説明

運転支援装置

【課題】車両どうしの衝突可能性を正確に判断することができる技術を提供する。
【解決手段】ウィンカの点灯操作などのドライバの操作に基づく情報を自車と他車との間で互いに送受信しなくとも、自車情報管理部10により管理される自車の走行車線に形成された路面標示の内容および自車位置に関する情報と、他車情報管理部17により管理される他車の走行車線に形成された路面標示の内容および他車位置に関する情報とに基づいて、自車および他車それぞれの進路を予測することができるため、自車と他車との衝突可能性を正確に衝突予測部18により判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自車と他車との間で、自車および他車の少なくとも位置情報を互いに送受信することで運転支援を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路に配設された複数の路上局から、符号系列のデータ信号であって異なるデータ信号を周期的に同期させて送信し、これらの路上局の通信エリア内を移動する車両に搭載された移動局において、路上局から送信された各符号系列のデータ信号を獲得すると共に、これらの符号系列のデータ信号の各路上局から移動局への到達時間差に基づいて、車両がどの走行車線を走行しているのかを識別する技術が知られている。そして、獲得された走行車線に関する情報などが車車間通信により互いに送受信されることで、同じ走行車線を走行中の車両どうしの衝突可能性などが判断される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−76599号公報(段落0027〜0038,0064〜0071、図1,20,22、要約書など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、上記した走行車線に関する情報の他に、各車両の位置情報やウィンカの操作に基づく車両の右左折の情報などが車車間通信により互いに送受信されて、車両どうしの衝突可能性などが判断される。しかしながら、例えばウィンカを点灯するにはドライバによる操作が必要であり、ドライバがウィンカの点灯操作を忘れた場合などには、車両の右左折に関する情報は各車両間で送受信されない。したがって、ドライバにより必要な操作が行われなかったときには、ドライバの操作に基づく情報が各車両間で送受信されないため、車両どうしの衝突可能性に関する判断を正確に行うことができないおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、車両どうしの衝突可能性を正確に判断することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明の運転支援装置は、自車と他車との間で前記自車および前記他車の少なくとも位置情報を互いに送受信することで運転支援を行う運転支援装置において、前記自車の走行車線に形成された路面標示の内容を判別する判別手段と、前記他車の走行車線に形成された路面標示の内容を取得する取得手段と、前記判別手段により判別された路面標示の内容と、前記取得手段により取得された路面標示の内容と、前記自車および前記他車の前記位置情報とに基づいて、前記自車および前記他車それぞれの進路を予測することにより前記自車と前記他車との衝突可能性を判断する判断手段とを備えることを特徴としている(請求項1)。
【0007】
また、請求項1に記載の運転支援装置において、前記判断手段により衝突可能性があると判断されたときに注意喚起を行う注意喚起手段と、前記判別手段により判別された路面標示の内容に基づいて前記自車が走行中の道路が優先道路であるか否かを認識する優先道路認識手段とをさらに備え、前記注意喚起手段は、前記判断手段により衝突可能性があると判断されたときであっても、前記優先道路認識手段により前記自車が優先道路を走行中であると認識されている場合には、前記注意喚起を行わないようにしてもよい(請求項2)。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、ウィンカの点灯操作などのドライバの操作に基づく情報を自車と他車との間で互いに送受信しなくとも、判別手段により判別された自車の走行車線に形成された路面標示の内容と、取得手段により取得された他車の走行車線に形成された路面標示の内容と、自車と他車との間で互いに送受信された自車および他車の位置情報とに基づいて、自車および他車それぞれの進路を予測することができるため、自車と他車との車両どうしの衝突可能性を正確に判断手段により判断することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、判断手段により衝突可能性があると判断されたときに注意喚起手段による注意喚起が行われるが、判断手段により衝突可能性があると判断されたときであっても、判別手段により判別された路面標示の内容に基づいて自車が走行中の道路が優先道路であるか否かを認識する優先道路認識手段により自車が優先道路を走行中であると認識されている場合には注意喚起手段による注意喚起が行われないため、必要に応じた適切な注意喚起を注意喚起手段により行うことができる。
【0010】
このように、判別手段により衝突可能性があると判断されたときに、自車が優先道路を走行中であれば注意喚起手段による注意喚起が行われず、自車が非優先道路を走行中であれば注意喚起手段による注意喚起が行われるため、優先道路を走行中のドライバに対する注意喚起がたびたび行われることで、注意喚起に対する慣れがドライバに生じてしまい、ドライバに対する注意喚起による注意効果が薄れてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の車両走行状態の一例を示す模式図である。
【図2】運転支援装置を備えた車両のブロック図である。
【図3】路面標示内容判別処理を示すフローチャートである。
【図4】運転支援処理を示すフローチャートである。
【図5】車両走行状態の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態の車両走行状態の一例を示す模式図である。図2は運転支援装置を備えた車両のブロック図である。図3は路面標示内容判別処理を示すフローチャートである。図4は運転支援処理を示すフローチャートである。
【0013】
この実施形態では、自車および他車との間で自車および他車の少なくとも位置情報を車車間通信により互いに送受信することで運転支援を行う本発明の運転支援装置を備える自動車、トラック、モータバイクなどの車両が、例えば十字路の交差点を有する道路を縦横に走行しているものとする。
【0014】
図1は上記の走行状況を模式的に示し、1は紙面上下方向の南北路1aと紙面左右方向の東西路1bとが交差点1cで十字路状に交差する道路である。そして、道路1を形成する各走行車線1dには各種の規制標示および指示標示などの路面標示が形成されており、1eは走行車線1dが左折車線であることを示す矢印、1fは走行車線1dが直進車線であることを示す矢印、1gは走行車線1dが右折車線であることを示す矢印、1hは走行車線1dが直進・左折車線であることを示す矢印である。また、1iは走行車線1dの境界を示す車線境界線、1jは車両停止線、1kは横断歩道を示す。
【0015】
また、図1において、21,22は東西路1bを交差点1cに向かって東進する車両であり、23は東西路1bを交差点1cに向かって車両22と同じ走行車線1dを東進するモータバイクであり、24は東西路1bを交差点1cを越えて東進する車両である。また、25は東西路1bを交差点1cに向かって西進するトラックであり、26は東西路1bを交差点1cに向かって西進する車両である。また、車両21およびトラック25は、それぞれ右折車線を走行しており、車両22およびモータバイク23は、それぞれ左折車線を走行しており、車両24,26は、それぞれ直進車線を走行している。
【0016】
そして、車両21,22,24,26、モータバイク23、トラック25は、それぞれ本発明の運転支援装置を備えているが、以下では、車両21が備える運転支援装置を例に挙げて説明する。
【0017】
図2は車両21の運転支援装置の構成の一例を示し、10は自車情報管理部(本発明の「判別手段」、「優先道路認識手段」に相当)であり、例えば、自律航法用の自律センサの検出情報に基づくマップマッチングが行われるナビゲーションシステム11による自車の緯度および経度からなる車両位置、GPS(Global Positioning System)受信部12により受信した自車位置のGPSの測位情報および、CAN(Controller Area Network)通信部13により受信した速度センサ、舵角センサ、ヨーレートセンサ等の自車内の走行に関連する各種自律センサの検出情報を収集し、それらを自車の車両情報として管理して、自車の位置を推定する。
【0018】
また、自車情報管理部10は、自車の前方を撮影する前方認識装置としての単眼の車載カメラ14の撮影データを収集し、車載カメラ14の撮影画像に含まれる自車の走行車線1dに形成された路面標示の内容をパターン認識により判別する。すなわち、自車情報管理部10には、矢印1e,1f,1g,1h、点線または直線で表される車線境界線1i、車両停止線1j、横断歩道1k、「止まれ」の文字、前方の横断歩道や自転車通行帯の存在を示すひし形の標示、展開禁止、駐車禁止、路側帯、専用通行帯を示す標示、優先通行帯を示す標示、通行区分を示す標示、駐車帯を示す標示、速度標示、前方優先道路を示す標示などの路面標示の各種パターンが予め格納されている。
【0019】
そして、図3に示すように、自車情報管理部10は、車載カメラ14にる撮影画像を取得し(ステップS1)、取得した撮影画像に含まれる路面標示をパターン認識により認識すると共に、認識された路面標示の内容について判別する(ステップS2)。次に、路面標示の内容に基づいて、自車が、右折車線を走行しているのか、左折車線を走行しているのか、路側帯が自車の左側に形成された車線、すなわち、最も左側の車線を走行しているのか、優先道路を走行しているのかなどの、走行車線に関する情報を取得する(ステップS3)。
【0020】
15は車車間通信手段の送信機(車車間送信機)であり、自車情報管理部10により管理されている時々刻々の自車位置などの自車の車両情報、車載カメラ14の撮影画像に基づいて取得された自車の走行車線に関する情報などを車外に無線送信する。
【0021】
16は車車間通信手段の受信機(車車間受信機)であり、同様の車車間通信手段を備えた送受信可能距離内の車両22,24,26、モータバイク23、トラック25等の他の車両の車車間送信機15からの車車間通信の情報を受信する。この実施形態では、車車間受信機16、他の車両から送信された時々刻々の他車位置などの他車の車両情報や他車の走行車線に関する情報を受信する。
【0022】
17は他車情報管理部(本発明の「取得手段」に相当)であり、車車間受信機16を介して時々刻々の他車の位置などの車両情報や、他車の走行車線に形成された路面標示の内容に基づく他車の走行車線に関する情報などを取得し、それらを他車情報として管理する。
【0023】
なお、自車情報管理部10、他車情報管理部17等は、フラッシュメモリ等の書き換え自在の固体情報記憶素子あるいはHDDにより形成された記憶部を有しており、自車情報管理部10、他車情報管理部17が管理する最新の一定時間分の各種情報を書き換え自在に記憶する。
【0024】
18は自車情報管理部10により管理される自車の走行車線の路面標示の内容に基づく自車の走行車線に関する情報および自車の位置情報と、他車情報管理部17により管理される他車の走行車線の路面標示の内容に基づく他車の走行車線に関する情報および他車の位置情報とに基づいて、ナビゲーションシステム11における地図上の自車および他車それぞれの進路を予測することにより自車と他車との衝突可能性を判断する衝突予測部(本発明の「判断手段」に相当)である。
【0025】
19は衝突予測部18による予測結果に基づいてドライバに対する報知を行う報知部(本発明の「注意喚起手段」に相当)であり、衝突予測部18により衝突可能性があると判断されたときに、例えば走行モニタに表示中のカーナビゲーション用の地図に警告表示を重畳して表示したりして、衝突の可能性のある他車の存在を視覚的にドライバに報知することにより注意喚起を行う。また、図示省略されたスピーカから、予測結果の音声メッセージ、警告音を発生して衝突の可能性のある他車の存在を聴覚的にドライバに報知することにより注意喚起を行う。報知部19によるこれらの視覚的または聴覚的なドライバに対する報知により、ドライバの運転支援を行う。なお、報知は、シートベルト、ハンドル、シート等のドライバに接する部分を振動させて、触覚にうったえるものであってもよい。
【0026】
また、報知部19は、衝突予測部18により衝突可能性があると判断されるときであっても、自車が衝突可能性のある他車よりも優先される優先道路を走行中であると自車情報管理部10により認識されている場合には、注意喚起を行わない。なお、このとき、ドライバに対する注意喚起は行わないが、例えば走行モニタに表示中のカーナビゲーション用の地図に他車の位置を重畳して表示したりして、衝突可能のある他車の存在が視覚的にドライバに報知部19により報知される。
【0027】
そして、自車情報管理部10、他車情報管理部17、衝突予測部18、報知部19は、マイクロコンピュータのソフトウェア処理によって形成される。
【0028】
なお、この実施形態では、車両22,24,26、モータバイク23、トラック25は、図2を参照して説明した運転支援装置と同様の運転支援装置を備えている。
【0029】
次に、運転支援装置による処理の一例について図4を参照して説明する。
【0030】
図4は運転支援処理の一例を示し、自車情報管理部10により管理される自車位置に関する情報が取得され(ステップS11)、自車の走行車線に関する情報が取得される(ステップS12)。そして、他車が送信する他車位置および走行車線に関する情報が車車間受信機16を介して受信されることにより、他車情報管理部17により管理される他車位置および他車の走行車線に関する情報が取得され(ステップS13)、自車位置および自車の走行車線に関する情報と、他車位置および他車の走行車線に関する情報とに基づいて、自車および他車の進路が予測されることにより自車および他車の衝突可能性が衝突予測部18により判断される(ステップS14)。
【0031】
(a)第1判断例
例えば、自車が車両21である場合に、衝突予測部18は、自車は東西路1bを交差点1cに向かって東進しているが、矢印1gの内容に基づいて、自車の進路として交差点1cを右折するものと予測する。一方、衝突予測部18は、他車であるトラック25は東西路1bを交差点1cに向かって西進しているが、矢印1gの内容に基づいて、トラック25の進路として交差点1cを右折するものと予測する。また、衝突予測部18は、他車である車両26は東西路1bを交差点1cに向かって西進しているが、矢印1fの内容に基づいて、車両26の進路として交差点1cを直進するものと予測する。
【0032】
したがって、衝突予測部18は、自車とトラック25は正面から対向しているが、交差点1cを互いに右折する関係にあり、衝突可能性がないと判断し(ステップS15でNO)、自車と車両26は正面から対向していないが、交差点を右折および直進する関係にあり、衝突可能性があると判断する(ステップS15でYES)。そして、自車の走路が優先側か非優先側であるかが報知部19により判断されるが、この場合、交差点1cを直進する車両26が優先側車両であるため(ステップS16でNO)、報知部19により直進車(車両26)の存在を報知する注意喚起が行われる(ステップS17)。
【0033】
(b)第2判断例
例えば、自車が車両22である場合に、衝突予測部18は、自車は東西路1bを交差点1cに向かって東進しているが、矢印1eの内容に基づいて、自車の進路として交差点1cを左折するものと予測する。一方、衝突予測部18は、他車であるモータバイク23は東西路1bを交差点1cに向かって東進しているが、モータバイク23の車載カメラ14の撮影画像に含まれる路側帯などの路面標示の内容に基づいて、モータバイク23は最も左側の車線を走行しており、モータバイク23の進路として交差点1cを左折する蓋然性が高いものと予測する。
【0034】
また、衝突予測部18は、他車であるトラック25は東西路1bを交差点1cに向かって西進しているが、矢印1gの内容に基づいて、トラック25の進路として交差点1cを右折するものと予測する。また、衝突予測部18は、他車である車両26は東西路1bを交差点1cに向かって西進しているが、矢印1fの内容に基づいて、車両26の進路として交差点1cを直進するものと予測する。
【0035】
したがって、衝突予測部18は、自車とモータバイク23は交差点1cを互いに左折する関係にあり、左折時にモータバイク23を巻き込むことにより自車とモータバイク23とが衝突する可能性があると判断する(ステップS15でYES)。そして、自車の走路が優先側か非優先側であるかが報知部19により判断されるが、この場合、交差点1cを左折する自車に、所謂、巻き込み確認を行う注意義務があるため、報知部19により後続車(モータバイク23)の存在を報知する注意喚起が行われる(ステップS17)。
【0036】
また、衝突予測部18は、自車とトラック25は交差点1cを左折および右折する関係にあり、衝突可能性がないと判断し(ステップS15でNO)、自車と車両26は交差点を左折および直進する関係にあり、衝突可能性がないと判断する(ステップS15でNO)。
【0037】
(c)第3判断例
例えば、自車が車両24である場合に、衝突予測部18は、自車は東西路1bを交差点1cを越えて東進しているが、車両24の車載カメラ14の撮影画像に含まれる自車左側の路側帯などの路面標示の内容、自車右側の車線境界線1iの内容や、ナビゲーションシステム11に格納された地図情報の内容に基づいて取得される2車線道路であるとの情報などに基づいて、自車の進路として自車は2車線のうち左側の車線を走行するものと予測する。
【0038】
一方、衝突予測部18は、図示省略した車両24の前方を走行する他の車両の撮影画像に含まれる路側帯や車線境界線1iの内容に基づいて、当該他の車両の進路として自車(車両24)と同じ走行車線を走行するかどうか予測する。そして、衝突予測部18は、自車および自車前方の他の車両の進路が、同じ走行車線1dを同方向に走行すると予測されるときに、例えば、自車前方の他の車両が、渋滞など、何らかの理由で停車することにより、自車と自車前方の他の車両とが異常な早さで近接すれば、自車が自車前方の他の車両に衝突する可能性があると判断する(ステップS15でYES)。そして、自車が優先側か非優先側であるかが報知部19により判断されるが、この場合、自車に前方注意義務があるため、前方に停車中の他の車両の存在を報知する注意喚起が報知部19により行われる(ステップS17)。
【0039】
(d)第4判断例
例えば、自車がトラック25である場合に、衝突予測部18は、自車は東西路1bを交差点1cに向かって西進しているが、矢印1gの内容に基づいて、自車の進路として交差点1cを右折するものと予測する。一方、衝突予測部18は、他車である車両21は東西路1bを交差点1cに向かって東進しているが、矢印1gの内容に基づいて、車両21の進路として交差点1cを右折ものと予測する。また、衝突予測部18は、他車である車両22は東西路1bを交差点1cに向かって東進しているが、矢印1eの内容に基づいて、車両22の進路として交差点1cを左折するものと予測する。
【0040】
したがって、衝突予測部18は、自車と車両21は正面から対向するが、交差点1cを互いに右折する関係にあり、衝突可能性がないと判断し(ステップS15でNO)、自車と車両22は正面から対向しないが、交差点を右折および左折する関係にあり、衝突可能性がないと判断する(ステップS15でNO)。
【0041】
(e)第5判断例
例えば、自車が車両26である場合に、衝突予測部18は、自車は東西路1bを交差点1cに向かって西進しているが、矢印1fの内容に基づいて、自車の進路として交差点1cを直進するものと予測する。一方、衝突予測部18は、他車である車両22は東西路1bを交差点1cに向かって東進しているが、矢印1eの内容に基づいて、車両22の進路として交差点1cを左折するものと予測する。また、衝突予測部18は、他車である車両21は東西路1bを交差点1cに向かって東進しているが、矢印1gの内容に基づいて、車両21の進路として交差点1cを右折するものと予測する。
【0042】
したがって、衝突予測部18は、自車と車両22は交差点1cを直進および左折する関係にあり、衝突可能性がないと判断し(ステップS15でNO)、自車と車両21は正面から対向しないが、交差点1cを直進および右折する関係にあり、衝突可能性があると判断する(ステップS15でYES)。そして、自車の走路が優先側か非優先側であるかが報知部19により判断されるが、この場合、交差点1cを直進する自車が優先側車両であるため(ステップS16でYES)、報知部19により右折車(車両21)の存在のみが単に報知される(ステップS18)。
【0043】
(車両走行状態の他の例)
次に、車両走行状態の他の例について、図5を参照して説明する。図5は車両走行状態の他の例を示す模式図である。この例が上記した例と異なるのは、交差点の構成が異なる点であり、その他の構成および動作は上記した例と同一であるため、同一の構成については同一または相当符号を付すことにより、その構成および動作の説明を省略する。以下では、上記した例と異なる点を中心に、図2および図4も参照しつつ説明する。
【0044】
この例では、自車および他車との間で自車および他車の少なくとも位置情報を車車間通信により互いに送受信することで運転支援を行う本発明の運転支援装置を備える自動車などの車両が、例えばT字路の交差点を有する道路を縦横に走行しているものとする。
【0045】
図5は上記の走行状況を模式的に示し、100は紙面上下方向の南北路100aと紙面左右方向の東西路100bとが交差点100cでT字路状に交差する道路であって、東西路100bが南北路100aに優先する優先道路として形成されている。そして、道路100を形成する各走行車線1dには各種の規制標示および指示標示などの路面標示が形成されており、図5に示す例では、図1を参照して説明した路面標示の他に、一時停止を意味する「止まれ」の標示1lが、南北路100aの東西路100bに接続する地点に形成されている。
【0046】
また、図5において、27は東西路100bを交差点100cに向かって東進する車両であり、28は東西路100bを交差点100cに向かって西進する車両である。また、29は南北路100aを交差点100cに向かって北進する車両である。
【0047】
そして、車両27,28,29それぞれは、本発明の運転支援装置を備えている。なお、図5に示すように、T字路を形成する交差点100cの右側の角には建造物200が建てられており、車両28および車両29は、互いの車両を視認することができない。また、東西路100bには歩道201が設けられている。
【0048】
このように構成された道路100を走行する各車両27,28,29において、図4を参照して説明した運転支援処理が同様に実行される。以下では、図4に示す運転支援処理のうち、ステップS15以降の処理について説明し、ステップS11〜ステップS14の処理については、上記した例と同様であるためその処理の説明は省略する。
【0049】
(f)第6判断例
例えば、自車が車両27である場合に、衝突予測部18は、自車は東西路100bを交差点100cに向かって東進しているが、自車の車載カメラ14の撮影画像に含まれる自車の左側の路側帯や右側の車線境界線1iなどの路面標示の内容に基づいて、自車の進路として2車線道路における左側を走行するものと予測する。一方、衝突予測部18は、他車である車両28は東西路100bを交差点100cに向かって西進しているが、車両28の車載カメラ14の撮影画像に含まれる車両28の左側の路側帯や右側の車線境界線1iなどの路面標示の内容に基づいて、車両28の進路として2車線道路における自車とは反対側の車線を走行するものと予測する。また、衝突予測部18は、他車である車両29は南北路100aを交差点100cに向かって北進しているが、「止まれ」の標示1lの内容に基づいて、車両29の進路として交差点100cの手前で一時停止する蓋然性が高いものと予測する。
【0050】
したがって、衝突予測部18は、自車と車両28とは互いに東西路100bの反対側車線を走行する関係にあり、衝突可能性がないと判断し(ステップS15でNO)、自車と車両29とは、例えば車両29が一時停止を無視したとしても、車両29が一車線分の距離だけ車両停止線1jを越えて東西路100bに飛び出さなければ、自車と車両29とは衝突しないため、出会い頭で自車と車両29とが衝突する可能性がないと判断する(ステップS15でNO)。
【0051】
(g)第7判断例
例えば、自車が車両28である場合に、衝突予測部18は、自車は東西路100bを交差点100cに向かって西進しているが、自車の車載カメラ14の撮影画像に含まれる自車の左側の路側帯や右側の車線境界線1iなどの路面標示の内容に基づいて、車両28の進路として2車線道路における左側を走行するものと予測する。一方、衝突予測部18は、他車である車両27は東西路100bを交差点100cに向かって東進しているが、車両27の車載カメラ14の撮影画像に含まれる車両27の左側の路側帯や右側の車線境界線1iなどの路面標示の内容に基づいて、車両27の進路として2車線道路における自車とは反対側の車線を走行するものと予測する。また、衝突予測部18は、他車である車両29は南北路100aを交差点100cに向かって北進しているが、「止まれ」の標示1lの内容に基づいて、車両29の進路として交差点100cの手前で一時停止する蓋然性が高いものと予測する。
【0052】
したがって、衝突予測部18は、自車と車両27とは互いに東西路100bの反対側車線を走行する関係にあり、衝突可能性がないと判断し(ステップS15でNO)、自車と車両29とは、例えば車両29が一時停止を無視して車両停止線1jを越えて東西路100bに飛び出したときに出会い頭で衝突する可能性があるため、衝突可能性があると判断する(ステップS15でYES)。そして、自車の走路が優先側か非優先側であるかが報知部19により判断されるが、この場合、交差点100cを西進する自車が優先側車両であるため(ステップS16でYES)、報知部19により車両29の存在のみが単に報知される(ステップS18)。
【0053】
(h)第8判断例
例えば、自車が車両29である場合に、衝突予測部18は、自車は南北路100aを交差点100cに向かって北進しているが、「止まれ」の標示1lの内容に基づいて、車両29の進路として交差点100cの手前で一時停止する蓋然性が高いものと予測する。一方、衝突予測部18は、他車である車両27は東西路100bを交差点100cに向かって東進しているが、車両27の車載カメラ14の撮影画像に含まれる車両27の左側の路側帯や右側の車線境界線1iなどの路面標示の内容に基づいて、車両27の進路として2車線道路における左側、すなわち、自車から見て奥側の車線を走行するものと予測する。また、衝突予測部18は、他車である車両28は東西路100bを交差点100cに向かって西進しているが、車両28の車載カメラ14の撮影画像に含まれる車両28の左側の路側帯や右側の車線境界線1iなどの路面標示の内容に基づいて、車両28の進路として2車線道路における車両27とは反対側の車線、すなわち、自車から見て手前側の車線を走行するものと予測する。
【0054】
したがって、衝突予測部18は、例えば自車が「止まれ」の標示1lを無視して車両停止線1jを越えて東西路100bに飛び出したとしても、車両27は自車から見て東西路100bの奥側の車線を走行しているため、自車が一車線分の距離だけ東西路100bに飛び出さなければ、自車と車両27とは衝突しないため、出会い頭で自車と車両27とが衝突する可能性はないと判断する(ステップS15でNO)。一方、衝突予測部18は、例えば自車が「止まれ」の標示1lを無視して車両停止線1jを越えて東西路100bに飛び出せば自車と車両28とが出会い頭に衝突する可能性があるため、自車と車両28とが衝突する可能性があると判断し(ステップS15でYES)、自車の走路が優先側か非優先側であるかが報知部19により判断されるが、この場合、交差点100cを西進する車両28が優先側車両であるため(ステップS16でNO)、報知部19により車両28の存在を報知する注意喚起が行われる(ステップS17)。
【0055】
以上のように、この実施形態によれば、ウィンカの点灯操作などのドライバの操作に基づく情報を自車と他車との間で互いに送受信しなくとも、自車情報管理部10により管理される自車の走行車線に形成された路面標示の内容および自車位置に関する情報と、他車情報管理部17により管理される他車の走行車線に形成された路面標示の内容および他車位置に関する情報とに基づいて、自車および他車それぞれの進路を予測することができるため、自車と他車との衝突可能性を正確に衝突予測部18により判断することができる。
【0056】
また、衝突予測部18により衝突可能性があると判断されたときに報知部19による注意喚起が行われるが、衝突予測部18により衝突可能性があると判断されたときであっても、自車情報管理部10により管理される路面標示の内容に基づいて自車が走行中の道路が優先道路であると認識されている場合には報知部19による注意喚起が行われないため、必要に応じた適切な注意喚起を報知部19により行うことができる。
【0057】
このように、衝突予測部18により衝突可能性があると判断されたときに、自車が優先道路を走行中であれば報知部19による注意喚起が行われず、自車が非優先道路を走行中であれば報知部19による注意喚起が行われるため、優先道路を走行中のドライバに対する注意喚起がたびたび行われることで、注意喚起に対する慣れがドライバに生じてしまい、ドライバに対する注意喚起による注意効果が薄れてしまうのを防止することができる。
【0058】
また、車載カメラ14の撮影画像に含まれる路面標示の内容に基づいて、自車の走行車線に関する上記した種々の情報を認識することができるため、従来のように、自車の走行車線を認識するための大掛かりな設備を必要とせず、低コスト化を実現できる。
【0059】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、自車が他車と衝突可能性がある場合に、自車が優先道路を走行中であれば、報知部19による報知を全く行わないようにしてもよい。
【0060】
また、自車の走行車線に形成された路面標示の内容を、道路に設置された光ビーコンなどから取得するようにしてもよい。また、自車情報管理部10および他車情報管理部17により管理される路面標示については上記した例に限られるものではなく、通常、路面標示として走行路に形成されるものであれば、どのような路面標示をパターン認識により認識するようにしてもよい。
【0061】
また、運転支援装置は図2の構成に限るものではないのは勿論である。
【0062】
また、本発明は、車車間通信を行なう種々の車両の衝突防止支援等の運転支援に適用すことができる。
【0063】
また、衝突可能性は、自車と他車との距離を検出し、この距離を他車に対する自車の相対速度で除算して求まる衝突余裕時間(TTC;Time To Collision)も含めて判断してもよい。この場合、距離は車載カメラだけではなく、別途設けたレーザレーダ等の測距手段により検出してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1e,1f,1g,1h 矢印(路面標示)
1i 車線境界線(路面標示)
1j 車両停止線(路面標示)
1k 横断歩道(路面標示)
1l 「止まれ」の標示(路面表示)
10 自車情報管理部(判別手段、優先道路認識手段)
17 他車情報管理部(取得手段)
18 衝突予測部(判断手段)
19 報知部(注意喚起手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車と他車との間で前記自車および前記他車の少なくとも位置情報を互いに送受信することで運転支援を行う運転支援装置において、
前記自車の走行車線に形成された路面標示の内容を判別する判別手段と、
前記他車の走行車線に形成された路面標示の内容を取得する取得手段と、
前記判別手段により判別された路面標示の内容と、前記取得手段により取得された路面標示の内容と、前記自車および前記他車の前記位置情報とに基づいて、前記自車および前記他車それぞれの進路を予測することにより前記自車と前記他車との衝突可能性を判断する判断手段と
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記判断手段により衝突可能性があると判断されたときに注意喚起を行う注意喚起手段と、
前記判別手段により判別された路面標示の内容に基づいて前記自車が走行中の道路が優先道路であるか否かを認識する優先道路認識手段とをさらに備え、
前記注意喚起手段は、
前記判断手段により衝突可能性があると判断されたときであっても、前記優先道路認識手段により前記自車が優先道路を走行中であると認識されている場合には、前記注意喚起を行わない
ことを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−14219(P2012−14219A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147126(P2010−147126)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】