説明

進行方向変更可能なシステム

本発明による進行方向変更可能なシステムは、回転可能な第1のハウジング(22)と、第1のハウジング(22)に調整可能な継手(26)によって連結された回転可能な第2のハウジング(24)と、使用中に回転しないよう保持されるカム部材(42)と、カム部材(42)と協働可能であるカムフォロア(48)を有する。カムフォロア(48)は、第2のハウジング(24)を第1のハウジング(22)に対して、調整可能な継手(26)を中心に駆動するように移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばドリル孔の形成に用いられる、進行方向変更可能なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素の抽出に用いられるドリル孔の形成分野においては、進行方向変更可能な掘削システムを用いて、ドリル孔の経路の制御を可能にすることが常套的である。多数の進行方向変更可能な掘削システムが知られている。例えば、バイアスユニットがドリルビットの近くに配置されたシステムが知られており、バイアスユニットは、それに差し向けられた横荷重をドリルビットに付与してドリルビットをドリル孔の軸線から遠ざけて所望の方向に推進させるように作動可能である。別の形式の進行方向変更可能な掘削システムは、ドリルビットが取付けられた曲げハウジングを有し、掘削システムの進行方向変更は、ドリルビットが所望の方向に向くように曲げハウジングの向きを制御することによって達成される。いくつかの装置では、ドリルビットの方向及び角度を制御するために、曲げハウジングが調整可能である。他の装置では、曲げハウジングの傾斜が固定されたものであり、ドリルビットが差し向けられる方向の調整は、曲げハウジングの角度方向位置を制御することによって達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、単純で且つ好都合な形態の進行方向変更可能なシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、進行方向変更可能なシステムであって、回転可能な第1のハウジングと、第1の回転可能なハウジングに調節可能な継手によって連結された回転可能な第2のハウジングと、使用中に回転しないように保持されるカム部材と、カム部材と協働可能であるカムフォロア手段とを有し、カムフォロア手段は、第2のハウジングを第1の回転可能なハウジングに対して上記調整可能な継手を中心に駆動するように移動可能であるシステムを提供する。
【0005】
かかる構成は、第1及び第2のハウジングを回転させながら、第2のハウジングの回転軸線を実質的に固定された位置に保持することができるという点において有利である。かくして、掘削を行いながら、第2のハウジングによって支持されたドリルビットを所望の向きに保持することができる。
【0006】
好ましくは、第1のハウジングと第2のハウジングは、第1のハウジングの回転が第2のハウジングに伝達されるように互いに連結される。第2のハウジングに対する第1のハウジングの回転を可能にするように作動可能なクラッチ機構が設けられるのがよく、クラッチ機構は、例えば、噛合いクラッチの形態のものである。
【0007】
カム部材は、好ましくは、第2のハウジングの向きの調整を可能にするように調整可能である。カム部材は、斜板の形態をなすのが便利である。カム部材は、好ましくは、スリーブに取付けられ、スリーブは、第1のハウジングの少なくとも一部分を包囲し、通常の使用中、回転しないように保持される。例えば、スリーブは、スタビライザを有する。好ましくは、カム部材を支持するよう構成された球軸受が、第1のハウジングに設けられる。好ましくは、スリーブの位置を調整するために、カム部材をスリーブに対して移動させるように駆動する1つ又は2つ以上のリニアアクチュエータが設けられる。リニアアクチュエータは、電動式であってもよいし、変形例として、液圧式であってもよい。
【0008】
カムフォロア手段は、好ましくは、フォロアピストンを有し、フォロアピストンは、カム部材によって駆動され、駆動ピストンの移動を生じさせるように移動可能である。フォロアピストンは、好ましくは、機械的利点を提供するように、駆動ピストンよりも小さい直径のものである。駆動ピストンの運動は、好ましくは、それに連結されたプッシュロッドによって、第2のハウジングに伝達される。
【0009】
プッシュロッドは、好ましくは、それに対応するフォロアピストンのいくつかと整列する。かかる構成では、第2のハウジングは、カム部材と同一方向に第1のハウジングに対して傾斜されるが、第2のハウジングの傾斜角は、カム部材の傾斜角よりも小さい。
【0010】
添付図面を参照して、本発明を例示により更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の1つの実施形態の進行方向変更可能なシステムを有する進行方向変更可能な掘削システムの概略図である。
【図2】図1の掘削システムの進行方向変更可能なシステムを有する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照すると、ドリル孔の形成に用いられる進行方向変更可能な掘削システムが示されている。進行方向変更可能な掘削システムは、多数のダウンホール構成要素を支持するドリルストリング10を有している。ドリルストリング10は、地表のところでリグによって支持され、リグは、支持機能を有すると共に、ドリルストリング10を駆動して回転させる。
【0013】
ドリルストリング10は、多数の中間スタビライザ(安定装置)ユニット12を支持し、下端部のところで、ボトムホール組立体14を支持している。ボトムホール組立体14は、ダウンホールモータ16と、進行方向変更可能なシステム18と、ドリルビット20を有している。使用の際、ダウンホールモータ16は、ドリルビット20を駆動して回転させるように作用する。ドリルビット20の回転とドリルビット20に付与されるビット荷重に作用する重量との組合せにより、ドリルビット20は、ドリル孔が形成されている地層から材料を削り、掻き取り又は研磨し、ドリル孔を延長させる。
【0014】
図示の構成は、ダウンホールモータを使用しているけれども、ドリルビットがドリルストリングの回転によって駆動される構成も可能である。
【0015】
進行方向変更可能なシステム18は、掘削が行われている間、ドリルビット20を所望の向きに保持することを確保するように作用し、かくして、ドリル孔を延長する方向を制御する。
【0016】
図2に最も良く示すように、進行方向変更可能なシステム18は、ダウンホールモータ16の出力部に連結されるように構成された回転可能な第1のハウジング22を有し、それにより、第1のハウジングを駆動して回転させる。回転可能な第2のハウジング24が、調整可能な継手26によって第1のハウジング22に連結され、継手26は、例えば、ユニバーサル継手又はスイベルの形態のものである。継手26は、部分的に球形のスラスト軸受28を含み、かくして、軸方向に差し向けられた荷重を第1のハウジング22からの第2のハウジング24に伝達することを可能にしながら、第2のハウジング24の軸線24aの角度を第1のハウジング22の軸線に対して調整することを可能にする。
【0017】
噛合いクラッチ30の形態をした解除可能なトルク伝達装置が、第1のハウジング22と第2のハウジング24の間に設けられ、従って、所望のとき、第1のハウジング22のその軸線を中心とする回転を、第2のハウジング24に伝達することができ、噛合いクラッチ30の解除により、第1のハウジング22が第2のハウジング24と独立して回転することを可能にする。
【0018】
軸線方向に延びる通路32が、第1のハウジング22及び継手26の中を通って、第2のハウジング24内に設けられている通路34まで延び、かくして、掘削流体又は泥を進行方向変更可能なシステム18の中を通して供給することを可能にする。
【0019】
スタビライザ(安定装置)スリーブ36が、第1のハウジング22の一部分を包囲している。スタビライザスリーブ36は、ドリル孔の壁に当接し、使用中、回転しないで実質的に固定されたままである。スタビライザスリーブ36は、第1のハウジング22に、シールとしても作用する軸受38によって取付けられ、それにより、スタビライザスリーブ36が回転しないで固定されたままであるにも関わらず、第1のハウジング22が回転することを可能にする。スタビライザスリーブ36と第1のハウジング22は一緒になって、チャンバ40を構成し、斜板42の形態のカム部材がチャンバ40内に収容される。斜板42は、スタビライザスリーブ36にキー又はスプラインによって取付けられ、その結果、通常の使用中、斜板42は、回転しないように保持される。斜板42とスタビライザスリーブ36の間の連結の性質は、斜板42の角度方向の向きを調節することができるようなものである。球軸受44が、斜板42の内側部分と第1のハウジング22のうちの斜板42の内側部分と隣接した部分との間に設けられ、それにより、玉軸受44は、斜板42を支持しながら上記運動に順応する。一連のリニアアクチュエータ46が、スタビライザスリーブ36に取付けられ且つ斜板42に係合し、リニアアクチュエータ46は、適当な制御システム(図示せず)の制御下で、スタビライザスリーブ36に対する斜板42の向きを調整するように作動可能である。リニアアクチュエータ46は、或る範囲の形態をとるのがよい。例えば、リニアアクチュエータは、電動式又は電磁式であってもよいし、変形例として、液圧式であってもよい。
【0020】
斜板42のうちのリニアアクチュエータ46と協働する面と反対側の面は、一連のカムフォロア手段48に係合する。カムフォロア手段48は各々、比較的小さい直径のフォロアピストン50を有し、フォロアピストン50は、斜板42に当接し、第1のハウジング22に形成されたそれぞれの孔52内で往復動可能である。孔52は、フォロアピストン50よりも大きい直径の孔54に開口し、フォロアピストン50よりも大きい直径の駆動ピストン56が、孔54内を往復動可能である。かかる構成であれば、フォロアピストン50の運動により、それに対応する駆動ピストン56にそれと同じ方向の運動を生じさせることを理解すべきである。駆動ピストン56は、フォロアピストン50よりも短い距離にわたってしか運動しないけれども、かかる構成により得られた機械的利点により、フォロアピストン50よりも大きい力を付与することができる。
【0021】
一連のプッシュロッド58が駆動ピストン56に当接し、駆動ピストン56の運動を第2のハウジング24に伝達する。
【0022】
使用の際、図2に示す位置では、斜板42が第1のハウジング22に対して傾斜し、且つ、第2のハウジング24が第1のハウジング22に対して、斜板42と同じ方向であるがそれよりも小さい角度だけ傾斜していることを理解すべきである。この位置から、ダウンホールモータ16の作動によって生じる第1のハウジング22の回転により、フォロアピストン50は、斜板42の上に乗って移動し、フォロアピストン50は各々、斜板42上におけるフォロアピストン50の運動によって、それぞれの孔52の中に更に押される。フォロアピストン50の運動は、それに対応する駆動ピストン56に孔52,54内の流体によって伝達され、プッシュロッド58を延長させ、第2のハウジング24を、継手26を中心に傾斜させるように押す。このように達成された第2のハウジング24の傾斜運動は、プッシュロッド58を駆動し、また、進行方向変更可能なシステムの半径方向反対側に位置する駆動ピストン56及びフォロアピストン50を引込み位置に向かってプッシュロッド58と逆方向に駆動する。この作用により、第1のハウジング22及び第2のハウジング24を回転させている間、第2のハウジング24の回転軸線24aを適所に実質的に固定した状態で確実に保持することを理解すべきである。その結果、掘削が行われている間、ドリルビット20は所望の向きに保持される。
【0023】
リニアアクチュエータ46による斜板42の位置の適当な調節は、第1のハウジング22に対する第2のハウジング24の傾斜角度を調整すること、及び、第1のハウジング22に対する第2のハウジング24の回転軸線24aの方向又は向きを調整することに使用されるのがよい。かくして、リニアアクチュエータ46を用いた斜板42の位置の適正な制御によって、進行方向変更可能な掘削システムの掘削方向を制御すればよいことを理解すべきである。
【0024】
カムフォロア手段の性質による機械的利点は、たとえ上述した運動に抵抗する大きな荷重が第2のハウジング24に付与された場合であっても、第2のハウジング24を所望の方向に逸らせ又は傾斜させるのに十分に大きい磁力が利用可能であることを確保することにある。
【0025】
本明細書に記載した構成に対する広範な改造例及び変形例を、本発明の範囲から逸脱することなしに構成することができることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向変更可能なシステムであって、
回転可能な第1のハウジングと、
調節可能な継手によって前記第1のハウジングに連結された回転可能な第2のハウジングと、
使用中に回転しないよう保持されるカム部材と、
前記カム部材と協働可能であるカムフォロア手段と、を有し、
前記カムフォロア手段は、前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに対して前記調整可能な継手を中心に駆動するように移動可能である、システム。
【請求項2】
前記第1のハウジングと前記第2のハウジングは、前記第1のハウジングの回転が前記第2のハウジングに伝達されるように互いに連結される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
更に、前記第2のハウジングに対する前記第1のハウジングの回転を可能にするように作動可能なクラッチ機構を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記クラッチ機構は、噛合いクラッチを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記カム部材は、前記第2のハウジングの向きの調整を可能にするように調整可能である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記カム部材は、スリーブに取付けられ、前記スリーブは、前記第1のハウジングの少なくとも一部分を包囲し、通常の使用中、回転しないように保持される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記スリーブは、スタビライザを有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
更に、前記カム部材を前記スリーブに対して支持するように構成された球軸受を有する、請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
更に、前記スリーブの位置を調整するために、前記カム部材を前記スリーブに対して移動させるように駆動する1つ又は2つ以上のリニアアクチュエータを有する、請求項6〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記リニアアクチュエータは、電動式、電磁式又は液圧式である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記カム部材は、斜板の形態をなす、請求項6〜10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記カムフォロア手段は、フォロアピストンを有し、前記フォロアピストンは、前記カム部材によって駆動され、前記駆動ピストンの移動を生じさせるように移動可能である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記フォロアピストンは、機械的利点を提供するように、前記駆動ピストンよりも小さい直径のものである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記駆動ピストンの運動は、それに連結されたプッシュロッドによって前記第2のハウジングに伝達される、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記プッシュロッドは、それに対応する前記フォロアピストンのいくつかと整列する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
実質的に添付図面を参照して上述した進行方向変更可能なシステム。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載された種類の進行方向変更可能なシステムの第1のハウジングを駆動して回転させるように構成されたモータと、
前記進行方向変更可能なシステムの第2のハウジングに取付けられたドリルビットと、を有する、進行方向変更可能な掘削システム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−525574(P2011−525574A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538952(P2010−538952)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003950
【国際公開番号】WO2009/101477
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited