説明

運転停止方法

【課題】 作業者が緊急事態に遭遇するときに既設の運転停止スイッチを操作できず、また、自動停止を可能にする検知手段の作動を期待できなくても、設置型の機械類における運転を遠隔操作で停止可能にする。
【解決手段】 スイッチ操作時に電波を発信して設置型の機械類における運転を停止させるスイッチSを作業者1が羽織るジャケット2における、あるいは、作業者1が被る帽子3におけるそれぞれ作業者1の手が届く部位に保持させると共に、このスイッチSを作業者1が手でスイッチ操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転停止方法に関し、特に、設置型の機械類における運転を遠隔操作で停止させる運転停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
設置型の機械類、たとえば、回転軸が水平方向に並列していわゆる巻き込み方向に回転する一対のロールで柔らかい固まり状のゴムを圧延してゴムシートを形成するゴムロール機における運転停止方法については、従来から種々の提案がある。
【0003】
その中で、たとえば、特許文献1には、ゴムロール機に接近して作業に従事する作業者の体の一部たる手が回転する一対のロール上に設定されるいわゆる危険領域に侵入すると、これを検知手段が検知して、ゴムロール機の運転、すなわち、ロールの回転を停止させるとする提案が開示されている。
【0004】
このとき、この提案にあって、作業者は、ゴムの色に対して区別をつけ易い色の手袋を装着する一方で、検知手段は、一対のロールの上方に配在されて上記の手袋の色を検知する色差チェック型光電管を有してなるとしている。
【0005】
それゆえ、この特許文献1に開示の運転停止方法にあっては、作業者の手が、すなわち、作業者が装着した手袋が上記した危険領域に侵入したときに、色差チェック型光電管が手袋の色を検知し、また、制御部を介するなどして、一対のロールを回転させるモータなどの駆動源の駆動を停止し、作業者に危険が及ばないようにすることが可能になる。
【0006】
ちなみに、ゴムロール機における緊急時の運転停止については、旧来、作業者がゴムロール機に装備された運転停止スイッチを押すことによるとしており、このとき、運転停止スイッチは、ゴムロール機において作業者の頭上付近や足元、あるいは、作業者の手が届くであろう左右に配在されているとするが、この運転停止スイッチを作業者が押せないときに、この特許文献1に開示の運転停止方法が効果的となる。
【特許文献1】特開昭48−46956号公報(特許請求の範囲,明細書第2頁左欄第5行から第12行,第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の運転停止方法にあっては、作業者の体勢如何では、検知手段の作動によるゴムロール機の自動停止を実現し得なくなると指摘される可能性がある。
【0008】
すなわち、ゴムロール機に接近して作業に従事する作業者が外的因子で、あるいは、内的因子で手袋を装着した手以外となる体の一部を上記した危険領域に侵入させる緊急事態に遭遇する場合には、検知手段たる色差チェック型光電管が手袋の色を検知し得ないから、この検知手段の作動によるゴムロール機の自動停止を実現できないことになる。
【0009】
のみならず、検知手段自体が故障している場合はともかくとして、設置されている検知手段たる色差チェック型光電管が検知し得ない色の手袋を作業者が誤認して装着したまま作業に従事したり、あるいは、ゴムの色の変更に基づいて手袋の色が変更されているにも拘らず色差チェック型光電管が変更されていなかったりする場合にも、この検知手段の作動によるゴムロール機の自動停止を実現できないことになる。
【0010】
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、作業者が緊急事態に遭遇するときに既設の運転停止スイッチを操作できず、また、自動停止を可能にする検知手段の作動を期待できなくても、遠隔操作で設置型の機械類における運転停止を可能にして、その汎用性の向上を期待するのに最適となる運転停止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、この発明による運転停止方法の構成を、請求項1では、スイッチ操作時に電波を発信して設置型の機械類における運転を停止させるスイッチを作業者が羽織るジャケットにおける、あるいは、作業者が被る帽子におけるそれぞれ作業者の手が届く部位に保持させると共に、このスイッチを作業者が手でスイッチ操作してなるとする。
【0012】
そして、請求項4では、上記のスイッチを作業者が穿くズボンに保持させると共に、このスイッチが作業者の体勢によってスイッチ操作されるとする。
【発明の効果】
【0013】
それゆえ、請求項1の発明にあっては、物が作業者に衝突したり、あるいは、作業者が物に衝突したりするなどの外的因子で設置型の機械類に体の一部を引き込まれるような事態になるとき、自らの手でジャケットにあるいは帽子に保持されたスイッチを操作することで、上記の機械類の運転停止を可能にし得ることになる。
【0014】
そして、請求項4の発明にあっては、作業者が体調を悪くするなどの内的因子で体勢を崩して設置型の機械類に体の一部を引き込まれるような事態になるとき、作業者が穿くズボンの膝部や腰部に保持されたスイッチが床を叩くなどしてスイッチが操作されることで、上記の機械類の運転停止を可能にし得ることになる。
【0015】
その結果、この発明の運転停止方法によれば、作業者が緊急事態に遭遇するときに既設の運転停止スイッチを操作できず、また、自動停止を可能にする検知手段の作動を期待できなくても、遠隔操作で設置型の機械類における運転を停止可能にして、その汎用性の向上を期待するのに最適となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による運転停止方法は、図1に示すように、作業者1が設置型の機械類たるゴムロール機に接近して作業に従事する際に具現化されるとしている。
【0017】
すなわち、まず、ゴムロール機は、回転軸(図示せず)が水平方向に並列する一対のロールRにおける頂部R1間とされて断面がほぼ漏斗状になる投入部Aに上方から投入されるゴムGをゴムシートに圧延してロールRの下方に送り出すとしている。
【0018】
このとき、ゴムロール機は、図示しないモータなどの駆動源の駆動で一対のロールRを同期回転させるとしており、この一対のロールRの回転方向は、基本的には、図1中に矢印で示すいわゆる巻き込み方向とされるとし、さらには、要するときの逆方向とされている。
【0019】
また、このゴムロール機にあって、一対のロールRは、両者の間に適宜の隙間(符示せず)を有しながら互いに遠近し得る、あるいは、一方のロールRが他方のロールRに対して遠近し得るとしており、上記の隙間の広狭制御によって言わば下方に送り出されるゴムシートの厚さを選択し得るとしている。
【0020】
ちなみに、この種のゴムロール機にあっては、図示しないが、緊急時におけるロールRの回転停止を可能にする運転停止スイッチが複数箇所に、すなわち、作業者1の足元や作業者1の頭上付近、さらには、作業者1の手が届く左右に設けられているとするが、この発明の運転停止方法は、上記の運転停止スイッチを作業者1が操作し得なくなるような事態になっても、ゴムロール機の運転停止を可能にするために提案されるものである。
【0021】
ちなみに、ゴムロール機にあっては、一対のロールR間に形成される前記した投入部Aを含むいわゆる危険領域に作業者1が装着する手袋が臨在するとき、たとえば、前記した特許文献1に開示されているように、色差チェック型光電管を有する検知手段がこれを検知してロールRの自動的な回転停止を実現するとしている。
【0022】
つぎに、上記のように構成されているゴムロール機に接近して作業に従事する作業者1は、スイッチ操作時に電波を発信してゴムロール機における運転を停止させるスイッチSを保持するとしている。
【0023】
このとき、作業者1において、スイッチSを保持させる位置についてであるが、この発明が意図するところからすれば、基本的には、ゴムロール機に接近して作業に従事している作業者1が保持する限りにおいて、作業者1の掌中でなく、また、手袋以外であれば何処でも良い。
【0024】
と言うのも、図示しないが、作業者1は、手に手袋をして作業に従事するから、手袋越しであるにしても、作業者1の掌中にスイッチSを把持させる設定は現実的でなく、また、手袋にいわゆる余計な物を付けないとの前提からすれば、手袋に保持させるとの設定も好ましくないことによる。
【0025】
とは言え、具体的には、作業者1が羽織るジャケット2における図示しないポケット内やジャケット2の内側など外部からスイッチSが保持されていることを簡単には視認できない場所を含まないことはもちろんである。
【0026】
スイッチSをポケット内やジャケット2の内側など外部から簡単に視認できない場所に保持するとの設定は、第三者をして実践するいわゆる安全管理の観点からすれば、好ましくない設定と言い得るであろうし、また、いわゆるいざと言うときの操作性に欠けることからしても好ましくないと言い得るであろう。
【0027】
そこで、多くの場合にそうされるであろうが、図2に示すように、作業者1が羽織るジャケット2において、作業者1の手が簡単に届く部位にスイッチSを保持させるとするのが好ましい設定であろう。
【0028】
すなわち、作業者1が羽織るジャケット2における、たとえば、袖部2aに保持される設定の場合には、言わば反対の手でスイッチSを操作することが可能になるし、また、言わば体の範囲内での操作になるから、操作に確実性を期待できる点で有利となる。
【0029】
そして、ジャケット2にスイッチSを保持させる場合に、上記した袖部2aに代えて、前身頃部2bにスイッチSを保持させるとしても良く、この場合には、操作性において袖部2aに劣らない確実性が得られるが、袖部2aに比較して、他部への干渉の可能性が低くなる点で有利になると言い得る。
【0030】
以上からすれば、ジャケット2にスイッチSを保持させるについて、上記した袖部2aでもなく、また、前身頃部2bでもない部位、すなわち、ジャケット2の肩部2cに保持させるとしても良く、この場合にも、袖部2aに劣らない操作性が得られると共に、袖部2aに比較して、他部への干渉の可能性も低くなると言い得るであろう。
【0031】
つぎに、上記したジャケット2に代えて、帽子3にスイッチSを保持させるとしても良く、このとき、スイッチSを作業者1の頭部を覆う本体部たるキャップ部3aに保持させるとしても良く、また、鍔部3bに保持されるとしても良い。
【0032】
このスイッチSを帽子3に保持させるとの設定は、人の防護本能による挙動を考慮すると、スイッチSに対する操作の確実性を期待する上からは好ましいと言い得るであろう。
【0033】
上記したスイッチSの保持態様、すなわち、スイッチSをジャケット2あるいは帽子3に保持させる態様は、物が作業者1に衝突する、あるいは、作業者1が物に衝突するなどの外的因子で作業者1に危険が及ぶときに好ましい対応ができるであろうことを予測させるが、作業者1が体調を悪くするなどの内的因子で体勢を崩してゴムロール機に体の一部を引き込まれるような事態になるときは、作業者1の意思で作業者1が自らスイッチ操作できないであろうから、別の部位にもスイッチSが保持されている方が好ましいと言い得る。
【0034】
そこで、作業者1が穿くズボン4の、たとえば、膝部4aや腰部4bにスイッチSを保持させる設定とし(図2参照)、作業者1が床に倒れるなどしたときに、作業者1の体勢によってスイッチSが床を叩くなどしてスイッチ操作されることを期待する方策が選択されるとする。
【0035】
ただ、このスイッチSを作業者1が穿くズボン4に保持させる設定は、スイッチ操作を偶然性に賭けることになるから、スイッチSが前記したジャケット2あるいは帽子3に保持されていることを前提にして、選択される方が好ましいと言い得るであろう。
【0036】
以上のように、この発明では、外的因子で、あるいは、内的因子で作業者1がゴムロール機に体の一部を引き込まれるような事態になるとき、ジャケット2や帽子3に保持されたスイッチSを自らの手でスイッチ操作することで、あるいは、作業者1が穿くズボン4の膝部4aや腰部4bに保持されたスイッチSが床を叩くなどしてスイッチ操作されることで、上記のゴムロール機の運転停止を可能にし得ることになる。
【0037】
それゆえ、この発明によれば、作業者1が緊急事態に遭遇するときにゴムロール機に既設の運転停止スイッチを操作できず、また、ゴムロール機における運転停止を可能にする検知手段の作動を期待できなくても、遠隔操作でゴムロール機における運転停止を実現し得ることになる。
【0038】
以上のようにして、この発明が具現化されるが、さらには、まず、スイッチSは、図示しないが、いわゆる平坦部を有していて、この平坦部を押圧したり、衝撃を加えたりすることで、スイッチ作動するとし、そのため電源たるバッテリを有していて、このバッテリの電力で電波を発信できるとしている。
【0039】
それゆえ、このスイッチSにあっては、作業時間以外のいわゆる不使用時に、充電するなりのいわゆるメンテナンスをする必要があり、多くの場合に、所定の格納位置に格納することで、バッテリが充電される方策が選択されるであろう。
【0040】
つぎに、上記のスイッチSを操作してゴムロール機の運転を停止するについては、任意の方策を選択できるが、多くの場合に、スイッチSから発信される信号をアンテナ経由でゴムロール機に近接される制御部に入力し、この制御部が所定の処理をして出力する信号でゴムロール機、すなわち、一対のロールを回動させる駆動源の駆動を停止する方策が選択されるであろう。
【0041】
前記したところでは、スイッチSは、作業者1の手および手袋を除く部位に保持されるのを原則とし、また、具体的には、スイッチSがジャケット2,帽子3およびズボン4に保持されるとしたが、この発明が意図するところからすれば、図示しないが、スイッチSが靴に保持される設定をも選択し得ることになる。
【0042】
ただ、前記したように、ゴムロール機にあっては、作業者1の足元に緊急時の運転停止を可能にする運転停止スイッチが装備されていて、作業者1は、この足元の運転停止スイッチを靴越しに蹴るであろうから、この場合の靴にこの発明を具現化するためのスイッチを保持させる必要性は低いと言い得るであろう。
【0043】
また、スイッチSの構造として、前記したところではいわゆる押圧型あるいは衝撃型に形成されてなるとしたが、この発明が意図するところからすれば、作業者が作業中に有るまじき体勢になるとき、すなわち、たとえば、作業者が倒れるなどして、スイッチSが凡そ使用態勢や保管態勢以外の状態になるときに作動する言うなれば傾倒型に形成されてなるとしても良い。
【0044】
ただ、実際を鑑みれば、この傾倒型のスイッチSについては、これが単独で利用されるのではなく、上記した押圧型あるいは衝撃型のスイッチSと併用されるであろう。
【0045】
そして、前記したところでは、この発明が具現化されるのが設置型の機械類たるゴムロール機における場合とされているが、この発明が意図するところからすれば、たとえば、プレス機など、凡そ設置型の機械類である限りには、この発明の具現化が可能になるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明による運転停止方法を具現化する作業者がゴムロール機に接近した作業状態を概念的に示す立面図である。
【図2】立ち姿勢の作業者がセンサを保持する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 作業者
2 ジャケット
2a 袖部
2b 前身頃部
3 帽子
3a キャップ部
3b 鍔部
4 ズボン
4a 膝部
4b 腰部
A 投入部
G ゴム
S スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ操作時に電波を発信して設置型の機械類における運転を停止させるスイッチを作業者が羽織るジャケットにおける、あるいは、作業者が被る帽子におけるそれぞれ作業者の手が届く部位に保持させると共に、このスイッチを作業者が手でスイッチ操作してなることを特徴とする運転停止方法
【請求項2】
スイッチが作業者の羽織る被覆における袖部、あるいは、前身頃部に保持されてなる請求項1に記載の運転停止方法
【請求項3】
スイッチが作業者の被る帽子におけるキャップ部、あるいは、鍔部に保持されてなる請求項1に記載の運転停止方法
【請求項4】
スイッチ操作時に電波を発信して設置型の機械類における運転を停止させるスイッチを作業者が穿くズボンに保持させると共に、このスイッチが作業者の体勢によってスイッチ操作されることを特徴とする運転停止方法
【請求項5】
スイッチが作業者の穿くズボンにおける膝部、あるいは、腰部に保持されてなる請求項4に記載の運転停止方法

【図1】
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【図2】
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