連続的invitro進化
【課題】RNA配向性RNAポリメラーゼが、進化した(突然変異化された)mRNA分子のライブラリーの作製と同様な態様で、複製の間合成されたmRNA分子内に突然変異を導入することを見出す。これらの突然変異化mRNA分子は、挿入及び欠失並びに点突然変異のためサイズにおいて様々であり、相当するタンパク質が、例えばリボソーム、mRNA、及びde novo合成されたタンパク質をコードするmRNAを含む3成分複合体上にディスプレーされるように、in vitroで翻訳され得る。リボソームディスプレー法によって生産されたタンパク質の大きな割合が、正確にホールディングされた機能的な形態を有する条件を同定する。
【解決手段】従来のアフィニティー成熟法に固有の数、ライブラリーサイズ、及び時間消費工程の制限を避ける、タンパク質のin vitro進化のための新規なCIVE法の提供を可能にした。
【解決手段】従来のアフィニティー成熟法に固有の数、ライブラリーサイズ、及び時間消費工程の制限を避ける、タンパク質のin vitro進化のための新規なCIVE法の提供を可能にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、翻訳系において標的結合タンパク質を突然変異させ選択する方法、及びこの方法における使用のためのポリヌクレオチド構築物に関する。本発明の方法は、診断上及び治療上の有用性を有する分子の生産に適用できる。
【背景技術】
【0002】
タンパク質のin vitro進化は、周知の遺伝子配列に突然変異を導入し、突然変異体配列のライブラリーを生産すること、該配列を翻訳し、突然変異体タンパク質を生産すること、次いで所望の特性を有する突然変異体タンパク質を選択することを含む。この方法は、改良された診断上及び治療上の有用性を有するタンパク質を生産する可能性を有する。しかしながら不幸にも、この方法の可能性は、突然変異体及びライブラリーの生産のために現在利用可能な方法における不完全性によって制限されている。
【0003】
例えば、独特の個々の遺伝子及びそれらがコードするタンパク質の大きなライブラリー(例えば1010のライブラリーサイズを超えるもの)の生産は、翻訳効率の制限のため、ファージディスプレー系では困難であると理解されている。更なる欠点は、ファージディスプレー系を利用する方法(図1)が、突然変異、増幅、選択及び更なる突然変異のいくつかの連続的な工程を必要とする点である(Irving等, 1996; Krebber等, 1995; Stemmer, 1994; Winter等, 1994)。
【0004】
選択されたタンパク質のアフィニティー成熟、特に抗体のアフィニティー成熟のために今日使用されている方法の例が、表1に示される。全てのこれらの方法は、遺伝子の突然変異、引き続きコード化タンパク質のディスプレーと選択に依存する。選択された特定の突然変異体は、生じた遺伝子ライブラリーにおける多様性を決定する。in vitroストラテジー(表1)は、ファージディスプレーライブラリーを形成する際の突然変異化遺伝子のトランスフォーメーションの効率によって厳しく制限される。一つのin vivoサイクリング法(表1のNo.1)において、大腸菌突然変異細胞は、組換え抗体遺伝子の突然変異のためのビヒクルとなった。突然変異化DNAQ遺伝子を有する大腸菌突然変異化細胞MUTD5−FIT(Irving等, 1996)は、S−30抽出物のソースとして使用でき、それ故プルーフリーディングエラーの結果として複製の間DNA中への突然変異の導入を促す。しかしながら、突然変異速度は、必要とされる速度と比較して低い。例えば、20のアミノ酸の完全な順列を有する20の残基を突然変異化するために、1×1026のライブラリーサイズを必要とし、それは現在利用可能なファージディスプレー方法体系では非常に困難な作業である。
【0005】
【表1】
【0006】
それ故、継続的に進化(突然変異)され、所望の遺伝子が選択される突然変異体の複雑なライブラリーのin vitro生産を可能にする選択法は、タンパク質のアフィニティー突然変異(増大)の改良された手段を生ずるであろう。
【0007】
in vitro結合転写及び翻訳系 興味ある遺伝子を含むDNAプラスミドは、T7プロモーターのようなコントロールエレメントによって制御される場合、転写のための鋳型として機能できることが周知である。結合セルフリー系が、mRNAを同時に転写し、mRNAをペプチドに翻訳するために使用できることも周知である(Baranov等, 1993; Kudilicki等, 1992; Kolosov等, 1992; Morozov等, 1993; Ryabova等, 1989,1994; Spirin 1990; US 5556769; US 5643768; He及びTaussig 1997)。セルフリー系のソースは一般的に、原核生物について大腸菌S−30抽出物(Mattheakis 1994; Zubay 1973)であり、真核生物についてウサギ網状赤血球溶解物である。転写/翻訳結合系は、原核生物セルフリー抽出物(Mattheakis等 1994)及び真核生物セルフリー抽出物(US 5492817; US 5665563)を含むものが報告されており(US 5492817; US 5665563)、それらは有効な転写及び翻訳のための異なる必要性を有する。さらに、原核生物及び真核生物系における翻訳化タンパク質の正確なホールディングのための必要性が存在する。原核生物について、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)及びシャペロンが必要とされ得る。一般的に原核生物においては、翻訳化タンパク質は、リボソームからの放出の後ホールディングされる;しかしながら、リボソームに付着した(つながれた)新たに翻訳されたタンパク質の正確なホールディングのため、C末端アンカーが必要であろう。アンカーは、新たに翻訳されたタンパク質ドメインをリボソームに結合するためのポリペプチドスペーサーである。該アンカーは、イムノグロブリン定常領域のような完全なタンパク質ドメインでもよい。これとは全く対照的に、真核生物系においては、タンパク質は合成と同時にホールディングされ、原核生物PDI及びシャペロンの添加は必要ない。しかしながらアンカーは、リボソームに結合した(つながれた)新たに翻訳されたタンパク質から空間を空けるため、及び該タンパク質の正確なホールディングのため、真核生物においても有用であろう。
【0008】
セルフリー結合系においてde novoで合成されたポリペプチドは、例えば停止コドンの不存在下では該ポリペプチドはリボソームから放出されないため、リボソームの表面にディスプレーされている。mRNAリボソームタンパク質複合体は、選択の目的のために使用できる。この系は、ファージディスプレー及び選択の方法を模倣し、図1に示される。リボソーム上での最適なディスプレーのために必要とされる特性は、Hanes及びPluckthun (1997)によって記載されている。これらの特性は、停止コドンの除去を含む。しかしながら停止コドンの除去は、ssrA tRNA様構造によってコードされる新たに翻訳されたタンパク質のC末端にプロテアーゼ感受性部位の付加を引き起こす。これは、アンチセンスssrAオリゴヌクレオチドを含ませることによって防止できる(Keiler等 1996)。
【0009】
RNA配向性RNAポリメラーゼ Qβバクテリオファージは、大腸菌ファージQβの一本鎖ゲノムを複製するために有効なレプリカーゼを有するRNAファージである(RNA依存性RNAポリメラーゼを、レプリカーゼまたはシンセターゼと称する)。Qβレプリカーゼはエラーを生じがちであり、103−104塩基対とin vivoで計算されたRNA中に突然変異を導入する。Qβレプリカーゼの正確性は低く、強力に偏ってその鋳型を複製する(Rohde等 1995)。これらの教示は、長期間に亘る複製により、所望のタンパク質の合成に適さない突然変異された鎖の蓄積を導くことを示す。+及び−鎖の両者が、レプリカーゼの鋳型として機能する;しかしながら、ウイルスのゲノムについて、+鎖はQβレプリカーゼによって結合され、相補的な鎖(−)の鋳型として使用される。RNAの複製が生じるために、レプリカーゼは、十分に定義されている特異的なRNA配列/構造エレメントを必要とする(Brown及びGold 1995; Brown及びGold 1996)。組換えRNAの0.14フェムトグラムを含む反応により、30分で129ナノグラムが生産される(Lizardi等 1988)。
【0010】
RNA配向性RNAポリメラーゼは、適合可能な鋳型上に対数増幅的にRNAを複製することが周知である。適合可能な鋳型は、MDV−1 RNAに示されたような二次構造を有するRNA分子である(Nishihara,T等 1983)。この点で、ベクターは、複製のために必要とされる配列及び二次構造(MDV−1 RNA)を有し、QβゲノムRNAと同様な態様でin vitroで複製されるため、増幅可能なmRNAを構成するものとして記載されている。MDV−1 RNA配列(Qβレプリカーゼに対する天然で生じる鋳型)は、QβレプリカーゼによるRNAの増幅と適合可能な数多くの天然の鋳型の一つである(US-4786600);それは、組み込まれたmRNAの配列の安定性を増大する、ほとんどのファージRNAの末端に存在する構造と同様な末端のtRNA様構造を有する。プラスミドの直線化により、該プラスミドは、さらなる組換えMDV−1 RNAの合成のための鋳型として機能するようになる(Lizardi等 1988)。本分野での教示により、外来遺伝子のQβレプリカーゼによる長期化した複製は、MDV−1 RNAのような天然で生じる鋳型の一つ内のRNAとして組み込まれることを必要とすることが示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US 5492817
【特許文献2】US 5665563
【特許文献3】US 5492817
【特許文献4】US 5665563
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Irving等, 1996; Krebber等, 1995; Stemmer, 1994; Winter等, 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、RNA配向性RNAポリメラーゼが、進化した(突然変異化された)mRNA分子のライブラリーの作製と同様な態様で、複製の間合成されたmRNA分子内に突然変異を導入することを見出した。これらの突然変異化mRNA分子は、挿入及び欠失並びに点突然変異のためサイズにおいて様々であり、相当するタンパク質が、例えばリボソーム、mRNA、及びde novo合成されたタンパク質をコードするmRNAを含む3成分複合体上にディスプレーされるように、in vitroで翻訳され得る。本発明者はまた、リボソームディスプレー法によって生産されたタンパク質の大きな割合が、正確にホールディングされた機能的な形態を有する条件を同定した。さらに本発明者は、ファージQβレプリカーゼが、mRNA内に突然変異を取り込んでRNA鋳型を増幅するための真核生物結合転写/翻訳系において機能できる条件を同定した。
【0014】
本発明の好ましい転写/翻訳系におけるmRNA分子は、連続的なin vitro進化(CIVE)法を導く複製/突然変異/翻訳の連続した周期的な方法に存在する。
【0015】
このCIVE法は、従来のアフィニティー成熟法に固有の数、ライブラリーサイズ、及び時間消費工程の制限を避ける、タンパク質のin vitro進化のための新規な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、第一の特徴点として、本発明は、以下の工程を含む標的分子に結合するタンパク質の突然変異、合成及び選択のための方法を提供する:(a)タンパク質をコードする複製可能なmRNA分子を、RNAのリボヌクレオシド三リン酸前駆体とRNA配向性RNAポリメラーゼと共にインキュベーションし、RNA配向性RNAポリメラーゼが、突然変異を導入するようにmRNA分子を複製し、それによって突然変異体mRNA分子の集団を生産する工程;(b)工程(a)で得られた突然変異体mRNA分子を、突然変異体タンパク質の集団の合成を生ずる条件の下で翻訳系と共にインキュベーションし、翻訳の後に、突然変異体タンパク質をそれをコードするmRNA分子に結合させ、それによって突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を形成する工程;
(c)工程(b)で得られた突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を標的分子にさらし、それに結合した突然変異体タンパク質/mRNA複合体を回収することによって、一つ以上の突然変異体タンパク質/mRNA複合体を選択する工程;及び(d)任意に該複合体からmRNA分子を放出する工程。
第二の特徴点として、本発明は、以下の工程を含む、標的分子に結合するタンパク質の突然変異、合成及び選択のための方法を提供する;
(b)工程(a)で得られた突然変異体mRNA分子を、突然変異体タンパク質の集団の合成を生ずる条件の下で翻訳系と共にインキュベーションし、翻訳の後に、突然変異体タンパク質をそれをコードするmRNA分子に結合させ、それによって突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を形成する工程;
(c)工程(b)で得られた突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を標的分子にさらすことによって、一つ以上の突然変異体タンパク質/mRNA複合体を選択する工程;
(d)工程(a)で使用された複製可能なmRNA分子が、工程(c)で選択された複合体から得られたmRNAである条件で、工程(a)から(c)を一回以上繰り返す工程;
(e)標的分子に結合する突然変異体タンパク質複合体を回収する工程;及び(f)任意に複合体からmRNA分子を放出または回収する工程。
【0017】
工程(d)で得られたmRNAは、翻訳系から精製または単離することなく工程(a)から(c)を通じてリサイクルされてもよい。
【0018】
一つの実施態様として、工程(d)から得たmRNAは、該mRNAが工程(c)で得られた複合体に付着する間、工程(a)を経てリサイクルされる。別の実施態様として、mRNAは、リサイクルの前に工程(c)で得られた複合体から放出される。mRNAは、いずれかの適切な機構によって複合体から放出されてもよい。該機構には、インキュベーションの温度を上昇させること、または複合体を完全なままにするために使用される化合物の濃度を変化することが含まれ得る。
【0019】
本発明の文脈において、mRNAは、連続的な手動の工程によって、工程(a)から(c)を通じてリサイクルされてもよい。しかしながら好ましい実施態様として、工程(a)、(b)、(c)及び(d)は、単一または複数の区画を設けた反応容器において同時に実施され、リサイクルが該容器内で自動的に生じる。
【0020】
本発明の文脈において、mRNAは、連続的な手動の工程によって、工程(a)から(c)を通じてリサイクルされてもよい。しかしながら好ましい実施態様として、工程(a)、(b)、(c)及び(d)は、単一の反応容器において同時に実施され、リサイクルが該容器内で自動的に生じる。
【0021】
第二の特徴点の別の実施態様として、工程(d)から得たmRNAは単離される。単離されたmRNAは、cDNAに転写されてもよい。生じたcDNAを、コード化タンパク質の発現に適したベクター内にクローン化してもよい。
【0022】
いずれかの適切な複合体が、翻訳したタンパク質をそれをコードするmRNAに結合するために使用されてもよい。例えば該複合体は、タンパク質ディスプレーのために適したミトコンドリアまたは他の細胞オルガネラであってもよい。リボソーム複合体は好ましくは、少なくとも一つのリボソーム、少なくとも一つのmRNA分子、及び少なくとも一つの翻訳したポリペプチドを含む。この複合体は、翻訳したタンパク質の「リボソームディスプレー」を可能にする。翻訳に引き続いて3成分のリボソーム複合体を完全なままに維持するために適した条件は周知である。例えば、コードする配列の3’末端からの翻訳停止コドンの欠失または省略により、完全な3成分リボソーム複合体の維持が生ずる。スパルソマイシンまたは類似化合物は、リボソーム複合体の解離を防止するために加えられてもよい。マグネシウム塩の特異的な濃度を維持すること、及びGTP濃度を下げることもまた、完全なリボソーム複合体の維持に寄与するであろう。
【0023】
本発明の好ましい実施態様は、リサイクルバッチプロセス、好ましくは連続的フロープロセスにおける結合した複製−翻訳−選択を含むことは、当業者に予測されるであろう(例えば図4参照)。翻訳または転写−翻訳のための連続したフロー装置及び方法は、本分野で周知であり、材料の組成または反応器の温度のような条件を変化させることによって、本発明の方法に適用できる。いくつかの系及びその操作方法が、Spirin. A.S. (1991)にレビューされており、それは参考としてここに取り込まれる。さらなる関連文献には、Spirin等 (1988); Rattat等 (1990); Baranov等 (1989); Ryabova等 (1989);及びKigawa等 (1991)が含まれ、その全てが参考としてここに取り込まれる。
【0024】
用語、「翻訳系」は、リボソーム、可溶性酵素、トランスファーRNA、並びに外因性mRNA分子によってコードされるタンパク質を合成可能なエネルギー再生産系を含む混合物を意味する。
【0025】
好ましい実施態様として、該翻訳系は、セルフリー翻訳系である。この実施態様に従った翻訳は、いずれかの特定のセルフリー翻訳系に制限されない。該系は、真核生物、原核生物またはその組み合わせから由来してもよい、粗抽出物、部分的に精製された抽出物または高度に精製された抽出物が使用されてもよい。合成構成成分は、天然の構成成分に置換されてもよい。数多くの代替物が利用可能であり、文献に記載されている。例えば、Spirin (1990B)を参照。この文献は、参考としてここに取り込まれる。セルフリー翻訳系はまた、商業的に入手可能である。本発明の一つの実施態様として、セルフリー翻訳系は、大腸菌からのS−30抽出物を利用する。別の実施態様として、セルフリー翻訳系は、網状赤血球溶解物、好ましくはウサギ網状赤血球溶解物を利用する。
【0026】
該翻訳系はまた、タンパク質ホールディングを増大する化合物を含んでもよい。この目的のために、本発明者は、リボソームディスプレー法によって生産されるタンパク質の高い割合がホールディングされた機能的な形態で生産される条件を同定した。これらの条件は、0.1mMから10mMの間の濃度で翻訳系に対して還元及び/または酸化したグルタチオンの添加を含む。好ましくは該翻訳系は、2mMから5mMの間の濃度で酸化したグルタチオンを含む。好ましくは翻訳系は、約2mMの濃度で酸化したグルタチオンを、及び0.5mMから5mMの間の濃度で還元したグルタチオンを含む。
【0027】
本発明の別の実施態様として、該翻訳系は、細胞または細胞内の区画より成るまたはそれらを含む。該細胞は、真核生物または原核生物から由来してもよい。
【0028】
本分野で周知の数多くのRNA配向性RNAポリメラーゼ(またはレプリカーゼ若しくはRNAシンセターゼとして周知である)が単離されており、本発明の方法における使用に適している。これらの例として、バクテリオファージRNAポリメラーゼ、植物ウイルスRNAポリメラーゼ及び動物ウイルスRNAポリメラーゼが含まれる。本発明の好ましい実施態様として、RNA配向性RNAポリメラーゼは、比較的高い頻度で複製されたRNA分子内に突然変異を導入し、好ましくはその頻度は、104塩基対に少なくとも1個の突然変異、より好ましくは103塩基対に一つの突然変異である。より好ましい実施態様として、RNA配向性RNAポリメラーゼは、Qβレプリカーゼ、C型肝炎RdRp、水疱性口内炎ウイルスRdRp、カブ黄色モザイクウイルスレプリカーゼ(Deiman等 (1997))、並びにRNAバクテリオファージファイ6 RNA依存性RNA(Qjala及びBamford (1995)より成る群から選択される。最も好ましくは、RNA配向性RNAポリメラーゼは、Qβポリメラーゼである。
【0029】
RNA配向性RNAポリメラーゼは、精製タンパク質として転写/翻訳系に含まれてもよい。別法として、RNA配向性RNAポリメラーゼは、本発明の第一または第二の特徴点の方法の工程(a)と同時に、若しくは工程(a)、(b)及び(c)と同時に発現される、遺伝子鋳型の形態で含まれてもよい。
【0030】
さらなる好ましい実施態様として、RNA配向性RNAポリメラーゼは、標的分子と融合または会合されてもよい。理論的に根拠付けられることを望まないが、ある場合、翻訳タンパク質の結合親和性は、mRNA分子に対するレプリカーゼの親和性より高くてもよい。標的分子/RNA配向性RNAポリメラーゼ融合構築物に対する突然変異体タンパク質/mRNA複合体の結合は、RNA配向性RNAポリメラーゼの近傍にmRNAを配置するであろう。これは、興味あるmRNA分子の好ましいさらなる複製及び突然変異を生ずるであろう。
【0031】
各種のRNA依存性RNAポリメラーゼによって複製されるRNA鋳型が本分野で周知であり、本発明における使用に適した複製可能なmRNAを生産するためのベクターとして機能できる。Qβレプリカーゼに対する周知の鋳型は、RQ135 RNA、MDV−1 RNA、ミクロバリアントRNA、ナノバリアントRNA、CT−RNA、及びRQ120 RNAを含む。これもQβレプリカーゼによって複製されるQβ RNAは、シストロンを含み、該シストロンの生産物がタンパク質合成を調節するため、好ましくはない。好ましいベクターは、MDV−1 RNA及びRQ135 RNAを含む。両者の配列が印刷されている。Kramer等 (1978)(MDV−1 RNA)及びMunishkin等 (1991)(RQ135)を参照。これら両者が参考としてここに取り込まれる。それらは、周知のDNA合成法によってDNA形態に作製される。
【0032】
本発明の第一の特徴点の好ましい実施態様として、該方法はさらに、複製可能なmRNAを生産するためにDNA構築物を転写する工程を含む。組換えmRNAをコードするDNAは、プラスミドの形態で存在し得るが、そうである必要はない。プラスミドと、遺伝子配列が組み込まれている複製可能なRNAをコードする配列の末端または近傍で該プラスミドを切断するエンドヌクレアーゼを使用することが好ましい。直線化は個別に実施でき、または転写−複製−翻訳と結びつけることができる。しかしながら好ましくは、直線状DNAは、多くの利用可能なDNA複製のいずれか一つ、最も好ましくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生産される。いくつかの系について、エンドヌクレアーゼを含まない非直線化プラスミドが好ましい。適切なプラスミドは、例えばT7 RNAポリメラーゼまたはSP6 RNAポリメラーゼのようなバクテリオファージRNAポリメラーゼによる組換えプラスミドのin vitro転写によってRNAを生産するための方法に関する、Melton等 (1984a,b)の以下の教示に従って調製されてもよい。例えばMelton等 (1984a)及びMelton等 (1984b)を参照。これらの文献は参考としてここに取り込まれる。転写は、複製可能なRNAをコードする配列の第一のヌクレオチドで開始するのが好ましい。
【0033】
さらに好ましい実施態様として、転写は、本発明の第一または第二の特徴点に従った方法の工程(a)、(b)、(c)で、単一または複数の区画の反応容器若しくは反応器中で同時に実施される。
【0034】
標的分子は、DNA分子、タンパク質、レセプター、細胞表面分子、代謝産物、抗体、ホルモン、細菌またはウイルスのような、興味あるいずれかの化合物(またはその断片)であってもよい。
【0035】
好ましい実施態様として、標的分子はマトリックスに結合され、複合体(翻訳タンパク質をディスプレーする)を含む反応混合物に加えられる。標的分子は、例えば磁性ビーズのようなマトリックス上に皮膜されてもよい。磁性ビーズは、Dynabeadであってもよい。翻訳タンパク質は、標的分子に競合的に結合すると予測されるであろう。より高い親和性を有するタンパク質は好ましくは、より低い親和性分子を交換するであろう。かくして、本発明の方法は、興味ある標的分子に対して改良された結合親和性を示す突然変異タンパク質の選択を可能にする。
【0036】
本発明者はまた、MDV−1鋳型のような天然に存在するレプリカーゼの鋳型から由来する最小の配列が、Qβレプリカーゼの結合に対して十分であるという驚くべき発見をなした。この発見に基づいて、複製可能なmRNAの転写に適した新規な構築物が開発された。
【0037】
従って、本発明の第一及び第二の特徴点の好ましい実施態様として、該方法はさらに、複製可能なmRNA分子を生じるためにDNA構築物を転写することを含み、該DNA構築物は以下のものを含む;
(i)該DNAのmRNAへの転写を促進するコントロールエレメント及びリボソーム結合部位を含む非翻訳領域;
(ii)標的分子に結合するタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム;並びに(iii)該オープンリーディングフレームの上流に位置するステム−ループ構造。
【0038】
第三の特徴点として、本発明は以下のものを含むDNA構築物を提供する;
(i)該DNAのmRNAへの転写を促進するコントロールエレメント及びリボソーム結合部位を含む非翻訳領域;
(ii)非翻訳領域の下流に位置するクローニング部位;並びに(iii)該クローニング部位の上流に位置するレプリカーゼ結合配列。
【0039】
ここで使用される用語、「レプリカーゼ結合配列」は、レプリカーゼ(特にレプリカーゼホロ酵素)によって認識される「ループ様」二次構造のようなポリヌクレオチド配列を指す。好ましくは、レプリカーゼ結合配列は、レプリカーゼ分子に対する全長RNA鋳型を含まない。例えば好ましくは、用語、「レプリカーゼ結合配列」は、全長MDV−1 RNAまたはRQ135 RNA鋳型を含まない。
【0040】
好ましい実施態様として、レプリカーゼ結合配列は、15から50ヌクレオチドの長さ、より好ましくは20から40ヌクレオチドの長さである。好ましくはレプリカーゼ結合配列は、Qβレプリカーゼによって認識される。
【0041】
さらに好ましい実施態様として、レプリカーゼ結合配列の配列は、以下の配列を含むまたは以下の配列より成る:GGGACACGAAAGCCCCAGGAACCUUUCG。
【0042】
さらに好ましい実施態様として、第二のレプリカーゼ結合配列が、クローニング部位の下流に含まれる。
【0043】
いずれかの適したリボソーム結合部位が、本発明の構築物において使用されてもよい。原核生物及び真核生物リボソーム結合配列は、原核生物または真核生物系の何れが使用されるかに依存して取り込まれてもよい。好ましい原核生物リボソーム結合部位は、MS2ウイルスのものである。
【0044】
さらに好ましい実施態様として、DNA構築物は、翻訳開始配列を含む。好ましくは翻訳開始配列はATGである。
【0045】
いずれかの興味ある遺伝子が、DNA構築物のクローニング部位内に挿入できることは、当業者によって予測される。好ましい実施態様として、興味ある遺伝子は、(i)標的結合タンパク質のライブラリー、または(ii)単一の標的結合タンパク質についてコードするヌクレオチド配列であり、ここで該標的はタンパク質、DNA、細胞表面分子、レセプター、抗体、ホルモン、ウイルス、または他の分子若しくは複合体若しくはその誘導体のいずれかを含む。
【0046】
アンカードメインをコードするヌクレオチド配列は、興味ある遺伝子にフレーム中の3’に融合されてもよい。アンカードメインは、該分子の正確なホールディング及びその同型結合パートナーの接近が可能なリボソームからの十分な距離に、翻訳されたタンパク質を興味ある遺伝子から離すのに十分な長さを有するいずれかのポリペプチド配列であってもよい。好ましくは該ポリペプチドは、複製可能な鋳型のものを模倣した相当するRNA二次構造を有する。好ましい実施態様として、該ポリペプチドはイムノグロブリン定常ドメインである。好ましくは該ポリペプチドは、定常軽鎖ドメインである。定常軽鎖ドメインは、マウス抗体1C3の第一の定常軽鎖領域であってもよい。好ましくは定常ドメインは、図5aに示される配列によってコードされる。別法として該ポリペプチドは、ヒトIgM定常ドメインであってもよい。別の実施態様として、アンカーは、以下のものより成る群から選択されてもよい:オクタペプチド「FLAG」エピトープ、DYKDDDDK、または任意に翻訳終結(停止)ヌクレオチド配列が引き続くポリヒスチジン6タグ。翻訳終結(停止)ヌクレオチド配列は、TAAまたはTAGであってもよい。本発明のいくつかの構築物において、放出因子による認識、引き続きタンパク質放出を妨げるために、停止コドンは存在しない。これらの構築物において、アンチセンスssrAオリゴヌクレオチド配列は、引き続く3’非翻訳領域中のC末端プロテアーゼ部位の付加を妨げるために加えられてもよい。
【0047】
第四の特徴点として、本発明は、本発明の第二の特徴点に従ったDNA構築物を含む複製可能なmRNA転写産物を生産するためのキットを提供する。
【0048】
好ましい実施態様として、該キットは、以下のものから選択される少なくとも一つの他のさらなる構成成分を含む:(i)RNA配向性RNAポリメラーゼ、好ましくはQβレプリカーゼ、またはRNA配向性RNAポリメラーゼのためのDNA若しくはRNA鋳型;
(ii)セルフリー翻訳系;
(iii)DNA配向性RNAポリメラーゼ、好ましくはバクテリオファージポリメラーゼ;
(iv)リボヌクレオシド三リン酸;並びに(v)制限酵素。
【0049】
本明細書を通じて、もし文脈が他のものを必要としなければ、用語「含む」またはその変異型「含む」若しくは「含んでいる」は、述べられているエレメントまたは数字またはエレメントの群または数字類を含むものを企図するように理解されるが、いずれかの他のエレメントまたは数字またはエレメントの群または数字類を排除するものとは解されない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】連続的in vitro進化(CIVE)法におけるa)ファージディスプレー及びb)リボソームディスプレーのためのアフィニティー成熟サイクルを示す図である。
【図2】CIVEのための興味ある遺伝子(ヌクレオチド配列)を含む発現ユニットを図式的に表す図である。発現ユニットは、転写開始配列(T7プロモーター)に沿って上流のリボソーム結合部位(RBS)及び翻訳開始部位(ATG)を有する、興味ある遺伝子を含む。該構築物はまた、下流のスペーサー配列を含む。
【図3】in vitroアフィニティー成熟の連続的サイクリング性質を示すCIVE法を図式的に表す図である。該方法は、連続的に進化(成熟)し、所望の遺伝子が選択される突然変異体の複合体ライブラリーのin vitro生産を可能にする:本発明の好ましい転写/翻訳系におけるmRNA分子は、連続的in vitro進化(CIVE)を導く再複製/突然変異/翻訳の連続的サイクリング工程中に存在する。
【図4】CIVE法に適した反応容器を表す図である。
【図5A】a)マウスモノクローナル抗体1C3の第一の定常軽鎖領域;b)ヒトIgM抗体の第三の定常重鎖領域;c)抗グリコホリン(1C3)scFvのヌクレオチド配列を示す図である。
【図5B】d)抗B型肝炎表面抗原(4C2)scFvのヌクレオチド配列を示す図である。
【図6A】QβバクテリオファージゲノムのcDNAコピーを含むプラスミドpBRT7QベータのDNA配列を示す図である。
【図6B】QβバクテリオファージゲノムのcDNAコピーを含むプラスミドpBRT7QベータのDNA配列を示す図である。
【図6C】QβバクテリオファージゲノムのcDNAコピーを含むプラスミドpBRT7QベータのDNA配列を示す図である。
【図6D】QβバクテリオファージゲノムのcDNAコピーを含むプラスミドpBRT7QベータのDNA配列を示す図である。
【図7】in vitro転写及び翻訳に使用される鋳型のPCR合成のために使用される、(a)pGC038CL(抗グリコホリンscFv(1C3)及びマウス定常軽鎖領域を含む)及び(b)pGC CH(ヒト定常重鎖領域を含む)のプラスミドを図式的に表す図である。これらのプラスミドは、下流スペーサー配列を提供するために使用された。ほとんどの場合、興味ある遺伝子は、pGC CHのSfiI及びNotI部位にクローン化された。
【図8】ステムループ構造を形成するRNA断片の配列を示す図である。
【図9】ウサギ網状赤血球に結合した転写/翻訳系における、Qβレプリカーゼ及びC型肝炎ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼの発現のための真核生物発現ベクターpcDNA3.1を示す図である。
【図10】C型肝炎ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼのDNA配列を示す図である。
【図11】in vitro結合転写/翻訳反応用の鋳型DNAを生産するためのPCR反応におけるプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドのDNA配列を示す図である。鋳型の生産及びパンニング後の生産物の回収の両者のために使用されるオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列である。配列は数字が付され、5’から3’で記載されている。
【図12】ウサギ網状赤血球結合転写/翻訳系におけるQβレプリカーゼの発現を示す図である。
【図13】抗GlyA 1C3タンパク質合成の結合転写/翻訳に対するQβレプリカーゼの効果を示す図である。
【図14】結合転写/翻訳においてQβレプリカーゼを含ませる効果を示す図である。選択された突然変異体の配列中の突然変異の表を示す。この図は、6のランダムなクローンから得られた配列の280のヌクレオチド中に見出される突然変異の位置及びタイプを示す。これらは、Qβレプリカーゼの不存在下、精製Qβの存在下、またはプラスミドpCDNAQβの存在下のいずれかで、転写及び翻訳の後のGlyA皮膜Dynabeadに対する抗GlyA scFvのパンニングから回収された。「検出突然変異」のカラムにおいて、「なし」は、突然変異が見出されないことを意味する:突然変異はAxBの形態で示され、Aは野生型ヌクレオチドであり、xは配列中の位置数であり(図5cに示される)、そしてBは観察された突然変異化ヌクレオチドである。
【図15】結合転写/翻訳ウサギ網状赤血球系:デンシトメータースキャニングにおいてQβレプリカーゼによる抗グリコホリンscFv転写産物の複製を示す図である。
【図16】T7ポリメラーゼ転写産物からのQβレプリカーゼによる抗グリコホリンscFv及び抗B型肝炎scFvの複製及び突然変異のDNA配列分析を示す図である。
【図17】C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼを含むベクターを示す図である。
【図18】抗GlyA 1C3 scFv RNAの複製に対する、結合転写/翻訳系において発現されるC型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼの効果を示す図である。エチジウムブロマイドで染色しスキャンしたRT−PCR産物のアガロースゲル電気泳動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の好ましい態様として、タンパク質の連続的一工程進化のための系は、以下の構成成分を含む:
【0052】
発現ユニット: 本発明における使用のための好ましい発現ユニットは、図2に表される。この発現ユニットは、DNAのmRNAへの転写を促進するために、T7またはSP6プロモーターのようなコントロールエレメントを5’非翻訳領域内に有する3’及び5’非翻訳領域を含む。コンセンサスDNA配列は、そのポリメラーゼに特異的である:T7 RNAポリメラーゼに対するT7プロモーター配列は、TAATACGACTCACTATAGGGAGAである。T7プロモーター配列は、RNA依存性RNAポリメラーゼ結合配列として機能し得る(即ち、それはQβレプリカーゼに対する結合配列として機能し得る)。しかしながら好ましくは、該構築物は、プロモーター部位に対する3’側に5’非翻訳領域中に位置するQβレプリカーゼの結合のためのステムループ構造を含む。好ましくは第二のステムループ構造は、コード配列の下流に含まれ、好ましくは発現ユニットの翻訳終結部位の3’側で約1kbである。好ましいステムループ構造の配列は、GGGACACGAAAGCCCCAGGAACCUUUCGである。
【0053】
リボソーム結合部位は、プロモーターの下流の次の領域である。いくつかのリボソーム結合部位のいずれかが、この位置で使用できる。原核生物及び真核生物リボソーム結合配列が、真核生物または原核生物結合系の何れが使用されるかに依存して取り込まれ得る。一つの好ましい原核生物結合部位は、MS2ウイルスのものである。翻訳開始配列ATGが好ましくは使用され、それはアミノ酸メチオニンをコードする;これは、in vitro翻訳の開始部位である。
【0054】
興味ある遺伝子(ヌクレオチド配列)
興味ある遺伝子が、標準的な遺伝学的方法のいずれかによって非翻訳領域に結合され得ることは、当業者に予測されるであろう。興味ある遺伝子は、遺伝子3’末端までにオープンリーディングフレーム(停止コドンではない)を有するいずれかのヌクレオチド配列を含み、さらに本発明の目的のため、アンカー(スペーシング)配列の末端を含む。
【0055】
好ましい実施態様として、興味ある遺伝子は、i)標的結合タンパク質のライブラリー、またはii)単一の標的結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であり、この場合標的は、タンパク質、DNA、細胞表面分子、レセプター、抗体、ホルモン、ウイルス、または他の分子若しくは複合体若しくはその誘導体のいずれかを含む。アンカードメインをコードするヌクレオチド配列は、興味ある遺伝子の3’及びフレーム中に融合されてもよい。アンカードメインは、分子の正確なホールディング及び同型結合パートナーへの接近を可能にするためにリボソームから十分な距離で、興味ある遺伝子から翻訳されたタンパク質を離す十分な長さの一連のポリペプチド配列のいずれかであってもよい。好ましい実施態様として、アンカーは、オクタペプチド「FLAG」エピトープ:DYKDDDDKまたはヒト若しくはネズミ抗体定常ドメインのいずれかをコードする配列である。好ましくはアンカーは、定常ドメイン1C3のようなマウスモノクローナル抗体から由来する定常ドメインである(図5a参照)。さらに好ましいアンカーは、ヒトIgM抗体から由来する定常領域である(図5b参照)。
【0056】
アンカー配列には、例えばTAAまたはTAGといった翻訳終止(停止)ヌクレオチド配列が引き続くであろう。しかしながら、ある構成においては、放出因子による認識及び引き続くタンパク質の放出を妨げるために、停止コドンが存在しないことが考慮され得る。これらにおいて、アンチセンスssrAオリゴヌクレオチド配列が、引き続く3’非翻訳領域中のC末端プロテアーゼ部位の付加を妨げるために加えられる。スパルソマイシン、他の類似化合物の添加または温度の減少もまた、mRNA及びde novo合成タンパク質からのリボソームの放出を妨げる。
【0057】
発現システム 発現ユニットのための転写/複製/突然変異は、ウサギ網状赤血球溶解物系(He及びTaussig, 1997)または大腸菌S−30転写翻訳混合物(Mattheakis等, 1994; Zubay, 1997)の使用によって達成され得る。例えば、T7プロモーターを使用したDNA発現ユニット(上述詳述)を、製造者の説明書に従ってT7 RNAポリメラーゼで処理する。生じたRNAライブラリーは、コード化遺伝子の多様性を反映する。複製及び突然変異のために添加されたRNA依存性RNAポリメラーゼは、複製のために加えられ、突然変異が精製酵素として提供され、または別法としてT7若しくはSP6のようなプロモーターの制御の下でプラスミド内に別個の発現系としてコードされる。好ましい酵素はQβレプリカーゼであるが、同様な性質を有するいずれかの酵素が使用されてもよい。この工程は、Qβプロテアーゼによる突然変異を通じたライブラリーの複雑性の増大を提供する。真核生物細胞におけるmRNA合成のため、mRNAは好ましくはキャップされ、それはジグアノシン三リン酸の過剰量の添加によって達成される;しかしながら、商業的な供給者Promega及びNovagenから得たウサギ網状赤血球系は、キャップした化合物の添加を不要にする系中の構成成分を有する。転写/翻訳混合物または結合系は、いずれかの細胞から抽出でき、最も一般的に使用されるものは、コムギ麦芽、HeLa細胞のような哺乳動物細胞、大腸菌及びウサギ網状赤血球である。結合転写翻訳系は、大腸菌突然変異細胞MUTD5−FIT(Irving等, 1996)から抽出でき、それは突然変異化DNAQ遺伝子を有し、それ故プルーフリーディングエラーの結果として複製の間DNA内に導入されるさらなるランダムな突然変異を可能にする。一つの好ましい転写/翻訳混合物は、ウサギ網状赤血球溶解物である。結合系に対するGSSGの添加は、ディスプレーされたタンパク質の正確なホールディングを増大し、それ故カウンターレセプターまたは抗原に対する後の結合及び選択を促進する。
【0058】
Qβレプリカーゼによる突然変異 Qβレプリカーゼは、ランダムな突然変異を取り込んだ高レベルのmRNAの複製及び生産のために系中に含まれる(図3参照)。複数コピーの一本鎖RNA鋳型が、Qβレプリカーゼによる突然変異で単一の標準的構成成分に複製される;しかしながら、両方の鎖は、等温条件の下で鋳型として同等に効果的である。
【0059】
本分野の教示により、Qβのようなファージから由来する全長RNA中に存在する複合体並びに二次及び三次構造が、タンパク質開始部位へのリボソームの接近を制限することが示されている。しかしながら我々は、より小さいRNA配列が、レプリカーゼの結合に適しており、それ故全長鋳型の代わりに使用できることを見出した。好ましい配列は、シュードノットとして周知である小さな合成RNA(Brown及びGold 1995;1996)であり、それはQβレプリカーゼによる増幅と適合的である。本発明の文脈において、シュードノットの使用は、RNA及びそれに融合した配列のQβレプリカーゼ増幅に必要かつ十分な結合部位を維持する一方で、タンパク質開始部位へのリボソームの接近の問題を解消できる。
【0060】
翻訳及びリボソームディスプレー ウサギ網状赤血球溶解物及びコムギ麦芽のような真核生物、または大腸菌のような原核生物のいずれかであるいくつかのin vitro翻訳法が周知である。これらは商業的に入手可能であり、または周知の印刷された方法によって生産できる。突然変異化mRNAの翻訳は、好ましくはde novo合成タンパク質をコードする特異的なmRNAを含む3成分リボソーム複合体中のリボソームに結合した、タンパク質分子のライブラリーを生ずる(Mattheakis等, 1994)。タンパク質及びリボソームからのmRNAの解離を妨げるためのいくつかの方法が周知である。例えばスパルソマイシンまたは類似化合物が加えられてもよい;スパルソマイシンは、研究された全ての生物においてペプチジルトランスフェラーゼを阻害し、リボソームとの不活性な複合体の形成によって機能するであろう(Ghee等, 1996)。高濃度のマグネシウム塩を維持すること、及びGTPレベルを低下することもまた、リボソーム/mRNA/タンパク質複合体を維持するのに寄与するであろう;発現ユニットの構造に関しては、上述した。3成分リボソーム複合体を維持する好ましい手段は、コード配列の末端の翻訳停止コドンの省略である。
【0061】
さらに、二つの系における分子の正確なホールディングのための好ましい必要性が存在する。原核生物については、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)及びシャペロンが、正確なホールディングを確実にするC末端アンカードメインと並んで使用され得る。後者は、原核生物タンパク質がホールディングの前にリボソームから放出されるために必要とされ(Ryabova等, 1997)、それ故ペプチドがリボソームに結合される場合に、全体のタンパク質はリボソームから距離を取ることが必要とされる。これとは対照的に、真核生物系においては、タンパク質は合成されながらホールディングされ、原核生物PDI及びシャペロンを加える必要はない;しかしながら我々は、GSSGの特定の範囲の濃度の添加が、3成分リボソーム複合体上での正確にホールディングされたタンパク質の増大したディスプレーによるライブラリー選択に対して有益であることを見出した。
【0062】
選択及び競合的結合 RNA複製の連続的な周により、翻訳によってタンパク質のライブラリーを生産するRNA分子のライブラリーが生じる。標的分子結合マトリックス(例えば抗原皮膜Dynabead)が、3成分リボソーム複合体を捕獲するために反応に加えられる。ライブラリー中の個々のメンバーは、マトリックス(Dynabead)上に固定化された抗原に対して競合する。より高い親和性を有する分子は、より低い親和性分子に置換するであろう。該方法の終結時に、マトリックス(Dynabead)に結合した複合体(mRNA/リボソーム/タンパク質)は回収され得る。cDNAが複合体中のmRNAから合成され、コード化遺伝子配列からの高レベル発現に適したベクター中にクローン化される。
【0063】
リサイクリングフリーシステム(Spirin等, 1988)は、基質(リボソームを含む)の供給を確実にするための一定温度のチェンバー及び試薬並びに必須でない物質の除去を使用する連続的in vitro進化(CIVE)システムに適用できるであろう。以下のものを含む全てのCIVEの工程は、このチェンバー内で生じ得る:結合転写及び翻訳、突然変異化複製、3成分リボソーム複合体の表面へのde novo合成タンパク質のディスプレー、及び最高の親和性の結合を有するものを選択するための抗原に対する3成分リボソーム複合体上のディスプレーされたタンパク質の競合的結合(図4)。非結合試薬、物質及びディスプレーされたタンパク質は、洗浄緩衝液ですすぐことによって除去され、結合3成分リボソーム複合体は、温度の上昇及び緩衝液からのマグネシウムの削除によって解離する。この次に、洗浄緩衝液工程を除いて上述の全ての工程を実施するために必要な全ての試薬の添加が行われる。スパルソマイシンまたは類似化合物の添加のようなタンパク質及びリボソームからのmRNAの解離を妨げる方法が利用可能であり、マグネシウム塩の特異的濃度の維持及びGTPレベルの低下は、反応温度の減少または停止コドンの削除と並んでリボソーム/mRNA/タンパク質複合体の維持に寄与するであろう。連続的フロー性能と組み合わせた温度が制御される容器を使用することによって、選択されたリボソームから得たmRNAは、リボソームから解離でき、スパルソマイシン、Mg等のようなリボソーム/mRNA/タンパク質複合体の維持に重要な試薬の濃度を変化させて、さらに複製、突然変異、及び翻訳されるであろう。図4は、上記装置の設計を表す。
【0064】
本発明は、以下の非制限的な実施例を参考としてより十分に記載されるであろう。
【実施例】
【0065】
実施例1
組換えQβレプリカーゼ:発現と精製クローニング及び発現 Qβレプリカーゼコード配列を、T7 RNAポリメラーゼを使用するin vitroでの転写による感染性RNAの調製を可能にするようにデザインされた、つまりファージQβのRNAゲノムのcDNAコピーである、pBR322ベース構築物であるプラスミドpBRT7QβからPCRによって増幅した(Barrera等, 1993に略記されている)。pBRT7Qβの配列は、図6に示されている。ヌクレオチド番号1は、Qβレプリカーゼセンス鎖の第一のヌクレオチドである。Qβレプリカーゼを増幅するためのプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、酵素EcoRI及びNotIによる制限酵素切断のための部位をコードし、その配列は図11に示されている。
【0066】
PCR産物を、この目的のために利用可能な商業的な製品のいずれか一つを使用して精製した(例えばBresatec)。精製DNAを、標準的な分子生物学的方法を使用して、ベクターpGC(図7)のEcoRI及びNotI部位内にクローン化した。ベクターpGC及びそれからの組換えタンパク質の発現は、文献に記載されており、参考としてここに取り込まれる(Coia等, 1996)。PCR増幅及びベクターへのQβレプリカーゼ遺伝子のクローニング及び酵素の発現のための大腸菌へのトランスフォーメーションの方法は、培養培地に1mMのイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を加えることによって誘導されるpGC中のQβレプリカーゼ遺伝子の発現というように、当業者に周知である。
【0067】
プロモーターPLでのpBR322ベースベクター中のQβレプリカーゼ遺伝子の発現及び精製は、以下に詳述されるように実施した。rep14 Billeter株を、Christof Biebricher, Max Planck, Gottingenによって入手した。該大腸菌株を、2%栄養ブロス、1.5%酵母抽出物、0.5%NaCl、0.4%グリセリン、100mg/lアンピシリン中の20l発酵器において、30℃で良好なエアレーションで光学密度2(660nM)に生育させた。温度を37℃に上昇させた後、エアレーションを5時間継続した。細胞を氷上で凍結し、遠心分離によって回収した(約180gの湿潤細胞重量が得られる)。
【0068】
Qβレプリカーゼの精製緩衝液A:0.05M Tris.HCl緩衝液(pH7.8)、1mMメルカプトエタノール、20%v/vグリセリン、100mg/lアンピシリン。
緩衝液B:0.05M HEPES.Na緩衝液(pH7.0)、1mMメルカプトエタノール、20%v/vグリセリン。
50gの回収された大腸菌を、100mlの0.05M Tris.HCl緩衝液(pH8.7)、1mMメルカプトエタノールで、高速ブレンダーでホモゲナイズした。リゾチーム及びEDTAを、それぞれ100μg/ml及び0.5mMの最終濃度で加え、該溶液を0℃で30分穏やかに攪拌した。12mlの8%デオキシコール酸ナトリウム、0.24mlのフェニルスルホニルフルオリド(プロパノール−2中に20mg/ml)、0.15mlのバシトラシン(10mg/ml)、0.15mlの0.1Mベンズアミジン、3.3mlの10%Triton−X−100を加え、溶液を10mMの最終濃度にMgCl2で調節した。高い粘性を高速度でブレンドすることによって減少した。固体のNaClを、0.5Mの最終濃度で加え、4.8mlの0.3%ポリエチレンイミド(pH8)を攪拌しながら加えた。0℃で20分の攪拌の後、懸濁液を10,000rpmで30分遠心分離した(GSAローター)。上清を5当量のTris.HCl(pH8.7)で希釈した後、1mMメルカプトエタノール、100mlDEAEセルローススラリー(緩衝液Aで平衡化されたWhatman DE52)を加え、0℃で20分ゆっくりと攪拌した。攪拌しないで40分のインキュベーションの後、上清を沈殿物からデキャントし、廃棄した。沈殿物を緩衝液A中に懸濁し、1cmの直径のガラスカラムに注ぎ、400mlのTris.HCl緩衝液(pH8.7)、1mMメルカプトエタノールで洗浄し、250mlの緩衝液A+180mMNaClで溶出し、分画を回収した。該分画を、次の結合アッセイで使用するQβレプリカーゼの存在についてアッセイした。
【0069】
酵素配置アッセイ:Qβレプリカーゼに対するビオチニル化RNAの結合 これは、正に荷電された膜に維持されている酵素に結合するビオチンラベル化RNAに依存する複製酵素を検出するように開発された非放射性活性アッセイである:一方で、同じ条件の下で遊離ビオチンラベル化RNAは、膜に維持されない。DNA及びRNAは、製造者の説明書に従ってソラレン−ビオチン(Ambion)でラベルされた。次いでラベル化RNAを、Qβレプリカーゼの配置を検出するために以下のアッセイに示されたようにカラム溶出物(サンプル分画)に加えた。
【0070】
以下の物質をエッペンドルフチューブ中で混合した:10μl カラム溶出分画10μl 0.5M 120mM MgCl2を含むTrisHCl(pH7.4)
10μl 2mM ATP10μl 5mM ATP10μl 〜100ng/ml ソラレン−ビオチンラベル化プローブRNA50μl 水 反応混合物を37℃で1分インキュベーションした。
反応混合物を、ナイロン膜、例えばハイボンドNにドットブロットし(酵素Qβレプリカーゼに結合したRNAまたはDNAのみが、膜に維持されるであろう)、12mM MgCl2を含む50mM TrisHCl pH7.4で洗浄し、自動セットでStratalinker中でナイロン膜にUV架橋した。BrightStar Biodetectキットを、ナイロン膜上に付着したビオチニル化核酸の検出のために使用した。図12は、DE52カラムからの溶出分画のアッセイを示す。
【0071】
活性分画をプールし、一当量の緩衝液Aで希釈し、緩衝液A+0.1M NaClに平衡化されたDEAE-Sepharose FFの35mlカラムに適用した。酵素を、緩衝液A中の0.1−0.4M NaClの直線勾配で溶出した。活性分画をプールし、固体の(NH4)2SO4(39g/100ml溶液)の添加により酵素を沈降し、遠心分離によって回収し、4mlの緩衝液Bに溶解した。
【0072】
酵素を、伝導率が緩衝液B+0.2M NaClのもの未満になるまで希釈し、緩衝液Bで平衡化されたFractogel EMD SO3の100mlカラムに適用し、緩衝液B中の0.2−0.8M NaClの直線勾配(500mlで2回)で溶出した。約0.65M NaClで溶出された活性ピークをプールし、固体の(NH4)2SO3(39g/100ml溶液)で沈降し、遠心分離によって回収し、10mlの緩衝液A+50%グリセリン中に溶解した。溶液を−80℃で貯蔵した。
【0073】
以下の工程は、Sumper & Luce (1975)に従ってスモールスケールで実施された。4mgのQβレプリカーゼを、緩衝液A(希釈され塩を除去するように透析された)で平衡化されたQAE-Sephadex〜A-25の1.6×14.5cmカラムに適用し、緩衝液A中の0.05−0.25M NaClの2×200ml勾配で溶出した。二つのきれいに分離されたコアとホロ酵素のピークをプールし、緩衝液Aで1:1に希釈し、QAE-Sephadexカラムに適用した。コアについて2ml、ホロ酵素について6mlをそれぞれ緩衝液A+50%グリセリンで洗浄し、レプリカーゼを緩衝液A+50%グリセリン+0.2M (NH4)2SO4で濃縮形態に溶出した。活性分画を−80℃で貯蔵した。RNAによる装置のコンタミネーションを避けるように注意を払った。
【0074】
実施例2
真核生物発現ベクターpCDNA3.1中へのQβレプリカーゼのクローニング Qβレプリカーゼコード配列を、真核生物発現ベクターpCDNA3.1(図9)中にクローン化し、pCDNAQβと名付けられたベクターを生産した。このベクターを、結合転写/翻訳系及び付随する標的RNAの複製/突然変異におけるin situでのQβレプリカーゼの発現のために使用した。真核生物発現ベクターpCDNA3.1中のEcoRI及びNotI制限部位内へのクローニングのためのQβレプリカーゼのPCR増幅でのプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドの配列は、以下のものであった:
No.5352 5'TCTGCAGAATTCGCCGCCACCATGTCTAAGACAGCATCTTCG
No.5350 5'TTTATAATCTGCGGCCGCTTACGCCTCGTGTAGAGACGC
【0075】
Qβレプリカーゼbサブユニットのコード配列を、標準的な分子生物学的方法によってpCDNA3.1中にクローン化した(Sambrook等, 1989)。クローン化配列を、DNA配列分析によって確認した。ウサギ網状赤血球結合転写/翻訳系におけるQβレプリカーゼの発現に引き続き、結合転写翻訳キット(Promega及びNovagen)の商業的供給者並びにTranscend(Promega)の供給者によって示唆されたように、標準的転写/翻訳反応におけるde novo合成Qβレプリカーゼ内に取り込まれたビオチニル化リシン(TRANSCEND, Promega)の検出を実施した。結合反応のインキュベーション工程の完成時に、20μlの反応物を、2mlの10×SDSサンプル緩衝液で90℃に加熱し、サンプルをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)にかけた。これに引き続きウエスタンブロッティングを実施し、de novo合成ビオチニル化Qβレプリカーゼバンドを、TRANSCENDキット検出試薬で検出した。この発現の結果が、図12のゲルのスキャンに示されており、Qβレプリカーゼがゲルの正確なサイズでビオチニル化バンドによって示されるように合成されていることが確認できる。
【0076】
次いで我々は、1C3鋳型で結合転写/翻訳反応を実施したが、同じ反応でpcDNA3.1からQβレプリカーゼを発現した。発現ベクターpCDNAQβからin situで合成されたQβレプリカーゼは、0.5mM塩化マグネシウムの存在下で結合系で1C3 scFvの増大した合成を生じた:これは上述のようにビオチニル化リシンの取り込みによって測定された(図12b)。塩化マグネシウムの存在は、転写/翻訳因子に対するQβレプリカーゼの活性の依存性をゆるめることが以前に示されている。
【0077】
実施例3
転写のためのDNA鋳型のPCRによる構築 DNA配列を、FTS−1熱シークエンサー(Corbett Research)、PE2400(PerkinElmer)またはRobocylcer勾配96(Stratagene)のいずれかを使用して、製造者の説明書に従ってTaq、Tth、Tfl、PwoまたはPfuポリメラーゼを用いて、標準的かつ十分に記載された方法(特異的にデザインされたオリゴヌクレオチドプライマー、スプライスオーバーラップ伸長、制限酵素切断等を使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR))によって増幅した。使用されるオリゴヌクレオチドプライマーのリストは、図11に示されている。生産物をBresaClean(Bresa)を使用してゲル精製し、または結合転写及び翻訳反応に直接使用した。
【0078】
DNA配列を、構築物の3’末端に伸長を提供する、ベクターpGC038CL(図7a)またはpGC CH(図7b)のいずれか中にクローン化されている開始鋳型から増幅した。この伸長は、マウスモノクローナル(1C3;配列は図5a)から由来する定常領域、またはヒトIgM抗体(配列は図5b)から由来する定常領域のいずれかであった。増幅のために使用される正方向の(センス)プライマー(抗GlyA scFvについてN5266;抗HepB scFvについてN5517またはN5384, N5344及びN5343)は、転写開始部位、並びに翻訳開始部位及びリボソーム結合部位を提供した。逆方向の(アンチセンス)プライマー(マウス定常領域についてN5267;ヒト定常領域についてN5385)は、mRNA−リボソーム−タンパク質複合体を会合したままにするために、停止コドンを含まなかった。正方向及び逆方向のプリマーの両者は、生産断片のクローニングを可能にする制限酵素部位(特異的にそれぞれSfiI及びNotI)を提供した。
【0079】
DNA依存性RNAポリメラーゼに対するいくつかのプロモーター配列のいずれかが、転写に向けるために使用され得る;しかしながら、以下の配列が好ましい二つのものであった(これらは翻訳開始配列を含む:以下参照):
a) GCGCGAATACGACTCACTATAGAGGGACAAACCGCCATGGCC
b) GCAGCTAATACGACTCACTATAGGAACAGACCACCATGGCC
【0080】
これらの配列は、T7 DNA依存性RNAポリメラーゼを、結合転写/翻訳系の二つの選択的なフォーマットでRNA転写産物を生産させるように向けた。
【0081】
リボソーム結合部位をコードする配列は周知であり、グリコホリンに結合するscFv(1C3;図5c)またはB型肝炎表面抗原を結合するscFv(4C2;図5d)のいずれかをコードするリボソームディスプレーに対する興味ある分子の配列のいずれか一つの上流で、鋳型中に含まれている。同じ配列は、リボソームディスプレーのために興味あるいずれかの他の配列の上流で、鋳型中に含まれている(例えばCTLA−4ベースライブラリー配列)。
【0082】
実施例4
ウサギ網状赤血球溶解物セルフリー系における結合転写/翻訳及びリボソームディスプレー 転写及び翻訳を、0.5mM酢酸マグネシウム、0.02mMメチオニン及び3mM酸化グルタチオン(GSSG)を含むTNT T7結合転写/翻訳系(Promega)を使用して、Siliconized Rnase-フリー0.5mlチューブ(Ambion)で実施し(以下の実施例6参照)、混合物を60℃で90分インキュベーションした。いくつかの反応においては、10mMまでの還元グルタチオンもまた加えた。Qβポリメラーゼを含む反応において、混合物はまた、0.5mMの最終濃度まで塩化マグネシウムを含んだ。転写及び翻訳の後、混合物をPBSで希釈し、DNアーゼIで処理していずれかの残存する開始DNA鋳型を除去した。これは、40mM Tris(pH7.5)、6mM MgCl2、10mM NaCl及びDNアーゼI(Promega)の添加、引き続き30℃でさらに20分のインキュベーションにより達成された。
【0083】
実施例5
Dynabeadを使用する抗原に対するリボソーム3成分複合体ディスプレータンパク質の選択 トシル活性化Magneticビーズ(Dynal)を、製造者の説明書に従ってグリコホリンA(GlyA;Sigma)、B型肝炎表面抗原(HepB SA;BiosPacific, Emeryville, CA USA)またはウシ血清アルブミン(BSA;Sigma)に結合した。ストレプタビジン磁性ビーズを使用する場合、これらは製造者の説明書に従って、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin(Pierce)を使用してビオチニル化されている抗原(上述)に結合された(製造者の説明書に従って)。
【0084】
特異的に結合するmRNA−リボソーム−タンパク質複合体を選択するために、2−3μlの抗原結合(トシル活性化またはストレプタビジン皮膜化)磁性ビーズを、最終翻訳混合物に加え、ビーズの鎮静を避けるために穏やかに攪拌しながら室温で90分プレートシェイカー(Raytek Instruments)に配置した。磁性粒子回収器(Dynal)を使用してビーズを回収し、これらを、1%Tween及び5mM酢酸マグネシウムを含む冷却リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4で3回洗浄した。次いでビーズを冷却滅菌水で1回洗浄し、最後に10μlの滅菌水に懸濁した。
【0085】
選択された複合体からのcDNAの合成のため、2μlの最終ビーズ懸濁液を、製造者の説明書に従ってAccess RT-PCRシステム(Promega)またはTitan One-チューブRT-PCRシステム(Boehringer Mannheim)のいずれかを使用してRT−PCR反応に使用した。この反応に使用されるプライマーは、オリジナル正方向(センス)プライマー(開始鋳型DNA;抗GlyA scFvについてN5266;抗HepB scFvについてN5517またはN5384, N5344及びN5343を生産するために使用される)、並びにオリジナルプライマーの上流の逆方向(アンチセンス)プライマー(マウス定常領域構築物についてN5268及びN5269;ヒト定常領域構築物についてN5386及びN5387)を含んだ。ある場合、より短いプライマー(抗GlyA scFv定常軽鎖領域構築物についてN5941及びN5942)を、パンニングされたRNA鋳型を回収するために使用した。
【0086】
選択のさらなるサイクルのため、このDNAをゲル精製し(ある場合単純に希釈し)、開始DNA鋳型を生産するためにオリジナルのPCRに存在している正方向及び逆方向のプライマーを使用して、さらなるPCRにおいて取り込ませた。次いでこの新たな鋳型は、適切な開始部位を含み、第一の選択中の鋳型と同じ長さを有するために、上述のようにさらなる選択において使用することができた。
【0087】
上述の方法が、特異的な分子を選択するために使用できることを示すために、GlyAに特異的に結合するマウス定常軽鎖領域に融合された一本鎖Fv(scFv)を、T7転写開始部位及びリボソーム結合部位の付加を可能にするプライマーを使用して増幅した。この鋳型(T7−scFv)を、上述のような結合転写/翻訳反応で使用し、次いで三つに分割し、HepB SA、GlyAまたはBSA結合磁性ビーズのそれぞれと混合した。ビーズを洗浄し(上述の通り)、回収されたmRNA−リボソーム−タンパク質複合体を、cDNAの合成のために使用した。この実験の結果は、各レーンにおいて正確なサイズを有する生産物の存在を示した。HepB SA及びBSAレーンで観察された非特異的結合は、おそらく翻訳の間で合成された生産物の凝集のためであろう。網状赤血球溶解物を使用して合成された生産物の一定割合のみが正確にホールディングされ活性形態であることは、他者によって観察されている。この問題は、以下の実施例6で説明する。
【0088】
この実験から得られたGlyA特異的生産物をゲル精製し、さらなる周の選択のためのよりたくさんの鋳型を合成するためにPCRによって再増幅した。第二の周のパンニングにより、GlyA結合磁性ビーズでプローブされたサンプル中に特異的な生産物が優勢に示された。このことは、第二の周の選択によって、回収された生産物がGlyAに特異的であることを示した。
【0089】
実施例6
酸化及び/または還元グルタチオンを加える効果 in vitro転写及び翻訳の間でより高い割合の正確にホールディングされた生産物を誘導する試みにおいて、各種の濃度の還元または酸化グルタチオンのそれぞれを反応混合物に加えた。これらの反応に使用される鋳型は、抗GlyA T7−scFvであり(上述の通り)、選択をGlyA結合磁性ビーズを使用して実施した。この実験は、回収された生産物の量が、5mMまで増大する濃度の酸化グルタチオンで増加することを示した。10mMまでのさらなる増加は、回収された生産物の収率に有害な効果を有した。約2mMの酸化グルタチオンの濃度が、ほとんどの転写及び翻訳において含まれた。
【0090】
すでに2mMの酸化グルタチオンを含む反応に対して5mM及び10mMの還元グルタチオンのさらなる添加が、5mMのグルタチオンの添加によりコントロールパンニングに対してGlyAパンニングから回収された生産物の増大した量を導くディスプレーされた抗GlyA scFvのより適したホールディングを生ずるようであることを示したことが、後者の結果により明らかにされた。還元グルタチオンの濃度を0.5mMまでさらに減少することは、同様な効果を示した。
【0091】
実施例7
リボソーム上での突然変異v−ドメイン(CTLA−4)ライブラリーのディスプレー リボソームディスプレーが、ポリペプチドライブラリーから結合エレメントを選択するために使用できることを示すため、CTLA4突然変異体のライブラリーを、定常重鎖ドメインの付加が可能であるプラスミドpGC CH(図7b)にライゲートし、次いでこのライブラリーをプライマーN5659とN5385を使用するPCRによって増幅した(図11)。プライマーN5659を、必要な上流転写及び翻訳開始配列を加えるために使用した。次いでこのPCR DNAを、実施例4に記載された方法を使用する結合セルフリー翻訳系における転写及び翻訳のための鋳型として使用した。突然変異体CTLAリボソーム複合体の結合を示すために、B型肝炎抗原(HBSA)、グリコホリンA(GlyA)及びウシ血清アルブミン(BSA)皮膜Dynabeadを使用してパンニングを実施した。次いで結合複合体に付着したRNAを、RT−PCRによって回収した。パンニング、選択及び回収のために使用された方法は、上記された(実施例5)。
【0092】
CTLA4ベース突然変異体のサイズにほぼ相当する生産物を回収し、それはCTLA4ライブラリーが、HBSA、GlyA及びBSAを特異的に結合するタンパク質をコードするDNAを含むことを示した。これらの生産物を、可溶性産物のDNAシークエンシング及び発現のために、ベクターpGC CH(図7b)内にクローン化した。標準法を使用するシークエンシング(BigDye Teminator Cycle Sequencing; PE Applied Biosystems CA)は、CTLA4ベース特異的インサートが存在することを示した。さらに、ELISAを使用する実験は、特異的な反応性タンパク質が、組換え培養物によって発現されていることを示した。これらのアッセイにおいて、GlyA皮膜Dynabeadを使用したパンニング及びGlyA皮膜プレートを使用したELISAによるスクリーニングによって単離された組換え体が、BSA皮膜Dynabeadを使用したパンニングによって単離された同様に試験された組換え体より、強いシグナルを与えた。
【0093】
実施例8
結合転写及び翻訳中にQβレプリカーゼを含ませる効果 生産物の収率の増大、及びin vitro翻訳の間の生産物中の突然変異の速度の増大の両者を試みるために、Qβレプリカーゼ(二つの形態のいずれか)を、反応混合物に加えた。レプリカーゼは、精製レプリカーゼタンパク質、または結合転写/翻訳反応の間に同時に合成できるT7転写プロモーター(pCDNAQβ)の制御の下の遺伝子鋳型のそれぞれとして含まれた。この反応のために使用される鋳型は、再び抗GlyA T7−scFv(上述の通り)であり、選択はGlyA結合磁性ビーズを使用して実施された。これらの実験は、回収されたGlyA反応性生産物の量が、精製Qβレプリカーゼの付加により増大し(Qβレプリカーゼを含まないコントロールに対して)、より少ない量でQβレプリカーゼコードゲノム鋳型(pCDNAQβ)の付加により増大することを示した。
【0094】
突然変異がscFv配列中に挿入されているかどうかを測定するために、各レーンから得た主生産物をゲル単離し、精製した。DNAをSfiI及びNotIで切断し、同時に切断したpGCベクターにライゲートし、標準的なプロトコールを使用して大腸菌にトランスフォームした。DNAを各シリーズから得た組換え体から単離し、各シリーズから得た6のランダムなクローンを、標準的な方法を使用してDNAシークエンシングにかけた(BigDye Terminator Cycle Sequencing; PE Applied Biosystems CA)。各レーンに対しおよそ280塩基対をシークエンスし、図14はこれらの配列中の突然変異中の数と位置を示す。この実験は、Qβレプリカーゼの存在下での転写及び翻訳の後、増大した数の突然変異の導入を示した(使用された形態のそれぞれで)。
【0095】
実施例9
人工的Qβ配列の添加 Qβレプリカーゼ活性の効率を増大する試みにおいて、特異的Qβ結合部位を、PCRによって抗GlyA T7−scFv鋳型の5’および3’末端の両者に加えた。この新しい鋳型(プライマーN5904及びN5910(センス)並びにN5909(アンチセンス)で増幅された;図11)を、精製Qβレプリカーゼタンパク質、または結合転写/翻訳反応の間同時に合成できるT7転写プロモーターの制御の下での遺伝子鋳型としてのいずれかで、Qβレプリカーゼを含む結合転写/翻訳反応において使用した。HepB、GlyAまたはBSA結合磁性ビーズを使用する選択を実施し、生産物をRT−PCRの後に回収した。人工Qβステムループ配列の存在は、(i)結合転写、翻訳及び選択に対して負の影響を有さず、(ii)ほとんどの場合選択の後のRT−PCRによって回収された生産物の量を増大した。
【0096】
実施例10
結合転写/翻訳ウサギ網状赤血球系における、Qβレプリカーゼによる抗グリコホリンscFv転写産物の複製 リボソームディスプレーのためのT7−1C3及びT7−4C2 scFv鋳型を、実施例3に記載されたように構築し、以下の条件の下で結合転写/翻訳にかけた。標準的な結合転写/翻訳反応を、Qβレプリカーゼの添加によって修飾した(実施例1に記載されたように精製されたもの)。標準的な20μl反応物において、20μg/mlの酵素の1mlを加えた。以前に我々は、結合系において抗GlyA 1C3 scFvと抗Hepb 4C2 scFvの複製に対するQβレプリカーゼの効果を比較し、1mlのこのサンプルが最適な複製を提供することを観察した。塩化マグネシウムを、0.5mMの最終濃度で加え、これは転写/翻訳因子に対する必要性を減少することが印刷されたレポートに示されている。反応を37℃で2時間継続させた。30℃で20分での40mM Tris−HCl、pH7.5、6mM MgCl2、10mM NaCl中のDNAアーゼI切断によってDNA鋳型を除去した後、複製転写産物をRT−PCRによって分析した。DNAアーゼI及び他のタンパク質を除去するために、標準的なフェノール抽出を使用した。サンプルをエタノール沈降し、RNA沈降物をRNAアーゼを含まない水中に溶解した。各鋳型に特異的なプライマー(実施例3参照)を使用してRNAをRT−PCRでアッセイし、PCR生成物(DNA)をアガロースゲル電気泳動によって比較した。DNAバンドを、エチジウムブロマイドで染色することによって顕視化した。アガロースゲルを、ゲルプロ分析器の商業的なソフトウェアーでデジタル化したイメージをスキャンすることによってデンシトメトリーにかけた。図13は、アガロースゲルのデンシトメータートレースを示し、これから精製Qβレプリカーゼを含むサンプル中で、生産された鋳型の量の増大が存在することが示される。
【0097】
実施例11
T7ポリメラーゼ転写産物からの、Qβレプリカーゼによる抗グリコホリンscFv及び抗B型肝炎scFvの複製及び突然変異;Qβレプリカーゼは、RNA依存性RNA複製の間で転写産物を突然変異する。
上述の実施例において記載された結合転写/翻訳反応に、Qβレプリカーゼ精製酵素を補い、T7 DNA依存性RNAポリメラーゼにより転写された抗GlyA 1C3 scFv RNAを複製し突然変異した。転写/複製/突然変異/翻訳インキュベーションに引き続き、サンプルをDNAアーゼIで処理し、この酵素を実施例10に記載されたように除去した。次いで精製RNAを、実施例3に記載された反応において抗GlyA scFv特異的プライマーと共に、RT−PCR反応のための鋳型として使用した。これらの反応で使用された熱安定性ポリメラーゼは、製造者の説明書に従って使用される高性能vent, pfuポリメラーゼ酵素の一つである。PCR反応生産物を、上述の商業的に入手可能なキットの一つで精製し、精製DNAを、商業的に入手可能なプラスミドpCRscriptにライゲートし、標準的な分子生物学的方法を使用してコンピーテント大腸菌XL1Blue細胞にトランスフォームした。トランスフォーメーション反応物を、X-galを含むYTアガープレート上に配置した。一晩のインキュベーションの後、コロニー(複数クローニング部位にDNA挿入物を含むプラスミドを有する大腸菌)を拾い、100μg/mlのアンピシリンを含むYTブロスの5ml中で37℃で一晩生育させた。DNAを、製造者の説明書に従って、商業的なキット(Quiagen)で培養物のそれぞれから抽出した。精製DNAを、DNAシークエンシングにより分析した:シークエンシングの結果が図16に記載されている。この表は、突然変異体の数分のサンプリングを表す配列のランダムなサンプル中の突然変異と、全体のQβレプリカーゼ複製/突然変異反応の配列変化を示す。
【0098】
実施例図12
鋳型RNAの予測二次構造 RNA鋳型についてQβレプリカーゼによって好まれるRNA配列及び推定の二次構造が報告されている(Zamora等, 1995)。これらまたは関連する好ましい構造が、連続的in vitro進化のための鋳型中に存在するかどうかを測定するために、上流非翻訳配列、T7プロモーター配列、1C3遺伝子をコードする配列、定常軽鎖アンカー領域遺伝子、抗hepb 4C2 scFv遺伝子及びIgMヒト定常重鎖アンカー領域遺伝子を、Mfoldプログラムで分析し(Zucker等, 1991)、Qβレプリカーゼが好む構造と比較した(図8に示されている)。この比較から、1C3 scFvは、CLアンカー領域と同様に、QβレプリカーゼのM部位構造を模倣した内部RNA二次構造を有することが同定され、Zamora等, 1995によって報告された好ましい合成配列との類似性が示された。これは、Qβレプリカーゼによる抗Hepb 4C2 scFVCH3のものに対して、GlyA 1C3 scFv CL鋳型の好ましい複製を説明する(実施例3参照)。それ故、この領域をコードするRNAは、Qβレプリカーゼ複製、並びにこの領域とその遺伝学的融合物の関連する突然変異を促進し増大するために、CL領域遺伝子は、結合転写/翻訳ディスプレーといずれかの突然変異誘発のためのディスプレーされた分子に対するアンカー領域として提案される。
【0099】
実施例13
pLysN-NS5B(83kDa, pI〜9.05)のための発現プロトコール pLysN-NS5Bは、T7プロモーターを有する細菌(細胞質性)発現ベクターである。NS5Bは、非構造的HepC RNA依存性RNAポリメラーゼである。NS5Bを、Gly-Ser-Gly-Ser-Glyリンカー、10のHis残基並びにAsp-Asp-Asp-Asp-Lysリンカーが引き続くもの(GSGSGH10D4K)によって分離されたN末端でLysN部分に融合する。
【0100】
このプラスミドを、大腸菌株HMS174(DE3)pLysS中にトランスフォームし、1YT/Amp100μg/ml/クロラムフェニコール34μg/mlアガープレートで37℃で培養した。単一のコロニーを選択し、ブロス1YT/Amp100μg/ml/クロラムフェニコール34μg/ml中で37℃で一晩培養した。発現のため、一晩の開始培養物を、120rpmで2L攪拌フラスコ中で37℃で1YT/Amp100μg/ml/クロラムフェニコール34μg/ml中にA600=0.1に希釈してサブカルチャーした。培養物を、A600が0.8−1.0になるまで生育させ、次いで1mM IPTGで誘導し、Amp100μg/mlを補い、37℃で4−5時間発現を進行させた。
【0101】
培養物を回収し、事前に冷やしたローターで4℃で5000gで遠心分離した。回収された培養物の湿潤重量を測定し、細胞ペレットを−80℃で凍結した。約3−4グラムが、細胞培養物のリットル当たり生産された(湿潤重量)。
【0102】
溶解及び精製プロトコール HepC RdRp(NS5B)の抽出を、細胞を溶解し、引き続き従来のタンパク質化学法によって達成した。
【0103】
凍結した細胞ペレットに対し、細胞ペレットのグラム当たり4℃で5mlの緩衝液C(新たに作製された)を加えた。培養物が完全に懸濁されるまで、混合物を磁性ビーズを使用して4℃で攪拌した。次いで培養物を、各破壊の間で1分の間隔で、それぞれ10秒間の11回の破壊を使用してソニケートし、ソニケーション工程の間で磁性ビーズを使用した攪拌を継続した。ソニケートされた細胞を、4℃で20分の75000gで遠心分離し、上清(溶解物)を回収した。
【0104】
30%の飽和AmSO4を溶解物に加え、次いで15分間10000gで遠心分離した。これは、いくらかの細菌タンパク質を除去するように機能した。ペレットを捨て、上清に50%の飽和AmSO4を加え、15分間10000gで再び遠心分離した。これは、高い割合の大腸菌タンパク質からNS5Bを沈降するように機能した。上清を捨て、ペレットを緩衝液Cの初めの量の半分に再懸濁した。これを4℃で一晩緩衝液Cにおいて透析した。
【0105】
各工程から得た等量物を、SDS PAGEで分析し、〜90kDaのHepC RdRpバンドの部分的精製を確認した。
【0106】
透析抽出物を、緩衝液Cで事前に平衡化されたHyper D"S"樹脂を有するカチオン交換カラムに乗せた。次いでカラムを、安定なベースラインが得られるまで緩衝液Cで洗浄した。1M NaClでの緩衝液Cの段階的勾配で溶出を実施した。NS5Bは、600mMのNaCl濃度に相当する50%のNaCl比で溶出することが見出された。
【0107】
溶出分画を10%SDS PAGEで分析し、精製を確認した。NS5Bはこの工程により、マイナーなより小さい分子量の混在タンパク質を含む90%の均一性まで精製された。
【0108】
精製NS5Bを、50%の飽和AmSO4で濃縮し、ペレットを再溶解するのに十分な緩衝液C(Tris pH7.4を有する)中に再懸濁した。次いでこれを同じ緩衝液で透析し、AmSO4を除去した。
【0109】
この純度のNS5Bは、緩衝液C(Tris)中の予備的Superose 12カラムでのサイズ排除クロマトグラフィーによるさらなる精製が、任意ではあるが必要とされない程度であった。
【0110】
緩衝液(ソニケーション、溶解、溶出、透析) 緩衝液C
50mM Na-PO4 pH6.8 Na2HPO4 2.32ml
(またはTris pH6.8 NaH2PO4について置換 2.69ml)
100mM NaCl 0.5844g
10%グリセリン 10ml
10mM b−メルカプトエタノール 70μl
0.02% NaN3 80μl
0.25M ショ糖 8.56g
0.1% 界面活性剤(β−オクチルグルコピラノシド) 0.1g
1mM Pefe-Bloc 0.1g
Complete(商標)錠剤(No EDTA) 2錠
H2O 100mlまで
【0111】
精製タンパク質のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(12.5%アクリルアミド)及びタンパク質のクマシーブルー染色により、約70kDaの単一のバンドが示された。
【0112】
HepC RdRp(NS5B)を数多くのプロトコールによってアッセイした。最も単純な方法は、Novagen Large Scale Transcription Kit(TB069)に依存する。このプロトコールの修正した形態は、成功して使用されている。この方法は、以下のように略記される。
【0113】
T7/T3/SP6プロモーターの上流で切断された二本鎖DNA鋳型を、RNA鋳型を作製するためにT7 DNA依存性RNAポリメラーゼの存在下で使用する。次いで同じ混合物中でHepC RdRp(NS5B)は、T7ポリメラーゼによって生産されたRNAを増幅する。
【0114】
DNA鋳型(0.5μg/ml) 1μl(0.5ng)
ATP(20mM) 10μl
CTP(20mM) 10μl
GTP(20mM) 10μl
UTP(20mM) 10μl
5×転写緩衝液(400mM HEPES pH7.5、 60mM MgCl2、50mM NaCl) 20μl
1M DTT(1M) 1μl
T7ポリメラーゼ(100U/ml) 1μl
HepC RdRp(NS5B) xμl
ヌクレアーゼを含まない水 yμl
【0115】
この方法は、キット中のコントロールDNA鋳型、並びにT7プロモーターの上流で成功して切断されたプラスミドDNAを利用する。使用されるDNAの量は、0.1ng程度の低さがうまくいくであろう。使用されるT7ポリメラーゼの量は、0.1μl程度の低さである。
【0116】
興味深いことに、これらの実験においてHepC RdRp(NS5B)は、オリゴヌクレオチドプライマーの不存在下でdsDNAを与える能力、及びRNAを増幅する能力を有することが示されている。
【0117】
実施例14
真核生物発現ベクターpCDNA3.1中への、C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼコード配列のクローニング C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼコード配列(図10)を、結合転写/翻訳系におけるin situ発現、並びに標的RNAの同時的複製/突然変異のために、ベクターpCDNA3.1(図9)内にクローン化した。真核生物発現ベクターpCDNA3.1中のEcoRI及びNotI制限部位内へのクローニングのための、C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼのPCR増幅におけるプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドの配列は以下のものである:
5' GTGGTGGAATTCGCCGCCACCTCTATGTCGTACTCTTGGACC
5' GCACGGGCTTGGGCGATAATCCGCCGGCGAGCTCAGATC
【0118】
図17に示されたベクターからC型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼのPCR増幅において、上述のオリゴヌクレオチドを使用した点を除いて、実施例2に記載されたものと同様のストラテジーを使用して、C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼをpcDNA3.1ベクター(pCDNAHEPCと命名)内にクローン化した。C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼが、in situで合成されていることを示すために使用された方法は、実施例2に記載されたものと全く同じであった。pCDNAHEPC中のC型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼ鋳型を使用する結合反応から生じた結果は、図18に示された。この図に示された結果は、C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼが、T7ポリメラーゼ単独よりも多くの量の転写産物(スキャンb)を生ずることを示す。ここでバンドは、より強い強度を有し、C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼを含まないバンドよりも広く、RNAに対する効果を示す。
【0119】
数多くの変形例及び/または修飾が、広く記載された本発明の精神または範囲から離れることなく、特異的な実施態様に示されたような本発明になすことができることは、当業者によって予測されるであろう。従って本実施態様は、あらゆる点において説明的なものであり、制限するものではないと考慮される。
[参考文献]
【技術分野】
【0001】
本発明は、翻訳系において標的結合タンパク質を突然変異させ選択する方法、及びこの方法における使用のためのポリヌクレオチド構築物に関する。本発明の方法は、診断上及び治療上の有用性を有する分子の生産に適用できる。
【背景技術】
【0002】
タンパク質のin vitro進化は、周知の遺伝子配列に突然変異を導入し、突然変異体配列のライブラリーを生産すること、該配列を翻訳し、突然変異体タンパク質を生産すること、次いで所望の特性を有する突然変異体タンパク質を選択することを含む。この方法は、改良された診断上及び治療上の有用性を有するタンパク質を生産する可能性を有する。しかしながら不幸にも、この方法の可能性は、突然変異体及びライブラリーの生産のために現在利用可能な方法における不完全性によって制限されている。
【0003】
例えば、独特の個々の遺伝子及びそれらがコードするタンパク質の大きなライブラリー(例えば1010のライブラリーサイズを超えるもの)の生産は、翻訳効率の制限のため、ファージディスプレー系では困難であると理解されている。更なる欠点は、ファージディスプレー系を利用する方法(図1)が、突然変異、増幅、選択及び更なる突然変異のいくつかの連続的な工程を必要とする点である(Irving等, 1996; Krebber等, 1995; Stemmer, 1994; Winter等, 1994)。
【0004】
選択されたタンパク質のアフィニティー成熟、特に抗体のアフィニティー成熟のために今日使用されている方法の例が、表1に示される。全てのこれらの方法は、遺伝子の突然変異、引き続きコード化タンパク質のディスプレーと選択に依存する。選択された特定の突然変異体は、生じた遺伝子ライブラリーにおける多様性を決定する。in vitroストラテジー(表1)は、ファージディスプレーライブラリーを形成する際の突然変異化遺伝子のトランスフォーメーションの効率によって厳しく制限される。一つのin vivoサイクリング法(表1のNo.1)において、大腸菌突然変異細胞は、組換え抗体遺伝子の突然変異のためのビヒクルとなった。突然変異化DNAQ遺伝子を有する大腸菌突然変異化細胞MUTD5−FIT(Irving等, 1996)は、S−30抽出物のソースとして使用でき、それ故プルーフリーディングエラーの結果として複製の間DNA中への突然変異の導入を促す。しかしながら、突然変異速度は、必要とされる速度と比較して低い。例えば、20のアミノ酸の完全な順列を有する20の残基を突然変異化するために、1×1026のライブラリーサイズを必要とし、それは現在利用可能なファージディスプレー方法体系では非常に困難な作業である。
【0005】
【表1】
【0006】
それ故、継続的に進化(突然変異)され、所望の遺伝子が選択される突然変異体の複雑なライブラリーのin vitro生産を可能にする選択法は、タンパク質のアフィニティー突然変異(増大)の改良された手段を生ずるであろう。
【0007】
in vitro結合転写及び翻訳系 興味ある遺伝子を含むDNAプラスミドは、T7プロモーターのようなコントロールエレメントによって制御される場合、転写のための鋳型として機能できることが周知である。結合セルフリー系が、mRNAを同時に転写し、mRNAをペプチドに翻訳するために使用できることも周知である(Baranov等, 1993; Kudilicki等, 1992; Kolosov等, 1992; Morozov等, 1993; Ryabova等, 1989,1994; Spirin 1990; US 5556769; US 5643768; He及びTaussig 1997)。セルフリー系のソースは一般的に、原核生物について大腸菌S−30抽出物(Mattheakis 1994; Zubay 1973)であり、真核生物についてウサギ網状赤血球溶解物である。転写/翻訳結合系は、原核生物セルフリー抽出物(Mattheakis等 1994)及び真核生物セルフリー抽出物(US 5492817; US 5665563)を含むものが報告されており(US 5492817; US 5665563)、それらは有効な転写及び翻訳のための異なる必要性を有する。さらに、原核生物及び真核生物系における翻訳化タンパク質の正確なホールディングのための必要性が存在する。原核生物について、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)及びシャペロンが必要とされ得る。一般的に原核生物においては、翻訳化タンパク質は、リボソームからの放出の後ホールディングされる;しかしながら、リボソームに付着した(つながれた)新たに翻訳されたタンパク質の正確なホールディングのため、C末端アンカーが必要であろう。アンカーは、新たに翻訳されたタンパク質ドメインをリボソームに結合するためのポリペプチドスペーサーである。該アンカーは、イムノグロブリン定常領域のような完全なタンパク質ドメインでもよい。これとは全く対照的に、真核生物系においては、タンパク質は合成と同時にホールディングされ、原核生物PDI及びシャペロンの添加は必要ない。しかしながらアンカーは、リボソームに結合した(つながれた)新たに翻訳されたタンパク質から空間を空けるため、及び該タンパク質の正確なホールディングのため、真核生物においても有用であろう。
【0008】
セルフリー結合系においてde novoで合成されたポリペプチドは、例えば停止コドンの不存在下では該ポリペプチドはリボソームから放出されないため、リボソームの表面にディスプレーされている。mRNAリボソームタンパク質複合体は、選択の目的のために使用できる。この系は、ファージディスプレー及び選択の方法を模倣し、図1に示される。リボソーム上での最適なディスプレーのために必要とされる特性は、Hanes及びPluckthun (1997)によって記載されている。これらの特性は、停止コドンの除去を含む。しかしながら停止コドンの除去は、ssrA tRNA様構造によってコードされる新たに翻訳されたタンパク質のC末端にプロテアーゼ感受性部位の付加を引き起こす。これは、アンチセンスssrAオリゴヌクレオチドを含ませることによって防止できる(Keiler等 1996)。
【0009】
RNA配向性RNAポリメラーゼ Qβバクテリオファージは、大腸菌ファージQβの一本鎖ゲノムを複製するために有効なレプリカーゼを有するRNAファージである(RNA依存性RNAポリメラーゼを、レプリカーゼまたはシンセターゼと称する)。Qβレプリカーゼはエラーを生じがちであり、103−104塩基対とin vivoで計算されたRNA中に突然変異を導入する。Qβレプリカーゼの正確性は低く、強力に偏ってその鋳型を複製する(Rohde等 1995)。これらの教示は、長期間に亘る複製により、所望のタンパク質の合成に適さない突然変異された鎖の蓄積を導くことを示す。+及び−鎖の両者が、レプリカーゼの鋳型として機能する;しかしながら、ウイルスのゲノムについて、+鎖はQβレプリカーゼによって結合され、相補的な鎖(−)の鋳型として使用される。RNAの複製が生じるために、レプリカーゼは、十分に定義されている特異的なRNA配列/構造エレメントを必要とする(Brown及びGold 1995; Brown及びGold 1996)。組換えRNAの0.14フェムトグラムを含む反応により、30分で129ナノグラムが生産される(Lizardi等 1988)。
【0010】
RNA配向性RNAポリメラーゼは、適合可能な鋳型上に対数増幅的にRNAを複製することが周知である。適合可能な鋳型は、MDV−1 RNAに示されたような二次構造を有するRNA分子である(Nishihara,T等 1983)。この点で、ベクターは、複製のために必要とされる配列及び二次構造(MDV−1 RNA)を有し、QβゲノムRNAと同様な態様でin vitroで複製されるため、増幅可能なmRNAを構成するものとして記載されている。MDV−1 RNA配列(Qβレプリカーゼに対する天然で生じる鋳型)は、QβレプリカーゼによるRNAの増幅と適合可能な数多くの天然の鋳型の一つである(US-4786600);それは、組み込まれたmRNAの配列の安定性を増大する、ほとんどのファージRNAの末端に存在する構造と同様な末端のtRNA様構造を有する。プラスミドの直線化により、該プラスミドは、さらなる組換えMDV−1 RNAの合成のための鋳型として機能するようになる(Lizardi等 1988)。本分野での教示により、外来遺伝子のQβレプリカーゼによる長期化した複製は、MDV−1 RNAのような天然で生じる鋳型の一つ内のRNAとして組み込まれることを必要とすることが示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US 5492817
【特許文献2】US 5665563
【特許文献3】US 5492817
【特許文献4】US 5665563
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Irving等, 1996; Krebber等, 1995; Stemmer, 1994; Winter等, 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、RNA配向性RNAポリメラーゼが、進化した(突然変異化された)mRNA分子のライブラリーの作製と同様な態様で、複製の間合成されたmRNA分子内に突然変異を導入することを見出した。これらの突然変異化mRNA分子は、挿入及び欠失並びに点突然変異のためサイズにおいて様々であり、相当するタンパク質が、例えばリボソーム、mRNA、及びde novo合成されたタンパク質をコードするmRNAを含む3成分複合体上にディスプレーされるように、in vitroで翻訳され得る。本発明者はまた、リボソームディスプレー法によって生産されたタンパク質の大きな割合が、正確にホールディングされた機能的な形態を有する条件を同定した。さらに本発明者は、ファージQβレプリカーゼが、mRNA内に突然変異を取り込んでRNA鋳型を増幅するための真核生物結合転写/翻訳系において機能できる条件を同定した。
【0014】
本発明の好ましい転写/翻訳系におけるmRNA分子は、連続的なin vitro進化(CIVE)法を導く複製/突然変異/翻訳の連続した周期的な方法に存在する。
【0015】
このCIVE法は、従来のアフィニティー成熟法に固有の数、ライブラリーサイズ、及び時間消費工程の制限を避ける、タンパク質のin vitro進化のための新規な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、第一の特徴点として、本発明は、以下の工程を含む標的分子に結合するタンパク質の突然変異、合成及び選択のための方法を提供する:(a)タンパク質をコードする複製可能なmRNA分子を、RNAのリボヌクレオシド三リン酸前駆体とRNA配向性RNAポリメラーゼと共にインキュベーションし、RNA配向性RNAポリメラーゼが、突然変異を導入するようにmRNA分子を複製し、それによって突然変異体mRNA分子の集団を生産する工程;(b)工程(a)で得られた突然変異体mRNA分子を、突然変異体タンパク質の集団の合成を生ずる条件の下で翻訳系と共にインキュベーションし、翻訳の後に、突然変異体タンパク質をそれをコードするmRNA分子に結合させ、それによって突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を形成する工程;
(c)工程(b)で得られた突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を標的分子にさらし、それに結合した突然変異体タンパク質/mRNA複合体を回収することによって、一つ以上の突然変異体タンパク質/mRNA複合体を選択する工程;及び(d)任意に該複合体からmRNA分子を放出する工程。
第二の特徴点として、本発明は、以下の工程を含む、標的分子に結合するタンパク質の突然変異、合成及び選択のための方法を提供する;
(b)工程(a)で得られた突然変異体mRNA分子を、突然変異体タンパク質の集団の合成を生ずる条件の下で翻訳系と共にインキュベーションし、翻訳の後に、突然変異体タンパク質をそれをコードするmRNA分子に結合させ、それによって突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を形成する工程;
(c)工程(b)で得られた突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を標的分子にさらすことによって、一つ以上の突然変異体タンパク質/mRNA複合体を選択する工程;
(d)工程(a)で使用された複製可能なmRNA分子が、工程(c)で選択された複合体から得られたmRNAである条件で、工程(a)から(c)を一回以上繰り返す工程;
(e)標的分子に結合する突然変異体タンパク質複合体を回収する工程;及び(f)任意に複合体からmRNA分子を放出または回収する工程。
【0017】
工程(d)で得られたmRNAは、翻訳系から精製または単離することなく工程(a)から(c)を通じてリサイクルされてもよい。
【0018】
一つの実施態様として、工程(d)から得たmRNAは、該mRNAが工程(c)で得られた複合体に付着する間、工程(a)を経てリサイクルされる。別の実施態様として、mRNAは、リサイクルの前に工程(c)で得られた複合体から放出される。mRNAは、いずれかの適切な機構によって複合体から放出されてもよい。該機構には、インキュベーションの温度を上昇させること、または複合体を完全なままにするために使用される化合物の濃度を変化することが含まれ得る。
【0019】
本発明の文脈において、mRNAは、連続的な手動の工程によって、工程(a)から(c)を通じてリサイクルされてもよい。しかしながら好ましい実施態様として、工程(a)、(b)、(c)及び(d)は、単一または複数の区画を設けた反応容器において同時に実施され、リサイクルが該容器内で自動的に生じる。
【0020】
本発明の文脈において、mRNAは、連続的な手動の工程によって、工程(a)から(c)を通じてリサイクルされてもよい。しかしながら好ましい実施態様として、工程(a)、(b)、(c)及び(d)は、単一の反応容器において同時に実施され、リサイクルが該容器内で自動的に生じる。
【0021】
第二の特徴点の別の実施態様として、工程(d)から得たmRNAは単離される。単離されたmRNAは、cDNAに転写されてもよい。生じたcDNAを、コード化タンパク質の発現に適したベクター内にクローン化してもよい。
【0022】
いずれかの適切な複合体が、翻訳したタンパク質をそれをコードするmRNAに結合するために使用されてもよい。例えば該複合体は、タンパク質ディスプレーのために適したミトコンドリアまたは他の細胞オルガネラであってもよい。リボソーム複合体は好ましくは、少なくとも一つのリボソーム、少なくとも一つのmRNA分子、及び少なくとも一つの翻訳したポリペプチドを含む。この複合体は、翻訳したタンパク質の「リボソームディスプレー」を可能にする。翻訳に引き続いて3成分のリボソーム複合体を完全なままに維持するために適した条件は周知である。例えば、コードする配列の3’末端からの翻訳停止コドンの欠失または省略により、完全な3成分リボソーム複合体の維持が生ずる。スパルソマイシンまたは類似化合物は、リボソーム複合体の解離を防止するために加えられてもよい。マグネシウム塩の特異的な濃度を維持すること、及びGTP濃度を下げることもまた、完全なリボソーム複合体の維持に寄与するであろう。
【0023】
本発明の好ましい実施態様は、リサイクルバッチプロセス、好ましくは連続的フロープロセスにおける結合した複製−翻訳−選択を含むことは、当業者に予測されるであろう(例えば図4参照)。翻訳または転写−翻訳のための連続したフロー装置及び方法は、本分野で周知であり、材料の組成または反応器の温度のような条件を変化させることによって、本発明の方法に適用できる。いくつかの系及びその操作方法が、Spirin. A.S. (1991)にレビューされており、それは参考としてここに取り込まれる。さらなる関連文献には、Spirin等 (1988); Rattat等 (1990); Baranov等 (1989); Ryabova等 (1989);及びKigawa等 (1991)が含まれ、その全てが参考としてここに取り込まれる。
【0024】
用語、「翻訳系」は、リボソーム、可溶性酵素、トランスファーRNA、並びに外因性mRNA分子によってコードされるタンパク質を合成可能なエネルギー再生産系を含む混合物を意味する。
【0025】
好ましい実施態様として、該翻訳系は、セルフリー翻訳系である。この実施態様に従った翻訳は、いずれかの特定のセルフリー翻訳系に制限されない。該系は、真核生物、原核生物またはその組み合わせから由来してもよい、粗抽出物、部分的に精製された抽出物または高度に精製された抽出物が使用されてもよい。合成構成成分は、天然の構成成分に置換されてもよい。数多くの代替物が利用可能であり、文献に記載されている。例えば、Spirin (1990B)を参照。この文献は、参考としてここに取り込まれる。セルフリー翻訳系はまた、商業的に入手可能である。本発明の一つの実施態様として、セルフリー翻訳系は、大腸菌からのS−30抽出物を利用する。別の実施態様として、セルフリー翻訳系は、網状赤血球溶解物、好ましくはウサギ網状赤血球溶解物を利用する。
【0026】
該翻訳系はまた、タンパク質ホールディングを増大する化合物を含んでもよい。この目的のために、本発明者は、リボソームディスプレー法によって生産されるタンパク質の高い割合がホールディングされた機能的な形態で生産される条件を同定した。これらの条件は、0.1mMから10mMの間の濃度で翻訳系に対して還元及び/または酸化したグルタチオンの添加を含む。好ましくは該翻訳系は、2mMから5mMの間の濃度で酸化したグルタチオンを含む。好ましくは翻訳系は、約2mMの濃度で酸化したグルタチオンを、及び0.5mMから5mMの間の濃度で還元したグルタチオンを含む。
【0027】
本発明の別の実施態様として、該翻訳系は、細胞または細胞内の区画より成るまたはそれらを含む。該細胞は、真核生物または原核生物から由来してもよい。
【0028】
本分野で周知の数多くのRNA配向性RNAポリメラーゼ(またはレプリカーゼ若しくはRNAシンセターゼとして周知である)が単離されており、本発明の方法における使用に適している。これらの例として、バクテリオファージRNAポリメラーゼ、植物ウイルスRNAポリメラーゼ及び動物ウイルスRNAポリメラーゼが含まれる。本発明の好ましい実施態様として、RNA配向性RNAポリメラーゼは、比較的高い頻度で複製されたRNA分子内に突然変異を導入し、好ましくはその頻度は、104塩基対に少なくとも1個の突然変異、より好ましくは103塩基対に一つの突然変異である。より好ましい実施態様として、RNA配向性RNAポリメラーゼは、Qβレプリカーゼ、C型肝炎RdRp、水疱性口内炎ウイルスRdRp、カブ黄色モザイクウイルスレプリカーゼ(Deiman等 (1997))、並びにRNAバクテリオファージファイ6 RNA依存性RNA(Qjala及びBamford (1995)より成る群から選択される。最も好ましくは、RNA配向性RNAポリメラーゼは、Qβポリメラーゼである。
【0029】
RNA配向性RNAポリメラーゼは、精製タンパク質として転写/翻訳系に含まれてもよい。別法として、RNA配向性RNAポリメラーゼは、本発明の第一または第二の特徴点の方法の工程(a)と同時に、若しくは工程(a)、(b)及び(c)と同時に発現される、遺伝子鋳型の形態で含まれてもよい。
【0030】
さらなる好ましい実施態様として、RNA配向性RNAポリメラーゼは、標的分子と融合または会合されてもよい。理論的に根拠付けられることを望まないが、ある場合、翻訳タンパク質の結合親和性は、mRNA分子に対するレプリカーゼの親和性より高くてもよい。標的分子/RNA配向性RNAポリメラーゼ融合構築物に対する突然変異体タンパク質/mRNA複合体の結合は、RNA配向性RNAポリメラーゼの近傍にmRNAを配置するであろう。これは、興味あるmRNA分子の好ましいさらなる複製及び突然変異を生ずるであろう。
【0031】
各種のRNA依存性RNAポリメラーゼによって複製されるRNA鋳型が本分野で周知であり、本発明における使用に適した複製可能なmRNAを生産するためのベクターとして機能できる。Qβレプリカーゼに対する周知の鋳型は、RQ135 RNA、MDV−1 RNA、ミクロバリアントRNA、ナノバリアントRNA、CT−RNA、及びRQ120 RNAを含む。これもQβレプリカーゼによって複製されるQβ RNAは、シストロンを含み、該シストロンの生産物がタンパク質合成を調節するため、好ましくはない。好ましいベクターは、MDV−1 RNA及びRQ135 RNAを含む。両者の配列が印刷されている。Kramer等 (1978)(MDV−1 RNA)及びMunishkin等 (1991)(RQ135)を参照。これら両者が参考としてここに取り込まれる。それらは、周知のDNA合成法によってDNA形態に作製される。
【0032】
本発明の第一の特徴点の好ましい実施態様として、該方法はさらに、複製可能なmRNAを生産するためにDNA構築物を転写する工程を含む。組換えmRNAをコードするDNAは、プラスミドの形態で存在し得るが、そうである必要はない。プラスミドと、遺伝子配列が組み込まれている複製可能なRNAをコードする配列の末端または近傍で該プラスミドを切断するエンドヌクレアーゼを使用することが好ましい。直線化は個別に実施でき、または転写−複製−翻訳と結びつけることができる。しかしながら好ましくは、直線状DNAは、多くの利用可能なDNA複製のいずれか一つ、最も好ましくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生産される。いくつかの系について、エンドヌクレアーゼを含まない非直線化プラスミドが好ましい。適切なプラスミドは、例えばT7 RNAポリメラーゼまたはSP6 RNAポリメラーゼのようなバクテリオファージRNAポリメラーゼによる組換えプラスミドのin vitro転写によってRNAを生産するための方法に関する、Melton等 (1984a,b)の以下の教示に従って調製されてもよい。例えばMelton等 (1984a)及びMelton等 (1984b)を参照。これらの文献は参考としてここに取り込まれる。転写は、複製可能なRNAをコードする配列の第一のヌクレオチドで開始するのが好ましい。
【0033】
さらに好ましい実施態様として、転写は、本発明の第一または第二の特徴点に従った方法の工程(a)、(b)、(c)で、単一または複数の区画の反応容器若しくは反応器中で同時に実施される。
【0034】
標的分子は、DNA分子、タンパク質、レセプター、細胞表面分子、代謝産物、抗体、ホルモン、細菌またはウイルスのような、興味あるいずれかの化合物(またはその断片)であってもよい。
【0035】
好ましい実施態様として、標的分子はマトリックスに結合され、複合体(翻訳タンパク質をディスプレーする)を含む反応混合物に加えられる。標的分子は、例えば磁性ビーズのようなマトリックス上に皮膜されてもよい。磁性ビーズは、Dynabeadであってもよい。翻訳タンパク質は、標的分子に競合的に結合すると予測されるであろう。より高い親和性を有するタンパク質は好ましくは、より低い親和性分子を交換するであろう。かくして、本発明の方法は、興味ある標的分子に対して改良された結合親和性を示す突然変異タンパク質の選択を可能にする。
【0036】
本発明者はまた、MDV−1鋳型のような天然に存在するレプリカーゼの鋳型から由来する最小の配列が、Qβレプリカーゼの結合に対して十分であるという驚くべき発見をなした。この発見に基づいて、複製可能なmRNAの転写に適した新規な構築物が開発された。
【0037】
従って、本発明の第一及び第二の特徴点の好ましい実施態様として、該方法はさらに、複製可能なmRNA分子を生じるためにDNA構築物を転写することを含み、該DNA構築物は以下のものを含む;
(i)該DNAのmRNAへの転写を促進するコントロールエレメント及びリボソーム結合部位を含む非翻訳領域;
(ii)標的分子に結合するタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム;並びに(iii)該オープンリーディングフレームの上流に位置するステム−ループ構造。
【0038】
第三の特徴点として、本発明は以下のものを含むDNA構築物を提供する;
(i)該DNAのmRNAへの転写を促進するコントロールエレメント及びリボソーム結合部位を含む非翻訳領域;
(ii)非翻訳領域の下流に位置するクローニング部位;並びに(iii)該クローニング部位の上流に位置するレプリカーゼ結合配列。
【0039】
ここで使用される用語、「レプリカーゼ結合配列」は、レプリカーゼ(特にレプリカーゼホロ酵素)によって認識される「ループ様」二次構造のようなポリヌクレオチド配列を指す。好ましくは、レプリカーゼ結合配列は、レプリカーゼ分子に対する全長RNA鋳型を含まない。例えば好ましくは、用語、「レプリカーゼ結合配列」は、全長MDV−1 RNAまたはRQ135 RNA鋳型を含まない。
【0040】
好ましい実施態様として、レプリカーゼ結合配列は、15から50ヌクレオチドの長さ、より好ましくは20から40ヌクレオチドの長さである。好ましくはレプリカーゼ結合配列は、Qβレプリカーゼによって認識される。
【0041】
さらに好ましい実施態様として、レプリカーゼ結合配列の配列は、以下の配列を含むまたは以下の配列より成る:GGGACACGAAAGCCCCAGGAACCUUUCG。
【0042】
さらに好ましい実施態様として、第二のレプリカーゼ結合配列が、クローニング部位の下流に含まれる。
【0043】
いずれかの適したリボソーム結合部位が、本発明の構築物において使用されてもよい。原核生物及び真核生物リボソーム結合配列は、原核生物または真核生物系の何れが使用されるかに依存して取り込まれてもよい。好ましい原核生物リボソーム結合部位は、MS2ウイルスのものである。
【0044】
さらに好ましい実施態様として、DNA構築物は、翻訳開始配列を含む。好ましくは翻訳開始配列はATGである。
【0045】
いずれかの興味ある遺伝子が、DNA構築物のクローニング部位内に挿入できることは、当業者によって予測される。好ましい実施態様として、興味ある遺伝子は、(i)標的結合タンパク質のライブラリー、または(ii)単一の標的結合タンパク質についてコードするヌクレオチド配列であり、ここで該標的はタンパク質、DNA、細胞表面分子、レセプター、抗体、ホルモン、ウイルス、または他の分子若しくは複合体若しくはその誘導体のいずれかを含む。
【0046】
アンカードメインをコードするヌクレオチド配列は、興味ある遺伝子にフレーム中の3’に融合されてもよい。アンカードメインは、該分子の正確なホールディング及びその同型結合パートナーの接近が可能なリボソームからの十分な距離に、翻訳されたタンパク質を興味ある遺伝子から離すのに十分な長さを有するいずれかのポリペプチド配列であってもよい。好ましくは該ポリペプチドは、複製可能な鋳型のものを模倣した相当するRNA二次構造を有する。好ましい実施態様として、該ポリペプチドはイムノグロブリン定常ドメインである。好ましくは該ポリペプチドは、定常軽鎖ドメインである。定常軽鎖ドメインは、マウス抗体1C3の第一の定常軽鎖領域であってもよい。好ましくは定常ドメインは、図5aに示される配列によってコードされる。別法として該ポリペプチドは、ヒトIgM定常ドメインであってもよい。別の実施態様として、アンカーは、以下のものより成る群から選択されてもよい:オクタペプチド「FLAG」エピトープ、DYKDDDDK、または任意に翻訳終結(停止)ヌクレオチド配列が引き続くポリヒスチジン6タグ。翻訳終結(停止)ヌクレオチド配列は、TAAまたはTAGであってもよい。本発明のいくつかの構築物において、放出因子による認識、引き続きタンパク質放出を妨げるために、停止コドンは存在しない。これらの構築物において、アンチセンスssrAオリゴヌクレオチド配列は、引き続く3’非翻訳領域中のC末端プロテアーゼ部位の付加を妨げるために加えられてもよい。
【0047】
第四の特徴点として、本発明は、本発明の第二の特徴点に従ったDNA構築物を含む複製可能なmRNA転写産物を生産するためのキットを提供する。
【0048】
好ましい実施態様として、該キットは、以下のものから選択される少なくとも一つの他のさらなる構成成分を含む:(i)RNA配向性RNAポリメラーゼ、好ましくはQβレプリカーゼ、またはRNA配向性RNAポリメラーゼのためのDNA若しくはRNA鋳型;
(ii)セルフリー翻訳系;
(iii)DNA配向性RNAポリメラーゼ、好ましくはバクテリオファージポリメラーゼ;
(iv)リボヌクレオシド三リン酸;並びに(v)制限酵素。
【0049】
本明細書を通じて、もし文脈が他のものを必要としなければ、用語「含む」またはその変異型「含む」若しくは「含んでいる」は、述べられているエレメントまたは数字またはエレメントの群または数字類を含むものを企図するように理解されるが、いずれかの他のエレメントまたは数字またはエレメントの群または数字類を排除するものとは解されない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】連続的in vitro進化(CIVE)法におけるa)ファージディスプレー及びb)リボソームディスプレーのためのアフィニティー成熟サイクルを示す図である。
【図2】CIVEのための興味ある遺伝子(ヌクレオチド配列)を含む発現ユニットを図式的に表す図である。発現ユニットは、転写開始配列(T7プロモーター)に沿って上流のリボソーム結合部位(RBS)及び翻訳開始部位(ATG)を有する、興味ある遺伝子を含む。該構築物はまた、下流のスペーサー配列を含む。
【図3】in vitroアフィニティー成熟の連続的サイクリング性質を示すCIVE法を図式的に表す図である。該方法は、連続的に進化(成熟)し、所望の遺伝子が選択される突然変異体の複合体ライブラリーのin vitro生産を可能にする:本発明の好ましい転写/翻訳系におけるmRNA分子は、連続的in vitro進化(CIVE)を導く再複製/突然変異/翻訳の連続的サイクリング工程中に存在する。
【図4】CIVE法に適した反応容器を表す図である。
【図5A】a)マウスモノクローナル抗体1C3の第一の定常軽鎖領域;b)ヒトIgM抗体の第三の定常重鎖領域;c)抗グリコホリン(1C3)scFvのヌクレオチド配列を示す図である。
【図5B】d)抗B型肝炎表面抗原(4C2)scFvのヌクレオチド配列を示す図である。
【図6A】QβバクテリオファージゲノムのcDNAコピーを含むプラスミドpBRT7QベータのDNA配列を示す図である。
【図6B】QβバクテリオファージゲノムのcDNAコピーを含むプラスミドpBRT7QベータのDNA配列を示す図である。
【図6C】QβバクテリオファージゲノムのcDNAコピーを含むプラスミドpBRT7QベータのDNA配列を示す図である。
【図6D】QβバクテリオファージゲノムのcDNAコピーを含むプラスミドpBRT7QベータのDNA配列を示す図である。
【図7】in vitro転写及び翻訳に使用される鋳型のPCR合成のために使用される、(a)pGC038CL(抗グリコホリンscFv(1C3)及びマウス定常軽鎖領域を含む)及び(b)pGC CH(ヒト定常重鎖領域を含む)のプラスミドを図式的に表す図である。これらのプラスミドは、下流スペーサー配列を提供するために使用された。ほとんどの場合、興味ある遺伝子は、pGC CHのSfiI及びNotI部位にクローン化された。
【図8】ステムループ構造を形成するRNA断片の配列を示す図である。
【図9】ウサギ網状赤血球に結合した転写/翻訳系における、Qβレプリカーゼ及びC型肝炎ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼの発現のための真核生物発現ベクターpcDNA3.1を示す図である。
【図10】C型肝炎ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼのDNA配列を示す図である。
【図11】in vitro結合転写/翻訳反応用の鋳型DNAを生産するためのPCR反応におけるプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドのDNA配列を示す図である。鋳型の生産及びパンニング後の生産物の回収の両者のために使用されるオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列である。配列は数字が付され、5’から3’で記載されている。
【図12】ウサギ網状赤血球結合転写/翻訳系におけるQβレプリカーゼの発現を示す図である。
【図13】抗GlyA 1C3タンパク質合成の結合転写/翻訳に対するQβレプリカーゼの効果を示す図である。
【図14】結合転写/翻訳においてQβレプリカーゼを含ませる効果を示す図である。選択された突然変異体の配列中の突然変異の表を示す。この図は、6のランダムなクローンから得られた配列の280のヌクレオチド中に見出される突然変異の位置及びタイプを示す。これらは、Qβレプリカーゼの不存在下、精製Qβの存在下、またはプラスミドpCDNAQβの存在下のいずれかで、転写及び翻訳の後のGlyA皮膜Dynabeadに対する抗GlyA scFvのパンニングから回収された。「検出突然変異」のカラムにおいて、「なし」は、突然変異が見出されないことを意味する:突然変異はAxBの形態で示され、Aは野生型ヌクレオチドであり、xは配列中の位置数であり(図5cに示される)、そしてBは観察された突然変異化ヌクレオチドである。
【図15】結合転写/翻訳ウサギ網状赤血球系:デンシトメータースキャニングにおいてQβレプリカーゼによる抗グリコホリンscFv転写産物の複製を示す図である。
【図16】T7ポリメラーゼ転写産物からのQβレプリカーゼによる抗グリコホリンscFv及び抗B型肝炎scFvの複製及び突然変異のDNA配列分析を示す図である。
【図17】C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼを含むベクターを示す図である。
【図18】抗GlyA 1C3 scFv RNAの複製に対する、結合転写/翻訳系において発現されるC型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼの効果を示す図である。エチジウムブロマイドで染色しスキャンしたRT−PCR産物のアガロースゲル電気泳動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の好ましい態様として、タンパク質の連続的一工程進化のための系は、以下の構成成分を含む:
【0052】
発現ユニット: 本発明における使用のための好ましい発現ユニットは、図2に表される。この発現ユニットは、DNAのmRNAへの転写を促進するために、T7またはSP6プロモーターのようなコントロールエレメントを5’非翻訳領域内に有する3’及び5’非翻訳領域を含む。コンセンサスDNA配列は、そのポリメラーゼに特異的である:T7 RNAポリメラーゼに対するT7プロモーター配列は、TAATACGACTCACTATAGGGAGAである。T7プロモーター配列は、RNA依存性RNAポリメラーゼ結合配列として機能し得る(即ち、それはQβレプリカーゼに対する結合配列として機能し得る)。しかしながら好ましくは、該構築物は、プロモーター部位に対する3’側に5’非翻訳領域中に位置するQβレプリカーゼの結合のためのステムループ構造を含む。好ましくは第二のステムループ構造は、コード配列の下流に含まれ、好ましくは発現ユニットの翻訳終結部位の3’側で約1kbである。好ましいステムループ構造の配列は、GGGACACGAAAGCCCCAGGAACCUUUCGである。
【0053】
リボソーム結合部位は、プロモーターの下流の次の領域である。いくつかのリボソーム結合部位のいずれかが、この位置で使用できる。原核生物及び真核生物リボソーム結合配列が、真核生物または原核生物結合系の何れが使用されるかに依存して取り込まれ得る。一つの好ましい原核生物結合部位は、MS2ウイルスのものである。翻訳開始配列ATGが好ましくは使用され、それはアミノ酸メチオニンをコードする;これは、in vitro翻訳の開始部位である。
【0054】
興味ある遺伝子(ヌクレオチド配列)
興味ある遺伝子が、標準的な遺伝学的方法のいずれかによって非翻訳領域に結合され得ることは、当業者に予測されるであろう。興味ある遺伝子は、遺伝子3’末端までにオープンリーディングフレーム(停止コドンではない)を有するいずれかのヌクレオチド配列を含み、さらに本発明の目的のため、アンカー(スペーシング)配列の末端を含む。
【0055】
好ましい実施態様として、興味ある遺伝子は、i)標的結合タンパク質のライブラリー、またはii)単一の標的結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であり、この場合標的は、タンパク質、DNA、細胞表面分子、レセプター、抗体、ホルモン、ウイルス、または他の分子若しくは複合体若しくはその誘導体のいずれかを含む。アンカードメインをコードするヌクレオチド配列は、興味ある遺伝子の3’及びフレーム中に融合されてもよい。アンカードメインは、分子の正確なホールディング及び同型結合パートナーへの接近を可能にするためにリボソームから十分な距離で、興味ある遺伝子から翻訳されたタンパク質を離す十分な長さの一連のポリペプチド配列のいずれかであってもよい。好ましい実施態様として、アンカーは、オクタペプチド「FLAG」エピトープ:DYKDDDDKまたはヒト若しくはネズミ抗体定常ドメインのいずれかをコードする配列である。好ましくはアンカーは、定常ドメイン1C3のようなマウスモノクローナル抗体から由来する定常ドメインである(図5a参照)。さらに好ましいアンカーは、ヒトIgM抗体から由来する定常領域である(図5b参照)。
【0056】
アンカー配列には、例えばTAAまたはTAGといった翻訳終止(停止)ヌクレオチド配列が引き続くであろう。しかしながら、ある構成においては、放出因子による認識及び引き続くタンパク質の放出を妨げるために、停止コドンが存在しないことが考慮され得る。これらにおいて、アンチセンスssrAオリゴヌクレオチド配列が、引き続く3’非翻訳領域中のC末端プロテアーゼ部位の付加を妨げるために加えられる。スパルソマイシン、他の類似化合物の添加または温度の減少もまた、mRNA及びde novo合成タンパク質からのリボソームの放出を妨げる。
【0057】
発現システム 発現ユニットのための転写/複製/突然変異は、ウサギ網状赤血球溶解物系(He及びTaussig, 1997)または大腸菌S−30転写翻訳混合物(Mattheakis等, 1994; Zubay, 1997)の使用によって達成され得る。例えば、T7プロモーターを使用したDNA発現ユニット(上述詳述)を、製造者の説明書に従ってT7 RNAポリメラーゼで処理する。生じたRNAライブラリーは、コード化遺伝子の多様性を反映する。複製及び突然変異のために添加されたRNA依存性RNAポリメラーゼは、複製のために加えられ、突然変異が精製酵素として提供され、または別法としてT7若しくはSP6のようなプロモーターの制御の下でプラスミド内に別個の発現系としてコードされる。好ましい酵素はQβレプリカーゼであるが、同様な性質を有するいずれかの酵素が使用されてもよい。この工程は、Qβプロテアーゼによる突然変異を通じたライブラリーの複雑性の増大を提供する。真核生物細胞におけるmRNA合成のため、mRNAは好ましくはキャップされ、それはジグアノシン三リン酸の過剰量の添加によって達成される;しかしながら、商業的な供給者Promega及びNovagenから得たウサギ網状赤血球系は、キャップした化合物の添加を不要にする系中の構成成分を有する。転写/翻訳混合物または結合系は、いずれかの細胞から抽出でき、最も一般的に使用されるものは、コムギ麦芽、HeLa細胞のような哺乳動物細胞、大腸菌及びウサギ網状赤血球である。結合転写翻訳系は、大腸菌突然変異細胞MUTD5−FIT(Irving等, 1996)から抽出でき、それは突然変異化DNAQ遺伝子を有し、それ故プルーフリーディングエラーの結果として複製の間DNA内に導入されるさらなるランダムな突然変異を可能にする。一つの好ましい転写/翻訳混合物は、ウサギ網状赤血球溶解物である。結合系に対するGSSGの添加は、ディスプレーされたタンパク質の正確なホールディングを増大し、それ故カウンターレセプターまたは抗原に対する後の結合及び選択を促進する。
【0058】
Qβレプリカーゼによる突然変異 Qβレプリカーゼは、ランダムな突然変異を取り込んだ高レベルのmRNAの複製及び生産のために系中に含まれる(図3参照)。複数コピーの一本鎖RNA鋳型が、Qβレプリカーゼによる突然変異で単一の標準的構成成分に複製される;しかしながら、両方の鎖は、等温条件の下で鋳型として同等に効果的である。
【0059】
本分野の教示により、Qβのようなファージから由来する全長RNA中に存在する複合体並びに二次及び三次構造が、タンパク質開始部位へのリボソームの接近を制限することが示されている。しかしながら我々は、より小さいRNA配列が、レプリカーゼの結合に適しており、それ故全長鋳型の代わりに使用できることを見出した。好ましい配列は、シュードノットとして周知である小さな合成RNA(Brown及びGold 1995;1996)であり、それはQβレプリカーゼによる増幅と適合的である。本発明の文脈において、シュードノットの使用は、RNA及びそれに融合した配列のQβレプリカーゼ増幅に必要かつ十分な結合部位を維持する一方で、タンパク質開始部位へのリボソームの接近の問題を解消できる。
【0060】
翻訳及びリボソームディスプレー ウサギ網状赤血球溶解物及びコムギ麦芽のような真核生物、または大腸菌のような原核生物のいずれかであるいくつかのin vitro翻訳法が周知である。これらは商業的に入手可能であり、または周知の印刷された方法によって生産できる。突然変異化mRNAの翻訳は、好ましくはde novo合成タンパク質をコードする特異的なmRNAを含む3成分リボソーム複合体中のリボソームに結合した、タンパク質分子のライブラリーを生ずる(Mattheakis等, 1994)。タンパク質及びリボソームからのmRNAの解離を妨げるためのいくつかの方法が周知である。例えばスパルソマイシンまたは類似化合物が加えられてもよい;スパルソマイシンは、研究された全ての生物においてペプチジルトランスフェラーゼを阻害し、リボソームとの不活性な複合体の形成によって機能するであろう(Ghee等, 1996)。高濃度のマグネシウム塩を維持すること、及びGTPレベルを低下することもまた、リボソーム/mRNA/タンパク質複合体を維持するのに寄与するであろう;発現ユニットの構造に関しては、上述した。3成分リボソーム複合体を維持する好ましい手段は、コード配列の末端の翻訳停止コドンの省略である。
【0061】
さらに、二つの系における分子の正確なホールディングのための好ましい必要性が存在する。原核生物については、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)及びシャペロンが、正確なホールディングを確実にするC末端アンカードメインと並んで使用され得る。後者は、原核生物タンパク質がホールディングの前にリボソームから放出されるために必要とされ(Ryabova等, 1997)、それ故ペプチドがリボソームに結合される場合に、全体のタンパク質はリボソームから距離を取ることが必要とされる。これとは対照的に、真核生物系においては、タンパク質は合成されながらホールディングされ、原核生物PDI及びシャペロンを加える必要はない;しかしながら我々は、GSSGの特定の範囲の濃度の添加が、3成分リボソーム複合体上での正確にホールディングされたタンパク質の増大したディスプレーによるライブラリー選択に対して有益であることを見出した。
【0062】
選択及び競合的結合 RNA複製の連続的な周により、翻訳によってタンパク質のライブラリーを生産するRNA分子のライブラリーが生じる。標的分子結合マトリックス(例えば抗原皮膜Dynabead)が、3成分リボソーム複合体を捕獲するために反応に加えられる。ライブラリー中の個々のメンバーは、マトリックス(Dynabead)上に固定化された抗原に対して競合する。より高い親和性を有する分子は、より低い親和性分子に置換するであろう。該方法の終結時に、マトリックス(Dynabead)に結合した複合体(mRNA/リボソーム/タンパク質)は回収され得る。cDNAが複合体中のmRNAから合成され、コード化遺伝子配列からの高レベル発現に適したベクター中にクローン化される。
【0063】
リサイクリングフリーシステム(Spirin等, 1988)は、基質(リボソームを含む)の供給を確実にするための一定温度のチェンバー及び試薬並びに必須でない物質の除去を使用する連続的in vitro進化(CIVE)システムに適用できるであろう。以下のものを含む全てのCIVEの工程は、このチェンバー内で生じ得る:結合転写及び翻訳、突然変異化複製、3成分リボソーム複合体の表面へのde novo合成タンパク質のディスプレー、及び最高の親和性の結合を有するものを選択するための抗原に対する3成分リボソーム複合体上のディスプレーされたタンパク質の競合的結合(図4)。非結合試薬、物質及びディスプレーされたタンパク質は、洗浄緩衝液ですすぐことによって除去され、結合3成分リボソーム複合体は、温度の上昇及び緩衝液からのマグネシウムの削除によって解離する。この次に、洗浄緩衝液工程を除いて上述の全ての工程を実施するために必要な全ての試薬の添加が行われる。スパルソマイシンまたは類似化合物の添加のようなタンパク質及びリボソームからのmRNAの解離を妨げる方法が利用可能であり、マグネシウム塩の特異的濃度の維持及びGTPレベルの低下は、反応温度の減少または停止コドンの削除と並んでリボソーム/mRNA/タンパク質複合体の維持に寄与するであろう。連続的フロー性能と組み合わせた温度が制御される容器を使用することによって、選択されたリボソームから得たmRNAは、リボソームから解離でき、スパルソマイシン、Mg等のようなリボソーム/mRNA/タンパク質複合体の維持に重要な試薬の濃度を変化させて、さらに複製、突然変異、及び翻訳されるであろう。図4は、上記装置の設計を表す。
【0064】
本発明は、以下の非制限的な実施例を参考としてより十分に記載されるであろう。
【実施例】
【0065】
実施例1
組換えQβレプリカーゼ:発現と精製クローニング及び発現 Qβレプリカーゼコード配列を、T7 RNAポリメラーゼを使用するin vitroでの転写による感染性RNAの調製を可能にするようにデザインされた、つまりファージQβのRNAゲノムのcDNAコピーである、pBR322ベース構築物であるプラスミドpBRT7QβからPCRによって増幅した(Barrera等, 1993に略記されている)。pBRT7Qβの配列は、図6に示されている。ヌクレオチド番号1は、Qβレプリカーゼセンス鎖の第一のヌクレオチドである。Qβレプリカーゼを増幅するためのプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、酵素EcoRI及びNotIによる制限酵素切断のための部位をコードし、その配列は図11に示されている。
【0066】
PCR産物を、この目的のために利用可能な商業的な製品のいずれか一つを使用して精製した(例えばBresatec)。精製DNAを、標準的な分子生物学的方法を使用して、ベクターpGC(図7)のEcoRI及びNotI部位内にクローン化した。ベクターpGC及びそれからの組換えタンパク質の発現は、文献に記載されており、参考としてここに取り込まれる(Coia等, 1996)。PCR増幅及びベクターへのQβレプリカーゼ遺伝子のクローニング及び酵素の発現のための大腸菌へのトランスフォーメーションの方法は、培養培地に1mMのイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を加えることによって誘導されるpGC中のQβレプリカーゼ遺伝子の発現というように、当業者に周知である。
【0067】
プロモーターPLでのpBR322ベースベクター中のQβレプリカーゼ遺伝子の発現及び精製は、以下に詳述されるように実施した。rep14 Billeter株を、Christof Biebricher, Max Planck, Gottingenによって入手した。該大腸菌株を、2%栄養ブロス、1.5%酵母抽出物、0.5%NaCl、0.4%グリセリン、100mg/lアンピシリン中の20l発酵器において、30℃で良好なエアレーションで光学密度2(660nM)に生育させた。温度を37℃に上昇させた後、エアレーションを5時間継続した。細胞を氷上で凍結し、遠心分離によって回収した(約180gの湿潤細胞重量が得られる)。
【0068】
Qβレプリカーゼの精製緩衝液A:0.05M Tris.HCl緩衝液(pH7.8)、1mMメルカプトエタノール、20%v/vグリセリン、100mg/lアンピシリン。
緩衝液B:0.05M HEPES.Na緩衝液(pH7.0)、1mMメルカプトエタノール、20%v/vグリセリン。
50gの回収された大腸菌を、100mlの0.05M Tris.HCl緩衝液(pH8.7)、1mMメルカプトエタノールで、高速ブレンダーでホモゲナイズした。リゾチーム及びEDTAを、それぞれ100μg/ml及び0.5mMの最終濃度で加え、該溶液を0℃で30分穏やかに攪拌した。12mlの8%デオキシコール酸ナトリウム、0.24mlのフェニルスルホニルフルオリド(プロパノール−2中に20mg/ml)、0.15mlのバシトラシン(10mg/ml)、0.15mlの0.1Mベンズアミジン、3.3mlの10%Triton−X−100を加え、溶液を10mMの最終濃度にMgCl2で調節した。高い粘性を高速度でブレンドすることによって減少した。固体のNaClを、0.5Mの最終濃度で加え、4.8mlの0.3%ポリエチレンイミド(pH8)を攪拌しながら加えた。0℃で20分の攪拌の後、懸濁液を10,000rpmで30分遠心分離した(GSAローター)。上清を5当量のTris.HCl(pH8.7)で希釈した後、1mMメルカプトエタノール、100mlDEAEセルローススラリー(緩衝液Aで平衡化されたWhatman DE52)を加え、0℃で20分ゆっくりと攪拌した。攪拌しないで40分のインキュベーションの後、上清を沈殿物からデキャントし、廃棄した。沈殿物を緩衝液A中に懸濁し、1cmの直径のガラスカラムに注ぎ、400mlのTris.HCl緩衝液(pH8.7)、1mMメルカプトエタノールで洗浄し、250mlの緩衝液A+180mMNaClで溶出し、分画を回収した。該分画を、次の結合アッセイで使用するQβレプリカーゼの存在についてアッセイした。
【0069】
酵素配置アッセイ:Qβレプリカーゼに対するビオチニル化RNAの結合 これは、正に荷電された膜に維持されている酵素に結合するビオチンラベル化RNAに依存する複製酵素を検出するように開発された非放射性活性アッセイである:一方で、同じ条件の下で遊離ビオチンラベル化RNAは、膜に維持されない。DNA及びRNAは、製造者の説明書に従ってソラレン−ビオチン(Ambion)でラベルされた。次いでラベル化RNAを、Qβレプリカーゼの配置を検出するために以下のアッセイに示されたようにカラム溶出物(サンプル分画)に加えた。
【0070】
以下の物質をエッペンドルフチューブ中で混合した:10μl カラム溶出分画10μl 0.5M 120mM MgCl2を含むTrisHCl(pH7.4)
10μl 2mM ATP10μl 5mM ATP10μl 〜100ng/ml ソラレン−ビオチンラベル化プローブRNA50μl 水 反応混合物を37℃で1分インキュベーションした。
反応混合物を、ナイロン膜、例えばハイボンドNにドットブロットし(酵素Qβレプリカーゼに結合したRNAまたはDNAのみが、膜に維持されるであろう)、12mM MgCl2を含む50mM TrisHCl pH7.4で洗浄し、自動セットでStratalinker中でナイロン膜にUV架橋した。BrightStar Biodetectキットを、ナイロン膜上に付着したビオチニル化核酸の検出のために使用した。図12は、DE52カラムからの溶出分画のアッセイを示す。
【0071】
活性分画をプールし、一当量の緩衝液Aで希釈し、緩衝液A+0.1M NaClに平衡化されたDEAE-Sepharose FFの35mlカラムに適用した。酵素を、緩衝液A中の0.1−0.4M NaClの直線勾配で溶出した。活性分画をプールし、固体の(NH4)2SO4(39g/100ml溶液)の添加により酵素を沈降し、遠心分離によって回収し、4mlの緩衝液Bに溶解した。
【0072】
酵素を、伝導率が緩衝液B+0.2M NaClのもの未満になるまで希釈し、緩衝液Bで平衡化されたFractogel EMD SO3の100mlカラムに適用し、緩衝液B中の0.2−0.8M NaClの直線勾配(500mlで2回)で溶出した。約0.65M NaClで溶出された活性ピークをプールし、固体の(NH4)2SO3(39g/100ml溶液)で沈降し、遠心分離によって回収し、10mlの緩衝液A+50%グリセリン中に溶解した。溶液を−80℃で貯蔵した。
【0073】
以下の工程は、Sumper & Luce (1975)に従ってスモールスケールで実施された。4mgのQβレプリカーゼを、緩衝液A(希釈され塩を除去するように透析された)で平衡化されたQAE-Sephadex〜A-25の1.6×14.5cmカラムに適用し、緩衝液A中の0.05−0.25M NaClの2×200ml勾配で溶出した。二つのきれいに分離されたコアとホロ酵素のピークをプールし、緩衝液Aで1:1に希釈し、QAE-Sephadexカラムに適用した。コアについて2ml、ホロ酵素について6mlをそれぞれ緩衝液A+50%グリセリンで洗浄し、レプリカーゼを緩衝液A+50%グリセリン+0.2M (NH4)2SO4で濃縮形態に溶出した。活性分画を−80℃で貯蔵した。RNAによる装置のコンタミネーションを避けるように注意を払った。
【0074】
実施例2
真核生物発現ベクターpCDNA3.1中へのQβレプリカーゼのクローニング Qβレプリカーゼコード配列を、真核生物発現ベクターpCDNA3.1(図9)中にクローン化し、pCDNAQβと名付けられたベクターを生産した。このベクターを、結合転写/翻訳系及び付随する標的RNAの複製/突然変異におけるin situでのQβレプリカーゼの発現のために使用した。真核生物発現ベクターpCDNA3.1中のEcoRI及びNotI制限部位内へのクローニングのためのQβレプリカーゼのPCR増幅でのプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドの配列は、以下のものであった:
No.5352 5'TCTGCAGAATTCGCCGCCACCATGTCTAAGACAGCATCTTCG
No.5350 5'TTTATAATCTGCGGCCGCTTACGCCTCGTGTAGAGACGC
【0075】
Qβレプリカーゼbサブユニットのコード配列を、標準的な分子生物学的方法によってpCDNA3.1中にクローン化した(Sambrook等, 1989)。クローン化配列を、DNA配列分析によって確認した。ウサギ網状赤血球結合転写/翻訳系におけるQβレプリカーゼの発現に引き続き、結合転写翻訳キット(Promega及びNovagen)の商業的供給者並びにTranscend(Promega)の供給者によって示唆されたように、標準的転写/翻訳反応におけるde novo合成Qβレプリカーゼ内に取り込まれたビオチニル化リシン(TRANSCEND, Promega)の検出を実施した。結合反応のインキュベーション工程の完成時に、20μlの反応物を、2mlの10×SDSサンプル緩衝液で90℃に加熱し、サンプルをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)にかけた。これに引き続きウエスタンブロッティングを実施し、de novo合成ビオチニル化Qβレプリカーゼバンドを、TRANSCENDキット検出試薬で検出した。この発現の結果が、図12のゲルのスキャンに示されており、Qβレプリカーゼがゲルの正確なサイズでビオチニル化バンドによって示されるように合成されていることが確認できる。
【0076】
次いで我々は、1C3鋳型で結合転写/翻訳反応を実施したが、同じ反応でpcDNA3.1からQβレプリカーゼを発現した。発現ベクターpCDNAQβからin situで合成されたQβレプリカーゼは、0.5mM塩化マグネシウムの存在下で結合系で1C3 scFvの増大した合成を生じた:これは上述のようにビオチニル化リシンの取り込みによって測定された(図12b)。塩化マグネシウムの存在は、転写/翻訳因子に対するQβレプリカーゼの活性の依存性をゆるめることが以前に示されている。
【0077】
実施例3
転写のためのDNA鋳型のPCRによる構築 DNA配列を、FTS−1熱シークエンサー(Corbett Research)、PE2400(PerkinElmer)またはRobocylcer勾配96(Stratagene)のいずれかを使用して、製造者の説明書に従ってTaq、Tth、Tfl、PwoまたはPfuポリメラーゼを用いて、標準的かつ十分に記載された方法(特異的にデザインされたオリゴヌクレオチドプライマー、スプライスオーバーラップ伸長、制限酵素切断等を使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR))によって増幅した。使用されるオリゴヌクレオチドプライマーのリストは、図11に示されている。生産物をBresaClean(Bresa)を使用してゲル精製し、または結合転写及び翻訳反応に直接使用した。
【0078】
DNA配列を、構築物の3’末端に伸長を提供する、ベクターpGC038CL(図7a)またはpGC CH(図7b)のいずれか中にクローン化されている開始鋳型から増幅した。この伸長は、マウスモノクローナル(1C3;配列は図5a)から由来する定常領域、またはヒトIgM抗体(配列は図5b)から由来する定常領域のいずれかであった。増幅のために使用される正方向の(センス)プライマー(抗GlyA scFvについてN5266;抗HepB scFvについてN5517またはN5384, N5344及びN5343)は、転写開始部位、並びに翻訳開始部位及びリボソーム結合部位を提供した。逆方向の(アンチセンス)プライマー(マウス定常領域についてN5267;ヒト定常領域についてN5385)は、mRNA−リボソーム−タンパク質複合体を会合したままにするために、停止コドンを含まなかった。正方向及び逆方向のプリマーの両者は、生産断片のクローニングを可能にする制限酵素部位(特異的にそれぞれSfiI及びNotI)を提供した。
【0079】
DNA依存性RNAポリメラーゼに対するいくつかのプロモーター配列のいずれかが、転写に向けるために使用され得る;しかしながら、以下の配列が好ましい二つのものであった(これらは翻訳開始配列を含む:以下参照):
a) GCGCGAATACGACTCACTATAGAGGGACAAACCGCCATGGCC
b) GCAGCTAATACGACTCACTATAGGAACAGACCACCATGGCC
【0080】
これらの配列は、T7 DNA依存性RNAポリメラーゼを、結合転写/翻訳系の二つの選択的なフォーマットでRNA転写産物を生産させるように向けた。
【0081】
リボソーム結合部位をコードする配列は周知であり、グリコホリンに結合するscFv(1C3;図5c)またはB型肝炎表面抗原を結合するscFv(4C2;図5d)のいずれかをコードするリボソームディスプレーに対する興味ある分子の配列のいずれか一つの上流で、鋳型中に含まれている。同じ配列は、リボソームディスプレーのために興味あるいずれかの他の配列の上流で、鋳型中に含まれている(例えばCTLA−4ベースライブラリー配列)。
【0082】
実施例4
ウサギ網状赤血球溶解物セルフリー系における結合転写/翻訳及びリボソームディスプレー 転写及び翻訳を、0.5mM酢酸マグネシウム、0.02mMメチオニン及び3mM酸化グルタチオン(GSSG)を含むTNT T7結合転写/翻訳系(Promega)を使用して、Siliconized Rnase-フリー0.5mlチューブ(Ambion)で実施し(以下の実施例6参照)、混合物を60℃で90分インキュベーションした。いくつかの反応においては、10mMまでの還元グルタチオンもまた加えた。Qβポリメラーゼを含む反応において、混合物はまた、0.5mMの最終濃度まで塩化マグネシウムを含んだ。転写及び翻訳の後、混合物をPBSで希釈し、DNアーゼIで処理していずれかの残存する開始DNA鋳型を除去した。これは、40mM Tris(pH7.5)、6mM MgCl2、10mM NaCl及びDNアーゼI(Promega)の添加、引き続き30℃でさらに20分のインキュベーションにより達成された。
【0083】
実施例5
Dynabeadを使用する抗原に対するリボソーム3成分複合体ディスプレータンパク質の選択 トシル活性化Magneticビーズ(Dynal)を、製造者の説明書に従ってグリコホリンA(GlyA;Sigma)、B型肝炎表面抗原(HepB SA;BiosPacific, Emeryville, CA USA)またはウシ血清アルブミン(BSA;Sigma)に結合した。ストレプタビジン磁性ビーズを使用する場合、これらは製造者の説明書に従って、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin(Pierce)を使用してビオチニル化されている抗原(上述)に結合された(製造者の説明書に従って)。
【0084】
特異的に結合するmRNA−リボソーム−タンパク質複合体を選択するために、2−3μlの抗原結合(トシル活性化またはストレプタビジン皮膜化)磁性ビーズを、最終翻訳混合物に加え、ビーズの鎮静を避けるために穏やかに攪拌しながら室温で90分プレートシェイカー(Raytek Instruments)に配置した。磁性粒子回収器(Dynal)を使用してビーズを回収し、これらを、1%Tween及び5mM酢酸マグネシウムを含む冷却リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4で3回洗浄した。次いでビーズを冷却滅菌水で1回洗浄し、最後に10μlの滅菌水に懸濁した。
【0085】
選択された複合体からのcDNAの合成のため、2μlの最終ビーズ懸濁液を、製造者の説明書に従ってAccess RT-PCRシステム(Promega)またはTitan One-チューブRT-PCRシステム(Boehringer Mannheim)のいずれかを使用してRT−PCR反応に使用した。この反応に使用されるプライマーは、オリジナル正方向(センス)プライマー(開始鋳型DNA;抗GlyA scFvについてN5266;抗HepB scFvについてN5517またはN5384, N5344及びN5343を生産するために使用される)、並びにオリジナルプライマーの上流の逆方向(アンチセンス)プライマー(マウス定常領域構築物についてN5268及びN5269;ヒト定常領域構築物についてN5386及びN5387)を含んだ。ある場合、より短いプライマー(抗GlyA scFv定常軽鎖領域構築物についてN5941及びN5942)を、パンニングされたRNA鋳型を回収するために使用した。
【0086】
選択のさらなるサイクルのため、このDNAをゲル精製し(ある場合単純に希釈し)、開始DNA鋳型を生産するためにオリジナルのPCRに存在している正方向及び逆方向のプライマーを使用して、さらなるPCRにおいて取り込ませた。次いでこの新たな鋳型は、適切な開始部位を含み、第一の選択中の鋳型と同じ長さを有するために、上述のようにさらなる選択において使用することができた。
【0087】
上述の方法が、特異的な分子を選択するために使用できることを示すために、GlyAに特異的に結合するマウス定常軽鎖領域に融合された一本鎖Fv(scFv)を、T7転写開始部位及びリボソーム結合部位の付加を可能にするプライマーを使用して増幅した。この鋳型(T7−scFv)を、上述のような結合転写/翻訳反応で使用し、次いで三つに分割し、HepB SA、GlyAまたはBSA結合磁性ビーズのそれぞれと混合した。ビーズを洗浄し(上述の通り)、回収されたmRNA−リボソーム−タンパク質複合体を、cDNAの合成のために使用した。この実験の結果は、各レーンにおいて正確なサイズを有する生産物の存在を示した。HepB SA及びBSAレーンで観察された非特異的結合は、おそらく翻訳の間で合成された生産物の凝集のためであろう。網状赤血球溶解物を使用して合成された生産物の一定割合のみが正確にホールディングされ活性形態であることは、他者によって観察されている。この問題は、以下の実施例6で説明する。
【0088】
この実験から得られたGlyA特異的生産物をゲル精製し、さらなる周の選択のためのよりたくさんの鋳型を合成するためにPCRによって再増幅した。第二の周のパンニングにより、GlyA結合磁性ビーズでプローブされたサンプル中に特異的な生産物が優勢に示された。このことは、第二の周の選択によって、回収された生産物がGlyAに特異的であることを示した。
【0089】
実施例6
酸化及び/または還元グルタチオンを加える効果 in vitro転写及び翻訳の間でより高い割合の正確にホールディングされた生産物を誘導する試みにおいて、各種の濃度の還元または酸化グルタチオンのそれぞれを反応混合物に加えた。これらの反応に使用される鋳型は、抗GlyA T7−scFvであり(上述の通り)、選択をGlyA結合磁性ビーズを使用して実施した。この実験は、回収された生産物の量が、5mMまで増大する濃度の酸化グルタチオンで増加することを示した。10mMまでのさらなる増加は、回収された生産物の収率に有害な効果を有した。約2mMの酸化グルタチオンの濃度が、ほとんどの転写及び翻訳において含まれた。
【0090】
すでに2mMの酸化グルタチオンを含む反応に対して5mM及び10mMの還元グルタチオンのさらなる添加が、5mMのグルタチオンの添加によりコントロールパンニングに対してGlyAパンニングから回収された生産物の増大した量を導くディスプレーされた抗GlyA scFvのより適したホールディングを生ずるようであることを示したことが、後者の結果により明らかにされた。還元グルタチオンの濃度を0.5mMまでさらに減少することは、同様な効果を示した。
【0091】
実施例7
リボソーム上での突然変異v−ドメイン(CTLA−4)ライブラリーのディスプレー リボソームディスプレーが、ポリペプチドライブラリーから結合エレメントを選択するために使用できることを示すため、CTLA4突然変異体のライブラリーを、定常重鎖ドメインの付加が可能であるプラスミドpGC CH(図7b)にライゲートし、次いでこのライブラリーをプライマーN5659とN5385を使用するPCRによって増幅した(図11)。プライマーN5659を、必要な上流転写及び翻訳開始配列を加えるために使用した。次いでこのPCR DNAを、実施例4に記載された方法を使用する結合セルフリー翻訳系における転写及び翻訳のための鋳型として使用した。突然変異体CTLAリボソーム複合体の結合を示すために、B型肝炎抗原(HBSA)、グリコホリンA(GlyA)及びウシ血清アルブミン(BSA)皮膜Dynabeadを使用してパンニングを実施した。次いで結合複合体に付着したRNAを、RT−PCRによって回収した。パンニング、選択及び回収のために使用された方法は、上記された(実施例5)。
【0092】
CTLA4ベース突然変異体のサイズにほぼ相当する生産物を回収し、それはCTLA4ライブラリーが、HBSA、GlyA及びBSAを特異的に結合するタンパク質をコードするDNAを含むことを示した。これらの生産物を、可溶性産物のDNAシークエンシング及び発現のために、ベクターpGC CH(図7b)内にクローン化した。標準法を使用するシークエンシング(BigDye Teminator Cycle Sequencing; PE Applied Biosystems CA)は、CTLA4ベース特異的インサートが存在することを示した。さらに、ELISAを使用する実験は、特異的な反応性タンパク質が、組換え培養物によって発現されていることを示した。これらのアッセイにおいて、GlyA皮膜Dynabeadを使用したパンニング及びGlyA皮膜プレートを使用したELISAによるスクリーニングによって単離された組換え体が、BSA皮膜Dynabeadを使用したパンニングによって単離された同様に試験された組換え体より、強いシグナルを与えた。
【0093】
実施例8
結合転写及び翻訳中にQβレプリカーゼを含ませる効果 生産物の収率の増大、及びin vitro翻訳の間の生産物中の突然変異の速度の増大の両者を試みるために、Qβレプリカーゼ(二つの形態のいずれか)を、反応混合物に加えた。レプリカーゼは、精製レプリカーゼタンパク質、または結合転写/翻訳反応の間に同時に合成できるT7転写プロモーター(pCDNAQβ)の制御の下の遺伝子鋳型のそれぞれとして含まれた。この反応のために使用される鋳型は、再び抗GlyA T7−scFv(上述の通り)であり、選択はGlyA結合磁性ビーズを使用して実施された。これらの実験は、回収されたGlyA反応性生産物の量が、精製Qβレプリカーゼの付加により増大し(Qβレプリカーゼを含まないコントロールに対して)、より少ない量でQβレプリカーゼコードゲノム鋳型(pCDNAQβ)の付加により増大することを示した。
【0094】
突然変異がscFv配列中に挿入されているかどうかを測定するために、各レーンから得た主生産物をゲル単離し、精製した。DNAをSfiI及びNotIで切断し、同時に切断したpGCベクターにライゲートし、標準的なプロトコールを使用して大腸菌にトランスフォームした。DNAを各シリーズから得た組換え体から単離し、各シリーズから得た6のランダムなクローンを、標準的な方法を使用してDNAシークエンシングにかけた(BigDye Terminator Cycle Sequencing; PE Applied Biosystems CA)。各レーンに対しおよそ280塩基対をシークエンスし、図14はこれらの配列中の突然変異中の数と位置を示す。この実験は、Qβレプリカーゼの存在下での転写及び翻訳の後、増大した数の突然変異の導入を示した(使用された形態のそれぞれで)。
【0095】
実施例9
人工的Qβ配列の添加 Qβレプリカーゼ活性の効率を増大する試みにおいて、特異的Qβ結合部位を、PCRによって抗GlyA T7−scFv鋳型の5’および3’末端の両者に加えた。この新しい鋳型(プライマーN5904及びN5910(センス)並びにN5909(アンチセンス)で増幅された;図11)を、精製Qβレプリカーゼタンパク質、または結合転写/翻訳反応の間同時に合成できるT7転写プロモーターの制御の下での遺伝子鋳型としてのいずれかで、Qβレプリカーゼを含む結合転写/翻訳反応において使用した。HepB、GlyAまたはBSA結合磁性ビーズを使用する選択を実施し、生産物をRT−PCRの後に回収した。人工Qβステムループ配列の存在は、(i)結合転写、翻訳及び選択に対して負の影響を有さず、(ii)ほとんどの場合選択の後のRT−PCRによって回収された生産物の量を増大した。
【0096】
実施例10
結合転写/翻訳ウサギ網状赤血球系における、Qβレプリカーゼによる抗グリコホリンscFv転写産物の複製 リボソームディスプレーのためのT7−1C3及びT7−4C2 scFv鋳型を、実施例3に記載されたように構築し、以下の条件の下で結合転写/翻訳にかけた。標準的な結合転写/翻訳反応を、Qβレプリカーゼの添加によって修飾した(実施例1に記載されたように精製されたもの)。標準的な20μl反応物において、20μg/mlの酵素の1mlを加えた。以前に我々は、結合系において抗GlyA 1C3 scFvと抗Hepb 4C2 scFvの複製に対するQβレプリカーゼの効果を比較し、1mlのこのサンプルが最適な複製を提供することを観察した。塩化マグネシウムを、0.5mMの最終濃度で加え、これは転写/翻訳因子に対する必要性を減少することが印刷されたレポートに示されている。反応を37℃で2時間継続させた。30℃で20分での40mM Tris−HCl、pH7.5、6mM MgCl2、10mM NaCl中のDNAアーゼI切断によってDNA鋳型を除去した後、複製転写産物をRT−PCRによって分析した。DNAアーゼI及び他のタンパク質を除去するために、標準的なフェノール抽出を使用した。サンプルをエタノール沈降し、RNA沈降物をRNAアーゼを含まない水中に溶解した。各鋳型に特異的なプライマー(実施例3参照)を使用してRNAをRT−PCRでアッセイし、PCR生成物(DNA)をアガロースゲル電気泳動によって比較した。DNAバンドを、エチジウムブロマイドで染色することによって顕視化した。アガロースゲルを、ゲルプロ分析器の商業的なソフトウェアーでデジタル化したイメージをスキャンすることによってデンシトメトリーにかけた。図13は、アガロースゲルのデンシトメータートレースを示し、これから精製Qβレプリカーゼを含むサンプル中で、生産された鋳型の量の増大が存在することが示される。
【0097】
実施例11
T7ポリメラーゼ転写産物からの、Qβレプリカーゼによる抗グリコホリンscFv及び抗B型肝炎scFvの複製及び突然変異;Qβレプリカーゼは、RNA依存性RNA複製の間で転写産物を突然変異する。
上述の実施例において記載された結合転写/翻訳反応に、Qβレプリカーゼ精製酵素を補い、T7 DNA依存性RNAポリメラーゼにより転写された抗GlyA 1C3 scFv RNAを複製し突然変異した。転写/複製/突然変異/翻訳インキュベーションに引き続き、サンプルをDNAアーゼIで処理し、この酵素を実施例10に記載されたように除去した。次いで精製RNAを、実施例3に記載された反応において抗GlyA scFv特異的プライマーと共に、RT−PCR反応のための鋳型として使用した。これらの反応で使用された熱安定性ポリメラーゼは、製造者の説明書に従って使用される高性能vent, pfuポリメラーゼ酵素の一つである。PCR反応生産物を、上述の商業的に入手可能なキットの一つで精製し、精製DNAを、商業的に入手可能なプラスミドpCRscriptにライゲートし、標準的な分子生物学的方法を使用してコンピーテント大腸菌XL1Blue細胞にトランスフォームした。トランスフォーメーション反応物を、X-galを含むYTアガープレート上に配置した。一晩のインキュベーションの後、コロニー(複数クローニング部位にDNA挿入物を含むプラスミドを有する大腸菌)を拾い、100μg/mlのアンピシリンを含むYTブロスの5ml中で37℃で一晩生育させた。DNAを、製造者の説明書に従って、商業的なキット(Quiagen)で培養物のそれぞれから抽出した。精製DNAを、DNAシークエンシングにより分析した:シークエンシングの結果が図16に記載されている。この表は、突然変異体の数分のサンプリングを表す配列のランダムなサンプル中の突然変異と、全体のQβレプリカーゼ複製/突然変異反応の配列変化を示す。
【0098】
実施例図12
鋳型RNAの予測二次構造 RNA鋳型についてQβレプリカーゼによって好まれるRNA配列及び推定の二次構造が報告されている(Zamora等, 1995)。これらまたは関連する好ましい構造が、連続的in vitro進化のための鋳型中に存在するかどうかを測定するために、上流非翻訳配列、T7プロモーター配列、1C3遺伝子をコードする配列、定常軽鎖アンカー領域遺伝子、抗hepb 4C2 scFv遺伝子及びIgMヒト定常重鎖アンカー領域遺伝子を、Mfoldプログラムで分析し(Zucker等, 1991)、Qβレプリカーゼが好む構造と比較した(図8に示されている)。この比較から、1C3 scFvは、CLアンカー領域と同様に、QβレプリカーゼのM部位構造を模倣した内部RNA二次構造を有することが同定され、Zamora等, 1995によって報告された好ましい合成配列との類似性が示された。これは、Qβレプリカーゼによる抗Hepb 4C2 scFVCH3のものに対して、GlyA 1C3 scFv CL鋳型の好ましい複製を説明する(実施例3参照)。それ故、この領域をコードするRNAは、Qβレプリカーゼ複製、並びにこの領域とその遺伝学的融合物の関連する突然変異を促進し増大するために、CL領域遺伝子は、結合転写/翻訳ディスプレーといずれかの突然変異誘発のためのディスプレーされた分子に対するアンカー領域として提案される。
【0099】
実施例13
pLysN-NS5B(83kDa, pI〜9.05)のための発現プロトコール pLysN-NS5Bは、T7プロモーターを有する細菌(細胞質性)発現ベクターである。NS5Bは、非構造的HepC RNA依存性RNAポリメラーゼである。NS5Bを、Gly-Ser-Gly-Ser-Glyリンカー、10のHis残基並びにAsp-Asp-Asp-Asp-Lysリンカーが引き続くもの(GSGSGH10D4K)によって分離されたN末端でLysN部分に融合する。
【0100】
このプラスミドを、大腸菌株HMS174(DE3)pLysS中にトランスフォームし、1YT/Amp100μg/ml/クロラムフェニコール34μg/mlアガープレートで37℃で培養した。単一のコロニーを選択し、ブロス1YT/Amp100μg/ml/クロラムフェニコール34μg/ml中で37℃で一晩培養した。発現のため、一晩の開始培養物を、120rpmで2L攪拌フラスコ中で37℃で1YT/Amp100μg/ml/クロラムフェニコール34μg/ml中にA600=0.1に希釈してサブカルチャーした。培養物を、A600が0.8−1.0になるまで生育させ、次いで1mM IPTGで誘導し、Amp100μg/mlを補い、37℃で4−5時間発現を進行させた。
【0101】
培養物を回収し、事前に冷やしたローターで4℃で5000gで遠心分離した。回収された培養物の湿潤重量を測定し、細胞ペレットを−80℃で凍結した。約3−4グラムが、細胞培養物のリットル当たり生産された(湿潤重量)。
【0102】
溶解及び精製プロトコール HepC RdRp(NS5B)の抽出を、細胞を溶解し、引き続き従来のタンパク質化学法によって達成した。
【0103】
凍結した細胞ペレットに対し、細胞ペレットのグラム当たり4℃で5mlの緩衝液C(新たに作製された)を加えた。培養物が完全に懸濁されるまで、混合物を磁性ビーズを使用して4℃で攪拌した。次いで培養物を、各破壊の間で1分の間隔で、それぞれ10秒間の11回の破壊を使用してソニケートし、ソニケーション工程の間で磁性ビーズを使用した攪拌を継続した。ソニケートされた細胞を、4℃で20分の75000gで遠心分離し、上清(溶解物)を回収した。
【0104】
30%の飽和AmSO4を溶解物に加え、次いで15分間10000gで遠心分離した。これは、いくらかの細菌タンパク質を除去するように機能した。ペレットを捨て、上清に50%の飽和AmSO4を加え、15分間10000gで再び遠心分離した。これは、高い割合の大腸菌タンパク質からNS5Bを沈降するように機能した。上清を捨て、ペレットを緩衝液Cの初めの量の半分に再懸濁した。これを4℃で一晩緩衝液Cにおいて透析した。
【0105】
各工程から得た等量物を、SDS PAGEで分析し、〜90kDaのHepC RdRpバンドの部分的精製を確認した。
【0106】
透析抽出物を、緩衝液Cで事前に平衡化されたHyper D"S"樹脂を有するカチオン交換カラムに乗せた。次いでカラムを、安定なベースラインが得られるまで緩衝液Cで洗浄した。1M NaClでの緩衝液Cの段階的勾配で溶出を実施した。NS5Bは、600mMのNaCl濃度に相当する50%のNaCl比で溶出することが見出された。
【0107】
溶出分画を10%SDS PAGEで分析し、精製を確認した。NS5Bはこの工程により、マイナーなより小さい分子量の混在タンパク質を含む90%の均一性まで精製された。
【0108】
精製NS5Bを、50%の飽和AmSO4で濃縮し、ペレットを再溶解するのに十分な緩衝液C(Tris pH7.4を有する)中に再懸濁した。次いでこれを同じ緩衝液で透析し、AmSO4を除去した。
【0109】
この純度のNS5Bは、緩衝液C(Tris)中の予備的Superose 12カラムでのサイズ排除クロマトグラフィーによるさらなる精製が、任意ではあるが必要とされない程度であった。
【0110】
緩衝液(ソニケーション、溶解、溶出、透析) 緩衝液C
50mM Na-PO4 pH6.8 Na2HPO4 2.32ml
(またはTris pH6.8 NaH2PO4について置換 2.69ml)
100mM NaCl 0.5844g
10%グリセリン 10ml
10mM b−メルカプトエタノール 70μl
0.02% NaN3 80μl
0.25M ショ糖 8.56g
0.1% 界面活性剤(β−オクチルグルコピラノシド) 0.1g
1mM Pefe-Bloc 0.1g
Complete(商標)錠剤(No EDTA) 2錠
H2O 100mlまで
【0111】
精製タンパク質のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(12.5%アクリルアミド)及びタンパク質のクマシーブルー染色により、約70kDaの単一のバンドが示された。
【0112】
HepC RdRp(NS5B)を数多くのプロトコールによってアッセイした。最も単純な方法は、Novagen Large Scale Transcription Kit(TB069)に依存する。このプロトコールの修正した形態は、成功して使用されている。この方法は、以下のように略記される。
【0113】
T7/T3/SP6プロモーターの上流で切断された二本鎖DNA鋳型を、RNA鋳型を作製するためにT7 DNA依存性RNAポリメラーゼの存在下で使用する。次いで同じ混合物中でHepC RdRp(NS5B)は、T7ポリメラーゼによって生産されたRNAを増幅する。
【0114】
DNA鋳型(0.5μg/ml) 1μl(0.5ng)
ATP(20mM) 10μl
CTP(20mM) 10μl
GTP(20mM) 10μl
UTP(20mM) 10μl
5×転写緩衝液(400mM HEPES pH7.5、 60mM MgCl2、50mM NaCl) 20μl
1M DTT(1M) 1μl
T7ポリメラーゼ(100U/ml) 1μl
HepC RdRp(NS5B) xμl
ヌクレアーゼを含まない水 yμl
【0115】
この方法は、キット中のコントロールDNA鋳型、並びにT7プロモーターの上流で成功して切断されたプラスミドDNAを利用する。使用されるDNAの量は、0.1ng程度の低さがうまくいくであろう。使用されるT7ポリメラーゼの量は、0.1μl程度の低さである。
【0116】
興味深いことに、これらの実験においてHepC RdRp(NS5B)は、オリゴヌクレオチドプライマーの不存在下でdsDNAを与える能力、及びRNAを増幅する能力を有することが示されている。
【0117】
実施例14
真核生物発現ベクターpCDNA3.1中への、C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼコード配列のクローニング C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼコード配列(図10)を、結合転写/翻訳系におけるin situ発現、並びに標的RNAの同時的複製/突然変異のために、ベクターpCDNA3.1(図9)内にクローン化した。真核生物発現ベクターpCDNA3.1中のEcoRI及びNotI制限部位内へのクローニングのための、C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼのPCR増幅におけるプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドの配列は以下のものである:
5' GTGGTGGAATTCGCCGCCACCTCTATGTCGTACTCTTGGACC
5' GCACGGGCTTGGGCGATAATCCGCCGGCGAGCTCAGATC
【0118】
図17に示されたベクターからC型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼのPCR増幅において、上述のオリゴヌクレオチドを使用した点を除いて、実施例2に記載されたものと同様のストラテジーを使用して、C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼをpcDNA3.1ベクター(pCDNAHEPCと命名)内にクローン化した。C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼが、in situで合成されていることを示すために使用された方法は、実施例2に記載されたものと全く同じであった。pCDNAHEPC中のC型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼ鋳型を使用する結合反応から生じた結果は、図18に示された。この図に示された結果は、C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼが、T7ポリメラーゼ単独よりも多くの量の転写産物(スキャンb)を生ずることを示す。ここでバンドは、より強い強度を有し、C型肝炎RNA依存性RNAポリメラーゼを含まないバンドよりも広く、RNAに対する効果を示す。
【0119】
数多くの変形例及び/または修飾が、広く記載された本発明の精神または範囲から離れることなく、特異的な実施態様に示されたような本発明になすことができることは、当業者によって予測されるであろう。従って本実施態様は、あらゆる点において説明的なものであり、制限するものではないと考慮される。
[参考文献]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)タンパク質をコードする複製可能なmRNA分子を、RNAのリボヌクレオシド三リン酸前駆体とRNA配向性RNAポリメラーゼと共にインキュベーションし、RNA配向性RNAポリメラーゼが、突然変異を導入するようにmRNA分子を複製し、それによって突然変異体mRNA分子の集団を生産する工程;
(b)工程(a)で得られた突然変異体mRNA分子を、突然変異体タンパク質の集団の合成を生ずる条件の下で翻訳系と共にインキュベーションし、翻訳の後に、突然変異体タンパク質をそれをコードするmRNA分子に結合させ、それによって突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を形成する工程;
(c)工程(b)で得られた突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を標的分子にさらし、それに結合した突然変異体タンパク質/mRNA複合体を回収することによって、一つ以上の突然変異体タンパク質/mRNA複合体を選択する工程;及び
(d)任意に該複合体からmRNA分子を放出する工程;
を含む、標的分子に結合するタンパク質の突然変異、合成及び選択のための方法。
【請求項2】
(a)タンパク質をコードする複製可能なmRNA分子を、RNAのリボヌクレオシド三リン酸前駆体とRNA配向性RNAポリメラーゼと共にインキュベーションし、RNA配向性RNAポリメラーゼが、突然変異を導入するようにmRNA分子を複製し、それによって突然変異体mRNA分子の集団を生産する工程;
(b)工程(a)で得られた突然変異体mRNA分子を、突然変異体タンパク質の集団の合成を生ずる条件の下で翻訳系と共にインキュベーションし、翻訳の後に、突然変異体タンパク質をそれをコードするmRNA分子に結合させ、それによって突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を形成する工程;
(c)工程(b)で得られた突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を標的分子にさらすことによって、一つ以上の突然変異体タンパク質/mRNA複合体を選択する工程;
(d)工程(a)で使用された複製可能なmRNA分子が、工程(c)で選択された複合体から得られたmRNAである条件で、工程(a)から(c)を一回以上繰り返す工程;
(e)標的分子に結合する突然変異体タンパク質複合体を回収する工程;及び
(f)任意に複合体からmRNA分子を放出または回収する工程;
を含む、標的分子に結合するタンパク質の突然変異、合成及び選択のための方法。
【請求項3】
工程(d)が一回より多く繰り返される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
突然変異体タンパク質が、それをコードするmRNA分子にリボソーム複合体を経て結合される、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
工程(a)から(d)が、単一または複数の区画の容器のいずれかにおいて同時に実施され、複数の区画の容器が区画の間で液体の輸送を可能にする、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
RNA配向性RNAポリメラーゼが、
(i)104塩基対中に少なくとも一つの点突然変異の頻度で複製されたRNA分子中に突然変異を導入する;または
(ii)10-4の頻度で少なくとも一つの挿入または欠失を導入する;
請求項1から5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
RNA配向性RNAポリメラーゼが、
(i)103塩基対中に少なくとも一つの点突然変異の頻度で複製されたRNA分子中に突然変異を導入する;または
(ii)10-3の頻度で少なくとも一つの挿入または欠失を導入する;
請求項1から5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
RNA配向性RNAポリメラーゼが、Qβレプリカーゼ、C型肝炎RNA配向性RNAポリメラーゼ、水疱性口内炎ウイルスRNA配向性RNAポリメラーゼ、カブ黄色モザイクウイルスレプリカーゼ、並びにRNAバクテリオファージファイ6 RNA依存性RNAより成る群から選択される、請求項1から7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
RNA配向性RNAポリメラーゼが、Qβレプリカーゼである、請求項1から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
翻訳系が、セルフリー翻訳系である、請求項1から9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
セルフリー翻訳系が、大腸菌由来のS−30抽出物を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
セルフリー翻訳系が、網状赤血球溶解物を含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
翻訳系が、0.1mMから10mMの間の全体の濃度で、酸化及び/または還元グルタチオンを含む、請求項1から12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
グルタチオン濃度が、2mMから7mMの間である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
翻訳系が、約2mMの濃度で酸化グルタチオンを、0.5mMから5mMの間の濃度で還元グルタチオンを含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
複製可能なmRNA分子が、RQ135 RNA、MDV−1 RNA、ミクロバリアントRNA、ナノバリアントRNA、CT−RNA、及びRQ120 RNAより成る群から選択された鋳型に由来する、請求項1から15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
複製可能なmRNA分子が、MDV−1 RNA及びRQ135 RNAから選択された鋳型を含むベクターに由来する、請求項1から16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
DNA鋳型を転写して、複製可能なmRNAを生産する工程をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
DNA鋳型が、直線状DNA分子である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
DNA鋳型が:
(i)DNAのmRNAへの転写を促進するコントロールエレメント、及びリボソーム結合部位を含む非翻訳領域;
(ii)標的分子に結合するタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム;並びに
(iii)オープンリーディングフレームの上流に位置するステムループ構造;を含む、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
ステムループ構造が、レプリカーゼ結合配列である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
レプリカーゼ結合配列が、15から50ヌクレオチドの長さである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
レプリカーゼ結合配列が、20から40ヌクレオチドの長さである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
レプリカーゼ結合配列が、Qβレプリカーゼによって認識される、請求項21から23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
レプリカーゼ結合配列が、GGGACACGAAAGCCCCAGGAACCUUUCGの配列を含む、請求項21から24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
第二のステムループ構造が、オープンリーディングフレームの下流に含まれる、請求項20から24のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
リボソーム結合部位が、MS2ウイルスから由来する、請求項20から26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
ポリペプチドをコードする配列が、オープンリーディングフレームの3’及びフレーム中に融合される、請求項20から27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
ポリペプチドが、イムノグロブリン定常領域である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
イムノグロブリン定常ドメインが、マウス抗体1C3の定常軽鎖ドメインである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
標的分子が、DNA分子、タンパク質、レセプター、細胞表面分子、代謝産物、抗体、ホルモン、細菌またはウイルスから選択される、請求項1から30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
標的分子が、マトリックスに結合する、請求項1から31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
マトリックスが、磁性ビーズを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
(i)DNAのmRNAへの転写を促進するコントロールエレメント、及びリボソーム結合部位を含む非翻訳領域;
(ii)非翻訳領域の下流に位置するクローニング部位;並びに
(iii)該クローニング部位の上流に位置するレプリカーゼ結合配列;
を含む、DNA構築物。
【請求項35】
レプリカーゼ結合配列が、15から50ヌクレオチドの長さである、請求項34記載のDNA構築物。
【請求項36】
レプリカーゼ結合配列が、20から40ヌクレオチドの長さである、請求項35記載のDNA構築物。
【請求項37】
レプリカーゼ結合配列が、Qβレプリカーゼによって認識される、請求項34から36のいずれか一項記載のDNA構築物。
【請求項38】
レプリカーゼ結合配列が、GGGACACGAAAGCCCCAGGAACCUUUCGの配列を含む、請求項37記載のDNA構築物。
【請求項39】
第二のレプリカーゼ結合配列が、クローニング部位の下流に含まれる、請求項34から38のいずれか一項記載のDNA構築物。
【請求項40】
リボソーム結合部位が、MS2ウイルスから由来する、請求項34から39のいずれか一項記載のDNA構築物。
【請求項41】
ポリペプチドをコードする配列が、クローニング部位に対して3’に位置する、請求項34から40のいずれか一項記載のDNA構築物。
【請求項42】
ポリペプチドが、イムノグロブリン定常領域である、請求項41記載のDNA構築物。
【請求項43】
イムノグロブリン定常ドメインが、マウス抗体1C3の定常軽鎖ドメインである、請求項42記載のDNA構築物。
【請求項44】
請求項34から43のいずれか一項記載のDNA構築物を含む、複製可能なmRNA転写産物を生産するためのキット。
【請求項45】
(i)RNA配向性RNAポリメラーゼ、好ましくはQβレプリカーゼ、またはRNA配向性RNAポリメラーゼをコードするDNA若しくはRNA鋳型;
(ii)セルフリー翻訳系;
(iii)DNA配向性RNAポリメラーゼ、好ましくはバクテリオファージポリメラーゼ;
(iv)リボヌクレオシド三リン酸;並びに
(v)一つ以上の制限酵素;
より成る群から選択される少なくとも一つの構成成分をさらに含む、請求項44記載のキット。
【請求項1】
(a)タンパク質をコードする複製可能なmRNA分子を、RNAのリボヌクレオシド三リン酸前駆体とRNA配向性RNAポリメラーゼと共にインキュベーションし、RNA配向性RNAポリメラーゼが、突然変異を導入するようにmRNA分子を複製し、それによって突然変異体mRNA分子の集団を生産する工程;
(b)工程(a)で得られた突然変異体mRNA分子を、突然変異体タンパク質の集団の合成を生ずる条件の下で翻訳系と共にインキュベーションし、翻訳の後に、突然変異体タンパク質をそれをコードするmRNA分子に結合させ、それによって突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を形成する工程;
(c)工程(b)で得られた突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を標的分子にさらし、それに結合した突然変異体タンパク質/mRNA複合体を回収することによって、一つ以上の突然変異体タンパク質/mRNA複合体を選択する工程;及び
(d)任意に該複合体からmRNA分子を放出する工程;
を含む、標的分子に結合するタンパク質の突然変異、合成及び選択のための方法。
【請求項2】
(a)タンパク質をコードする複製可能なmRNA分子を、RNAのリボヌクレオシド三リン酸前駆体とRNA配向性RNAポリメラーゼと共にインキュベーションし、RNA配向性RNAポリメラーゼが、突然変異を導入するようにmRNA分子を複製し、それによって突然変異体mRNA分子の集団を生産する工程;
(b)工程(a)で得られた突然変異体mRNA分子を、突然変異体タンパク質の集団の合成を生ずる条件の下で翻訳系と共にインキュベーションし、翻訳の後に、突然変異体タンパク質をそれをコードするmRNA分子に結合させ、それによって突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を形成する工程;
(c)工程(b)で得られた突然変異体タンパク質/mRNA複合体の集団を標的分子にさらすことによって、一つ以上の突然変異体タンパク質/mRNA複合体を選択する工程;
(d)工程(a)で使用された複製可能なmRNA分子が、工程(c)で選択された複合体から得られたmRNAである条件で、工程(a)から(c)を一回以上繰り返す工程;
(e)標的分子に結合する突然変異体タンパク質複合体を回収する工程;及び
(f)任意に複合体からmRNA分子を放出または回収する工程;
を含む、標的分子に結合するタンパク質の突然変異、合成及び選択のための方法。
【請求項3】
工程(d)が一回より多く繰り返される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
突然変異体タンパク質が、それをコードするmRNA分子にリボソーム複合体を経て結合される、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
工程(a)から(d)が、単一または複数の区画の容器のいずれかにおいて同時に実施され、複数の区画の容器が区画の間で液体の輸送を可能にする、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
RNA配向性RNAポリメラーゼが、
(i)104塩基対中に少なくとも一つの点突然変異の頻度で複製されたRNA分子中に突然変異を導入する;または
(ii)10-4の頻度で少なくとも一つの挿入または欠失を導入する;
請求項1から5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
RNA配向性RNAポリメラーゼが、
(i)103塩基対中に少なくとも一つの点突然変異の頻度で複製されたRNA分子中に突然変異を導入する;または
(ii)10-3の頻度で少なくとも一つの挿入または欠失を導入する;
請求項1から5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
RNA配向性RNAポリメラーゼが、Qβレプリカーゼ、C型肝炎RNA配向性RNAポリメラーゼ、水疱性口内炎ウイルスRNA配向性RNAポリメラーゼ、カブ黄色モザイクウイルスレプリカーゼ、並びにRNAバクテリオファージファイ6 RNA依存性RNAより成る群から選択される、請求項1から7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
RNA配向性RNAポリメラーゼが、Qβレプリカーゼである、請求項1から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
翻訳系が、セルフリー翻訳系である、請求項1から9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
セルフリー翻訳系が、大腸菌由来のS−30抽出物を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
セルフリー翻訳系が、網状赤血球溶解物を含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
翻訳系が、0.1mMから10mMの間の全体の濃度で、酸化及び/または還元グルタチオンを含む、請求項1から12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
グルタチオン濃度が、2mMから7mMの間である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
翻訳系が、約2mMの濃度で酸化グルタチオンを、0.5mMから5mMの間の濃度で還元グルタチオンを含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
複製可能なmRNA分子が、RQ135 RNA、MDV−1 RNA、ミクロバリアントRNA、ナノバリアントRNA、CT−RNA、及びRQ120 RNAより成る群から選択された鋳型に由来する、請求項1から15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
複製可能なmRNA分子が、MDV−1 RNA及びRQ135 RNAから選択された鋳型を含むベクターに由来する、請求項1から16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
DNA鋳型を転写して、複製可能なmRNAを生産する工程をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
DNA鋳型が、直線状DNA分子である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
DNA鋳型が:
(i)DNAのmRNAへの転写を促進するコントロールエレメント、及びリボソーム結合部位を含む非翻訳領域;
(ii)標的分子に結合するタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム;並びに
(iii)オープンリーディングフレームの上流に位置するステムループ構造;を含む、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
ステムループ構造が、レプリカーゼ結合配列である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
レプリカーゼ結合配列が、15から50ヌクレオチドの長さである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
レプリカーゼ結合配列が、20から40ヌクレオチドの長さである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
レプリカーゼ結合配列が、Qβレプリカーゼによって認識される、請求項21から23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
レプリカーゼ結合配列が、GGGACACGAAAGCCCCAGGAACCUUUCGの配列を含む、請求項21から24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
第二のステムループ構造が、オープンリーディングフレームの下流に含まれる、請求項20から24のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
リボソーム結合部位が、MS2ウイルスから由来する、請求項20から26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
ポリペプチドをコードする配列が、オープンリーディングフレームの3’及びフレーム中に融合される、請求項20から27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
ポリペプチドが、イムノグロブリン定常領域である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
イムノグロブリン定常ドメインが、マウス抗体1C3の定常軽鎖ドメインである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
標的分子が、DNA分子、タンパク質、レセプター、細胞表面分子、代謝産物、抗体、ホルモン、細菌またはウイルスから選択される、請求項1から30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
標的分子が、マトリックスに結合する、請求項1から31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
マトリックスが、磁性ビーズを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
(i)DNAのmRNAへの転写を促進するコントロールエレメント、及びリボソーム結合部位を含む非翻訳領域;
(ii)非翻訳領域の下流に位置するクローニング部位;並びに
(iii)該クローニング部位の上流に位置するレプリカーゼ結合配列;
を含む、DNA構築物。
【請求項35】
レプリカーゼ結合配列が、15から50ヌクレオチドの長さである、請求項34記載のDNA構築物。
【請求項36】
レプリカーゼ結合配列が、20から40ヌクレオチドの長さである、請求項35記載のDNA構築物。
【請求項37】
レプリカーゼ結合配列が、Qβレプリカーゼによって認識される、請求項34から36のいずれか一項記載のDNA構築物。
【請求項38】
レプリカーゼ結合配列が、GGGACACGAAAGCCCCAGGAACCUUUCGの配列を含む、請求項37記載のDNA構築物。
【請求項39】
第二のレプリカーゼ結合配列が、クローニング部位の下流に含まれる、請求項34から38のいずれか一項記載のDNA構築物。
【請求項40】
リボソーム結合部位が、MS2ウイルスから由来する、請求項34から39のいずれか一項記載のDNA構築物。
【請求項41】
ポリペプチドをコードする配列が、クローニング部位に対して3’に位置する、請求項34から40のいずれか一項記載のDNA構築物。
【請求項42】
ポリペプチドが、イムノグロブリン定常領域である、請求項41記載のDNA構築物。
【請求項43】
イムノグロブリン定常ドメインが、マウス抗体1C3の定常軽鎖ドメインである、請求項42記載のDNA構築物。
【請求項44】
請求項34から43のいずれか一項記載のDNA構築物を含む、複製可能なmRNA転写産物を生産するためのキット。
【請求項45】
(i)RNA配向性RNAポリメラーゼ、好ましくはQβレプリカーゼ、またはRNA配向性RNAポリメラーゼをコードするDNA若しくはRNA鋳型;
(ii)セルフリー翻訳系;
(iii)DNA配向性RNAポリメラーゼ、好ましくはバクテリオファージポリメラーゼ;
(iv)リボヌクレオシド三リン酸;並びに
(v)一つ以上の制限酵素;
より成る群から選択される少なくとも一つの構成成分をさらに含む、請求項44記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−119396(P2010−119396A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53453(P2010−53453)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【分割の表示】特願2000−548452(P2000−548452)の分割
【原出願日】平成11年5月7日(1999.5.7)
【出願人】(500288522)ダイアテック・ピーティワイ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【分割の表示】特願2000−548452(P2000−548452)の分割
【原出願日】平成11年5月7日(1999.5.7)
【出願人】(500288522)ダイアテック・ピーティワイ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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