説明

連結器施錠検出装置

【課題】自動連結器の連結作業で、錠掛けを容易に確認可能とし且つ溶鋼運搬用鉄道車輌でも使える耐熱性をもつ連結器施錠検出装置の提供。
【解決手段】自動連結器1の錠5と連動する磁石26と、錠5が錠掛け位置のときに磁石26に対向し、その逆位置のときに磁石26と離隔する位置に配設され、磁石26の磁界を電気信号に変換する磁気センサ23と、磁気センサ23により磁石26の磁界を検出し、磁界検出の有無を示す磁気検知信号を出力する磁気検出手段及び磁気検知信号を無線送信する無線送信手段を有する無線タグ24と、磁気センサ23及び無線タグ24を連結器本体に固定する金属製の取付架台21と、磁気センサ23及び無線タグ24を被覆する耐熱・遮熱シート25を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車輌を連結する自動連結器の錠掛けを確認するための連結器施錠確認システムに使用される連結器施錠検出装置に関し、特に製鋼所等における高温貨物運搬用の鉄道車輌で用いられる連結器施錠検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼所においては、溶鋼を運搬するために鉄道車輌が使用されており、これらの鉄道車両では自動連結器が広く使用されている。自動連結器は、図7〜図10に示すように、先端がワの字状(略凹の字状)に形成された端部2a,2bを有する連結器胴2と、連結器胴2の一方側端部2aにナックルピン3により回動自在に軸支されたナックル(肘)4と、ナックル4を固定する錠5(図8〜図10参照)と、錠5を作動させる錠揚げ6、錠5の作動に連動してナックル4を作動するナックル開き7(図9,図10参照)と、連結器胴2の上方に回動自在に軸承された解放梃子8と、上端が解放梃子8に遊嵌され下端が錠揚げ6の上端に遊嵌された吊りリンク9とを備えている(非特許文献1の図3−6,非特許文献2,特許文献1の図1,2,4〜7、特許文献2の図1〜9参照)。錠5の下部には錠5の位置を確認するための延出部5aが突設されている(図9,図10参照)。
【0003】
また、解放梃子8は、図7に示したように、クランク軸部8a、レバー部8b、及び操作軸部8cの3つの部分から構成されている。直棒状のクランク軸部8aは、連結器胴2に対して固定されたリンク軸受部10,10の軸受穴に回転自在に軸承されている。レバー部8bは、クランク軸部8aの基端側を垂直に折曲して形成されている。操作軸部8cは、クランク軸部8aの先端側に折曲形成され、クランク軸部8aに平行な先端部分がクランク軸部8aを中心に偏心して回動するように形成されている。
【0004】
この自動連結器1は、錠掛け状態、錠控え状態、及びナックル(肘)開き状態の3つの状態がある(特許文献2の図5〜9参照)。錠掛け状態とは、連結中又は非連結中にナックル4が閉じて錠5が入り固定されている状態である。錠控え状態とは、車両が連結されている状態から解放梃子8を操作する事により、錠5が解除されて、ナックル4がフリーとなり、車両の切り離しが可能となった状態である。ナックル(肘)開き状態とは、ナックル4が開いて連結可能な状態である。
【0005】
図8は自動連結器1の各状態を示す図、図9は図8のA−A線で切ったときの各状態の矢視断面図、図10は図8のB−B線で切ったときの各状態の矢視断面図である。図8(a)は非連結時の錠掛け状態、図8(b)はナックル開き状態、図8(c)は連結時の錠掛け状態を表す。図9(a)は錠掛け状態、図9(b)は錠5が錠揚げ6により最大高位置に達したときの状態、図9(c)は錠控え状態を表す。また、図10(a)は錠掛け状態、図10(b)は錠控え状態を表す。
【0006】
非連結時の錠掛け状態では、図8(a)に示すようにナックル4は錠5によって固定される。このとき、錠5は、図9(a),図10(a)に示すように最も下がった位置にあり、ナックル4の肘尻と連結器胴2の錠室内壁との間隙に錠5が入りナックル4が固定された状態にある。錠掛け位置では、錠5の下端の延出部5aが連結器胴2の下面の開口部から突出した状態となり、延出部5aの突出を目視により確認することで、錠掛け状態にあることが確認できる。
【0007】
この状態から、解放梃子8を廻して吊りリンク9により錠揚げ6を引き上げる。解放梃子8の回転に伴い、錠揚げ6は、図9(a),図10(a)の錠掛け位置から、図9(b)の最大高位置を経由して、図9(c),図10(b)の錠控え位置に移動する。それに伴い、錠5も連動して錠控え位置に引き上げられる。これにより、ナックル4の肘尻が解放され、ナックル4はフリーの状態となる。尚、この錠控え位置では、錠5の下端の延出部5aは連結器胴2の錠室内部に収容された状態となる。
【0008】
錠控え状態とした際に、左右の自動連結器1のナックル4の肘尻がナックル開き7により蹴られ、図8(b)のようなナックル(肘)開き状態となる。この状態で、左右の車輌を接近させ、図8(c)のように左右の自動連結器1のナックル4,4を係合させる。そして、再び解放梃子8を逆に廻して吊りリンク9により錠揚げ6を自重により落とす。これにより、図8(a)のように、ナックル4の肘尻と連結器胴2の錠室内壁との間隙に錠5が入りナックル4が固定され、錠掛け状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−308094号公報
【特許文献2】特開平11−278265号公報
【特許文献3】実願昭46−106068号明細書(実開昭48−61507号公報)
【特許文献4】実願昭55−155974号明細書(実開昭57−77076号公報)
【特許文献5】実願昭51−15922号明細書(実開昭52−108709号公報)
【特許文献6】特開平8−127340号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】宮本昌幸,「図解・鉄道の科学」,講談社,2006年6月,pp.63-69.
【非特許文献2】丸山弘志,「鉄道の科学・旅が楽しくなる本」,講談社,1980年7月,pp.126-153.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の自動連結器1に於ける連結作業では、錠揚げ6が錠掛け位置となるようにレバー部8bを操作した後、錠5の下部の延出部5aが連結器胴2の下面から突出したことを目視で確認することにより、連結が確実に行われたことを確認する。この連結確認作業は、事故防止のために極めて重要である。
【0012】
しかしながら、連結確認作業は、自動連結器1の下面を覗見する必要があり、作業者にとっては見づらいという問題がある。また、夜間の連結作業においては、自動連結器1の付近は照明光の当たりにくい部分であるため暗い場合が多く、作業者はわざわざ携帯ライトで照らして確認する必要がある。そのため、作業性が悪く、作業者による確認のし忘れというヒューマン・エラーを惹起する可能性もある。
【0013】
図11は、実際に使用されている自動連結器の写真であるが、連結器胴2の下面に突出する延出部5aは、構造上小さいため目立ちにくく、位置的にも作業者が見にくい位置にあることが分かる。従って、自動連結器の連結作業において、作業者が、錠掛けが行われたことを容易に確認することを可能とする連結器施錠検出装置が求められる。
【0014】
また、特に溶鋼を運搬する鉄道車輌の自動連結器では、貨車への注湯中に1000℃以上の温度の溶鋼が飛散して自動連結器1に当たる場合がある。また、溶鋼が貯湯された貨車(取鍋台車)は非常に高温であるため自動連結器には大きな輻射熱が加わる。従って、このような過酷な環境下で使用される連結器施錠検出装置は、飛散溶鋼や輻射熱により誤動作や破損を生じない耐熱性が必要とされる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、鉄道車輌の自動連結器の連結作業において、作業者が、錠掛けが行われたことを容易に確認することを可能とし、且つ溶鋼を運搬する鉄道車輌においても使用可能な耐熱性を備えた連結器施錠検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る連結器施錠検出装置の第1の構成は、ナックルが係合することにより連結し、錠を錠掛け位置に移動させたときに前記ナックルが施錠され、錠控え位置に移動させたときに前記ナックルが解錠される連結器の施錠を確認する連結器施錠確認システムにおいて、前記連結器の施錠を検出し無線により携帯報知装置に対して施錠検出信号を送信する連結器施錠検出装置であって、
前記錠と連動して移動するように配設された磁石と、
前記錠が錠掛け位置に位置するときに前記磁石に対向し、その逆位置に位置するときに前記磁石と離隔する位置に配設され、前記磁石の磁界を電気信号に変換する磁気センサと、
前記磁気センサにより前記磁石の磁界を検出し、磁界検出の有無を示す磁気検知信号を出力する磁気検出手段、及び前記磁気検知信号を無線送信する無線送信手段を有する無線タグと、
前記磁気センサ及び前記無線タグを前記連結器本体に固定する金属製の取付架台と、
前記磁気センサ及び前記無線タグを被覆する耐熱材及び遮熱材と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、錠が錠掛け位置に移動したとき、磁石が磁気センサと対向するため、磁気センサは磁界を検出する。無線タグの磁気検出手段は磁気センサの出力に基づいて磁気検知信号を出力する。この磁気検知信号は送信手段により携帯報知装置に無線送信される。携帯報知装置は、磁気検知信号を受信すると、解錠又は施錠を作業者に報知する。これにより、作業者は携帯報知装置の報知を確認するだけで、錠掛けが行われたことを容易に確認することができる。又、磁気センサ及び無線タグは、耐熱材及び遮熱材により被覆されており、高温の溶鋼などが飛散して当たっても磁気センサや無線タグが熱により破壊されることは防止される。従って、溶鋼を運搬する鉄道車輌においても使用可能な耐熱性を持つことができる。
【0018】
上記したように、溶鋼を運搬する鉄道車輛の自動連結器では、溶鋼を貯湯された台車に組み付けられた取鍋からの輻射熱を継続的に受けるため、連結器施錠検出装置を構成する電子機器への熱影響を緩和するために高性能の耐熱性を有する耐熱材で筐体を組立、それに内装することも考えられるが、連結器に加わる衝撃を無視できないし、さらに、後述するように無線信号の発信不調の問題もあることから、本発明の構成においては、非加熱面側、すなわち連結器施錠検出装置自身が可燃物燃焼温度以上に温度上昇しない性質を有する遮熱材で覆うとともに溶鋼の取鍋への注湯時などに顕著な溶鋼の溶滴が飛散し、直接、連結器施錠検出装置に降り注ぐことがあり、一般的に遮熱材は輻射熱を反射しても直接接触した場合、耐熱材ほどの耐性はないため、溶滴が接触しても素材そのものが高温に晒されても劣化せず熱伝導率が低い耐熱材でさらに覆うことで連結器施錠検出装置の耐熱性を確保するものである。
【0019】
ここで、「耐熱材」とは、素材そのものが高温で劣化せず熱伝導率が低い素材で作られているシート状の材料のことをいい、「遮熱材」とは、高温に対しては耐熱材ほどの耐性はないが、熱伝導率が耐熱材より低い素材で作られているシート状の材料のことをいう。
なお、溶鋼を運搬する鉄道車輌は屋外走行が基本であるから耐熱性を有する素材は充分な耐候性を有するものを選択することが好ましい。
【0020】
本発明に係る連結器施錠検出装置の第2の構成は、前記第1の構成において、前記遮熱材は、玄武岩を含有する玄武岩シートであり、前記耐熱材は、ガラス繊維を含有するガラス繊維シートであることを特徴とする。
玄武岩シート、ガラス繊維シートは、溶鋼を運搬する鉄道車輌に用いるものとして充分な耐候性を有している。
【0021】
この構成によれば、玄武岩シートやガラス繊維シートは溶融温度が1000℃以上であるため飛散した溶鋼が当たっても容易に溶融することはなく、また、ガラス繊維シートは内部に多くの空隙(空気層)を含むため充分な耐熱性を有する。従って、溶鋼を運搬する鉄道車輌においても使用可能な耐熱性を持つことができる。
【0022】
本発明に係る連結器施錠検出装置の第3の構成は、前記第1の構成において、前記取付架台に突設され、前記無線タグの一側面から上面を囲む形状に形成された金属製の第1の保護枠材と、
前記第1の保護枠材の配設された前記無線タグの側面と反対の側面に沿って、前記取付架台に突設された第2の保護枠材と、を備え、
前記第1の保護枠材の先端と前記第2の保護枠材の先端との間に間隙が形成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、無線タグは、金属製の第1の保護枠材及び第2の保護枠材により囲まれるため、外部からの衝撃に対して保護され、外部衝撃による破損が防止される。また、第1の保護枠材の先端と第2の保護枠材の先端との間に間隙を形成し、第1及び第2の保護枠材がループ状となるのを防止している。これにより、無線タグによる無線通信時に第1及び第2の保護枠材に渦電流が発生するのを防止し、通信電波が遮蔽されることが防止される。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の連結器施錠検出装置によれば、鉄道車輌の自動連結器の連結作業において、作業者が、錠掛けが行われたことを容易に確認することを可能とするとともに、溶鋼を運搬する鉄道車輌においても使用可能な充分な耐熱性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係る連結器施錠検出装置20を鉄道車輛の自動連結器1に装着した状態を表す要部の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係る連結器施錠検出装置20を鉄道車輛の自動連結器1に装着した状態を表す外観斜視図である。
【図3】本発明の連結器施錠検出装置20が使用される連結器施錠確認システムの一例の全体構成を示す図である。
【図4】図1,図2の連結器施錠検出装置20の固定部20aを設置時に対し、天地逆に見たときの外観図である。
【図5】図4における連結器施錠検出装置20の固定部20aの外側の耐熱・遮熱シート25を除いた状態を示す外観図である。
【図6】図5の磁気センサ23及び無線タグ部24を被覆している内側の耐熱・遮熱シート35a,35bを取り除いた状態を表す斜視図である。
【図7】従来の自動連結器(柴田式連結器)の斜視図である。
【図8】自動連結器1の各状態を示す図である。
【図9】図8のA−A線で切ったときの各状態の矢視断面図である。
【図10】図8のB−B線で切ったときの各状態の矢視断面図である。
【図11】実際に使用されている自動連結器の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0027】
図1及び図2は、本発明の実施例1に係る連結器施錠検出装置20を鉄道車輛の自動連結器1に装着した状態を表す外観斜視図である。図1,図2に示した自動連結器1は、図7〜図10に示したものと同様のものであり、ナックル4が係合することにより連結し、錠5を錠掛け位置に移動させたときにナックル4が施錠され、錠控え位置に移動させたときにナックル4が解錠されるものである。連結器施錠検出装置20は、この自動連結器1の施錠を確認する連結器施錠確認システムにおいて使用され、自動連結器1の施錠/解錠を検出し、無線により携帯報知装置に対して施錠検出信号を送信するものである(図3参照)。
【0028】
連結器施錠検出装置20は、固定部20aと錠連動部20bとから構成されている。錠連動部20bは、錠5の延出部5aの下端に固定された磁石26からなる。一方、固定部20aは、自動連結器1の連結器胴2の先端付近の下面に取り付けられている。連結器施錠検出装置20は、取付架台21と施錠検出部22を備えている。取付架台21は、金属製の平板により構成され、連結器胴2(連結器本体)の下面側に、ボルトや溶接等により固定されている。施錠検出部22は、取付架台21の下面に固定されている。施錠検出部22は、後述する磁気センサ23、無線送信機能を備えた無線タグ部24、並びに磁気センサ23及び無線タグ部24を被覆し保護する耐熱・遮熱シート25を備えている。
【0029】
図3は、本発明の連結器施錠検出装置20が使用される連結器施錠確認システムの一例の全体構成を示す図である。この例に示した連結器施錠確認システムは、自動連結器1に取り付けられた磁石26及び施錠検出部22と、作業者Wが携帯する携帯報知装置30を備えている。
【0030】
磁石26は、錠5から下方に延設された延出部5aに固定されており、錠5の上下移動(図9,図10参照)に連動して上下に移動する。磁気センサ23は、磁石26の磁界を電気信号に変換する。この磁気センサ23は、連結器胴2に固定された取付架台21の下面に固定されており、錠5が錠掛け位置に位置するときに磁石26と対向し、その逆位置に位置するときに磁石26から離隔するように配設されている。
【0031】
無線タグ部24は、磁気センサ23により前記磁石26の磁界を検出し、磁界検出の有無を表す磁気検知信号を出力する磁気検出手段、当該磁気検知信号を無線送信する無線送信手段、及び磁気検出手段と無線送信手段に電力を供給する電池を内部に備えている(図示せず)。施錠検出部22の無線タグ部24から送信される磁気検知信号は、作業者Wが携帯する携帯報知装置30により受信される。携帯報知装置30は、受信された磁気検知信号に基づいて、連結器の施錠の有無(施錠又は解錠)を作業者Wに報知する。尚、無線送信手段と携帯報知装置30との間の最大通信距離は5m以下とされている。これは、隣接する自動連結器に配設された連結器施錠検出装置20からの電波が混信するのを極力防止するためである。
【0032】
図4は、図1,図2の連結器施錠検出装置20の固定部20aを設置時に対し、天地逆に見たときの外観図である。図5は、図4における連結器施錠検出装置20の固定部20aの外側の耐熱・遮熱シート25を除いた状態を示す外観図である。図6は、図5の磁気センサ23及び無線タグ部24を被覆している内側の耐熱・遮熱シート35a,35bを取り除いた状態を表す斜視図である。
【0033】
取付架台21は、連結器胴2の下面側に固定可能な形状に整形された金属平板からなり、その上面(図3では下面)には、第1保護枠材27及び第2保護枠材28a,28bが突設されている(図5参照)。第1保護枠材27は、無線タグ部24の一側面から上面を取り囲む形状に形成されたL字状の金属製の板材である。第2保護枠材28a,28bは、第1保護枠材27の配設された無線タグ部24の側面と反対の側面に沿って、取付架台21に突設された2本の金属製の棒材である。第2保護枠材28a,28bは、直棒状に形成されており、取付架台21の上面に対して垂直に突設されている。第1保護枠材27の先端と第2保護枠材28a,28bの先端との間には、間隙29が形成されている。これは、第1保護枠材27の先端と第2保護枠材28a,28bの先端とを分離することによって第1保護枠材27と第2保護枠材28a,28bとがループとならないようにし、無線通信時に渦電流が生じることを防止するためである。これにより、第1保護枠材27及び第2保護枠材28a,28bに遮蔽されることなく、無線タグ部24は携帯報知装置30と無線通信を行うことができる。
【0034】
また、取付架台21の上面には、無線タグ部24を固定するためのビス31が複数本突設され(図5参照)、磁気センサ23を固定するためのビス32が複数本突設されている。無線タグ部24及び磁気センサ23は、これらのビス31,32によって取付架台21の上面に固定されている。更に、取付架台21の上面には、無線タグ部24の脱落防止のため、無線タグ部24を繋鎖33により係留するための鎖留34が突設されている。無線タグ部24は、この鎖留34に繋鎖33で連繋されており、仮に作業中や走行中に振動等によりビス31が外れた場合でも、無線タグ部24は取付架台21から地面に落下することが防止される。
【0035】
無線タグ部24及び磁気センサ23は、図6に示すように、ケーブル36により接続されている。無線タグ部24は、直方体状の耐熱樹脂製のケーシング37を取付架台21の上面に固定するための2つのL字金具38a,38bを備えている。ケーシング37の内部には、前述した磁気検出手段、無線送信手段、電池などの回路が実装されている。L字金具38a,38bには複数のビス孔39が開設されており、これらのビス孔39にビス31を通してナット(図示せず)で締着することで、無線タグ部24が取付架台21上に固定される。
【0036】
磁気センサ23は、ホール素子、磁気抵抗素子などの通常の磁気センサが使用されている。この磁気センサ23は、凸状に曲折された金属板からなる取付金具40によって取付架台21上に固定されている。取付金具40には、複数のビス孔41が開設されており、これらのビス孔41にビス32を通してナット(図示せず)で締着することで、磁気センサ23が取付架台21上に固定される。
【0037】
図5に示すように、無線タグ部24は、内側の耐熱・遮熱シート35aによって被覆された状態で取付架台21の上面に配設され、磁気センサ23は、耐熱・遮熱シート35bによって被覆された状態で取付架台21の上面に配設され、また、ケーブル36も耐熱・遮熱シート35cによって被覆される。無線タグ部24は、耐熱・遮熱シート35aの外側から、3つの耐熱バンド35dによって締結され、耐熱・遮熱シート35aが固定されている。また、無線タグ部24は、第1保護枠材27及び第2保護枠材28a,28bによって構成された保護枠の内側に配設されている。また、ケーブル36を被覆する耐熱・遮熱シート35cには、アルミ粘着遮熱シートが使用されている。
【0038】
更に、図4に示すように、耐熱・遮熱シート35aで被覆された無線タグ部24及び保護枠(第1保護枠材27及び第2保護枠材28a,28b)並びに耐熱・遮熱シート35cで被覆されたケーブル36の一部の外側を被覆するように、外側の耐熱・遮熱シート25が覆設されている。そして、耐熱・遮熱シート25の外側から3つの耐熱バンド25aで締結することにより、耐熱・遮熱シート25が無線タグ部24及び保護枠に固定されている。
【0039】
ここで、上述の耐熱・遮熱シート25及び耐熱・遮熱シート35a,35b,35cは、耐熱材からなる耐熱シートと遮熱材からなる遮熱シートの2つのシートを重畳したものが使用される。
【0040】
本実施例においては耐熱シートは、横浜ゴムMBE社製のパイロシリーズPST32−36−2(商品名)を使用している。この耐熱シートは、ガラス繊維を含有するガラス繊維シートであり、使用温度が260℃、20分間の連続使用最高温度が1090℃、30秒間の連続使用最高温度が1640℃、火炎遮断温度が1600℃であり、溶鋼を貯湯された取鍋台車を運搬する鉄道車輛用の自動連結器施錠検出装置の耐熱保護材として十二分に使用可能なものである。
【0041】
また、同様に遮熱シートは、菊池シート鋼業株式会社製の玄武岩シートを使用している。この遮熱シートは、使用温度が−260℃〜350℃、連続使用最高温度は550℃、火炎遮断温度が1200℃、溶融温度が1350℃であり、溶鋼を貯湯された取鍋台車を運搬する鉄道車輛用の自動連結器施錠検出装置の耐熱保護材として十二分に使用可能なものである。
【符号の説明】
【0042】
1 自動連結器
2 連結器胴
2a,2b 端部
3 ナックルピン
4 ナックル
5 錠
5a 延出部
6 錠揚げ
7 ナックル開き
8 解放梃子
8a クランク軸部
8b レバー部
8c 操作軸部
9 吊りリンク
10,10 リンク軸受部
20 連結器施錠検出装置
20a 固定部
20b 錠連動部
21 取付架台
22 施錠検出部
23 磁気センサ
24 無線タグ部
25 耐熱・遮熱シート
26 磁石
27 第1保護枠材
28a,28b 第2保護枠材
29 間隙
30 携帯報知装置
31,32 ビス
33 繋鎖
34 鎖留
35a,35b,35c 耐熱・遮熱シート
35d 耐熱バンド
36 ケーブル
37 ケーシング
38a,38b L字金具
39 ビス孔
40 取付金具
41 ビス孔
W 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナックルが係合することにより連結し、錠を錠掛け位置に移動させたときに前記ナックルが施錠され、錠控え位置に移動させたときに前記ナックルが解錠される連結器の施錠を確認する連結器施錠確認システムにおいて、前記連結器の施錠を検出し無線により携帯報知装置に対して施錠検出信号を送信する連結器施錠検出装置であって、
前記錠と連動して移動するように配設された磁石と、
前記錠が錠掛け位置に位置するときに前記磁石に対向し、その逆位置に位置するときに前記磁石と離隔する位置に配設され、前記磁石の磁界を電気信号に変換する磁気センサと、
前記磁気センサにより前記磁石の磁界を検出し、磁界検出の有無を示す磁気検知信号を出力する磁気検出手段、及び前記磁気検知信号を無線送信する無線送信手段を有する無線タグと、
前記磁気センサ及び前記無線タグを前記連結器本体に固定する金属製の取付架台と、
前記磁気センサ及び前記無線タグを被覆する耐熱材及び遮熱材と、を備えたことを特徴とする連結器施錠検出装置。
【請求項2】
前記遮熱材は、玄武岩を含有する玄武岩シートであり、前記耐熱材は、ガラス繊維を含有するガラス繊維シートであることを特徴とする請求項1記載の連結器施錠検出装置。
【請求項3】
前記取付架台に突設され、前記無線タグの一側面から上面を囲む形状に形成された金属製の第1の保護枠材と、
前記第1の保護枠材の配設された前記無線タグの側面と反対の側面に沿って、前記取付架台に突設された第2の保護枠材と、を備え、
前記第1の保護枠材の先端と前記第2の保護枠材の先端との間に間隙が形成されていることを特徴とする請求項1記載の連結器施錠検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−67306(P2013−67306A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208349(P2011−208349)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000159618)吉川工業株式会社 (60)