説明

連結器施錠確認システム及び連結器施錠検出装置並びに連結器施錠確認方法

【課題】連結作業で作業者が錠掛けを容易に確認できる連結器施錠確認システムの提供。
【解決手段】磁石21、磁気センサ22及び磁気検知信号を無線送信する無線送信部を備えたアクティブRFID22を具備する連結器施錠検出装置と、磁気検知信号を受信する無線受信部及び磁気検知信号に基づき連結器の施錠の有無を報知する報知部を具備する携帯報知装置30とを備え、磁石21及び磁気センサ22の一方は錠5と連動して移動すし、他方は連結器本体2に固定され、錠5が錠掛け位置のとき磁石21及び磁気センサ22が対向し、その逆位置のときに離隔するように配設する。これにより、作業者Wは携帯報知装置30を確認するだけで、錠掛けを容易に確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車輌を連結する自動連結器の連結作業において、作業者が、錠掛けが行われたことを確認するための連結器施錠確認システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に日本国内で広く使用されている鉄道車輌の自動連結器は、解放型連結器と呼ばれ、図8に示すように、自動連結器1は、先端がワの字状(略凹の字状)に形成された連結器胴2と、連結器胴2の一方側端部2aにナックルピン3により回動自在に軸支されたナックル(肘)4と、ナックル4を固定する錠5(図9〜図11参照)と、錠5を作動させる錠揚げ6、錠5の作動に連動してナックル4を作動するナックル開き7(図10,図11参照)と、連結器胴2の上方に回動自在に軸承された解放梃子8と、上端が解放梃子8に遊嵌され下端が錠揚げ6の上端に遊嵌された吊りリンク9とを備えている(非特許文献1の図3−6,非特許文献2,特許文献1の図1,2,4〜7、特許文献2の図1〜9参照)。錠5の下部には錠5の位置を確認するための延出部5aが突設されている(図10,図11参照)。
【0003】
また、解放梃子8は、図8に示したように、クランク軸部8a、梃子レバー部8b、及び操作軸部8cの3つの部分から構成されている。直棒状のクランク軸部8aは、連結器胴2に対して固定されたリンク軸受部10,10の軸受穴に回転自在に軸承されている。梃子レバー部8bは、クランク軸部8aの基端側を垂直に折曲して形成されている。操作軸部8cは、クランク軸部8aの先端側に折曲形成され、クランク軸部8aに平行な先端部分がクランク軸部8aを中心に偏心して回動するように形成されている。
【0004】
この自動連結器1は、錠掛け状態、錠控え状態、及びナックル(肘)開き状態の3つの状態がある(特許文献2の図5〜9参照)。錠掛け状態とは、連結中又は非連結中にナックル4が閉じて錠5が入り固定されている状態である。錠控え状態とは、車両が連結されている状態から解放梃子8を操作する事により、錠5が解除されて、ナックル4がフリーとなり、車両の切り離しが可能となった状態である。ナックル(肘)開き状態とは、ナックル4が開いて連結可能な状態である。
【0005】
図9は自動連結器1の各状態を示す図、図10は図9のA−A線で切ったときの各状態の矢視断面図、図11は図9のB−B線で切ったときの各状態の矢視断面図である。図9(a)は非連結時の錠掛け状態、図9(b)はナックル開き状態、図9(c)は連結時の錠掛け状態を表す。図10(a)は錠掛け状態、図10(b)は錠5が錠揚げ6により最大高位置に達したときの状態、図10(c)は錠控え状態を表す。また、図11(a)は錠掛け状態、図11(b)は錠控え状態を表す。
【0006】
非連結時の錠掛け状態では、図9(a)に示すようにナックル4は錠5によって固定される。このとき、錠5は、図10(a),図11(a)に示すように最も下がった位置にあり、ナックル4の肘尻と連結器胴2の錠室内壁との間隙に錠5が入りナックル4が固定された状態にある。錠掛け位置では、錠5の下端の延出部5aが連結器胴2の下面の開口部から突出した状態となり、延出部5aの突出を目視により確認することで、錠掛け状態にあることが確認できる。
【0007】
この状態から、解放梃子8を廻して吊りリンク9により錠揚げ6を引き上げる。解放梃子8の回転に伴い、錠揚げ6は、図10(a),図11(a)の錠掛け位置から、図10(b)の最大高位置を経由して、図10(c),図11(b)の錠控え位置に移動する。それに伴い、錠5も連動して錠控え位置に引き上げられる。これにより、ナックル4の肘尻が解放され、ナックル4はフリーの状態となる。尚、この錠控え位置では、錠5の下端の延出部5aは連結器胴2の錠室内部に収容された状態となる。
【0008】
錠控え状態とした際に、左右の自動連結器1のナックル4の肘尻がナックル開き7により蹴られ、図9(b)のようなナックル(肘)開き状態となる。この状態で、左右の車輌を接近させ、図9(c)のように左右の自動連結器1のナックル4,4を係合させる。そして、再び解放梃子8を逆に廻して吊りリンク9により錠揚げ6を自重により落とす。これにより、図9(c)のように、ナックル4の肘尻と連結器胴2の錠室内壁との間隙に錠5が入りナックル4が固定され、錠掛け状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−308094号公報
【特許文献2】特開平11−278265号公報
【特許文献3】実願昭46−106068号明細書(実開昭48−61507号公報)
【特許文献4】実願昭55−155974号明細書(実開昭57−77076号公報)
【特許文献5】実願昭51−15922号明細書(実開昭52−108709号公報)
【特許文献6】特開平8−127340号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】宮本昌幸,「図解・鉄道の科学」,講談社,2006年6月,pp.63-69.
【非特許文献2】丸山弘志,「鉄道の科学・旅が楽しくなる本」,講談社,1980年7月,pp.126-153.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の自動連結器1に於ける連結作業では、錠揚げ6が錠掛け位置となるように梃子レバー部8bを操作した後、錠5の下部の延出部5aが連結器胴2の下面から突出したことを目視で確認することにより、連結が確実に行われたことを確認する。この連結確認作業は、事故防止のために極めて重要である。
【0012】
特に、製鐵所構内においては、溶鋼・溶銑を運ぶための台車を24時間止まることなく工場間を運搬しているため、連結器の連結/解放を1日で数十回以上行っている。また、作業環境も照度不足・雨天・平坦部以外での作業に加えて、連結錠本体も塵埃などにより目視確認がしづらい環境下にある。目視のみで連結錠の錠状態が判別できない場合においては、軌条内への立ち入りを必要とする。さらに台車本体側には制動装置が常設されておらず、機関車側の制動力のみで車両全体を停止させており、連結不良時には台車を停止することができない。過去においては台車連結不良による台車逸走の事例もある。
【0013】
連結確認作業は、自動連結器1の下面を覗見する必要があり、作業者にとっては見づらいという問題がある。また、夜間の連結作業においては、自動連結器1の付近は照明光の当たりにくい部分であるため暗い場合が多く、作業者はわざわざ携帯ライトで照らして確認する必要がある。そのため、作業性が悪く、作業者による確認のし忘れというヒューマン・エラーを惹起する可能性もある。
【0014】
図12は、実際に使用されている自動連結器の写真であるが、連結器胴2の下面に突出する延出部5aは、構造上小さいため目立ちにくく、位置的にも作業者が見にくい位置にあることが分かる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、鉄道車輌の自動連結器の連結作業において、作業者が、錠掛けが行われたことを容易に確認することができる連結器施錠確認システム及び連結器施錠検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る連結器施錠確認システムの第1の構成は、ナックル同士が係合することにより連結し、錠を錠掛け位置に移動させたときに前記ナックルが施錠され、錠控え位置に移動させたときに前記ナックルが解錠される連結器において、当該連結器の施錠を確認する連結器施錠確認システムであって、
磁石と、
前記磁石の磁界を電気信号に変換する磁気センサと、
前記磁気センサにより前記磁石の磁界を検出し、磁界検出の有無を表す磁気検知信号を出力する磁気検出手段と、
前記磁気検知信号を無線送信する無線送信部と、を具備する連結器施錠検出装置と、
前記連結器施錠検出装置の前記無線送信部から送信される前記磁気検知信号を受信する無線受信部と、
前記無線受信部が受信した前記磁気検知信号に基づき連結器の施錠の有無を報知する報知部と、を具備する携帯報知装置と、を備え、
前記磁石及び前記磁気センサのうち、一方は、錠と連動して移動するように配設されており、他方は、前記連結器本体に固定されており、前記錠が錠掛け位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサが対向し、その逆位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサは離隔するように配設されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、錠が錠掛け位置に移動したとき、連結器施錠検出装置の磁石が磁気センサと対向するため、磁気検出手段は磁気検知信号を出力する。この磁気検知信号は送信部から携帯報知装置に無線送信される。携帯報知装置は、磁気検知信号を受信すると、報知部が磁気検知信号に基づき、解錠/施錠を作業者に報知する。これにより、作業者は携帯報知装置の報知を確認するだけで、錠掛けが行われたことを容易に確認することができる。
【0018】
ここで、携帯報知装置の報知部としては、磁気検知信号の受信を音で報知する音声報知手段や、LEDの点灯のように光により報知する光報知手段や、振動(バイブレーション)により報知する振動報知手段などを使用することができる。
【0019】
本発明に係る連結器施錠確認システムの第2の構成は、前記第1の構成において、前記連結器施錠検出装置は、前記磁気センサ、前記磁気検出手段、及び前記送信部に電力を供給する電池を備え、
前記送信部は、前記磁気検知信号を間歇的に送信するものであることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、連結器施錠検出装置は、磁気検知信号を間歇的に送信することで無線送信に於ける消費電力を抑え、電池寿命を延ばすことができる。
【0021】
ここで、磁気検知信号の間歇送信の間隔については、本発明では特に特定しないが、通常は0.3秒〜3秒程度とするのが好適である。間歇送信間隔が0.3秒より短いと電池の消耗が早くなりすぎ、また間隔を3秒より長くすると、作業者がLEDや音声を確認するための待ち時間が長くなりすぎるからである。
【0022】
本発明に係る連結器施錠確認システムの第3の構成は、前記第1又は2の構成において、前記携帯報知装置の前記報知部は、前記磁気検知信号が磁界検出を表すときに錠掛け状態であることを表示し、前記磁気検知信号が磁界非検出を表すときに錠控え状態であることを表示する表示装置を備えていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、携帯報知装置の表示装置に、錠掛け状態か錠控え状態かを表示することで、作業者による誤認を防止し、連結作業の安全性をより向上させることができる。
【0024】
ここで、表示装置としては、LEDランプ、LED文字表示板、液晶文字表示板等を使用することができる。
【0025】
本発明に係る連結器施錠確認システムの第4の構成は、前記第1乃至3の何れか一の構成において、前記携帯報知装置の前記報知部は、前記磁気検知信号が磁界検出を表すときに錠掛け状態であることを音声出力し、前記磁気検知信号が磁界非検出を表すときに錠控え状態であることを音声出力する音声装置を備えていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、音声装置により錠掛け状態か錠控え状態かを音声出力することで、作業者が錠掛け状態の確認をし忘れることを確実に防止することができる。
【0027】
本発明に係る連結器施錠確認システムの第5の構成は、前記第1乃至4の何れか一の構成において、前記磁気センサは、前記錠が錠掛け位置に位置するときに前記磁石との間の距離が0.5cm乃至5cmとなる位置に配設されており、
前記送信部と前記無線受信部は、無線通信が可能な最大距離が5m以下であることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、連結器施錠検出装置と携帯報知装置との間の通信距離を5m以下(通常は1m〜5m)とすることで、連結作業中の自動連結器の連結器施錠検出装置からの磁気検知信号のみを受信し、他の自動連結器の連結器施錠検出装置からの磁気検知信号が混信して受信されることを防止することができる。
【0029】
ここで、錠が錠掛け位置での磁気センサと磁石との間の距離を0.5cm〜5cmとしたのは、どのような環境においても磁気センサが確実に磁石の磁界を検出できるようにするためである。5cmよりも遠いと、汚れなどが付着した際に磁気センサが磁界を検出できなくなる恐れが高くなり、また、0.5cmよりも近いと、磁気センサと磁石が何らかの外部衝撃により衝突し破損する恐れが高くなるからである。また、無線通信が可能な最大距離を5m以下としたのは、通信距離が5mよりも長いと、隣接して停車している鉄道車両の自動連結器の連結器施錠検出装置からの磁気検知信号を誤って受信してしまう可能性が高まるからである。なお、作業者がレバーを操作する位置は通常、連結器錠から1mから2mの範囲内にあるので、最大通信距離を1mから2mとするのがより好適である。
【0030】
本発明に係る連結器施錠検出装置は、ナックル同士が係合することにより連結し、錠を錠掛け位置に移動させたときに前記ナックルが施錠され、錠控え位置に移動させたときに前記ナックルが解錠される連結器の連結作業において、当該連結器の施錠状態を検出する連結器施錠検出装置であって、
磁石と、
前記磁石の磁界を電気信号に変換する磁気センサと、
前記磁気センサにより前記磁石の磁界を検出し、磁界検出の有無を表す磁気検知信号を出力する磁気検出手段と、
前記磁気検知信号を無線送信する無線送信部と、を備え、
前記磁石及び前記磁気センサのうち、一方は、錠と連動して移動するように配設されており、他方は、前記連結器本体に固定されており、前記錠が錠掛け位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサが対向し、その逆位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサは離隔するように配設されていることを特徴とする。
【0031】
この構成により、上記第1の構成の連結器施錠確認システムで使用可能な連結器施錠検出装置を提供することができる。
【0032】
本発明に係る連結器施錠確認方法は、ナックル同士が係合することにより連結し、錠を錠掛け位置に移動させたときに前記ナックルが施錠され、錠控え位置に移動させたときに前記ナックルが解錠される連結器の連結作業において、当該連結器の施錠を確認する連結器施錠確認方法であって、
前記磁石及び前記磁石の磁界を電気信号に変換する磁気センサのうち、一方は、錠と連動して移動するように配設し、他方は、前記連結器本体に固定し、前記錠が錠掛け位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサが対向し、その逆位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサは離隔するように配設しておき、
前記磁気センサにより前記磁石の磁界を検出して、無線送信装置により磁気検知信号を無線送信し、
当該磁気検知信号を、作業者が携帯可能な携帯報知装置で受信し、当該磁気検知信号に基づき連結器の施錠の有無を報知手段により報知することを特徴とする。
【0033】
この構成により、作業者は携帯報知装置の報知を確認するだけで、錠掛けが行われたことを容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明によれば、錠と連動して移動する磁石と、この磁石が錠掛け位置に移動したことを検出する磁気センサを設け、磁気センサの磁気検知信号を、作業者が携帯する携帯報知装置に無線送信し、携帯報知装置において、自動連結器の錠が錠掛け位置にあるか否かを報知する構成としたことで、作業者は携帯報知装置の報知を確認するだけで、錠掛けが行われたことを容易に確認することができる。そのため、夜間での確認作業も容易となり作業性が上がるとともに、作業者の錠掛け確認のし忘れといったヒューマン・エラーを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1に係る連結器施錠検出装置を備えた自動連結器の構成を表す断面図である。
【図2】図1のアクティブRFID22の回路構成を表すブロック図である。
【図3】実施例1に係る連結器施錠確認システムの全体構成を表す図である。
【図4】携帯報知装置30の外観図である。
【図5】携帯報知装置30の回路構成を表すブロック図である。
【図6】実施例1に係る連結器施錠確認システムの動作を表すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例2に係る連結器施錠確認システムの全体構成を表す図である。
【図8】従来の自動連結器(解放型連結器)の斜視図である。
【図9】自動連結器1の各状態を示す図である。
【図10】図9のA−A線で切ったときの各状態の矢視断面図である。
【図11】図9のB−B線で切ったときの各状態の矢視断面図である。
【図12】実際に使用されている自動連結器の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0037】
図1は、本発明の実施例1に係る連結器施錠検出装置を備えた自動連結器の構成を表す断面図である。図1(a)は錠掛け状態、図1(b)は錠控え状態を表す。図1において、自動連結器1は、連結器胴(連結器本体)2、ナックルピン3、ナックル4、錠5、延出部5a、錠揚げ6、及びナックル開き7を備えており、これらは図11の対応する符号部分と同様のものである。
【0038】
本実施例の自動連結器1は、錠5の延出部5aの下端に磁石21を備えている。また、連結器胴2の下面に取付部23が延出されており、その取付部23の先端にアクティブRFID22が固定されている。アクティブRFID22は、錠5が錠掛け位置(図1(a))に位置するときに磁石21と対向し、鍵控え位置(図1(b))に位置するときに磁石21と離隔する位置に配設されている。このアクティブRFID22の内部には、磁石21の作る磁界を検出する磁気センサ24と、磁気センサ24により磁石21の磁界を検出し磁気検知信号を出力する磁気検出手段25と、磁気検知信号を無線送信する送信部26と、電池27が実装されている(図2参照)。錠5が「錠掛け位置」(図1(a))に位置するとき、磁石21と磁気センサ24との間の距離は3〜5cm程度とされ、錠5が「錠控え位置」(図1(b))に位置するとき、磁石21と磁気センサ24との間の距離は10cm以上とされている。これにより、錠5が「錠掛け位置」のときに磁気センサ24は磁界を検出し、「錠控え位置」のときには磁気センサ24は磁界を検出しない。
【0039】
尚、アクティブRFID22は、IP54相当の防水・防塵仕様とされている。電池27は、軽量化・小型化の観点から、ボタン電池を使用するのが好適である。アクティブRFID22は、ボタン電池内蔵型として使い捨てタイプとしてもよい。また、アクティブRFID22及び磁石21は、振動に耐えうるように十分な強度で固定され、取り付け及び交換が可能な形状とされている。
【0040】
図2は、図1のアクティブRFID22の回路構成を表すブロック図である。アクティブRFID22は、磁気センサ24、磁気検出手段25、無線送信部26、及び電池27を備えている。磁気センサ24は、磁石21により作られる磁界を検出し、電気信号に変換する。磁気センサ24としては、磁気スイッチ、ホール素子、磁気抵抗素子などを使用することができる。磁気検出手段25は、磁気センサ24により磁石21の磁界を検出し磁気検知信号を出力する。この磁気検出手段25は、マイコンを用いて構成されている。尚、「磁気検知信号」は、磁気センサ24が磁界を検出したことを表す磁気検出状態、又は磁気センサ24が磁界を検出しなかったことを表す磁気非検出状態の何れかの状態を表す信号である。無線送信部26は、磁気検出手段25が出力する磁気検知信号を携帯報知装置へ無線送信するとともに、当該アクティブRFID22に固有に割り振られた識別コード(ID)を携帯報知装置へ無線送信する。電池27は、磁気センサ24、磁気検出手段25、及び無線送信部26へ電力を供給する電源である。
【0041】
尚、無線送信部26による磁気検知信号及び識別コードの送信は、電池27の電力消費を抑えるために間歇的に行われる。このときの送信間隔は、間歇送信間隔が短いと電池の消耗が早くなりすぎ、また間隔を長くしすぎると、作業者がLEDや音声を確認するための待ち時間が長くなりすぎるという観点から、0.3〜3秒とするのが好適である。
【0042】
図3は、実施例1に係る連結器施錠確認システムの全体構成を表す図である。連結器施錠確認システムは、自動連結器1に取り付けられた磁石21及びアクティブRFID22と、作業者Wが携帯する携帯報知装置30から構成されている。アクティブRFID22から送信される磁気検知信号は、携帯報知装置30により受信される。
【0043】
図4は、携帯報知装置30の外観図である。携帯報知装置30は、ケーシング31、LED表示ランプ32a,32b,32c、スピーカ33、電源切替スイッチ34、及び音声出力ボタン35を備えている。ケーシング31はプラスチック製であり、略直方体形状に形成されている。また、鉄道機関車を無線操縦する制御コントローラ(テレコン)に装着可能な装着カバー(図示せず)を備えている。LED表示ランプ32a,32b,32cは、磁気検知信号の受信を表示するためのランプであり、ケーシング31の表側面に並設されており、それぞれ、赤色,黄色,青色のLEDが使用されている。スピーカ33は、ケーシング31の表側面の中央部付近に設けられており、磁気検知信号の受信を音声により報知するものである。電源切替スイッチ34は、携帯報知装置30の電源のオン・オフ及び携帯報知装置30の機能切り替えを行うためのトグル・スイッチである。この電源切替スイッチ34により、携帯報知装置30の機能を、転轍作業と連結確認作業との何れかに切り替えることができる。転轍作業が選択された場合には、携帯報知装置30は送信機となり、連結確認作業が選択された場合には携帯報知装置30は受信器となる。また、この機能の切り替えに際しては、音声ガイドにより案内がされる。尚、転轍作業の機能に関しては本発明には直接関係がないため、以下では説明は省略する。音声出力ボタン35は、スピーカ33のオン・オフを行うためのスイッチであり、スピーカ33のボリュームも兼ねている。
【0044】
尚、アクティブRFID22と携帯報知装置30との通信可能距離(最大通信距離)は、デフォルトで5m以下とされている。これにより、隣接する自動連結器1のアクティブRFID22からの信号が混信して受信されることを抑止することができる。
【0045】
図5は、携帯報知装置の回路構成を表すブロック図である。LED表示ランプ32は、図4の3つのLED表示ランプ32a,32b,32cを表す。また、スピーカ33は図4のものと同様である。無線受信部36は、アクティブRFID22から送信されてくる磁気検知信号及び識別コードを受信する。制御部36は、マイコンにより構成されており、無線受信部36が磁気検知信号を受信したときに音声合成部38へ報知信号を出力するとともに、LED表示ランプ32a,32b,32cの点灯制御を行う。音声合成部38は、報知信号が入力されると、その報知信号に従って予め設定された音声ガイド信号をスピーカ33へ出力する。これによりスピーカ33から音声ガイドが報知される。電池39は、LED表示ランプ32,32a,32b,32c、スピーカ33、無線受信部36、制御部37、及び音声合成部38へ電力を供給する電源である。電池27はどのようなものを使用してもよいが、省資源化の観点から、充電式の乾電池を使用するのが好適である。
【0046】
尚、制御部36は、新たな識別コードを受信し始めたときには、通信可能エリアに入ったことを示す受信開始信号を音声合成部38へ出力する。音声合成部38は、受信開始信号が入力されると、通信可能エリアに入った旨を、スピーカ33から音声ガイド(例えば、「通信エリアに入りました」など)により報知する。
【0047】
以上のように構成された本実施例の連結器施錠確認システムについて、以下その動作を説明する。図6は、実施例1に係る連結器施錠確認システムの動作を表すフローチャートである。
【0048】
連結確認作業を開始する場合、まず、ステップS1において、作業者Wにより携帯報知装置30の電源切替スイッチ34がオン状態とされる。
【0049】
次に、ステップS2において、携帯報知装置30の制御部37は、無線受信部36からの出力を一定時間監視し、その監視時間内に磁気検知信号及びID信号が受信されたかどうかを判定する。磁気検出信号が受信されなかった場合、ステップS3において、LED表示ランプ32a,32b,32cをすべて消灯して、ステップS2に戻る。一方、監視時間内に磁気検知信号及びID信号が受信された場合、次のステップS4へ移行する。
【0050】
ステップS4において、携帯報知装置30の制御部37は、複数のID信号が受信されたか否かを判定する。ここで、1つのID信号のみが受信された場合、ステップS8へ移行し、複数のID信号が受信された場合には次のステップS5へ移行する。
【0051】
ステップS5において、携帯報知装置30の制御部37は、複数のID信号が受信されたことを表示するために、黄色のLED表示ランプ32bを点滅させ、他のLED表示ランプ32a,32cは消灯する。そして、ステップS6において、制御部37は、音声出力ボタン35がオン状態か否かを判定し、オン状態であれば、ステップS7において、作業者Wに対し操作対象の自動連結器に接近するように促す音声ガイド(例えば、「通信可能エリア外です」など)を報知し、ステップS2に戻る。これにより、作業者Wは操作対象の自動連結器に接近するように促される。一方、音声出力ボタン35がオフ状態であれば、何もせずにステップS2に戻る。
【0052】
上記ステップS4において1つのID信号のみが受信された場合、ステップS8において、制御部37は、受信された磁気検知信号が「磁気検出状態」か「磁気非検出状態」かを判定する。「磁気検出状態」であれば、ステップS9へ移行し、「磁気非検出状態」であれば、ステップS12へ移行する。
【0053】
上記ステップS8において「磁気検出状態」の場合、ステップS9において、制御部37は、青色のLED表示ランプ32cを点灯し、他のLED表示ランプ32a,32bを消灯して、「鍵掛け状態」であることを表示する。これにより、作業者Wは操作対象の自動連結器が「鍵掛け状態」であることを、ランプ色を目視することで確認できる。そして、ステップS10において、制御部37は、音声出力ボタン35がオン状態か否かを判定し、オン状態であれば、ステップS11において、作業者Wに対し「鍵掛け状態」であることを音声ガイド(例えば、「連結されました」など)により報知し、ステップS2に戻る。これにより、作業者Wは操作対象の自動連結器が「鍵掛け状態」であることを音声により正確に確認できる。一方、音声出力ボタン35がオフ状態であれば、何もせずにステップS2に戻る。
【0054】
上記ステップS8において「磁気非検出状態」の場合、ステップS12において、制御部37は、赤色のLED表示ランプ32aを点灯し、他のLED表示ランプ32b,32cを消灯して、「鍵控え状態」であることを表示する。これにより、作業者Wは操作対象の自動連結器が「鍵控え状態」であることを、ランプ色を目視することで確認できる。そして、ステップS13において、制御部37は、音声出力ボタン35がオン状態か否かを判定し、オン状態であれば、ステップS14において、作業者Wに対し「鍵控え状態」であることを音声ガイド(例えば、「連結されていません」など)により報知し、ステップS2に戻る。これにより、作業者Wは操作対象の自動連結器が「鍵控え状態」であることを音声により正確に確認できる。一方、音声出力ボタン35がオフ状態であれば、何もせずにステップS2に戻る。
【0055】
以上のように、本実施例の連結器施錠確認システムによれば、作業者Wは携帯報知装置30のLED表示ランプ32a,32b,32cの点灯又はスピーカ33から出力される音声ガイドによる報知を確認するだけで、自動連結器1が「鍵掛け状態」であるか「鍵控え状態」であるかを容易に確認することができる。そのため、夜間における連結確認作業も容易となり作業性が上がるとともに、作業者Wの連結確認のし忘れといったヒューマン・エラーを効果的に防止することができる。
【実施例2】
【0056】
図7は、本発明の実施例2に係る連結器施錠確認システムの全体構成を表す図である。本実施例の連結器施錠確認システムの構成は、基本的には図3と同様であるが、磁石21とアクティブRFID22との配置が逆とされている点のみが異なる。このような構成としても、実施例1と全く同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 自動連結器
2 連結器胴
2a,2b 端部
3 ナックルピン
4 ナックル
5 錠
5a 延出部
6 錠揚げ
7 ナックル開き
8 解放梃子
8a クランク軸部
8b 梃子レバー部
8c 操作軸部
9 吊りリンク
10,10 リンク軸受部
21 磁石
22 アクティブRFID
23 取付部
24 磁気センサ
25 磁気検出手段
26 無線送信部
27 電池
30 携帯報知装置
31 ケーシング
32,32a,32b,32c LED表示ランプ
33 スピーカ
34 電源切替スイッチ
35 音声出力ボタン
36 無線受信部
37 制御部
38 音声合成部
39 電池
W 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナックル同士が係合することにより連結し、錠を錠掛け位置に移動させたときに前記ナックルが施錠され、錠控え位置に移動させたときに前記ナックルが解錠される連結器において、当該連結器の施錠を確認する連結器施錠確認システムであって、
磁石と、
前記磁石の磁界を電気信号に変換する磁気センサと、
前記磁気センサにより前記磁石の磁界を検出し、磁界検出の有無を表す磁気検知信号を出力する磁気検出手段と、
前記磁気検知信号を無線送信する無線送信部と、を具備する連結器施錠検出装置と、
前記連結器施錠検出装置の前記無線送信部から送信される前記磁気検知信号を受信する無線受信部と、
前記無線受信部が受信した前記磁気検知信号に基づき連結器の施錠の有無を報知する報知部と、を具備する携帯報知装置と、を備え、
前記磁石及び前記磁気センサのうち、一方は、錠と連動して移動するように配設されており、他方は、前記連結器本体に固定されており、前記錠が錠掛け位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサが対向し、その逆位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサは離隔するように配設されていることを特徴とする連結器施錠確認システム。
【請求項2】
前記連結器施錠検出装置は、前記磁気センサ、前記磁気検出手段、及び前記無線送信部に電力を供給する電池を備え、
前記無線送信部は、前記磁気検知信号を間歇的に送信するものであることを特徴とする請求項1に記載の連結器施錠確認システム。
【請求項3】
前記携帯報知装置の前記報知部は、前記磁気検知信号が磁界検出を表すときに錠掛け状態であることを表示し、前記磁気検知信号が磁界非検出を表すときに錠控え状態であることを表示する表示装置を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の連結器施錠確認システム。
【請求項4】
前記携帯報知装置の前記報知部は、前記磁気検知信号が磁界検出を表すときに錠掛け状態であることを音声出力し、前記磁気検知信号が磁界非検出を表すときに錠控え状態であることを音声出力する音声装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の連結器施錠確認システム。
【請求項5】
前記磁気センサは、前記錠が錠掛け位置に位置するときに前記磁石との間の距離が0.5cm乃至5cmとなる位置に配設されており、
前記無線送信部と前記無線受信部は、無線通信が可能な最大距離が5m以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の連結器施錠確認システム。
【請求項6】
ナックル同士が係合することにより連結し、錠を錠掛け位置に移動させたときに前記ナックルが施錠され、錠控え位置に移動させたときに前記ナックルが解錠される連結器の連結作業において、当該連結器の施錠状態を検出する連結器施錠検出装置であって、
磁石と、
前記磁石の磁界を電気信号に変換する磁気センサと、
前記磁気センサにより前記磁石の磁界を検出し、磁界検出の有無を表す磁気検知信号を出力する磁気検出手段と、
前記磁気検知信号を無線送信する無線送信部と、を備え、
前記磁石及び前記磁気センサのうち、一方は、錠と連動して移動するように配設されており、他方は、前記連結器本体に固定されており、前記錠が錠掛け位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサが対向し、その逆位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサは離隔するように配設されていることを特徴とする連結器施錠検出装置。
【請求項7】
ナックル同士が係合することにより連結し、錠を錠掛け位置に移動させたときに前記ナックルが施錠され、錠控え位置に移動させたときに前記ナックルが解錠される連結器の連結作業において、当該連結器の施錠を確認する連結器施錠確認方法であって、
前記磁石及び前記磁石の磁界を電気信号に変換する磁気センサのうち、一方は、錠と連動して移動するように配設し、他方は、前記連結器本体に固定し、前記錠が錠掛け位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサが対向し、その逆位置に位置するときに前記磁石及び前記磁気センサは離隔するように配設しておき、
前記磁気センサにより前記磁石の磁界を検出して、無線送信装置により磁気検知信号を無線送信し、
当該磁気検知信号を、作業者が携帯可能な携帯報知装置で受信し、当該磁気検知信号に基づき連結器の施錠の有無を報知手段により報知することを特徴とする連結器施錠確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−52735(P2013−52735A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191583(P2011−191583)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000159618)吉川工業株式会社 (60)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)