示すように、ソケット本体部82の上面から上方に向けて延ばされたのち基板11に向けて約90度湾曲状に折り曲げられ、該基板11の下部に設けられた64個の穴にそれぞれ挿通されて半田20で回路基板11に固着されている。
【0100】
前記1段目連結ソケット88の底面に凹設されたリード線差込口に、上記本発明の連結ソケット1の各リード線4をそれぞれ差し込んで連結して、前記1段目連結ソケット88の下に本発明の連結ソケット1を抜き差し自在に連結して2段に構成した。こうして銅張ガラスエポキシ基板(回路基板)11に連結ソケット1が着脱自在に取り付けられてなる固体電解コンデンサ素子製造用治具10を得た(図1、2参照)。なお、2段目の連結ソケット1を陽極体52接続端子として用いる。
【0101】
図10に示すように、回路基板11に実装された1個の抵抗器18と1個のトランジスタ19のエミッタEが接続され、該トランジスタ19のコレクタCが連結ソケット1の1個のソケット本体部2に電気接続されている。前記抵抗器18の他方は、電流制限端子14に接続されている。また、トランジスタ19のベースBは、電圧制限端子15に接続されている。
【0102】
[コンデンサ素子の製造]
前記固体電解コンデンサ素子製造用治具10の連結ソケット1の各リード線挿通孔38に、前記陽極体(導電性焼結体)52のニオブのリード線53を挿通して電気的に接続した(図8、9参照)。図8に示すように、64個の陽極体(導電性焼結体)52の高さを一致させると共に向きも揃えた。このように64個の陽極体52が接続されたコンデンサ素子製造用治具10を10枚準備し、これらを、接続された陽極体52が下に吊るされる向きとなるように、平行に配列させる保持枠に取り付けた。保持枠は、コンデンサ素子製造用治具10の電気接続端子14、15を差し込むソケットを有している。この保持枠を、中に1質量%燐酸水溶液(化成処理液)59が入った金属(ステンレス)製の処理容器50の上方位置に配置せしめた(図8参照)。前記10枚のコンデンサ素子製造用治具10は、互いに8mmの間隔をあけて平行状に前記保持枠に取り付けられている。なお、前記金属製処理容器50は、陰極板51の役割も兼ねる。
【0103】
前記保持枠を操作して、前記陽極体52の全部及びリード線53の下端5mm分が前記処理液59に浸漬されるように前記治具10を下降せしめてその高さ位置で固定した。この浸漬状態で、電圧制限値(化成電圧)が8.3Vとなるように電圧制限端子15と陰極板(金属製処理容器50を含む)51との間に電圧を印加し、電流制限値が2.1mAとなるように電流制限端子14と電圧制限端子15との間に電圧を印加して、通電した。前記化成処理液59の温度を65℃に維持した状態で8時間陽極酸化を行うことによって、前記導電性焼結体52の細孔及び外表面並びにリード線の一部(5mm分)の表面に誘電体層54を形成した。なお、前記陽極酸化中、4時間経過後から8時間経過までの後半の4時間は、電流制限値を1時間当たり0.5mAの割合で連続的に減少させた(誘電体層形成工程)。
【0104】
前記誘電体層54を表面に備えた陽極体52を水洗、乾燥させた後、20質量%のエチレンジオキシチオフェンエタノール溶液に浸漬する一方、前記処理容器50とは別の処理容器50内に半導体層形成用溶液59(水30質量部及びエチレングリコール70質量部からなる混合溶媒にエチレンジオキシチオフェンを0.4質量%、アントラキノンスルホン酸を0.6質量%含有せしめた溶液)を投入した後、前記誘電体層54を表面に備えた陽極体52の全部及びリード線53の下端5mm分が前記半導体層形成用溶液59に浸漬されるように前記治具10を下降せしめてその高さ位置で固定した。この浸漬状態で20℃で1時間電解重合を行った。
【0105】
前記電解重合において、最初の15分間は、電圧制限値を10V、電流制限値を44μAに設定し、次の15分間は、電圧制限値を10V、電流制限値を82μAに設定し、最後の30分間は、電圧制限値を10V、電流制限値を101μAに設定した。
【0106】
この1時間の電解重合を6回(合計6時間の電解重合を)行うことによって、表面に誘電体層54が形成された陽極体52の該誘電体層54の表面に、導電性高分子からなる半導体層55を形成した(半導体層形成工程)。
【0107】
次いで、再化成を行うことによって前記誘電体層54の修復をした。この再化成は、前記陽極酸化時と同じ溶液を用いて、制限電圧6.3V、制限電流0.1mAで15分間行った(第1再化成処理工程)。
【0108】
次に、前記半導体層55の表面にカーボンペースト(アチソン社製「エレクトロダッグPR−406」)を塗布し125℃で乾燥を行った(カーボンペースト塗布工程)。
【0109】
次に、前記コンデンサ素子製造用治具10の1段目連結ソケット88から、連結ソケット1(誘電体層54と半導体層55とカーボンペーストとが積層されてなる陽極体52が接続された状態のもの)を取り外した後、該連結ソケット1をゲージ圧マイナス99KPaの減圧下に190℃で30分間放置して熱処理を行った(第1熱処理工程)。室温に戻した後に、減圧装置内に酸素1%含有窒素ガスをゲージ圧マイナス80KPaになるように投入し30分間放置した。その後、ゲージ圧マイナス99KPaの減圧に戻した。この酸素含有窒素ガス投入、ゲージ圧マイナス99KPaの減圧に戻す一連の操作をさらに8回繰り返した後、減圧装置内に空気を投入して、連結ソケット1(誘電体層54と半導体層55とカーボンペーストとが積層されてなる陽極体52が接続された状態のもの)を減圧装置内から取り出した。
【0110】
次に、前記コンデンサ素子製造用治具10の1段目連結ソケット88の底面のリード線差込口に、連結ソケット1(誘電体層54と半導体層55が積層されてなる陽極体52が接続された状態のもの)の各リード線4を再度それぞれ差し込んで連結(電気接続)した。このようにして連結ソケット1が取り付けられたコンデンサ素子製造用治具10を10枚準備し、前記同様にして保持枠に取り付け、再化成を、前記重合後の第1再化成と同条件で行った(第2再化成処理工程)。
【0111】
次に、誘電体層54と半導体層55とカーボンペーストとが積層されてなる陽極体52を水洗、乾燥した後、カーボンペースト層の表面に銀ペーストを積層して陽極体層を形成せしめて(銀ペースト積層工程)、コンデンサ素子56を得た。
【0112】
[コンデンサの製造]
次に、リードフレームにコンデンサ素子56を載置し、リードフレームの陽極端子にコンデンサ素子の陽極リード(半導体側)を接続し、リードフレームの陰極端子にコンデンサ素子の陽極体52を接続した後、トランスファー封止、エージングを行うことによって、大きさ3.5mm×2.8mm×1.8mm、定格2.5V、容量330μFのニオブ固体電解コンデンサを640個作製した。
【0113】
[負荷試験]
作製したニオブ固体電解コンデンサ640個の内500個を試験用実装基板にリフロー炉で半田付けした。リフロー条件は、予熱225℃、30秒、ピーク温度250℃3秒である。負荷試験装置でこのように実装したコンデンサについて、温度110℃、印加電圧2.5V、2000時間の負荷試験を行った。その後、ニオブ固体電解コンデンサの2.5Vでの漏れ電流値を実測した。その結果、500個のニオブ固体電解コンデンサの全てが0.1CVμA以内に入っていた。ここで、0.1CVとは、コンデンサの容量と定格電圧の積に0.1をかけた(乗じた)数値である。例えば、コンデンサの測定容量が335μF、定格電圧2.5Vであれば、0.1×335×2.5=83.75である。
【0114】
[耐湿性試験]
作製したニオブ固体電解コンデンサ640個の内20個を、ピーク温度260℃5秒で230℃以上が30秒の温度パターンを有するリフロー炉中で基板に実装した。このように実装したコンデンサを60℃90%RHの恒温恒湿槽に入れ、電圧無印加状態で2000時間放置した。その後、このコンデンサについて室温で2.5Vを印加して30秒後の漏れ電流を測定した。その結果、20個のニオブ固体電解コンデンサの全てが0.1CVμA以内に入っていた。
【0115】
[繰り返し試験]
同じ連結ソケット1を使い続けて上記コンデンサ素子56の作製をさらに49回(合計50回)行った。50回目では、コンデンサの製造まで行い、負荷試験及び耐湿性試験を実施した。また、50回目で使用した連結ソケット1を分解してソケット本体部2を取り出し、腐食の状態を観察した。その結果、負荷試験及び耐湿性試験では、試験をした全てのコンデンサが0.1CVμA以内であり、またソケット本体部2の腐食は認められなかった。
【0116】
<実施例2>
半導体層形成工程と第1再化成処理工程との間に下記第2熱処理工程を追加する一方、カーボンペースト塗布工程後の第1熱処理工程及び第2再化成処理工程を省略した(即ちカーボンペースト塗布後にそのまま銀ペーストを積層した)以外は、実施例1と同様にして、大きさ3.5mm×2.8mm×1.8mm、定格2.5V、容量330μFのニオブ固体電解コンデンサを640個作製した。
【0117】
なお、第2熱処理工程は、前記コンデンサ素子製造用治具10の1段目連結ソケット88から、連結ソケット1(誘電体層54と半導体層55が積層されてなる陽極体52が接続された状態のもの)を取り外した後、該連結ソケット1をゲージ圧マイナス99KPaの減圧下に220℃で5分間放置して熱処理を行うものであり、該熱処理の後に、室温に戻し、実施例1と同様に減圧装置内での処理を経て、減圧装置内から連結ソケット1を取り出し、次いで、前記コンデンサ素子製造用治具10の1段目連結ソケット88の底面のリード線差込口に、連結ソケット1(誘電体層54と半導体層55が積層されてなる陽極体52が接続された状態のもの)の各リード線4を再度それぞれ差し込んで連結(電気接続)し、次の第1再化成処理工程に移行した。
【0118】
作製したニオブ固体電解コンデンサについて実施例1と同様に負荷試験及び耐湿性試験を行った。その結果、負荷試験では、500個のニオブ固体電解コンデンサの全てが0.1CVμA以内に入っていた。耐湿性試験では、20個のニオブ固体電解コンデンサの全てが0.1CVμA以内に入っていた。
【0119】
さらに、実施例1と同様に繰り返し試験を行った。その結果、負荷試験及び耐湿性試験では、試験をした全てのコンデンサが0.1CVμA以内であり、またソケット本体部2の腐食は認められなかった。
【0120】
<実施例3>
誘電体層形成工程と半導体層形成工程との間に下記第3熱処理工程を追加する一方、カーボンペースト塗布工程後の第1熱処理工程及び第2再化成処理工程を省略した(即ちカーボンペースト塗布後にそのまま銀ペーストを積層した)以外は、実施例1と同様にして、大きさ3.5mm×2.8mm×1.8mm、定格2.5V、容量330μFのニオブ固体電解コンデンサを640個作製した。
【0121】
なお、第3熱処理工程は、前記コンデンサ素子製造用治具10の1段目連結ソケット88から、連結ソケット1(誘電体層54と半導体層55が積層されてなる陽極体52が接続された状態のもの)を取り外した後、該連結ソケット1を酸素分圧が2%のアルゴンガス雰囲気の炉に入れて360℃で45分間放置して熱処理を行うものであり、該熱処理の後、常温に戻し、炉を酸素分圧が5%のアルゴンガスに置換し40分間放置し、次いで酸素分圧が10%のアルゴンガスに置換し30分間放置し、次いで酸素分圧が15%のアルゴンガスに置換し20分間放置した後、連結ソケット1を取り出し、次いで、前記コンデンサ素子製造用治具10の1段目連結ソケット88の底面のリード線差込口に、連結ソケット1(誘電体層54と半導体層55が積層されてなる陽極体52が接続された状態のもの)の各リード線4を再度それぞれ差し込んで連結(電気接続)し、再度実施例1と同様の条件で2回目の誘電体層形成を行った後、次の半導体層形成工程に移行した。
【0122】
作製したニオブ固体電解コンデンサについて実施例1と同様に負荷試験及び耐湿性試験を行った。その結果、負荷試験では、500個のニオブ固体電解コンデンサの全てが0.1CVμA以内に入っていた。耐湿性試験では、20個のニオブ固体電解コンデンサの全てが0.1CVμA以内に入っていた。
【0123】
さらに、実施例1と同様に繰り返し試験を行った。その結果、負荷試験及び耐湿性試験では、試験をした全てのコンデンサが0.1CVμA以内であり、またソケット本体部2の腐食は認められなかった。
【0124】
<実施例4>
カーボンペースト塗布工程後の第1熱処理工程及び第2再化成処理工程を省略した(即ちカーボンペースト塗布後にそのまま銀ペーストを積層した)以外は、実施例1と同様にして、大きさ3.5mm×2.8mm×1.8mm、定格2.5V、容量330μFのニオブ固体電解コンデンサを640個作製した。
【0125】
作製したニオブ固体電解コンデンサについて実施例1と同様に負荷試験及び耐湿性試験を行った。その結果、負荷試験では、500個のニオブ固体電解コンデンサのうち、0.1CVμA以下が492個、0.1CVμAを超えて0.15CVμA以下が6個、0.15CVμAを超えて0.2CVμA以下が2個であった。耐湿性試験では、20個のニオブ固体電解コンデンサのうち、0.1CVμA以下が19個、0.1CVμAを超えて0.15CVμA以下が1個であった。
【0126】
さらに、実施例1と同様に繰り返し試験を行った。その結果、負荷試験では、500個のニオブ固体電解コンデンサのうち、0.1CVμA以下が490個、0.1CVμAを超えて0.15CVμA以下が8個、0.15CVμAを超えて0.2CVμA以下が2個であった。耐湿性試験では、20個のニオブ固体電解コンデンサの全てが、0.1CVμA以下であった。また、ソケット本体部2の腐食は認められなかった。
【0127】
<比較例1>
連結ソケット1として、実施例1の1段目連結ソケット88と同様の連結ソケット(プレシデップ社製「PCDレセプタクル311シリーズ丸ピンDIPソケット」、2.54mmピッチ、64ピン連結ソケット。但し、リード線は直線状である。なお、この連結ソケットは、絶縁部が樹脂製であり、差込口部分にはソケット本体部の金属が露出している。また、このソケット本体部は、実施例1で使用したソケット本体部と同様の材質である。)を用いた以外は、実施例4と同様にして、大きさ3.5mm×2.8mm×1.8mm、定格2.5V、容量330μFのニオブ固体電解コンデンサを640個作製した。
【0128】
作製したニオブ固体電解コンデンサについて実施例1と同様に負荷試験及び耐湿性試験を行った。その結果、負荷試験では、500個のニオブ固体電解コンデンサのうち、0.1CVμA以下が491個、0.1CVμAを超えて0.15CVμA以下が7個、0.15CVμAを超えて0.2CVμA以下が2個であった。耐湿性試験では、20個のニオブ固体電解コンデンサのうち、0.1CVμA以下が19個、0.1CVμAを超えて0.15CVμA以下が1個であった。
【0129】
さらに、実施例1と同様に繰り返し試験を行った。その結果、負荷試験では、500個のニオブ固体電解コンデンサのうち、0.1CVμA以下が440個、0.1CVμAを超えて0.15CVμA以下が54個、0.15CVμAを超えて0.2CVμA以下が6個であった。耐湿性試験では、20個のニオブ固体電解コンデンサのうち、0.1CVμA以下が10個、0.1CVμAを超えて0.15CVμA以下が6個、0.15CVμAを超えて0.2CVμA以下が4個であった。また、ソケット本体部2の大半に腐食が認められた。なお、22回目以降、化成処理容器50の底に褐色の堆積物が観察された。
【0130】
本願は、2010年12月13日付で出願された日本国特許出願の特願2010−277100号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明に係る連結ソケットは、コンデンサ素子製造用治具の部材として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。また、本発明のコンデンサ素子製造用治具は、電解コンデンサ素子製造用治具として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。また、本発明の製造方法により得られたコンデンサは、例えば、パソコン、カメラ、ゲーム機、AV機器、携帯電話等のデジタル機器や、各種電源等の電子機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0132】
1…連結ソケット
2…ソケット本体部
3…ガラス
3a…上面
4…リード線部
5…絶縁部
5a…上面
5b…下面
6…収容部
7…小孔
9…隙間
10…コンデンサ素子製造用治具
11…回路基板
14…電流制限素子(電気接続端子)
15…電圧制限素子(電気接続端子)
18…抵抗器
19…トランジスタ
21…柱部
22…傾斜面部
30…電気回路
31…ダイオード
37…リード線差込口
51…陰極板
52…陽極体
54…誘電体層
55…半導体層
56…コンデンサ素子
59…処理液(化成処理液、半導体層形成用溶液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差込口が設けられた複数個の導電性のソケット本体部と、
前記ソケット本体部の、差込口を含む少なくとも一部を受容し得る収容部が複数個形成されている連結ソケットであって、
前記ソケット本体部が差込口を前記収容部の底面に向けて収容され、個々の収容部の各底面から連結ソケットの下面に連通する小孔が設けられた絶縁部を備え、
前記絶縁部の少なくとも下面は、耐腐食性を有する材料で構成され、
前記絶縁部の収容部内に前記ソケット本体部の少なくとも一部が収容されて固定され、前記差込口と前記小孔が連通されていることを特徴とする連結ソケット。
【請求項2】
前記絶縁部は、さらに耐熱性をも有する材料で構成されている請求項1に記載の連結ソケット。
【請求項3】
前記絶縁部を構成する材料として、合成樹脂、セラミックス、ガラス及びステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料が用いられている請求項1または2に記載の連結ソケット。
【請求項4】
前記絶縁部を構成する材料として、透明な材料が用いられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【請求項5】
前記小孔を下方より平面視した形状は、直径0.1mmの円形より大きく、一辺が0.55mmの正方形以下の範囲に入る請求項1〜4のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【請求項6】
前記小孔は、リード線を有するコンデンサ用陽極体の該リード線が挿通されるための孔であり、前記小孔を下方より平面視した形状が、前記挿通されるリード線の横断面形状より大きく、かつ、該断面形状を1.1倍に拡大した相似形状と同じかまたはそれより小さい形状範囲に入る請求項1〜5のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【請求項7】
前記小孔の深さが、0.2mm〜8mmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【請求項8】
前記収容されたソケット本体部と前記絶縁部との間の隙間の少なくとも一部に充填材が封入されることによって、前記ソケット本体部が前記絶縁部の収容部内に固定されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【請求項9】
前記絶縁部の収容部内に前記ソケット本体部の全部が収容され、前記充填材の上面は、前記絶縁部の上面よりも低い位置にある請求項1〜8のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【請求項10】
前記ソケット本体部は、柱部と、該柱部の下端の周縁部から下方に向けて外側に拡がるように延ばされた傾斜面部とを備える請求項1〜9のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【請求項11】
前記ソケット本体部が、電気的に接続された導電性のリード線部を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の連結ソケット。
【請求項12】
電気回路が形成された回路基板と、
前記回路基板に着脱自在に取り付けられた請求項1〜11のいずれか1項に記載の連結ソケットと、を備え、
前記ソケット本体部は、電気的に前記電気回路に接続され、
前記電気回路が個々の前記ソケット本体部毎に電流を制限することを特徴とするコンデンサ素子製造用治具。
【請求項13】
前記電気回路が定電流回路である請求項12に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【請求項14】
前記電気回路が、さらに、個々の前記ソケット本体部毎に電圧を制限する回路でもある請求項12または13に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【請求項15】
前記連結ソケットにコンデンサ用陽極体が接続されている請求項12〜14のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具の回路基板から、陽極体が接続された連結ソケットを、取り外し、該連結ソケットに接続された状態の陽極体に対し熱処理を行う熱処理工程、を含むことを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理を200℃〜500℃で行う請求項15に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の製造方法で得たコンデンサ素子の陽極体及び半導体層に、それぞれ電極端子を電気的に接続し、前記電極端子の一部を残して封止するコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−186512(P2012−186512A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150333(P2012−150333)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【分割の表示】特願2012−518634(P2012−518634)の分割
【原出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】