説明

運動補助装置

【課題】特別な操作を行うことなく、日常生活の活動状態に応じたトレーニングを行うことができる運動補助装置を提供することにある。
【解決手段】運動補助装置は、人体の動作を検出する検出手段1と、人体の特定部位に力学的な刺激を与える刺激付与手段2と、検出手段1および刺激付与手段2を人体に装着する装着手段とを備え、検出手段1は、人体の動作によって人体に生じる加速度を検出する加速度センサ10と、人体の動作による姿勢変化に起因する角速度を検出するためのジャイロセンサ11とを有し、刺激付与手段2は、力学的な刺激として筋肉が緊張するような振動を与える振動子からなる刺激発生手段20と、検出手段1の検出結果に基づいて刺激発生手段20で発生させる刺激の強さ(振動の強さ)を調整する刺激調整手段21とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発的(能動的)な運動を行わなくてもトレーニングが可能な運動補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自発的な運動を行わなくても身体に装着するだけでトレーニングが行える運動補助装置が提案されている。
【0003】
この種の運動補助装置としては、例えば、腹帯型電極装具(軟式コルセット型電極装具)と、当該腹帯型電極装具に人体の両側腹直筋や、側腹筋群、傍脊柱起立筋群に対応する形で取り付けられた刺激電極と、刺激電極間に所定の波形パターンの電圧を与える刺激装置とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−19216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例の運動補助装置では、刺激電極間に印加する電圧の波形パターンを変えることによって、種々のトレーニングを行えるようになっている。
【0005】
そのため、人体の活動状態に合わせて種々の波形パターンを用意しておけば、歩行時や、走行時などの運動時や、安静時など、日常生活の活動状態に応じたトレーニングを行うことが可能となる。
【0006】
しかしながら、上記従来例の運動補助装置においてトレーニングの種類を変更するためには、装着者が自ら運動補助装置を操作しなければならず、このような操作は面倒であった。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みて為されたもので、その目的は、特別な操作を行うことなく、日常生活の活動状態に応じたトレーニングを行うことができる運動補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題を解決するために、請求項1の発明では、人体の動作を検出する検出手段と、人体の特定部位に力学的な刺激を与える刺激付与手段と、検出手段および刺激付与手段を人体に装着する装着手段とを備え、刺激付与手段は、上記刺激を発生させる刺激発生手段と、検出手段の検出結果に基づいて刺激発生手段で発生させる刺激の強さを調整する刺激調整手段とを有していることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、人体の動作に応じて刺激の強さが調整されるから、運動時や安静時などの人体の活動状態などに応じて刺激の強さを切り替えるという面倒な操作を行わなくて済み、特別な操作を行うことなく、日常生活の活動状態に応じたトレーニングを行うことができる。また、人体の動作を検出するようにしているから、筋肉の動き、例えば歩行時の脚の動きに合わせて人体に付与する刺激を調整することができて、トレーニングや、運動の補助(例えば、歩行時の転倒防止)などを効率良く行うことが可能となる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記刺激調整手段は、上記検出手段の検出結果により上記特定部位にかかる負荷の大きさを判断し、上記特定部位にかかる負荷が大きいほど、上記刺激発生手段で発生させる刺激を強くすることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、筋肉の動きに合わせて効率良くトレーニングや、運動の補助を行うことができる。例えば、下肢(主として大腿部)に刺激を与える場合に、遊脚相から立脚相に移行する(脚が接地する)際に、筋肉に刺激を与え緊張状態を維持し、立脚相から遊脚相に移行する(地面から脚を離す)際には、筋肉に与える刺激を弱くするようにすれば、筋肉の動きに合わせて効率良くトレーニングを行うことができ、しかも、脚が接地する際に筋肉の緊張状態が維持され、また地面から脚を離す際には、刺激を弱くして脚を蹴りだし易くなるから、転倒防止が図れ、筋肉の動きに合わせて効率よく運動の補助を行うことができる。
【0012】
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、上記検出手段は、加速度センサとジャイロセンサとの少なくとも一方を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明によれば、筋電位計などを用いる場合に比べて、人体の動作を容易に検出することができる。
【0014】
請求項4の発明では、請求項1〜3のうちいずれか1項の発明において、上記刺激発生手段は、人体を振動させることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明によれば、特に骨を振動させることで骨に負荷を与えることができるから、骨密度の向上を図ることができる。
【0016】
請求項5の発明では、請求項1〜3のうちいずれか1項の発明において、上記刺激発生手段は、人体を圧迫することを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明によれば、血流制限による加圧トレーニングを行うことが可能となるから、筋力トレーニング時の筋肉組織の破壊を抑えることができ、しかも関節や靭帯にかかる負担を軽くした状態で筋力トレーニングを行うことができ、また、人体の特定部位を固定して負担がかからないようにサポートすることができるから、骨折などを予防することができる。
【0018】
請求項6の発明では、請求項1〜3のうちいずれか1項の発明において、上記刺激発生手段は、骨に到達するように超音波を発生することを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明によれば、骨密度の向上を図ることができる。
【0020】
請求項7の発明では、請求項1〜6のうちいずれか1項の発明において、上記装着手段は、上記刺激付与手段を大腿部に装着することを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明によれば、刺激付与手段によって、大腿部に力学的な刺激が与えられるから、大腿部の筋力や骨密度(主として大腿骨頭の骨密度)の向上を図ることができ、大腿部の骨折を予防することができる。
【0022】
請求項8の発明では、請求項1〜6のうちいずれか1項の発明において、上記装着手段は、上記刺激付与手段を腰部に装着することを特徴とする。
【0023】
請求項8の発明によれば、刺激付与手段によって、腰部に力学的な刺激が与えられるから、腰部の筋力や骨密度(主として腰椎の骨密度)の向上を図ることができ、腰部の骨折を予防することができる。
【0024】
請求項9の発明では、請求項1〜6のうちいずれか1項の発明において、上記装着手段は、上記刺激付与手段を下腿部に装着することを特徴とする。
【0025】
請求項9の発明によれば、下腿部に力学的な刺激が与えられるから、下腿部(主として膝の膝蓋骨)の筋力や骨密度の向上を図ることができ、下腿部の骨折を予防することができる。
【0026】
請求項10の発明では、請求項1〜9のうちいずれか1項の発明において、上記装着手段は、人体に巻き付けられるベルトであることを特徴とする。
【0027】
請求項10の発明によれば、検出手段および刺激付与手段を容易に人体に装着できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、特別な操作を行うことなく、日常生活の活動状態に応じたトレーニングを行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(実施形態1)
本実施形態の運動補強装置は、図1および図2に示すように、人体Pの動作(人の姿勢や運動、体動など)を検出する検出手段1と、人体Pの特定部位に力学的な刺激を与える刺激付与手段2と、検出手段1および刺激付与手段2を人体Pに装着する装着手段3とを備えている。
【0030】
装着手段3は、図2(a),(b)に示すように、人体Pの腰部に巻かれる第1のベルト30と、人体Pの両脚の大腿部の付け根それぞれに巻かれる一対の第2のベルト31と、人体Pの体側側において第1のベルト30と一対の第2のベルト31それぞれとを連結する一対の連結部32とで構成されている。第1のベルト30および第2のベルト31は、例えば、伸縮性を有する素材(布材など)からなる帯状のものであって、面ファスナや、ボタン、バックルなどを利用して着脱自在に人体Pに着けることができるようになっている。
【0031】
第1のベルト30には、検出手段1と、検出手段1および刺激付与手段2駆動用の電源(図示せず)とが取り付けられ、一対の連結部32それぞれには、刺激付与手段2が取り付けられている。検出手段1と、刺激付与手段2と、上記電源とは、図示しない電線などにより電気的に接続されている。
【0032】
検出手段1は、人体Pの動作によって人体Pに生じる加速度を検出する加速度センサ10と、人体Pの動作による姿勢変化に起因する角速度を検出するためのジャイロセンサ(角速度センサ)11とを備えている。ここで、加速度センサ10は、例えば、互いに垂直な3軸の各加速度をアナログ形式で出力する3軸の加速度センサからなる。また、ジャイロセンサ11は、例えば、互いに垂直な3軸の角速度をアナログ形式で出力する3軸のジャイロセンサからなる。このような加速度センサ10およびジャイロセンサ11としては、小型で低消費電力なMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を利用したものを採用することができる。
【0033】
刺激付与手段2は、人体Pの特定部位(本実施形態では大腿部)に付与する刺激を発生させる刺激発生手段20と、検出手段1の検出結果に基づいて刺激発生手段20で発生させる刺激の強さを調整する刺激調整手段21とを有している。
【0034】
刺激発生手段20は、例えば特定振動数の振動を発生する振動子からなる。ここで、上記特定振動数は、例えば、振動が与えられた筋肉(主として骨格筋)に持続性の反射収縮が引き起こされるとともにその拮抗筋に弛緩が引き起こされる、いわゆる緊張性振動反射(Tonic Vibration Reflex;TVR)を誘発し、かつ骨を振動させることが可能な振動数(例えば20Hz程度)に設定される。したがって、本実施形態における刺激発生手段20は、筋肉が緊張し、かつ骨が振動するように人体Pを振動させる。なお、振動によって筋肉に緊張性振動反射が誘発されることは既に周知の事項であるから、上記特定振動数の値は適宜設定すればよい。
【0035】
また、刺激発生手段20は、刺激の強さ、すなわち振動の強さ(振幅)を調整することができる振動子を用いている。
【0036】
刺激調整手段21は、検出手段1の検出結果に基づいて、刺激発生手段20により人体Pに付与する刺激の強さを示す刺激値を決定する判断部211と、判断部211で決定された刺激値に応じた刺激を刺激発生手段20により発生させる制御部(駆動部)212とで構成されている。
【0037】
判断部211は、検出手段1の加速度センサ10およびジャイロセンサ11それぞれの出力(検出結果)を所定周期でサンプリングしてデジタル(ディジタル)形式の値に変換するA/Dコンバータ(図示せず)と、A/Dコンバータでデジタル形式に変換された各センサ10,11の出力を記憶するRAMなどのメモリ(図示せず)と、メモリに記憶された各センサ10,11の出力に基づいて刺激発生手段20で発生させる刺激の強さを決定するCPUなどの演算処理部(図示せず)などを備えている。
【0038】
判断部211の演算処理部では、人の姿勢(体位)が座位(または立位)か寝位か、人が運動中か静止中か、人が歩行中か走行中か、人の脚の動き(歩行動作あるいは走行動作)が立脚相前か立脚相後かの4つ項目によって、刺激の強さを決定する。具体的には、人の姿勢が座位または立位であれば刺激を与え、寝位であれば刺激を与えない。また、人が運動中であれば静止中であるときよりも刺激を強くし、人が歩行中であれば走行中であるときよりも刺激を強くする。さらに、脚の動きが立脚相前であれば立脚相後よりも刺激を強くする。
【0039】
以下に、演算処理部における刺激の強さ(刺激値)の決定方法について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。最初のステップS1では、刺激値の初期化を行い、刺激値を0に設定する。なお、刺激値が0であることは、刺激発生手段20において振動を発生させないことを意味する。
【0040】
次のステップS2では、運動補助装置の装着者の姿勢(体位)が座位(または立位)か、寝位かの判定を行う。この判定には、ジャイロセンサ11の出力が用いられる。この判定を行うにあたって、演算処理部は、ジャイロセンサ11の出力を用いて、水平方向に対する人体Pの身長方向の角度θを算出する。なお、ジャイロセンサ11より当該角度θを算出する方法は従来周知であるから説明を省略する。
【0041】
図4は、上記角度θの時間変化の一例を示しており、演算処理部は、算出した上記角度θが所定値θth以上であれば、人体Pの姿勢が座位または立位であると判定し、上記角度θが所定値未満であれば、人体Pの姿勢が寝位であると判定する。
【0042】
このステップS2において人体Pの姿勢を寝位であると判定した際には、ステップS11に進む。一方、ステップS2において人体Pの姿勢を座位または立位であると判定した際には、ステップS3に進み、刺激値を所定量aだけ増加させる。
【0043】
次のステップS4では、人が運動中か静止中かの判定を行う。この判定には、加速度センサ10の出力が用いられる。この判定を行うにあたって、演算処理部は、加速度センサ10の各軸の出力により合成加速度(ノルム)を算出する。演算処理部は、当該合成加速度が所定範囲内に収まっているか否かによって静止中か運動中かを判定する。例えば、演算処理部は、図5に示すように、合成加速度が閾値Th1と閾値Th1より小さい閾値Th2との間に収まっていれば、人が静止していると判定し、合成加速度が閾値Th1と閾値Th2との間に収まっていなければ(合成加速度が閾値Th1を上回るか、閾値Th2を下回る場合)、人が運動していると判定する。
【0044】
このステップS4において人が静止中であると判定した際には、ステップS11に進む。一方、ステップS4において人が運動中であると判定した際には、ステップS5に進む。
【0045】
ステップS5では、人が歩行中か走行中かの判定を行う。この判定には、ステップS4同様、加速度センサ10の出力が用いられる。この判定を行うにあたって、演算処理部は、ステップS4で算出した上記合成加速度(図6(a)参照)から、当該合成加速度の振幅を算出する。なお、振幅は、例えば、合成加速度の正のピーク値(山のピーク値)と負のピーク値(谷のピーク値)との差分によって求められる。また、その他の従来周知の方法を用いてもよい。図6(b)は、上記振幅の時間変化の一例を示しており、演算処理部は、算出した上記振幅が所定値Ath以上であれば、人が走行中であると判定し、上記振幅が所定値Ath未満であれば、人が歩行中であると判定する。また、ステップS5では、上記振幅の代わりに、上記合成加速度の周波数を用いてもよい。すなわち、演算処理部は、ステップS4で算出した上記合成加速度から、当該合成加速度の周波数を算出する。なお、振幅は、例えば、合成加速度の正のピーク値(山のピーク値)間、あるいは負のピーク値(谷のピーク値)間の時間によって求められる。また、その他の従来周知の方法を用いてもよい。図6(c)は、上記周波数の時間変化の一例を示しており、演算処理部は、算出した上記周波数が所定値fth以上であれば、人が走行中であると判定し、上記振幅が所定値fth未満であれば、人が歩行中であると判定する。
【0046】
上述したステップS5において、人が歩行中であると判定した場合には、刺激値を所定量bだけ増加させた(ステップS6)後にステップS8へ進む。一方、ステップS5において、人が走行中であると判定した場合には、刺激値を所定量c(ただしc<b)だけ増加させた(ステップS7)後にステップS8へ進む。
【0047】
ステップS8では、人の脚の動きが立脚相前か立脚相後かの判定を行う。この判定には、ステップS4同様、加速度センサ10の出力が用いられる。ここで、人が歩行(あるいは走行)することによって人体Pに生じる加速度は、図7に示すように、正のピーク(山ピーク)と負のピーク(谷のピーク)が交互に現れるような時間変化を示す。そして、負のピークから正のピークまでの期間は、立脚相から遊脚相に移行する期間であり、正のピークから負のピークまでの期間は、遊脚相から立脚相に移行する期間であると考えられる。
【0048】
そこで、本実施形態における判断部211では、立脚相前か立脚相後かの判定を行うにあたって、演算処理部は、ステップS4で算出した上記合成加速度(図7参照)から最新のピークを抽出し、当該最新のピークが負のピーク(谷ピーク)であれば、立脚相前であると判定し、当該最新のピークが正のピーク(山ピーク)であれば、立脚相後であると判定する。例えば、図7に示すように、最新のピークが時刻t1におけるピークP1であるとピークP1は正のピークであるから立脚相後と判定し、最新のピークが時刻t2におけるピークP2であるとピークP2は負のピークであるから立脚相前と判定し、最新のピークが時刻t3におけるピークP3であるとピークP3は正のピークであるから立脚相後と判定する。
【0049】
このステップS8において、立脚前であると判定した場合には、刺激値を所定量dだけ増加させた(ステップS9)後に、ステップS11へ進み、立脚後であると判定した場合には、刺激値を所定量eだけ減少させた(ステップS10)後に、ステップS11へ進む。
【0050】
ステップS11では、刺激値を制御部212に出力する。ここで、刺激値の値は、各項目(ステップS2,S4,S5,S8)の判定結果によって決定される。つまり、ステップS2において寝位と判定された場合、刺激値は0のままであり、この場合、制御部212は、刺激発生手段20による刺激の発生を停止する。また、ステップS4において静止中と判定された場合、刺激値はステップS3を経ることによって、aとなる。ステップS5において歩行中と判定され、ステップS8において立脚前と判定された場合、刺激値はステップS3,S6,S9を経ることでa+b+dとなり、ステップS5において歩行中と判定され、ステップS8において立脚後と判定された場合、刺激値はステップS3,S6,S10を経ることでa+b−eとなり、ステップS5において走行中と判定され、ステップS8において立脚前と判定された場合、刺激値はステップS3,S7,S9を経ることでa+c+dとなり、ステップS5において走行中と判定され、ステップS8において立脚前と判定された場合、刺激値はステップS3,S7,S10を経ることでa+c−eとなる。そして、制御部212は、与えられた刺激値に応じた刺激を刺激発生手段20に発生させる。
【0051】
ステップS11において刺激値が出力されると、ステップS1に戻り、再び刺激値の算出が行われる。このような動作は、運動補助装置の動作を停止するまで繰り返し行われ、これによって人の動作に応じた刺激が与えられることになる。
【0052】
以上述べたように、本実施形態の運動補助装置では、人体の動作に応じて刺激の強さが調整されるから、運動時や安静時などの人体の活動状態などに応じて刺激の強さを切り替えるという面倒な操作を行わなくて済み、特別な操作を行うことなく、日常生活の活動状態に応じたトレーニングを行うことができる。
【0053】
また、本実施形態の運動補助装置では、脚の動きが立脚相前であれば立脚相後よりも刺激を強くするようにしている。ここで、歩行時の人の脚の動作は、脚が接地している立脚相(立脚期)と、脚が浮いている(接地していない)遊脚相(遊脚期)とで表され、立脚相のときのほうが遊脚相のときよりも特定部位(本実施形態では大腿部)に対応する骨(すなわち大腿骨)にかかる負荷が大きくなる。つまり、刺激調整手段21は、特定部位にかかる負荷の大きさを判断し、特定部位にかかる負荷が大きいほど、刺激発生手段20で発生させる刺激を強くするのである。なお、本実施形態では、立脚相であれば遊脚相よりも刺激を強くするようにしているが、特定部位にかかる負荷を数値で求め、刺激値をこの数値に対する関数(例えば一次関数や二次関数など)とするようにしてもよい。
【0054】
このように遊脚相から立脚相に移行する(脚が接地する)際に、筋肉に刺激を与えて緊張させ、立脚相から遊脚相に移行する(地面から脚を離す)際には、筋肉に与える刺激を弱くするから、筋肉の動きに合わせて効率良くトレーニングを行うことができる。特に、本実施形態のように刺激付与手段2を大腿部に装着した場合には、脚が接地する際に、筋肉の緊張状態が維持されるから、転倒防止が図れ、また、地面から脚を離す際には、筋肉に与える刺激を弱くするから、脚を蹴りだし易くなって、歩き易くすることができるから、効率良く運動を補助することができる。
【0055】
さらに、検出手段1は、加速度センサ10とジャイロセンサ11とで構成されているから、筋電位計などを用いる場合に比べて、人体の動作を容易に検出することができる。加えて、装着手段3は、人体に巻き付けられるベルトであるから、検出手段1および刺激付与手段2を容易に人体Pに装着できる。
【0056】
また、刺激発生手段20は人体を振動させるようになっており、人体を振動させることで骨を振動させれば、骨に負荷を与えることができて、骨密度の向上が図れる。
【0057】
特に、本実施形態の運動補助装置では、刺激付与手段20によって、人体Pの大腿部に力学的な刺激(本実施形態の場合は、振動)が与えられるから、大腿部の筋力や骨密度(主として大腿骨頭の骨密度)の向上を図ることができ、大腿部の骨折を予防することができる。
【0058】
ところで、本実施形態の装着手段3は、刺激付与手段20を人体Pの大腿部に装着するようになっているが、図8(a)に示すように、刺激付与手段20を人体Pの腰部に装着するものであってもよい。図8(a)に示す装着手段3は、第1のベルト30のみを有しており、第1のベルト30に、検出手段1と、刺激付与手段2と、電源(図示せず)とが設けられている。ここで、刺激付与手段2は、刺激発生手段20が、人体Pの腰部に接触する形で第1のベルト30に取り付けられている。
【0059】
図8(a)に示す運動補助装置では、刺激付与手段20によって、人体Pの腰部に力学的な刺激(本実施形態の場合は、振動)が与えられる。そのため、腰部の骨密度(主として腰椎の骨密度)の向上を図ることができ、腰部の骨折を予防することができる。
【0060】
また、装着手段3は、図8(b)に示すように、刺激付与手段20を人体Pの下腿部(例えば膝部)に装着するものであってもよい。図8(b)に示す装着手段3は、人体Pの腰部に巻かれる第1のベルト30と、人体Pの両脚の下腿部(図示例では膝)それぞれに巻かれる一対の第2のベルト31と、人体Pの体側側において第1のベルト30と一対の第2のベルト31それぞれとを連結する一対の連結部32とで構成されている。
【0061】
第1のベルト30には、検出手段1と、検出手段1および刺激付与手段2駆動用の電源(図示せず)とが取り付けられ、一対の第2のベルト31それぞれには、刺激付与手段2が取り付けられている。ここで、刺激付与手段2は、刺激発生手段20が、人体Pの膝に接触する形で第2のベルト31に取り付けられている。
【0062】
図8(b)に示す運動補助装置では、刺激付与手段20によって、人体Pの下腿部に力学的な刺激(本実施形態の場合は、振動)が与えられる。そのため、下腿部(主として膝の膝蓋骨)の骨密度の向上を図ることができ、下腿部の骨折を予防することができる。
【0063】
ところで、判断部211においては、人の姿勢(体位)が座位(または立位)か寝位か、人が運動中か静止中か、人の運動状態が歩行か走行か、人の脚の動きが立脚相前か立脚相後かの4つの項目全てを採用しているが、必ずしもこれら全てを採用する必要はなく、少なくとも1つの項目を含んでいればよい。さらに、判断部211において刺激の強さを決定するにあたっては、上記4つの項目のいずれかを利用する必要は必ずしもなく、刺激の強さを決定するのに好適な項目を採用すればよい。なお、加速度センサ10としては、ピエゾ抵抗型の加速度センサや、静電容量型の加速度センサなどを採用することができる。また、加速度センサ10は、必ずしも3軸の加速度センサである必要はなく、例えば、2軸の加速度センサや、1軸の加速度センサであってもよい。このことはジャイロセンサ11においても同様である。また、本実施形態における検出手段1は、加速度センサ10とジャイロセンサ11とを両方備えているが、加速度センサ10とジャイロセンサ11との少なくとも一方を備えているものであってもよく、検出手段1をどのような構成とするかは、判断部21における刺激の強さの決定方法に基づいて決定すればよい。以上述べた点は後述する実施形態2,3においても同様である。
【0064】
(実施形態2)
本実施形態の運動補助装置は、図9に示すように、主として刺激発生手段20の構成が実施形態1と異なっている。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
本実施形態における刺激発生手段20は、人体Pの特定部位を圧迫(加圧)するものであって、例えば、流入された空気の体積に応じて膨張/収縮するエアセル201と、エアセル201の吸気または排気を行うエアポンプ202と、エアセル201とエアポンプ202との連通路を開閉する電磁弁203とで構成されている。このような刺激発生手段20は、電磁弁203を開いた状態で、エアポンプ202によりエアセル201に吸気、排気を行うことによって、エアセル201を膨張あるいは収縮させて、人体Pに加える圧力を加減することができるようになっており、エアポンプ202および電磁弁203の制御は、制御部212によって行われるようになっており、エアセル201によって人体Pに与えられる圧力は、判断部211で決定された刺激値に応じて設定される。なお、判断部211による刺激値の決定方法は上記実施形態1と同様であるから説明を省略する。
【0066】
本実施形態における装着手段3は、上記実施形態1で述べた図2(a),(b)に示すものと同様に、人体Pの腰部に巻かれる第1のベルト30と、人体Pの両脚の大腿部の付け根それぞれに巻かれる一対の第2のベルト31と、人体Pの体側側において第1のベルト30と一対の第2のベルト31それぞれとを連結する一対の連結部32とで構成されている。ここで、本実施形態における刺激発生手段20において、実際に刺激(圧力)を発生させるのはエアセル201であるから、エアセル201のみが第2のベルト31の内側(人体Pと当接する側)に配置され、エアポンプ202や電磁弁203は第1のベルト30に配置されている。
【0067】
以上述べた本実施形態の運動補助装置によれば、実施形態1と同様に、特別な操作を行うことなく、日常生活の活動状態に応じたトレーニングを行うことができる。
【0068】
また、刺激発生手段20は人体の特定部位を圧迫するので、刺激発生手段20によって特定部位における血流を制限することが可能となり、加圧トレーニング(上肢や下肢の付け根を加圧して血流を制限した状態で行うトレーニングであり、低負荷の運動でも高負荷の運動と同様の効果が得られるというもの)を行うことができるから、筋力トレーニングの際の筋肉組織の破壊を抑えることができ、しかも関節や靭帯にかかる負担を軽くした状態で筋力トレーニングを行うことができる。また、人体の特定部位を固定して負担がかからないようにサポートすることができるから、骨折などを予防することができる。
【0069】
特に、本実施形態の運動補助装置では、刺激付与手段20によって、人体Pの大腿部に力学的な刺激(本実施形態の場合は、圧力)が与えられるから、大腿部の筋力や骨密度(主として大腿骨頭の骨密度)の向上を図ることができ、大腿部の骨折を予防することができる。また、大腿部の筋力の向上が図れるから、高齢者の転倒予防に効果を発揮する。
【0070】
ところで、本実施形態の装着手段3は、刺激付与手段20を人体Pの大腿部に装着するようになっているが、装着手段3は、実施形態1で述べたように、刺激付与手段20を人体Pの腰部(例えば腰椎部)に装着するもの(図8(a)参照)であってもよい。この場合、刺激付与手段20のエアセル201は、腰部に接触する形で第1のベルト30に取り付けられる。
【0071】
図8(a)に示す装着手段3を利用した本実施形態の運動補助装置によれば、刺激付与手段20によって、人体Pの腰部に力学的な刺激(本実施形態の場合は、圧力)が与えられる。この場合、運動補助装置によって、弱った腰部をサポートすることができるから、腰部の骨折を予防することができる。
【0072】
また、本実施形態の装着手段3は、実施形態1で述べたように、刺激付与手段20を人体Pの下腿部(例えば膝部)に装着するもの(図8(b)参照)であってもよい。この場合、刺激付与手段20のエアセル201は第2のベルト31の内側に取り付けられる。
【0073】
図8(b)に示す装着手段3を利用した本実施形態の運動補助装置によれば、刺激付与手段20によって、人体Pの下腿部に力学的な刺激(本実施形態の場合は、圧力)が与えられ、加圧トレーニングが可能となる。そのため、下腿部(主として膝の膝蓋骨)の筋力や骨密度の向上を図ることができ、下腿部の骨折を予防することができる。
【0074】
(実施形態3)
本実施形態の運動補助装置は、刺激発生手段20として、振動子ではなく、特定周波数の超音波を発生する超音波プローブを採用した点で実施形態1と異なっている。なお、その他の構成は実施形態1と同様であるから、図示および説明を省略する。
【0075】
本実施形態における刺激発生手段20は、特定周波数の音波を発生するものである。ここで上記特定周波数の音波は、音波による振動が骨に到達するように、超音波としている。つまり、本実施形態における刺激発生手段20は、超音波を発生する超音波プローブからなる。また、超音波プローブは超音波の振幅を調整可能に構成されている。このような超音波プローブは従来周知であるから詳細な説明を省略する。
【0076】
本実施形態における刺激発生手段20は、実施形態1と同様に制御部212によってセ御され、刺激発生手段20によって人体Pに与えられる刺激の強さ(超音波の振幅)は、判断部211で決定された刺激値に応じて設定される。なお、判断部211による刺激値の決定方法は上記実施形態1と同様であるから説明を省略する。
【0077】
本実施形態における装着手段3は、上記実施形態1で述べた図2(a),(b)に示すものと同様に、人体Pの腰部に巻かれる第1のベルト30と、人体Pの両脚の大腿部の付け根それぞれに巻かれる一対の第2のベルト31と、人体Pの体側側において第1のベルト30と一対の第2のベルト31それぞれとを連結する一対の連結部32とで構成され、本実施形態における刺激発生手段20は、一対の連結部32それぞれに人体Pと接触する形に設けられている。
【0078】
以上述べた本実施形態の運動補助装置によれば、実施形態1と同様に、特別な操作を行うことなく、日常生活の活動状態に応じたトレーニングを行うことができる。
【0079】
また、刺激発生手段20は、骨に到達するように超音波を発生するので、骨密度の向上を図ることができる。
【0080】
特に、本実施形態の運動補助装置では、刺激付与手段20によって、人体Pの大腿部に力学的な刺激(本実施形態の場合は、超音波)が与えられるから、大腿部の筋力や骨密度(主として大腿骨頭の骨密度)の向上を図ることができ、大腿部の骨折を予防することができる。
【0081】
ところで、本実施形態の装着手段3は、刺激付与手段20を人体Pの大腿部に装着するようになっているが、装着手段3は、実施形態1で述べたように、刺激付与手段20を人体Pの腰部(例えば腰椎部)に装着するもの(図8(a)参照)であってもよい。この場合、刺激付与手段20は実施形態1と同様に腰部に接触する形で第1のベルト30に取り付けられる。
【0082】
図8(a)に示す装着手段3を利用した本実施形態の運動補助装置によれば、刺激付与手段20によって、人体Pの腰部に力学的な刺激(本実施形態の場合は、超音波)が与えられる。そのため、腰部の骨密度(主として腰椎の骨密度)の向上を図ることができ、腰部の骨折を予防することができる。
【0083】
また、本実施形態の装着手段3は、実施形態1で述べたように、刺激付与手段20を人体Pの下腿部(例えば膝部)に装着するもの(図8(b)参照)であってもよい。この場合、刺激付与手段20は実施形態1と同様に第2のベルト31の内側に取り付けられる。
【0084】
図8(b)に示す装着手段3を利用した本実施形態の運動補助装置によれば、刺激付与手段20によって、人体Pの下腿部に力学的な刺激(本実施形態の場合は、圧力)が与えられる。そのため、下腿部(主として膝の膝蓋骨)の筋力や骨密度の向上を図ることができ、下腿部の骨折を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施形態1の運動補助装置のブロック図である。
【図2】(a)は同上の運動補助装置の外観図、(b)は同上の運動補助装置を人体に装着した状態を示す説明図である。
【図3】同上の運動補助装置の動作のフローチャートである。
【図4】水平方向に対する人体の身長方向の角度の時間変化の一例を示すグラフである。
【図5】加速度の時間変化の一例を示すグラフである。
【図6】(a)は加速度の時間変化の一例を示すグラフ、(b)は加速度の振幅の時間変化の一例を示すグラフ、(c)は加速度の周波数の時間変化の一例を示すグラフである。
【図7】加速度の時間変化の一例を示すグラフである。
【図8】同上の他例の運動補助装置を人体に装着した状態を示す概略説明図である。
【図9】実施形態2の運動補助装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0086】
1 検出手段
2 刺激付与手段
3 装着手段
10 加速度センサ
11 ジャイロセンサ
20 刺激発生手段
21 刺激調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の動作を検出する検出手段と、
人体の特定部位に力学的な刺激を与える刺激付与手段と、
検出手段および刺激付与手段を人体に装着する装着手段とを備え、
刺激付与手段は、上記刺激を発生させる刺激発生手段と、検出手段の検出結果に基づいて刺激発生手段で発生させる刺激の強さを調整する刺激調整手段とを有していることを特徴とする運動補助装置。
【請求項2】
上記刺激調整手段は、上記検出手段の検出結果により上記特定部位にかかる負荷の大きさを判断し、上記特定部位にかかる負荷が大きいほど、上記刺激発生手段で発生させる刺激を強くすることを特徴とする請求項1記載の運動補助装置。
【請求項3】
上記検出手段は、加速度センサとジャイロセンサとの少なくとも一方を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の運動補助装置。
【請求項4】
上記刺激発生手段は、人体を振動させることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の運動補助装置。
【請求項5】
上記刺激発生手段は、人体を圧迫することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の運動補助装置。
【請求項6】
上記刺激発生手段は、骨に到達するように超音波を発生することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の運動補助装置。
【請求項7】
上記装着手段は、上記刺激付与手段を大腿部に装着することを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項記載の運動補助装置。
【請求項8】
上記装着手段は、上記刺激付与手段を腰部に装着することを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項記載の運動補助装置。
【請求項9】
上記装着手段は、上記刺激付与手段を下腿部に装着することを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項記載の運動補助装置。
【請求項10】
上記装着手段は、人体に巻き付けられるベルトであることを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1項記載の運動補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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