説明

遊技機の可動役物装置

【課題】液晶表示装置等の表示画面上の画像によらず、実際に動きのある遊技演出を行う可動役物装置を提供する。
【解決手段】遊技盤の表面に沿って非磁性円筒体配設し、該円筒体内に円筒体とともに回動する支持ロッドを設け、該支持ロッド上には電磁石が設けられている。該円筒体の下方には収納部に収納された磁性片を備える小吸着体が設けられ、該電磁石の磁力により該小吸収体を吸着せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機の役物に関し、特に電磁石が発生する磁力を利用して小吸着体を吸着せしめる可動役物装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機の一種として一般的に知られているいわゆるセブン機と称される機種は、遊技盤の中央部に液晶表示装置等による表示画面を備えており、遊技球が始動入賞口に入賞すると大当たり抽選を開始し、その抽選結果に基づいて表示画面上の図柄が変動を開始して(報知期間の開始)、表示画面上の図柄が例えば「777」等の所定の図柄で停止表示した場合に(報知期間の終了)、大当たりが確定し、遊技者にとって有利な遊技状態に移行するものである。更にこの表示画面において、変動表示中の図柄とは別の図柄(キャラクタ図柄等)を表示することで大当りの出現を予兆する演出報知や、リーチ状態において行われる「リーチアクション」と称される演出報知を行うものもある。これらの表示は、遊技者に大当りの出現を期待させるための演出を行うものである。
【0003】
特許文献1には、液晶表示装置によるリーチアクション中に当該表示画面上において図柄変動の状況を報知する手段が開示されている。
【特許文献1】特開2002−210201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在知られているパチンコ機の殆どは、液晶表示装置等の表示画面上に図柄やキャラクタを表示させて上記した如き演出表示を行うものであり、様々な演出表示の提案がなされる一方、どれもみな類似したものであり、当初の斬新さやインパクトは薄れつつある。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、液晶表示装置等の表示画面上の画像によらず、実際に動きのある遊技演出を行う斬新な可動役物装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による可動役物装置は、遊技における所定条件の成立を契機として開始する抽選の抽選結果に関して演出報知を行う演出報知期間内において動作する遊技機の可動役物装置であって、遊技盤内において該遊技盤の表面に沿って配設された少なくとも1本の非磁性円筒体と、該円筒体内に設けられて該円筒体とともに回動する支持ロッドと、該円筒体および前記支持ロッドを、回転タイミング、回転角度、回転方向を選択しつつ回転駆動せしめる回転駆動手段と、該支持ロッド上に設けられて該円筒体の半径方向に沿った磁化方向を有する少なくとも1つの電磁石と、該電磁石を、励磁タイミング、励磁期間、励磁強さ、を選択しつつ励磁する励磁手段と、該円筒体の下方に設けられ、上方に開口部を備える箱状の収納部と、該収納部に収納されて磁性片を備えた少なくとも1つの小吸着体と、を有することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施例は、いわゆるセブン機と称される遊技機であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0008】
図1は遊技機の一例としてのパチンコ機10の概略正面図である。パチンコ機10は、本体枠11と、本体枠11の前面にガラス等の透明窓を含む窓枠(図示せず)が開閉自在に設けられて、遊技者が遊技盤12を視認できるようにするとともに、遊技盤12を外部から保護している。遊技盤12の下方には、遊技盤上に発射されるべき遊技球を一時貯留する上皿13が設けられている。上皿13には、賞球払出口(図示せず)が設けられ、ここから賞球として払い出された遊技球が排出される。上皿13の下方には下皿14が設けられ、上皿13で貯留しきれなかった賞球が下皿14に排出されるようになっている。下皿14の右側には操作ハンドル15が取り付けられており、遊技者が、操作ハンドル15に手を添えて右に回すことにより発射装置(図示せず)が稼動し、上皿13に貯留された遊技球が、上皿13の右側に配列されながら発射装置に導かれ1球ずつ発射される。
【0009】
遊技盤12のほぼ中央部には、枠部材16によって遊技盤12の他の空間と隔てられている中央役物装置17が設けられている。図2は、図1におけるA−A線の断面を図の矢印方向から見た断面図であり、図2に示す如く、枠部材16によって中央役物装置17の内部に凹状の空間17aが形成されており、その奥には図柄表示装置としての液晶表示装置18が設けられている。液晶表示装置18は、液晶表示により例えばキャラクタ等の絵を表示したり、数字、記号、模様等を描いた3つのリールが回転、停止しているように見える図柄を表示する。数字や記号は、所定の条件に従って変動して停止する。図柄が例えば「777」等の所定の図柄で停止すると大当たりが確定し、遊技者にとって有利な遊技状態に移行する。
【0010】
中央役物装置17の内部の液晶表示装置18の下方には、本発明による可動役物装置30が設けられている。可動役物装置30は遊技状態に応じて演出表示をおこなうものであり、その詳細の構成および動作については後述する。
【0011】
中央役物装置17の下方には始動入賞口19が設けられており、ここに遊技球が入賞すると、入賞センサ(図示せず)によって入賞が検出され、所定数の賞球がパチンコ機10より払い出されるとともに、液晶表示装置18に表示される図柄が変動を開始して大当たり抽選が実施される。
【0012】
始動入賞口19の下方にはアタッカ20が設けられ、その左右には通常入賞口21が設けられている。通常入賞口21に入賞すると、入賞センサ(図示せず)によって検出され、所定数の賞球が払い出される。アタッカ20は、通常は開閉部材により閉鎖され入賞されないようになっており、大当たり抽選の結果、大当たりが確定した場合に開閉部材が一定期間開き、遊技球が入賞できるようになっている。この期間にアタッカ20へ入賞した球数に応じて賞球が払い出される。
【0013】
いずれの入賞口にも入賞しなかった遊技球はアウト口22に没収される。また、パチンコ機10には、電飾装置(図示せず)、スピーカ23が設けられており、遊技の進行に応じて、音や光によって様々な演出を行っている。また、遊技盤12の裏面には、大当たり抽選、液晶表示装置18に表示される図柄の制御、各種演出の制御、賞球の制御および本発明の可動役物装置30の動作制御等を行う主制御装置が設けられている。
【0014】
以下において本発明の可動役物装置30について図1〜図6を参照しつつ説明する。図1および図2に示す如く可動役物装置30は、中央役物装置17内に設けられた液晶表示装置18の下方に遊技盤12の盤面に沿って水平方向に延伸する円筒体31を含んでいる。円筒体31は、後述する電磁石42が発生させる磁力により、着磁しないようにプラスチック、アルミニウム等の非磁性体により形成されている。図3に示す如く、円筒体31には空洞部が形成されており、その内部には円柱形状の支持ロッド41が設けられている。支持ロッド41の一端には回転軸部43が設けられており、モータ50の回転駆動力が伝達されるようになっている。すなわち、支持ロッド41はこのモータ50により長手方向に沿った中心線を回転軸として回転駆動する。パチンコ機10の全体の制御を司る主制御装置80は、遊技状態や他の装置の動作タイミング等に応じて、モータ50の回転駆動指令および回転駆動方向を示す回転制御信号をモータ駆動回路60に供給し、モータ駆動回路60は当該回転制御信号に基づき回転駆動電力をモータ50に供給することでモータ50の駆動制御がなされる。円筒体31と支持ロッド41は各々に嵌合部(図示せず)を有し、円筒体31の内部に支持ロッド41が挿入された状態で互いに結合している。従って、円筒体31は支持ロッド41とともにモータ50の回転駆動により回転動作を行う。また、図1に示す如く、モータ50は、中央役物装置17内に設けられた前面板24の背面側に設けられ、遊技者からは視認できないようなっている。
【0015】
次に図3に示す如く、円筒体31の一端部には、円筒体31と連動して回転する回転板32が設けられている。回転板32は円形であり、その外周部にはその回転軸と同心状配列となるように複数個のスリット32aが形成されている。また、当該スリット32aの回転軌跡を挟んだ状態で対向する一対の発光素子と受光素子とからなるフォトカプラ33が設けられている。円筒体31が回転するとそれに連動して回転板32が回転し、フォトカプラ33が回転板32に形成されたスリット32aの数を検出する。スリット32aは所定の角度ピッチを持って設けられているため、フォトカプラ32がスリット32aの数を計数することによって、円筒体31の回転角度を検出することができる。フォトカプラ33は、スリット32aの検出数に応じた回転角度検出信号を主制御装置80に供給し、これを受信した主制御装置80は、円筒体31の回転角度にも応じて、後述する励磁回路70およびモータ駆動回路60にそれぞれ励磁制御信号および回転制御信号を送信する。上記したモータ50、モータ駆動回路60、回転板32、フォトカプラ33により、本発明の回転駆動手段が構成され、円筒体31および支持ロッド41は、遊技状態や他の装置の動作タイミング等に応じた回転駆動制御がなされるのである。
【0016】
支持ロッド41の表面には複数の電磁石42が設けられている。電磁石42は、鉄等の磁性コアの周りに巻かれた励磁コイルを有し、その励磁コイルに電流を流すことで磁力を発生させる。その磁化方向は、円筒体31及び支持ロッド41の半径方向に沿った方向となる。複数の電磁石42の各々に備えられた励磁コイルは互いに直列接続されており、励磁電流は全ての励磁コイルに同時に供給される。すなわち、これら複数の電磁石42の磁力の発生および非発生のタイミングは互いに同期している。かかる電磁石42の励磁制御は、パチンコ機10の主制御装置80が励磁制御信号を励磁回路70に供給し、これを受信した励磁回路70が当該励磁制御信号に基づき励磁コイルの通電電流の制御を行うことで達成される。
【0017】
図4は、励磁回路70の一例を示したものである。パチンコ機10の主制御装置80は、遊技状態や他の装置の動作タイミングに応じて、励磁電流のオン/オフの指令、通電期間および励磁電流の大きさを示す励磁制御信号を制御部71に供給する。制御部71は当該励磁制御信号に基づきスイッチ素子Qにこれを駆動するための駆動電圧を供給する。スイッチ素子Qは、励磁コイルLに直列接続されており、制御部71から供給される駆動電圧に基づき、電源Vsより供給される励磁コイルLに流れる励磁電流のオン/オフ制御、電流値制御を行う。スイッチ素子Qは、例えば電界効果トランジスタ(FET)により形成される。また、スイッチ素子Qに直列接続される電流検出回路72は、励磁電流の大きさに応じた検出信号を制御部71に供給し、これを受信した制御部71は、当該励磁制御信号に基づく所定の励磁電流となるようにスイッチ素子Qの駆動電圧の制御を行う。励磁コイルLの両端には、ダイオードDが接続され、スイッチ素子Qのオンからオフの切り替わりの際に励磁コイルLに発生する逆起電力の回生ルートを形成している。上記した構成の励磁回路70により、本発明の励磁手段が構成され、電磁石41は遊技状態や他の装置の動作タイミング等に応じた励磁制御がなされるのである。
【0018】
尚、回転駆動する支持ロッド41に設けられた電磁石42に励磁電流を供給する方法としては、支持ロッド41の表面に円周方向に伸びる一対のスリップリング(図示せず)と、これに摺接する一対のブラシ(図示せず)等の電流中継手段を設ける方法等が挙げられる。
【0019】
また、図2に示す如く円筒体31の下方には、上面に開口部を有する箱状の収納部90が設けられており、その内部には複数の小吸着体92が収納されている。本実施例においては図5(a)に示す如く、小吸着体92は平坦であって魚の形状を模して形成されており、その一方の面には鉄等からなる磁性片91が設けられている(図5(b))。モータ50の回転駆動により支持ロッド41に設けられた電磁石42が下向きすなわち、収納部90の開口面に対向する位置に至り、励磁コイルに励磁電流が供給され磁力が発生すると、小吸着体92に設けられた磁性片91がその磁力に引き寄せられて、円筒体31の表面に吸着することとなる。尚、小吸着体92の形状は上記した例に限らずいかなる形状であってもよい。また磁性片91は小吸着体92の内部に埋設することとしてもよいし、小吸着体92自体が鉄等の磁性体で形成されることとしてもよい。また、小吸着体91は、電磁石42が発生する磁力により吸着可能な範囲の重量とする必要がある。
【0020】
次に上記した構成における可動役物装置30の動作について、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。本実施例においては、可動役物装置30により高確率リーチを報知する演出表示を行う態様を一例として説明する。
【0021】
遊技球が始動入賞口19に入賞すると、入賞センサ(図示せず)により入球したことが検出される(ステップS01)。この際に主制御装置80は、始動入賞口19への入賞を契機として大当たり抽選を開始するとともに、液晶表示装置18に表示される図柄を変動させる。
【0022】
主制御装置80は、当該抽選の過程において大当たりに至る可能性が高いことを示すいわゆる高確率リーチの演出表示を実行するか否かを判断する(ステップS02)。
【0023】
主制御装置80が、ステップS02において高確率リーチの演出を実行しないと判断したときは(ステップS02 No)、本ルーチンを終了させる。一方、ステップS02において高確率リーチの演出を実行すると判断したときは(ステップS02 Yes)、主制御装置80はモータ駆動回路60に向けてモータ50の回転を開始すべき回転制御信号を送信する。モータ駆動回路60は当該回転制御信号に基づき、モータ50に駆動電力を供給し、モータ50が回転駆動を開始する(ステップS03)。モータ50の回転に伴い、支持ロッド41および円筒体31が回転する。
【0024】
回転支持ロッド41上に設けられた電磁石42が下向きすなわち、収納部90の開口面に対向する位置に至ると(ステップS04 Yes)、主制御装置80はモータ駆動回路60にモータ50の回転を停止すべき回転制御信号を送信し、これによりモータの回転が停止し、これに伴い支持ロッド41および円筒体31の回転も停止する(ステップS05)。上記した如く、モータ50の回転角度はフォトカプラ33が回転板32に形成されたスリットの数を計数することにより検出され、当該回転角度検出信号が主制御装置80に送信されるため、主制御装置80は回転駆動を停止すべき所定位置を認識することが可能となる。
【0025】
次に主制御装置80は励磁回路70に向けて、励磁電流の通電指令および励磁電流の大きさを示す励磁制御信号を送信する。励磁回路70は当該励磁制御信号に基づき励磁コイルに励磁電流を供給する(ステップS06)。これにより、全ての電磁石42が磁力を発生させ、収納部90内に収納されている複数の小吸着体92を円筒体31の表面に吸着せしめる。
【0026】
続いて主制御装置80は、モータ駆動回路60にモータ50の回転を開始すべき回転制御信号を送信し、これに基づきモータ50が回転駆動し、これに伴い支持ロッド41および円筒体31が回転する(ステップS07)。この回転により小吸着体92は円筒体31の外周に亘って満遍なく吸着し、この回転駆動の過程において、円筒体31の表面に吸着した小吸着体92は、遊技者と対向する位置を経由して回転するため遊技者はこれを視認することができる。
【0027】
ステップS07における回転駆動の開始からの回転角度が例えば360度に達すると(ステップS08 Yes)、換言すれば電磁石42および電磁石42の磁力により円筒体31に吸着している小吸着体91が1回転して再び収納部90の開口面に対向する位置に至ると、主制御装置80はモータの駆動を停止する(ステップS09)。続いて主制御部80は、励磁回路70に励磁電流の供給を遮断すべき励磁制御信号を発し、励磁コイルの通電を遮断する(ステップS10)。これにより電磁石42の磁力は消滅し、円筒体31に吸着していた小吸着体92は、収納部90内に落下し回収される。
【0028】
このように第1実施例によれば高確率リーチ等の遊技状態に応じて、円筒体31の内部に設けられた電磁石42の励磁制御がなされ、小吸着体92を円筒体31上に吸着せしめることで、液晶表示装置の画面上の表示によらず、実際に動きのある可動役物により遊技の演出を行うため、遊技者にとって斬新でインパクトのある演出を提供することができるのである。
【実施例2】
【0029】
次に本発明の可動役物装置の第2の実施例について図7〜図11を参照しつつ説明する。本実施例においては、図7に示す如く、支持ロッド41の円周方向および長手方向の異なる位置に多数の電磁石41が整列して設けられ、これら複数の電磁石42に備えられた励磁コイルの各々は、励磁回路70’により、個別に励磁制御がなされる。すなわち、電磁石42の各々の磁力の発生/非発生のタイミングおよび磁力の強さは、個別に制御されるのである。
【0030】
図8は、複数の励磁コイルの各々を個別に励磁制御する励磁回路70’の一例を示したものである。図8に示す如く、複数の励磁コイルL1、L2、L3には、それぞれスイッチ素子Q1、Q2、Q3が直列接続されており、各スイッチ素子Q1〜Q3には、制御部71’から個別に駆動電圧が供給される。すなわち、パチンコ機10の主制御装置80は、遊技状態や他の装置の動作タイミングに応じて、励磁電流のオン/オフ指令、通電期間、励磁電流の大きさおよび通電すべき励磁コイルを示す励磁制御信号を制御部71’に供給する。制御部71’は当該励磁制御信号に基づき、通電すべき励磁コイルに対応するスイッチ素子にのみ駆動電圧を供給する。駆動電圧の供給を受けたスイッチ素子は対応する励磁コイルの通電のオン/オフ制御および電流値制御を行う。一方、制御部70’から駆動電圧の供給を受けていないスイッチ素子は対応する励磁コイルの電流制御は行わない。
【0031】
従って、選択的にコイルを励磁し、磁力を発生させることができ、これにより磁力を発生させる電磁石により図柄や模様等の演出表示パターンを構成することができる。そして、その演出表示パターンを構成する電磁石に小吸着体92を吸着せしめることにより、当該小吸着体92によって円筒体31上にその演出表示パターンが表示されることとなる。この円筒体31の表面に吸着した小吸着体92により表示される複数の演出表示パターンはROM等の記録媒体(図示せず)に記録され、演出表示を行う際に記録されたパターンの中から表示すべきパターンが選択される。これにより、演出表示パターンのバリエーションが多彩となり、遊技状態に応じた様々な演出表示パターンを表示することができるのである。
【0032】
また図7に示す如く電磁石42の磁性コアの形状は円筒体31の長手方向に沿って伸びる矩形形状であり、また小吸着体92の磁性片91の形状もこれとほぼ同一寸法の矩形形状となっている。これにより、電磁石42が磁力を発生させると、磁性コアと小吸着体92の磁性片91がちょうど重なるように吸着されるため、小吸着体92は、電磁石42の配列に沿って整列された状態で円筒体32上に吸着されることとなる。図9に円筒体32上に吸着した小吸着体92によって表示される演出表示パターンの一例を示す。
【0033】
さらに本実施例においては、図10に示す如く円筒体31の下方に2つの小収納部90a、90bが設けられている。図10は本実施例の可動役物装置30’の上面図である。小収納部90a、90bは、円筒体31の下方であって、その長手方向をよぎる方向に連設され、また90aおよび90bは互いに接合され一体化されている。また、小収納部90a、90bは中央役物装置17内部の底面をなすステージ上に円筒体31の長手方向をよぎる方向に沿って設けられた2本のガイド101に摺動可能に係合している。また、小収納部90bの側壁部には、円筒体31の長手方向をよぎる方向に延伸するねじ棒102に螺合する支持アーム103が接合されている。ねじ棒102は例えばステッピングモータ等の回転駆動制御可能なねじ棒駆動手段104によって回転駆動される。
【0034】
すなわち、ねじ棒102が回転駆動することで、これに螺合する支持アーム103がねじ棒上を移動し、支持アーム103に連結された小収納部90a、90bもこれに伴って、ガイド101に沿ってステージ上を移動する。図10(a)、(b)はこの移動前後の状態を示しており、移動前(図10(a))のホームポジションにおいては、小収納部90aが円筒体31の直下に位置し、移動後(図10(b))においては、小収納部90bが円筒体31の直下に位置する。かかるねじ棒駆動手段104の駆動制御は、主制御装置80が遊技状態や他の装置の動作タイミング等に応じて、ねじ棒駆動手段104の駆動指令および回転駆動方向を示す制御信号を制御部105に供給し、制御部105が当該制御信号に基づき支持アーム103およびこれに連結する小収納部90a、90bの移動距離や移動方向に相当する駆動信号をねじ棒駆動手段104に供給し、ねじ棒駆動手段104が当該駆動信号に基づき回転駆動することで達成される。
【0035】
また、小収納部90bの近傍に設けられたホームポジションセンサ106は、小収納部90aおよび90bがホームポジション(図10(a))にあるときにはこれに応動して検出信号を主制御装置80に供給する。すなわち、このホームポジションセンサ106により、小収納部90aおよび90bがホームポジションにあることが検出される。ホームポジションセンサ106は例えば、フォトインタラプタや磁気センサ等により構成することができる。上記したねじ棒102、支持アーム103、ねじ棒駆動手段104、制御部105、ホームポジションセンサ106により小収納部90aおよび90bの位置決め手段が構成される。主制御装置80は、位置決め手段の位置決め動作にも応じて励磁回路70およびモータ駆動回路60にそれぞれ励磁制御信号および回転制御信号を送信する。
【0036】
かかる位置決め手段により、小収納部90a、90bの位置を移動せしめ、その内部に収納されている小吸着体92a、92bを円筒体31の表面に選択的に吸着せしめることができるのである。すなわち。小収納部90aと90bに互いに色、大きさ、形状等の異なる小吸着体を収納することにより、演出表示のバリエーションが更に多彩となるのである。従って、本実施例においては、例えばリーチアクションを行う際に大当たりに至る信頼度等に応じて、小吸着体により描かれる演出表示パターンや小吸着体の種類を変化させることにより、多彩なリーチアクションを表示することができ、遊技者の興趣を増すことができるのである。
【0037】
次に上記した如き構成における可動役物装置30’の動作について、図11に示すフローチャートを参照しつつ説明する。本実施例においては、初期状態として、小収納部90aおよび90bは図10(a)に示すホームポジションにあったものとし、可動役物役物装置30’により、小収納部90bに収納された小吸着体92bを吸着せしめ、高確率リーチを報知するときに、演出表示を行う態様を一例として説明する。また、ステップS11およびステップS12の動作は、先に説明した図6のフローチャートに示すステップS01およびステップS02の動作と同一であるため説明は省略する。
【0038】
主制御装置80は、ステップS12において高確率リーチの演出を実行すると判断すると、ROM(図示せず)に記録された演出表示パターンの中から1つを選択する(ステップS13)。このステップS13において、本実施例では上記した如く、小収納部90bに収納された小吸着体92bにより演出表示を行うことが選択されたものとする。
【0039】
主制御装置80は、小収納部90aおよび90bの位置決め手段を構成する制御部105に対して小収納部90aおよび90bを所定位置に移動すべき制御信号を供給する。これを受信した制御部105は、収納部90aおよび90bの移動量に応じた駆動信号をねじ棒駆動手段104に供給する。ねじ棒駆動手段104は、当該駆動信号に基づき回転駆動を開始し、これに伴いねじ棒102が回転駆動を始める。ねじ棒102に螺合する支持アーム103は、ねじ棒102上を移動し、支持アーム103に連結された小収納部90a、90bが支持アーム103とともにステージ上を手前方向に移動し、円筒体31の直下に小収納部90bが到達すると(図10(b))停止する(ステップS14)。
【0040】
続いて主制御装置80は、モータ駆動回路60にモータ50の回転を開始すべき回転制御信号を送信し、これに基づきモータ50が回転駆動し、支持ロッド41および円筒体31が回転する(ステップS15)。
【0041】
回転支持ロッド41上に設けられた電磁石42が下向きすなわち、収納部90bの開口面に対向する位置に至ると(ステップS16 Yes)、主制御装置80はモータ駆動回路60にモータ50の回転を停止すべき回転制御信号を送信し、これによりモータの回転が停止し、支持ロッド41および円筒体31の回転が停止する(ステップS17)。
【0042】
次に主制御装置80は、励磁回路70’に向けて、励磁電流の通電指令、励磁電流の大きさおよび通電すべき励磁コイルを示す励磁制御信号を送信する。通電すべき励磁コイルは、ステップS13で決定した演出表示パターンに応じて選択される。励磁回路70’は当該励磁制御信号に基づき通電すべき励磁コイルに励磁電流を供給する(ステップS18)。これにより、所定の電磁石のみが磁力を発生させ、収納部90b内に収納されている複数の小吸着体92bを円筒体31の表面に吸着せしめる。この際、磁力を発生した電磁石によって模様や図柄等の演出表示パターンが構成されており、これに小吸着体92bを吸着せしめることにより、演出表示パターンが円筒体32上に描かれることとなる。
【0043】
続いて主制御装置80が、モータ50の回転を開始すべき回転制御信号をモータ駆動回路60に送信することによりモータ50が回転し、支持ロッド41および円筒体31が回転する(ステップS19)。この回転により小吸着体92bは円筒体31の外周に亘って満遍なく吸着し、この回転駆動の過程において、円筒体31に吸着した小吸着体92bは、遊技者と対向する位置を経由して回転するため、遊技者はこれを視認することができる。
【0044】
ステップS19における回転駆動の開始からの回転角度が例えば360度に達すると(ステップS20 Yes)、主制御装置80はモータの駆動を停止すべき回転制御信号をモータ駆動回路60に供給し、これによりモータ50の回転が停止する(ステップS21)。続いて主制御装置80は、励磁回路70’に励磁電流の供給を遮断すべき励磁制御信号を発すると、電磁石42の磁力は消滅し、円筒体31に吸着していた小吸着体92bは、収納部90b内に落下し回収される(ステップS22)。
【0045】
主制御装置80は、位置決め手段を構成する制御部105に小収納部90aおよび90bをホームポジションに移動すべき制御信号を供給する。これに応じてねじ棒駆動手段104が回転駆動を開始し、ねじ棒102が回転し、小収納部90aおよび90bがステージ上を奥側方向に移動する。小収納部90aおよび90bがホームポジションに至るとホームポジションセンサ106がこれを検出して主制御装置80に検出信号を送信する。これを受信した主制御装置80は、制御部105に駆動を停止すべき制御信号を送信し、ねじ棒駆動手段104の駆動を停止させ、小収納部90aおよび90bはホームポジションで移動を停止する(ステップS23)。
【0046】
以上の説明から明らかなように、本発明の可動役物装置によれば液晶表示装置等の表示画面上の図柄やキャラクタの表示による演出のみならず、実際に動きのある可動役物による演出がなされるため、これまでにない斬新な演出を遊技者に提供することができる。
【0047】
また、円筒体内部に設けられた複数の電磁石を個別に励磁制御することにより電磁石を選択的に励磁し、磁力を発生させる電磁石により模様や図柄等を構成し、これに小吸着体を吸着せしめることで演出表示パターンを表示することができる。また、記録媒体に複数の演出表示パターンを記録することで多彩な演出表示を備えることが可能となる。
【0048】
更に、複数の小収納部を備え、その各々に互いに色や大きさや形状が異なる複数種の小吸着体を備え、大当たりの抽選結果に基づいて小収納部が選択され、すなわち、円筒体に吸着される小吸着体が選択される。これにより、円筒体に吸着される小吸着体による吸着態様のバリエーションが増加し、演出表示が単調となって遊技者に飽きられてしまうのを防止することができる。
【0049】
更に、円筒体内部に設けられた電磁石が励磁され磁力を発生しているときに、円筒体は回転駆動される。これにより吸着体を円筒体の外周部に満遍なく吸着せしめ、これを回転駆動することで見た目のインパクトをより向上させることができる。
【0050】
また、液晶表示画面において表示されるリーチアクション等の演出報知期間内に、当該リーチが大当たりに至る信頼度等に応じて、小吸着体により描かれる演出表示パターンや小吸着体の種類や数を変化させることにより、抽選結果が報知される前に、大当たりが確定するか否かの予兆を遊技者の視覚に強く訴えかけることができるのである。
【0051】
尚、上記した実施例では、遊技状態が高確率リーチの場合にこれらの演出を行うこととしたがこれに限定されず、大当たりが確定した後に表示することとしてもよいし、遊技状態に関係なく定期に又は不定期に表示することとしてもよい。
【0052】
また、実施例2において1回の演出表示で、別々の小収納部に収納された複数種の小吸着体を連続的に表示したり、複数種の演出表示パターンを連続的に表示することとしてもよい。この際、図11に示すフローチャートのステップS13の演出表示パターンの選択において複数の演出表示パターンが選択されることとなる。
【0053】
また、励磁コイルに通電する励磁電流の大きさを制御することにより電磁石が発生する磁力の大きさを制御して、重さ(大きさ)の異なる小吸着体を選択的に吸着せしめることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例である可動役物装置を備えたパチンコ機の概略正面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】本発明の実施例である可動役物装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例である励磁回路を示す図である。
【図5】本発明の実施例である小吸着体を示す図である。
【図6】本発明の実施例である可動役物装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施例である可動役物装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の他の実施例である励磁回路を示す図である。
【図9】本発明の実施例である可動役物装置による演出表示パターンの一例を示す図である。
【図10】本発明の実施例である小収納部の位置決め手段を示す図である。
【図11】本発明の他の実施例である可動役物装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
10 パチンコ機
12 遊技盤
17 中央役物装置
18 液晶表示装置
30 可動役物装置
31 円筒体
32 回転盤
33 フォトカプラ
41 支持ロッド
42 電磁石
43 回転軸部
50 モータ
60 モータ駆動回路
70 励磁回路
80 主制御装置
90 収納部
91 磁性片
92 小吸着体
102 ねじ棒
103 支持アーム
104 ねじ棒駆動手段
105 制御部
106 ホームポジションセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技における所定条件の成立を契機として開始する抽選の抽選結果に関して演出報知を行う演出報知期間内において動作する遊技機の可動役物装置であって、
遊技盤内において前記遊技盤の表面に沿って配設された少なくとも1本の非磁性円筒体と、
前記円筒体内に設けられて前記円筒体とともに回動する支持ロッドと、
前記円筒体および前記支持ロッドを、回転タイミング、回転角度、回転方向を選択しつつ回転駆動せしめる回転駆動手段と、
前記支持ロッド上に設けられて前記円筒体の半径方向に沿った磁化方向を有する少なくとも1つの電磁石と、
前記電磁石を、励磁タイミング、励磁期間、励磁強さ、を選択しつつ励磁する励磁手段と、
前記円筒体の下方に設けられ、上方に開口部を備える箱状の収納部と、
前記収納部に収納されて磁性片を備えた少なくとも1つの小吸着体と、
を有することを特徴とする可動役物装置。
【請求項2】
前記収納部は、各々が連設する複数の小収納部を含み、
前記小収納部は前記円筒体の長手方向をよぎる方向において移動自在であり、
更に、前記小収納部を位置決めする位置決め手段を有することを特徴とする請求項1記載の可動役物装置。
【請求項3】
前記複数の小収納部の各々は、少なくとも互い異なる形状又は色彩の小吸着体を個別に収納し、
前記位置決め手段は、前記抽選結果に基づき選択された1の小収納部を前記円筒体の下方に位置決めし、
前記励磁手段は、前記位置決め手段の位置決め動作後に動作することを特徴とする請求項2記載の可動役物装置。
【請求項4】
前記回転駆動手段は、前記励磁手段が励磁動作をするときに回転駆動せしめることを特徴とする請求項2又は3に記載の可動役物装置。
【請求項5】
前記電磁石は複数であって、前記円筒体の円周方向かつ長手方向において互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の可動役物装置。
【請求項6】
前記励磁手段は、前記電磁石のうちの少なくとも1を選択的に励磁することを特徴とする請求項5に記載の可動役物装置。
【請求項7】
前記電磁石は前記円筒体の長手方向に沿って伸びる矩形断面を有する磁性コアを有し、前記小吸引体の前記磁性片は、矩形形状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の可動役物装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−229383(P2007−229383A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58098(P2006−58098)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(390031772)株式会社オリンピア (2,719)
【Fターム(参考)】