説明

遊技機のロータリソレノイドの駆動回路及びその駆動方法

【課題】 ロータを復帰限界を超えて回動させた場合にも、小さい電流で弾球槌を元の待機位置にまで戻すことができる構造が簡単な遊技機のロータリソレノイドの駆動回路を提供する。
【解決手段】ロータリソレノイドのロータを待機位置から復帰限界位置を越えて打球位置まで回動させるための往動回路と、回動されたロータを打球位置から復帰限界位置を越えて待機位置に戻すための復動回路と、を形成したロータリソレノイドの駆動回路において、前記復動回路に抵抗を配置してロータ復動時の電流を低減し、且つ、ロータ復動時の通電時間をロータ往動時の通電時間と同じとして、ロータを少なくとも復帰限界位置まで復動させる。その後電流を遮断して、ロータの磁力により待機位置まで戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技球を発射する弾球槌の駆動をロータリソレノイドにより行うための、遊技機のロータリソレノイドの駆動回路及びその駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機等においては、特許文献1に示されているように弾球槌の駆動装置としてロータリソレノイドを用いることが知られている。ロータリソレノイドとして、例えば特許文献2に開示されたような二極のものがある。このロータリソレノイドは、回転軸に軸着されたロータと、先端をロータに接近させて対向する一対のステータ部が形成されたヨークと、ヨークに巻き付けられたコイルとからなる。回転軸には弾球槌が取り付けられる。
【0003】
図6は上記ロータリソレノイドを駆動させるための駆動回路である。この回路は、定電流回路であり、発射強度制御部(図示していない)からの制御入力電圧を変化させることにより球の発射強度を制御し、発射間隔制御部(図示していない)からの指令により出力オン・オフ制御を行うことによって、一分間に発射される球数が100発未満となるように発射間隔を制御している。
【0004】
この従来の形態において、ロータは、一方のステータ部における待機位置から回動されて、弾球槌が球を発射する。図7は駆動時の電流波形、図8は弾球槌の回動を説明する図であるが、ロータの往動時にはロータリソレノイドに通電して弾球槌を打球位置まで回動させて球を発射する。発射完了後は、通電を停止するとロータの磁力が待機位置のステータ部に及ぶので、元の位置に自動復帰することができる。
【0005】
ロータリソレノイドを用いて球を遠くに飛ばすには、(1)ロータリソレノイドに流す電流を大きくする、(2)トルクの大きいロータリソレノイドを用いる、(3)弾球槌の回転ストロークを増やす、という方法が考えられる。しかし(1)においては大きな電源が必要となり(2)においてはロータリソレノイドが大型化するという欠点がある。このため(3)の方法を取ることが考えられるが、この方法においては、ロータを自動復帰の限界位置(二極の場合は待機位置から90°)を超えて回動させるため、電流を遮断すると対向するステータ部に吸引されてしまい、元の待機位置に自動で戻ることはできない。そこで、スイッチを切り替えて逆方向に通電してステータ部の極性を逆転させることによって、弾球槌を打球位置から待機位置に戻す必要がある。
【0006】
通電方向を正逆反転させるための回路として、図9に示すようなHブリッジ回路が知られている。図10は、この回路における発射電流波形図、図11は、この回路における弾球槌の動きを示す説明図である。図9の回路においては、ロータリソレノイドCN1の一端1が、電源から第1のスイッチング素子S1及び第2のスイッチング素子S3を経て接地する回路の、前記第1のスイッチング素子S1及び第2のスイッチング素子S2の間に接続されており、ロータリソレノイドCN1の他端2が、電源から第3のスイッチング素子S3及び第4のスイッチング素子S4を経て接地する回路の、前記第3のスイッチング素子S3及び第4のスイッチング素子S4の間に接続されている。
【0007】
この回路において、スイッチング素子S1、S4をオンとし、S2、S3をオフとして通電することにより電流をロータリソレノイドCN1の一端1から他端2の正方向に流すことができ、図11に示すように弾球槌は、復帰限界位置を超えて打球位置まで回動して球を発射することができる。そして、スイッチング素子S3、S2をオンとし、S1、S4をオフとして通電することによりロータリソレノイドCN1の他端2から一端1の逆方向に電流を流すことができ、これによってステータ部の極性を反転させて弾球槌を待機位置に戻すことができる。
【0008】
しかしながら、上記したような回路においては、図10に示すように往動電流と復動電流の大きさが同じであるうえに、復動においても往動時と同じ電流値で同じ時間通電しているので(図10)、電力消費が大きく無駄が多いという欠点がある。また、ロータを打球位置から復帰位置まで戻すに要する時間だけ通電しその後電流を遮断して消費電量を節約することも考えられるが、往動時と復動時で通電時間を変えるための制御機構が必要となって、回路が複雑になってコストがかさむという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−159649号公報
【特許文献2】特開平9−154267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、ロータを復帰限界位置を超えて回動させた場合にも、小さい電流で弾球槌を元の待機位置にまで戻すことができる簡単な構造の遊技機のロータリソレノイドの駆動回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る遊技機のロータリソレノイドの駆動回路は、ロータリソレノイドのロータを待機位置から復帰限界位置を越えて打球位置まで回動させるための往動回路と、回動されたロータを打球位置から復帰限界位置を越えて待機位置に戻すための復動回路と、を形成したロータリソレノイドの駆動回路において、前記復動回路に抵抗を配置してロータ復動時の電流を低減させて通電して、打球位置まで回動されたロータを少なくとも復帰限界位置まで復動させるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
上記した発明において、ロータリソレノイドの一端を、電源から第1及び第2のスイッチング素子を経て接地する回路の、前記第1及び第2のスイッチング素子との間に接続するとともに、ロータリソレノイドの他端を、電源から第3及び第4のスイッチング素子を経て接地する回路の、前記第3及び第4のスイッチング素子との間に接続して、ロータリソレノイドの往動回路と復動回路とを形成したうえに、ロータリソレノイドの前記一端とグランドとの間の復動回路に抵抗を配置して、ロータ復動時の電流を低減することができる。
【0013】
また、ロータリソレノイドの一端を、電源から第1のスイッチング素子を経て接地する回路の、前記電源と第1のスイッチング素子との間に接続したうえに、ロータリソレノイドの他端を、第2のスイッチング素子を経て電源に接続するとともに、第2のスイッチング素子とロータリソレノイドの他端との間に、第3のスイッチング素子を経て接地される接地回路を接続して、ロータリソレノイドの往動回路と復動回路とを形成したうえに、前記電源とロータリソレノイドの他端との間の復動回路に抵抗を配置して、ロータ復動時の電流を低減することができる。
【0014】
また、本発明の遊技機のロータリソレノイドの駆動方法は、上記した何れかのロータリソレノイドの駆動回路を用いて、往動回路への通電により打球位置まで回動されたロータを、復動回路に往動時間と同じ時間通電して少なくとも復帰限界位置まで復動させたのち、通電を遮断してロータの磁力により待機位置まで戻すことを特徴とするものである。
上記した本発明は、戻りバネを用いた自動復帰型のソレノイドの場合には、適用がない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の遊技機のロータリソレノイドの駆動回路は、打球位置まで回動されたロータを待機位置まで戻す復動回路に抵抗を配置したので、ロータ復動時の電流を低減したので、ロータ復動に要する消費電力を低減することができる。
【0016】
また、本発明の遊技機のロータリソレノイドの駆動方法は、電流の低減により回転軸に係るトルクを小さくして、ロータ復動時にロータ往動時と同じ時間通電して、ロータを少なくとも復帰限界位置に復動させたのち、通電を停止するので、構造を簡単にして且つ電力の消費を小さくしてロータを元の待機位置に復帰させることができるという大きな利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態の駆動回路の回路図である。
【図2】図1の駆動回路における電流波形図である。
【図3】図1の駆動回路における弾球槌の動きの説明図である。
【図4】第2の実施形態の駆動回路の回路図である。
【図5】第2の実施形態の改良型駆動回路の回路図である。
【図6】従来の駆動回路の回路図である。
【図7】図6の駆動回路における電流波形図である。
【図8】図6の駆動回路における弾球槌の動きの説明図である。
【図9】従来の駆動回路の回路図である。
【図10】図9の駆動回路における電流波形図である。
【図11】図9の駆動回路における弾球槌の動きの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態に付いて説明する。
図1は、第1の実施形態である遊技機のロータリソレノイドの駆動回路を示す図、図2は、この回路における発射電流波形図、図3は、この回路における槌の動きを説明する図である。図1の回路において、ロータリソレノイドCN1の一端1が、電源からトランジスタTR1、第1のスイッチング素子S1、第2のスイッチング素子S2、抵抗R1を経て接地する回路の、スイッチング素子S1とS2との間に接続され、ロータリソレノイドCN1の他端2が、電源から第3のスイッチング素子S3及び第4のスイッチング素子S4を経て接地する回路の、スイッチング素子S3とS4の間に接続されている点において、図10に示した従来のものと変わるところはない。
【0019】
この回路において、出力オン・オフ制御する発射間隔制御部(図示していない)の先端が発射パルス発生回路に接続されており、オペアンプの入力端子には発射ハンドルの可変抵抗器(図示していない)が接続され、オペアンプの出力端子にはトランジスタTR1、ロータリソレノイドCN1、抵抗R1、R2が接続されて、定電圧回路を構成している。発射パルス発生回路からは約600ms周期のパルスが発生されており、トランジスタTR2によってトランジスタTR1の出力を制御している。
【0020】
上記回路において、打球時にはスイッチング素子S1、S4をオンとし、S2、S3をオフとすると、トランジスタTR2のオン・オフによってトランジスタTR1が制御され、電源からの往動電流が、ロータリソレノイドCN1の一端1から他端2の正方向に流れるので、ロータリソレノイドCN1を往動させて弾球槌を待機位置から復帰限界を超えて打球位置へと回動させて球を発射することができる。
【0021】
復動時には、スイッチング素子S1、S4をオフとし、S2、S3をオンとすることによって復動電流を、ロータリソレノイドCN1の他端2から一端1の逆方向に流すことができ、これによってロータを復帰限界位置を越える位置まで復動させる。ここで、ロータリソレノイドCN1の一端1と、復動回路と往動回路の接続点P1との間の復動回路には、抵抗R2が配置されているので、復動回路を流れる電流を小さく制御することができる(図6)。これによって、回転軸にかかるロータからのトルクが小さくなるので、ロータはゆっくりと反転することになる。
【0022】
復動回路に通電する時間は、往動回路の通電時間と同じであるが、この通電時間内にロータを少なくとも復帰限界位置にまで戻す必要がある。復帰限界を超えて戻さない場合には、通電を遮断するとロータが打球位置に戻ってしまうからである。復帰限界位置を少し越えて戻しても差し支えはない。ロータが復帰限界位置まで又はこれを若干越える位置まで戻った時に、スイッチング素子S1、S2、又はS3、S4をオフとすることによって電流を遮断する。遮断後はロータの磁力によりロータが待機位置側のステータ部に吸引されるので、ロータすなわち弾球槌を待機位置に復帰させることができる。弾球槌は、球発射の間隔を確保する時間この位置で待機したのち、次の球発射のために再び往動される。
【0023】
図4は、第2の実施形態である遊技機のロータリソレノイドの駆動回路を示す図である。この形態においては、ロータリソレノイドCN1の一端1を、電源から第1のスイッチング素子S1を経て接地する回路の、前記電源と第1のスイッチング素子S1との間に接続したうえに、ロータリソレノイドの他端2を、第2のスイッチング素子S2を経て電源に接続するとともに、第2スイッチング素子S2とロータリソレノイドCN1の他端2との間に、第3のスイッチング素子S3を経て接地される接地回路を接続してある。そして、電源がスイッチング素子S2を経てロータリソレノイドCN1の他端2とつながる回路において、接地回路との接続点P2よりも電源側の復動回路には、抵抗R4が配置されている。
【0024】
上記回路において、打球時にはスイッチング素子S1、S2をオフとし、S3をオンとすると、電源からの往動電流が、ロータリソレノイドの一端1から他端2の正方向に流れるので、ロータを往動させることができる。
【0025】
復動時には、スイッチング素子S2、S1をオンとし、S3をオフとすることによって復動電流を、ロータリソレノイドCN1の他端2から一端1の逆方向に流すことができ、これによってロータを復帰限界位置を越える位置まで復動させる。復動回路には、抵抗R4が配置してあるので、復動回路を流れる電流値を小さく抑えることができる。
【0026】
第2の実施形態においては、発射電流波形、槌の動きは、図5、6に示したものと同じである。
【0027】
なお、スイッチング素子としては、電気的なスイッチ、例えばトランジスタ、FET、フォトMOSリレーなどを用いることができる。また、第1の実施形態において往動回路にはスイッチング素子S1、S4の二つが必要であったが、第2の実施形態においては、スイッチング素子がS3の一つでよいので、スイッチング素子による損失が少ないという利点がある。
【0028】
第2の実施形態のものを、図5に示すような改良型とすることができる。すなわち、オペアンプの入力端子と出力端子との間に抵抗R5を配置しヒステリシスコンパレータでチョッピング回路を設け、ロータリソレノイドに係る電圧を断続的なものとして電力効率を高めることができる。また、ダイオードDを設けてチョッピングにおける電圧オフ時に回生電流を流すようにしてある。また、この実施形態においては、トランジスタTR1の代わりに電源オン時の抵抗が少ないPチャンネルFETを用いてスイッチングロスを減らしているので、トランジスタTR3を追加して、位相を反転させている。
【符号の説明】
【0029】
CN1 ロータリソレノイド、TR1、TR2、TR3 トランジスタ、S1、S2、S3、S4 スイッチング素子、R1、R2,R3、R4、R5 抵抗、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリソレノイドのロータを待機位置から復帰限界位置を越えて打球位置まで回動させるための往動回路と、回動されたロータを打球位置から復帰限界位置を越えて待機位置に戻すための復動回路と、を形成したロータリソレノイドの駆動回路において、
前記復動回路に抵抗を配置してロータ復動時の電流を低減させて通電して、打球位置まで回動されたロータを少なくとも復帰限界位置まで復動させるようにしたことを特徴とする遊技機のロータリソレノイドの駆動回路。
【請求項2】
ロータリソレノイドの一端を、電源から第1及び第2のスイッチング素子を経て接地する回路の、前記第1及び第2のスイッチング素子との間に接続するとともに、ロータリソレノイドの他端を、電源から第3及び第4のスイッチング素子を経て接地する回路の、前記第3及び第4のスイッチング素子との間に接続して、
ロータリソレノイドの往動回路と復動回路とを形成したうえに、
ロータリソレノイドの前記一端と接地との間の復動回路に抵抗を配置して、ロータ復動時の電流を低減した請求項1に記載の遊技機のロータリソレノイドの駆動回路。
【請求項3】
ロータリソレノイドの一端を、電源から第1のスイッチング素子を経て接地する回路の、前記電源と第1のスイッチング素子との間に接続したうえに、
ロータリソレノイドの他端を、第2のスイッチング素子を経て電源に接続するとともに、第2スイッチング素子とロータリソレノイドの他端との間に、第3のスイッチング素子を経て接地される接地回路を接続して、
ロータリソレノイドの往動回路と復動回路とを形成したうえに、
前記電源とロータリソレノイドの他端との間の復動回路に抵抗を配置して、ロータ復動時の電流を低減した請求項1に記載の遊技機のロータリソレノイドの駆動回路。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のロータリソレノイドの駆動回路を用いて、往動回路への通電により打球位置まで回動されたロータを、復動回路に往動時間と同じ時間通電して少なくとも復帰限界位置まで復動させたのち、通電を遮断してロータの磁力により待機位置まで戻すことを特徴とする遊技機のロータリソレノイドの駆動方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−162142(P2010−162142A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6377(P2009−6377)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000148287)株式会社浅間製作所 (114)
【Fターム(参考)】