説明

運賃検証システム

【課題】 異なる社線を乗り継ぐ場合の最安運賃算出精度を向上させるとともに、会社間を跨がる三角表が得られるようにすることを目的とする。
【解決手段】 各社間の機器運賃データを突合した機器運賃データを生成する機器運賃データ生成部(11)と、突合した機器運賃データに基づいてあらゆる経路の運賃を生成するための基本運賃データ生成部(12)と、生成された基本運賃データと運賃計算すべき発着駅データが入力され、入力された発着駅間の最安運賃を計算する駅務機器の処理モジュールが組み込まれた複数のシミュレータ(21、22…)と、複数のシミュレータの突合結果に基づいて2駅間最安運賃テーブルを生成する最安運賃データ生成部(13)とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動改札機、精算機、窓処理機等の駅務機器における運賃計算を検証するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動改札機、精算機、窓処理機等の駅務機器が各駅に設置され、定期券や乗車券の情報を電子データとして格納したICカードやSFカード(ストアード・フェアー・カード)が使用され、各駅務機器ではICカードやSFカードのデータを読み込んで最短、最安で運賃計算して清算している。なお、同一社線内での最短、最安運賃は、三角表と言われるキロ程により決まる運賃テーブルが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、首都近郊では一枚のICカードにより複数社線を自由に乗り継ぎできるようにすることが検討されている。このような会社間を跨がる乗り継ぎを行う場合、例えば、A社線のa駅で乗車し、B社線、C社線、D社線と乗り継いで、D社線のd駅で降車した場合、d駅での改札機では、各社線ごとに最安経路を抽出し、これらを合算してa駅−d駅間の最安運賃を算出してICカードから清算することになる。
【0004】
このように一枚のICカードで会社間を跨がる乗り継ぎを行えるようにするためには、各駅に設置されている自動改札機、精算機、窓処理機等の駅務機器での運賃計算が正しく行われるか否かを検証する必要がある。また、他社線から乗り継いできた場合、会社間を跨がる三角表が存在しないため、駅係員が運賃を把握することが困難で、特にa駅−d駅間に定期券を持っているような場合の最安運賃を求めることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、異なる社線を乗り継ぐ場合の最安運賃算出精度を向上させるとともに、会社間を跨がる三角表が得られるようにすることを目的とする。
そのために請求項1の発明は、各社間の機器運賃データを突合した機器運賃データを生成する機器運賃データ生成部と、突合した機器運賃データに基づいてあらゆる経路の運賃を生成するための基本運賃データ生成部と、前記基本運賃データ生成部で生成された基本運賃データと運賃計算すべき発着駅データが入力され、入力された発着駅間の最安運賃を計算する駅務機器の処理モジュールが組み込まれた複数のシミュレータと、前記複数のシミュレータの突合結果に基づいて2駅間最安運賃テーブルを生成する最安運賃データ生成部とを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、前記複数のシミュレータに、さらにラッチデータが入力され、前記運賃データ生成部はラッチ経由の2駅間最安運賃を生成することを特徴とする。
請求項3の発明は、前記複数のシミュレータに、さらに定期券データが入力され、前記運賃データ生成部は、定期券を含んだ2駅間最安運賃を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、異なるメーカーで作成した機器運賃データを内容が一致するまで突合し、突合した機器運賃データに基づいてあらゆる経路の運賃を求めるための基本運賃データを作成し、作成した基本運賃データを駅務機器の処理モジュールが組み込まれた複数のシミュレータに入力し、基本運賃データに基づいて任意の2駅間最安運賃をそれぞれ算出して判定結果を突合し、任意の2駅間最安運賃を求めて大三角表を作成するようにしたものであり、現場の機器運賃データを突合させて基本運賃データを作成し、これにシミュレータによる判定検証処理をリンクさせることにより、運賃算出精度が向上し、自動的に任意の駅と駅との間の運賃を規定した大三角表を得ることができ、運賃管理をし易くすることができる。また、シミュレータはあらゆる経路の運賃を求めるための基本運賃データに基づいて運賃計算するので、ラッチデータや定期券データを入力することにより、ラッチ経由の最安運賃、定期券を加えた最安運賃を求めることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の運賃検証システム構成を説明するブロック図である。
本システムは運賃データ生成部10と判定部20とからなっており、運賃データ生成部10は、機器運賃データ生成部11、基本運賃データ生成部12、2駅間最安運賃テーブル(大三角表)を生成する最安運賃データ生成部13からなり、判定部20は、発着駅間の最安運賃を計算する駅務機器の処理モジュールが組み込まれた複数のシミュレータ21、22、……からなっている。
【0008】
機器運賃データ生成部11は、各メーカが作成した全ての駅番号、交差駅、分岐駅、ラッチデータ、キロ程(駅間キロ)、運賃データ等の機器運賃データを突合し、異なる場合には修正して全てのデータを一致させたデータを生成する。各社の全路線にはそれぞれ異なる線区コードが割り当てられ、各線区の駅には駅順コードが割り当てられている。例えば、東海道線の線区は001、東京駅から神戸駅まで順に駅順コードが001、002……253と割り当てられており、東京駅は001−001、有楽町駅は001−002、新橋駅は001−003のように駅コード(駅番号)が割り当てられる。このように、各社の全路線の全駅は異なる駅番号が付され、この駅番号、各社の全路線に存在する交差駅データ、分岐駅データ、ラッチデータ、キロ程等のデータを各メーカが自動改札機、精算機、窓処理機等の駅務機器に入力する場合には、それらデータが一致していなければならない。機器運賃データ生成部11は、各メーカが作成した機器運賃データを突合し、不一致の場合は各メーカに対してフィードバックして全て一致した機器運賃データを生成する。
【0009】
基本運賃データ生成部12は、突合した機器運賃データに基づいて任意の駅間の経路、その経路のキロ程や運賃、任意の経路の定期券のエンコード情報(発着駅、経由駅)、ラッチ駅データ等、各社線を含む全ての経路について運賃を算定するためのデータを生成する。この基本運賃データを生成する過程においても、各メーカにフィードバックして確認する。
【0010】
最安運賃データ生成部13は、基本運賃データ生成部12で生成した基本運賃データから任意の駅間の最安経路を抽出し、最安ルート表を作成する機能を有しており、任意の2駅間のデータを各シミュレータに入力し、各シミュレータで生成した最安運賃データに基づいて2駅間最安運賃テーブル(大三角表)を作成する。
【0011】
判定部20は、発着駅間の最安運賃を計算する駅務機器の処理モジュールが組み込まれた複数のシミュレータ21、22、……からなっており、基本運賃データ生成部12で生成された基本運賃データ(機器運賃データを含む)が入力されており、最安運賃データ生成部13から発着駅のデータ、或いは最安経路のデータが入力されると、基本運賃データに基づいて最安運賃を算出する。各シミュレータは、本来、同じ処理を行う駅務機器では全て同じ処理結果を出力すべきであるが、現実には異なる会社で作製されたもの、異なる路線に配置されたもの等においては少しの設計思想の違いから同じ処理結果とならない場合がある。そのため、任意の発着駅、最安経路データを入力し、生成した運賃を突合して違いがあるか否か検証し、違いがある場合には処理ロジックが間違っている可能性があるのでその補正をする。突合の結果、全て一致した場合には、その運賃が最安運賃データ生成部13に戻され、これに基づいて最安運賃データ生成部13では、2駅間最安運賃テーブル(大三角表)を作成して出力する。
【0012】
作成される大三角表は、図2に示すように駅名と駅名を対応させた運賃表であり、従来の三角表のようにキロ程に基づいたものではない。また、最安運賃表を作成する場合の最安経路は、現実に乗客が通った経路とは関係がない。
【0013】
なお、上記説明ではラッチ経由をしていないことを前提に説明したが、基本運賃データにはラッチデータも含まれているので、ICカードに経由するラッチのデータが記録される場合には、ラッチ経由の最安運賃を算出することも可能である。
【0014】
また、基本運賃データには交差駅、分岐駅等あらゆるデータが含まれているので、シミュレータに対して定期券情報を入力することにより、定期券の端駅、分岐駅を抽出し、発着駅間の最安運賃を定期券ルートを通る場合も加えて算出することができる。なお、このとき定期券ルートを通らない経路の方が安い場合もあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明によれば、現場の機器運賃データを突合させて基本運賃データを作成し、これにシミュレータによる判定検証処理をリンクさせることにより、運賃算出精度が向上し、自動的に任意の駅と駅との間の運賃を規定した大三角表を得ることができ、運賃管理をし易くすることができるので、産業上の利用価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】運賃検証システム構成を説明するブロック図である。
【図2】大三角表を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
10…運賃データ生成部10、11…機器運賃データ生成部11、12…基本運賃データ生成部、13…最安運賃データ生成部、20…判定部、21,22…シミュレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各社間の機器運賃データを突合した機器運賃データを生成する機器運賃データ生成部と、
突合した機器運賃データに基づいてあらゆる経路の運賃を生成するための基本運賃データ生成部と、
前記基本運賃データ生成部で生成された基本運賃データと運賃計算すべき発着駅データが入力され、入力された発着駅間の最安運賃を計算する駅務機器の処理モジュールが組み込まれた複数のシミュレータと、
前記複数のシミュレータの突合結果に基づいて2駅間最安運賃テーブルを生成する最安運賃データ生成部と、
を備えた運賃検証システム。
【請求項2】
前記複数のシミュレータに、さらにラッチデータが入力され、前記運賃データ生成部はラッチ経由の2駅間最安運賃を生成することを特徴とする請求項1記載の運賃検証システム。
【請求項3】
前記複数のシミュレータに、さらに定期券データが入力され、前記運賃データ生成部は、定期券を含んだ2駅間最安運賃を生成することを特徴とする請求項1または2記載の運賃検証システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−268242(P2006−268242A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83270(P2005−83270)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(593092482)ジェイアール東日本メカトロニクス株式会社 (85)
【Fターム(参考)】