説明

遊技機器検査設備の検査用パレット治具

【課題】遊技機器を検査する作業負荷を軽減し、作業能率を向上させ、汎用性が高く、設備コストを安価にする、遊技機器検査設備の検査用パレット治具を提供する。
【解決手段】検査用パレット治具31は、パチンコ遊技機の遊技盤に装着される液晶ユニットを検査するために液晶ユニットを着脱可能で且つ治具循環搬送路に装備される治具であり、治具循環搬送路に沿って移動可能にガイドされる治具ベース50、治具ベース50に装着され治具循環搬送路の搬送路面を転動可能な複数のフリーボールキャスター51、液晶ユニットを着脱可能で遊技盤の原板と同構造の遊技盤原板、遊技盤原板に装着された液晶ユニットを遊技盤に実装する姿勢と同じ起立姿勢と倒伏姿勢とに亙って起倒可能に遊技盤原板を治具ベースに連結する起倒機構55を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機の遊技盤に装着される液晶ユニット等の遊技機器を検査する遊技機器検査設備の検査用パレット治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ遊技機は、遊技ホールの島構造体に固定される外枠、外枠に回動自在に枢支された開閉枠(内枠)、開閉枠に取付けられた遊技盤、遊技盤の前側を開閉可能に開閉枠に回動自在に枢支された開閉扉を備え、遊技盤には、ガイドレール、障害釘、風車、各種入賞口、遊技表示器等の他、液晶ユニット(演出ユニット)が装着されている。
【0003】
近年のパチンコ遊技機において、外枠、開閉枠、開閉扉は複数機種に共通に構成できる一方、遊技盤(液晶ユニット)は複数機種に個別の構成になる。液晶ユニットは、パチンコ遊技機の非常に重要な役割を担う遊技機器であり、液晶ベース、液晶ディスプレイ、可動役物、各種制御基板を含む遊技制御装置等で構成されている。
【0004】
従来、パチンコ遊技機の新機種は、その受注を受けて或いは見込んで多数製造され、その際、多数のパチンコ遊技機に搭載する多数の液晶ユニットの検査が必要になるが、本願出願人は、液晶ユニットを遊技盤に装着する前に、多数の液晶ユニットを纏めて検査するようにしている。ここで、図21、図22に本願出願人が実施の液晶ユニットを検査する従来設備を示している。
【0005】
この液晶ユニット検査設備200では、ベルトコンベア201が配設され、そのベルトコンベア201に沿って間隔を空けて複数の検査ステージ202が配設され、各検査ステージ202には検査テーブル203上に検査用治具204が設置されている。検査用治具204は、ベース部材205と、ベース部材205に水平軸心回りに回動自在に連結されたユニット装着部材206とを備えている。
【0006】
複数の液晶ユニット210が、順次、ベルトコンベア201の搬送方向上流側に投入され、そこで、液晶ユニット210はベルトコンベア201上に倒伏姿勢で直に載置される。各検査ステージ202の作業者が、ベルトコンベア201から液晶ユニット210を担いで検査用治具204に移載し、そこで、図22に実線で示すように、液晶ユニット210を作業者側(図22の右側)に向けた鉛直姿勢でユニット装着部材206に装着する。
【0007】
次に、図22に仮想線で示すように、液晶ユニット210をユニット装着部材206と共に90度反転させ倒伏姿勢に切換えてから、液晶ユニット210に検査接続端子(図示略)を接続し、その後再度、図22に実線で示すように、液晶ユニット210をユニット装着部材206と共に90度反転させ鉛直姿勢に切換えてから各種検査を行い、その後、液晶ユニット210から検査接続端子を分離し、液晶ユニット210を担いでユニット装着部材206から取外してベルトコンベア201に移載する。
【0008】
一方、特許文献1には、パチンコ遊技機の遊技盤を搬送する遊技盤搬送装置が開示されている。この遊技盤搬送装置では、遊技盤を搬送する上下2段のコンベアが2組並設されている。各組の上下2段のコンベアは搬入コンベアと搬出コンベアである。2組のコンベアに沿ってその両サイドに複数の釘打ち装置が間隔を空けて配設され、各釘打ち装置に搬入コンベアから遊技盤が搬入され、釘打ち後、釘打ち装置から搬出コンベアに遊技盤が搬出され、その搬入・搬出のために複数の水平シリンダが設けられている。
【0009】
特許文献2には、パチンコ遊技機の製造ラインが開示されている。この製造ラインには、パチンコ遊技機の内枠や遊技盤等の遊技機部材をコンベアで搬送し、その搬送途中で、遊技機部材を起倒させる起倒装置や遊技機部材を立向姿勢で鉛直軸心回りに反転させる反転装置が装備され、各種部品の組付けに適した姿勢に切換えることができる。起倒装置は、搬送台に倒伏姿勢で載置された遊技機部材を、その両端側からシリンダにより挟持して起倒ベースに固定し、更に別のシリンダにより起倒ベースと共に起立させる。
【0010】
特許文献3には、パチンコ遊技機の組立や解体を行うために、パチンコ遊技機を装着して姿勢を切換え可能な治具が開示されている。この治具は、外枠フレーム、外枠フレームに水平軸心回りに枢支された内枠フレーム、内枠フレームにパチンコ遊技機の内枠を固定するロック機構を備えている。この治具の外枠フレームが倒伏姿勢で1対のレールに載置され搬送される。内枠フレームには反転操作用のレバーが取付けられ、そのレバーが外枠フレームに形成された1対の切欠部に択一的に係合して、内枠フレームの位置が保持される。別実施例には、前記治具をキャスター付きの台車に設けたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−128457号公報
【特許文献2】特開平11−244461号公報
【特許文献3】特開2002−186716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図21、図22に示す液晶ユニット検査設備では、各検査ステージの作業者が、液晶ユニットを担いでベルトコンベアから検査ステージに移載して検査用治具に装着しなければならないし、検査後も、液晶ユニットを担いで検査用治具から取外して検査ステージからベルトコンベアに移載しなければならない。液晶ユニットは比較的重いものであり、液晶ユニットを上記作業の際に慎重に取扱うことも要求される。故に、液晶ユニットを検査する作業負荷が大きくなり、作業能率を高めることが困難になる。
【0013】
また、液晶ユニットをベルトコンベアに直に載置するため、液晶ユニットが損傷する虞が高くなる。そこで、液晶ユニットを搬送台に載せてベルトコンベアで搬送することも可能である。しかし、液晶ユニットの形状・サイズは機種によって異なるため、製造するパチンコ遊技機の機種が変わる度に、その機種の液晶ユニットに応じた搬送台を複数製作する必要がある。複数の検査ステージに設置されている検査用治具についても同様であり、機種毎に液晶ユニットに応じた検査用治具を複数製作する必要があり、その製作費が高価になる。つまり、設備コストが高価になる。
【0014】
尚、特許文献1の技術では、パチンコ遊技機の遊技盤に釘打ちを行うために遊技盤を搬送するが、特に治具を用いて行うものではない。特許文献2の技術では、パチンコ遊技機の内枠や遊技盤等の遊技機部材を搬送し、その搬送途中で、遊技機部材を起倒させる起倒装置や遊技機部材を立向姿勢で鉛直軸心回りに反転させる反転装置が装備されているが、その起倒装置や反転装置は非常に大掛かりな装置である。
【0015】
特許文献3の技術では、パチンコ遊技機の組立や解体を行うために、パチンコ遊技機を治具に装着して姿勢を切換えることができ、その治具をパチンコ遊技機と共に1対のレールで搬送することができる。この治具に液晶ユニット(遊技機器)を装着し、図21、図22に示す液晶ユニット検査設備に適用した場合でも、この液晶ユニットと共に治具を担いで、ベルトコンベアから検査ステージへ移載し、検査ステージからベルトコンベアに移載する作業は必要であるため、作業負荷を軽減できずむしろ増大させることになる。
【0016】
特許文献3の別実施例には、前記治具をキャスター付きの台車に設けたものが開示されているが、その台車は、治具の内枠フレームを水平軸心回りに回動可能にするために大型になる。また、この治具は、1対のレールを排除する代わりとして、台車に設けられものであり、他の搬送設備と協働してパチンコ遊技機を搬送するものではない。
【0017】
本発明の目的は、遊技機器を検査する作業負荷を軽減し、作業能率を向上させ、汎用性が高く、設備コストを安価にする、遊技機器検査設備の検査用パレット治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、パチンコ遊技機(1) の遊技盤(4) に装着される遊技機器(20)を検査するために遊技機器(20)を着脱可能で且つ治具循環搬送路(40)に装備される遊技機器検査設備(S) の検査用パレット治具(31/31A)において、前記治具循環搬送路(40)に沿って移動可能にガイドされる治具ベース(50)と、前記治具ベース(50)に装着され前記治具循環搬送路(40)の搬送路面(42)を転動可能な複数のキャスター(51)と、前記遊技機器(20)を着脱可能で前記遊技盤(4) の原板と同構造の遊技盤原板(52)と、前記遊技盤原板(52)に装着された遊技機器(20)を前記遊技盤(4) に実装する姿勢と同じ起立姿勢と倒伏姿勢とに亙って起倒可能に遊技盤原板(52)を治具ベース(50)に連結する起倒機構(55/55A)と、前記遊技盤原板(52)に装着された遊技機器(20)を固定解除可能に固定するロック手段(54)とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記遊技盤原板(52)を着脱可能な保持枠(53)を備え、前記起倒機構(55/55A)は、この保持枠(53)を起倒可能に治具ベース(50)に連結することを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記起倒機構(55A) は、前記保持枠(53)の幅方向両端側に配置されて治具ベース(50)に立設された1対の支持脚(100) と、1対の中間支持部材(101) と、この1対の中間支持部材(101) に前記保持枠(53)の幅方向両端部の長さ方向中間部分を水平軸心回りに回動自在に支持する1対の軸部材(102) と、前記1対の支持脚(100) と1対の中間支持部材(101) とを夫々連結する1対の平行リンク機構(103) とを有し、1対の中間支持部材(101) を1対の平行リンク機構(103) を介して上下動させながら保持枠(53)を1対の軸部材(102) を中心として回動させて起倒させることを特徴とする。
【0021】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記起倒機構(55A) は、前記保持枠(53)の幅方向両端部の起立姿勢における下側部分から突出する1対のピン部材(104) と、治具ベース(50)に固定的に設けられ1対の中間支持部材(101) を上下動させる際に保持枠(53)の姿勢を切換えつつ前記1対のピン部材(104) を夫々スライド自在にガイド支持して保持枠(53)を起倒させる1対のバー部材(105) とを有することを特徴とする。
【0022】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記1対のバー部材(105) は、保持枠(53)が起立する際に1対のピン部材(104) が移動する方向に向かって斜め下側に傾斜していることを特徴とする。
【0023】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか1項の発明において、前記複数のキャスター(51)が複数のフリーボールキャスター(51)からなることを特徴とする。
【0024】
請求項7の発明は、請求項1〜6の何れか1項の発明において、前記遊技機器(20)が液晶ディスプレイ(22)を含む液晶ユニット(20)からなることを特徴とする。
【0025】
請求項8の発明は、請求項2の発明において、前記ロック手段(43)は、前記保持枠(53)に取付けられたロック機構(43)を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の遊技機器検査設備の検査用パレット治具によれば、遊技機器を検査用パレット治具に装着した状態で起倒させて容易に確実に検査することができるので、遊技機器を検査する作業負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例に係る遊技機器検査設備の平面図である。
【図2】遊技機器検査設備の側面図である。
【図3】遊技機器検査設備の稼働時の平面図である。
【図4】遊技機器検査設備の制御系のブロック図である。
【図5】実施例1の検査用パレット治具の平面図である。
【図6】図5の検査用パレット治具の正面図である。
【図7】図5の検査用パレット治具の側面図である。
【図8】キャスター転動面の要部を示す断面図である。
【図9】検査用パレット治具と第1押動機構等の図である。
【図10】検査用パレット治具と第2押動機構等の図である。
【図11】検査用パレット治具と第2押動機構等の図である。
【図12】検査用パレット治具と第3押動機構等の図である。
【図13】検査設備制御装置が実行するシリンダ制御のフローチャートである。
【図14】実施例2の検査用パレット治具の平面図である。
【図15】図14の検査用パレット治具の正面図である。
【図16】図14の検査用パレット治具の遊技盤原板が倒伏姿勢の側面図である。
【図17】図14の検査用パレット治具の遊技盤原板が倒伏姿勢と起立姿勢の間の姿勢の側面図である。
【図18】図14の検査用パレット治具の遊技盤原板が起立姿勢の側面図である。
【図19】パチンコ遊技機の正面図である。
【図20】パチンコ遊技機の背面図である。
【図21】従来技術に係る遊技機器検査設備の平面図である。
【図22】従来技術に係る検査ステージの検査用治具等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の遊技機器検査設備は、パチンコ遊技機の遊技盤に装着される同一機種の遊技機器である液晶ユニットを多数纏めて検査する設備であり、その一部を変更して異なる機種の液晶ユニットを検査できる設備になる。以下、遊技機器検査設備について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0029】
先ず、パチンコ遊技機1について簡単に説明する。
図19、図20に示すように、パチンコ遊技機1は、遊技ホールの島構造体に固定される外枠2、外枠2に回動自在に枢支された開閉枠3(内枠3)、開閉枠3に取付けられた遊技盤4、遊技盤4の前側を開閉可能に開閉枠3に回動自在に枢支された透明板5aを有する開閉扉5を備えている。開閉扉5には貯留皿6と発射ハンドル7が装着されている。
【0030】
遊技盤4には、ガイドレール10、多数の障害釘11、風車12、第1始動口13aと開閉式の第2始動口13bとを有する始動口装置13、ゲート14、開閉式の大入賞口15aを有する大入賞口装置15、複数の一般入賞口16、センタ役物装置17、遊技表示器18が図示の配置で装着されている。
【0031】
センタ役物装置17は装飾枠19と液晶ユニット20(演出ユニット20)とを備え、装飾枠19は、遊技盤4に形成されたセンタ開口4aに前側から嵌合状に装着されている。液晶ユニット20は、液晶ベース21、液晶ディスプレイからなる画像表示器22、可動役物23(可動ギミック23)、各種制御基板を含む遊技制御装置24等を備え、これらを組立ててユニット化され、画像表示器22の画面が装飾枠19の内側(センタ開口4a)に臨むように遊技盤4に後側から装着されている。
【0032】
本発明の遊技機器検査設備Sは、パチンコ遊技機1の遊技盤4に装着される同一機種の遊技機器である液晶ユニット20を多数纏めて検査する設備である。ここで、遊技盤4(液晶ユニット20)は複数機種に個別の構成であるが、本発明の遊技機器検査設備Sは、その一部を変更して異なる機種の液晶ユニットを検査できる設備になる。
【0033】
遊技機器検査設備Sについて説明する。尚、図1、図2、図5〜図7に矢印で示す前方・左方・上方を前方・左方・上方として説明する。
【0034】
図1〜図12に示すように、遊技機器検査設備Sは、治具循環搬送路40を形成するベース台30、複数(9個)の検査用パレット治具31、投入ステージ32、検査ステージ33、回収ステージ34、第1,第2,第3治具押動機構35,36,37、検査設備制御装置38を備え、複数の検査用パレット治具31が治具循環搬送路40に装備されて治具循環搬送路40に沿って循環搬送され、投入ステージ32、検査ステージ33、回収ステージ34が治具循環搬送路40に沿って装備されている。
【0035】
ベース台30は複数のフレーム部材を連結して平面視にて左右長が前後長よりも長い矩形に形成され、このベース台30の上部に治具循環搬送路40が形成されている。治具循環搬送路40は、複数の検査用パレット治具31のフリーボールキャスター51が転動可能(つまり、複数の検査用パレット治具31が走行可能)で且つ複数の検査用パレット治具31をガイドして循環搬送可能に形成されている。
【0036】
治具循環搬送路40は、各検査用パレット治具31が滞在可能な平面視矩形の搬送区画41(41a〜41j)を複数(10個)並べて矩形環状の搬送路に構成されている。詳細は、5個の搬送区画41を左右方向に直列状に配置して繋げ、この5個の搬送区画41を2組前後に並設して合計10個とし、この2組の左右両端の搬送区画41a,41j/41e,41f同士を前後方向に繋げた構成になっている。
【0037】
治具循環搬送路40は、検査用パレット治具31のフリーボールキャスター51が転動する搬送路面42を有し、この搬送路面42が複数のフレーム部材の上面に形成されるとともに、検査用パレット治具31の治具ベース50をガイド可能に搬送路面42の周囲から立上がる矩形枠状の周壁43と中央隔壁44とを有する。
【0038】
図2、図3、図5〜図7に示すように、複数の検査用パレット治具31は、夫々、治具ベース50、複数(4個)のフリーボールキャスター51、遊技盤原板52、保持枠53、1対のロック機構54、起倒機構55を備え、液晶ユニット20を遊技盤原板52に着脱可能で且つ液晶ユニット20を遊技盤原板52に装着した状態で遊技盤4に実装する姿勢と同じ起立姿勢(図5〜図7に実線で示す姿勢)と倒伏姿勢(図6、図7に仮想線で示す姿勢)とに亙って切換え可能に構成されている。尚、検査用パレット治具31の構造の説明では、図5〜図7に実線で示す状態での前方・上方を前方・上方として説明する。
【0039】
治具ベース50は、複数のフレーム部材50a,50b,50cを枠状に組んで平面視矩形に且つ治具循環搬送路40の各搬送区画41と略同サイズに形成され、この治具ベース50が治具循環搬送路40に沿って移動可能に周壁43と中央隔壁44によりガイドされる。4個のフリーボールキャスター51は、この平面視矩形の治具ベース50の4つの頂部に位置するように、治具ベース50の下面部に装着されている。
【0040】
ここで、図1、図8に示すように、治具循環搬送路40は、その搬送路面42に設けられ各検査用パレット治具31のフリーボールキャスター51が転動する複数の合成樹脂製のキャスター転動面45,46を有する。左右方向に直列配置された搬送区画41a〜41e、同様に配置された搬送区画41f〜41jに夫々亙って2本の左右方向に延びるキャスター転動面45が設けられ、前後方向に直列配置された搬送区画41a,41j、同様に配置された搬送区画41e,41fに夫々亙って2本の前後方向に延びるキャスター転動面46が設けられている。
【0041】
キャスター転動面45,46は、搬送区画41a,41e,41f,41jにおいて交差し、各検査用パレット治具31の複数のフリーボールキャスター51の全てが、常にキャスター転動面45,46に載置される。
【0042】
複数のキャスター転動面45,46は複数の合成樹脂製の細長いレール部材の上面に形成され、この複数のレール部材が搬送路面42を形成する複数のフレーム部材に形成された溝に装着されている。治具循環搬送路40の各角部搬送区画41a,41e,41f,41jに検査用パレット治具31を位置決め可能に、各角部搬送区画41a,41e,41f,41jにはフリーボールキャスター51が嵌合する窪み部47(図8参照)がキャスター転動面45,46に形成されている。
【0043】
各角部搬送区画41a,41e,41f,41jにおいて、キャスター転動面45,46の4つの交差部分(つまり、各角部搬送区画41a,41e,41f,41jに滞在する検査用パレット治具31の4個のフリーボールキャスター51が載っている部分)の全てに窪み部47を形成してもよいが、4つの交差部分の少なくとも1つの交差部分に窪み部47を形成すればよい。
【0044】
図2、図3、図5〜図7に示すように、遊技盤原板52は、遊技盤4の原板(つまり、前記遊技盤4にガイドレール10、多数の障害釘11、風車12・・・等を装着する前のもの)と同構造のものであり、パチンコ遊技機1の製造にあたって量産された多数の遊技盤4の原板の1つを各検査用パレット治具31の遊技盤原板52として使用できる。
【0045】
つまり、遊技盤原板52には、遊技盤4のセンタ開口4aと同じセンタ開口52aが形成されている。尚、図3、図5では、センタ開口52aを便宜上楕円形としているが、実際は液晶ユニット20( センタ役物装置17) に応じた多少複雑な形状である。遊技盤原板52は裏面を上方へ向けて保持枠53に着脱可能に装着されている。保持枠53は4本の断面コ字状のフレーム部材53a,53bを枠状に組んで形成され、各フレーム部材53a,53bに遊技盤原板52の一端縁が係合されている。
【0046】
1対のロック機構54は、遊技盤原板52に装着された液晶ユニット20を固定解除可能に固定するロック手段である。例えば、各ロック機構54には周知のトグルクランプ機構が採用され、一方のロック機構54で倒伏姿勢における液晶ユニット20の左部且つ前部を遊技盤原板52の上面(裏面)にクランプ可能に、他方のロック機構54で液晶ユニット20の右部且つ後部を遊技盤原板52の上面にクランプ可能に、1対のロック機構54は保持枠53に取付けられている。尚、1対のロック機構54の少なくとも一方を遊技盤原板52に取付けてもよい。
【0047】
起倒機構55は、遊技盤原板52に装着された液晶ユニット20を遊技盤4に実装する姿勢と同じ起立姿勢と倒伏姿勢とに亙って、遊技盤原板52及び保持枠53と共に起倒可能に保持枠53を治具ベース50に連結する機構であり、左右1対の脚部60、左右1対の軸部材61、左右1対の起立姿勢保持部材62、左右1対の倒伏姿勢保持部材63を有する。
【0048】
1対の脚部60は、保持枠53の左右両端側に配置されて、治具ベース50の1対のフレーム部材50aにその前後方向中央部分から立設され、この1対の脚部60の上端部分に、保持枠53の1対のフレーム部材53aの前後方向中央部分(長さ方向中間部分)が1対の左右方向向きの軸部材61により水平軸心回りに回動自在に支持されている。
【0049】
1対の起立姿勢保持部材62は、治具ベース50のフレーム部材50cに設けられ、起立姿勢の保持枠53の下端部に係合して、保持枠53を起立姿勢に保持する。1対の倒伏姿勢保持部材63は、治具ベース50の前側のフレーム部材50bから立設され、倒伏姿勢の保持枠53の前端部分を下側から支持して、保持枠53を倒伏姿勢に保持する。倒伏姿勢保持部材63の上端部には干渉ゴム63aが取付けられている。保持枠53の前側のフレーム部材53bには、保持枠53の起倒操作用の把手64が取付けられている。
【0050】
図1〜図3に示すように、投入ステージ32は、検査用パレット治具31に液晶ユニット20を装着する作業を行い、その際、液晶ユニット20の最終的な組立も行うステージである。即ち、倒伏姿勢の遊技盤原板52の上面に可動役物23を組付けた液晶ベース21を装着して1対のクランプ機構54で固定し、次に、液晶ベース21に遊技制御装置24を組付けた画像表示器22をビスで取付ける。そのために、投入ステージ32には、ベース台30上の投入設備フレーム30aに電動ドライバー65が配備されている。
【0051】
検査ステージ33は、検査用パレット治具31に装着された液晶ユニット20の姿勢を切換えて液晶ユニット20を検査する作業を行うステージである。検査ステージ33には、ベース台30上の検査設備フレームSbに検査機70が設置され、ベース台30に検査操作器71が設置され、検査機70から延びるコード72に検査接続端子73が接続されている。検査ステージ33の検査では、液晶ユニット20の遊技制御装置24の接続端子(図示略)に検査接続端子73を接続してから検査操作器71を操作して、液晶ユニット20の所定の機能(動作)が正常か否か確認し、その後、検査接続端子73を分離する。
【0052】
回収ステージ34は、検査用パレット治具31から検査済みの液晶ユニット20を取外して回収する作業を行うステージである。ここで、液晶ユニット20は、分解することなく回収され、その後、梱包されてパチンコ遊技機1の最終組立てが行われる場所へ搬送される。
【0053】
図1、図9に示すように、第1治具押動機構35は、治具循環搬送路40の複数の搬送区画41のうち投入ステージ32と隣接する所定の搬送区画41aに滞在する検査用パレット治具31の治具ベース50から下方へ突出する被押動部56に係合して、その検査用パレット治具31を右方へ、つまり搬送方向下流側の搬送区画41bへ押動する第1エアシリンダ75を有する。
【0054】
第1エアシリンダ75は搬送区画41aの下側においてベース台30に右向きに取付けられ、第1治具押動機構35は、第1エアシリンダ75の出力部76に被押動部56に係合可能に支持された係合部材77を有する。第1エアシリンダ75が退入状態のとき、搬送区画41jから搬送区画41aへ前方へ搬送されてきた検査用パレット治具31の被押動部56は、係合部材77と接触することなくその直ぐ右側に到達する。
【0055】
そして、搬送区画41aの搬送方向下流側の4つの搬送区画41b〜41eのうちの1つに検査用パレット治具31が滞在していない状態で、第1エアシリンダ75が伸長駆動されると、搬送区画41aの検査用パレット治具31が搬送区画41bに搬送され、このとき、搬送区画41aの検査用パレット治具31を含めて、その搬送方向下流側の搬送区画41b〜に連続的に検査用パレット治具31が存在している場合には、それら複数の検査用パレット治具31が纏めて搬送方向下流側へ押動される。
【0056】
図1、図10、図11に示すように、第2治具押動機構36は、治具循環搬送路40の直列状に並ぶ複数の搬送区画41f〜41jのうちその両端の搬送区画41f,41j以外の所定の中間部搬送区画41gに滞在する検査用パレット治具31の治具ベース50から下方へ突出する被押動部56に係合して、その検査用パレット治具31を左方へ、つまり搬送方向下流側の搬送区画41hへ押動する第2エアシリンダ80を有する。
【0057】
第2エアシリンダ80は搬送区画41f,41gの下側においてベース台30に左向きに取付けられ、第2治具押動機構36は、第2エアシリンダ80の出力部81に被押動部56に係合可能な係合位置(図10に仮想線で示す位置)と係合位置から被押動部56により傾倒されて被押動部56が通過可能な通過位置(図10に実線で示す位置)とに亙って回動可能に支持された係合部材82と、この係合部材82を係合位置に付勢する付勢部材83(例えば、捩じりバネ83)とを有する。
【0058】
つまり、図10に示すように、第2エアシリンダ80が退入状態のとき、搬送区画41fから搬送区画41gへ左方へ搬送される検査用パレット治具31の被押動部56が、係合位置の係合部材82と接触して係合部材82を通過位置へ前傾させながら通過し、完全に通過すると、係合部材82が通過位置から係合位置へ復帰し、搬送区画41gの検査用パレット治具31の被押動部56は、係合部材82の直ぐ左側に到達した状態になる。
【0059】
そして、搬送区画41gの搬送方向下流側の3つの搬送区画41h〜41jのうちの搬送区画41jに検査用パレット治具31が滞在していない状態で、第2エアシリンダ80が伸長駆動されると、搬送区画41gを含む搬送区画41g〜41iに滞在している複数の検査用パレット治具31が纏めて搬送方向下流側へ押動される。このように、第2治具押動機構36は、治具循環搬送路40の複数の搬送区画41のうち所定の角部搬送区画41jに検査用パレット治具31を押動する第2の治具押動機構に相当する。
【0060】
図1、図12に示すように、第3治具押動機構37は、治具循環搬送路40の複数の搬送区画41のうち所定の搬送区画41jに滞在する検査用パレット治具31の治具ベース50から下方へ突出する被押動部56に係合して、その検査用パレット治具31を前方へ、つまり搬送方向下流側の搬送区画41aへ押動する第3エアシリンダ85を有し、つまり、治具循環搬送路40の複数の搬送区画41のうち所定の角部搬送区画41jから検査用パレット治具31を押動する第1の治具押動機構に相当する。
【0061】
第3エアシリンダ85は搬送区画41jの下側においてベース台30に前向きに取付けられ、第3治具押動機構37は、第3エアシリンダ85の出力部86に被押動部56に係合可能に支持された係合部材87を有する。第3エアシリンダ85が退入状態のとき、搬送区画41iから搬送区画41jへ左方へ搬送されてきた検査用パレット治具31の被押動部56は、係合部材87と接触することなくその直ぐ前側に到達する。
【0062】
そして、搬送区画41jの搬送方向下流側の搬送区画41aに検査用パレット治具31が滞在していない状態で、第3エアシリンダ85が伸長駆動されると、搬送区画41jの検査用パレット治具31が搬送区画41aに搬送される。
【0063】
次に、遊技機器検査設備Sの制御系について説明する。
図4に示すように、検査設備制御装置38には、操作盤90、第1,第2,第3治具検出センサ91,92,93、第1,第2シリンダ作動SW94,95(尚、「SW」はスイッチを意味する)、検査数カウントSW96、第1,第2,第3エアシリンダ75,80,85を駆動する為のシリンダ駆動部75a,80a,85a、検査管理表示器97、検査ステージ33の検査機70が接続されている。
【0064】
検査設備制御装置38は、第1,第2,第3治具検出センサ91,92,93、第1,第2シリンダ作動SW94,95等からの信号に基づいて第1,第2,第3エアシリンダ75,80,85を制御し、また、操作盤90、検査数カウントSW96等からの信号に基づいて検査管理表示器97を制御する。検査設備制御装置38は検査機70との間で各種情報を通信できるが、検査機70と検査設備制御装置38とは接続しなくてもよい。操作盤90では、検査管理表示器97に表示する計画(検査予定数)を入力できる。
【0065】
第1治具検出センサ91は、搬送区画41b又は41cに検査用パレット治具31が滞在しているか否か検出する治具検出手段であり、第2治具検出センサ92は、搬送区画41aに検査用パレット治具31が滞在しているか否か検出する治具検出手段であり、第3治具検出センサ93は、搬送区画41jに検査用パレット治具31が滞在しているか否か検出する治具検出手段である。
【0066】
第1,第2,第3治具検出センサ91,92,93は、夫々、搬送区画41b又は41c,41a,41j側に向けてベース台30に設置された発光部と受光部を有する反射光感知型の光学センサからなる。第1シリンダ作動SW94は、第1エアシリンダ75の作動を指令するSWであり、第2シリンダ作動SW95は、第2,第3エアシリンダ80,85の作動を指令するSWである。第1,第2シリンダ作動SW94,95は、投入ステージ32で操作可能にベース台30に設置されている。
【0067】
検査設備制御装置38は、第1治具検出センサ91で検査用パレット治具31が検出されたことを条件として第1治具押動機構35を作動禁止し、第2治具検出センサ92で検査用パレット治具31が検出されたことを条件として第3治具押動機構37を作動禁止し、第3治具検出センサ93で検査用パレット治具31が検出されたことを条件として第2治具押動機構36を作動禁止する。尚、検査設備制御装置38が実行する前記作動禁止制御を含むシリンダ制御は図13に示す通りである。
【0068】
図13に示すように、このシリンダ制御では、先ず、第1シリンダ作動SW94がオンか否か判定され(S1)、S1の判定がYes の場合、第1治具検出センサ91がオンか否か判定される(S2)。S2の判定がNoの場合、第1エアシリンダ75が進退駆動され(S3)、S4へ移行する。S1の判定がNo又はS2の判定がYes の場合、第1エアシリンダ75が作動禁止され、S4へ移行する。
【0069】
次に、第2シリンダ作動SW95がオンか否か判定され(S4)、S4の判定がYes の場合、第2治具検出センサ92がオンか否か判定される(S5)。S5の判定がNoの場合、第3エアシリンダ85が進退駆動される(S6)。S4の判定がNo又はS5の判定がYes の場合、第3エアシリンダ85が作動禁止され、リターンする。
【0070】
S6の後、第3治具検出センサ93がオンか否か判定され(S7)、S7の判定がYes の場合、S5の実行により第3治具検出センサ93が間もなくオフになるが、それまで第2エアシリンダ80が作動禁止された状態で待機し、その後、S7の判定がNoになると、第2エアシリンダ80が進退駆動され(S8)、リターンする。このように、第2エアシリンダ80は、第3エアシリンダ85の作動と連動して作動することになる。
【0071】
検査数カウントSW96は、回収ステージ34で操作可能にベース台30に設置され、検査管理表示器97は、例えば、前記投入設備フレーム30aに取付けられている。検査設備制御装置38は、例えば、計画(検査予定数)、実績(検査完了数)、進度を管理(記憶・更新)し検査管理表示器94に表示させる。計画については、前記のように操作盤90で入力することができ、実績については、検査数カウントSW97がオンされる毎に加算され、進度については、計画と実績等に基づいて算出される。尚、検査設備制御装置38、操作盤90は、検査設備フレームSaに配備されている。
【0072】
以上説明した遊技機器検査設備Sによれば次の作用・効果を奏する。
図3に示すように、この遊技機器検査設備Sでは、基本的に、投入ステージ32に1人の作業者Wが配置され、検査ステージ33に2人の作業者(内右側の1人の作業者はアシスタント)が配置され、回収ステージ34に1人の作業者Wが配置される。
【0073】
治具循環搬送路40に装備された複数の検査用パレット治具31は、治具循環搬送路40に沿って循環搬送され、そのために、投入ステージ32の作業者Wが、第1シリンダ作動SW94の操作により、第1治具押動機構35で搬送区画41aの検査用パレット治具31を搬送区画41bへ搬送させることができ、第2シリンダ作動SW95の操作により、第3治具押動機構37で搬送区画41jの検査用パレット治具31を搬送区画41aへ搬送させるとともに、第2治具押動機構36で搬送区画41i〜41gの検査用パレット治具31を搬送区画41h〜41jへ纏めて搬送させることができる。
【0074】
検査ステージ33の作業者Wは、手動により、搬送区画41dの検査用パレット治具31を搬送区画41eへ搬送し、搬送区画41cの検査用パレット治具31を搬送区画41dへ搬送し、また、第1治具押動機構35を使わずに、搬送区画41bの検査用パレット治具31を搬送区画41cへ搬送することができる。回収ステージ34の作業者Wは、手動により、搬送区画41fの検査用パレット治具31を搬送区画41gへ搬送し、搬送区画41eの検査用パレット治具31を搬送区画41fへ搬送する。こうした複数の検査用パレット治具31の循環搬送と共に、各ステージにおいて次の作業が行われる。
【0075】
投入ステージ32では、作業者Wが、搬送区画41aの検査用パレット治具31の倒伏姿勢の遊技盤原板52の上面に、先ず、液晶ベース21を装着し、その液晶ベース21に画像表示器22を取付けて、液晶ユニット20の最終組立てと共に検査用パレット治具31への装着作業を行う。その後、第1,第2シリンダ作動SW94,95を操作して、検査用パレット治具31の前記自動搬送を実行させる。以上の作業が繰返し行われる。
【0076】
検査ステージ33では、作業者Wが、搬送区画41cの検査用パレット治具31に装着された倒伏姿勢の液晶ユニット20の遊技制御装置24の接続端子(図示略)に検査接続端子73を接続した後、液晶ユニット20を遊技盤原板52(保持枠53)と共に起立させ前方に向かしてから、検査操作器71を操作して、液晶ユニット20の所定の機能(動作)が正常か否か確認し、その後、液晶ユニット20を遊技盤原板52と共に倒伏させてから、検査接続端子53を分離する。その後、検査用パレット治具31の前記の手動搬送を行う。以上の作業が繰返し行われる。
【0077】
回収ステージ34では、作業者Wが、搬送区画41e又は41fの検査用パレット治具31から検査済みの液晶ユニット20を取外して回収する。また、検査用パレット治具31の前記の手動搬送を行う。以上の作業が繰返し行われる。
【0078】
このように、複数の検査用パレット治具31をベース台30の治具循環搬送路40に沿って循環搬送して、投入ステージ32において、検査用パレット治具31に液晶ユニット20を装着する作業を、この投入ステージ32に対応する治具循環搬送路40上の搬送区画41aに検査用パレット治具31が到着する毎に順次行い、検査ステージ33において、検査用パレット治具31に装着された液晶ユニット20の姿勢を起立姿勢と倒伏姿勢とに亙って切換えて液晶ユニット20を検査する作業を、この検査ステージ33に対応する治具循環搬送路40上の搬送区画41cに検査用パレット治具31が到着する毎に順次行い、回収ステージ34において、検査用パレット治具31から検査済みの液晶ユニット20を取外して回収する作業を、この回収ステージ34に対応する治具循環搬送路40上の搬送区画41e又は41fに検査用パレット治具31が到着する毎に順次行い、これら3つのステージ32,33,34で規律のとれた前記作業を行うことができる。
【0079】
特に、検査ステージ33では、液晶ユニット20を検査用パレット治具31に装着した状態で起倒させて容易に確実に検査することができ、その際、検査用パレット治具31に装着されている液晶ユニット20の取扱いも慎重になり過ぎないようにすることができるので、検査ステージ33での作業負荷を軽減することができる。また、投入ステージ32では、検査用パレット治具31に液晶ユニット20を倒伏姿勢で容易に装着することができ、回収ステージ34では、検査用パレット治具31から検査済みの液晶ユニット20を倒伏姿勢で容易に取外して回収することができ、投入ステージ32及び回収ステージ34での作業負荷を軽減することもできる。従って、作業能率を向上させることができる。
【0080】
治具循環搬送路40は、各検査用パレット治具31が滞在可能な搬送区画41を複数並べて矩形環状の搬送路に構成されたので、この治具循環搬送路40を形成するベース台30をコンパクトに構成することができ、つまり、遊技機器検査設備Sの設置スペースを小さくすることができて、作業能率の向上を図ることができる。
【0081】
各検査用パレット治具31の複数のフリーボールキャスター51は、平面視矩形の治具ベース50の4つの頂部に位置し、治具循環搬送路40は、その搬送路面42に設けられ各検査用パレット治具31のフリーボールキャスター51が転動する合成樹脂製のキャスター転動面45,46を有するので、キャスター転動面45,46を容易に設けることができ、そして、フリーボールキャスター51が搬送路面42(キャスター転動面45,46)を転動する際の騒音を抑制することができる。
【0082】
治具循環搬送路40の複数の搬送区画41のうち4つの角部搬送区画41a,41e,41f,41jに検査用パレット治具31を位置決め可能に、フリーボールキャスター51が嵌合する窪み部47をキャスター転動面45,46に形成したので、検査用パレット治具31を搬送区画41a,41e,41f,41jに確実に滞在させることができ、これにより、他の搬送区画41b〜41d,41g〜41iにも検査用パレット治具31を確実に滞在させることができ、これにより、複数の検査用パレット治具31の循環搬送を確実に円滑に行い、各ステージ32,33,34での作業を確実に行うことができる。
【0083】
搬送区画41aに滞在する検査用パレット治具31を搬送方向下流側の搬送区画41bへ押動する第1治具押動機構35、搬送区画41gに滞在する検査用パレット治具31を搬送方向下流側の搬送区画41hへ押動する第2治具押動機構36、搬送区画41jに滞在する検査用パレット治具31を搬送方向下流側の搬送区画41aへ押動する第3治具押動機構36を備えたので、作業負荷の軽減を図り、必要最小人数(例えば、4人程度)の作業者Wにより、この遊技機器検査設備Sを稼働させることができる。
【0084】
各検査用パレット治具31においては、液晶ユニット20を着脱可能な遊技盤原板52が遊技盤4の原板と同構造であるため、パチンコ遊技機1の製造にあたって量産された多数の遊技盤4の原板の1つを遊技盤原板52として使用することができ、故に、この遊技盤原板52に液晶ユニット20を確実に装着することができ、しかも、遊技盤原板52を検査用に別途製作する必要がないため、検査用パレット治具31の製作コストを低減することができ、遊技機器検査設備Sの設備コストを安価にすることができる。
【0085】
しかも、起倒機構55により、遊技盤原板52に装着された液晶ユニット20を、遊技盤原板52及び保持枠53と共に起倒させることができるので、投入ステージ32での液晶ユニット20の装着作業、検査ステージ33での液晶ユニット20の検査作業、回収ステージ34での液晶ユニット20の取外し回収作業を容易に行うことができ、作業能率の向上を図ることができる。
【0086】
しかも、遊技盤原板52を保持枠53に着脱可能に装着するため、種々の機種に応じた遊技盤原板を容易に適用することができる。つまり、検査用パレット治具31の汎用性が高くなり、検査用パレット治具31の製作コストを低減すること、つまり遊技機器検査設備Sの設備コストを安価にすることができる。
【実施例2】
【0087】
実施例2は、実施例1の遊技機器検査設備Sの複数の検査用パレット治具31を複数の検査用パレット治具31Aに変更したものである。尚、検査用パレット治具31Aの構造の説明では、図14〜図16に示す状態での前方・上方を前方・上方として説明し、また、実施例1と基本的に同じものについては同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0088】
図14〜図18に示すように、複数の検査用パレット治具31Aは、夫々、実施例1の検査用パレット治具31の起倒機構55を変更したものであり、治具ベース50、複数(4個)のフリーボールキャスター51、遊技盤原板52、保持枠53、1対のロック機構(図示略)、起倒機構55Aを備え、液晶ユニット20を遊技盤原板52に着脱可能で且つ液晶ユニット20を遊技盤原板52に装着した状態で遊技盤4に実装する姿勢と同じ起立姿勢(図14〜図16に示す姿勢)と倒伏姿勢(図18に示す姿勢)とに亙って切換え可能に構成されている。
【0089】
起倒機構55Aは、遊技盤原板52に装着された液晶ユニット20を起立姿勢と倒伏姿勢とに亙って、遊技盤原板52及び保持枠53と共に起倒可能に保持枠53を治具ベース50に連結する機構であり、1対の支持脚100、1対の中間支持部材101、1対の軸部材102、1対の平行リンク機構103、1対のピン部材104、1対のバー部材105を備え、治具ベース50には被押動部56が設けられている。上記構成100〜105は、夫々、左右対称に1対設けられている。
【0090】
1対の支持脚100は、保持枠53の左右両端側(幅方向両端側)に配置されて、治具ベース50の1対のフレーム部材50aにその前後方向中央部分から立設されている。1対の中間支持部材101は、支持脚100よりも少し短い上下方向向きの部材からなり、1対の支持脚100の後側に配設され、この1対の中間支持部材101の下端部同士が水平連結部材101aにより連結されている。
【0091】
この1対の中間支持部材101の上端部分に、保持枠53の1対のフレーム部材53aの前後方向中央部よりも少し後側部分(長さ方向中間部分)が1対の左右方向向きの軸部材102により水平軸心回りに回動自在に支持されている。
【0092】
1対の平行リンク機構103は、夫々、1対の支持脚100及び1対の中間支持部材101の左右方向外側に配設された上下2つの平行に配置されたリンク部材103aを有し、各平行リンク機構103のリンク部材103aの両端部が、支持脚100の下部と中間支持部材101の下部とに回動自在に連結されている。
【0093】
起倒機構55Aは、1対の中間支持部材101を1対の平行リンク機構103を介して1対の支持脚100と平行を維持し、前後方向の位置を変動させつつ上下動させながら保持枠53を1対の軸部材102を中心として回動させて起倒させる。
【0094】
1対のピン部材104は、夫々保持枠53の1対のフレーム部材53aの後端部分(幅方向両端部の起立姿勢における下側部分)から、保持枠53の左右方向外側へ突出している。1対の支持脚100及び1対の中間支持部材101と保持枠53との間には少しの隙間があり、1対のピン部材104は、支持脚100及び中間支持部材101と干渉しない程度に前記隙間に突出している。例えば、ピン部材104をネジ部材で構成してもよい。
【0095】
1対のバー部材105は、治具ベース50に固定的に設けられ1対の中間支持部材101を上下動させる際に保持枠53の姿勢を切換えつつ1対のピン部材104を夫々スライド自在にガイド支持して保持枠53を起倒させるものであり、保持枠53が起立する際に1対のピン部材104が移動する方向(前方)に向かって斜め下側に傾斜している。ここで、治具ベース50の1対のフレーム部材50aにその後端部から1対の脚柱部材106が立設されている。1対のバー部材105は、1対の支持脚100の左右方向内側部分と1対の脚柱部材106の左右方向内側部分とにビス等で固定されている。
【0096】
検査用パレット治具31Aの作用・効果について説明する。
先ず、保持枠53(遊技盤原板52)が図16に示す倒伏姿勢のとき、中間支持部材101が支持脚100の上端よりも下方に位置し、ピン部材104はバー部材105の後側部分に位置する。ここで、図16に示すように、保持枠53を倒伏姿勢に保持するために、保持枠53のうち軸部材102よりも前側部分を下側から支持する第1倒伏姿勢保持部材107が支持脚100に取付けられ、保持枠53の後端部分を上側から受止める第2倒伏姿勢保持部材108が脚柱部材106に取付けられている。尚、第2倒伏姿勢保持部材108については省略可能である。
【0097】
次に、倒伏姿勢の保持枠53をその前端部を掴んで引上げるように回動操作すると、保持枠53が図17の状態を経て図18に示す起倒姿勢に切換わる。その際、ピン部材104がバー部材105上を前方へスライドしながら、保持枠53がピン部材104を中心に上方へ回動し、それに伴って、中間支持部材101が上方へ引上げられ支持脚100に接近するように移動する。バー部材105が前方に向かって斜め下側に傾斜しているため、ピン部材104はバー部材105上を前方へ円滑にスライドする。
【0098】
保持枠53が図18に示す起立姿勢のとき、中間支持部材101が支持脚100に略当接して支持脚100の上端よりも上方の上限位置に位置し、ピン部材104はバー部材105の前側部分に位置する。ここで、図18に示すように、保持枠53を起立姿勢に保持するために、保持枠53の下側部分を前側から受止める起倒姿勢保持部材109が脚柱部材106に取付けられている。そして、バー部材105が前方に向かって斜め下側に傾斜しているので、そのバー部材105に係合しているピン部材104も、保持枠53を軸部材102を中心に回動させないようにするストッパとして機能するため、保持枠53が起立姿勢に確実に保持される。
【0099】
結局、保持枠53は軸部材102を中心に回動して起倒することになるが、その際、軸部材102(中間支持部材101)も上下動し、その軸部材102の高さ位置は倒伏姿勢における位置よりも起立姿勢における位置の方が高くなるため、起立姿勢の保持枠53の位置は、実施例1の検査用パレット治具31の起立姿勢の保持枠53の位置よりも高くなる。尚、起立姿勢の保持枠53をその上端部を掴んで引下げるように回動操作すると、前記とは逆に保持枠53が図17の状態を経て図16に示す倒伏姿勢に切換わる。
【0100】
この検査用パレット治具31Aによれば、起立姿勢の保持枠53の高さ位置を高くすることができるため、次の点で有利になる。即ち、投入ステージ32で検査用パレット治具32に液晶ユニット20を装着する場合、また、回収ステージ34で検査用パレット治具32から液晶ユニット20を取外して回収する場合、これら両ステージ32,34の作業者Wの作業能率を高める(即ち、労力軽減する)うえで、作業者Wの腰あたりの高さ位置に倒伏姿勢の保持枠53(遊技盤原板52)を位置させるのが最適である。
【0101】
一方、検査ステージ33で液晶ユニット20を検査する場合、この検査ステージ33の作業者Wの作業能率を高めるうえで、作業者Wの腰あたりの高さ位置に起立姿勢の保持枠53の下部を位置させるのが最適である。実施例1のように、保持枠53を単に軸部材61を中心回動させて起倒させるのでは、全作業者Wにおいて前記最適な位置を確保するために、投入ステージ32と回収ステージ34の作業者Wの立ち位置を高くする必要がある。そのために、投入ステージ32と回収ステージ34に作業台を設置し対応することができるが、その作業台に載った作業者Wの作業安定性の面で問題になる。
【0102】
この検査用パレット治具31Aでは、起立姿勢の保持枠53の高さ位置を高くすることができるため、前記作業台を不必要とし、即ち、全作業者Wの立ち位置を同一高さの地面として、前記課題を解消することができる。即ち、前記作業台が不要になり、作業安定性を改善して、全作業者Wの作業能率を高めることができ、しかも、前記作業台が不要になることから、そして、治具循環搬送路40の高さ位置を低くすることができるため、この治具循環搬送路40を形成したベース台30のコンパクト化と安定した設置を図り、また、検査用パレット治具31Aの搬送の安定化を図り、更に、遊技機器検査設備Sの設備コストの面でも有利になる。その他は実施例1と同様の効果を奏する。
【0103】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を付加して実施可能である。例えば、液晶ユニット20に限らず、複数の回転ドラム又はLEDディスプレイを含む演出ユニットを検査する遊技機器検査設備に適用可能であるし、こうした演出ユニット以外の遊技機器を検査する遊技機器検査設備に適用可能である。
【符号の説明】
【0104】
S 遊技機器検査設備
1 パチンコ遊技機
4 遊技盤
20 液晶ユニット
30 ベース台
31, 31A 検査用パレット治具
32 投入ステージ
33 検査ステージ
34 回収ステージ
35,36,37 第1,第2,第3治具押動機構
38 検査設備制御装置
40 治具循環搬送路
41(41a〜41j) 搬送区画
42 搬送路面
45,46 キャスター転動面
47 窪み部
50 治具ベース
51 フリーボールキャスター
52 遊技盤原板
53 保持枠
54 ロック機構
55,55A 起倒機構
56 被押動部
75,80,85 第1,第2,第3エアシリンダ
81 出力部
82 係合部材
83 付勢部材
100 支持脚
101 中間支持部材
102 軸部材
103 平行リンク機構
104 ピン部材
105 バー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パチンコ遊技機の遊技盤に装着される遊技機器を検査するために遊技機器を着脱可能で且つ治具循環搬送路に装備される遊技機器検査設備の検査用パレット治具において、
前記治具循環搬送路に沿って移動可能にガイドされる治具ベースと、
前記治具ベースに装着され前記治具循環搬送路の搬送路面を転動可能な複数のキャスターと、
前記遊技機器を着脱可能で前記遊技盤の原板と同構造の遊技盤原板と、
前記遊技盤原板に装着された遊技機器を前記遊技盤に実装する姿勢と同じ起立姿勢と倒伏姿勢とに亙って起倒可能に遊技盤原板を治具ベースに連結する起倒機構と、
前記遊技盤原板に装着された遊技機器を固定解除可能に固定するロック手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機器検査設備の検査用パレット治具。
【請求項2】
前記遊技盤原板を着脱可能な保持枠を備え、
前記起倒機構は、この保持枠を起倒可能に治具ベースに連結することを特徴とする請求項1に記載の遊技機器検査設備の検査用パレット治具。
【請求項3】
前記起倒機構は、前記保持枠の幅方向両端側に配置されて治具ベースに立設された1対の支持脚と、1対の中間支持部材と、この1対の中間支持部材に前記保持枠の幅方向両端部の長さ方向中間部分を水平軸心回りに回動自在に支持する1対の軸部材と、前記1対の支持脚と1対の中間支持部材とを夫々連結する1対の平行リンク機構とを有し、1対の中間支持部材を1対の平行リンク機構を介して上下動させながら保持枠を1対の軸部材を中心として回動させて起倒させることを特徴とする請求項2に記載の遊技機器検査設備の検査用パレット治具。
【請求項4】
前記起倒機構は、前記保持枠の幅方向両端部の起立姿勢における下側部分から突出する1対のピン部材と、治具ベースに固定的に設けられ1対の中間支持部材を上下動させる際に保持枠の姿勢を切換えつつ前記1対のピン部材を夫々スライド自在にガイド支持して保持枠を起倒させる1対のバー部材とを有することを特徴とする請求項3に記載の遊技機器検査設備の検査用パレット治具。
【請求項5】
前記1対のバー部材は、保持枠が起立する際に1対のピン部材が移動する方向に向かって斜め下側に傾斜していることを特徴とする請求項4に記載の遊技機器検査設備の検査用パレット治具。
【請求項6】
前記複数のキャスターが複数のフリーボールキャスターからなることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の遊技機器検査設備の検査用パレット治具。
【請求項7】
前記遊技機器が液晶ディスプレイを含む液晶ユニットからなることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の遊技機器検査設備の検査用パレット治具。
【請求項8】
前記ロック手段は、前記保持枠に取付けられたロック機構を有することを特徴とする請求項2に記載の遊技機器検査設備の検査用パレット治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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